COPDのように「気道が閉塞して呼気に抵抗が生じる」疾患では、病初期には少しばかり無理をして換気を増やすことで、二酸化炭素は特に問題なく保たれていると。それが、何十年もその状態でありつづけると、呼吸のたびにしている「少しの無理」が蓄積されてだんだん無理が利かなくなり、横隔膜をはじめとする呼吸筋の疲労、中枢化学受容器反応の鈍化などによって、少しずつ換気量が減ってくるのです。
中枢化学受容器の反応が鈍っている状況においては、末梢化学受容器(低酸素の刺激で呼吸を促す)が、なんとか頑張って呼吸をさせ、バランスを保っているのですが……。
そんな状態のところへ急に高流量の酸素を投与すると、低酸素の刺激で頑張っていたのが、突然その刺激がなくなってしまうわけで、結果、換気(呼吸)が抑制されて高二酸化炭素血症、低酸素血症となり意識障害を来すのです。このような状態をCO2ナルコーシス、と呼びます。
2022年09月12日
2022年09月07日
シン・COPD5
喘息が慢性になり、立派にリモデリングができてしまうと、喘息の特徴である変動性(症状が全くなくなる時間帯や期間がある)が目立ちにくくなります。
また喘息の喫煙者にCOPDが発症する、ということもあるため、鑑別・除外がしばしば困難になるのです。
他には心不全も高齢者に多く、咳・痰・呼吸困難といった症状がCOPDと似通っており、これまたしばしば合併例もあることから、鑑別に苦慮するケースも少なからず見受けられます。
今日はこれから看護学校さんで講義があります。バタバタしております。
また喘息の喫煙者にCOPDが発症する、ということもあるため、鑑別・除外がしばしば困難になるのです。
他には心不全も高齢者に多く、咳・痰・呼吸困難といった症状がCOPDと似通っており、これまたしばしば合併例もあることから、鑑別に苦慮するケースも少なからず見受けられます。
今日はこれから看護学校さんで講義があります。バタバタしております。
posted by 長尾大志 at 09:30
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2022年09月06日
シン・COPD4
日本呼吸器学会閉塞性肺疾患学術部会作成された「COVID-19流行期日常診療におけるCOPDの作業診断と管理手順」は、もちろん昨今のCOVID-19流行を踏まえて作成されたのですが、このプラクティス自体は(COVID-19流行にかかわらず)スパイロメトリー施行が困難な場合にも適用することが可能であるため、結果的に非専門医の先生方や家庭医・開業医の先生方のCOPD診断に大きく寄与することが期待されています。
その流れとしては、日常診療(検診などでのスクリーニングも含む)で喫煙歴を有する50歳以上のもの(既喫煙者を含む)に対してCOPD-Q(引用)もしくはCOPD-PS(引用)質問票を使用した問診を行い、総合点が4点以上ある場合COPDを疑って胸部X線検査および血液検査を実施します。
どちらの質問票を用いても、要はCOPDに特徴的な情報を拾い上げる項目について質問します。
上記質問票に含まれる項目としては、年齢、喫煙本数以外に、湿性咳嗽の有無、同年代の人と比較した息切れのしやすさ、労作時の喘鳴(COPD-Q)、過去4週間の息切れの頻度、湿性咳嗽の有無と頻度、呼吸に問題があることで以前に比較して活動しなくなったかどうかの自覚(COPD-PS)があります。
またこの手順において、COPD診断において除外すべき疾患として、喘息、気管支拡張症、間質性肺疾患、肺癌、肺血栓塞栓症などが挙げられています。このうち胸部画像で所見が見られるものは、HRCTを撮影すれば除外可能ですが、特段の所見を呈するものではない、気管支喘息とCOPDの鑑別は時に困難なものです。
その流れとしては、日常診療(検診などでのスクリーニングも含む)で喫煙歴を有する50歳以上のもの(既喫煙者を含む)に対してCOPD-Q(引用)もしくはCOPD-PS(引用)質問票を使用した問診を行い、総合点が4点以上ある場合COPDを疑って胸部X線検査および血液検査を実施します。
どちらの質問票を用いても、要はCOPDに特徴的な情報を拾い上げる項目について質問します。
上記質問票に含まれる項目としては、年齢、喫煙本数以外に、湿性咳嗽の有無、同年代の人と比較した息切れのしやすさ、労作時の喘鳴(COPD-Q)、過去4週間の息切れの頻度、湿性咳嗽の有無と頻度、呼吸に問題があることで以前に比較して活動しなくなったかどうかの自覚(COPD-PS)があります。
またこの手順において、COPD診断において除外すべき疾患として、喘息、気管支拡張症、間質性肺疾患、肺癌、肺血栓塞栓症などが挙げられています。このうち胸部画像で所見が見られるものは、HRCTを撮影すれば除外可能ですが、特段の所見を呈するものではない、気管支喘息とCOPDの鑑別は時に困難なものです。
posted by 長尾大志 at 18:23
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2022年09月05日
シン・COPD3
COPDを出来る限り早期に発見し、何が何でも禁煙をしてもらい、さらには出来る限りの介入を行うことが極めて重要なのですが、残念ながらこれまでの日本呼吸器学会によるガイドラインでは、COPDの診断基準として「気管支拡張薬吸入後のスパイロメトリーによる1秒率70%未満=閉塞性障害」を金科玉条のごとく示す必要がありました。
特に開業医の先生方や非専門の先生方のご施設で、スパイロメトリーを、気管支拡張薬吸入後に行う、というプラクティスは無理があり、COPD診断〜治療が普及しない1つの原因となっていたことは間違いありません。特にコロナ禍では専門施設であっても感染予防の観点から、飛沫が発生する(と見做される)呼吸機能検査が避けられるようになり、ますますCOPD診断のハードルが上がったのでした。
その対策として、日本呼吸器学会閉塞性肺疾患学術部会が「COVID-19流行期日常診療におけるCOPDの作業診断と管理手順」を作成し、2021年に公開されました。
特に開業医の先生方や非専門の先生方のご施設で、スパイロメトリーを、気管支拡張薬吸入後に行う、というプラクティスは無理があり、COPD診断〜治療が普及しない1つの原因となっていたことは間違いありません。特にコロナ禍では専門施設であっても感染予防の観点から、飛沫が発生する(と見做される)呼吸機能検査が避けられるようになり、ますますCOPD診断のハードルが上がったのでした。
その対策として、日本呼吸器学会閉塞性肺疾患学術部会が「COVID-19流行期日常診療におけるCOPDの作業診断と管理手順」を作成し、2021年に公開されました。
posted by 長尾大志 at 19:42
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2022年09月01日
シン・COPD2
COPDの原因は主にタバコの煙ですから、現在日本においてはCOPDを疑う病歴として、喫煙歴が極めて重要です。
高齢の喫煙者のうち約50%、特に60pack-years(喫煙指数で1200)以上の喫煙者で、約70%にCOPDが認められることがわかっています。逆に喫煙者のうちCOPDの発症率は15〜20%程度とされています。
そういうわけで、臨床現場ではひとまず
「喫煙歴があればCOPDの可能性を考慮する」
「喫煙歴のある40歳以上の成人で、労作時の呼吸困難・息切れや慢性の咳痰がある場合にはCOPDを積極的に疑うべきである」
という態度で間違いありません。
2022年時点で、COPDの病態そのものに対しては決定的な治療薬は存在せず、肺病変の進行を遅らせる唯一の手立てが禁煙です。またCOPDは高齢者に多く、併存疾患が複数存在することも多いものです。そのため出来る限り早期にCOPDを発見し、何が何でも禁煙をしてもらい、さらには併存疾患も見据えての呼吸リハビリテーション、セルフマネジメント教育などの介入を行うことが極めて重要なのです。
高齢の喫煙者のうち約50%、特に60pack-years(喫煙指数で1200)以上の喫煙者で、約70%にCOPDが認められることがわかっています。逆に喫煙者のうちCOPDの発症率は15〜20%程度とされています。
そういうわけで、臨床現場ではひとまず
「喫煙歴があればCOPDの可能性を考慮する」
「喫煙歴のある40歳以上の成人で、労作時の呼吸困難・息切れや慢性の咳痰がある場合にはCOPDを積極的に疑うべきである」
という態度で間違いありません。
2022年時点で、COPDの病態そのものに対しては決定的な治療薬は存在せず、肺病変の進行を遅らせる唯一の手立てが禁煙です。またCOPDは高齢者に多く、併存疾患が複数存在することも多いものです。そのため出来る限り早期にCOPDを発見し、何が何でも禁煙をしてもらい、さらには併存疾患も見据えての呼吸リハビリテーション、セルフマネジメント教育などの介入を行うことが極めて重要なのです。
posted by 長尾大志 at 10:15
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2022年08月31日
シン・COPD1
ちょっといろいろと立て込んでまいりました。いろいろ複雑な事情から、ちょっとの間画像記事はお休みとさせていただきます。
以前にも「COPDポイントレクチャー」としてCOPD特集をしたことがありますが、ずいぶん時間が経過し、またガイドラインの改訂も重ねられていることから、改めてこちらでCOPDを取り上げてみます。
COPD(chronic obstructive pulmonary disease:慢性閉塞性肺疾患)とは、主にタバコ煙などの有害粒子を長期間吸入することによって生じる、閉塞性障害を呈する疾患です。病態は大きく分けて2つ。
@肺胞領域に炎症が生じ、その結果プロテアーゼ賦活、酸化ストレス等が引き起こされて肺胞隔壁が徐々に障害され、いつのまにか消失しているという気腫性病変。
A気管支粘膜の炎症によって杯細胞や粘液栓の増生、分泌物・粘液の増加が起こる気道病変。
以前は@を肺気腫(気腫)、Aを慢性気管支炎、と呼んでいましたが、いまではそれらを含んだ名称「COPD」が一般的に用いられています。気腫、という言葉は病理学の領域や胸部画像、特にCTで使われる用語として残っています。
COPDと一口に言っても、気腫と気道病変は均等に生じるものではなく、気腫が優位なもの(気腫型)、気道病変が有意なもの(非気腫型)がありますが、日本人には気腫型が多く、典型的な身体所見や画像所見を呈するのも気腫型です。
以前にも「COPDポイントレクチャー」としてCOPD特集をしたことがありますが、ずいぶん時間が経過し、またガイドラインの改訂も重ねられていることから、改めてこちらでCOPDを取り上げてみます。
COPD(chronic obstructive pulmonary disease:慢性閉塞性肺疾患)とは、主にタバコ煙などの有害粒子を長期間吸入することによって生じる、閉塞性障害を呈する疾患です。病態は大きく分けて2つ。
@肺胞領域に炎症が生じ、その結果プロテアーゼ賦活、酸化ストレス等が引き起こされて肺胞隔壁が徐々に障害され、いつのまにか消失しているという気腫性病変。
A気管支粘膜の炎症によって杯細胞や粘液栓の増生、分泌物・粘液の増加が起こる気道病変。
以前は@を肺気腫(気腫)、Aを慢性気管支炎、と呼んでいましたが、いまではそれらを含んだ名称「COPD」が一般的に用いられています。気腫、という言葉は病理学の領域や胸部画像、特にCTで使われる用語として残っています。
COPDと一口に言っても、気腫と気道病変は均等に生じるものではなく、気腫が優位なもの(気腫型)、気道病変が有意なもの(非気腫型)がありますが、日本人には気腫型が多く、典型的な身体所見や画像所見を呈するのも気腫型です。
posted by 長尾大志 at 18:17
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2021年05月24日
COPDとその増悪について、再考7
先にも述べましたが、増悪に関する話をすると必ず問題になるのが、肺炎が起こっている場合です。もともとCOPDでは気道のクリアランスも良くないですし、しばしば肺炎を起こしてくることが知られています。で、肺炎を起こすと基礎の状態よりも、一段階悪くなるわけです。健康な方でも、肺炎を起こすと呼吸状態も悪くなりますし、痰も増えるし咳も増えるし息も苦しくなる。ということはCOPDに肺炎が合併すると、当然普段よりも状態が悪くなる。それを「増悪」と呼ぶかどうか、ということです。
ここは問題というか、実ははっきりして決まってないというか、恣意的な部分もあり、必ずしも明らかに「肺炎だけ」が起こっているという場合は増悪に入れないという考え方があるのです。ガイドラインを作っている委員の先生方の立場にもよりますが、肺炎を増悪に入れてしまうと、「使用することで肺炎の頻度が高くなる薬剤」が不利になる、的な事情もあったりなかったりラジバンダリ。まあ、「増悪はあくまでCOPDそのものの『閉塞性障害』の悪化を言うのだ」と言われればそうですが。
例えばCOPD症例で肺炎が合併したことによって、普段よりは状態が悪い。呼吸音ではもちろんクラックルは聞こえるにしても、狭窄音(音連続性ラ音)方が聞こえない、というようなケースであれば、これはただただCOPDに肺炎が乗っかってきた(COPDプラス肺炎)けれども、COPDそのものの増悪ということにはしないという立場もあるわけです。
そういう時は抗菌薬は使うものの、全身ステロイドは使わないと。
実際、症例を色々みていると、その治療でよくなるケースも結構あるものです。なのでちょっとそういうところが定義であったり考え方であったり、少し違ったりするところもあるのかなという風には思います。
ここは問題というか、実ははっきりして決まってないというか、恣意的な部分もあり、必ずしも明らかに「肺炎だけ」が起こっているという場合は増悪に入れないという考え方があるのです。ガイドラインを作っている委員の先生方の立場にもよりますが、肺炎を増悪に入れてしまうと、「使用することで肺炎の頻度が高くなる薬剤」が不利になる、的な事情もあったりなかったりラジバンダリ。まあ、「増悪はあくまでCOPDそのものの『閉塞性障害』の悪化を言うのだ」と言われればそうですが。
例えばCOPD症例で肺炎が合併したことによって、普段よりは状態が悪い。呼吸音ではもちろんクラックルは聞こえるにしても、狭窄音(音連続性ラ音)方が聞こえない、というようなケースであれば、これはただただCOPDに肺炎が乗っかってきた(COPDプラス肺炎)けれども、COPDそのものの増悪ということにはしないという立場もあるわけです。
そういう時は抗菌薬は使うものの、全身ステロイドは使わないと。
実際、症例を色々みていると、その治療でよくなるケースも結構あるものです。なのでちょっとそういうところが定義であったり考え方であったり、少し違ったりするところもあるのかなという風には思います。
posted by 長尾大志 at 14:39
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2021年05月23日
COPDとその増悪について、再考6
もう一つは増悪時にステロイド薬を使うのかどうか。特に全身ステロイドです。吸入ステロイドは増悪時みたいな時には使わないので、増悪時に全身ステロイドを使うかどうかがしばしば問題になります。
なんとなくの目安というか、特に非専門の先生であったりあるいは初期研修医の先生にお話をするときにある程度割り切って申し上げているのが、今ゼーゼーいってる、wheezesとかrhonchiとかそういう狭窄音(連続性ラ音)が身体所見として表現されている場合は、ステロイドを使ってもいいのではないかみたいな、クリアカットにお話しすると、そういうことになるかなと思います。
なんとなくの目安というか、特に非専門の先生であったりあるいは初期研修医の先生にお話をするときにある程度割り切って申し上げているのが、今ゼーゼーいってる、wheezesとかrhonchiとかそういう狭窄音(連続性ラ音)が身体所見として表現されている場合は、ステロイドを使ってもいいのではないかみたいな、クリアカットにお話しすると、そういうことになるかなと思います。
posted by 長尾大志 at 15:32
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2021年05月22日
COPDとその増悪について、再考5
まあ、昔は「肺は元々無菌で、そこに菌が入って肺炎になる」みたいなことが言われていて、私もなんとなくそう信じていたわけですが、これだけ外部と「ツーツー」で空気が入っている場所が無菌はありえんですよね…。あくまで菌の「パワーバランスの変化」で下気道感染症がおこると。
最後に北海道大学の鈴木先生から、「頻回増悪者とはどのようなタイプなのか?日本人集団に注目して」というタイトルでお話を頂きました。
頻回増悪者は1秒量も低め、予後も悪い、QOLも悪い、繰り返しやすい、やせ、などそりゃそうだ、というものが関与しているとこれまでに分かっています。
北海道コホートでは「臨床的に喘息」と考えられる症例は除外されていますが、それでも頻回増悪者の中に好酸球増多(≧300μL)、アトピー素因、気道可逆性がある!検査結果が得られた症例が少なからず含まれていて、ICSを使うと増悪が減った、予後が改善した、という結果が得られています。そして検査所見が喘息様でなくてICSを使った方は予後が悪かったと。ここでも…うーむ。
ということで、こちらのシンポジウムではどちらかというと「喘息という診断がなくても、末梢血好酸球が高いようなときにはICSを足していっていいのでは」という結論になってきたわけですが、当初の疑問「増悪時に抗菌薬を使うか」問題には明確な回答が得られずじまいでした。
