2024年12月22日

web喘息講座15 4段階の治療ステップ

軽症〜中等症の喘息は主にICS/LABAで比較的コントロールしやすいのですが、重症や慢性になってくると、コントローラーを何種類も併用しなければ症状が安定しなくなります。そこで、大体の状況によって、こういう治療で行きましょう、という目安がガイドラインに示されています。

そこまで細かいことを知らなくても、現場では、
•コントロール不良だったらコントローラーを開始する/加える
•3〜6ヵ月間コントロール良好だったら、コントローラーを減らす/止める
という原則で行けそうではありますが、参考までにガイドラインのやり方を取り上げておきましょう。

まず治療のステップとして4段階を設定します。各々のステップで使用する薬剤が決められています。

•治療ステップ1:吸入ステロイド(低用量)。吸入ステロイドが使えない場合、LTRA・テオフィリン徐放製剤を考慮する。軽い喘息症状がまれにしか生じない場合に限り、コントローラーなしで有症状時にのみSABAを使う、ということもある。
•治療ステップ2:吸入ステロイド(低〜中用量)。吸入ステロイドでコントロール不十分な場合、通常はLABAを加えたICS/LABA合剤を使用する。他に加えられるコントローラーとして、LAMA・LTRA・テオフィリン徐放製剤がある。
•治療ステップ3:吸入ステロイド(中〜高用量)。通常ICS/LABA合剤を用い、さらにLAMA・LTRA・テオフィリン徐放製剤を併用する。これらの併用でもコントロール不良の場合、ICS高用量が副作用などにより困難であると判断される場合、抗IL-4Rα抗体(デュピルマブ)が使用可能である。
•治療ステップ4:吸入ステロイド(高用量)。ICS/LABA合剤にLAMA・LTRA・テオフィリン徐放製剤、さらに抗IgE抗体・抗IL-5抗体・抗IL-5受容体抗体・抗IL-4Rα抗体・抗TSLP抗体・経口ステロイド薬を併用する。
(喘息予防・管理ガイドライン2021より引用改変)

各々のステップはどのような状態の症例に使うのか、各々に対応したおおよその型が症状の頻度・強度によって分類されています。評価した重症度に応じて治療薬を決めるわけです。

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posted by 長尾大志 at 12:50 | Comment(0) | web喘息講座

2024年12月20日

web喘息講座14 リリーバー

発作が出た場合に使う「発作治療薬」がリリーバーです。リリーバーはあくまでコントローラーを補助するものであり、治療のメインはコントローラーです。発作に繰り返しリリーバーを必要とするようであれば、コントローラーを使う(または増やす)ことで、症状なく安定した日常生活を送ることができる、これが喘息治療の目標であり、多くの方は実現可能なのです。今後はリリーバーの出番は少なくなるでしょうし、なるべきです。

短時間作用性気管支拡張薬(short-acting β2 agonist:SABA)
吸入薬 商品名:サルタノールインヘラーⓇ、メプチンエアーⓇ、ベロテックエロゾルⓇ、ベネトリン吸入液Ⓡ、メプチン吸入液Ⓡ
以前は「喘息の薬」といえばこれでした。発作時に一番よく効くのがこの薬で、吸入後、遅くとも数十分で効果が現れます。
しかし、薬の使いすぎで亡くなられた方が多い、と一時期マスコミなどで話題になりました。その薬剤はベロテックⓇで、それを使っている患者さんが大勢「不安だ」と相談しに来られました。亡くなられた方に共通していたのは、以下のようなことです。

•コントローラーを適切に使わず、気管支拡張薬だけで対処していた。
•短時間に何十回も吸入していた。

いずれもちゃんとした治療や指導を受けていれば避けられたはずなのです。
副作用としては長時間作用性気管支拡張薬と同じく、動悸・不整脈・手のふるえ・めまいなどがあります。

内服薬 商品名:ベネトリンⓇ、ブリカニールⓇ、ベロテックⓇなど
吸入に比べて効果が出るのに時間がかかり、また副作用も多いことから、今では使われていません。吸入薬と同様の副作用があります。

ステロイド内服薬
商品名:プレドニンⓇ、メドロールⓇ、デカドロンⓇ、リンデロンⓇ
発作が出たときに数日間〜2週間だけ、やや多めの量(3〜6錠)を内服します。作用はβ2刺激薬ほど早くありませんが、使い方が定期的ではなく発作時なのでこちらで説明しました。
このような短期間の使い方では後々問題になる副作用はほとんどないのが特徴ですが、なにせ内服ステロイドは副作用が多いため、使わないに越したことはありません。

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posted by 長尾大志 at 23:48 | Comment(0) | web喘息講座

