2011年02月15日

COPDポイントレクチャー8・栄養の重要性

肺炎、肺性心のいずれに対しても、筋力(特に下肢の)トレーニングが有効であるということはおわかりいただけたと思います。

しかし、問題はここから。
トレーニングで筋力増強をはかるには、材料、すなわち栄養素が必要となります。

実はCOPD患者さんは、息を吐きにくいところを無理して吐いているために、息をしているだけで健康な人よりも多くのカロリー(1.2-1.5倍くらい)を消費しているのです。

一方、ただでさえ、高齢になると食が細くなる上に、肺が過膨張となり、胃を圧迫するためにお腹いっぱい食べられない、逆に、お腹いっぱい食べると、胃が肺を圧迫し息苦しくなる、だんだん食べる量が減ってきます。

たくさんカロリーを消費して、あまり食べないということで、だんだんやせてくる、やせはじめると、まず脂肪がどんどん使われてカロリーを作るのですが、脂肪がなくなると、次に筋肉を異化、消費して必要なカロリーを作り出すようになります。

こうなってくると、呼吸に必要な筋肉、歩くのに必要な筋肉が消費されどんどん減ってしまうため、ADLが低化します。さらに、骨塩量も減少し、転倒、骨折、寝たきりのリスクが増します。


このような理由で、やせたCOPD患者さんは予後が悪いとされています。重症以上(1秒量が予測値の50%未満)で、かつやせているCOPD患者さんの予後は2-4年ともいわれているのです。


呼吸リハビリの一環として行う(運動療法と同時に行う)栄養療法は、体重を増やし、予後を改善する可能性があり、実際にいくつかのエビデンスが出ています。

しかしながら、栄養療法単独ではなかなか有意な結果は出ないようです。一つには、栄養による介入の継続が困難である、というところがあると思います。

栄養療法には半消化態の栄養剤(飲むカロリーメイトみたいなやつ)を用いるわけですが、これを毎日毎日、1日3本(750ml)とか飲むわけですよ。それだけでお腹いっぱいですよ。しかも高齢の方にとっては、味もなかなか受け入れがたかったりするわけです。

仙豆みたいに、一粒食べればお腹いっぱい、みたいな食品があればいいのですが。「やずや」さんかどこかで、商品化して下さらないでしょうか。

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posted by 長尾大志 at 22:00 | Comment(3) | COPDポイントレクチャー

2011年02月14日

COPDポイントレクチャー7・なぜ気腫肺があると肺性心(心不全)になるのか、肺性心予防のためにできること

いくつかの機序が考えられていますが、主な原因としては下の2つがいわれています。


・低酸素→肺動脈の攣縮→肺動脈の血圧が上がる→右心負荷→肺性心

・肺胞が減る→肺の毛細血管(肺血管床)が減る→肺動脈の血圧が上がる→右心負荷→肺性心


これらに対する直接的な介入方法としては酸素投与があるのですが、医療費増大につながることもあり、相当に進行した患者さんでしか適応にならないのが現状です。

そこで、考え方を変えて、酸素消費を減らす(仕事量を減らす)ための筋力トレーニングが行われるようになってきました。

運動時の心負荷を軽減し、寝たきりを予防することで一石二鳥の効果を期待できるのです。

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posted by 長尾大志 at 14:21 | Comment(0) | COPDポイントレクチャー

2011年02月13日

COPDポイントレクチャー6・なぜ気腫肺があると肺炎になるのか、肺炎予防のためにできること

COPD患者さんが肺炎にかかりやすい理由として、考えられる項目と、それに対する介入方法を挙げてみます。


■高齢による免疫力低下

全般的な免疫を高める方法としては、規則正しい生活や運動、果てはポジティブ・シンキングや「笑う」ことなど、色々挙げられると思いますが、エビデンスがあり、ガイドラインで推奨されているのはワクチンです。