でまあ現状の私の理解としては、一つの目安としては喀痰を調べて膿性痰があるとか、グラム染色して好中球がうじゃうじゃいるとか、それからもちろん肺炎球菌、インフルエンザ桿菌他プロテオバクテリア門、そういう気道感染症を起こすような菌がうじゃうじゃ見えたり、ということになると、迷わず抗菌薬を使ってもいいですよねという話になる。これは議論の余地なしで、もう一つの要素として発熱があったり、炎症反応というのがしっかり出ているようであれば、抗菌薬を使うということで今はやっているかなあと思います。
最後に北海道大学の鈴木先生から、「頻回増悪者とはどのようなタイプなのか?日本人集団に注目して」というタイトルでお話を頂きました。
頻回増悪者は1秒量も低め、予後も悪い、QOLも悪い、繰り返しやすい、やせ、などそりゃそうだ、というものが関与しているとこれまでに分かっています。
北海道コホートでは「臨床的に喘息」と考えられる症例は除外されていますが、それでも頻回増悪者の中に好酸球増多(≧300μL)、アトピー素因、気道可逆性がある!検査結果が得られた症例が少なからず含まれていて、ICSを使うと増悪が減った、予後が改善した、という結果が得られています。そして検査所見が喘息様でなくてICSを使った方は予後が悪かったと。ここでも…うーむ。
ということで、こちらのシンポジウムではどちらかというと「喘息という診断がなくても、末梢血好酸球が高いようなときにはICSを足していっていいのでは」という結論になってきたわけですが、当初の疑問「増悪時に抗菌薬を使うか」問題には明確な回答が得られずじまいでした。
でまあ現状の私の理解としては、一つの目安としては喀痰を調べて膿性痰があるとか、グラム染色して好中球がうじゃうじゃいるとか、それからもちろん肺炎球菌、インフルエンザ桿菌他プロテオバクテリア門、そういう気道感染症を起こすような菌がうじゃうじゃ見えたり、ということになると、迷わず抗菌薬を使ってもいいですよねという話になる。これは議論の余地なしで、もう一つの要素として発熱があったり、炎症反応というのがしっかり出ているようであれば、抗菌薬を使うということで今はやっているかなあと思います。
posted by 長尾大志 at 13:27
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2021年05月21日
COPDとその増悪について、再考4
長瀬先生のご講演では、なんにしても、COPD好酸球増多群では、増多していない群に比べて、増悪時のステロイドが効果的(ただし再増悪が多いかもしれない)であり、逆もまたそうである、つまりCOPDで好酸球が増多していない群では、増悪時のステロイドが効かないというか悪さするかも、という研究が紹介されました。まあ考えてみればそうかなという感じですが、このあたりも喘息成分が入っている、と解釈した方が納得しやすいところではあります。
とはいえ、一方で、喘息とCOPDの定義そのものが、(特に喘息)実のところガチっと決まっていないがゆえに、「好酸球が多かったらステロイドを」みたいな、ガチっと診断しなくても治療方針は決まるような論調になっているのかなあと感じました。
さらにはそういう症例で、IL-5抗体を使ってもいいのでは…となって、ああ、そういうことですか、となりました笑。
逆に好酸球が少ないような症例でも、増悪時に漫然とステロイドを使うことは、ひょっとすると今後のガイドラインでは見直されるかもしれない、という講演後の座長の先生からのコメントもありました。
続きまして、秋田大学の中山先生によります、「好中球性炎症(気道感染)による増悪」。
従来無菌とされてきた下気道にも細菌叢が存在していることが明らかになり、COPDや喫煙者だと粘膜の破綻などによってそれのバランスが崩れる、というところが増悪の原因ではないか、というお話でした。
たくさんの刺激的なお話がありましたが、長瀬先生のお話にも関連して、好酸球性炎症のある気道の方が細菌叢の多様性が高く、予後がよい、COPDや好中球性炎症があると細菌でもプロテオバクテリア門(ヘモフィルスやモラキセラ、シュードモナス属といった、毎度おなじみの菌群)が増え、多様性が失われる。COPDが重症になったり増悪したりするとプロテオバクテリア門が増えてファーミキューテス門(ストレプトコッカスやベイロネラ(歯垢菌)属)が減る、といった、なんとなく普段の喀痰を見ていて感じていたことが、もう遺伝子レベルで解明されているのだなあ、と感銘を受けました。
とはいえ、一方で、喘息とCOPDの定義そのものが、(特に喘息)実のところガチっと決まっていないがゆえに、「好酸球が多かったらステロイドを」みたいな、ガチっと診断しなくても治療方針は決まるような論調になっているのかなあと感じました。
さらにはそういう症例で、IL-5抗体を使ってもいいのでは…となって、ああ、そういうことですか、となりました笑。
逆に好酸球が少ないような症例でも、増悪時に漫然とステロイドを使うことは、ひょっとすると今後のガイドラインでは見直されるかもしれない、という講演後の座長の先生からのコメントもありました。
続きまして、秋田大学の中山先生によります、「好中球性炎症(気道感染)による増悪」。
従来無菌とされてきた下気道にも細菌叢が存在していることが明らかになり、COPDや喫煙者だと粘膜の破綻などによってそれのバランスが崩れる、というところが増悪の原因ではないか、というお話でした。
たくさんの刺激的なお話がありましたが、長瀬先生のお話にも関連して、好酸球性炎症のある気道の方が細菌叢の多様性が高く、予後がよい、COPDや好中球性炎症があると細菌でもプロテオバクテリア門(ヘモフィルスやモラキセラ、シュードモナス属といった、毎度おなじみの菌群)が増え、多様性が失われる。COPDが重症になったり増悪したりするとプロテオバクテリア門が増えてファーミキューテス門(ストレプトコッカスやベイロネラ(歯垢菌)属)が減る、といった、なんとなく普段の喀痰を見ていて感じていたことが、もう遺伝子レベルで解明されているのだなあ、と感銘を受けました。
posted by 長尾大志 at 18:04
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2021年05月20日
COPDとその増悪について、再考3
權先生のご講演では増悪の定義の歴史に触れられました。増悪の捉え方として「症状」によって(患者さんの申告で)捉えるか、治療に実際に変化(追加治療)があったかどうかで捉えるか、これは研究の手法として考えるべきことですが、その紹介もいただきました。
そもそも増悪の多くは炎症によって起こると考えられていますが、この炎症がいわゆる感染性の炎症(細菌感染・ウイルス感染)、そして感染でない炎症(好酸球性炎症)それから細胞があまり見られない乏細胞性(非炎症)などに分けられます。ただ増悪が多い病態の考え方においては、実はまだ各国で統一見解がなく、国別にみたガイドラインではいくらか異なる分類がなされています。例えばGOLDでは2020年からACOという言葉は使わないと宣言?をされていますし、喘息のガイドラインのGINAでも同様に、喘息があれば喘息として治療、喘息がなければCOPDとして治療ということで、ACOという言葉を使わない方向になっています。
一方で例えばスペインのガイドラインでは、ACOをCOPDの一つのフェノタイプとして認識されていたりするので、この辺は色々な立場や考え方によってズレがあるのですが、日本においては日本のガイドラインをまずは尊重して診療をされるということでいいのかなと思います。
どういう病名をつけるかということはともかく、まぁ結局喘息の要素があればICS/LABA、喘息の要素がなければLAMAからLABAという形、そして増悪が頻回である、あるいは末梢血好酸球が多い(>300/μL)、そういったことを満たすとICSを乗せる。その治療手順においては各国それほど差がないかなといった印象です。
引き続き帝京大学の長瀬先生による「好酸球性炎症による増悪」。
好酸球性炎症についての疫学、これまでの研究をまとめられましたが、末梢血好酸球が多い、という基準として(>2%)が採用されている根拠、だいたい増悪の20-30%を占めるということを示されました。また、末梢血好酸球が多い群は予後がいい、ということもわかっております。
そこで必ずわいてくる疑問が、「それって結局喘息じゃね?」というところですが、ここがどうもグレーですね。これまでの海外の報告では、「喘息と診断された症例」「COPDと診断された症例」に分けていろいろとバイオマーカーなどの解析をされていますが、そもそもの診断は本当に正しいのか、個人的にはまだ眉に唾をつけています…。
そもそも増悪の多くは炎症によって起こると考えられていますが、この炎症がいわゆる感染性の炎症(細菌感染・ウイルス感染)、そして感染でない炎症(好酸球性炎症)それから細胞があまり見られない乏細胞性(非炎症)などに分けられます。ただ増悪が多い病態の考え方においては、実はまだ各国で統一見解がなく、国別にみたガイドラインではいくらか異なる分類がなされています。例えばGOLDでは2020年からACOという言葉は使わないと宣言?をされていますし、喘息のガイドラインのGINAでも同様に、喘息があれば喘息として治療、喘息がなければCOPDとして治療ということで、ACOという言葉を使わない方向になっています。
一方で例えばスペインのガイドラインでは、ACOをCOPDの一つのフェノタイプとして認識されていたりするので、この辺は色々な立場や考え方によってズレがあるのですが、日本においては日本のガイドラインをまずは尊重して診療をされるということでいいのかなと思います。
どういう病名をつけるかということはともかく、まぁ結局喘息の要素があればICS/LABA、喘息の要素がなければLAMAからLABAという形、そして増悪が頻回である、あるいは末梢血好酸球が多い(>300/μL)、そういったことを満たすとICSを乗せる。その治療手順においては各国それほど差がないかなといった印象です。
引き続き帝京大学の長瀬先生による「好酸球性炎症による増悪」。
好酸球性炎症についての疫学、これまでの研究をまとめられましたが、末梢血好酸球が多い、という基準として(>2%)が採用されている根拠、だいたい増悪の20-30%を占めるということを示されました。また、末梢血好酸球が多い群は予後がいい、ということもわかっております。
そこで必ずわいてくる疑問が、「それって結局喘息じゃね?」というところですが、ここがどうもグレーですね。これまでの海外の報告では、「喘息と診断された症例」「COPDと診断された症例」に分けていろいろとバイオマーカーなどの解析をされていますが、そもそもの診断は本当に正しいのか、個人的にはまだ眉に唾をつけています…。
posted by 長尾大志 at 17:49
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2021年05月19日
COPDとその増悪について、再考2
まずは日本大学權先生の『COPD増悪期の分類』というお話。
COPD の増悪期に関して、まず日本呼吸器学会のガイドライン2018の記載を見ますと、「COPDの増悪とは、息切れの増加、咳や痰の増加、胸部不快感・違和感の出現あるいは増強などを認め、安定期の治療の変更が必要となる状態をいう。ただし、他疾患(心不全、気胸、肺血栓塞栓症など)の先行の場合を除く。症状の出現は急激のみならず緩徐の場合もある。」と定義されています。
一方で世界的なガイドラインであるGOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)では、定義を「An exacerbation of COPD is defined as an acute worsening of respiratory symptoms that results in additional therapy.」と、割とそっけなく書いています。まあ、普段より悪くなって、普段以上の治療が必要、って感じです。
増悪の原因として多いのは、呼吸器感染症と大気汚染とされていますが、約30%の症例では増悪の原因が特定できないとされています。治療でしばしば問題になるのが抗菌薬を増悪時に使うのかというところです。
すごく大雑把な「COPD増悪時薬物療法」の基本は、俗にABCアプローチといわれているもので、A:Antibiotics|抗菌薬、B:Bronchodilators|気管支拡張薬、C:Corticosteroids|ステロイド薬ということになっていますね。この中で、増悪時に気管支拡張薬を使うということに関しては、まあまあ議論なく皆さん同意いただけるかと思うのですが、必ず問題になるのが抗菌薬を使うかどうかっていうところです。
抗菌薬に関しては本当に色々と議論がありますが、そもそも増悪の原因として細菌感染が関与している可能性がまあ結構あるというのが背景にあるために、以前からCOPDが悪くなって入院してきたら抗菌薬もいっとこうかみたいな感じでされていたかと思います。ただ昨今はやはりAMR、薬剤耐性化の問題もあって、不要な抗菌薬はなるべく使わないでおきたいというのが大きな考え方になっているので、その時にどうするかということが議論になってきたように思います。
で、GOLDのガイドラインでは、なんと肺炎は「増悪の鑑別診断」とされている、つまり増悪には含まれません。あくまで肺炎のない「いつもより悪い状態」が増悪ということです。肺炎だったらまあ抗菌薬を使いますし。ここには議論の余地がない。で、増悪に対しての抗菌薬は「細菌感染の所見があったら考慮」。
日本のガイドラインはここの定義自体がグレーで、「他疾患(心不全、気胸、肺血栓塞栓症など)の先行の場合を除く。」なので肺炎は除外されないとも取れる、微妙な書き方になっています。
吸入薬(の新製品)に絡んだ臨床試験では、そういうわけで増悪には肺炎を含まないのが基本です。肺炎は別扱い。で、なぜこの「増悪」が昨今取り上げられるかというと、トリプル製剤(ICS/LABA/LAMA)に代表される吸入薬の新製品の効果として「増悪の回数を減らした」という項目があるから、なんですね。
COPD の増悪期に関して、まず日本呼吸器学会のガイドライン2018の記載を見ますと、「COPDの増悪とは、息切れの増加、咳や痰の増加、胸部不快感・違和感の出現あるいは増強などを認め、安定期の治療の変更が必要となる状態をいう。ただし、他疾患(心不全、気胸、肺血栓塞栓症など)の先行の場合を除く。症状の出現は急激のみならず緩徐の場合もある。」と定義されています。
一方で世界的なガイドラインであるGOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)では、定義を「An exacerbation of COPD is defined as an acute worsening of respiratory symptoms that results in additional therapy.」と、割とそっけなく書いています。まあ、普段より悪くなって、普段以上の治療が必要、って感じです。
増悪の原因として多いのは、呼吸器感染症と大気汚染とされていますが、約30%の症例では増悪の原因が特定できないとされています。治療でしばしば問題になるのが抗菌薬を増悪時に使うのかというところです。
すごく大雑把な「COPD増悪時薬物療法」の基本は、俗にABCアプローチといわれているもので、A:Antibiotics|抗菌薬、B:Bronchodilators|気管支拡張薬、C:Corticosteroids|ステロイド薬ということになっていますね。この中で、増悪時に気管支拡張薬を使うということに関しては、まあまあ議論なく皆さん同意いただけるかと思うのですが、必ず問題になるのが抗菌薬を使うかどうかっていうところです。
抗菌薬に関しては本当に色々と議論がありますが、そもそも増悪の原因として細菌感染が関与している可能性がまあ結構あるというのが背景にあるために、以前からCOPDが悪くなって入院してきたら抗菌薬もいっとこうかみたいな感じでされていたかと思います。ただ昨今はやはりAMR、薬剤耐性化の問題もあって、不要な抗菌薬はなるべく使わないでおきたいというのが大きな考え方になっているので、その時にどうするかということが議論になってきたように思います。
で、GOLDのガイドラインでは、なんと肺炎は「増悪の鑑別診断」とされている、つまり増悪には含まれません。あくまで肺炎のない「いつもより悪い状態」が増悪ということです。肺炎だったらまあ抗菌薬を使いますし。ここには議論の余地がない。で、増悪に対しての抗菌薬は「細菌感染の所見があったら考慮」。
日本のガイドラインはここの定義自体がグレーで、「他疾患(心不全、気胸、肺血栓塞栓症など)の先行の場合を除く。」なので肺炎は除外されないとも取れる、微妙な書き方になっています。
吸入薬(の新製品)に絡んだ臨床試験では、そういうわけで増悪には肺炎を含まないのが基本です。肺炎は別扱い。で、なぜこの「増悪」が昨今取り上げられるかというと、トリプル製剤(ICS/LABA/LAMA)に代表される吸入薬の新製品の効果として「増悪の回数を減らした」という項目があるから、なんですね。
posted by 長尾大志 at 18:40
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2021年05月18日
COPDとその増悪について、再考1
胸部X線写真読影のお話も佳境に入ってきた感がありますが、amazonリンク先をご覧になった方はお分かりかもしれませんが、昨日時点で注文できなくなっていて、どうなってるんだろう?と心配しておりましたところ、18日現在どういう加減か注文できるようになっておりました!よかったです。
そして、やさしい胸部画像教室実践編、amazon様で1位をいただきました!!!ありがとうございます。