2024年12月19日

web喘息講座13 コントローラー ❻抗IgE抗体、抗IL-5抗体、抗IL-5Rα抗体、抗IL-4Rα抗体、抗TSLP抗体

コントローラーのリストの最後のほうに載っている抗体製剤群は、一般的に、特に非専門医の先生方にはあまりなじみがないかもしれません。

しかしこれらの薬剤は、喘息における炎症反応の各所をブロックすることによって、(うまく抗体が当たると)結構ビシッと効いてくれて、しかもそれほどキツい副作用は多くない、という、ある意味魔法のような薬剤群なのです。特にこれまで内服ステロイドを連用せざるを得なかった、コントロールの悪い患者さんにとっては福音となることもあるわけです。

問題は、薬価が非常に高いということ。1本十ウン万円です。人によっては、1回に2本、3本と必要な場合もあります。それがネックとなって、専門医でもあまり使われないこともあるわけです。3割負担でも、月に数万円余計にかかるとなると、なかなか難しいのではないでしょうか。効果は確かにあるのですが、価格に見合った価値があるかの評価は難しいものです。

また、なんでもかんでも効く、というわけではなくて、薬剤ごとに効果がありそうと見込まれる患者さんの特徴というものがあります。

@抗IgE抗体(オマリズマブ:ゾレアレジスタードマーク)|アトピー型喘息の場合。通年性吸入アレルゲンに対して陽性、かつ血清総IgE値が30〜1500 IU/mL。
A抗IL-5抗体(メポリズマブ:ヌーカラレジスタードマーク)|好酸球性気道炎症のある場合。血中好酸球数150〜300/μL以上、あるいは喀痰中好酸球数比率≧3%。
B抗IL-5受容体α鎖抗体(抗IL-5Rα抗体|ベンラリズマブ:ファセンラレジスタードマーク)好酸球性気道炎症のある場合。同上
C抗IL-4受容体α鎖抗体(抗IL-4Rα抗体|デュピルマブ:デュピクセントレジスタードマーク)好酸球性気道炎症のある場合。血中好酸球数150/μL以上、あるいはFeNO≧25ppb、血清総IgE値≧167 IU/mL。
D抗TSLP抗体(テゼペルマブ:テゼスパイアレジスタードマーク)バイオマーカーに関わらず重症喘息に使用可能

というわけで、少なくとも使い始めの時には専門医に判断を任せる方が無難かと思います。

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posted by 長尾大志 at 16:59 | Comment(0) | web喘息講座

2024年12月18日

web喘息講座12 コントローラー ❺テオフィリン・内服ステロイド薬

テオフィリン
•商品名:テオドールⓇ、テオロングⓇ、ユニフィルⓇ、ユニコンⓇ、スロービッドⓇ

吸入ステロイドが普及する前は、コントローラーの主役でした。ただ、患者さんによって体内での代謝が違い、効きすぎて副作用が出たり、効かなかったりということがありました。

そのために必ず血中濃度を確認する必要があり、使いにくいという点で敬遠されてきています。なお、教科書や添付文書では、10〜20μg/mL程度に調節、となっていますが、現在の使い方は吸入ステロイドと併用して1日200  mg程度投与し、5〜10μg/mLあたりで調節、という感じです。

もう1つ、使いにくい理由が薬物相互作用です。テオフィリンと一緒に使うとテオフィリンの血中濃度が上がってしまい、中毒を起こしてしまうような薬がたくさんあるのです。

本当にたくさんあるので、すべてを挙げることはしませんが、テオフィリン系薬と他の薬をあわせて処方する場合は、必ず相互作用がないことを確認しましょう。
抗アレルギー薬の中にも相互作用に注意が必要な薬があり、こちらも要確認です。

内服ステロイド薬
•商品名:プレドニンⓇ、メドロールⓇ、リンデロンⓇ、デカドロンⓇ、セレスタミンⓇ

以前はよく用いられましたが、吸入ステロイドの普及で、定期的に使われることは少なくなりました。現在では、吸入ステロイドや他の薬を限度一杯まで使ってもなお強い症状がある患者さんに限って使われています。
なにせ問題は、皆さんよくご存じの通り多彩な、しかも取り返しのつかない(可逆性のない)副作用です。

患者さんもよくご存じで、「ステロイドが怖い」と言われ、抵抗感が強い方もおられます。しかし、必要な場合にも使わないのは本末転倒です。よくよく必要性を見極めて、喘息をしっかりコントロールし、その上でなるべく早く薬を減らせるように、と考えるのが私たち呼吸器科医の仕事です。昨今では次項で述べる抗体製剤を使うことでステロイド離脱ができる、ステロイドなしで喘息が寛解する、など、メーカーさん主導で?そういう論調もあります。医療費のことを抜きにすれば、たいへん素晴らしい流れだと思います。