・インフルエンザワクチン
・肺炎球菌ワクチン



■慢性気管支炎によって痰の喀出が困難になっている

理学療法による去痰訓練が以前から行われていますが、最近喀痰調整薬であるN-アセチルシステイン(ムコフィリン)やカルボシステイン(ムコダイン)、アンブロキソール(ムコソルバン)、そしてマクロライド系抗生剤であるエリスロマイシンといった薬剤にもエビデンスが認められてきています。


■ADL低化により、寝たきり→痰貯留、あるいは誤嚥を起こす

一般的に高齢の方によいといわれていることですが、筋肉を鍛え、寝たきり予防、ADLの改善、を行うことや嚥下訓練が推奨されています。

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posted by 長尾大志 at 12:13 | Comment(0) | COPDポイントレクチャー

2011年02月12日

COPDポイントレクチャー5・COPD患者さんの治療、長生きのために介入できること

COPDの治療というか、予防というか、最も大事なことは禁煙です。
煙草を吸っている限り、必ずCOPDは進行します。


禁煙以外のCOPDの治療には、大きく分けて2種類あります。
薬による薬物療法と、薬以外の、理学療法や栄養療法といった、非薬物療法です。


薬物療法は、主に可逆性のある、気道病変に対して行います。
2011年2月現在ですと、スピリーバ、アドエアが2大巨頭です。
以前のことを思うと、本当によく効く、御利益のある薬だと思います。


残念ながら可逆性のない気腫病変に対しては、薬物療法はあまり適しているとは言えず、むしろ、非薬物療法の出番になります。

非薬物療法を考えるにあたって、まずは、COPD患者さんの寿命を短くするような要素を挙げてみましょう。それに対して、何ができるのか、それが介入になるはずです。

COPD患者さんのなくなる原因として、外国のデータですが、以下のようなものが挙げられます。日本人でもほぼ同様といわれています。

肺癌
肺以外の臓器の癌
心血管障害
脳血管障害
感染(=肺炎)
心不全(=肺性心)


このうち、癌についての介入は、早期診断、早期治療であったり、介入方法は確立しています。また、血管障害においてもメタボであったり、介入方法はできている。

とすると、問題は残った2つということになります。

感染(=肺炎)
心不全(=肺性心)

これらに対する介入を明日から考えます。

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posted by 長尾大志 at 18:42 | Comment(0) | COPDポイントレクチャー

2011年02月11日

COPDポイントレクチャー4・1秒率と%1秒量は別物

前回は、普通に測る?肺機能検査の項目を挙げましたが、今回は、「思いっきり強く吹いたときの」肺機能検査について述べます。

これは、息をいっぱいに吸い込んだとき(最大吸気位)から、できるだけ早く息を吐ききる(最大呼気位)努力をしたとき(強制呼気時)の値です。


■努力肺活量(FVC)

息をいっぱいに吸い込んだとき(最大吸気位)から、できるだけ早く息を吐ききる(最大呼気位)努力をしたとき(強制呼気時)の、最大吸気位と最大呼気位の差を努力肺活量(Forced Vital Capacity:FVC)といいます。

普通の肺活量(VC)との違いは、息の吐き方の違いです。
ゆっくり目に吐くか、できるだけ早く、勢いよく吐くか。

出入りできる空気の量は、吐き方が変わっても同じはずですね。
普通は、FVC≒VCになるはずです。

ただし、息を吐くときに抵抗がある(痰や狭窄などで気道が閉塞していたりする)と、できるだけ早く息を吐ききる努力をしたときには、吐ける空気の量は少なくなります。

つまり、FVC<VCとなります。


■1秒量(FEV1.0)

息をいっぱいに吸い込んだとき(最大吸気位)から、できるだけ早く息を吐ききる(最大呼気位)努力をしたとき(強制呼気時)に、最初の1秒間に吐き出せた空気の量を1秒量(Forced Expiratory Volume in 1.0 second:FEV1.0)といいます。

1秒量が適正な数字かどうかを判断する指標は2つあって、
1秒量が健康な人(理想値)に比べてどうか(%1秒量:%FEV1.0)と、
努力肺活量に対する1秒量の割合(1秒率:FEV1.0%)です。

この2つの指標は非常に紛らわしいもので、私の感触だと学生さんの80%以上が誤解されています


■予測値に対する1秒量(%FEV1.0)

