慢性好酸球性肺炎(chronic eosinophilic pneumonia:CEP)は、教科書を見ると急性好酸球性肺炎(AEP)とは別物、ということが強調されています。
イメージとして、AEPは「急な呼吸不全で、うっ血に似た画像所見」という臨床像であるのに対して、CEPは「器質化肺炎に似ていて、炎症の主体が(リンパ球の代わりに)好酸球」と考えるとわかりやすいと思います。
CEPは「慢性」という名前がついていますが、発症が比較的急性なものもあり、病初期にはAEPと画像でしか鑑別できないこともあります。臨床的には喫煙のエピソードが関係ないとか、呼吸不全が少ない、というあたりがAEPとの違いです。
画像所見では、古典的に言われている「逆肺水腫像」「逆バタフライ像」、つまり中枢でなくて末梢優位の浸潤影が特徴的です。
肺胞洗浄液の好酸球分画は、AEP同様増加しています。明確な診断基準はありませんが、30%をカットオフ値としてあることが多いようです。
診断は、要するに好酸球が増多していて(末梢血か肺局所で)、典型的な画像で、他疾患を除外できれば診断可能です。
治療はステロイドを用います。好酸球メインの炎症で、ステロイドがよく効きます。予後は良好ですが、「慢性」というだけに減量中に再燃したりします。
2025年03月05日
間質性肺疾患について、改めてまとめ28・その他のびまん性肺疾患 ❸慢性好酸球性肺炎(CEP)
posted by 長尾大志 at 20:58
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2025年03月04日
間質性肺疾患について、改めてまとめ27・その他のびまん性肺疾患 ❷急性好酸球性肺炎(AEP)
急性好酸球性肺炎(acute eosinophilic pneumonia:AEP)とは、肺内に好酸球が一気に出てきて、肺胞領域と間質(小葉辺縁)に浮腫、うっ血様所見が生じる病態です。
胸部X線やCT上、うっ血に似た広義間質の肥厚像、胸水などが特徴です。うっ血との鑑別は画像ではしばしば困難ですが、病歴、身体所見や心拡大がみられることは少ない点が鑑別のポイントになります。
肺胞内に好酸球が増えますので、気管支肺胞洗浄液の好酸球分画が増多します(好酸球分画≧25%)。初期には肺局所に好酸球が集中するので、末梢血の好酸球分画は増えないことも結構あり、そのうちに末梢血の好酸球も増えてくる、という感じです。
逆に、末梢血の好酸球が高値であれば、体内の好酸球がよっぽど増加しているということになりますので、それらしい陰影があれば好酸球性肺炎を疑う根拠になります。
特徴的な病歴として、煙草を初めて吸いはじめ、しばらく(1〜2週間)してから発症、というケースが多く報告されています。また、しばらく止めていた人が久しぶりに吸い出しても発症したりします。このあたりがなんともアレルギーっぽいですね。
診断としては、下記の項目を満たすことで診断されます。
•急速な発症で、発熱を伴う呼吸不全を来たし、
•両側びまん性のすりガラス影 + 広義間質の肥厚像、胸水があり、
•肺の好酸球増多が証明され(肺胞洗浄液で好酸球分画≧25%、または生検で肺への好酸球浸潤を証明)、
•その他の好酸球増多を来しうる肺疾患が除外できること
治療はステロイドを用います。ステロイドを用いると一気に好酸球はどこかに隠れてしまい、割とすぐに治療効果が得られます。線維化はほとんどなく、予後は良好です。
胸部X線やCT上、うっ血に似た広義間質の肥厚像、胸水などが特徴です。うっ血との鑑別は画像ではしばしば困難ですが、病歴、身体所見や心拡大がみられることは少ない点が鑑別のポイントになります。
肺胞内に好酸球が増えますので、気管支肺胞洗浄液の好酸球分画が増多します(好酸球分画≧25%)。初期には肺局所に好酸球が集中するので、末梢血の好酸球分画は増えないことも結構あり、そのうちに末梢血の好酸球も増えてくる、という感じです。
逆に、末梢血の好酸球が高値であれば、体内の好酸球がよっぽど増加しているということになりますので、それらしい陰影があれば好酸球性肺炎を疑う根拠になります。
特徴的な病歴として、煙草を初めて吸いはじめ、しばらく(1〜2週間)してから発症、というケースが多く報告されています。また、しばらく止めていた人が久しぶりに吸い出しても発症したりします。このあたりがなんともアレルギーっぽいですね。
診断としては、下記の項目を満たすことで診断されます。
•急速な発症で、発熱を伴う呼吸不全を来たし、
•両側びまん性のすりガラス影 + 広義間質の肥厚像、胸水があり、
•肺の好酸球増多が証明され(肺胞洗浄液で好酸球分画≧25%、または生検で肺への好酸球浸潤を証明)、
•その他の好酸球増多を来しうる肺疾患が除外できること
治療はステロイドを用います。ステロイドを用いると一気に好酸球はどこかに隠れてしまい、割とすぐに治療効果が得られます。線維化はほとんどなく、予後は良好です。
posted by 長尾大志 at 22:00
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2025年02月28日
間質性肺疾患について、改めてまとめ26・好酸球性肺疾患
好酸球性肺疾患は、間質性肺炎に含まれるような、含まれないような、教科書によっていろいろな範疇に属する、あいまいな立ち位置の疾患であります。
細かいことを論じ出すとどんどんややこしくなるので、シンプルに定義しておきましょう。要は、好酸球主体の炎症が生じている肺炎、好酸球による肺への浸潤がみられている病態を総称して好酸球性肺炎、といいます。
分類は、教科書を見ますとまあいろいろ書いてあります。原因別に疾患群を分類してみましょう。
原因が明らかな好酸球性肺疾患
•寄生虫、寄生虫以外の感染症
•アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)
•薬剤、中毒物質、放射線によるもの
原因不明の(特発性)好酸球性肺疾患
•特発性好酸球性肺炎:急性好酸球性肺炎、慢性好酸球性肺炎
•全身疾患に伴うもの:好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)、好酸球増多症候群
その他の好酸球増多を来しうる肺疾患
•過敏性肺炎
•気管支喘息、好酸球性気管支炎
•特発性肺線維症
•剥離性間質性肺炎
•器質化肺炎
•ランゲルハンス細胞組織球症
•肺移植後
•その他(サルコイドーシス、悪性腫瘍、血液疾患など)
このように、原因の明らかなもの、原因の明らかでないものから他の肺疾患まで、さまざまな病態を含んだ、何とも広範な疾患概念であります。ただ、いずれも好酸球が増える炎症であるという点に焦点が置かれています。
このうち、全身疾患としての好酸球増多でなく、肺の好酸球増多として是非知っておきたいのは急性好酸球性肺炎、慢性好酸球性肺炎。それにABPMあたりかと思います。急性好酸球性肺炎と慢性好酸球性肺炎は、急性と慢性というだけではなく、随分異なる臨床像を呈していて、別物であると考えられています。
細かいことを論じ出すとどんどんややこしくなるので、シンプルに定義しておきましょう。要は、好酸球主体の炎症が生じている肺炎、好酸球による肺への浸潤がみられている病態を総称して好酸球性肺炎、といいます。
分類は、教科書を見ますとまあいろいろ書いてあります。原因別に疾患群を分類してみましょう。
原因が明らかな好酸球性肺疾患
•寄生虫、寄生虫以外の感染症
•アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)
•薬剤、中毒物質、放射線によるもの
原因不明の(特発性)好酸球性肺疾患
•特発性好酸球性肺炎:急性好酸球性肺炎、慢性好酸球性肺炎
•全身疾患に伴うもの:好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)、好酸球増多症候群
その他の好酸球増多を来しうる肺疾患
•過敏性肺炎
•気管支喘息、好酸球性気管支炎
•特発性肺線維症
•剥離性間質性肺炎
•器質化肺炎
•ランゲルハンス細胞組織球症
•肺移植後
•その他(サルコイドーシス、悪性腫瘍、血液疾患など)
このように、原因の明らかなもの、原因の明らかでないものから他の肺疾患まで、さまざまな病態を含んだ、何とも広範な疾患概念であります。ただ、いずれも好酸球が増える炎症であるという点に焦点が置かれています。
このうち、全身疾患としての好酸球増多でなく、肺の好酸球増多として是非知っておきたいのは急性好酸球性肺炎、慢性好酸球性肺炎。それにABPMあたりかと思います。急性好酸球性肺炎と慢性好酸球性肺炎は、急性と慢性というだけではなく、随分異なる臨床像を呈していて、別物であると考えられています。
posted by 長尾大志 at 10:44
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2025年02月27日
間質性肺疾患について、改めてまとめ25・特発性でない間質性肺疾患・過敏性肺炎の診断
ガイドラインでは各方面に配慮した?結果、とにかくMDDで決めましょうということになっています。典型的でないものはグラデーションが大きすぎてMDDに丸投げ?せざるを得ない、という感じでしょうか。
HPの診断手順として、まずは曝露の評価とHRCT所見を確認し、それからBAL、TBLBへと進みます。
HRCT所見を、非線維性HPはTypical HP、Compatible with HPの2つに、線維性HPはTypical HP、Compatible with HP、Indeterminate for HPの3つに分類します。
非線維性HP
・Typical HP:肺野病変はすりガラス陰影、モザイクパターンがあり、細気管支病変として境界不明瞭な小葉中心性粒状影、呼気CTでのair trappingがある。分布はびまん性で肺底部がスペアされる場合もある。
・Compatible with HP:肺野病変は均質で軽微なすりガラス陰影、コンソリデーション、薄壁嚢胞が散在する。分布は基本的にびまん性で、下肺野優位の場合もある。また気管支血管束周囲優位の場合もある。
線維性HP
Typical HP:構造改変を伴う不整な線状・網状影で構成された肺の線維化病変。分布はランダムが多いが比較的肺底部がスペアされる傾向にある。細気管支病変を示唆する所見として境界不明瞭な小葉中心性粒状影/すりガラス陰影、モザイクパターンなど。
Compatible with HP:typicalとは異なる肺の線維化病変で、IPFガイドラインのUIP相当、もしくは広範なすりガラス陰影に軽度の線維化病変。分布のバリエーションとして胸膜下、気管支血管束優位、上肺野優位というものがある。細気管支病変を示唆する所見もある。
Indeterminate for HP:肺の線維化病変単独で、UIPパターン、Probable UIPパターン、Indeterminate for UIPパターン、Fibrotic NSIPパターン、Truly indeterminate for HRCTパターンがある。
曝露が特定されて典型的HRCT像(Typical HPパターン)があり、BALFリンパ球増多(20%以上)があれば、(MDDを経て)過敏性肺炎「高確診」例となっています。ひとまず非専門医の先生方はここまでやっていただけるといいのではないでしょうか。
そこで曝露、HRCT、BAL、TBLBその他すべての所見を統合しても診断不明である場合、さらにMDDを経て、またTBLCやSLBでさらに大きな病理検体を得ることを試みて、改めて診断を再検討します……専門医に丸投げください……。
HPの診断手順として、まずは曝露の評価とHRCT所見を確認し、それからBAL、TBLBへと進みます。
HRCT所見を、非線維性HPはTypical HP、Compatible with HPの2つに、線維性HPはTypical HP、Compatible with HP、Indeterminate for HPの3つに分類します。
非線維性HP
・Typical HP:肺野病変はすりガラス陰影、モザイクパターンがあり、細気管支病変として境界不明瞭な小葉中心性粒状影、呼気CTでのair trappingがある。分布はびまん性で肺底部がスペアされる場合もある。
・Compatible with HP:肺野病変は均質で軽微なすりガラス陰影、コンソリデーション、薄壁嚢胞が散在する。分布は基本的にびまん性で、下肺野優位の場合もある。また気管支血管束周囲優位の場合もある。
線維性HP
Typical HP:構造改変を伴う不整な線状・網状影で構成された肺の線維化病変。分布はランダムが多いが比較的肺底部がスペアされる傾向にある。細気管支病変を示唆する所見として境界不明瞭な小葉中心性粒状影/すりガラス陰影、モザイクパターンなど。
Compatible with HP:typicalとは異なる肺の線維化病変で、IPFガイドラインのUIP相当、もしくは広範なすりガラス陰影に軽度の線維化病変。分布のバリエーションとして胸膜下、気管支血管束優位、上肺野優位というものがある。細気管支病変を示唆する所見もある。
Indeterminate for HP:肺の線維化病変単独で、UIPパターン、Probable UIPパターン、Indeterminate for UIPパターン、Fibrotic NSIPパターン、Truly indeterminate for HRCTパターンがある。
曝露が特定されて典型的HRCT像(Typical HPパターン)があり、BALFリンパ球増多(20%以上)があれば、(MDDを経て)過敏性肺炎「高確診」例となっています。ひとまず非専門医の先生方はここまでやっていただけるといいのではないでしょうか。
そこで曝露、HRCT、BAL、TBLBその他すべての所見を統合しても診断不明である場合、さらにMDDを経て、またTBLCやSLBでさらに大きな病理検体を得ることを試みて、改めて診断を再検討します……専門医に丸投げください……。
posted by 長尾大志 at 17:07
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2025年02月18日
間質性肺疾患について、改めてまとめ24・特発性でない間質性肺疾患・過敏性肺炎・概要つづき
(昨日のつづき)検査では、KL-6が妙に高い(3,000以上)とか、季節性変動がある、とかの特徴があると過敏性肺炎を疑いたいところ。鳥関連のCHPなら、KL-6は夏<冬となり、夏型過敏性肺炎なら夏が高い、といわれています。
BALにてリンパ球(アレルギー反応で増える)の増多を認めます。CD4+/CD8+比は、夏型過敏性肺炎では低下し1以下となりますが、鳥関連の過敏性肺炎や農夫肺では上昇します。TBLBや肺生検にて得られた組織では、リンパ球の浸潤と共に肉芽腫(アレルギー反応の結果見られることが多い)を認めます。
CT画像では抗原に触れる場所(細気管支の周囲)の肺胞が細胞浸潤、間質性変化を起こしていることを反映して、細気管支の周囲(小葉中心性)の、すりガラス影を呈します(詳しくは図入りでわかりやすい『レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室』をご覧下さい(笑))。