というわけで、ここにきてちょっと色々やらなくてはいけないことが山積みになってきており、ここで久しぶりに、少し胸部X線以外の話題を取り上げていきたいと思います。
まずはCOPDについて。実は先日行われた第61回日本呼吸器学会学術講演会でのシンポジウムで、「COPD増悪の再考」という、非常に興味深い演題があり、いろいろと考えさせられました。そこでのお話を聞いて考えたことを少しまとめていきたいと思います。
その前に、まず/初めに、なんですが、COPDの患者さんが「急に状態が悪くなること」を皆様何とおっしゃいますか?まさか急性増悪という言葉を使われてはいませんよね……。『COPD診断と治療のためのガイドライン第5版』をよくご覧ください……。どこにも「急性増悪」という用語はございません……。結構この用語を使っておられる方が多くてちょっと気になっていたので少し述べさせていただきました。
そして、やさしい胸部画像教室実践編、amazon様で1位をいただきました!!!ありがとうございます。

というわけで、ここにきてちょっと色々やらなくてはいけないことが山積みになってきており、ここで久しぶりに、少し胸部X線以外の話題を取り上げていきたいと思います。
まずはCOPDについて。実は先日行われた第61回日本呼吸器学会学術講演会でのシンポジウムで、「COPD増悪の再考」という、非常に興味深い演題があり、いろいろと考えさせられました。そこでのお話を聞いて考えたことを少しまとめていきたいと思います。
その前に、まず/初めに、なんですが、COPDの患者さんが「急に状態が悪くなること」を皆様何とおっしゃいますか?まさか急性増悪という言葉を使われてはいませんよね……。『COPD診断と治療のためのガイドライン第5版』をよくご覧ください……。どこにも「急性増悪」という用語はございません……。結構この用語を使っておられる方が多くてちょっと気になっていたので少し述べさせていただきました。
posted by 長尾大志 at 18:08
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2018年12月11日
COPDの治療薬(2018年12月現在)
LAMA
スピリーバ
:ソフトミストです。ぐるっと回す手順が、うまくいかない高齢者もおられます。
シーブリ
:カプセルに孔を開ける形式で、手順は煩雑です。
エンクラッセ
:アニュイティ・レルベア同様、手順は簡単です。
エクリラ
:こちらも手順はわかりやすいです。
LABA
LABA単剤で用いられる、というよりはICSやLAMAとの合剤で用いられるケースが多く、単剤の出番は比較的少ないと思います。
セレベント
:フルタイド
/アドエア
型のデバイスです。
オンブレス
:シーブリ
型のデバイスですので、手順が煩雑です。
オーキシス
:パルミコート
/シムビコート
型のデバイスです。残量表示はシムビコート
と同じで、目安になります。
LAMA/LABA
スピオルト
:スピリーバと同じデバイスです。
アノーロ
:レルベア
/アニュイティ
と同じデバイスです。
ウルティブロ
:シーブリ
/オンブレス
型のデバイスですので、手順が煩雑です。
ICS/LABA(喘息と共通ですが、COPDに保険適応があるものは下の3つです)
アドエア
レルベア
シムビコート
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スピリーバ