%VCと同じ考え方で、性・年齢・身長から求めた標準1秒量に対する測定値の割合です。
1秒量が健康な人(理想値)に比べてどうかを表し、COPDの重症度を見るのに使います
例えば、%FEV1.0が50%未満の場合、COPDとしては重症になります。


■1秒率(FEV1.0%)

努力肺活量に対する1秒量の割合、つまり、息をいっぱいに吸い込んだとき(最大吸気位)から、できるだけ早く息を吐ききる(最大呼気位)努力をしたとき(強制呼気時)に、最初の1秒間に何%吐けたかを表す量です。

この値が70%未満の場合、閉塞性障害といいます。

つまり、1秒率はそもそも病気かどうかを評価するのに使うのに対し、予測値に対する1秒量は、(病気であるという前提で)病気の重さを表すのです

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posted by 長尾大志 at 16:40 | Comment(11) | COPDポイントレクチャー

2011年02月10日

COPDポイントレクチャー3・今さらヒトに聞けない、肺機能の項目

前回肺機能の項目をいくつか挙げました。
これも、あいまいなままスルーしがちなので、この機会にしっかり理解しておきましょう。

まずは、人工呼吸に関係のある項目を。

■1回換気量( TV )

呼吸をしていて、肺に空気がどのくらいの量、出入りしているか。
これが換気量です。

1回の呼吸で肺に出入りする空気の量を1回換気量(Tidal Volume:TV)といいます。

健康な人のおおよそのTVは体重1kgあたり10ml。つまり体重60kgなら600ml。
1回換気量(TV)=体重(kg)×10(単位:ml)
体重60kgなら600mlですね。


■分時換気量(MV)

1分間に、肺に出入りする空気の量のことを分時換気量(Minute Volume:MV)というのですが、

分時換気量(MV)=1回換気量(TV)×呼吸回数(1分間に12〜20回)

体重60kgの人なら
600(ml)×12〜20=7200〜12000(ml)
となります。

一般的に、「換気量」といいますと、MVのことをいいます。



次に、いわゆる肺活量に関係した、「肺機能検査」で測定する項目を挙げましょう。


肺機能1.pdf


まずは、ゆっくりと息を吸い、吐く、普通の?肺機能検査です。

■最大吸気位

息をいっぱいに吸ったところの位置。


■最大呼気位

息を限界まで吐いたところの位置。
いうまでもないと思いますが、限界まで吐いても肺の中には少し空気は残っています。
0にはなりません。


■全肺気量(TLC)

息をいっぱいに吸い込んだとき(最大吸気位のとき)肺のなかに存在するすべての空気量を全肺気量(Total Lung Capacity:TLC)といいます。肺の大きさを表します。


■肺活量(VC)

息をゆっくりといっぱいに吸ってから(最大吸気位)いっぱいに吐くまで(最大呼気位)の差を肺活量(Vital Capacity:VC)といいます。これは、肺の中に実際出入りできる空気の量を表しますので、肺の伸び縮みがきちんとできているかがわかります。

%VC:性・年齢・身長から求めた標準VCに対する測定値の割合で、80%未満は拘束性障害といい、肺が伸びる、あるいは縮むことができなくなっている状態を表します。


■残気量(RV)

息をいっぱいに吐いたときに気道の中に残っている空気の量を残気量(residual volume:RV)といいます。これは、肺の中にあるけれども、呼吸には関係のない、「ムダな空気」の量を表します。


TLC=VC+RV という関係がありまして、

肺の大きさ(TLC)=
 実際に肺の中に出入りする空気の量(VC)
  +呼吸に関係のない空気の量(RV)

 なのです。


これを前回やった肺気腫の病態に当てはめると

肺機能2COPD.pdf


■息を吐ききれない、息を吐ききったあとも空気が残る
→残気量が増加=ムダな空気が増加する

■少しずつ吐ききれない空気がたまってきて肺がのびる
→全肺気量の増加、過膨張、横隔膜平低化=肺が大きくなる

あわせると、肺気腫になると、肺がムダに大きくなる。と、言えるかと思います。

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posted by 長尾大志 at 13:15 | Comment(0) | COPDポイントレクチャー

