2013年09月18日

在宅人工呼吸療法症例におけるご質問・基本的な考え方

在宅酸素と在宅人工呼吸。同じようなものかと思われがちですが、似て非なるものです。さらにいえば、在宅持続陽圧換気は全く異なるものです。


何となく一般のイメージとしては、在宅酸素<在宅人工呼吸???みたいなところがありますが(ないですか…)、コレもちょっと意味合いが違います。直接比較すべきものではありませんね。


在宅酸素はT型呼吸不全、つまり酸素が不足しているときに、不足している酸素を補うために行われます。


それに対して在宅人工呼吸はU型呼吸不全、すなわち換気が不足しているときに、換気をむりやりしてもらうために行うのです。


もちろん、T型呼吸不全は慢性に経過するとU型になりますから、在宅酸素をやっている患者さんが在宅人工呼吸も併用、という経過をたどることもありますが、そうではないこともけっこうある、ということです。


一例を挙げると、神経筋疾患症例においては、肺は悪くないけれども、肺を動かす筋肉、指令する神経の問題で胸郭運動が低下→換気量が低下、ということになるのです。


肺は悪くないので、昨日書いたような感染から急性増悪を来すとか、そういったことはあまり考える必要はないでしょう。気をつけるべきは、呼吸数、換気量がこちらの設定通りに作動しているか、というところです。


酸素量はSpO2を見ればすぐにわかりますが、二酸化炭素量(≒換気量)をダイレクトに知ることは難しいですね。そのため、人工呼吸器のモニターを確認することが重要になるのです。設定通りに動いているか、漏れはないか、マスクのフィッティングは良好か…などなど、チェックする項目を決めてしっかり確認しましょう。


もちろん肺が悪いケースもあります。特に、在宅酸素と併用するようなケースでは、昨日述べたような感染時の対処にも注意が必要ですし、呼吸の深さやパターンによってFiO2が変化しますから、換気の乱れでSpO2が乱高下することもあります。こういうこともある、ということは知っておかれる方がいいと思いますので、リンク先をご一読ください。



最後に、在宅持続陽圧換気について一言。


在宅持続陽圧換気は、睡眠時無呼吸症候群の「閉塞しているところの、通りをよくする」ために行う、という一点の理解で差し支えないでしょう。常に同じ圧を流していますので、換気は完全に患者さんが行います。どちらかというとメタボとか、そういう関係の患者さんが多いので、肺が悪いというわけではないですね。


ですからこちらも、特段呼吸器専門的に気をつけるべきこと、というのはないでしょう。装着が定期的に、忘れることなくできているか、マスクフィッティングはどうか、漏れはないか、といった基本的なことであろうと思います。


何気なく投与している酸素についてちゃんと考えるを最初から読む

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この記事へのコメント
長尾先生
勉強になりました。わかっていそうで、わかっていなかった新鮮なこともありました。ありがとうございました!
ついでと言っては失礼ですが、今度お時間とスペースがおありなときに
COPDと間質性肺炎の違い(疾患ベースとケアや治療など)を教えていただけるとうれしいのですが・・・
Posted by 高木 かすみ at 2013年09月19日 20:36
COPDと間質性肺炎。おっしゃるとおり、似て非なるものですし、その違いをしっかり理解していただくことはとっても重要だと思います。

というわけで、実は最近コメディカルの方々向けの講演会ではたびたびネタにさせていただいております。これが動画にできるとよいのですが、残念ながら会場の都合などで収録ができておらず、動画がございません。機会を見て記事なり動画なりを作成したいと思いますので、どうか気長にお待ちください。
Posted by 長尾 大志 at 2013年09月20日 16:16
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