2013年12月06日

滋賀IPF研究会見聞録「特発性間質性肺炎の診断と治療のUP to date」

昨日は第4回滋賀IPF研究会という、まあ何というかマニアックというか…な会に参加してきました。


賢明な読者の方はおわかりと思いますが、シオノギ主催の会です。( ̄▽ ̄;)


そこでウチの新人Y先生が発表デビュー戦を飾り、堂々とハキハキと発表して頂きました。デビュー戦としては申し分なかったと思います。




その後特別講演として神奈川県立循環器呼吸器病センター副院長の小倉高志先生による、「特発性間質性肺炎の診断と治療のUP to date」と題した熱演を拝聴しました。


流石に、多くの症例を診ておられる、VATsもたくさんしておられる小倉先生だけに、特発性間質性肺炎診療を考える上で大切なこと、これまで何となく思っていたことを明確に言語化して頂き、とてもスッキリしました。いくつか備忘のため、メモに私見を交えてoutputしておきます。


■特発性間質性肺炎診療で大切な基本戦略

  • IPFをしっかり同定すること

  • ステロイドを使うべき例を見極めること

  • 肺癌の発症、急性増悪を起こしやすいことに注意する。



@IPFをしっかり同定すること

小倉先生は特発性間質性肺炎(IIPs)であれば早期からVATsを施行され組織学的情報も含めて評価されています。しかしなかなかそれはハードルが高いことも確か。


それゆえに、2011年版ATSガイドラインで挙げられているHRCTパターン別の読影がやはり重要になってきます。



*HRCTにおけるUIPパターン(4つの所見全てを満たす)

  • 胸膜直下、肺底部優位の分布

  • 網状影

  • 蜂巣肺(traction bronchiectasisはあってもなくても)

  • UIPパターンに矛盾する所見がない(後述)




*HRCTにおけるUIPの可能性ありパターン(3つの所見全てを満たす)

  • 胸膜直下、肺底部優位の分布

  • 網状影

  • UIPパターンに矛盾する所見がない(後述)


要するに蜂巣肺がないと、UIPパターンとは断言できない、ということですね。逆に蜂巣肺がなくても、分布などからUIPの可能性あり、とすることがあるってことにもなります。



*HRCTにおけるUIPに矛盾するパターン(7つの所見いずれかがある)

  • 上〜中肺優位の分布

  • 気管支血管束周囲の分布

  • 広範囲のすりガラス陰影(範囲が網状影の範囲より大きい)

  • 小粒状影が豊富に見られる(両側、上葉優位)

  • 不連続の嚢胞(多数、両側、蜂巣肺から離れた場所に存在)

  • びまん性のモザイクパターン/エア・トラッピング(両側、3葉以上に存在)

  • 肺区域や葉に拡がるコンソリデーション


これらの所見のいずれもUIPでは見られない所見です。問題になるのが3番目のすりガラス陰影(の範囲)で、ここの解釈が放射線科医の先生でも若干ずれることがある、と言われていました。


実際問題、これだけ厳密にHRCTでUIPパターンと判断しても、組織を見てみると異なっていた、という事例は少なからずあり、それゆえに病理組織を見ているのだ、という論理には説得力があります。


逆に、IPFでない症例を如何にピックアップするか、というところにからめて、以下のようなこともご紹介いただきました。


  • IPFでKL-6>3,000はあまりない。chronic HPや他の疾患を考えるべき。

  • 50歳以下の間質性肺炎は必ず2次性、を考える。特にIPFは老化の面もあり、高齢者の疾患である。

  • 胸膜下線状影curved linear shadowは細気管支の病変を表すので、膠原病や吸入物質による間質性肺炎を示唆する。



2次性のところでは、特にchronic HPにおける詳細な病歴聴取の重要性を説かれました。
鳩糞によるものでは、自宅から300mのところにある鳩小屋が原因であった例を挙げ、自宅から1km以内!の鳩小屋はチェックするようにしている、とのことでした。


他にクジャクの剥製で発症した例もあるそうです。住居関連では治療に難渋した例も紹介いただきました。


…まだまだご紹介したいので、もう少し続きます。

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posted by 長尾大志 at 17:31 | Comment(0) | 学会・研究会見聞録
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