有名な緒方洪庵ではありません。あまり一般的には知られていませんが、緒方洪庵よりも先に種痘の方法を確立し、わが国における種痘の開祖と言われている偉人であります。
全く不勉強な私は「ビジネス発想源」の記事ではじめて緒方春朔のことを知りました。
福岡県朝倉市のホームページにもエピソードが詳しく載っています
種痘とは天然痘(てんねんとう)に対するワクチンです。天然痘は以前、治療法がなく死に至る病であり、世界中で大変恐れられていました。
時は江戸時代、天然痘が猛威をふるい、多くの人々が亡くなっていました。緒方春朔は鎖国の時代に大変な苦労をして独学で種痘の研究を行い、理解のある庄屋さんの子らを実験台として種痘の方法を確立したのです。
緒方春朔の偉大なところは、もちろんこの先駆的な業績もさることながら、この方法を秘匿することなく全てオープンにしたことである、と述べられています。当時から(今も似たようなところはありますが…)医術は秘伝である、が常識で、ほとんどの医者は自身の技術を他の医者に教えることはなかったといいます。
しかしながら彼は、教えを請うもの全てに分け隔てなく教えた。彼の書いた「種痘必順辨」の序文にはこうあるといいます。
「崑山の玉、取らずば何ぞ光輝あらんや」(崑山之玉不取何有光輝)
いくら崑山(中国の地名)の宝玉と言っても、手に取らなければその輝きに何の意味があるのだろう、たとえ価値あるものでも、誰もが使えなければ意味がない、ということでしょうか。
このフレーズに、大いに共感した次第であります。「医聖」とよばれたような方ですから、私なぞまったく足下にも及ばないことはわかりきっておりますが、このエピソードを知る前から、「役に立つ知識を自分だけで抱え込んでいてはダメだな」と思って情報発信をしていた私としては、姿勢が間違ってはいなかったと勇気づけられたのです。
このブログを書き始めた頃、とある先生から「僕は授業のスライドとかを絶対公開しない。手の内を見せることになるし、真似されてコピーされるから。」みたいなことを言われました。
ご高名な先生だと、スライドのコピーを絶対に頂けないこともあります。
先生が心血を注いでこられたご研究の成果を、気軽にコピペなぞされてはかなわん、ということなのだと思います。
そのお考えが理解できなくもありませんが、素晴らしいもの、価値があるものだからこそ、誰もがアクセスできるように、という考えもあっていいんじゃないか、とも思うのです。まあ、私なんぞの苦労はコピペされる程度のモノ、と言われますと、全くその通りなのですが。
緒方春朔が「天然痘にかかる患者さんを少しでも減らしたい」という思いで種痘を開発し、それを多くの人に伝えたように、私の目的は「呼吸器内科の知識をできる限りわかりやすく多くの人にお伝えすること」。その向こうには「できるだけ多くの患者さんが救われるように」という思いがあります。
人類史上もっとも「情報の共有」が容易になっている今、多くの方に呼吸器内科を身近に感じてもらい、レベルアップを果たして頂くことに価値を見出して、まだまだこのブログは続いていく予定です。
あ、もちろん、本を買わなくてもいいよ、ということではありませんよ(笑)。
全然売れないと、せっかくお声掛けいただいた出版社さんに申し訳ないですから…。購入いただける方には、しっかり(諸事情からブログに載せにくい)書き下ろし記事もサービスしています。私からの気持ちです。
2013年04月21日
この記事へのコメント
コメントを書く