2011年02月09日

COPDポイントレクチャー2・なぜ気腫肺があると「閉塞性障害」になるのか2

なぜ、気腫肺があると「閉塞性障害」になるのでしょうか。
前回、正常肺の素晴らしい仕組みを理解していただきました。
肺気腫になると、この見事な機構が破壊されるために、閉塞性障害が起こります。

具体的には、煙草によって肺胞壁のプロテアーゼ(蛋白分解酵素)が活性化され、肺胞が「溶けてなくなる」ことで、肺の中に穴が開いてきます。これを肺気腫といいます。

肺気腫が進行すると、細気管支を支えていた肺胞(の壁に存在する弾性繊維)が消失します。すると、呼気時に細気管支は支えを失い、ぺちゃんこに閉塞するのです

COPDスライド肺気腫とは.pdf


吸気時は陰圧のため肺が膨張→気管支も拡張
呼気時は肺が収縮→気管支はぺちゃんこに閉塞

このために、COPD患者さんは

息を吸うのは吸えるが、吐くときに困難を感じる→呼気時呼吸困難となるのです。

というわけで、肺気腫になると

■息を吐ききれない、息を吐ききったあとも空気が残る
残気量が増加

■少しずつ吐ききれない空気がたまってきて肺がのびる
全肺気量の増加、過膨張、横隔膜平低化、滴状心

■勢いよく吐こうとすると(すればするほど)気道が閉塞して吐けない
1秒量、努力肺活量の低下

以上のような肺の変化が起こります。

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posted by 長尾大志 at 14:07 | Comment(2) | COPDポイントレクチャー

2011年02月08日

COPDポイントレクチャー1・なぜ気腫肺があると「閉塞性障害」になるのか1

これから何回か、COPDを取り上げようと思います。
国家試験にも頻出であり、重要な疾患であります。
結構、覚える事項も多い。

ここでは、知識の羅列は避け、何となく理解しにくい、あるいはよくわからないけどスルーしがち、そういうポイントをいくつか解説することにします。



肺気腫になると、「閉塞性障害」になる。
機械的に、覚えていませんか?

機械的な記憶は、薄れてくると間違いの元。
閉塞性と拘束性を間違えたりとか。

一度心の底から理解しておけば、間違いも減るというものです。


なぜ、気腫肺があると「閉塞性障害」になるのでしょうか。
それを理解するためには、正常肺の素晴らしい仕組みを理解しなくてはなりません。

まず正常な呼吸を考えましょう。

吸気時は、胸郭が外向きに引っ張られ、その結果胸腔内の圧力が低下し、肺がふくらむことで空気が肺内に取り入れられる。

一方、呼気時には逆に、胸腔内の圧力が上昇し、肺が縮むことで空気が肺内に取り入れられる。

空気の出入りは気管〜気管支〜細気管支(気道)を通ってなされるわけですが、一番端っこの細気管支は直径が0.5mmと、きわめて細いものです。肺の伸び縮みに伴って気道が容易に伸び縮みされると、息を吐くときに気道がぺちゃんこになってしまって困るわけです。

COPDスライドこれじゃ困る.pdf


でもご安心を。人間の身体はうまくできています。呼気時に気道がぺちゃんこにならない仕組みがあるのです。

気管〜太い気管支では軟骨の支えがあり、気道の形を保ちます。
細い気管支では、周りの肺胞(の壁に存在する弾性繊維)が常に少し縮もうとして、気管支を常に外向きに引っ張っています。

COPDスライド肺胞に支えられた気管支.pdf


肺が縮むときには、常に縮もうとしている肺胞が縮むことで、肺胞内の空気が押し出され、気道の直径は保たれるのです。

COPDスライド健康体2.pdf


肺気腫になると、この見事な機構が破壊されるために、閉塞性障害が起こります。続きは明日。

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posted by 長尾大志 at 18:45 | Comment(0) | COPDポイントレクチャー