診断確定には、免疫学的に因果関係を証明することが必要です。患者さんの周囲環境に存在し原因と疑わしい抗原に対する特異抗体を証明すること、特異抗原によるリンパ球刺激試験が陽性であることなどが可能であればよいのですが、特異抗体で保険適応があるのは夏型過敏性肺炎の抗Trichosporon asahii抗体検査と鳥関連過敏性肺炎の鳥特異的IgG抗体のみ、と大幅な制限がかかっているのが現実です。リンパ球刺激試験も簡単ではありませんから、なかなか診断のハードルが高い。他に吸入誘発試験も理論上はありますが、誘発試験は上記の通り、倫理的問題もあり、避けられる傾向にあります。
一方後者、慢性型(線維性)の過敏性肺炎では、上記のような特徴的な病歴や検査所見を示すことが減ってきます。画像上も進行した線維化は蜂巣肺を作ってきて、IPFと区別がつきにくい。それゆえ、やはり免疫学的な因果関係を証明しなくてはなりません。特に慢性型で多い鳥関連の曝露をはじめ、まずは病歴を根掘り葉掘り聴きだす必要があります。病歴や画像等から、抗原曝露による過敏性肺炎ではないかと疑えば、こちらも疑わしい抗原を回避して経過を見ることになりますが、抗原回避がそもそも困難なこともありますし、抗原がはっきりしないことも多いです。
検査としては、BAL、TBLB、それに外科的肺生検がありますが、それで診断確定、あるいは除外、とはなりません。いずれも明確な基準があってないような、なので、やはりこちらも診断にはグラデーションが生じてしまいます。
BALにてリンパ球(アレルギー反応で増える)の増多を認めます。CD4+/CD8+比は、夏型過敏性肺炎では低下し1以下となりますが、鳥関連の過敏性肺炎や農夫肺では上昇します。TBLBや肺生検にて得られた組織では、リンパ球の浸潤と共に肉芽腫(アレルギー反応の結果見られることが多い)を認めます。
CT画像では抗原に触れる場所(細気管支の周囲)の肺胞が細胞浸潤、間質性変化を起こしていることを反映して、細気管支の周囲(小葉中心性)の、すりガラス影を呈します(詳しくは図入りでわかりやすい『レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室』をご覧下さい(笑))。
診断確定には、免疫学的に因果関係を証明することが必要です。患者さんの周囲環境に存在し原因と疑わしい抗原に対する特異抗体を証明すること、特異抗原によるリンパ球刺激試験が陽性であることなどが可能であればよいのですが、特異抗体で保険適応があるのは夏型過敏性肺炎の抗Trichosporon asahii抗体検査と鳥関連過敏性肺炎の鳥特異的IgG抗体のみ、と大幅な制限がかかっているのが現実です。リンパ球刺激試験も簡単ではありませんから、なかなか診断のハードルが高い。他に吸入誘発試験も理論上はありますが、誘発試験は上記の通り、倫理的問題もあり、避けられる傾向にあります。
一方後者、慢性型(線維性)の過敏性肺炎では、上記のような特徴的な病歴や検査所見を示すことが減ってきます。画像上も進行した線維化は蜂巣肺を作ってきて、IPFと区別がつきにくい。それゆえ、やはり免疫学的な因果関係を証明しなくてはなりません。特に慢性型で多い鳥関連の曝露をはじめ、まずは病歴を根掘り葉掘り聴きだす必要があります。病歴や画像等から、抗原曝露による過敏性肺炎ではないかと疑えば、こちらも疑わしい抗原を回避して経過を見ることになりますが、抗原回避がそもそも困難なこともありますし、抗原がはっきりしないことも多いです。
検査としては、BAL、TBLB、それに外科的肺生検がありますが、それで診断確定、あるいは除外、とはなりません。いずれも明確な基準があってないような、なので、やはりこちらも診断にはグラデーションが生じてしまいます。
posted by 長尾大志 at 08:15
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2025年02月17日
間質性肺疾患について、改めてまとめ23・特発性でない間質性肺疾患・過敏性肺炎・概要
過敏性肺炎については、2020年にアメリカ胸部医学会(ATS)・日本呼吸器学会(JRS)・ラテンアメリカ胸部医学会(ALAT)から過敏性肺炎(Hypersensitivity pneumonia:HP)の診断ガイドラインが発表され、それを基に日本呼吸器学会によるガイドラインが2022年に発表されました。
なお、そもそも過敏性肺炎(Hypersensitivity pneumonia)か過敏性肺臓炎(Hypersensitivity pneumonitis)か、という用語の問題は若干混乱しておりましたが、2020年ATS等のガイドラインではHypersensitivity pneumonitisが採択されています。ところが日本呼吸器学会ではこれまでの歴史的経緯を踏まえて?「過敏性肺炎」を採択され、かつ英語表記は「Hypersensitivity pneumonitis」を採るという、なんとも不思議な決着がつけられたのでした。なんにしてもHPはHPなんですが。
用語はともかく、ガイドラインに基づいて過敏性肺炎を理解したいのですが、このガイドラインから、診断は検査を含めたいくつかの所見のどれを満たすか、これらを多面的に評価し総合判断をして、どの程度「それっぽい」かを決める、というやり方になっていて、非専門医にとってハードルが高くなっている感がありますが、そこのところをかいつまんでお話ししようと思います。
一口に過敏性肺炎、といっても、急性〜亜急性の経過をとってかなりアレルギー臭のする病歴・BALやTBLB所見・画像所見を呈する群(線維性)と、慢性の経過をとりアレルギー性の炎症成分が枯れてきて、ただただ線維化が進行していく。一見IPFと区別がつきにくい群(非線維性)があります。
前者(非線維性)では病歴上、抗原に曝露して数時間の経過で乾性咳嗽、呼吸困難、発熱などの症状が生じる、抗原を回避すると症状は軽快するという、いかにもアレルギーという症状経過です。例えば夏の終わりに症状が出現する、家庭内にカビが多い、などは夏型過敏性肺炎を疑わせる状況です。そういう風にキャラが立っていると、病歴から診断が可能なのですね。
曝露する抗原は地域や気候によって様々ですから、過敏性肺炎研究のトップランナーである東京科学大学(旧 東京医科歯科大学)呼吸器内科のHP「過敏性肺炎の診療について」にある問診票や評価票を参考にされるといいでしょう。
抗原の目星が付けば抗原回避です。抗原回避をして症状が軽快するかどうかは、急性型の診断においてはカギとなる情報です。住居や職場などが原因で抗原回避が簡単にできない場合、入院による抗原回避をします。
抗原回避して症状が改善したら、帰宅誘発試験で悪化があればほぼ決まり、なのですが、基本的に昨今、帰宅誘発試験というものは倫理的に問題あり、ということが言われてはいます。例えば患者さんの都合で一時帰宅をしたときに、よくなっていた症状が再燃した、となれば、非常にそれっぽい、となるでしょう。それが難しければ検査で証拠を積み上げていく形になります。
なお、そもそも過敏性肺炎(Hypersensitivity pneumonia)か過敏性肺臓炎(Hypersensitivity pneumonitis)か、という用語の問題は若干混乱しておりましたが、2020年ATS等のガイドラインではHypersensitivity pneumonitisが採択されています。ところが日本呼吸器学会ではこれまでの歴史的経緯を踏まえて?「過敏性肺炎」を採択され、かつ英語表記は「Hypersensitivity pneumonitis」を採るという、なんとも不思議な決着がつけられたのでした。なんにしてもHPはHPなんですが。
用語はともかく、ガイドラインに基づいて過敏性肺炎を理解したいのですが、このガイドラインから、診断は検査を含めたいくつかの所見のどれを満たすか、これらを多面的に評価し総合判断をして、どの程度「それっぽい」かを決める、というやり方になっていて、非専門医にとってハードルが高くなっている感がありますが、そこのところをかいつまんでお話ししようと思います。
一口に過敏性肺炎、といっても、急性〜亜急性の経過をとってかなりアレルギー臭のする病歴・BALやTBLB所見・画像所見を呈する群(線維性)と、慢性の経過をとりアレルギー性の炎症成分が枯れてきて、ただただ線維化が進行していく。一見IPFと区別がつきにくい群(非線維性)があります。
前者(非線維性)では病歴上、抗原に曝露して数時間の経過で乾性咳嗽、呼吸困難、発熱などの症状が生じる、抗原を回避すると症状は軽快するという、いかにもアレルギーという症状経過です。例えば夏の終わりに症状が出現する、家庭内にカビが多い、などは夏型過敏性肺炎を疑わせる状況です。そういう風にキャラが立っていると、病歴から診断が可能なのですね。
曝露する抗原は地域や気候によって様々ですから、過敏性肺炎研究のトップランナーである東京科学大学(旧 東京医科歯科大学)呼吸器内科のHP「過敏性肺炎の診療について」にある問診票や評価票を参考にされるといいでしょう。
抗原の目星が付けば抗原回避です。抗原回避をして症状が軽快するかどうかは、急性型の診断においてはカギとなる情報です。住居や職場などが原因で抗原回避が簡単にできない場合、入院による抗原回避をします。
抗原回避して症状が改善したら、帰宅誘発試験で悪化があればほぼ決まり、なのですが、基本的に昨今、帰宅誘発試験というものは倫理的に問題あり、ということが言われてはいます。例えば患者さんの都合で一時帰宅をしたときに、よくなっていた症状が再燃した、となれば、非常にそれっぽい、となるでしょう。それが難しければ検査で証拠を積み上げていく形になります。
posted by 長尾大志 at 17:52
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2025年02月13日
間質性肺疾患について、改めてまとめ22・特発性でない間質性肺疾患・膠原病合併間質性肺炎・膠原病肺2・肺病変先行型膠原病/IPAF
肺病変先行型膠原病
肺の立場からいうと、間質性肺炎だけがあり、その時点で他臓器の膠原病らしさははっきりしていないものの、ずっと経過を観察しているうちにその他の臓器に膠原病らしき病変が出てくることがあります。後から振り返ると、これは膠原病で、肺病変が先行していたんだな……、というケースが少なからずあり、「肺病変先行型膠原病」という概念が与えられています。
肺病変先行型の膠原病は、肺病変が先行している時期に他の病変が見られないために、一見特発性に見えてしまいます。このパターンだと治療がCTD-ILDのそれと違ってくるため、特発性間質性肺炎、特に特発性肺線維症と当初臨床診断をされた症例においても、その後の挙動、経過は慎重に追う必要があります。
IPAF
また、当初膠原病の診断基準・分類基準を満たさない症例でも、「膠原病っぽい要素がある」「膠原病の香りがする」ようなものはちょっと別扱い、ないし膠原病として治療を始めておくこともあるのですが、そういう感じの疾患群をIPAF(interstitial pneumonia with autoimmune features)として注意喚起しています。IPAFについて詳しくは、ここで書くかどうか悩み中です……。
肺の立場からいうと、間質性肺炎だけがあり、その時点で他臓器の膠原病らしさははっきりしていないものの、ずっと経過を観察しているうちにその他の臓器に膠原病らしき病変が出てくることがあります。後から振り返ると、これは膠原病で、肺病変が先行していたんだな……、というケースが少なからずあり、「肺病変先行型膠原病」という概念が与えられています。
肺病変先行型の膠原病は、肺病変が先行している時期に他の病変が見られないために、一見特発性に見えてしまいます。このパターンだと治療がCTD-ILDのそれと違ってくるため、特発性間質性肺炎、特に特発性肺線維症と当初臨床診断をされた症例においても、その後の挙動、経過は慎重に追う必要があります。
IPAF
また、当初膠原病の診断基準・分類基準を満たさない症例でも、「膠原病っぽい要素がある」「膠原病の香りがする」ようなものはちょっと別扱い、ないし膠原病として治療を始めておくこともあるのですが、そういう感じの疾患群をIPAF(interstitial pneumonia with autoimmune features)として注意喚起しています。IPAFについて詳しくは、ここで書くかどうか悩み中です……。
posted by 長尾大志 at 13:27
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| 間質性肺疾患シリーズ
2025年02月12日
間質性肺疾患について、改めてまとめ21・特発性でない間質性肺疾患・膠原病合併間質性肺炎・膠原病肺1・基礎疾患
原因疾患のある間質性肺炎の代表が、膠原病に合併した間質性肺炎(膠原病合併間質性肺疾患|CTD-ILD:connective tissue diseases-associated interstitial lung disease)です。膠原病は全身いろいろな部位・臓器に病変が見られますが、肺は中でも病変が見られることが多い臓器といえるでしょう。
膠原病のタイプによって、ある程度どのような肺病変のパターンが生じるかの傾向があり、予後や治療反応性にも関連します。逆に間質性肺炎においては、基礎に膠原病があるかどうかで、治療・予後がずいぶん変わってきます。
発症の仕方は様々で、もともと膠原病があってそこに間質性肺炎が起こってくるパターン、膠原病と間質性肺炎が同時に出現して発見されるパターン、それから間質性肺炎が先行するパターン、いずれもあります。加えて、基礎の膠原病に対する治療薬による薬剤性肺障害や免疫抑制による感染症も少なからずみられ、一口に「膠原病に合併した肺の病変」といってもいろいろとややこしいのです。
治療など詳しくは日本呼吸器学会と日本リウマチ学会による「膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針 2020」を参照頂く、そして呼吸器内科や膠原病内科専門医に相談いただくのがよいですが、ここでは大まかに概要を掴んでいただけるよう、なるべくわかりやすく説明します。
間質性肺疾患の合併する頻度が高い膠原病は,全身性強皮症(systemic sclerosis:SSc)、皮膚筋炎(dermatomyositis:DM)で、次いで混合性結合組織病(mixed connective tissue disease:MCTD)、多発性筋炎(polymyositis:PM)、10%以下の頻度として関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)、シェーグレン症候群(Sjögren’s syndrome:SS)があります。RAやSSでは細気管支炎や気管支拡張症などの気道病変の合併も多く、患者数も多いことから肺病変に遭遇することは多いと思われます。全身性エリテマドーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)は、胸膜炎はありますが肺病変は少ないです。