シーブリ

エンクラッセ

エクリラ

LABA
LABA単剤で用いられる、というよりはICSやLAMAとの合剤で用いられるケースが多く、単剤の出番は比較的少ないと思います。
セレベント



オンブレス


オーキシス




LAMA/LABA
スピオルト

アノーロ



ウルティブロ



ICS/LABA(喘息と共通ですが、COPDに保険適応があるものは下の3つです)
アドエア

レルベア

シムビコート

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posted by 長尾大志 at 19:00
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2018年11月14日
COPDの身体所見・診断と治療
■ COPD患者さんの身体所見、頸部のヒミツ
安静換気においては、ほとんどが呼吸を横隔膜が担っています。横隔膜が収縮することで下がり、弛緩することで上がる、この運動を利用して換気をしています。
COPD患者さんでは肺が膨らみます。その肺に横隔膜が押されて下がり、ぺったんこになる(平低化)わけです。COPD患者さんで肺の平低化が起こると、横隔膜が収縮しても(もともと下がってしまっているわけですから)それ以上ほとんど下がらない、動かないということで、横隔膜を利用した換気ができなくなってくるのです。
それではどうするか。ここで呼吸補助筋の出番です。特にその中でも大きな胸鎖乳突筋が頑張って、鎖骨と胸骨を引っ張り上げることによって、胸郭を少しでも挙上させて広げようとするのです。
24時間365日年がら年中、そうやって頑張り続けることによって、胸鎖乳突筋は肥大し、かなり目立つようになってきます。そのため進行したCOPD患者さんの頸部を見ると、胸鎖乳突筋が肥厚し目立つのです。
もう一つ、頸部の所見として気管が短縮して見えます。これは COPD の肺が下の方に膨らんでいくときに、気管〜気管分岐部〜肺門部というところがその肺の膨らみに合わせて下に引っ張り下げられるという現象が起こって、そのために頸部に見えている気管の長さが短くなってくるのです。
それから閉塞性障害がかなり強くなって、気管支の支えがほとんどなくなってくると、吸気でも気道が閉塞し抵抗が増して、胸郭を広げて胸腔内を陰圧にしてもなかなか吸気が入ってこなくて、つまり胸腔内が結構な陰圧になってしまいます。
それでCOPD患者さんでは吸気時に鎖骨上窩がペコンと陥凹します。COPD 患者さんはすごく痩せてきて、肋間もペラペラになってくるので肋間もペコンとへこむのです。
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安静換気においては、ほとんどが呼吸を横隔膜が担っています。横隔膜が収縮することで下がり、弛緩することで上がる、この運動を利用して換気をしています。
COPD患者さんでは肺が膨らみます。その肺に横隔膜が押されて下がり、ぺったんこになる(平低化)わけです。COPD患者さんで肺の平低化が起こると、横隔膜が収縮しても(もともと下がってしまっているわけですから)それ以上ほとんど下がらない、動かないということで、横隔膜を利用した換気ができなくなってくるのです。
それではどうするか。ここで呼吸補助筋の出番です。特にその中でも大きな胸鎖乳突筋が頑張って、鎖骨と胸骨を引っ張り上げることによって、胸郭を少しでも挙上させて広げようとするのです。
24時間365日年がら年中、そうやって頑張り続けることによって、胸鎖乳突筋は肥大し、かなり目立つようになってきます。そのため進行したCOPD患者さんの頸部を見ると、胸鎖乳突筋が肥厚し目立つのです。
もう一つ、頸部の所見として気管が短縮して見えます。これは COPD の肺が下の方に膨らんでいくときに、気管〜気管分岐部〜肺門部というところがその肺の膨らみに合わせて下に引っ張り下げられるという現象が起こって、そのために頸部に見えている気管の長さが短くなってくるのです。
それから閉塞性障害がかなり強くなって、気管支の支えがほとんどなくなってくると、吸気でも気道が閉塞し抵抗が増して、胸郭を広げて胸腔内を陰圧にしてもなかなか吸気が入ってこなくて、つまり胸腔内が結構な陰圧になってしまいます。
それでCOPD患者さんでは吸気時に鎖骨上窩がペコンと陥凹します。COPD 患者さんはすごく痩せてきて、肋間もペラペラになってくるので肋間もペコンとへこむのです。
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posted by 長尾大志 at 20:54
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2018年06月27日
COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2018[第5版]解説6・ACO問題
日本のガイドラインにおけるICSの位置づけは、第5版で「喘息病態の合併が考えられる場合(つまりACO)」と明記されてしまいました。それで、ACOをしっかり診断する目的で『ACO診断と治療の手引き』が出来たようなものです。
COPD症例のうち、
変動性・発作性がある
40歳以前に喘息を発症している
FeNO>35ppb
上記3項目のうち2項目あればACOと考え、1項目しか満たさない場合、以下のうち2項目以上を満たせば喘息と考えるのです。
アレルギー性鼻炎
気道可逆性
末梢血好酸球高値
IgE高値
第4版までは、喘息合併例に加えて増悪頻度が頻回であるケースにおいて、ICSが増悪頻度を減らす、という研究があり、ICSを併用されることがしばしばありました。しかしその後いくつかの研究で、ICSを併用すると増悪頻度は抑制されるものの、特に重症度の高い患者群において肺炎のリスクが高まる、という結果が新たに得られました。
これらから、ICSを闇雲にCOPDの重症例に対して使うというのは少し難しいところがある、ということになりまして、非専門医の先生が参照されるガイドラインのアルゴリズムには記載しないということになったようです。
ただこれまでも ICS/LABA などは重症の COPDに対して多く用いられており、今使用しているすべてのCOPD症例のICSを直ちに止めなければならない、ということはないと考えます。GOLDを見ても、増悪頻度が高ければICSを使うよう書かれていますし。
これまでの研究では、どのような症例では肺炎が起きやすい、とかはイマイチはっきりと示されていませんので何とも言えないところですが、肺炎を繰り返すようなケースでは、中止することも必要になってくるかもしれません。
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COPD症例のうち、
変動性・発作性がある
40歳以前に喘息を発症している
FeNO>35ppb
上記3項目のうち2項目あればACOと考え、1項目しか満たさない場合、以下のうち2項目以上を満たせば喘息と考えるのです。
アレルギー性鼻炎
気道可逆性
末梢血好酸球高値
IgE高値
第4版までは、喘息合併例に加えて増悪頻度が頻回であるケースにおいて、ICSが増悪頻度を減らす、という研究があり、ICSを併用されることがしばしばありました。しかしその後いくつかの研究で、ICSを併用すると増悪頻度は抑制されるものの、特に重症度の高い患者群において肺炎のリスクが高まる、という結果が新たに得られました。
これらから、ICSを闇雲にCOPDの重症例に対して使うというのは少し難しいところがある、ということになりまして、非専門医の先生が参照されるガイドラインのアルゴリズムには記載しないということになったようです。
ただこれまでも ICS/LABA などは重症の COPDに対して多く用いられており、今使用しているすべてのCOPD症例のICSを直ちに止めなければならない、ということはないと考えます。GOLDを見ても、増悪頻度が高ければICSを使うよう書かれていますし。
これまでの研究では、どのような症例では肺炎が起きやすい、とかはイマイチはっきりと示されていませんので何とも言えないところですが、肺炎を繰り返すようなケースでは、中止することも必要になってくるかもしれません。
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posted by 長尾大志 at 19:36
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2018年06月26日
COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2018[第5版]解説5・日本のガイドラインによる薬剤の選択
GOLDではこんなふうになっていますけれども、結局はLAMAか、LAMA/LABAか、LAMA/LABA/ICSか、っていうことですよね。分類、もう少しシンプルになりませんか?ということで日本のガイドライン第5版を見ると、シンプルなアルゴリズムにしてくださっています。
まず必要に応じてSABAかSAMA
⇒日常労作時の息切れがあればLAMAまたはLABA
⇒そしてしばしば増悪を認めるようであればLAMA/LABA
⇒そこにテオフィリンや喀痰調整薬を追加していく
…という、割とシンプルなアルゴリズムになっています。日常臨床であればそれで十分だと思います。
今日の午後は近江八幡市蒲生郡医師会講演会でのお話です。ちょうど今やっているようなお話を、症例ベースでやらせて頂きます。これから近江八幡市立総合医療センターに伺います。で、夕方大学に戻ったら会議2連続です。というわけで短めに。