なお、セレスタミン Ⓡ はステロイドと抗アレルギー薬を配合したものですが、このグループに入れました。気軽に使われているケースが多いのですが、長期に使われている場合は要注意です。

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posted by 長尾大志 at 21:28 | Comment(0) | web喘息講座

2024年12月14日

web喘息講座11 コントローラー ❹抗ロイコトリエン薬(LTRA)・それ以外の抗アレルギー薬

・抗ロイコトリエン薬(leukotriene receptor antagonist:LTRA)
商品名:オノンⓇ、シングレアⓇ、アコレートⓇ、キプレスⓇ
LTRA、エルトラ、といわれたりします。喘息に対して効果を実感できる抗アレルギー薬のグループです。ただし、効く人(responder)と効かない人(non-responder)がいますので、1ヵ月ほど使ってみて効かない場合はやめた方がいいです。効果の判定は、なかなか難しいことも多いのですが……。

副作用は比較的少ないので使いやすいですし、鼻炎の症状(特に鼻閉)にも効果があるというメリットがあります。コントローラーとして期待される効果は、吸入ステロイドと併用することで吸入ステロイドの使用量を減らすことができる、というものです。使い方としては、@軽症の患者さんにこれだけ処方してコントロール、A軽症以上の患者さんに吸入ステロイドと併用する、のどちらかになりますが、軽症であっても今ではICSが優先され、ICSが使えないときのみ第一選択になります。

LTRA以外の抗アレルギー薬
これらは、実際のところ効果が今ひとつであり、吸入ステロイドの普及に伴って、喘息診療においてはその役割を終えつつあるという印象です。

吸入薬 商品名:インタールエアゾルⓇ
ほとんど副作用がないことから、これまで小児を中心に従来たくさん使われてきました。作用は強くなく、気管支の炎症をきっちり鎮めるものではないようです。

内服薬 商品名:ベガⓇ、ブロニカⓇ、アイピーディーⓇ、リザベンⓇ、ザジテンⓇ、アレジオンⓇ、ニポラジンⓇ、アゼプチンⓇなど多数
メディエーター阻害薬を中心に、喘息に対して有効というふれこみで発売された薬もありますが、どれも臨床的効果としては芳しくありませんでした。
ただ、鼻炎・花粉症・アトピー性皮膚炎など、他のアレルギーをお持ちの患者さんに使うと、効果的なようです。喘息コントロールをこれだけで、というよりも、補助的な使い方をされています。眠気や抗コリン作用などの副作用には注意が必要です。

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posted by 長尾大志 at 17:40 | Comment(0) | web喘息講座

2024年12月13日

web喘息講座10 コントローラー ❸長時間作用性抗コリン薬(LAMA)

かつては気管支喘息における気管支拡張薬はβ2刺激薬が中心で、長時間作用性抗コリン薬(LAMA:long-acting muscarinic antagonist)は喘息に適応がありませんでした。その後、「慢性喘息には効くようだ」と効能追加され、じわじわと使われるようになり、ガイドライン2018からは治療ステップ2という比較的重症じゃない段階からLAMAを「使ってもよい」となりました。

喘息治療の中心、主役はICS/LABAですが、LAMAにも使いドコロがありまして……コントロール不良の場合、それと咳が強い場合を覚えておかれるといいでしょう。β2刺激薬に比べて心血管系の副作用が少ないので、使いやすいことも確かであります。ICS/LABAの次に使う、という位置づけですね。

COPD治療の主役として有名なLAMAですので、LAMA単剤個別の商品名や紹介はCOPDの項でいたします。また、LAMA/LABAは喘息診療には使いません。

以前はICS/LABA合剤にLAMA単剤を加えるか、ICS単剤にLAMA/LABA合剤を加えるかで悩まれることもあったかもしれませんが、今はICS/LABA/LAMAの3剤合剤(トリプル製剤)が上市され、メーカーの熱心なプロモーションもあってこちらが普及しているようです。

ちなみに喘息領域で取り扱う場合は、ICSが治療の中心であることからICS/LABA/LAMA、COPD領域で扱う場合にはLAMAが治療の中心であることからLAMA/LABA/ICSと書くことが多いような気がしますが、本質的には変わりありません。

ICS/LABA/LAMA合剤
テリルジーⓇ:レルベアⓇ/アノーロⓇ/エンクラッセⓇと同じデバイスで、操作は簡単です。
エナジアⓇ:シーブリⓇ/オンブレスⓇ型のデバイスで、手順が煩雑です。

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posted by 長尾大志 at 11:05 | Comment(0) | web喘息講座

