レントゲンでべったりと白くなる連続性の陰影、胸水の次は腫瘤影です。
そもそも腫瘤影とは、カタマリを表す言葉。目で見てカタマリに見えたら、それは腫瘤と呼んでいいでしょう。具体的には、径が3cm以上の大きさの陰影を指すことが多いようです。
腫瘤影を形作る病変は、腫瘍のようにモコモコと大きくなる、外へ外へと進出していく性質を持つ疾患であることから、陰影の特徴としては、
辺縁が外に飛び出している=外向きに凸である
ことがポイントになります。
もちろんそういう病変は腫瘍が多いのですが、結核や非結核性抗酸菌のように、腫瘤を形成する感染症もこういう陰影を作ります。
腫瘤が大きくなってきて、一側肺の大部分を占めるようになってくると、腫瘤は当然、縦隔を圧してきます。そこで縦隔、気管が健側にshiftするようになってきます。
…というのが原理的には正しいのですが、実際、こういう病変を見ることはほとんどありません。上の写真も、実は胸水によるものであったりします。ナゼか。
それは、一側を占めるような巨大な腫瘍が存在するような症例が少ないからであります。
通常、悪性腫瘍はある程度の大きさになると、何らかの症状が出てきます。肺癌であれば呼吸器症状が出ますし、そうでなくても腫瘍が栄養を奪い取り、「だるい、しんどい」「微熱」「苦しい」というような症状が見られたり、果ては悪疫質となり致命的になったりすることもあります。
特に一側胸郭を占めるような巨大な腫瘍になると、それを持った状態で生存すること自体が困難になるのです。ですから時々見かける巨大腫瘤は、肺癌ではなくて大量の胸水であったり、腫瘤であっても良性や縦隔腫瘍などであったり、というケースが多いのですね。