通常膠原病の診断、というのは、各々膠原病のタイプに特徴的な症状、症候があって、そこから診断を進めていくものです。例えば、以下のようなものが典型的です。
・慢性関節リウマチ:朝のこわばり、左右対称に(特に中手節関節や手関節に)生じている多発関節炎(腫脹・疼痛)
・皮膚筋炎/多発性筋炎:ヘリオトロープ疹、ゴットロン徴候、逆ゴットロン徴候、機械工の手、顔面紅斑、筋力低下・筋痛、爪上皮出血
・強皮症:皮膚硬化、指尖潰瘍、レイノー症状、食道運動の低下(逆流性食道炎)、腎障害、舌小帯短縮、肺高血圧
・シェーグレン症候群:眼・口腔の乾燥症状、環状紅斑、関節炎
・混合性結合組織病:中途半端に重複する膠原病症状、レイノー症状、肺高血圧、手指のソーセージ様腫脹や浮腫
これらの症状・症候からある程度目星が付いたら、診断基準・分類基準を参照して自己抗体など、疾患特異的な検査を行い診断を進めます。
膠原病のタイプによって、ある程度どのような肺病変のパターンが生じるかの傾向があり、予後や治療反応性にも関連します。逆に間質性肺炎においては、基礎に膠原病があるかどうかで、治療・予後がずいぶん変わってきます。
発症の仕方は様々で、もともと膠原病があってそこに間質性肺炎が起こってくるパターン、膠原病と間質性肺炎が同時に出現して発見されるパターン、それから間質性肺炎が先行するパターン、いずれもあります。加えて、基礎の膠原病に対する治療薬による薬剤性肺障害や免疫抑制による感染症も少なからずみられ、一口に「膠原病に合併した肺の病変」といってもいろいろとややこしいのです。
治療など詳しくは日本呼吸器学会と日本リウマチ学会による「膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針 2020」を参照頂く、そして呼吸器内科や膠原病内科専門医に相談いただくのがよいですが、ここでは大まかに概要を掴んでいただけるよう、なるべくわかりやすく説明します。
間質性肺疾患の合併する頻度が高い膠原病は,全身性強皮症(systemic sclerosis:SSc)、皮膚筋炎(dermatomyositis:DM)で、次いで混合性結合組織病(mixed connective tissue disease:MCTD)、多発性筋炎(polymyositis:PM)、10%以下の頻度として関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)、シェーグレン症候群(Sjögren’s syndrome:SS)があります。RAやSSでは細気管支炎や気管支拡張症などの気道病変の合併も多く、患者数も多いことから肺病変に遭遇することは多いと思われます。全身性エリテマドーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)は、胸膜炎はありますが肺病変は少ないです。
通常膠原病の診断、というのは、各々膠原病のタイプに特徴的な症状、症候があって、そこから診断を進めていくものです。例えば、以下のようなものが典型的です。
・慢性関節リウマチ:朝のこわばり、左右対称に(特に中手節関節や手関節に)生じている多発関節炎(腫脹・疼痛)
・皮膚筋炎/多発性筋炎:ヘリオトロープ疹、ゴットロン徴候、逆ゴットロン徴候、機械工の手、顔面紅斑、筋力低下・筋痛、爪上皮出血
・強皮症:皮膚硬化、指尖潰瘍、レイノー症状、食道運動の低下(逆流性食道炎)、腎障害、舌小帯短縮、肺高血圧
・シェーグレン症候群:眼・口腔の乾燥症状、環状紅斑、関節炎
・混合性結合組織病:中途半端に重複する膠原病症状、レイノー症状、肺高血圧、手指のソーセージ様腫脹や浮腫
これらの症状・症候からある程度目星が付いたら、診断基準・分類基準を参照して自己抗体など、疾患特異的な検査を行い診断を進めます。
posted by 長尾大志 at 17:26
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2025年02月11日
間質性肺疾患について、改めてまとめ20・特発性でない間質性肺疾患・将来どの科に行っても避けて通れない薬剤性肺障害の診断と治療3・治療
薬剤性肺障害治療の基本は被疑薬の中止です。被疑薬がすぐに同定可能であればよいのですが、イマドキの患者さんは往々にして多くの薬を投与されていることが多く、被疑薬がいくつか想定される場合、あるいはdrug-induced hypersensitivity syndrome(DIHS:薬剤性過敏症症候群)のように多剤感作が想起される場合には、使用中の薬剤を全剤中止せざるを得ないこともあります。
また、中止で軽快する場合は話が簡単ですが、薬剤によっては、あるいは肺障害の病型や重症度によっては、ステロイド投与が必要です。たとえば、ゲフィチニブ(イレッサ Ⓡ )で間質性肺炎が生じた場合には、直ちにイレッサ中止とステロイド・パルス療法を行います。そのぐらい、イレッサの肺障害は予後が悪いということがこれまでに知られているわけです。他にも薬剤によっては、肺障害が生じたらこうする、と対応方法が決まっているものもあり、予め準備しておくのがいいでしょう。
診断のところでも書いたように、被疑薬における薬剤性肺障害の報告、その臨床病型(CTパターンや他の検査所見、臨床経過など)を調べておくことが重要なのです。
また、中止で軽快する場合は話が簡単ですが、薬剤によっては、あるいは肺障害の病型や重症度によっては、ステロイド投与が必要です。たとえば、ゲフィチニブ(イレッサ Ⓡ )で間質性肺炎が生じた場合には、直ちにイレッサ中止とステロイド・パルス療法を行います。そのぐらい、イレッサの肺障害は予後が悪いということがこれまでに知られているわけです。他にも薬剤によっては、肺障害が生じたらこうする、と対応方法が決まっているものもあり、予め準備しておくのがいいでしょう。
診断のところでも書いたように、被疑薬における薬剤性肺障害の報告、その臨床病型(CTパターンや他の検査所見、臨床経過など)を調べておくことが重要なのです。
posted by 長尾大志 at 15:07
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| 間質性肺疾患シリーズ
2025年02月10日
間質性肺疾患について、改めてまとめ20・特発性でない間質性肺疾患・将来どの科に行っても避けて通れない薬剤性肺障害の診断と治療2・診断
第119回医師国家試験、なんとか無事に終えて帰雲して参りました〜。
ということでお話は薬剤性肺障害に戻りまして。
薬剤性肺障害の診断はやはり、まずは薬剤性肺障害を疑うことが重要で、薬剤投与・摂取歴を詳細に聴取することです。これは内科医の基本ではありますが、呼吸器内科医では特に求められるスキルであります。
特に比較的急性〜亜急性に発症し、典型的な特発性間質性肺炎の画像に合致しないようなパターンをとる場合に、疑われます。薬剤性肺障害の可能性があると判断した場合には、被疑薬でそれまでに薬剤性肺障害の報告があるかどうか、あれば、その臨床病型(CTパターンや他の検査所見、臨床経過など)はこのたびの病像に合致するか、を確認する必要があります。
診断基準は、以下の通りです。
•原因となる薬剤の投与歴があること
•他の原因疾患が否定されること
•原因となる薬剤での症例報告があること
•原因となる薬剤の中止により病態が改善すること
•原因となる薬剤の再投与により増悪すること(一般的には勧められない)
薬剤以外の原因、特にすりガラス影を呈する間質性肺炎の原因となる感染症を除外することは重要です。ニューモシスチス肺炎やサイトメガロウイルスをはじめとするウイルス性肺炎では、抗原や血清マーカーがいくつか適用でき、鑑別に役立ちます。
診断の参考に、薬剤リンパ球刺激試験(DLST)がしばしば実施されますが、偽陽性、偽陰性が多く、結果の解釈は難しいものです。クリアカットにこの数字を満たしたら診断、といえるものはありません。
最終的には、経過を含めた総合判断ということになり、臨床的センスが問われるところであります。
ということでお話は薬剤性肺障害に戻りまして。
薬剤性肺障害の診断はやはり、まずは薬剤性肺障害を疑うことが重要で、薬剤投与・摂取歴を詳細に聴取することです。これは内科医の基本ではありますが、呼吸器内科医では特に求められるスキルであります。
特に比較的急性〜亜急性に発症し、典型的な特発性間質性肺炎の画像に合致しないようなパターンをとる場合に、疑われます。薬剤性肺障害の可能性があると判断した場合には、被疑薬でそれまでに薬剤性肺障害の報告があるかどうか、あれば、その臨床病型(CTパターンや他の検査所見、臨床経過など)はこのたびの病像に合致するか、を確認する必要があります。
診断基準は、以下の通りです。
•原因となる薬剤の投与歴があること
•他の原因疾患が否定されること
•原因となる薬剤での症例報告があること
•原因となる薬剤の中止により病態が改善すること
•原因となる薬剤の再投与により増悪すること(一般的には勧められない)
薬剤以外の原因、特にすりガラス影を呈する間質性肺炎の原因となる感染症を除外することは重要です。ニューモシスチス肺炎やサイトメガロウイルスをはじめとするウイルス性肺炎では、抗原や血清マーカーがいくつか適用でき、鑑別に役立ちます。
診断の参考に、薬剤リンパ球刺激試験(DLST)がしばしば実施されますが、偽陽性、偽陰性が多く、結果の解釈は難しいものです。クリアカットにこの数字を満たしたら診断、といえるものはありません。
最終的には、経過を含めた総合判断ということになり、臨床的センスが問われるところであります。
posted by 長尾大志 at 15:26
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| 間質性肺疾患シリーズ
2025年02月06日
間質性肺疾患について、改めてまとめ19・特発性でない間質性肺疾患・将来どの科に行っても避けて通れない薬剤性肺障害の診断と治療
特発性でない間質性肺炎は、特発性のような「病理組織パターン」による分類でなく、その背景、原因となるものによって分類します。将来、呼吸器内科を目指す人もそうでない人も、どんな薬であっても薬を使う以上、避けて通れないのが薬剤性肺障害です。眼内や膀胱内に注入した薬でも起こったりするのです。どの科に行っても必ず遭遇することになるでしょう。
薬剤性肺障害は現在でも非常に重要な疾患群ですが、今後ますます重要度が高まると考えられています。それはなぜか。
近年どんどん開発されている抗癌剤(分子標的薬)、抗リウマチ薬などの副作用として、薬剤性肺障害が多くみられることから、今後ますます症例数の増加が予想されるからです。また、欧米人よりも日本人に発現頻度が高く、遺伝的素因が考えられていることもあります。
『薬剤性肺障害の診断・治療の手引き』が改訂され、『薬剤性肺障害の診断治療の手引き2018』となり、近々2025となりますが、診断や治療の大切なところは変わりません。一番重要な部分を、ごくごくかいつまんで紹介します。
……といいたいところですが、今日から第119回医師国家試験、島根大学生の皆さんに帯同いたしますので、ちょっと切れ切れになるかもです。気長にお待ちくださいませ。
薬剤性肺障害は現在でも非常に重要な疾患群ですが、今後ますます重要度が高まると考えられています。それはなぜか。
近年どんどん開発されている抗癌剤(分子標的薬)、抗リウマチ薬などの副作用として、薬剤性肺障害が多くみられることから、今後ますます症例数の増加が予想されるからです。また、欧米人よりも日本人に発現頻度が高く、遺伝的素因が考えられていることもあります。
『薬剤性肺障害の診断・治療の手引き』が改訂され、『薬剤性肺障害の診断治療の手引き2018』となり、近々2025となりますが、診断や治療の大切なところは変わりません。一番重要な部分を、ごくごくかいつまんで紹介します。
……といいたいところですが、今日から第119回医師国家試験、島根大学生の皆さんに帯同いたしますので、ちょっと切れ切れになるかもです。気長にお待ちくださいませ。
posted by 長尾大志 at 17:00
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| 間質性肺疾患シリーズ
2025年02月05日
間質性肺疾患について、改めてまとめ18・PPFE(pleuroparenchymal fibro-elastosis:胸膜肺実質線維弾性症)
PPFE。正式な日本語の名称はまだガイドラインには明記されていませんが、直訳すれば「胸膜肺実質線維弾性症」となりますので記載してみました。
結核・非結核性抗酸菌症の専門家の先生が、通常肺尖部〜上肺に病変が多く、胸膜が肥厚してくることの多い結核や非結核性抗酸菌症の症例の中に、菌がいないのに同じような病変を呈するものを見出し、それらを集めて「特発性上葉限局型肺線維症(idiopathic pulmonary upper lobe fibrosis:IPUF)」として報告されたのが最初です。徐々に報告が集まるにつれて、「そういえばそういうの、みたことある」みたいな感じで認知されるようになり、最初に報告された網谷先生のお名前から「網谷病」という病名が提唱されました……が、残念ながら広く普及するには至りませんでした。
その認知の過程で、病理学的な特徴からpleuroparenchymal fibroelastosis(PPFE)という用語が作られ、2013年の国際分類で間質性肺炎の中に分類されました。それまで上葉限局型肺線維症とか、上葉優位型肺線維症とか、上葉肺線維症とか、さまざまな病名で呼ばれてきたものを、今はPPFEと呼んでいます。
PPFEは病理組織学的所見を表す用語で、疾患名としては原因のないidiopathic PPFE(IPPFE)と、原因のある二次性PPFEが考えられています。ただし、間質性肺炎ほど因果関係がハッキリしているわけではありませんので、厳密にIPPFEかどうかを決めるというよりは、臨床的、画像的に特徴的なものを「PPFE的な」ということが多いようです。
臨床的には、主に上肺が線維化というか硬くなって縮むことで、ゆっくりと乾性咳嗽や息切れが進行してきます。胸膜が縮むことで再発・難治性の気胸を起こしやすく、胸郭が扁平になってくることが多いです。
ステロイドや免疫抑制薬、それに抗線維化薬といった既存の間質性肺炎に使われる薬剤は、今のところ効果が期待できるような研究結果がありませんし、治療といっても難しいところがあります。進行は人それぞれですが、進み始めると予後は悪い印象です。
外科的肺生検による病理組織診断では、胸膜から始まる線維性肥厚と気腔内を充満する線維化があり、肺胞は肺線維症のように破壊されるのではなく、虚脱し、肺胞壁が折り畳まれ、弾性線維の集簇が観察されます。線維化巣と下方の正常肺の境界は明瞭であるとされています。胸膜がガチガチに縮んで固まってきて拘束性障害を起こすのですが、肺胞領域は換気がなくなるものの、早期には拡散障害が起きにくいので、低酸素血症は目立たないのが特徴です。胸部画像を見ると肺尖の胸膜が分厚くなり、上肺が縮んで肺門や毛髪線が挙上している像が典型的です。CTでも胸膜直下にべたっとした濃度上昇(コンソリデーション)がみられます。