2024年12月12日

web喘息講座9 コントローラー❷ICS/LABA合剤

気管支拡張薬とは、発作が起こったときに強力に気管支を拡張し、発作を鎮める薬です。平滑筋に作用して、平滑筋の収縮を和らげるβ2刺激薬が代表的です。使用してすぐに効く短時間作用性β2刺激薬がリリーバーとしてよく使われますが、コントローラーとして使われるのは、立ち上がりが遅いかわりに持続的に気管支を拡張させる、長時間作用性β2刺激薬(long-acting beta 2 agonist:LABA)です。

LABAには吸入薬、貼付薬、内服薬がありますが、いずれも抗炎症効果はなく、それだけを使っていると喘息が悪化するので、必ず吸入ステロイドと併用しなくてはなりません。最近ではずいぶん減りましたが、いまだにホクナリンテープⓇ(LABA貼付剤)単独使用、なんて場面を見かけると切なくなってきますね……。

どうせ吸入ステロイドと一緒に使う、ということで、ICS/LABA合剤が開発され、その簡便さと効果から広く普及して現在に至ります。

吸入ステロイド薬(inhaled corticosteroid:ICS)とLABAは別々の剤形で使用するよりも合剤で使用する方が有効性が高い、というデータが出まして、実際ステロイド単剤よりも明らかに「患者さんの受けがよい=コントロールがよい」ことが知られるようになってから、ICS/LABA合剤は非専門医の先生方にも一気に普及してきた感があります。

各ICS/LABAの間には明らかな差や優劣はないといっていいので、吸入デバイスなどの簡便さ、説明のしやすさ、併用する吸入薬とデバイスを揃える、などの条件で決めていいのではないかと考えています。

•アドエアⓇ(DPI/pMDI)=フルチカゾンプロピオン酸エステル(吸入ステロイド)+サルメテロールキシナホ酸塩(β2刺激薬)
•レルベアⓇ(DPI)=フルチカゾンフランカルボン酸エステル(吸入ステロイド)+ビランテロール(β2刺激薬)
アドエアⓇは1日2回製剤、レルベアⓇは1回製剤。同じメーカーでもあり、似たロジックのデバイスですが、新しく吸入手技も簡単なレルベアⓇに徐々に移行しつつあります。

•シムビコートⓇ(DPI)/ブデホルⓇ(DPI)=ブデソニド(吸入ステロイド)+ホルモテロールフマル酸塩水和物(β2刺激薬)
ホルモテロールは、サルブタモール(SABAであるサルタノールⓇの成分) と同じくらい即効性があり、回数を増やすとその分効果が高まることが知られています。そのためこの薬剤のみ、定期吸入に加えて「増悪時(発作時)」の「頓用」が認められていて、SMART療法(Single inhaler Maintenance And Reliever Therapy)と呼ばれています(まあ、最後のTがTherapyなんで、SMART療法⇒SMARTでいいんですが……)。ただし、定期吸入と合計して1日8吸入を超えないようにする(一時的に1日合計12吸入まで増量可能)ということになっています。

•フルティフォームⓇ(pMDI)=フルチカゾンプロピオン酸エステル(吸入ステロイド)+ホルモテロールフマル酸塩水和物(β2刺激薬)
pMDIでホルモテロール製剤です。

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posted by 長尾大志 at 12:37 | Comment(0) | web喘息講座

2024年12月11日

web喘息講座8 吸入ステロイドの種類と特徴

まだ移動途上ですが、取り急ぎ続けます。吸入ステロイドの製品名とその特徴です。

•フルタイドⓇ:フルチカゾンプロピオン酸エステル(DPI/pMDI)

•アニュイティⓇ:フルチカゾンフランカルボン酸エステル(DPI):フルタイドⓇは1日2回製剤、アニュイティⓇは1回製剤です。この2剤は同じメーカーでもあり、作用が強力、似たロジックの吸入器で操作が簡単、DPIはカウンターで薬剤の残量確認が確実です。中でも新しく吸入手技も簡単なアニュイティⓇに徐々に移行しつつあります。

•パルミコートⓇ:ブデソニド(DPI):妊娠・出産・授乳時のリスクが少ない、FDAにおける妊婦への安全性ランク・カテゴリーBである唯一の吸入ステロイド薬。粒子が小さいためか吸入感がなく、吸ったかどうか不安になるという声多数。カウンターは薬剤の残量がわかりにくいですね。

•キュバールⓇ:ベクロメタゾンプロピオン酸エステル(pMDI):粒子径が小さく、末梢気道まで到達し、喉頭の違和感が少ないといわれています。特殊な器具を使わないと、残量が全くわかりません。

