■拘束性障害
線維化を起こした箇所は基本的にカチカチです。健常な肺とは比較にならないくらいカチカチです。そのため、動きが悪くなります。特に線維化、蜂巣肺の形成は、ナゼかはわかりませんが、肺底部と胸膜直下優位(要するに肺の中でよく動くところ)に分布するもんですから、そこの動きが悪くなると困るのです。
一番動いてほしいところが動かなくなるため、全体的に肺の伸び縮みが悪くなります。これを、自由が奪われた状態になぞらえて「拘束性障害」といいます。拘束、というのは何というか、味わい深い?言葉で、縛り付けて身動きがとれないような状態ですね。
まさに、自由を奪われる、というか。よく学生さんに「日常生活で『拘束』されることってある?」と尋ねてみたりすると、バカ受けしたり、微妙な笑いであったり…まあ、何を連想してるんだか(笑)。ともかく、イメージで理解しておくと、忘れなくてよいですね。
■捻髪音fine crackle
間質性肺炎・肺線維症につきものの捻髪音(fine crackle)、別名「ベルクロラ音」などとも呼ばれるもので、(特に線維化のある)間質性肺炎の時に、しなやかさが失われた肺胞が、吸気で膨らむときになかなか膨らまず、最後(吸気時末)にバチンと鳴る音が集合して聞こえるものです。

ですから、線維化が生じやすい肺底部、背側でよく聞こえますし、基本、吸気時の終わりの方でのみ聞こえるはずなのです。
■フローボリューム曲線
さて、肺線維症・拘束性障害のフローボリューム曲線、どんなカタチだったでしょうか。
既出ですが、随分昔の記事ですので、取り上げてみましょう。
こんなカタチです。
どうしてこうなるのか。
肺胞領域の線維化のため、肺活量が低下することと、牽引性気管支拡張により細気管支が拡張し、末梢気道の抵抗が減ることによります。
肺活量が低下する、ということは、最初の一瞬で出てくる空気量(≒最初の一瞬のフロー)は健常者よりも少なくなり、フローボリューム曲線の最初の立ち上がり、ピークフローは、健常者よりも低くなります。
それ以降、末梢の空気が出てくる相のフローで、気道抵抗が健常者と同じであれば、そこから描かれる曲線はまっすぐ、図の点線のようになるはずです。
いつものように、50%息を吐いた状態を考えますと…。
フローも本来、ピークの50%になるはず。
しかし、先に書いたとおり、末梢気道は拡張しており、抵抗は減るのです。すると、フローはピークの50%まで落ちない、ということになります。
そしてその後は、徐々にではありますが「本来の」フローボリューム曲線に近づき、最終的には容量=0となった時点(最大呼気位)でフローも0になるのです。ですから、この場合のフローボリューム曲線は、上向きに凸の曲線になります…。
最終的には、こんなカタチの曲線になるのですね。
■間質性肺炎では肺拡散能(DLco)が低下します。
こちらも既出ですが、折角ですのでまとめて記載しておきます。
拡散させる能力を見る検査が、肺機能検査で出てくる「拡散能」です。当然酸素の拡散能が大事なのですが、測定が難しいことから通常は一酸化炭素(CO)を用いたDLcoを拡散能の指標として用います。で、DLcoが低下する病態を拡散障害と言います。
間質性肺炎では、間質が炎症のために浮腫を来たし分厚くなってきます。その結果、本来ですとごく薄い、肺胞腔と毛細血管の間が分厚くなり、酸素の拡散がしにくくなる、拡散障害といわれる状態になるのです。

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