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まず必要に応じてSABAかSAMA
⇒日常労作時の息切れがあればLAMAまたはLABA
⇒そしてしばしば増悪を認めるようであればLAMA/LABA
⇒そこにテオフィリンや喀痰調整薬を追加していく
…という、割とシンプルなアルゴリズムになっています。日常臨床であればそれで十分だと思います。
今日の午後は近江八幡市蒲生郡医師会講演会でのお話です。ちょうど今やっているようなお話を、症例ベースでやらせて頂きます。これから近江八幡市立総合医療センターに伺います。で、夕方大学に戻ったら会議2連続です。というわけで短めに。

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posted by 長尾大志 at 12:29
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2018年06月25日
COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2018[第5版]解説4・GOLD の分類による薬剤の選択
ですからその「増悪頻度」がガイドラインに載ることで、「増悪を減らす」薬のプロモーションになるにでは…とは、穿った見方でしょうか。
閑話休題、この GOLD の分類は、その分類に沿って薬を足していく、というロジックで進んでいきますが、治療薬の選択はこんな感じになります。
Group CやDでは、ICS を加えて増悪が持続するのであれば ICS を中止することも考慮せよ、となっています。
COPDポイントレクチャー
閑話休題、この GOLD の分類は、その分類に沿って薬を足していく、というロジックで進んでいきますが、治療薬の選択はこんな感じになります。
- Group A|気管支拡張薬1剤(LAMA or LABA or SABA)
- Group B|気管支拡張薬1剤(LAMA or LABA)、これで症状が改善しないならLAMA/LABAの合剤
- Group C|まずLAMA、それでも増悪が持続するならLAMA/LABA合剤、それでダメならICS/LABA合剤 に変更
- Group D|第一選択にLAMA/LABA、喘息のオーバーラップがあればICS/LABA、第一選択薬で増悪が継続すればLAMA/LABA /ICS3剤を併用、さらに増悪が持続すればロフルミラスト(現在日本未承認)とかマクロライドを追加せよとなっています
Group CやDでは、ICS を加えて増悪が持続するのであれば ICS を中止することも考慮せよ、となっています。
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posted by 長尾大志 at 21:29
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2018年06月24日
岡山協立病院さんで「胸部X線レクチャー」とオタ話
昨日はそういうわけで、岡山協立病院さんで「胸部X線レクチャー」をさせて頂きました。

「スーパー研修医」の呼び声も高い、岡山協立病院のY先生に、とある会で出会った縁でお招き頂いて実現したものですが、Y先生の企画力、実行力は本当に見習わねばなりません。我が身を顧みるに恥ずべきことだらけです。

参加された方は学生さん4割、初期研修医4割、コメディカルスタッフ2割、という割合でしたので、基礎の話を多めで進めましたが、終わってみると結構拙著の読者の方が多かったみたいでした。それでも、「本を読むのと話を聞くのはまた全然違いました!」というご感想を頂きました。

終了後の食事では、まさかのあの話題で一部の方々と大盛り上がりしてしまい、他の方がポカーン(゜Д゜)となりまして失礼いたしました。やはり自己紹介スライドは大切ですね!笑

Y先生はじめ岡山協立病院の先生方、事務の皆様、参加して頂いた研修医の先生方や学生さん(特にオタ話につきあってくれたM先生とFさん)、本当にありがとうございました。岡山はこれまでもいい思い出ばかりで、再訪できるのを楽しみにしています!

「スーパー研修医」の呼び声も高い、岡山協立病院のY先生に、とある会で出会った縁でお招き頂いて実現したものですが、Y先生の企画力、実行力は本当に見習わねばなりません。我が身を顧みるに恥ずべきことだらけです。

参加された方は学生さん4割、初期研修医4割、コメディカルスタッフ2割、という割合でしたので、基礎の話を多めで進めましたが、終わってみると結構拙著の読者の方が多かったみたいでした。それでも、「本を読むのと話を聞くのはまた全然違いました!」というご感想を頂きました。

終了後の食事では、まさかのあの話題で一部の方々と大盛り上がりしてしまい、他の方がポカーン(゜Д゜)となりまして失礼いたしました。やはり自己紹介スライドは大切ですね!笑