•オルベスコⓇ:シクレソニド(pMDI):粒子径が小さく、末梢気道まで到達し、喉頭の違和感が少ないそうです。投与量が400μg以下であれば、1日1回吸入で1日中効果が持続するといわれています。こちらも特殊な器具を使わないと、残量が全くわかりません。

•アズマネックスⓇ:モメタゾンフランカルボン酸エステル(DPI):粒子径が小さく、末梢気道まで到達し、喉頭の違和感が少ない。カウンターで残量確認が確実に可能です。

このように一長一短がありますので、それぞれの特徴によって使い分けます。
薬剤によって力価、つまりステロイドとしての強さが異なるため、実際の使用量も薬剤によって異なります。大概の薬剤は400μg/日が中用量(標準的な量)なのですが、パルミコートⓇは800μg/日、アニュイティⓇは100〜200μg/日が中用量です。
•低用量:100μg〜200μg
•中用量:400μg
•高用量:800μg
パルミコートⓇは低用量、高用量の場合も上記の倍になります。
アニュイティⓇは100μg/日か200μg/日しかありませんので、100μg/日が低〜中用量、200μg/日が中〜高用量、という感じになります。

とまあご紹介しましたが、現実的に使われているのは、圧倒的にICS/LABA合剤が多いんじゃないでしょうか。

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posted by 長尾大志 at 13:05 | Comment(0) | web喘息講座

2024年12月09日

web喘息講座7 コントローラー❶吸入ステロイド(ICS)

大人の場合、コントローラーといえばまず吸入ステロイドinhaled corticosteroid(ICS)のことを指すくらい、効き目と副作用の少なさの点で他の薬を圧倒しています。

本来、ステロイドという薬剤自体は強力に炎症を抑える一方で、いろいろと副作用があり、内服薬や点滴薬をあまり長期間使うのは好ましくありません。しかし、吸入ステロイドは、薬剤を直接病変部に運んで作用させるため、点滴や内服のステロイドに比べて副作用が大変少なく、また効果がすぐれていることから、現在は喘息治療の柱となっています。

吸入薬は商品名が浸透していることと、吸入器(デバイス)にもいろいろと名前がついていることがあり、一般名や吸入デバイスを併記すると長くややこしくなるのですが、ここでは商品名と一般名だけを記載しておきます。

吸入器には大きく分けてドライパウダー吸入器(dry powder inhaler:DPI)と、スプレー式の加圧式定量吸入器(pressurized metered-dose inhaler:pMDI)があります。DPIは1回量セットされた粉末の薬剤を吸う仕組みで、自分で吸い込まないと薬剤は入ってきませんが、吸うタイミングは難しくありません。対してpMDIはプッシュするとプシュッとガス状の薬剤が入ってくるので、プッシュと吸入のタイミングを合わせる必要があり、少しコツがいります。

残量がわかりやすいのは一般的にDPIですが、新しいpMDIは吸入器の工夫によって残量が見えるようにしたものもあります。またDPIでは「吸った気がしない」「入ったかどうかわからない」といわれることがあり、吸入指導の際に工夫が必要です。

副作用
副作用は、咽頭・喉頭〜食道のカンジダ症、口内炎、嗄声(させい)です。多くの場合、うがいをまめに行うことで対処できます。嗄声だけはうがいではなかなか防止できず、薬を変更したり、減量したり、喉の奥にある声帯を直接霧吹きで洗ったり、いろいろな工夫がなされています。吸入直後に飲食すると軽減することもあるようです。
DPI製剤で嗄声が起こったら、粒子径の小さいpMDI(霧状の噴霧器)製剤に換えて対処することが多いですが、根本的には薬剤の減量が一番効果的と思いますので、できるだけ早く安定化するようコントロールすることを目標にしています。

ここで勘違いしないでいただきたいのは、嗄声を恐れるあまり、コントロール不十分で減量、という選択肢は好ましくないということです。あくまで、コントロールが先決です。

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posted by 長尾大志 at 21:15 | Comment(0) | web喘息講座

2024年12月08日

web喘息講座6 コントローラーについて

コントローラーの序列は、おおよそこんな風になっています。序列が上の方が、効果と副作用のバランスがとれていると考えてください。とにもかくにも、肝心かなめの薬剤は吸入ステロイドになります。

•吸入ステロイド(ICS)
•長時間作用性β2刺激薬(LABA)
•(ICS/LABA合剤)
•長時間作用性抗コリン薬(LAMA)
•(ICS/LABA/LAMA合剤)
•ロイコトリエン拮抗薬(LTRA)
•テオフィリン
•抗IgE抗体
•抗IL-5抗体
•抗IL-5Rα抗体
•抗IL-4Rα抗体
•抗TSLP抗体
•抗アレルギー薬
•全身ステロイド