結核・非結核性抗酸菌症の専門家の先生が、通常肺尖部〜上肺に病変が多く、胸膜が肥厚してくることの多い結核や非結核性抗酸菌症の症例の中に、菌がいないのに同じような病変を呈するものを見出し、それらを集めて「特発性上葉限局型肺線維症(idiopathic pulmonary upper lobe fibrosis:IPUF)」として報告されたのが最初です。徐々に報告が集まるにつれて、「そういえばそういうの、みたことある」みたいな感じで認知されるようになり、最初に報告された網谷先生のお名前から「網谷病」という病名が提唱されました……が、残念ながら広く普及するには至りませんでした。
その認知の過程で、病理学的な特徴からpleuroparenchymal fibroelastosis(PPFE)という用語が作られ、2013年の国際分類で間質性肺炎の中に分類されました。それまで上葉限局型肺線維症とか、上葉優位型肺線維症とか、上葉肺線維症とか、さまざまな病名で呼ばれてきたものを、今はPPFEと呼んでいます。
PPFEは病理組織学的所見を表す用語で、疾患名としては原因のないidiopathic PPFE(IPPFE)と、原因のある二次性PPFEが考えられています。ただし、間質性肺炎ほど因果関係がハッキリしているわけではありませんので、厳密にIPPFEかどうかを決めるというよりは、臨床的、画像的に特徴的なものを「PPFE的な」ということが多いようです。
臨床的には、主に上肺が線維化というか硬くなって縮むことで、ゆっくりと乾性咳嗽や息切れが進行してきます。胸膜が縮むことで再発・難治性の気胸を起こしやすく、胸郭が扁平になってくることが多いです。
ステロイドや免疫抑制薬、それに抗線維化薬といった既存の間質性肺炎に使われる薬剤は、今のところ効果が期待できるような研究結果がありませんし、治療といっても難しいところがあります。進行は人それぞれですが、進み始めると予後は悪い印象です。
外科的肺生検による病理組織診断では、胸膜から始まる線維性肥厚と気腔内を充満する線維化があり、肺胞は肺線維症のように破壊されるのではなく、虚脱し、肺胞壁が折り畳まれ、弾性線維の集簇が観察されます。線維化巣と下方の正常肺の境界は明瞭であるとされています。胸膜がガチガチに縮んで固まってきて拘束性障害を起こすのですが、肺胞領域は換気がなくなるものの、早期には拡散障害が起きにくいので、低酸素血症は目立たないのが特徴です。胸部画像を見ると肺尖の胸膜が分厚くなり、上肺が縮んで肺門や毛髪線が挙上している像が典型的です。CTでも胸膜直下にべたっとした濃度上昇(コンソリデーション)がみられます。
posted by 長尾大志 at 17:40
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| 間質性肺疾患シリーズ
2025年02月04日
間質性肺疾患について、改めてまとめ17・CPFE(気腫合併肺線維症)
CPFE(combined pulmonary fibrosis and emphysema:気腫合併肺線維症)はその名前自体がすでに下火になっているとの話もありますが、こういう言葉が使われていた、ということくらいは知っておくといいでしょう。
最近は、「気腫合併肺線維症」「気腫合併の線維化」といわれることが多いかと思いますが、まだCPFEという用語を使われる方もおられますので、知っておくといいでしょう。
そもそもCOPDって喫煙者の病気で、肺線維症もこれまた喫煙者が多くて、以前から肺線維症症例のCTをよく見ると、喫煙者ではけっこう気腫があるということがよく知られていました。
典型的には、気腫は上肺優位で、肺胞が破壊されて肺が伸びる病変です。一方、線維化は下肺・胸膜直下優位で、縮む病変で、肺野にすりガラス影などの白っぽい病変、あるいは網状影、蜂巣肺などが出てきます。そういう、COPDと線維化病変の合併したような病態をCPFEと名付けたわけです。
典型例では上肺が黒っぽくなって伸びて、下肺が白っぽくなって縮みます。気腫があるところは肺胞がないので、そういうところに線維化が起こってくると、元々正常なところに肺線維症が起こってきたときのようなガチガチの線維化にはならない印象です。気腫が優位で黒っぽくなっている中の胸膜直下に、ちょろっと蜂巣肺みたいな、壁の薄い、大きめの、癒合したりもする嚢胞が主体であればCPFE、と考えていいんじゃないかと思います。
気腫が合併した肺線維症には、高度のガス交換障害と肺高血圧症が起こりやすく、肺癌の合併も高頻度でみられます。そんなところから、注意を喚起する意味でCPFEという概念が提唱されたのだと思います。
しかしながら、IPFもCOPDも肺高血圧や肺癌のリスクを持ちますから、合併すれば肺高血圧だって肺癌だって起きるよね、多くて当たり前でしょう、というわけで、独立した疾患として取り扱うほどのモノでもない、との論調になっているようです。
最近は、「気腫合併肺線維症」「気腫合併の線維化」といわれることが多いかと思いますが、まだCPFEという用語を使われる方もおられますので、知っておくといいでしょう。
そもそもCOPDって喫煙者の病気で、肺線維症もこれまた喫煙者が多くて、以前から肺線維症症例のCTをよく見ると、喫煙者ではけっこう気腫があるということがよく知られていました。
典型的には、気腫は上肺優位で、肺胞が破壊されて肺が伸びる病変です。一方、線維化は下肺・胸膜直下優位で、縮む病変で、肺野にすりガラス影などの白っぽい病変、あるいは網状影、蜂巣肺などが出てきます。そういう、COPDと線維化病変の合併したような病態をCPFEと名付けたわけです。
典型例では上肺が黒っぽくなって伸びて、下肺が白っぽくなって縮みます。気腫があるところは肺胞がないので、そういうところに線維化が起こってくると、元々正常なところに肺線維症が起こってきたときのようなガチガチの線維化にはならない印象です。気腫が優位で黒っぽくなっている中の胸膜直下に、ちょろっと蜂巣肺みたいな、壁の薄い、大きめの、癒合したりもする嚢胞が主体であればCPFE、と考えていいんじゃないかと思います。
気腫が合併した肺線維症には、高度のガス交換障害と肺高血圧症が起こりやすく、肺癌の合併も高頻度でみられます。そんなところから、注意を喚起する意味でCPFEという概念が提唱されたのだと思います。
しかしながら、IPFもCOPDも肺高血圧や肺癌のリスクを持ちますから、合併すれば肺高血圧だって肺癌だって起きるよね、多くて当たり前でしょう、というわけで、独立した疾患として取り扱うほどのモノでもない、との論調になっているようです。
posted by 長尾大志 at 12:37
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| 間質性肺疾患シリーズ
2025年02月03日
間質性肺疾患について、改めてまとめ16・軽微な間質性陰影(Interstitial lung abnormalities:ILA)
以前から、無症状な一般の方に行う検診などの胸部CT検査で、肺野に何やらちょっとした網状影が見られる、ということが経験されていたのですが、そのうちその陰影が進行してれっきとした間質性肺疾患になっていく、ということが無視できない程度ある、ということで注意喚起のために設定されたような用語です。
Fleischner SocietyによるILA論文では「臨床的に間質性肺疾患(ILD)が疑われないケースで、間質性肺疾患に適合する可能性のある特定のCT所見」とされています。ILAは喫煙者の4〜9%、非喫煙者の2〜7%に認められるとされており、肺癌検診の普及によって同定例が増えていくと予想されています。
実際問題として、他の目的でCTをとった時に「ILA」みたいな所見がついたときにどうするか、というのは結構悩ましい問題であったりします。で、ILAがその後どうなっていくかについては調査が進められているところで、経過で特発性肺線維症(IPF)や慢性過敏性肺炎(CHP)に進行するものがあったり、化学療法や手術などで悪化するリスクがあったりするようで、「注意深く経過を見ていく必要がある」ことになると思います。
もちろん特に変化がないケースもあり、どういった症例でリスクが高いのか、更なる事例の集積が必要なようですが、少なくとも病変の拡大や症状発現など増悪傾向がみられたら、専門医に紹介・照会頂くのが無難かなというところになってしまいます。
Fleischner SocietyによるILA論文では「臨床的に間質性肺疾患(ILD)が疑われないケースで、間質性肺疾患に適合する可能性のある特定のCT所見」とされています。ILAは喫煙者の4〜9%、非喫煙者の2〜7%に認められるとされており、肺癌検診の普及によって同定例が増えていくと予想されています。
実際問題として、他の目的でCTをとった時に「ILA」みたいな所見がついたときにどうするか、というのは結構悩ましい問題であったりします。で、ILAがその後どうなっていくかについては調査が進められているところで、経過で特発性肺線維症(IPF)や慢性過敏性肺炎(CHP)に進行するものがあったり、化学療法や手術などで悪化するリスクがあったりするようで、「注意深く経過を見ていく必要がある」ことになると思います。
もちろん特に変化がないケースもあり、どういった症例でリスクが高いのか、更なる事例の集積が必要なようですが、少なくとも病変の拡大や症状発現など増悪傾向がみられたら、専門医に紹介・照会頂くのが無難かなというところになってしまいます。
posted by 長尾大志 at 18:39
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| 間質性肺疾患シリーズ
2025年02月02日
間質性肺疾患について、改めてまとめ15・進行性肺線維症(Progressive Pulmonary Fibrosis:PPF)
しかしながら、2022年に改訂された国際ガイドラインではPF-ILDという用語は姿を消し、代わりにPPFという用語が登場します。結論から書くと、基本的にはPF-ILDと同じようなものを指しますが、彼らお得意の「ちょっと用語を替えて論文を量産する」作戦の賜?ということになります。迷惑この上ない。
愚痴っていても仕方ないので整理しますと、PPFというのは、要は画像的に肺線維症の特徴がある間質性肺疾患で、過去1年以内に「呼吸器症状の悪化」「呼吸機能上病状の進行」「画像での線維化の進行」の3つのうち少なくとも2つ以上があり、他に説明できない場合と定義されています。要は、「進行する線維化」です。PF-ILDとの最大の違いはIPFを含まない、ということで、これは定義に明記されています。
PPFでもガイドライン上はニンテダニブの使用が推奨されます。添付文書上は効能・効果の一つとして「進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)」とありますが、これはガイドラインを踏まえての修正が間に合っていないだけで、PPFでの使用はダメ、ということにはならないでしょう。
とまあ新しい概念のご紹介をすると、「文献はよ!?」「根拠論文!?」といわれますが、ご安心ください。ただいま絶賛改訂作業中、近日発売予定の『やさしイイ呼吸器教室 第4版』ではそのあたりしっかり記載しておりますので、お楽しみに〜
PPFでもガイドライン上はニンテダニブの使用が推奨されます。添付文書上は効能・効果の一つとして「進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)」とありますが、これはガイドラインを踏まえての修正が間に合っていないだけで、PPFでの使用はダメ、ということにはならないでしょう。
とまあ新しい概念のご紹介をすると、「文献はよ!?」「根拠論文!?」といわれますが、ご安心ください。ただいま絶賛改訂作業中、近日発売予定の『やさしイイ呼吸器教室 第4版』ではそのあたりしっかり記載しておりますので、お楽しみに〜
posted by 長尾大志 at 09:30
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2025年02月01日
間質性肺疾患について、改めてまとめ14・特発性群のうち覚えるべき?疾患(用語)❺PF-ILD
最近提唱され、ますます初学者や非専門の先生方にとって鬼門となりつつある、新しい用語とその位置づけについても触れておきましょう。
進行性線維化を伴う間質性肺疾患(progressive fibrosing interstitial lung disease:PF-ILD)
まず諸悪の根源!?のPF-ILD。そもそもはIPF以外にも膠原病合併間質性肺炎、過敏性肺炎、INSIPなど特発性群、分類不能型間質性肺炎、サルコイドーシスなど、着々と線維化が進行して予後が不良な症例が少なからずみられていました。そこで対象がIPFに限定されていたニンテダニブを、そういう症例にも使えないものか、という心ある呼吸器科医の思いがあったわけです。
しかしながらIPF以外の間質性肺炎では、間質業界の「診断至上主義」のために、ハードルの高い肺生検〜MDDを経ないとなかなか抗線維化薬が使えない、といった事情がありました。そこにもっとたくさん売れるように、というメーカーの思惑とが絡み合った?国際共同治験(INBUILD試験)が組まれ、めでたくニンテダニブはそういった疾患群に有効、という結果を示し、広く使われるようになりました。その際に定義された用語がPF-ILD、と理解していただければよろしいかと思います。
定義としては上記治験で使われた、「適切な病気の管理にもかかわらず、24ヶ月の間に努力肺活量(FVC)の低下、画像上肺線維化の悪化が進行、呼吸器症状の悪化を認める」などの項目を組合せた基準が用いられました。この基準にはIPFも含まれ、そういった疾患群で抗線維化剤が有効であることも明らかにされました。
しかしながら、2022年に改訂された国際ガイドラインではPF-ILDという用語は姿を消し、代わりに……
進行性線維化を伴う間質性肺疾患(progressive fibrosing interstitial lung disease:PF-ILD)
まず諸悪の根源!?のPF-ILD。そもそもはIPF以外にも膠原病合併間質性肺炎、過敏性肺炎、INSIPなど特発性群、分類不能型間質性肺炎、サルコイドーシスなど、着々と線維化が進行して予後が不良な症例が少なからずみられていました。そこで対象がIPFに限定されていたニンテダニブを、そういう症例にも使えないものか、という心ある呼吸器科医の思いがあったわけです。
しかしながらIPF以外の間質性肺炎では、間質業界の「診断至上主義」のために、ハードルの高い肺生検〜MDDを経ないとなかなか抗線維化薬が使えない、といった事情がありました。そこにもっとたくさん売れるように、というメーカーの思惑とが絡み合った?国際共同治験(INBUILD試験)が組まれ、めでたくニンテダニブはそういった疾患群に有効、という結果を示し、広く使われるようになりました。その際に定義された用語がPF-ILD、と理解していただければよろしいかと思います。