Y先生はじめ岡山協立病院の先生方、事務の皆様、参加して頂いた研修医の先生方や学生さん(特にオタ話につきあってくれたM先生とFさん)、本当にありがとうございました。岡山はこれまでもいい思い出ばかりで、再訪できるのを楽しみにしています!
posted by 長尾大志 at 20:20
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2018年06月22日
COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2018[第5版]解説3・mMRCスコア
具体的には、
あ、mMRC(modified Medical Research Council:修正MRC)息切れスケールについて、これまで書いていませんでしたね。これは息切れの度合いを数字で表すもので、5段階評価になります。
(COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2018[第5版]より引用)
CAT(COPD assessment test)質問票、これも似たような項目ですし、ここでは引用しないでおきます。すぐに検索できると思います。
ともかく、治療薬の選択に、単純な?肺機能よりも増悪の頻度と息切れが重要視されるようになった、というところなのですが、これもまあ、欧米の大人の事情が見えたり見えなかったり。
LAMAやLABAなどの気管支拡張薬によって、差が出てくるのが、「増悪の頻度を下げる」というところなのですが、「薬の御利益」としては、ちょっとわかりにくいですよね。
例えば年に1.5回増悪するという人が1.2回になっても、実感として「よかった」とはなりにくい。「増悪の頻度を下げる」って、そういう、処方行動に結びつきにくいところがあるような気がしますねぇ。
明日は岡山協立病院さんで、胸部X線読影レクチャーです。参加される皆様方、よろしくお願い申し上げます。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSe6ugTvEcFFESbf46DgtToywMcl3cyrseqPKxWZ3H2OkzH-Ug/viewform
COPDポイントレクチャー
- Group A|増悪が少なく(年間1回以下)、症状が軽い(mMRCが0〜1/CAT<10)
- Group B|増悪が少なく(年間1回以下)、症状が強い(mMRCが2以上/CAT10以上)
- Group C|増悪があり(年間2回以上または増悪による入院あり)、症状が軽い(mMRCが0〜1/CAT<10)
- Group D|増悪があり(年間2回以上または増悪による入院あり)、症状が強い(mMRCが2以上/CAT10以上)
あ、mMRC(modified Medical Research Council:修正MRC)息切れスケールについて、これまで書いていませんでしたね。これは息切れの度合いを数字で表すもので、5段階評価になります。
- グレード0|激しい運動をしたときだけ息切れがある
- グレード1|平坦な道を早足で歩く、あるいは緩やかな上り坂を歩くときに息切れがある
- グレード2|息切れがあるので、同年代の人よりも平坦な道を歩くのが遅い、あるいは平坦な道を自分のペースで歩いている時、息切れのために立ち止まることがある
- グレード3|平坦な道を約100メートル、あるいは数分歩くと息切れのために立ち止まる
- グレード4|息切れがひどく家から出られない、あるいは衣服の着替えをする時にも息切れがある
(COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2018[第5版]より引用)
CAT(COPD assessment test)質問票、これも似たような項目ですし、ここでは引用しないでおきます。すぐに検索できると思います。
ともかく、治療薬の選択に、単純な?肺機能よりも増悪の頻度と息切れが重要視されるようになった、というところなのですが、これもまあ、欧米の大人の事情が見えたり見えなかったり。
LAMAやLABAなどの気管支拡張薬によって、差が出てくるのが、「増悪の頻度を下げる」というところなのですが、「薬の御利益」としては、ちょっとわかりにくいですよね。
例えば年に1.5回増悪するという人が1.2回になっても、実感として「よかった」とはなりにくい。「増悪の頻度を下げる」って、そういう、処方行動に結びつきにくいところがあるような気がしますねぇ。
明日は岡山協立病院さんで、胸部X線読影レクチャーです。参加される皆様方、よろしくお願い申し上げます。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSe6ugTvEcFFESbf46DgtToywMcl3cyrseqPKxWZ3H2OkzH-Ug/viewform
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posted by 長尾大志 at 18:22
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2018年06月21日
COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2018[第5版]解説2・GOLD分類
ガイドライン第5版に「安定期 COPD の管理(治療)指針」の表が載っていますが、基本的にそんなに第4版と変わったわけではありません。管理・治療のための方策として特に目新しい項目が加わったわけではありませんし、使用する薬物も同じです。
大きな出来事としてはLAMA/LABAの合剤が発売されて、それを使ったエビデンスが出てきたということ。やはり売れて欲しい薬ですから、各社競ってエビデンス構築に勤しんでおられます。
第4版と第5版で変わったところとしては、重症度による薬剤の選択が挙げられるでしょう。第4版まではT期U期V期W期っていう「病期分類」、要は予測値に対する1秒量の度合いが薬剤選択の主な根拠でした。
病期の進行を目安に治療を乗せていきましょう、ということでしたが、最近は「症状」と「増悪の頻度」を目安に治療を考えるという考え方が、海外のCOPDガイドラインであるGOLDでのメインになっています。
GOLDの分類は、もはや閉塞性障害の度合いは評価に組入れずに、増悪歴があるかないかあるいはその回数と、息切れ症状(mMRC/CATスコア)によって四分割された ABCD のどこに入るかによって治療を考えていきましょうというものです。
COPDポイントレクチャー
大きな出来事としてはLAMA/LABAの合剤が発売されて、それを使ったエビデンスが出てきたということ。やはり売れて欲しい薬ですから、各社競ってエビデンス構築に勤しんでおられます。
第4版と第5版で変わったところとしては、重症度による薬剤の選択が挙げられるでしょう。第4版まではT期U期V期W期っていう「病期分類」、要は予測値に対する1秒量の度合いが薬剤選択の主な根拠でした。
- T期|軽度の気流閉塞:%1秒量≧80%
- U期|中等度の気流閉塞:50%≦%1秒量<80%
- V期|高度の気流閉塞:30%≦%1秒量<50%
- W期|きわめて高度の気流閉塞:%1秒量<30%
病期の進行を目安に治療を乗せていきましょう、ということでしたが、最近は「症状」と「増悪の頻度」を目安に治療を考えるという考え方が、海外のCOPDガイドラインであるGOLDでのメインになっています。
GOLDの分類は、もはや閉塞性障害の度合いは評価に組入れずに、増悪歴があるかないかあるいはその回数と、息切れ症状(mMRC/CATスコア)によって四分割された ABCD のどこに入るかによって治療を考えていきましょうというものです。
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posted by 長尾大志 at 18:54
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2018年06月20日
COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2018[第5版]解説1
先頃 COPD 診断と治療のためのガイドライン2018が改訂され、第5版になりました。それだけではなく昨年から今年にかけて、呼吸器領域の重要なガイドラインが立て続けに改訂され、今後も予定があるようです(成人肺炎、IPF、ACO、肺癌(これは毎年…汗)、そして近々喘息)。
ガイドラインというのは新しいエビデンスが出るとちょいちょい変わっていきます。その都度新しい知識を学ぶということも必要ですけれども、病態の本質についてはそんなにコロコロ変わるわけではないので、まず病態の本質をしっかり理解されておけば、ガイドラインが変わってもそうジタバタしなくてもいいのではないかと思います。
特に今回のCOPDガイドライン、第5版の改訂は、本質というよりは病態の解釈の部分が変わったりしていますね(例えば第4版では炎症といっていたのをやめてみたり…)。
あるいはトピック的なところではLAMAとLABA、あるいは合剤の問題、どちらが良く効くとか、ある患者さんに対してどの薬剤を使うべきかとか、そういうところは新しいエビデンスが改訂に反映されやすいわけですが、そういうところって、病態の本質が変わっているわけではないんですよね。
そこで、ここではガイドライン第5版 を参考に、多少新しいエビデンスが出たりガイドラインが変わったりしてもあまり変わらないであろう、COPD治療に関しての私見、私見といいますか、今のガイドラインの考え方をもう少し平たくしたものをご紹介したいと思います。
COPDポイントレクチャー
ガイドラインというのは新しいエビデンスが出るとちょいちょい変わっていきます。その都度新しい知識を学ぶということも必要ですけれども、病態の本質についてはそんなにコロコロ変わるわけではないので、まず病態の本質をしっかり理解されておけば、ガイドラインが変わってもそうジタバタしなくてもいいのではないかと思います。
特に今回のCOPDガイドライン、第5版の改訂は、本質というよりは病態の解釈の部分が変わったりしていますね(例えば第4版では炎症といっていたのをやめてみたり…)。
あるいはトピック的なところではLAMAとLABA、あるいは合剤の問題、どちらが良く効くとか、ある患者さんに対してどの薬剤を使うべきかとか、そういうところは新しいエビデンスが改訂に反映されやすいわけですが、そういうところって、病態の本質が変わっているわけではないんですよね。
そこで、ここではガイドライン第5版 を参考に、多少新しいエビデンスが出たりガイドラインが変わったりしてもあまり変わらないであろう、COPD治療に関しての私見、私見といいますか、今のガイドラインの考え方をもう少し平たくしたものをご紹介したいと思います。
COPDポイントレクチャー
posted by 長尾大志 at 19:35
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2011年02月15日
COPDポイントレクチャー8・栄養の重要性
肺炎、肺性心のいずれに対しても、筋力(特に下肢の)トレーニングが有効であるということはおわかりいただけたと思います。
しかし、問題はここから。
トレーニングで筋力増強をはかるには、材料、すなわち栄養素が必要となります。
実はCOPD患者さんは、息を吐きにくいところを無理して吐いているために、息をしているだけで健康な人よりも多くのカロリー(1.2-1.5倍くらい)を消費しているのです。
一方、ただでさえ、高齢になると食が細くなる上に、肺が過膨張となり、胃を圧迫するためにお腹いっぱい食べられない、逆に、お腹いっぱい食べると、胃が肺を圧迫し息苦しくなる、だんだん食べる量が減ってきます。
たくさんカロリーを消費して、あまり食べないということで、だんだんやせてくる、やせはじめると、まず脂肪がどんどん使われてカロリーを作るのですが、脂肪がなくなると、次に筋肉を異化、消費して必要なカロリーを作り出すようになります。
こうなってくると、呼吸に必要な筋肉、歩くのに必要な筋肉が消費されどんどん減ってしまうため、ADLが低化します。さらに、骨塩量も減少し、転倒、骨折、寝たきりのリスクが増します。
このような理由で、やせたCOPD患者さんは予後が悪いとされています。重症以上(1秒量が予測値の50%未満)で、かつやせているCOPD患者さんの予後は2-4年ともいわれているのです。
呼吸リハビリの一環として行う(運動療法と同時に行う)栄養療法は、体重を増やし、予後を改善する可能性があり、実際にいくつかのエビデンスが出ています。
しかしながら、栄養療法単独ではなかなか有意な結果は出ないようです。一つには、栄養による介入の継続が困難である、というところがあると思います。
栄養療法には半消化態の栄養剤(飲むカロリーメイトみたいなやつ)を用いるわけですが、これを毎日毎日、1日3本(750ml)とか飲むわけですよ。それだけでお腹いっぱいですよ。しかも高齢の方にとっては、味もなかなか受け入れがたかったりするわけです。
仙豆みたいに、一粒食べればお腹いっぱい、みたいな食品があればいいのですが。「やずや」さんかどこかで、商品化して下さらないでしょうか。
COPDポイントレクチャーを最初から読む
しかし、問題はここから。
トレーニングで筋力増強をはかるには、材料、すなわち栄養素が必要となります。
実はCOPD患者さんは、息を吐きにくいところを無理して吐いているために、息をしているだけで健康な人よりも多くのカロリー(1.2-1.5倍くらい)を消費しているのです。
一方、ただでさえ、高齢になると食が細くなる上に、肺が過膨張となり、胃を圧迫するためにお腹いっぱい食べられない、逆に、お腹いっぱい食べると、胃が肺を圧迫し息苦しくなる、だんだん食べる量が減ってきます。
たくさんカロリーを消費して、あまり食べないということで、だんだんやせてくる、やせはじめると、まず脂肪がどんどん使われてカロリーを作るのですが、脂肪がなくなると、次に筋肉を異化、消費して必要なカロリーを作り出すようになります。