発作が繰り返し生じ、リリーバーを必要とするような「不安定な状態」であれば、コントローラーを増やす、または追加することで、発作が出ない状態、つまり「安定した状態」に持っていくわけです。

コントローラーを追加していく際の優先順位は、上記のリストの上から、ということが多いです。

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posted by 長尾大志 at 13:59 | Comment(0) | web喘息講座

2024年12月07日

web喘息講座5 リモデリングとは

喘息という病気の本性は、主にアレルギーを原因とする、「気道(気管支)の炎症」です。炎症を起こした気道(気管支)の壁は徐々に厚くなり、空気の通り道が細くなってきます。

長期間喘息がある方では、気道の炎症によって厚くなった気管支壁が固くなり、なかなか元の厚さに戻らなくなるために、ますます喘息が治りにくくなります。これを「リモデリング」といいます。リモデリングが起こると、喘息が慢性状態になるといえます。

咳や喘鳴、呼吸困難など、少しでも喘息症状が出ている期間は、炎症+リモデリングが進行していると考えられています。つまり、喘息症状をそのまま放置すると、喘息は慢性化するのです。

昔の喘息の治療は、「発作が出たら治療」「症状を治すのが治療」だったのですが、今となってはこれは大間違いで、今は、喘息と診断がついたら、「発作を出さないように予防」「健康な人と変わらない生活を送る」「リモデリングを起こさない、進行させない」のが治療の目標です。

•長期管理薬=コントローラー:発作の予防のために、普段から使っておく薬
•発作治療薬=リリーバー:発作時に使用する薬。吸入して速やかに効果が出る

発作が出た場合にはリリーバーを使いますが、あくまでコントローラーを補助する目的であり、治療のメインはコントローラーになります。発作が繰り返し生じ、リリーバーを必要とするようであれば、コントローラーを使う(または増やす)ことで、発作が出ない状態に持っていくわけです。

最終的には、リリーバーを使わなくても症状なく安定した日常生活が送れるようコントローラーを調節し、(薬を使っていることを除けば)健康な人と何ら変わらない生活を送ることができる、これが目標であり、多くの方は実現可能なのです。

ただし、「早期に診断され、早期に治療開始されること」が前提条件です

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posted by 長尾大志 at 17:58 | Comment(0) | web喘息講座

2024年12月05日

web喘息講座4 喘息診断のための検査

非専門医の先生方、あるいは専門医の先生方におかれましても、一般病院やクリニックにおいては、気道過敏性検査や呼気一酸化窒素測定(FeNO)など、専門的な検査は困難であることが多いため、喘息の診断は臨床的に、あるいは簡便な検査で行っていることが多いと思います。

シンプルに申しますと、先に挙げたような病歴上の特徴があり、胸部X線などで他の疾患が除外できたら(特に高齢者の場合、COPDと心不全はなかなか鑑別が困難なこともありますが)、あとは気道の可逆性を確認すれば喘息と診断できる、という手順で診断します。

気道可逆性試験
β2刺激薬の吸入で症状や検査所見が改善するかどうかを見るものです。使用できる短時間作用性β2刺激薬はサルタノールⓇ、メプチンⓇ、ベネトリンⓇ(ネブライザー用)です。これらの吸入前後に2回肺機能検査をして、明らかな症状の改善、肺機能やPEF(ピークフロー)の明らかな(1秒量の12%以上、かつ200  mL以上の)改善があれば、有意な可逆性があると判断されます。
また、PEFを測定できる場合には、早朝の気管支拡張薬使用前のPEF値と、正午から午後2時の間でのβ2刺激薬吸入後のPEF値の差が20%以上あるときには、喘息の可能性が高いと考えてよい、とされています。
ただ残念ながら、肺機能検査を1日に2回行うことは保険診療上「過剰」となることが多いのと、そもそもクリニックで肺機能検査をするハードルが高いことから、実践するのはかなり困難です。
一時、製薬メーカーが提唱していた抗ロイコトリエン薬の試験投与、吸入ステロイド単独の投与では、効果発現が遅かったり、効果が限定的であったりして、判断に迷うことが少なくないので、勧められません。

そこで臨床の現場では、コントローラーであるICS/LABAを吸入して日々の症状が改善するかどうか、で可逆性の評価をすることが多いです(後述)。

おまけ:FeNO(呼気中一酸化窒素)
検査自体に特殊な技能は必要ありませんが、キットの価格が高いこともあって呼吸器内科医の声が強い?施設でしか採用されていない印象です。好酸球性炎症をある程度反映するため、治療効果もわかるメリットがあります。便利に使えるため、呼吸器専門医が「FeNOを使わない診療に慣れない」というデメリットもあったりします……。

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posted by 長尾大志 at 16:50 | Comment(0) | web喘息講座