定義としては上記治験で使われた、「適切な病気の管理にもかかわらず、24ヶ月の間に努力肺活量(FVC)の低下、画像上肺線維化の悪化が進行、呼吸器症状の悪化を認める」などの項目を組合せた基準が用いられました。この基準にはIPFも含まれ、そういった疾患群で抗線維化剤が有効であることも明らかにされました。
しかしながら、2022年に改訂された国際ガイドラインではPF-ILDという用語は姿を消し、代わりに……
posted by 長尾大志 at 21:12
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2025年01月31日
間質性肺疾患について、改めてまとめ13・特発性群のうち覚えるべき疾患 ❸COP(特発性器質化肺炎)
Epler、Colbyらが1983〜1985年にかけて提唱した疾患概念です。当初はBOOPと呼ばれていました。
亜急性、すなわち週〜月単位の発症で、徐々に進行します。ときに自然消退もあるほどで、一般的にはステロイドが著効し、予後良好といわれています。
同じ「特発性」という訳になるのに、IPFはじめとする多くの間質性肺炎たちはidiopathicで、これだけcryptogenicなのは不思議ですね。idiopathicはギリシャ語の "idios"(自身の)と "pathos"(病気)に由来し、「それ自体の病気」を意味します。一方cryptogenicはギリシャ語の "kryptos"(隠れた)と "genesis"(起源)に由来し、「隠れた起源」を意味します。idiopathicは、病気が「それ自体の特性を持つ」ことを強調し、原因が不明であっても独自の特徴を持つ疾患を指しますが、cryptogenicは、病気の原因が「隠れている」または「不明」であることを強調しているそうです。
画像所見は一見、細菌性肺炎に似た浸潤影が、胸膜直下主体・斑状に分布します。
器質化肺炎は分類としては間質性肺炎に含まれるのですが、病理学的に肺胞領域の胞隔炎・浸出液(器質化肺炎:OP)と、細気管支のポリープ様閉塞性変化(閉塞性細気管支炎:BO)が特徴的で、肺胞を埋めつくす病変が多いため、すりガラス影というよりもむしろ浸潤影よりの濃い陰影をつくることが多いとされています。
また、教科書によっては「1/3の症例で移動する」などと書かれていますが、実際、病変がえっちらおっちら移動するはずもなく、ある部分が自然消退して別の部分に新病変が出てきたのを、そう表現していると思ってください。
COPの病理パターンはOP : organizing pneumonia(器質化肺炎)です。器質化肺炎(OP)と、閉塞性細気管支炎(BO)が特徴的であることから、BO+OP=BOOP(ブープ)という名称が使われていたこともありましたが、いつの間にかCOPにとって代わられました。
胞隔炎ではリンパ球浸潤がみられますので、肺胞洗浄液の中にもリンパ球が多く含まれるであろうことは想像に難くありません。診断基準として明確なカットオフ値があるわけではありませんが、ある報告では、
•肺胞洗浄液中、リンパ球分画>25%、かつCD4+/CD8+<0.9
•そして、次の3項目のうち少なくとも2項目を満たす。
@泡沫マクロファージ>20%
A好中球>5%
B好酸球 2〜25%
という基準が提唱されていますので、リンパ球分画>25%というのは診断の1つの目安になるでしょう。
また、間質性肺炎の中ではOPパターンは、経気管支肺生検(TBLB)で採取できる数mm大の組織でも診断が可能ですので、HRCTでOPパターンならBALとTBLBで診断することが可能です。
OP(器質化肺炎)の病理組織は、感染症、膠原病、薬剤性間質性肺炎、悪性腫瘍などでもみられます。OPの病理組織を持ち、原因のない(わからない)特発性間質性肺炎をCOPと呼ぶわけです。
亜急性、すなわち週〜月単位の発症で、徐々に進行します。ときに自然消退もあるほどで、一般的にはステロイドが著効し、予後良好といわれています。
同じ「特発性」という訳になるのに、IPFはじめとする多くの間質性肺炎たちはidiopathicで、これだけcryptogenicなのは不思議ですね。idiopathicはギリシャ語の "idios"(自身の)と "pathos"(病気)に由来し、「それ自体の病気」を意味します。一方cryptogenicはギリシャ語の "kryptos"(隠れた)と "genesis"(起源)に由来し、「隠れた起源」を意味します。idiopathicは、病気が「それ自体の特性を持つ」ことを強調し、原因が不明であっても独自の特徴を持つ疾患を指しますが、cryptogenicは、病気の原因が「隠れている」または「不明」であることを強調しているそうです。
画像所見は一見、細菌性肺炎に似た浸潤影が、胸膜直下主体・斑状に分布します。
器質化肺炎は分類としては間質性肺炎に含まれるのですが、病理学的に肺胞領域の胞隔炎・浸出液(器質化肺炎:OP)と、細気管支のポリープ様閉塞性変化(閉塞性細気管支炎:BO)が特徴的で、肺胞を埋めつくす病変が多いため、すりガラス影というよりもむしろ浸潤影よりの濃い陰影をつくることが多いとされています。
また、教科書によっては「1/3の症例で移動する」などと書かれていますが、実際、病変がえっちらおっちら移動するはずもなく、ある部分が自然消退して別の部分に新病変が出てきたのを、そう表現していると思ってください。
COPの病理パターンはOP : organizing pneumonia(器質化肺炎)です。器質化肺炎(OP)と、閉塞性細気管支炎(BO)が特徴的であることから、BO+OP=BOOP(ブープ)という名称が使われていたこともありましたが、いつの間にかCOPにとって代わられました。
胞隔炎ではリンパ球浸潤がみられますので、肺胞洗浄液の中にもリンパ球が多く含まれるであろうことは想像に難くありません。診断基準として明確なカットオフ値があるわけではありませんが、ある報告では、
•肺胞洗浄液中、リンパ球分画>25%、かつCD4+/CD8+<0.9
•そして、次の3項目のうち少なくとも2項目を満たす。
@泡沫マクロファージ>20%
A好中球>5%
B好酸球 2〜25%
という基準が提唱されていますので、リンパ球分画>25%というのは診断の1つの目安になるでしょう。
また、間質性肺炎の中ではOPパターンは、経気管支肺生検(TBLB)で採取できる数mm大の組織でも診断が可能ですので、HRCTでOPパターンならBALとTBLBで診断することが可能です。
OP(器質化肺炎)の病理組織は、感染症、膠原病、薬剤性間質性肺炎、悪性腫瘍などでもみられます。OPの病理組織を持ち、原因のない(わからない)特発性間質性肺炎をCOPと呼ぶわけです。
posted by 長尾大志 at 20:08
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| 間質性肺疾患シリーズ
2025年01月29日
間質性肺疾患について、改めてまとめ12・特発性群のうち覚えるべき疾患 ❷INSIP (特発性非特異性間質性肺炎)
1994年Katzensteinにより提唱された疾患概念です。当初は、それまで分類されていた間質性肺炎の、どのタイプにも当てはまらない病理パターンがあるな〜、という感じで、今までになかったやつ、という意味で「nonspecific=非特異性」なんちゅう名前がついてしまったのですね。
気軽に、「じゃあこれもnonspecificで、これも、これも」と、症例を集積していったら、修正されるタイミングのないまま今に至ってしまった、ある意味かわいそうな(?)疾患群です。
で、似たような病理組織をパターン分類してまとめてみると、症例数も結構多かったのです。名前からして多そうなIPF=UIP(通常型間質性肺炎)に次いでよく見られます。
慢性に経過する特発性肺線維症(IPF)よりは少し早い経過(亜急性、と表現されます)の間質性肺炎です。IPFの「慢性」は月〜年単位、「亜急性」は週〜月単位の変化を表します。
細胞型と線維化型があり、細胞型の予後は特発性器質化肺炎(COP)とほぼ同等、つまり、結構良いです。線維化型の予後は細胞型より悪いものの、IPFよりは良く、ステロイド治療の甲斐があることが多いです。
HRCTでは蜂巣肺形成は少なく、すりガラス影や網状影が主体です。この画像の特徴も、予後が比較的(IPFよりも)良いことを象徴しています。というのは、蜂巣肺は肺胞が破壊され構造改変が起こってしまっている、ガチの線維化病変を表しますが、すりガラス影は細胞浸潤や炎症の部位も含んでいるとされているからです。
分布はIPFと同じく、肺底部と胸膜直下優位となります。典型的には、気管支と血管の走行に沿って陰影が分布します。
INSIPの病理組織型は、NSIP : nonspecific interstitial pneumonia(非特異性間質性肺炎)です。NSIPの病理組織を持ち、原因のない(わからない)特発性間質性肺炎をINSIPと呼ぶわけです。
病理学的には、比較的均一に肺胞壁が肥厚し(細胞浸潤/線維化による)、浮腫を来すことで壁が肥厚しているものの、本来の肺組織構造がわりあい保たれているのが特徴で、そのために病変に可逆性がみられます。
肺胞壁にやってきている炎症細胞がリンパ球主体であるため、肺胞洗浄液(BALF)中にもリンパ球増多が見られることは理解しやすいと思います。リンパ球主体の炎症反応にはステロイドが効果を示しますから、INSIPの予後が比較的良いのもこれまた理解しやすいところです。
ただ、当初INSIPと考えられていたものの、経過の中で線維化が進行しIPFのような転帰を辿る症例もあったりして、なかなか最初の診断時に転機や予後まで予測できる、とはならないのが難しいところです。ここでも、治療反応を含めた経過を含めて診断を考える、という考え方が必要になってきます。
気軽に、「じゃあこれもnonspecificで、これも、これも」と、症例を集積していったら、修正されるタイミングのないまま今に至ってしまった、ある意味かわいそうな(?)疾患群です。
で、似たような病理組織をパターン分類してまとめてみると、症例数も結構多かったのです。名前からして多そうなIPF=UIP(通常型間質性肺炎)に次いでよく見られます。
慢性に経過する特発性肺線維症(IPF)よりは少し早い経過(亜急性、と表現されます)の間質性肺炎です。IPFの「慢性」は月〜年単位、「亜急性」は週〜月単位の変化を表します。
細胞型と線維化型があり、細胞型の予後は特発性器質化肺炎(COP)とほぼ同等、つまり、結構良いです。線維化型の予後は細胞型より悪いものの、IPFよりは良く、ステロイド治療の甲斐があることが多いです。
HRCTでは蜂巣肺形成は少なく、すりガラス影や網状影が主体です。この画像の特徴も、予後が比較的(IPFよりも)良いことを象徴しています。というのは、蜂巣肺は肺胞が破壊され構造改変が起こってしまっている、ガチの線維化病変を表しますが、すりガラス影は細胞浸潤や炎症の部位も含んでいるとされているからです。
分布はIPFと同じく、肺底部と胸膜直下優位となります。典型的には、気管支と血管の走行に沿って陰影が分布します。
INSIPの病理組織型は、NSIP : nonspecific interstitial pneumonia(非特異性間質性肺炎)です。NSIPの病理組織を持ち、原因のない(わからない)特発性間質性肺炎をINSIPと呼ぶわけです。
病理学的には、比較的均一に肺胞壁が肥厚し(細胞浸潤/線維化による)、浮腫を来すことで壁が肥厚しているものの、本来の肺組織構造がわりあい保たれているのが特徴で、そのために病変に可逆性がみられます。
肺胞壁にやってきている炎症細胞がリンパ球主体であるため、肺胞洗浄液(BALF)中にもリンパ球増多が見られることは理解しやすいと思います。リンパ球主体の炎症反応にはステロイドが効果を示しますから、INSIPの予後が比較的良いのもこれまた理解しやすいところです。
ただ、当初INSIPと考えられていたものの、経過の中で線維化が進行しIPFのような転帰を辿る症例もあったりして、なかなか最初の診断時に転機や予後まで予測できる、とはならないのが難しいところです。ここでも、治療反応を含めた経過を含めて診断を考える、という考え方が必要になってきます。
posted by 長尾大志 at 10:21
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| 間質性肺疾患シリーズ
2025年01月28日
間質性肺疾患について、改めてまとめ11・特発性群のうち覚えるべき疾患 ❶IPF (特発性肺線維症)
IPF:idiopathic pulmonary fibrosis(特発性肺線維症)は、IIPsの中で最も多く、慢性型で線維化のある間質性肺炎で、ゆっくりと着実に悪化し、ステロイドの効果は期待できないとされています。
肺の下・外側(肺の中で一番よく動くところ)に間質性肺炎〜線維化病変(蜂巣肺)が生じ、カチカチに硬くなることで肺が動かなくなり、拘束性障害(肺活量が低下)となります。間質の変化を反映して拡散障害が生じ、著しい労作時呼吸困難を来します。
身体所見としては、ばち指や、細かい断続性ラ音(捻髪音・ベルクロラ音・fine crackles)が特徴的です。
HRCTで肺底部と胸膜直下優位に浸潤影・すりガラス影・蜂巣肺形成を認めます。典型的なものは、それだけでIPFの診断基準にも用いられるほど特徴的で、UIPパターンと呼ばれています。
病理組織型は、通常型間質性肺炎(UIP : usual interstitial pneumonia)です。その名の通り、間質性肺炎の中では通常よく見られる病型とされています。
UIPの病理組織は、膠原病、石綿肺、慢性過敏性肺炎、薬剤性間質性肺炎などでも見られます。UIPの病理組織を持ち、原因のない(わからない)特発性間質性肺炎をIPFと呼ぶわけです。原因のあるものは各々の原因で分類します。
IPFの治療は、もはやステロイドや免疫抑制薬は使いません。
抗線維化薬として鳴り物入りで登場したピルフェニドン(ピレスパ Ⓡ)やニンテダニブ(オフェブⓇ)にしても、進行してしまった線維化を戻す能力は期待できませんので、軽症例で進行を抑える、というのが現実的な使い方かもしれません。とはいえ軽症例で使うには、薬価の問題や副作用が多すぎてためらわれることも多いです。
IPFでは気管支肺胞洗浄液(BALF)の細胞分画はおおむね健常者と大差がない、すなわちマクロファージ主体であることが特徴とされています。ところが、HRCTでUIPパターンを示しIPFと思われた症例でも、BALF中のリンパ球が増えていることがあり、そういう症例ではステロイド反応性が良好である、ということがしばしば経験されています。
ここはいろいろと議論があり、そういう症例って、実は後述するNSIPやCOP、あるいは、膠原病性間質性肺炎やその他の「リンパ球が増加する間質性肺炎」ではないか、といわれていたりもするのです。
というのも、前述の通りIPFは外科的肺生検を行わずに臨床診断することが多いのですが、HRCTでUIPパターンを示していても外科的肺生検をした例では病理組織的にはNSIPだった、とかCOPだった、というケースが見受けられるのです。