こうなってくると、呼吸に必要な筋肉、歩くのに必要な筋肉が消費されどんどん減ってしまうため、ADLが低化します。さらに、骨塩量も減少し、転倒、骨折、寝たきりのリスクが増します。
このような理由で、やせたCOPD患者さんは予後が悪いとされています。重症以上(1秒量が予測値の50%未満)で、かつやせているCOPD患者さんの予後は2-4年ともいわれているのです。
呼吸リハビリの一環として行う(運動療法と同時に行う)栄養療法は、体重を増やし、予後を改善する可能性があり、実際にいくつかのエビデンスが出ています。
しかしながら、栄養療法単独ではなかなか有意な結果は出ないようです。一つには、栄養による介入の継続が困難である、というところがあると思います。
栄養療法には半消化態の栄養剤(飲むカロリーメイトみたいなやつ)を用いるわけですが、これを毎日毎日、1日3本(750ml)とか飲むわけですよ。それだけでお腹いっぱいですよ。しかも高齢の方にとっては、味もなかなか受け入れがたかったりするわけです。
仙豆みたいに、一粒食べればお腹いっぱい、みたいな食品があればいいのですが。「やずや」さんかどこかで、商品化して下さらないでしょうか。
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posted by 長尾大志 at 22:00
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2011年02月14日
COPDポイントレクチャー7・なぜ気腫肺があると肺性心(心不全)になるのか、肺性心予防のためにできること
いくつかの機序が考えられていますが、主な原因としては下の2つがいわれています。
・低酸素→肺動脈の攣縮→肺動脈の血圧が上がる→右心負荷→肺性心
・肺胞が減る→肺の毛細血管(肺血管床)が減る→肺動脈の血圧が上がる→右心負荷→肺性心
これらに対する直接的な介入方法としては酸素投与があるのですが、医療費増大につながることもあり、相当に進行した患者さんでしか適応にならないのが現状です。
そこで、考え方を変えて、酸素消費を減らす(仕事量を減らす)ための筋力トレーニングが行われるようになってきました。
運動時の心負荷を軽減し、寝たきりを予防することで一石二鳥の効果を期待できるのです。
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・低酸素→肺動脈の攣縮→肺動脈の血圧が上がる→右心負荷→肺性心
・肺胞が減る→肺の毛細血管(肺血管床)が減る→肺動脈の血圧が上がる→右心負荷→肺性心
これらに対する直接的な介入方法としては酸素投与があるのですが、医療費増大につながることもあり、相当に進行した患者さんでしか適応にならないのが現状です。
そこで、考え方を変えて、酸素消費を減らす(仕事量を減らす)ための筋力トレーニングが行われるようになってきました。
運動時の心負荷を軽減し、寝たきりを予防することで一石二鳥の効果を期待できるのです。
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posted by 長尾大志 at 14:21
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2011年02月13日
COPDポイントレクチャー6・なぜ気腫肺があると肺炎になるのか、肺炎予防のためにできること
COPD患者さんが肺炎にかかりやすい理由として、考えられる項目と、それに対する介入方法を挙げてみます。
■高齢による免疫力低下
全般的な免疫を高める方法としては、規則正しい生活や運動、果てはポジティブ・シンキングや「笑う」ことなど、色々挙げられると思いますが、エビデンスがあり、ガイドラインで推奨されているのはワクチンです。
・インフルエンザワクチン
・肺炎球菌ワクチン
■慢性気管支炎によって痰の喀出が困難になっている
理学療法による去痰訓練が以前から行われていますが、最近喀痰調整薬であるN-アセチルシステイン(ムコフィリン)やカルボシステイン(ムコダイン)、アンブロキソール(ムコソルバン)、そしてマクロライド系抗生剤であるエリスロマイシンといった薬剤にもエビデンスが認められてきています。
■ADL低化により、寝たきり→痰貯留、あるいは誤嚥を起こす
一般的に高齢の方によいといわれていることですが、筋肉を鍛え、寝たきり予防、ADLの改善、を行うことや嚥下訓練が推奨されています。
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■高齢による免疫力低下
全般的な免疫を高める方法としては、規則正しい生活や運動、果てはポジティブ・シンキングや「笑う」ことなど、色々挙げられると思いますが、エビデンスがあり、ガイドラインで推奨されているのはワクチンです。
・インフルエンザワクチン
・肺炎球菌ワクチン
■慢性気管支炎によって痰の喀出が困難になっている
理学療法による去痰訓練が以前から行われていますが、最近喀痰調整薬であるN-アセチルシステイン(ムコフィリン)やカルボシステイン(ムコダイン)、アンブロキソール(ムコソルバン)、そしてマクロライド系抗生剤であるエリスロマイシンといった薬剤にもエビデンスが認められてきています。
■ADL低化により、寝たきり→痰貯留、あるいは誤嚥を起こす
一般的に高齢の方によいといわれていることですが、筋肉を鍛え、寝たきり予防、ADLの改善、を行うことや嚥下訓練が推奨されています。
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posted by 長尾大志 at 12:13
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2011年02月12日
COPDポイントレクチャー5・COPD患者さんの治療、長生きのために介入できること
COPDの治療というか、予防というか、最も大事なことは禁煙です。
煙草を吸っている限り、必ずCOPDは進行します。
禁煙以外のCOPDの治療には、大きく分けて2種類あります。
薬による薬物療法と、薬以外の、理学療法や栄養療法といった、非薬物療法です。
薬物療法は、主に可逆性のある、気道病変に対して行います。
2011年2月現在ですと、スピリーバ、アドエアが2大巨頭です。
以前のことを思うと、本当によく効く、御利益のある薬だと思います。
残念ながら可逆性のない気腫病変に対しては、薬物療法はあまり適しているとは言えず、むしろ、非薬物療法の出番になります。
非薬物療法を考えるにあたって、まずは、COPD患者さんの寿命を短くするような要素を挙げてみましょう。それに対して、何ができるのか、それが介入になるはずです。
COPD患者さんのなくなる原因として、外国のデータですが、以下のようなものが挙げられます。日本人でもほぼ同様といわれています。
肺癌
肺以外の臓器の癌
心血管障害
脳血管障害
感染(=肺炎)
心不全(=肺性心)
このうち、癌についての介入は、早期診断、早期治療であったり、介入方法は確立しています。また、血管障害においてもメタボであったり、介入方法はできている。
とすると、問題は残った2つということになります。
感染(=肺炎)
心不全(=肺性心)
これらに対する介入を明日から考えます。
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煙草を吸っている限り、必ずCOPDは進行します。
禁煙以外のCOPDの治療には、大きく分けて2種類あります。
薬による薬物療法と、薬以外の、理学療法や栄養療法といった、非薬物療法です。
薬物療法は、主に可逆性のある、気道病変に対して行います。
2011年2月現在ですと、スピリーバ、アドエアが2大巨頭です。
以前のことを思うと、本当によく効く、御利益のある薬だと思います。
残念ながら可逆性のない気腫病変に対しては、薬物療法はあまり適しているとは言えず、むしろ、非薬物療法の出番になります。
非薬物療法を考えるにあたって、まずは、COPD患者さんの寿命を短くするような要素を挙げてみましょう。それに対して、何ができるのか、それが介入になるはずです。
COPD患者さんのなくなる原因として、外国のデータですが、以下のようなものが挙げられます。日本人でもほぼ同様といわれています。
肺癌
肺以外の臓器の癌
心血管障害
脳血管障害
感染(=肺炎)
心不全(=肺性心)
このうち、癌についての介入は、早期診断、早期治療であったり、介入方法は確立しています。また、血管障害においてもメタボであったり、介入方法はできている。
とすると、問題は残った2つということになります。
感染(=肺炎)
心不全(=肺性心)
これらに対する介入を明日から考えます。
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posted by 長尾大志 at 18:42
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2011年02月11日
COPDポイントレクチャー4・1秒率と%1秒量は別物
前回は、普通に測る?肺機能検査の項目を挙げましたが、今回は、「思いっきり強く吹いたときの」肺機能検査について述べます。
これは、息をいっぱいに吸い込んだとき(最大吸気位)から、できるだけ早く息を吐ききる(最大呼気位)努力をしたとき(強制呼気時)の値です。
■努力肺活量(FVC)
息をいっぱいに吸い込んだとき(最大吸気位)から、できるだけ早く息を吐ききる(最大呼気位)努力をしたとき(強制呼気時)の、最大吸気位と最大呼気位の差を努力肺活量(Forced Vital Capacity:FVC)といいます。
普通の肺活量(VC)との違いは、息の吐き方の違いです。
ゆっくり目に吐くか、できるだけ早く、勢いよく吐くか。
出入りできる空気の量は、吐き方が変わっても同じはずですね。
普通は、FVC≒VCになるはずです。
ただし、息を吐くときに抵抗がある(痰や狭窄などで気道が閉塞していたりする)と、できるだけ早く息を吐ききる努力をしたときには、吐ける空気の量は少なくなります。
つまり、FVC<VCとなります。
■1秒量(FEV1.0)
息をいっぱいに吸い込んだとき(最大吸気位)から、できるだけ早く息を吐ききる(最大呼気位)努力をしたとき(強制呼気時)に、最初の1秒間に吐き出せた空気の量を1秒量(Forced Expiratory Volume in 1.0 second:FEV1.0)といいます。
1秒量が適正な数字かどうかを判断する指標は2つあって、
1秒量が健康な人(理想値)に比べてどうか(%1秒量:%FEV1.0)と、
努力肺活量に対する1秒量の割合(1秒率:FEV1.0%)です。
この2つの指標は非常に紛らわしいもので、私の感触だと学生さんの80%以上が誤解されています。
■予測値に対する1秒量(%FEV1.0)
%VCと同じ考え方で、性・年齢・身長から求めた標準1秒量に対する測定値の割合です。
1秒量が健康な人(理想値)に比べてどうかを表し、COPDの重症度を見るのに使います。
例えば、%FEV1.0が50%未満の場合、COPDとしては重症になります。
■1秒率(FEV1.0%)
努力肺活量に対する1秒量の割合、つまり、息をいっぱいに吸い込んだとき(最大吸気位)から、できるだけ早く息を吐ききる(最大呼気位)努力をしたとき(強制呼気時)に、最初の1秒間に何%吐けたかを表す量です。
この値が70%未満の場合、閉塞性障害といいます。
つまり、1秒率はそもそも病気かどうかを評価するのに使うのに対し、予測値に対する1秒量は、(病気であるという前提で)病気の重さを表すのです。
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これは、息をいっぱいに吸い込んだとき(最大吸気位)から、できるだけ早く息を吐ききる(最大呼気位)努力をしたとき(強制呼気時)の値です。
■努力肺活量(FVC)
息をいっぱいに吸い込んだとき(最大吸気位)から、できるだけ早く息を吐ききる(最大呼気位)努力をしたとき(強制呼気時)の、最大吸気位と最大呼気位の差を努力肺活量(Forced Vital Capacity:FVC)といいます。
普通の肺活量(VC)との違いは、息の吐き方の違いです。
ゆっくり目に吐くか、できるだけ早く、勢いよく吐くか。
出入りできる空気の量は、吐き方が変わっても同じはずですね。
普通は、FVC≒VCになるはずです。
ただし、息を吐くときに抵抗がある(痰や狭窄などで気道が閉塞していたりする)と、できるだけ早く息を吐ききる努力をしたときには、吐ける空気の量は少なくなります。
つまり、FVC<VCとなります。
■1秒量(FEV1.0)
息をいっぱいに吸い込んだとき(最大吸気位)から、できるだけ早く息を吐ききる(最大呼気位)努力をしたとき(強制呼気時)に、最初の1秒間に吐き出せた空気の量を1秒量(Forced Expiratory Volume in 1.0 second:FEV1.0)といいます。
1秒量が適正な数字かどうかを判断する指標は2つあって、
1秒量が健康な人(理想値)に比べてどうか(%1秒量:%FEV1.0)と、
努力肺活量に対する1秒量の割合(1秒率:FEV1.0%)です。
この2つの指標は非常に紛らわしいもので、私の感触だと学生さんの80%以上が誤解されています。
■予測値に対する1秒量(%FEV1.0)
%VCと同じ考え方で、性・年齢・身長から求めた標準1秒量に対する測定値の割合です。
1秒量が健康な人(理想値)に比べてどうかを表し、COPDの重症度を見るのに使います。
例えば、%FEV1.0が50%未満の場合、COPDとしては重症になります。
■1秒率(FEV1.0%)
努力肺活量に対する1秒量の割合、つまり、息をいっぱいに吸い込んだとき(最大吸気位)から、できるだけ早く息を吐ききる(最大呼気位)努力をしたとき(強制呼気時)に、最初の1秒間に何%吐けたかを表す量です。
