先に書いたように、正常肺のCTを撮ったとき、気管支は壁の厚みが0.5mm以上ある、割と中枢のレベルのものしか見えません。

上の写真で見えている白い棒状の、枝分かれしている構造物はほとんどが血管、ということです。気管支は中枢のホンの一部しか見えておりません。それは壁厚が0.5mmに満たないからですね。
ここで肺炎球菌肺炎のような浸潤影の成り立ちをおさらいします。戦いの場では肺胞腔内に「浸出液」があふれ出て、戦いが進むにつれ、浸出液内に山ほど微生物、防衛軍の屍骸が累積する。これが「膿」です。
病変は肺胞から肺胞へ、気道、Kohn孔を通して波及し、連続する病変が生じます。肺胞1個1個を拡大して見てみると…
こうやって連続性に肺胞が水浸しになることで、浸潤影が生じます。浸潤影は元々空気のあった肺胞腔が水浸しになってできた陰影、と考えて頂くと理解しやすいと思います。スポンジに水が染みこんだ感じでしょうか。
で、肺炎球菌は気管支エリアにはあまり興味がなく、気管支内には病変を作りません。それで、気管支内には空気が残ることになります。
すると、周りの肺胞領域(水浸し)との間に逆のコントラストがついて…
径が0.5mm以上ある(割と末梢までの)気管支は可視化してくるわけです。

それで、あたかも空気によって気管支が(逆に)造影されたかのように見える、air bronchogramという所見が得られます。胸部レントゲン写真でもCTでも、白くべったりした陰影の中に黒くて細い帯(太い線?)として見られます。

目をこらしてみてください。…PC上では見にくいでしょうか。CTも併せてご覧頂きましょう。

このair bronchogramがあると何を意味するか。まず陰影が肺内にあることがわかります。それも、肺胞内に水が滲出していて、気管支内には空気が残っている、そんなことがわかるのです。
胸部レントゲン道場に入門する