また、膠原病も、肺病変先行型膠原病といって、当初は肺病変(間質性肺炎)だけが起こり、特発性群と考えられたものの、経過中に他臓器の症状が出現し、あとで膠原病と診断されるケースもこれまた少なくありません。
NSIPやCOP、それに膠原病に合併した間質性肺炎では、肺胞洗浄液中のリンパ球が増えていることが多く、かつステロイド反応性もよく、予後も良好であることが多いのです。
というわけで、HRCTでUIPパターンを示しているが、BALFでリンパ球が増加している症例をどう考えるか…。
患者さんにとって大切なことは、厳密な診断(本当の意味でIPFかどうか)を下すよりも、治療方針を決めることです。
外科的肺生検を行わない間質性肺炎症例において、病理組織所見をどう名付けるかは、高度に専門的な(しばしば意見の統一をみない)話になります。そこで議論をするよりも、少なくとも肺胞洗浄液でリンパ球が多い方が、組織学的に線維化が軽度で炎症成分が多く、ステロイドに反応することが期待される、と考えるほうが、患者さんにとって利のあることではないかと考えます。
ガイドラインでも、治療反応を含めた経過を含めて診断を考える、ということが妥当であるとされています。そういった症例ではひとまずステロイドの反応性を確認し、効果があれば継続、効果がない、悪化傾向あれば抗線維化薬を投与、という治療方針が許容されるのではないでしょうか。
肺の下・外側(肺の中で一番よく動くところ)に間質性肺炎〜線維化病変(蜂巣肺)が生じ、カチカチに硬くなることで肺が動かなくなり、拘束性障害(肺活量が低下)となります。間質の変化を反映して拡散障害が生じ、著しい労作時呼吸困難を来します。
身体所見としては、ばち指や、細かい断続性ラ音(捻髪音・ベルクロラ音・fine crackles)が特徴的です。
HRCTで肺底部と胸膜直下優位に浸潤影・すりガラス影・蜂巣肺形成を認めます。典型的なものは、それだけでIPFの診断基準にも用いられるほど特徴的で、UIPパターンと呼ばれています。
病理組織型は、通常型間質性肺炎(UIP : usual interstitial pneumonia)です。その名の通り、間質性肺炎の中では通常よく見られる病型とされています。
UIPの病理組織は、膠原病、石綿肺、慢性過敏性肺炎、薬剤性間質性肺炎などでも見られます。UIPの病理組織を持ち、原因のない(わからない)特発性間質性肺炎をIPFと呼ぶわけです。原因のあるものは各々の原因で分類します。
IPFの治療は、もはやステロイドや免疫抑制薬は使いません。
抗線維化薬として鳴り物入りで登場したピルフェニドン(ピレスパ Ⓡ)やニンテダニブ(オフェブⓇ)にしても、進行してしまった線維化を戻す能力は期待できませんので、軽症例で進行を抑える、というのが現実的な使い方かもしれません。とはいえ軽症例で使うには、薬価の問題や副作用が多すぎてためらわれることも多いです。
IPFでは気管支肺胞洗浄液(BALF)の細胞分画はおおむね健常者と大差がない、すなわちマクロファージ主体であることが特徴とされています。ところが、HRCTでUIPパターンを示しIPFと思われた症例でも、BALF中のリンパ球が増えていることがあり、そういう症例ではステロイド反応性が良好である、ということがしばしば経験されています。
ここはいろいろと議論があり、そういう症例って、実は後述するNSIPやCOP、あるいは、膠原病性間質性肺炎やその他の「リンパ球が増加する間質性肺炎」ではないか、といわれていたりもするのです。
というのも、前述の通りIPFは外科的肺生検を行わずに臨床診断することが多いのですが、HRCTでUIPパターンを示していても外科的肺生検をした例では病理組織的にはNSIPだった、とかCOPだった、というケースが見受けられるのです。
また、膠原病も、肺病変先行型膠原病といって、当初は肺病変(間質性肺炎)だけが起こり、特発性群と考えられたものの、経過中に他臓器の症状が出現し、あとで膠原病と診断されるケースもこれまた少なくありません。
NSIPやCOP、それに膠原病に合併した間質性肺炎では、肺胞洗浄液中のリンパ球が増えていることが多く、かつステロイド反応性もよく、予後も良好であることが多いのです。
というわけで、HRCTでUIPパターンを示しているが、BALFでリンパ球が増加している症例をどう考えるか…。
患者さんにとって大切なことは、厳密な診断(本当の意味でIPFかどうか)を下すよりも、治療方針を決めることです。
外科的肺生検を行わない間質性肺炎症例において、病理組織所見をどう名付けるかは、高度に専門的な(しばしば意見の統一をみない)話になります。そこで議論をするよりも、少なくとも肺胞洗浄液でリンパ球が多い方が、組織学的に線維化が軽度で炎症成分が多く、ステロイドに反応することが期待される、と考えるほうが、患者さんにとって利のあることではないかと考えます。
ガイドラインでも、治療反応を含めた経過を含めて診断を考える、ということが妥当であるとされています。そういった症例ではひとまずステロイドの反応性を確認し、効果があれば継続、効果がない、悪化傾向あれば抗線維化薬を投与、という治療方針が許容されるのではないでしょうか。
posted by 長尾大志 at 14:54
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| 間質性肺疾患シリーズ
2025年01月27日
間質性肺疾患について、改めてまとめ10・特発性群の代表的な疾患
前項で挙げた病名、病理所見名をご覧になって、途方に暮れた方も多いと思います。でも、全部を覚える必要はありません。専門家になるのでなければ、さしあたり頻度の多いIPF、INSIP、COP、それに予後の悪いAIPを覚えましょう。
IPF
病名:IPF : idiopathic pulmonary fibrosis(特発性肺線維症)
病理:UIP : usual interstitial pneumonia(通常型間質性肺炎)
INSIP
病名:INSIP : idiopathic nonspecific interstitial pneumonia(特発性非特異性間質性肺炎)
病理:NSIP : nonspecific interstitial pneumonia(非特異性間質性肺炎)
COP
病名:COP : cryptogenic organizing pneumonia(特発性器質化肺炎)
病理:OP : organizing pneumonia(器質化肺炎)
AIP
病名:AIP : acute interstitial pneumonia(急性間質性肺炎)
病理:DAD : diffuse alveolar damage(びまん性肺胞障害)
IPPFEは意外に多いという印象ですが、なにせ治療法が何もない現在ですので、名前とその特徴だけ知っておかれたらいいのではないかと思います(後述)。
上記以外のIIPsについては「本当に特発性か?」というところが議論になっています。
RB-ILDとDIPは喫煙関連肺疾患、つまりタバコが原因とされ、独立して扱われるようになっていますし、LIPは当初リンパ球の多い間質性肺炎という位置づけでしたが、最近ではむしろリンパ増殖性疾患の範疇に入れた方がいいのでは、ともいわれているのです。このあたり、近々見直されるかもしれません。
IPF
病名:IPF : idiopathic pulmonary fibrosis(特発性肺線維症)
病理:UIP : usual interstitial pneumonia(通常型間質性肺炎)
INSIP
病名:INSIP : idiopathic nonspecific interstitial pneumonia(特発性非特異性間質性肺炎)
病理:NSIP : nonspecific interstitial pneumonia(非特異性間質性肺炎)
COP
病名:COP : cryptogenic organizing pneumonia(特発性器質化肺炎)
病理:OP : organizing pneumonia(器質化肺炎)
AIP
病名:AIP : acute interstitial pneumonia(急性間質性肺炎)
病理:DAD : diffuse alveolar damage(びまん性肺胞障害)
IPPFEは意外に多いという印象ですが、なにせ治療法が何もない現在ですので、名前とその特徴だけ知っておかれたらいいのではないかと思います(後述)。
上記以外のIIPsについては「本当に特発性か?」というところが議論になっています。
RB-ILDとDIPは喫煙関連肺疾患、つまりタバコが原因とされ、独立して扱われるようになっていますし、LIPは当初リンパ球の多い間質性肺炎という位置づけでしたが、最近ではむしろリンパ増殖性疾患の範疇に入れた方がいいのでは、ともいわれているのです。このあたり、近々見直されるかもしれません。
posted by 長尾大志 at 20:46
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| 間質性肺疾患シリーズ
2025年01月26日
間質性肺疾患について、改めてまとめ9・「病名」に対応する「病理所見」
昨日お示しした「病名」のうち代表的なものに対応する「病理所見」が、下の7つです。これらは、通常「○○パターン」と呼ばれています。
初学者にとってわかりにくいのは、この「病名」と「病理所見」が微妙に一致していたり、していなかったりするからでしょう。長い歴史の中で、いろいろな病名の混乱・変遷・統合があったためにこうなってしまったのですが、今となっては迷惑なだけですね。
病理組織のパターン分類
UIP : usual interstitial pneumonia
(通常型間質性肺炎)
NSIP : nonspecific interstitial pneumonia
(非特異性間質性肺炎)
OP : organizing pneumonia
(器質化肺炎)
DAD : diffuse alveolar damage
(びまん性肺胞障害)
RB-ILD : respiratory bronchiolitis associated interstitial lung disease
(呼吸細気管支炎を伴う間質性肺炎)
DIP : desquamative interstitial pneumonia
(剥離性間質性肺炎)
LIP : lymphocytic interstitial pneumonia
(リンパ球性間質性肺炎)
PPFE : pleuroparenchymal fibroelastosis
(胸膜肺実質線維弾性症)
「病名」と「病理所見」の対応は、下の表の通りです。
病名 病理所見
IPF UIP
INSIP NSIP
COP OP
AIP DAD
RB-ILD RB-ILD
DIP DIP
ILIP LIP
IPPFE PPFE
特発性群の鑑別には本来、胸腔鏡を用いた生検(外科的肺生検)による大きめの(1 cm単位の)組織標本が必要ですが、実際問題、胸腔鏡のリスク、急性増悪の可能性などを勘案しますと、外科的肺生検を施行する症例はそれほど多くありません。
現在は、臨床経過やHRCT所見、肺胞洗浄液の細胞分画などから臨床的に判断して分類し、治療方針を決定することが多くなっています。
初学者にとってわかりにくいのは、この「病名」と「病理所見」が微妙に一致していたり、していなかったりするからでしょう。長い歴史の中で、いろいろな病名の混乱・変遷・統合があったためにこうなってしまったのですが、今となっては迷惑なだけですね。
病理組織のパターン分類
UIP : usual interstitial pneumonia
(通常型間質性肺炎)
NSIP : nonspecific interstitial pneumonia
(非特異性間質性肺炎)
OP : organizing pneumonia
(器質化肺炎)
DAD : diffuse alveolar damage
(びまん性肺胞障害)
RB-ILD : respiratory bronchiolitis associated interstitial lung disease
(呼吸細気管支炎を伴う間質性肺炎)
DIP : desquamative interstitial pneumonia
(剥離性間質性肺炎)
LIP : lymphocytic interstitial pneumonia
(リンパ球性間質性肺炎)
PPFE : pleuroparenchymal fibroelastosis
(胸膜肺実質線維弾性症)
「病名」と「病理所見」の対応は、下の表の通りです。
病名 病理所見
IPF UIP
INSIP NSIP
COP OP
AIP DAD
RB-ILD RB-ILD
DIP DIP
ILIP LIP
IPPFE PPFE
特発性群の鑑別には本来、胸腔鏡を用いた生検(外科的肺生検)による大きめの(1 cm単位の)組織標本が必要ですが、実際問題、胸腔鏡のリスク、急性増悪の可能性などを勘案しますと、外科的肺生検を施行する症例はそれほど多くありません。
現在は、臨床経過やHRCT所見、肺胞洗浄液の細胞分画などから臨床的に判断して分類し、治療方針を決定することが多くなっています。
posted by 長尾大志 at 11:26
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| 間質性肺疾患シリーズ
2025年01月25日
間質性肺疾患について、改めてまとめ8・特発性群の分類
病名の分類
IIPs: idiopathic interstitial pneumonias(特発性間質性肺炎群)は、2013年に改訂された国際分類で、以下のように分けられました。
主要特発性間質性肺炎(major IIPs)
•慢性線維化性間質性肺炎
IPF : idiopathic pulmonary fibrosis
(特発性肺線維症)
INSIP : idiopathic nonspecific interstitial pneumonia
(特発性非特異性間質性肺炎)
•喫煙関連間質性肺炎
RB-ILD : respiratory bronchiolitis associated interstitial lung disease
(呼吸細気管支炎を伴う間質性肺炎)
DIP : desquamative interstitial pneumonia
(剥離性間質性肺炎)
•急性/亜急性間質性肺炎
COP : cryptogenic organizing pneumonia
(特発性器質化肺炎)
AIP : acute interstitial pneumonia
(急性間質性肺炎)
稀少特発性間質性肺炎(rare IIPs)
ILIP : idiopathic lymphocytic interstitial pneumonia
(特発性リンパ球性間質性肺炎)
IPPFE : idiopathic pleuroparenchymal fibroelastosis
(特発性胸膜肺実質線維弾性症)
IIPs: idiopathic interstitial pneumonias(特発性間質性肺炎群)は、2013年に改訂された国際分類で、以下のように分けられました。