この値が70%未満の場合、閉塞性障害といいます。
つまり、1秒率はそもそも病気かどうかを評価するのに使うのに対し、予測値に対する1秒量は、(病気であるという前提で)病気の重さを表すのです。
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posted by 長尾大志 at 16:40
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2011年02月10日
COPDポイントレクチャー3・今さらヒトに聞けない、肺機能の項目
前回肺機能の項目をいくつか挙げました。
これも、あいまいなままスルーしがちなので、この機会にしっかり理解しておきましょう。
まずは、人工呼吸に関係のある項目を。
■1回換気量( TV )
呼吸をしていて、肺に空気がどのくらいの量、出入りしているか。
これが換気量です。
1回の呼吸で肺に出入りする空気の量を1回換気量(Tidal Volume:TV)といいます。
健康な人のおおよそのTVは体重1kgあたり10ml。つまり体重60kgなら600ml。
1回換気量(TV)=体重(kg)×10(単位:ml)
体重60kgなら600mlですね。
■分時換気量(MV)
1分間に、肺に出入りする空気の量のことを分時換気量(Minute Volume:MV)というのですが、
分時換気量(MV)=1回換気量(TV)×呼吸回数(1分間に12〜20回)
体重60kgの人なら
600(ml)×12〜20=7200〜12000(ml)
となります。
一般的に、「換気量」といいますと、MVのことをいいます。
次に、いわゆる肺活量に関係した、「肺機能検査」で測定する項目を挙げましょう。
肺機能1.pdf
まずは、ゆっくりと息を吸い、吐く、普通の?肺機能検査です。
■最大吸気位
息をいっぱいに吸ったところの位置。
■最大呼気位
息を限界まで吐いたところの位置。
いうまでもないと思いますが、限界まで吐いても肺の中には少し空気は残っています。
0にはなりません。
■全肺気量(TLC)
息をいっぱいに吸い込んだとき(最大吸気位のとき)肺のなかに存在するすべての空気量を全肺気量(Total Lung Capacity:TLC)といいます。肺の大きさを表します。
■肺活量(VC)
息をゆっくりといっぱいに吸ってから(最大吸気位)いっぱいに吐くまで(最大呼気位)の差を肺活量(Vital Capacity:VC)といいます。これは、肺の中に実際出入りできる空気の量を表しますので、肺の伸び縮みがきちんとできているかがわかります。
%VC:性・年齢・身長から求めた標準VCに対する測定値の割合で、80%未満は拘束性障害といい、肺が伸びる、あるいは縮むことができなくなっている状態を表します。
■残気量(RV)
息をいっぱいに吐いたときに気道の中に残っている空気の量を残気量(residual volume:RV)といいます。これは、肺の中にあるけれども、呼吸には関係のない、「ムダな空気」の量を表します。
TLC=VC+RV という関係がありまして、
肺の大きさ(TLC)=
実際に肺の中に出入りする空気の量(VC)
+呼吸に関係のない空気の量(RV)
なのです。
これを前回やった肺気腫の病態に当てはめると
肺機能2COPD.pdf
■息を吐ききれない、息を吐ききったあとも空気が残る
→残気量が増加=ムダな空気が増加する
■少しずつ吐ききれない空気がたまってきて肺がのびる
→全肺気量の増加、過膨張、横隔膜平低化=肺が大きくなる
あわせると、肺気腫になると、肺がムダに大きくなる。と、言えるかと思います。
COPDポイントレクチャーを最初から読む
これも、あいまいなままスルーしがちなので、この機会にしっかり理解しておきましょう。
まずは、人工呼吸に関係のある項目を。
■1回換気量( TV )
呼吸をしていて、肺に空気がどのくらいの量、出入りしているか。
これが換気量です。
1回の呼吸で肺に出入りする空気の量を1回換気量(Tidal Volume:TV)といいます。
健康な人のおおよそのTVは体重1kgあたり10ml。つまり体重60kgなら600ml。
1回換気量(TV)=体重(kg)×10(単位:ml)
体重60kgなら600mlですね。
■分時換気量(MV)
1分間に、肺に出入りする空気の量のことを分時換気量(Minute Volume:MV)というのですが、
分時換気量(MV)=1回換気量(TV)×呼吸回数(1分間に12〜20回)
体重60kgの人なら
600(ml)×12〜20=7200〜12000(ml)
となります。
一般的に、「換気量」といいますと、MVのことをいいます。
次に、いわゆる肺活量に関係した、「肺機能検査」で測定する項目を挙げましょう。
肺機能1.pdf
まずは、ゆっくりと息を吸い、吐く、普通の?肺機能検査です。
■最大吸気位
息をいっぱいに吸ったところの位置。
■最大呼気位
息を限界まで吐いたところの位置。
いうまでもないと思いますが、限界まで吐いても肺の中には少し空気は残っています。
0にはなりません。
■全肺気量(TLC)
息をいっぱいに吸い込んだとき(最大吸気位のとき)肺のなかに存在するすべての空気量を全肺気量(Total Lung Capacity:TLC)といいます。肺の大きさを表します。
■肺活量(VC)
息をゆっくりといっぱいに吸ってから(最大吸気位)いっぱいに吐くまで(最大呼気位)の差を肺活量(Vital Capacity:VC)といいます。これは、肺の中に実際出入りできる空気の量を表しますので、肺の伸び縮みがきちんとできているかがわかります。
%VC:性・年齢・身長から求めた標準VCに対する測定値の割合で、80%未満は拘束性障害といい、肺が伸びる、あるいは縮むことができなくなっている状態を表します。
■残気量(RV)
息をいっぱいに吐いたときに気道の中に残っている空気の量を残気量(residual volume:RV)といいます。これは、肺の中にあるけれども、呼吸には関係のない、「ムダな空気」の量を表します。
TLC=VC+RV という関係がありまして、
肺の大きさ(TLC)=
実際に肺の中に出入りする空気の量(VC)
+呼吸に関係のない空気の量(RV)
なのです。
これを前回やった肺気腫の病態に当てはめると
肺機能2COPD.pdf
■息を吐ききれない、息を吐ききったあとも空気が残る
→残気量が増加=ムダな空気が増加する
■少しずつ吐ききれない空気がたまってきて肺がのびる
→全肺気量の増加、過膨張、横隔膜平低化=肺が大きくなる
あわせると、肺気腫になると、肺がムダに大きくなる。と、言えるかと思います。
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posted by 長尾大志 at 13:15
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2011年02月09日
COPDポイントレクチャー2・なぜ気腫肺があると「閉塞性障害」になるのか2
なぜ、気腫肺があると「閉塞性障害」になるのでしょうか。
前回、正常肺の素晴らしい仕組みを理解していただきました。
肺気腫になると、この見事な機構が破壊されるために、閉塞性障害が起こります。
具体的には、煙草によって肺胞壁のプロテアーゼ(蛋白分解酵素)が活性化され、肺胞が「溶けてなくなる」ことで、肺の中に穴が開いてきます。これを肺気腫といいます。
肺気腫が進行すると、細気管支を支えていた肺胞(の壁に存在する弾性繊維)が消失します。すると、呼気時に細気管支は支えを失い、ぺちゃんこに閉塞するのです。
COPDスライド肺気腫とは.pdf
吸気時は陰圧のため肺が膨張→気管支も拡張
呼気時は肺が収縮→気管支はぺちゃんこに閉塞
このために、COPD患者さんは
息を吸うのは吸えるが、吐くときに困難を感じる→呼気時呼吸困難となるのです。
というわけで、肺気腫になると
■息を吐ききれない、息を吐ききったあとも空気が残る
→残気量が増加
■少しずつ吐ききれない空気がたまってきて肺がのびる
→全肺気量の増加、過膨張、横隔膜平低化、滴状心
■勢いよく吐こうとすると(すればするほど)気道が閉塞して吐けない
→1秒量、努力肺活量の低下
以上のような肺の変化が起こります。
COPDポイントレクチャーを最初から読む
前回、正常肺の素晴らしい仕組みを理解していただきました。
肺気腫になると、この見事な機構が破壊されるために、閉塞性障害が起こります。
具体的には、煙草によって肺胞壁のプロテアーゼ(蛋白分解酵素)が活性化され、肺胞が「溶けてなくなる」ことで、肺の中に穴が開いてきます。これを肺気腫といいます。
肺気腫が進行すると、細気管支を支えていた肺胞(の壁に存在する弾性繊維)が消失します。すると、呼気時に細気管支は支えを失い、ぺちゃんこに閉塞するのです。
COPDスライド肺気腫とは.pdf
吸気時は陰圧のため肺が膨張→気管支も拡張
呼気時は肺が収縮→気管支はぺちゃんこに閉塞
このために、COPD患者さんは
息を吸うのは吸えるが、吐くときに困難を感じる→呼気時呼吸困難となるのです。
というわけで、肺気腫になると
■息を吐ききれない、息を吐ききったあとも空気が残る
→残気量が増加
■少しずつ吐ききれない空気がたまってきて肺がのびる
→全肺気量の増加、過膨張、横隔膜平低化、滴状心
■勢いよく吐こうとすると(すればするほど)気道が閉塞して吐けない
→1秒量、努力肺活量の低下
以上のような肺の変化が起こります。
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posted by 長尾大志 at 14:07
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2011年02月08日
COPDポイントレクチャー1・なぜ気腫肺があると「閉塞性障害」になるのか1
これから何回か、COPDを取り上げようと思います。
国家試験にも頻出であり、重要な疾患であります。
結構、覚える事項も多い。
ここでは、知識の羅列は避け、何となく理解しにくい、あるいはよくわからないけどスルーしがち、そういうポイントをいくつか解説することにします。
肺気腫になると、「閉塞性障害」になる。
機械的に、覚えていませんか?
機械的な記憶は、薄れてくると間違いの元。
閉塞性と拘束性を間違えたりとか。
一度心の底から理解しておけば、間違いも減るというものです。
なぜ、気腫肺があると「閉塞性障害」になるのでしょうか。
それを理解するためには、正常肺の素晴らしい仕組みを理解しなくてはなりません。
まず正常な呼吸を考えましょう。
吸気時は、胸郭が外向きに引っ張られ、その結果胸腔内の圧力が低下し、肺がふくらむことで空気が肺内に取り入れられる。
一方、呼気時には逆に、胸腔内の圧力が上昇し、肺が縮むことで空気が肺内に取り入れられる。
空気の出入りは気管〜気管支〜細気管支(気道)を通ってなされるわけですが、一番端っこの細気管支は直径が0.5mmと、きわめて細いものです。肺の伸び縮みに伴って気道が容易に伸び縮みされると、息を吐くときに気道がぺちゃんこになってしまって困るわけです。
COPDスライドこれじゃ困る.pdf
でもご安心を。人間の身体はうまくできています。呼気時に気道がぺちゃんこにならない仕組みがあるのです。
気管〜太い気管支では軟骨の支えがあり、気道の形を保ちます。
細い気管支では、周りの肺胞(の壁に存在する弾性繊維)が常に少し縮もうとして、気管支を常に外向きに引っ張っています。
COPDスライド肺胞に支えられた気管支.pdf
肺が縮むときには、常に縮もうとしている肺胞が縮むことで、肺胞内の空気が押し出され、気道の直径は保たれるのです。
COPDスライド健康体2.pdf
肺気腫になると、この見事な機構が破壊されるために、閉塞性障害が起こります。続きは明日。
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国家試験にも頻出であり、重要な疾患であります。
結構、覚える事項も多い。
ここでは、知識の羅列は避け、何となく理解しにくい、あるいはよくわからないけどスルーしがち、そういうポイントをいくつか解説することにします。
肺気腫になると、「閉塞性障害」になる。
機械的に、覚えていませんか?
機械的な記憶は、薄れてくると間違いの元。
閉塞性と拘束性を間違えたりとか。
一度心の底から理解しておけば、間違いも減るというものです。
なぜ、気腫肺があると「閉塞性障害」になるのでしょうか。
それを理解するためには、正常肺の素晴らしい仕組みを理解しなくてはなりません。
まず正常な呼吸を考えましょう。
吸気時は、胸郭が外向きに引っ張られ、その結果胸腔内の圧力が低下し、肺がふくらむことで空気が肺内に取り入れられる。
一方、呼気時には逆に、胸腔内の圧力が上昇し、肺が縮むことで空気が肺内に取り入れられる。
空気の出入りは気管〜気管支〜細気管支(気道)を通ってなされるわけですが、一番端っこの細気管支は直径が0.5mmと、きわめて細いものです。肺の伸び縮みに伴って気道が容易に伸び縮みされると、息を吐くときに気道がぺちゃんこになってしまって困るわけです。
COPDスライドこれじゃ困る.pdf
でもご安心を。人間の身体はうまくできています。呼気時に気道がぺちゃんこにならない仕組みがあるのです。
気管〜太い気管支では軟骨の支えがあり、気道の形を保ちます。
細い気管支では、周りの肺胞(の壁に存在する弾性繊維)が常に少し縮もうとして、気管支を常に外向きに引っ張っています。
COPDスライド肺胞に支えられた気管支.pdf
肺が縮むときには、常に縮もうとしている肺胞が縮むことで、肺胞内の空気が押し出され、気道の直径は保たれるのです。
COPDスライド健康体2.pdf
肺気腫になると、この見事な機構が破壊されるために、閉塞性障害が起こります。続きは明日。
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posted by 長尾大志 at 18:45
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