まずはその濃度によって2つに分けます。
- べったりと真っ白、水濃度が連続性に拡がる、浸潤影っぽい影
- 薄い白色で、重なって存在する血管影が認識できる、すりガラス影
浸潤影はそのエリアの肺胞全体が水に置き換わった結果生じた影ですので、それに似た陰影が生じる現象としては、
- 浸出液の出てくる、細菌性肺炎
以外に、 - (大きな)腫瘍性疾患
- 胸水
- 無気肺
などが考えられるでしょう。
これらの鑑別のため、容量(volume)の変化=縦隔などの動き、辺縁の凸具合、air bronchogramなどを評価します。
細菌性肺炎では、連続性に肺胞が水浸しになることで、浸潤影が生じます。浸潤影は元々空気のあった肺胞腔が水浸しになってできた陰影、と考えて頂くと理解しやすいと思います。スポンジに水が染みこんだ感じとでもいいましょうか。ですから、原理的にはそのエリアの容量は変化しない、辺縁がまっすぐ、となるわけです。
また、air bronchogramの存在は、水で満たされた肺胞の中に、侵されずに残っている気管支の空気が見えていることを意味します。これが見られると浸潤影クサイですね。
それに対して腫瘍性疾患ではどうなるか。増殖していく病変ですから、辺縁は外向きに凸、となります。また、内容物が密であればあるほど、病変内を走る気管支は押しつぶされ、air bronchogramは見えなくなります。
逆に言うと内容が疎な場合、air bronchogramが見えることもありますが、それはまた他の機会で。今回は原則を理解しましょう。
また、胸水は肺外の胸郭内に存在する水のことですから、容量が多くなってくると縦隔を圧してきます。従って気管や縦隔は健側に圧される。また、肺外には気管支が存在しませんから、air bronchogramは生じません。
そして無気肺は、以前にも書いたように気管支が閉塞して肺胞に空気が出入りしなくなり、肺がしぼんでくるものですから、そのエリアの容量は減少します。とすると、気管や縦隔は患側に偏位し、横隔膜は挙上します。気管支内に空気は存在しなくなるため、air bronchogramは生じません。
ということで、べったりと真っ白、水濃度が連続性に拡がる陰影の鑑別ポイントは、以下のようになります。
- 容量不変・air bronchogramあり:浸潤影
- 容量増大・air bronchogramなし:腫瘍性疾患・胸水
- 容量減少・air bronchogramなし:無気肺
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