主要特発性間質性肺炎(major IIPs)
•慢性線維化性間質性肺炎
IPF : idiopathic pulmonary fibrosis
(特発性肺線維症)
INSIP : idiopathic nonspecific interstitial pneumonia
(特発性非特異性間質性肺炎)
•喫煙関連間質性肺炎
RB-ILD : respiratory bronchiolitis associated interstitial lung disease
(呼吸細気管支炎を伴う間質性肺炎)
DIP : desquamative interstitial pneumonia
(剥離性間質性肺炎)
•急性/亜急性間質性肺炎
COP : cryptogenic organizing pneumonia
(特発性器質化肺炎)
AIP : acute interstitial pneumonia
(急性間質性肺炎)
稀少特発性間質性肺炎(rare IIPs)
ILIP : idiopathic lymphocytic interstitial pneumonia
(特発性リンパ球性間質性肺炎)
IPPFE : idiopathic pleuroparenchymal fibroelastosis
(特発性胸膜肺実質線維弾性症)
posted by 長尾大志 at 15:57
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| 間質性肺疾患シリーズ
2025年01月24日
間質性肺疾患について、改めてまとめ7・シンプルな診断・治療手順(非専門医向け)
結局ガイドラインでどうなったか、というと、以前はUIPパターン以外の(つまり蜂巣肺がない)症例では外科的肺生検をしないとIPFの診断ができなかったものが、BALとMDDをすればIPFと診断できることになったわけです。
つまり今回のガイドラインにおける診断アルゴリズム変更は、専門病院の先生方が少しでも抗線維化薬を使いやすい方向に変更されたものであって、一般病院の先生方の診断・治療が容易になったわけでは決してありません。
というわけで、ガイドライン自体、多くの初学者の方や非専門医の先生方のお役に立ちませんから、もう少しお役に立つよう、とことんシンプルにしてみましょう。
@とにもかくにも原因があるかないかを追求。原因があれば、除去できるものは除去する。
・膠原病があれば、ステロイド(+免疫抑制薬)治療。
・薬剤性肺障害が疑わしければ、とにかく中止。呼吸不全があればステロイド治療。
・過敏性肺炎が疑わしければ、とにかく抗原隔離。呼吸不全があればステロイド治療。
・感染症が関与していれば、病原体に対する治療。
A原因がなくて、UIPパターンなら、IPFとして診療。
この場合、治療としてはよほどのことがない限り、抗線維化薬(ニンテダニブ、ピルフェニドン)になります。
B原因がなくて、UIPパターン以外なら、専門家にコンサルト。BALや外科的肺生検を行い、診断・治療をしていく。
……というのが建前ですが、実際はコンサルトできる距離に専門家がいない、ということも多く、低酸素があるような急を要する状態であればステロイド治療、CTで線維化が確認されたらステロイド+抗線維化薬、というような治療をされているのが現実ではないかと推察します。
つまり今回のガイドラインにおける診断アルゴリズム変更は、専門病院の先生方が少しでも抗線維化薬を使いやすい方向に変更されたものであって、一般病院の先生方の診断・治療が容易になったわけでは決してありません。
というわけで、ガイドライン自体、多くの初学者の方や非専門医の先生方のお役に立ちませんから、もう少しお役に立つよう、とことんシンプルにしてみましょう。
@とにもかくにも原因があるかないかを追求。原因があれば、除去できるものは除去する。
・膠原病があれば、ステロイド(+免疫抑制薬)治療。
・薬剤性肺障害が疑わしければ、とにかく中止。呼吸不全があればステロイド治療。
・過敏性肺炎が疑わしければ、とにかく抗原隔離。呼吸不全があればステロイド治療。
・感染症が関与していれば、病原体に対する治療。
A原因がなくて、UIPパターンなら、IPFとして診療。
この場合、治療としてはよほどのことがない限り、抗線維化薬(ニンテダニブ、ピルフェニドン)になります。
B原因がなくて、UIPパターン以外なら、専門家にコンサルト。BALや外科的肺生検を行い、診断・治療をしていく。
……というのが建前ですが、実際はコンサルトできる距離に専門家がいない、ということも多く、低酸素があるような急を要する状態であればステロイド治療、CTで線維化が確認されたらステロイド+抗線維化薬、というような治療をされているのが現実ではないかと推察します。
posted by 長尾大志 at 11:42
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| 間質性肺疾患シリーズ
2025年01月23日
間質性肺疾患について、改めてまとめ6・HRCTの所見
原因がない、見当たらない、となって、HRCTで特発性肺線維症(IPF)に典型的な画像所見がある場合、臨床診断としてIPFと診断して良いとされています。で、その「HRCTで特発性肺線維症(IPF)に典型的な画像所見」ですけれども、いわゆるUIPパターンと呼ばれるものがそれです。
HRCTで両側びまん性の陰影をみたときに、UIPらしいか、そうでないか、ということで、ATS/ERS/JRS/ALAT国際診断ガイドラインでは4パターンに分類されています。
•UIP(UIPらしさ90%以上)
•Probable UIP(70〜89%)
•Indeterminate for UIP(51〜69%)
•Alternative Diagnosis(50%以下)
UIP
•胸膜直下、肺底部優位;分布はしばしば不均一、片側性分布もありうる
•蜂巣肺(末梢の牽引性気管支拡張/細気管支拡張は伴っても伴わなくてもよい)、小葉間隔壁の不規則な肥厚、網状影と軽度すりガラス影、
ここは、そんなに議論のないところです。
Probable UIP
[probable] (確実ではないが)ありそうな、起こりそうな、まず確実な、たぶん…だろう(weblio英和辞典より)
所見としては、
•胸膜直下、肺底部優位:分布はしばしば不均一(正常領域と網状病変が混合)
•末梢の牽引性気管支拡張/細気管支拡張を伴う網状影
•軽度のすりガラス影はあってもよい
•胸膜直下をスペアする(避ける)病変はない
原因不明の慢性線維化のある間質性肺炎でUIPパターンかProbable UIPパターンであれば、IPFの可能性はかなり高いといえるでしょう。
Indeterminate for UIP
[indeterminate] 不確定の、不定の、明確でない、漠然とした、あいまいな、未解決の、未定の(weblio英和辞典より)
つまり、UIPとは決めかねる、ということです。所見としては、
•胸膜直下優位でないびまん性分布
•他に特定の病因を示唆しない肺線維化病変の特徴や分布がみられる
Alternative Diagnosis
[alternative] 二者択一の、代わりとなる、代わりの、慣習的方法をとらない、新しい(weblio英和辞典より)
オルタナティブ・ロックといえば、その時の主流とは違ったスタイルのロックを指すわけですが、この場合のalternativeは、「UIPと違う、別の診断になる」という意味合いです。所見としてはいろいろありますが、例としては
•胸膜直下をスペアする気管支血管側優位分布⇒NSIP
•リンパ管周囲優位⇒サルコイドーシス
•上葉・中葉優位⇒HP、CTD-ILD、サルコイドーシス
•嚢胞⇒LAM、PLCH、LIP、DIP
•モザイクパターン⇒HP
•広範なすりガラス影⇒HP、喫煙関連肺疾患、薬剤
•多数の小葉中心性粒状影⇒HP、喫煙関連肺疾患
•結節影⇒サルコイドーシス
•コンソリデーション⇒OP
•胸膜プラーク⇒アスベスト肺
•拡張した食道⇒CTD-ILD
•胸水・胸膜肥厚⇒CTD-ILD、薬剤
のように、IPFとは別の疾患を考えていくことになります。
HRCTでUIPパターンが認められた場合は、総合的なディスカッション(MDD)を経てIPFと最終診断されます。ただし、MDDができる施設は全国でもごく限られた、臨床、画像、病理の専門家が揃った(もしくは相談できる)施設になりますので、現実的にはMDDを省略されているケースが多いでしょう。
HRCTでUIPパターン以外の場合は、気管支鏡検査でBALもしくは外科的肺生検による病理診断を行って、MDDにより間質性肺炎の診断をしていくことになっています。ここでも、気管支鏡はともかくMDD、外科的肺生検といった、一般病院にはハードルの高い文言が並んでいます。
HRCTで両側びまん性の陰影をみたときに、UIPらしいか、そうでないか、ということで、ATS/ERS/JRS/ALAT国際診断ガイドラインでは4パターンに分類されています。
•UIP(UIPらしさ90%以上)
•Probable UIP(70〜89%)
•Indeterminate for UIP(51〜69%)
•Alternative Diagnosis(50%以下)
UIP
•胸膜直下、肺底部優位;分布はしばしば不均一、片側性分布もありうる
•蜂巣肺(末梢の牽引性気管支拡張/細気管支拡張は伴っても伴わなくてもよい)、小葉間隔壁の不規則な肥厚、網状影と軽度すりガラス影、
ここは、そんなに議論のないところです。
Probable UIP
[probable] (確実ではないが)ありそうな、起こりそうな、まず確実な、たぶん…だろう(weblio英和辞典より)
所見としては、
•胸膜直下、肺底部優位:分布はしばしば不均一(正常領域と網状病変が混合)
•末梢の牽引性気管支拡張/細気管支拡張を伴う網状影
•軽度のすりガラス影はあってもよい
•胸膜直下をスペアする(避ける)病変はない
原因不明の慢性線維化のある間質性肺炎でUIPパターンかProbable UIPパターンであれば、IPFの可能性はかなり高いといえるでしょう。
Indeterminate for UIP
[indeterminate] 不確定の、不定の、明確でない、漠然とした、あいまいな、未解決の、未定の(weblio英和辞典より)
つまり、UIPとは決めかねる、ということです。所見としては、
•胸膜直下優位でないびまん性分布
•他に特定の病因を示唆しない肺線維化病変の特徴や分布がみられる
Alternative Diagnosis
[alternative] 二者択一の、代わりとなる、代わりの、慣習的方法をとらない、新しい(weblio英和辞典より)
オルタナティブ・ロックといえば、その時の主流とは違ったスタイルのロックを指すわけですが、この場合のalternativeは、「UIPと違う、別の診断になる」という意味合いです。所見としてはいろいろありますが、例としては
•胸膜直下をスペアする気管支血管側優位分布⇒NSIP
•リンパ管周囲優位⇒サルコイドーシス
•上葉・中葉優位⇒HP、CTD-ILD、サルコイドーシス
•嚢胞⇒LAM、PLCH、LIP、DIP
•モザイクパターン⇒HP
•広範なすりガラス影⇒HP、喫煙関連肺疾患、薬剤
•多数の小葉中心性粒状影⇒HP、喫煙関連肺疾患
•結節影⇒サルコイドーシス
•コンソリデーション⇒OP
•胸膜プラーク⇒アスベスト肺
•拡張した食道⇒CTD-ILD
•胸水・胸膜肥厚⇒CTD-ILD、薬剤
のように、IPFとは別の疾患を考えていくことになります。
HRCTでUIPパターンが認められた場合は、総合的なディスカッション(MDD)を経てIPFと最終診断されます。ただし、MDDができる施設は全国でもごく限られた、臨床、画像、病理の専門家が揃った(もしくは相談できる)施設になりますので、現実的にはMDDを省略されているケースが多いでしょう。
HRCTでUIPパターン以外の場合は、気管支鏡検査でBALもしくは外科的肺生検による病理診断を行って、MDDにより間質性肺炎の診断をしていくことになっています。ここでも、気管支鏡はともかくMDD、外科的肺生検といった、一般病院にはハードルの高い文言が並んでいます。
posted by 長尾大志 at 08:15
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| 間質性肺疾患シリーズ
2025年01月22日
間質性肺疾患について、改めてまとめ5・呼吸機能検査など
呼吸機能検査は古よりある検査ですが、現段階での肺予備能を知るためには欠かせない検査です。拘束性障害 (%VC<80%)、拡散障害 (%DLCO<80%)は診断基準にも含まれています。
動脈血ガス分析・6分間歩行検査
酸素投与の必要性を評価するものです。特に労作時にのみ低酸素となることもあるため、6分間歩行検査も確認しておきたいところです。特に特発性肺線維症では重症度分類に適用し治療方針にも関わるため、必須の検査です。
重症度分類 安静時動脈血酸素分圧 6分間歩行時 最低SpO2
I度 80Torr 以上 90 %未満の場合はVにする
II度 70Torr 以上 80Torr 未満 90 %未満の場合はVにする
V度 60Torr 以上 70Torr 未満 90 %未満の場合はIVにする(危険な場合は測定不要)
W度 60Torr 未満 測定不要
検査などから原因がはっきりすれば、その原因に関してさらに精査を進め、治療を行います。
動脈血ガス分析・6分間歩行検査
酸素投与の必要性を評価するものです。特に労作時にのみ低酸素となることもあるため、6分間歩行検査も確認しておきたいところです。特に特発性肺線維症では重症度分類に適用し治療方針にも関わるため、必須の検査です。
重症度分類 安静時動脈血酸素分圧 6分間歩行時 最低SpO2
I度 80Torr 以上 90 %未満の場合はVにする
II度 70Torr 以上 80Torr 未満 90 %未満の場合はVにする
V度 60Torr 以上 70Torr 未満 90 %未満の場合はIVにする(危険な場合は測定不要)
W度 60Torr 未満 測定不要
検査などから原因がはっきりすれば、その原因に関してさらに精査を進め、治療を行います。
posted by 長尾大志 at 20:34
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| 間質性肺疾患シリーズ
2025年01月21日
間質性肺疾患について、改めてまとめ4・間質性肺炎に関する検査
間質性肺炎の可能性が疑われた時に行うべき検査としては、一般的な採血、肺機能、動脈血ガス分析などがあります。
血清マーカーなど
採血ではKL-6、SP-D、SP-Aが間質性肺炎に特異的といわれ、保険適用もあります。ただ、残念ながら診療報酬上、「KL-6、SP-A及びSP-Dのうちいずれか複数を実施した場合は、主たるもののみ算定する」ということなので、注意が必要です(2024年12月現在)。個人的にはKL-6が特異度などの点で有用と考えていますので、1つ採るならKL-6としています。
採血ではそれ以外に、活動性のマーカーとしてLDHなど一般生化学検査と血算を行います。
