黒くなる、あるいは白くなる、とコトは単純にいかない病態があります。これまでに空洞・蜂巣肺などを紹介してきましたが、あと少し。
気管支拡張症。気管支が拡張する疾患です。なぜ気管支が拡張するのか。
気管支壁が感染などで破壊され、修復の過程で拡張するのです。原因となる疾患としては幼少期の細菌性肺炎や麻疹、百日咳などが知られていますが、最近は小児にも手当たり次第に抗菌薬を使われるので、そういった例は少なくなっているようです。成人では慢性炎症、特に肉芽腫を作る抗酸菌感染や、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)などによって生じます。かつては結核菌によるものが多かったのですが、最近では非結核性抗酸菌による慢性感染が原因となることが多いようです。
それ以外にも先天性に気管支が脆弱であったり、線維化によって気道壁が破壊されたり、という原因もあります。幼少期は粘膜が未熟で弱いために急性の炎症でも気道壁が破壊されます。
成人での抗酸菌感染症で説明されているメカニズムでは、慢性の炎症を反映して、まず粘膜が肥厚してきます(壁肥厚)。で、そういう慢性感染症のうち肉芽腫を作るもの(これがやはり抗酸菌感染が多い)が、気管支粘膜のウラ(粘膜直下)に肉芽腫を作ってきます。その肉芽腫が、粘膜周囲の平滑筋や気管支軟骨を破壊すると言われています。
気管支の構造が破壊され、それが修復される過程で気管支壁がビロンビロンに拡がる、というかゆるんでくる。それで気管支の径が拡張してくるのです。
壁の肥厚と径の拡張によって、普段は見えない、または見えにくい気管支(の壁)が可視化してきて、よく見えるようになってくるのが気管支拡張症の画像所見です。
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