2013年03月06日

胸部レントゲン道場61・各論24・レントゲンで白くなる病態18・べったりと白くなる連続性の陰影から白と黒が混在する陰影へ・線維化とは5・肺線維症であんなことやこんなこと(拘束性障害・捻髪音fine crackle・フローボリューム曲線のカタチ・拡散障害)が起こるわけ

ということで、恒例?となりました脇道シリーズ、今回は間質性肺炎〜蜂巣肺を呈する肺線維症患者さんに起こってくる現象を理由づけましょう。既出のものもありますが、この機会にまとめておこうと思います。



■拘束性障害

線維化を起こした箇所は基本的にカチカチです。健常な肺とは比較にならないくらいカチカチです。そのため、動きが悪くなります。特に線維化、蜂巣肺の形成は、ナゼかはわかりませんが、肺底部と胸膜直下優位(要するに肺の中でよく動くところ)に分布するもんですから、そこの動きが悪くなると困るのです。


一番動いてほしいところが動かなくなるため、全体的に肺の伸び縮みが悪くなります。これを、自由が奪われた状態になぞらえて「拘束性障害」といいます。拘束、というのは何というか、味わい深い?言葉で、縛り付けて身動きがとれないような状態ですね。


まさに、自由を奪われる、というか。よく学生さんに「日常生活で『拘束』されることってある?」と尋ねてみたりすると、バカ受けしたり、微妙な笑いであったり…まあ、何を連想してるんだか(笑)。ともかく、イメージで理解しておくと、忘れなくてよいですね。




■捻髪音fine crackle

間質性肺炎・肺線維症につきものの捻髪音(fine crackle)、別名「ベルクロラ音」などとも呼ばれるもので、(特に線維化のある)間質性肺炎の時に、しなやかさが失われた肺胞が、吸気で膨らむときになかなか膨らまず、最後(吸気時末)にバチンと鳴る音が集合して聞こえるものです。


28捻髪音fine crackle図.jpg


ですから、線維化が生じやすい肺底部、背側でよく聞こえますし、基本、吸気時の終わりの方でのみ聞こえるはずなのです。




■フローボリューム曲線

さて、肺線維症・拘束性障害のフローボリューム曲線、どんなカタチだったでしょうか。
既出ですが、随分昔の記事ですので、取り上げてみましょう。


スライド79.JPG


こんなカタチです。
どうしてこうなるのか。


肺胞領域の線維化のため、肺活量が低下することと、牽引性気管支拡張により細気管支が拡張し、末梢気道の抵抗が減ることによります。


肺活量が低下する、ということは、最初の一瞬で出てくる空気量(≒最初の一瞬のフロー)は健常者よりも少なくなり、フローボリューム曲線の最初の立ち上がり、ピークフローは、健常者よりも低くなります。


スライド74.JPG


それ以降、末梢の空気が出てくる相のフローで、気道抵抗が健常者と同じであれば、そこから描かれる曲線はまっすぐ、図の点線のようになるはずです。


いつものように、50%息を吐いた状態を考えますと…。


スライド75.JPG


フローも本来、ピークの50%になるはず。


スライド76.JPG


しかし、先に書いたとおり、末梢気道は拡張しており、抵抗は減るのです。すると、フローはピークの50%まで落ちない、ということになります。


スライド77.JPG


そしてその後は、徐々にではありますが「本来の」フローボリューム曲線に近づき、最終的には容量=0となった時点(最大呼気位)でフローも0になるのです。ですから、この場合のフローボリューム曲線は、上向きに凸の曲線になります…。


スライド78.JPG


最終的には、こんなカタチの曲線になるのですね。


スライド79.JPG




■間質性肺炎では肺拡散能(DLco)が低下します。

こちらも既出ですが、折角ですのでまとめて記載しておきます。


拡散させる能力を見る検査が、肺機能検査で出てくる「拡散能」です。当然酸素の拡散能が大事なのですが、測定が難しいことから通常は一酸化炭素(CO)を用いたDLcoを拡散能の指標として用います。で、DLcoが低下する病態を拡散障害と言います。


6(狭義の)間質に炎症が起こる.JPG


間質性肺炎では、間質が炎症のために浮腫を来たし分厚くなってきます。その結果、本来ですとごく薄い、肺胞腔と毛細血管の間が分厚くなり、酸素の拡散がしにくくなる、拡散障害といわれる状態になるのです。


9間質が分厚くなるので拡散障害になる.jpg


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posted by 長尾大志 at 18:45 | Comment(0) | 胸部X線道場
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