2024年12月04日

web喘息講座3 「喘息っぽい病歴」を見逃さないための基準

改めて喘息を疑わせる病歴を挙げます。
•長引く(2〜3週間以上)咳
•過去に繰り返す咳の既往
•全く症状がない時期(時間帯)の存在
•夜に多い咳、咳で目覚める、あるいは眠れない
•発熱はない
•花粉症や鼻炎などのアレルギー疾患に以前から罹患している
•喫煙、または間接喫煙
•室内犬、猫などのペット飼育
•労作によって息切れし、咳き込むことがある
•家族歴
これらのいくつかが当てはまれば、喘息の可能性が想定されます。

もう少し簡便なものはないでしょうか?ということで、ACO(Asthma and COPD Overlap:喘息とCOPDのオーバーラップ)の手引きを見てみますと……

COPD症例のうち、
•変動性・発作性がある
•40歳以前に喘息を発症している
•FeNO(呼気中一酸化窒素)>35ppb

上記3項目のうち2項目あればACOと考えてよい、すなわち「喘息の要素がある」=吸入ステロイド薬を使用しましょう、と。1項目しか満たさない場合でも、以下のうち2項目以上を満たせばACOと考えてよい、とされています。
•アレルギー性鼻炎
•気道可逆性
•末梢血好酸球高値
•IgE高値

非専門の先生方が臨床の現場で喘息の診断をされる際に、これらの基準を参考にしていただけますと役立つのではないかと思います。

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posted by 長尾大志 at 11:44 | Comment(0) | web喘息講座

2024年12月03日

web喘息講座2 「喘息っぽい病歴」を見逃さない

私たち呼吸器内科医が「あ、この人、喘息っぽいな」と思う患者さんには共通点があります。キーワードは「繰り返し」と「可逆性」で、喘息の特徴であり、定義ともいえるものです。
患者さんのセリフは、以下のようなものです。

『以前から風邪の後に咳がしばらく続くことがあったけど、自然に治っていた』
『以前から季節の変わり目に咳が出ることが何回かあったけど、自然に治っていた』
『以前から花粉症や鼻炎があり、あまり治療を受けていなかったけど、自然に治っていた』

『以前から〜けど、自然に治っていた』。これが、患者さんの受診を阻むキーワードです。特に軽症のうち、発症間もない喘息はしばしば自然に治る(ように感じられる)のです(可逆性)。逆に言うと、いかにこのタイミングで介入できるか、が勝負になります。

「慢性の咳」の鑑別診断
ある調査では、診療所に受診された患者さんの受診理由の最多は「咳」とのこと。もちろん、経過が2〜3日の「急性の咳」は、上気道炎や感冒であることがほとんど。鎮咳薬で事足りる、というか自然軽快することも多いのですが……。

経過が2〜3週間以上の「慢性の咳」はいろいろな病気を含んでいます。そのうちX線に異常所見がみられるもので、多いのは慢性気管支炎(COPD)、肺癌、結核などですが、ほかにもさまざまな疾患を鑑別する必要があります。X線で所見がない場合、喘息(咳喘息を含む)のほかに、下の表に示すような多くの鑑別診断があります。

喘息以外の鑑別診断
•副鼻腔気管支症候群、後鼻漏
•胃食道逆流症
•感染後咳嗽、アトピー咳嗽
•慢性気管支炎
•百日咳
•薬剤性咳嗽(ACE阻害薬)
•心因性・習慣性咳嗽

これらの疾患のうち放置した場合、治療されなかった場合に問題になるのは、やはり喘息です。なぜかというと…

喘息は、治療開始が早いほど治癒する可能性もあるのですが、治療が遅れれば遅れるほど慢性化し、可逆性がなくなっていくからです。ですから、まずは疑う。疑いのないところに、診断なし。病歴から喘息を疑わなければなりません。

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posted by 長尾大志 at 17:54 | Comment(0) | web喘息講座

2024年12月02日

喘息講座を改めて開始します

COPDも一息つきましたので、喘息を取り上げます。喘息という病気は、人口の7〜10%もの罹患率といわれる、大変にポピュラーな病気であるにもかかわらず、一般医家の先生方になかなか理解していただけていないのが現状かと思います。

咳という主訴で医療機関にかかる患者さんは大変多いと考えられますが、特に慢性の咳を主訴とする患者さんの中には、喘息患者さんが相当数含まれていると思われます。ところが、適切に診断・治療を受ける機会がなくずっと放置されていた結果、喘息が慢性になってコントロール不良となってしまっている患者さんを見かけることがあります。あるいは喘息と診断されているにもかかわらず、不適切な治療によって、日常生活が著しく損なわれているような方も少なくありません。

