2013年03月29日

難病患者さんの肺炎に対する抗菌薬治療5・肺炎の具体的治療の流れ3・推定原因菌にあった抗菌薬を投与・抗菌薬の簡単なまとめ

治療のお話をする前に、抗菌薬についておおまかな話をしておきましょう。抗菌薬には大きい区分である「系統」が何種類かあり、それぞれに「くせ」があります。また、同じ系統の中でもいくつかの区分がありますが、ここではよく肺炎治療に使われる代表的な薬剤を取り上げます。


話をわかりやすくするために、上で述べた耐性菌代表として緑膿菌に登場いただき、緑膿菌に効かない薬(耐性菌に使わない)と効く薬(耐性菌に使用する)に分けて考えましょう。


なお、ここに挙げたのは、コメディカルの方や患者さんも読まれることを考えて、本当に代表的な数種類のみです。ドクターの皆さんはもちろん、もっと多くの抗菌薬について習熟しておく必要がありますよ!



A. ペニシリン系

歴史上最初に作られた抗菌薬で、歴史があります。多くの改良を受けて、現在でも第一線で活躍しています。誤嚥性肺炎の原因になる嫌気性菌にも強いです。


代表例
緑膿菌に効果がない:スルバクタム/アンピシリン
緑膿菌に効果がある:タゾバクタム/ピペラシリン



B. セフェム系

経口薬でも注射薬でも広く使われている薬です。嫌気性菌には少し効果が劣ります。


代表例
緑膿菌に効果がない:セフトリアキソン
緑膿菌に効果がある:セフェピム



C. マクロライド系

ペニシリン系やセフェム系が細胞壁合成阻害薬であるのに対し、DNA合成を阻害します。そのため、細胞壁を持たない菌、細胞内寄生菌に対して効果があります。主に使われるのはマイコプラズマなどが想定されるときです。


一方で、あまりにも広く使われすぎたために、肺炎球菌やH.influenzae(インフルエンザ菌)に対しては耐性化が進んでいて、効かなくなってきています。緑膿菌に対しては元々効果がありません。


代表例
クラリスロマイシン、アジスロマイシン



D. キノロン系

肺炎球菌やH.influenzae(インフルエンザ菌)、さらには緑膿菌にまで広く効果があります。加えて、マクロライド同様に細胞壁を持たない菌、細胞内寄生菌に対して効果があり、いわば「万能」とも言える抗菌薬ですが、こちらも広く使われすぎの嫌いがあり、今後の耐性化が懸念されています。そのため、心ある臨床医はできるだけ大切に使おう、出し惜しみしようと心がけています。


代表例
経口薬:レボフロキサシン、ガレノキサシン、モキシフロキサシン
注射薬:レボフロキサシン、パズフロキサシン、シプロフロキサシン


キノロン系経口薬にはたくさんの種類がありますが、肺炎球菌への効果がよいのは上記の3種類で、特にこれらはレスピラトリーキノロンと呼ばれています。


注射薬は強力ですが、本当に必要とされる場面は重症なケースに限られます。それと、嫌気性菌には少し効果が劣りますので、誤嚥があると思われる場合には注意が必要です。



E. カルバペネム系

こちらも肺炎球菌やH.influenzae(インフルエンザ菌)、さらには緑膿菌にまで広く効果がありますが、細胞壁を持たない菌には効果がありません。それ以外の菌には嫌気性菌、緑膿菌を含めほぼ万能で、キノロン系同様、心ある臨床医はできるだけ大切に使おう、出し惜しみしようと心がけています。


代表例
メロペネム、ドリペネム、イミペネム・シラスタチン、ビアペネム



F 抗MRSA薬

これまでに書いた抗菌薬はいずれも、MRSAには効果がありません。それだけMRSAの耐性はキツイのだということです。MRSAが原因であると考えられる感染症に対しては、専用の薬剤がありますから、それを使います。


代表例
バンコマイシン、テイコプラニン、リネゾリド


* 難病と在宅ケア(7月号)に改変の上掲載予定

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posted by 長尾大志 at 10:41 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説
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