以前、取り急ぎ「気胸と違って空気漏れを伴うことなく、肺内の空気がなくなって肺がぺちゃんこになった状態」と書きました。あながち的外れではありませんが、もう少し正確に書くために、Fleischner Society: glossary of terms for thoracic imaging.(Radiology 2008)を珍しく引用しましょう。
肺のすべて、または一部がしぼむこと。
う〜んシンプル。さらに引き続いて、
もっともよくある原因の一つは気道の閉鎖(例:気管支内新生物)による遠位の空気の吸収である。同義語のcollapseは、特に程度が強かったり、肺濃度が明らかに上昇しているときに、atelectasisに替わってしばしば用いられる。
レントゲンとCT:病変部の、濃度上昇に伴う容量減少が見られる。しばしば、葉間裂、気管支、血管、横隔膜、心臓、縦隔の位置異常を伴う。
(引用ここまで)
通常単に「無気肺」という時には、上述の機序のごとく、
気道の閉鎖によってそこより末梢の肺に存在する空気が吸収され、肺のすべて、または一部がしぼんだ状態
を指します。空気の出入りがなくなると、肺胞の周りに豊富にある毛細血管からどんどん空気が吸収されて、やがてなくなってしまうのです。
胸水のところでも書きましたが、気道が閉鎖する、という機序ではなく、胸水に圧されて生じた無気肺のことを特に圧迫性無気肺(compression atelectasis)とか、受動無気肺(passive atelectasis)とかいいます。「普通の」無気肺とは機序が異なるための特別扱いですね。
話は普通の無気肺に戻りますが、この無気肺、「しぼむ」という言葉がキーワードです。元の大きさよりも、肺が縮む、小さくなるのです。その結果、無気肺になったエリアは周囲の構造物(葉間裂、気管支、血管、横隔膜、心臓、縦隔など)を引っ張り込みます。
周りを引っ張り込む病変は、辺縁が内向きに凸となります。無気肺以外に線維化病変も周りを引っ張り込みますが、下の図の通り、いかにも引っ張られている感が出ていますね。
そして、空気が抜けてしまうわけですから、そのエリアは真っ白になります(線維化病変でも辺縁が内向きに凸になりますが、病変のエリアがすりガラス影であったり、網状影であったりするので鑑別可能です)。
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