先日の地方会でも、色々と勉強させていただきました。
備忘のため、学んだ内容をシェアさせていただきたいと思います。
大阪大学医学部付属病院 感染制御部の関雅文先生によりますランチョンセミナーで、インフルエンザと合併する肺炎診療について勉強しました。
インフルエンザと肺炎が合併する割合は、医師会のデータで0.82%、ということなのですが、65歳〜79歳ではこの割合が2.06%、そして80歳以上になりますと、13.3%と激増するそうです。
スペイン風邪では数千万人が亡くなったとされていますが、後からその死因を確認したところ、やはり細菌感染、特に肺炎球菌、溶連菌、ブドウ球菌が原因菌として多く見られたとのことです。
これは2009年のパンデミックH1N1の時も同様の傾向があり、死因の80%が細菌感染で、特に米国の報告ではCA(community acquired)−MRSAが全例、ということもあったようです。日本ではCA-MRSAはまだ多くありませんが、そのうちに問題になることでしょう。
これまでにもインフルエンザ感染後のブドウ球菌、ということは言われていましたが、やはりそれを裏付けるデータが出ていましたね。示された症例は壊死性肺炎、というか、肺膿瘍であり、普通の表現型の肺炎ではなかった点も特筆すべきでしょう。
インフルエンザ+細菌による二次感染の場合、ウイルス感染単独、あるいは細菌感染単独のケースと比較して、ウイルス+細菌、という相加的な影響ではなく、ウイルス×細菌、という相乗的な影響がありますから、特に基礎疾患がある患者さんの場合にはリスクが高い、ということになります。
しかしながら基礎疾患がある場合に「予防的に」抗菌薬を使用すべき、というエビデンスはなく、マクロライド少量長期投与は必ず耐性を誘導することからやめておいた方がよい、という見解でした。
一方インフルエンザウイルスそのものによる肺炎は、ウイルスそのものの毒性、ということではなくサイトカインストームといった言葉で語られる過剰免疫の惹起がその本体であるようで、さまざまな検討をされていました。
一つ印象深かったのは、ウイルスによる肺炎は治るのも早く、肺水腫の要素が大きいのではないか、というお話。脳症でも血管透過性亢進が見られる、というデータもあり、そちらからのアプローチも今後可能になるかもしれません。
あと、タミフル(オセルタミビル)に関して。
日本は山ほどタミフルを使っていて、それが諸外国から(耐性の問題などで)非難されている部分もあったのですが、世間?の論調は変わってきております。
2009パンデミックの際に、日本だけ亡くなった方の割合が断然低かったことから、(特に「新型」ウイルスに対して)タミフル早期使用のメリットを世界に示したのは記憶に新しいところです。
それだけではなく、タミフル耐性株の出現頻度がタミフル使用量と必ずしも相関しないというデータも出て参りました。タミフルを全然使用していない地域で結構見られたりするのです。
タミフルは5日分処方されることが多いと思いますが、5日飲みきらないとウイルスは排除されません。しかし、患者さんの20%は、4日以下しか飲まれないそうです。途中でやめてしまわれるのですね。こういうことが耐性化に関わってくるのかもしれません。
私は薬局では、「きちんと服用をしきらないと、再発や他人へ移す危険があります。残しておいても無駄ですし、飲み切っておいてください」と指導しています。
その点、イナビルは安心感があります。カウンターで吸入して、お帰りいただいております。吸入法も、目の前で実演できますし。まぁ、子供さんには、非常に難しいですが…
そして、残った薬を妹が罹ったときにあげたりしていました。
医学部に入り、感染症を勉強しだした今となってはありえないと思いますが、当時はそんなものだと思っていたので、逆に患者さんに処方するときはしっかり説明しなきゃなと思います。
やはり説明は本当に大事だと思いますし、「なぜ」そうすべきか、ということをも説明する必要があると思います。医師だけでなく薬剤師さんからも説明いただくことで、少しでもコンプライアンスを上げたいものです。
その点、イナビルはやはり簡単ですねー。