呼吸器外来をやっていて、本当に困っておられる多くの患者さんの声を聴くにつけ、すべての外来診療に携わる先生方に正しい喘息診療のイロハを知っておいていただきたい、そう考えました。喘息の放置は患者さんの人生を左右することになるだけに、より多くの先生方に、ぜひ正しい知識を身につけていただきたいと思います。
ここでは、私が若手の先生たちにお伝えしている、喘息診療の基本的事柄をお教えします。

典型的な喘息は、慣れれば診断は容易です。吸入ステロイドによる治療開始が早ければ早いほど良くなる可能性が高く、治療が遅れるとリモデリングが進行して慢性となることもわかっています。喘息かもしれない患者をいかに拾い上げ、吸入ステロイドの早期導入をはかるかが、患者さんのその後の人生を決定づけるといっても過言ではありません。

喘息の一口ポイント
●慢性咳嗽のうち、相当程度の原因疾患は「咳喘息」「気管支喘息」である。
●「繰り返し」「可逆性」の咳、喘鳴、呼吸困難から喘息を疑う。
●β2刺激薬を吸入して、明らかな症状・肺機能の改善があれば、可逆性ありと判断する。
●喘息の治療目標は、吸入ステロイド+αのコントローラーを用いて、症状を出ない状態にすること。
●吸入ステロイドを用いずして、喘息の治療なし。

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posted by 長尾大志 at 19:38 | Comment(0) | web喘息講座

2012年04月15日

バイオウェザー・気候の変化が人体に及ぼす影響・気管支喘息と気候の関係

ここ1〜2年、極端な気候、異常気象と言われる状態が多く、疾患を発症されたり、調子を崩されたり、というケースが多く見受けられます。


温度や湿度、気圧などの「急な変化」は生体にとってストレスとなり、種々の変調の原因となるのです。


バイオウェザーという言葉もできているようです。



有名なところでは、気管支喘息。

そもそも喘息は季節の変わり目に発症、あるいは増悪しやすいことがよく知られています。春は花粉や黄砂、秋は夏に繁殖したダニの殻や糞、死骸が関係しているとされていますが、温度、湿度、気圧の変化が起こりやすい、という側面も見逃せません。


データとしてあるのは、前日と比較して平均気温が3〜5℃以上低下した日や、5時間以内に3℃以上気温が低下した日には、発作が起こりやすいというものです。


ということは、急な気温の低下が、リスクであるということですね。
ですから秋だけでなく春先でも、急に気温が下がるときなど、調子を崩される方が多いです。
また、秋や冬だと、最低気温が5℃以下になるときは発作が起きやすいといわれています。


湿度に関しては、乾燥が発作の誘因になります。喘息患者さんにとって、冬場のジョギングなどは(環境の観点からいいますと)、全く勧められないわけです。温水プールのスイミングであれば、暖かくて湿った空気を吸うことになりますから、喘息の方にとってはいい環境、ということになります。


運動で喘息が誘発されるメカニズムとして、呼吸数が増える結果急速に気道が(外気によって)冷やされ、乾燥する、というメカニズムが考えられています。結局のところ、温度と湿度なのです。


他に、台風や前線などのように、急に気圧が低くなると発作が起きやすい、ということも知られています。気象に関しては避けようがありませんが、早めの対処につなげられるよう、患者さんにしっかりと情報をお伝えしたいものですね。

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posted by 長尾大志 at 22:20 | Comment(0) | web喘息講座

2011年12月24日

座談会「気管支喘息のより良い治療とは−ブデソニド/ホルモテロール配合剤の使用経験と今後の期待−」が冊子?になりました。

Medical Tribune12月15日号がお手元にある方は、同封のチラシに上記の座談会が載っています。


7月、祇園祭で大混雑の京都某所で行われた座談会が、このたび活字になりました。できあがるまで、結構時間がかかるのだなーということ、全部で1時間ぐらい、結構いろいろお話しさせていただいたのですが、冊子にすると5分ぐらいの内容になっていて、しかも大事なところはしっかり盛り込まれている。この編集のすごさには感心しました。


個人的には、(爆笑)となったくだりがカットされていて(当たり前)少し残念です。あと、私の写真が、あれだけ撮ってこれしかないんですか、という感じではありますが、
「写真写りが悪い」と自分で言う人は、本人の認識と実物に差があるにすぎない
といわれているので、これが私の現実と、素直に受け止めたいと思います(苦笑)。


てっきり地方版と思っていたので、全国版になってビックリです。

権利関係が大丈夫でしたら、PDFを公開いたします。
また、原本を何部かいただきましたので、ご希望の方は先着順にお渡しします。

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posted by 長尾大志 at 13:48 | Comment(0) | web喘息講座