2013年09月21日

第16回滋賀呼吸器感染症研究会見聞録2

19日の表記の会、最後に特別講演を大阪市立大学臨床感染制御学 掛屋 弘先生にお越し頂き、「呼吸器真菌症の治療戦略〜したたかなアスペルギルスとどう戦うか、その現状と課題〜」と銘打って1時間あまり、お話を頂きました。


いつも思うのですが、本当にスゴイ先生はお話が上手。専門にやっておられる、最新の知見をご存じであるのみならず、話のつかみ、展開の中で聴衆の興味を引くデータを挿入されて飽きない工夫をされていました。そんなわけで、本編のお話以外にも興味深いお話は多々ありました。



(以下、講演内容の覚え)
・日本初の侵襲性肺アスペルギルス症の診断確定例(剖検例)は、第5福竜丸で水爆実験の放射線を浴びた方。


・人は1日、数百〜数千個のアスペルギルス胞子を吸入しているが、普通の免疫能があれば発症することは少なく、免疫能のレベルによって病型も異なる。


・侵襲性肺アスペルギルス症は今でも診断が問題になる。βDグルカンは非特異的で偽陽性が多く、ガラクトマンナン抗原も偽陽性がある。CTでのhaloやcrescent signも特異的ではない。結局は生検など、とにかく菌体を得るのがベストだが…。


・結局はやはり、アスペルギルス症を生じうる状態かどうか、ここから入ることになる。そして臨床所見があうかどうか、そのあたりで、empiricに治療を開始せざるを得ない、ということになる。


・ガラクトマンナン抗原はアイスクリームを食べすぎて疑陽性になることもある。また、ガラクトマンナン抗原価の推移を治療効果の指標としない。


・アスペルギローマのcrescentと侵襲性肺アスペルギルス症のcrescentは異なるもの。アスペルギローマの方はモコモコ生えてきたカビの菌塊で、侵襲性の方は壊死した肺組織である。当初halo sign(周囲に出血)を呈し、その後壊死によりair crescent signに変化する。
(講演内容ここまで)


本当はもっともっと専門的なお話もありましたが、臨床にすぐフィードバックできるところをピックアップしました。


掛屋先生のお話で、元居られた某大学では教授に「どこそこに行きなさい」と言われたら、返事は意外な2つしかない、というエピソードも面白かったです。古き佳き?時代を思い起こさせるエピソードでした。掛屋先生、ありがとうございました。

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posted by 長尾大志 at 23:06 | Comment(0) | 学会・研究会見聞録
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