この機会に、過敏性肺炎についておさらいをして置きましょう。
吸入した抗原(主にカビ、Trichosporon asahi, Trichosporon mucoidesなど)によって、V型、W型アレルギーが起こり、細気管支末端周囲に強く間質性肺炎が生じます。
その結果、急性期に典型的には、小葉中心性に、飛び飛びに、すりガラス影が見られます。
急性型の診断には、病歴聴取が重要です。
季節性に発症、繰り返し起こる、抗原からの隔離で軽快、というアレルギー的な発症様式。
家屋(夏型過敏性肺炎)、職業(農夫肺)、ペット飼育や羽毛布団の使用(鳥飼病)、加湿器の使用(加湿器肺)、といった生活歴の聴取もカギになります。
…呼吸器疾患は、本当に病歴聴取がカギになる疾患が多いですね。
入院したら症状が軽快する、この時点でピンと来て、確定診断のための検査としては、カビに対する特異抗体があるのですが、なかなか商業ベースで気軽に測定できるものではありません。
それと、さんざん書いてきましたが、気管支肺胞洗浄液(BALF)中のリンパ球が増えるのが特徴です。また、過敏性肺炎のタイプ(原因抗原)によって、そのリンパ球のうちCD4+とCD8+、どちらが優位であるかが少し異なります。
夏型過敏性肺炎ではCD4+<CD8+、農夫肺や鳥飼病ではCD4+>CD8+となることが多いため、原因を推定することができるのです。
病理組織学的に、生検標本で肉芽腫を伴う胞隔炎を認めますが、これだけで確定診断はできません。病理が診断のゴールドスタンダードになり得ないことが間質性肺炎業界でしばしばあり、そこが初学者には少し難しい点かもしれません。
そういうことで、診断の確定は結局、環境誘発試験(入院して一旦良くなっていたものが、外泊してみて再増悪するかどうか)、抗原誘発試験、といった誘発試験もんになります。まあ、原因に対して反応が起こる、ということを確認して初めて診断に至るわけですね。
治療としては、これはもう抗原からの隔離が唯一かつ確実な治療と言えるでしょう(慢性型の場合は、隔離しても難しいことがありますが…)。
ただ家の中や職場に生えているカビ、であるとか、周りの環境に存在する抗原から隔離するのは時に困難を伴います。リフォームや転居・転職などには保険がききません(当たり前ですが…)ので、経済的に難しいこともあるのです。
抗原隔離だけで良くならない場合、あるいは、隔離が困難な場合、治療にステロイドを使用します。
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2013年03月22日
肺胞洗浄液の構成成分とその意義・肺胞洗浄液の成分についての話は置いといて、過敏性肺炎の特徴など
posted by 長尾大志 at 16:09
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| 間質性肺疾患シリーズ
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