2013年03月26日

難病患者さんの肺炎に対する抗菌薬治療2・肺炎ガイドラインによる「ターゲット」の違い

誤解を恐れずに極論しますと、これらのガイドラインは、患者さんの状態、発症の場によって「原因(分離)菌」が異なる、従って抗生剤を使い分ける必要がある、ということが柱としてあるのです。肺内には、常在菌というべきものはほとんどいないわけですが、病原性を持つ菌で、肺が好きな菌というものはいるわけです。肺の環境を好み、かつ、エアロゾル・微少な飛沫として空中に浮かぶことができる(つまり肺に入る経路を持つ)菌、それが肺炎の原因菌になりうるわけです。

たとえば、他人の「咳」「痰」「しぶき」を吸い込むことで感染が成立するような菌は、人混みに出かけたり、咳をしている子供に接触したりするような、「市中での生活」で肺炎の原因になります。


市中肺炎の原因菌

  • 肺炎球菌

  • H.influenzae(インフルエンザ菌)

  • マイコプラズマ

  • クラミドフィラ(クラミジア)

  • ウイルス(インフルエンザ、水痘他)



市中での生活で罹患する「市中肺炎」の原因菌はこれらであることが多いため、市中肺炎の治療は、まずはこれらの菌をターゲットとして行います。


ここで、肺炎球菌やH.influenzae(インフルエンザ菌)には通常ペニシリンなどのβラクタムを使いますが、マイコプラズマやクラミドフィラは非定型病原体といってβラクタムが効かない。ということで、これらの鑑別が必要になるわけです。


一方、病院に入院していると、市中で生活しているときに肺に進入するような菌は感染機会がなく、元々院内に住んでいるような菌が原因菌になります。それはやはりグラム陰性桿菌が主体。


特に、水周りなどには、それまでに入院していた肺炎患者さんが喀出したしぶきに含まれていた緑膿菌などが住み着いたりしているものです。 また、医療従事者の手にはMRSA がついていたりします。とすると、病院内で罹った「院内肺炎」の場合は、そういった菌を原因菌として考えるのが妥当、ということになります。


また、抗菌薬を使ったかどうか、というのも原因菌の推定に深く関与します。たとえば3世代セフェムを使うと菌交代で緑膿菌が残ります。広域抗生剤の長期投与はMRSAのリスクになりますし、そもそも抗菌薬を使うと、大なり小なり耐性がついてくるものなのです。


院内肺炎の原因菌はこのようにグラム陰性桿菌・緑膿菌・MRSAをはじめとする耐性菌であることが多いため、このような菌がターゲットとして想定されます。


また、最近定められた「医療・介護関連肺炎」、難病患者さんの肺炎はこの範疇に入ることが多いのではないかと思いますが、その定義は、以下の表の通りです。


医療・介護関連肺炎の定義

  • 長期療養病床または介護施設に入所

  • 90日以内に病院を退院した

  • 介護*を必要とする高齢者、身体障害者

  • 通院にて継続的に血管内治療*を受けている


  *介護…身の回りのことしかできず日中の50%以上をベッドで過ごす
  *血管内治療…透析・抗菌薬・化学療法・免疫抑制薬など


つまり、病院に入院してはおられない、在宅でありながら、病院内の環境に似た細菌に曝露する機会が多く、肺炎の原因菌がグラム陰性桿菌や耐性菌によることが多い、というグループになります。


今回のお話は難病患者さんの肺炎についてですので、具体的な治療に関しては、医療・介護関連肺炎ガイドラインに沿ってお話しします。


* 難病と在宅ケア(7月号)に改変の上掲載予定

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posted by 長尾大志 at 18:45 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説
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