問診や診察所見などから、特発性でない間質性肺炎の可能性が考えられたら、ここで感染症のマーカー(β-D-グルカン、C7-HRPなど)や、膠原病や血管炎に特異的な抗体検査を行います。
抗体検査
初診時には、まず抗核抗体(ANA)とRFを測定します。ANA陽性の場合、疾患特異的な抗体として、以下のようなものを測定します。
抗ds-DNA抗体・抗Sm抗体 全身性エリテマトーデス
抗U1RNP抗体 混合性結合組織病
抗SS-A抗体 Sjögren症候群など多くの膠原病で陽性
抗SS-B抗体 Sjögren症候群
抗トポイソメラーゼT抗体(抗Scl-70抗体)・抗セントロメア抗体・抗RNAポリメラーゼ抗体 強皮症
抗Jo-1抗体などの抗ARS抗体 多発性筋炎、皮膚筋炎
さらに加えて
抗CCP抗体 関節リウマチ
抗リン脂質抗体 抗リン脂質抗体症候群
MPO-ANCA 顕微鏡的多発血管炎
PR3-ANCA 多発血管炎性肉芽腫症
抗GBM抗体 Goodpasture症候群
初診時からこのようにじゅうたん爆撃的に抗体を測定することは、賛否両論ありましたが、最近は後述するIPAFや肺病変先行型膠原病の存在が知られてきて、早期スクリーニング目的で抗体検査を行うことが多いようです。しかし保険審査では問題となることも多く、悩ましいところです。
血清マーカーなど
採血ではKL-6、SP-D、SP-Aが間質性肺炎に特異的といわれ、保険適用もあります。ただ、残念ながら診療報酬上、「KL-6、SP-A及びSP-Dのうちいずれか複数を実施した場合は、主たるもののみ算定する」ということなので、注意が必要です(2024年12月現在)。個人的にはKL-6が特異度などの点で有用と考えていますので、1つ採るならKL-6としています。
採血ではそれ以外に、活動性のマーカーとしてLDHなど一般生化学検査と血算を行います。
問診や診察所見などから、特発性でない間質性肺炎の可能性が考えられたら、ここで感染症のマーカー(β-D-グルカン、C7-HRPなど)や、膠原病や血管炎に特異的な抗体検査を行います。
抗体検査
初診時には、まず抗核抗体(ANA)とRFを測定します。ANA陽性の場合、疾患特異的な抗体として、以下のようなものを測定します。
抗ds-DNA抗体・抗Sm抗体 全身性エリテマトーデス
抗U1RNP抗体 混合性結合組織病
抗SS-A抗体 Sjögren症候群など多くの膠原病で陽性
抗SS-B抗体 Sjögren症候群
抗トポイソメラーゼT抗体(抗Scl-70抗体)・抗セントロメア抗体・抗RNAポリメラーゼ抗体 強皮症
抗Jo-1抗体などの抗ARS抗体 多発性筋炎、皮膚筋炎
さらに加えて
抗CCP抗体 関節リウマチ
抗リン脂質抗体 抗リン脂質抗体症候群
MPO-ANCA 顕微鏡的多発血管炎
PR3-ANCA 多発血管炎性肉芽腫症
抗GBM抗体 Goodpasture症候群
初診時からこのようにじゅうたん爆撃的に抗体を測定することは、賛否両論ありましたが、最近は後述するIPAFや肺病変先行型膠原病の存在が知られてきて、早期スクリーニング目的で抗体検査を行うことが多いようです。しかし保険審査では問題となることも多く、悩ましいところです。
posted by 長尾大志 at 11:55
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| 間質性肺疾患シリーズ
2025年01月20日
間質性肺疾患について、改めてまとめ3・ガイドラインによる診断手順
ガイドラインによる診断の手順をまとめてみましょう。あくまで「IPFの」ガイドラインですので、IPFの診断のためにどうするか、という観点が中心になります。それでも特発性間質性肺炎の診断において、IPFかそうでないかは、治療を決定する重要事です。
なにしろ、
•IPF⇒抗線維化薬、もしくは支持治療(無治療)
•IPFでない⇒免疫抑制治療
ですから。
ガイドラインの診断手順
IPFを疑うような症候(胸部X線写真やCTで両側に陰影が見られる、両側下肺に吸気時cracklesが聴取される、60歳以上)があったり、労作時息切れや咳があったりしたら、まずは間質性肺疾患を来すような原因(〇ページ)がないかを確認します。特定の原因がない、となれば特発性を考えます。そして、(原因があってもなくても)胸部HRCTを撮影します。
HRCTでUIPパターンが認められた場合は、総合的なディスカッション(MDD)を経てIPFと最終診断されます。ただし、MDDができる施設は全国でもごく限られた、臨床、画像、病理の専門家が揃った(もしくは相談できる)施設になりますので、現実的にはMDDを省略されているケースが多いでしょう。
HRCTでUIPパターン以外の場合は、気管支鏡検査でBALもしくは外科的肺生検による病理診断を行って、MDDにより間質性肺炎の診断をしていくことになっています。ここでも、気管支鏡はともかくMDD、外科的肺生検といった、一般病院にはハードルの高い文言が並んでいます。
結局ガイドラインでどうなったか、というと、以前はUIPパターン以外の(つまり蜂巣肺がない)症例では外科的肺生検をしないとIPFの診断ができなかったものが、BALとMDDをすればIPFと診断できることになったわけです。
これってどういうことかというと、今回のガイドラインにおける診断アルゴリズム変更は、専門病院の先生方が少しでも抗線維化薬を使いやすい方向に変更されたものであって、一般病院の先生方の診断・治療が容易になったわけでは決してありません。
なにしろ、
•IPF⇒抗線維化薬、もしくは支持治療(無治療)
•IPFでない⇒免疫抑制治療
ですから。
ガイドラインの診断手順
IPFを疑うような症候(胸部X線写真やCTで両側に陰影が見られる、両側下肺に吸気時cracklesが聴取される、60歳以上)があったり、労作時息切れや咳があったりしたら、まずは間質性肺疾患を来すような原因(〇ページ)がないかを確認します。特定の原因がない、となれば特発性を考えます。そして、(原因があってもなくても)胸部HRCTを撮影します。
HRCTでUIPパターンが認められた場合は、総合的なディスカッション(MDD)を経てIPFと最終診断されます。ただし、MDDができる施設は全国でもごく限られた、臨床、画像、病理の専門家が揃った(もしくは相談できる)施設になりますので、現実的にはMDDを省略されているケースが多いでしょう。
HRCTでUIPパターン以外の場合は、気管支鏡検査でBALもしくは外科的肺生検による病理診断を行って、MDDにより間質性肺炎の診断をしていくことになっています。ここでも、気管支鏡はともかくMDD、外科的肺生検といった、一般病院にはハードルの高い文言が並んでいます。
結局ガイドラインでどうなったか、というと、以前はUIPパターン以外の(つまり蜂巣肺がない)症例では外科的肺生検をしないとIPFの診断ができなかったものが、BALとMDDをすればIPFと診断できることになったわけです。
これってどういうことかというと、今回のガイドラインにおける診断アルゴリズム変更は、専門病院の先生方が少しでも抗線維化薬を使いやすい方向に変更されたものであって、一般病院の先生方の診断・治療が容易になったわけでは決してありません。
posted by 長尾大志 at 19:13
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| 間質性肺疾患シリーズ
2025年01月19日
間質性肺疾患について、改めてまとめ2・診断の手順
間質性肺炎診断の道筋としては、空咳や労作時の息切れといった症状、受診時あるいは健診でのスクリーニングにおける胸部X線写真(両側下肺野にすりガラス影や網状影が見られる)、胸部の聴診(fine cracklesが下肺野に聴取される)、などで間質性肺炎の存在が疑われることが多いでしょう。大学病院では、他疾患のために撮影された胸部X線写真やCTで偶然発見され、「間質性肺炎疑い」とされて紹介になることも結構あります。
診断の手順として、まず間質性肺炎の分類は、「原因がある」のか、「原因がない特発性群」なのかがとても重要です。
なぜ、特発性群を特別扱いするかというと、特発性群の予後・治療がおおよそ病理学的な分類で決まるのに対し、原因のわかっているものは(病理学的にもある程度規定されるとはいえ)その原因に予後・治療が左右されるからです。
@ 原因のない(わからない)ものを、特発性間質性肺炎idiopathic interstitial pneumonias:IIPsといい、病理組織学的所見に基づいて分類します。
A 原因のわかっているものは、その原因に応じて分類します。
•薬剤
•膠原病
•職業・環境:過敏性肺炎、じん肺、金属肺、放射線肺炎、酸素中毒
•感染:各種ウイルス、ニューモシスチス、結核、イコプラズマ、真菌
ということで、まずは明らかな原因のあるもの、すなわち薬剤性肺炎、膠原病、過敏性肺炎、放射線肺炎、じん肺、感染症などを除外(あるいは診断)するために、問診や身体診察をしっかりと行います。
問診では、間質性肺炎を起こすことが知られている薬剤の使用歴を確認します。1年以内の放射線照射があれば放射線肺炎は分かりやすいですね。
膠原病は、特徴的な症状や身体所見を聴き取り、観察します。皮疹(皮膚の着色・硬化など)、関節症状や関節炎、筋痛、Raynaud症状、目や口の乾燥、腎障害や血尿などですね。また、過敏性肺炎を起こすカビなどとの接触があるか、鳥(羽毛製品)との接触があるか、加湿器を使用しているか聴きます。
じん肺は職業上、粉じんへの曝露があるか、アスベストなどを取り扱っていないかをよく確認します。
診断の手順として、まず間質性肺炎の分類は、「原因がある」のか、「原因がない特発性群」なのかがとても重要です。
なぜ、特発性群を特別扱いするかというと、特発性群の予後・治療がおおよそ病理学的な分類で決まるのに対し、原因のわかっているものは(病理学的にもある程度規定されるとはいえ)その原因に予後・治療が左右されるからです。
@ 原因のない(わからない)ものを、特発性間質性肺炎idiopathic interstitial pneumonias:IIPsといい、病理組織学的所見に基づいて分類します。
A 原因のわかっているものは、その原因に応じて分類します。
•薬剤
•膠原病
•職業・環境:過敏性肺炎、じん肺、金属肺、放射線肺炎、酸素中毒
•感染:各種ウイルス、ニューモシスチス、結核、イコプラズマ、真菌
ということで、まずは明らかな原因のあるもの、すなわち薬剤性肺炎、膠原病、過敏性肺炎、放射線肺炎、じん肺、感染症などを除外(あるいは診断)するために、問診や身体診察をしっかりと行います。
問診では、間質性肺炎を起こすことが知られている薬剤の使用歴を確認します。1年以内の放射線照射があれば放射線肺炎は分かりやすいですね。
膠原病は、特徴的な症状や身体所見を聴き取り、観察します。皮疹(皮膚の着色・硬化など)、関節症状や関節炎、筋痛、Raynaud症状、目や口の乾燥、腎障害や血尿などですね。また、過敏性肺炎を起こすカビなどとの接触があるか、鳥(羽毛製品)との接触があるか、加湿器を使用しているか聴きます。
じん肺は職業上、粉じんへの曝露があるか、アスベストなどを取り扱っていないかをよく確認します。
posted by 長尾大志 at 13:30
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| 間質性肺疾患シリーズ
2025年01月17日
間質性肺疾患について、改めてまとめ1・ガイドラインあれこれ
気胸についてある程度片が付いたところで(もう少しありますがそれはまたの機会で)、間質性肺疾患についてまとめなくてはなりません。そろそろ勘のいい方はお気づきかもしれませんが、書籍のお仕事の関係で、改めて各種肺疾患についてまとめていっております。4月、学会に間に合うよう刊行予定ですので、是非お待ちください!!
古くはHammanとRichによる急性症例の報告に始まる「間質性肺炎」という病態に関しては、その後多くの症例の蓄積を経て、疾患概念そのものの変遷、紆余曲折がありました。
急性型のAIPと慢性型のIPFに加え、NCIPだNSIPだBOOPだOPだCOPだと新しい疾患概念が提唱され、混乱の後に、2000年になってようやく「特発性間質性肺炎の7つの病理型を元に臨床診断を定める」となって、一旦ガイドラインがきちっと決まったかと思わせておいて、それからも数年に一回用語が変わったり追加されたり。専門でない先生方、傍から見ていてうんざりしている先生方が多いのではないかと思います。
我々専門医にとってすら、ガイドラインが変わるたびに、用語の定義が、あるいは用語そのものがコロコロ変わるという現状は、非常にうっとうしい、やりにくいものであります。
最近ではCPFEだPFILDだPPFEだPPAPだIPAFだと、またぞろ新しい用語が生まれてては消え、しています(すでにCPFEという言葉も下火です)。一度提唱された先生は、安易に取り下げないでいただきたい。世に出すのであれば、十分な議論の後に出していただきたいものです……。
まあそれはそれとして、現時点(2024年12月)で最新のガイドラインである『特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き第4版』(2022年)に、最新の米国胸部学会(ATS)/欧州呼吸器学会議(ERS)/日本呼吸器学会(JRS)/南米胸部学会(ALAT)合同の、IPF(特発性肺線維症)の診断に関するclinical practice guidelineをからめた形で、診断と治療の手順をお届けしようと思います。
なお、特に肺線維症のガイドラインは、どうやって抗線維化薬を使う(使わせる?)かと、各分野の専門医による議論(MDD:multidisciplinary discussion)というところに力点が置かれていますが、正直、初学者の皆さんや非専門医の先生方にとってはどうでもいい?話なので、そこは端折っていきたいと思います。あくまで診断と治療における、エキスパート以外の方がアクセスできる最新の状況を知っていただくということを目的にしています。
古くはHammanとRichによる急性症例の報告に始まる「間質性肺炎」という病態に関しては、その後多くの症例の蓄積を経て、疾患概念そのものの変遷、紆余曲折がありました。
急性型のAIPと慢性型のIPFに加え、NCIPだNSIPだBOOPだOPだCOPだと新しい疾患概念が提唱され、混乱の後に、2000年になってようやく「特発性間質性肺炎の7つの病理型を元に臨床診断を定める」となって、一旦ガイドラインがきちっと決まったかと思わせておいて、それからも数年に一回用語が変わったり追加されたり。専門でない先生方、傍から見ていてうんざりしている先生方が多いのではないかと思います。
我々専門医にとってすら、ガイドラインが変わるたびに、用語の定義が、あるいは用語そのものがコロコロ変わるという現状は、非常にうっとうしい、やりにくいものであります。
最近ではCPFEだPFILDだPPFEだPPAPだIPAFだと、またぞろ新しい用語が生まれてては消え、しています(すでにCPFEという言葉も下火です)。一度提唱された先生は、安易に取り下げないでいただきたい。世に出すのであれば、十分な議論の後に出していただきたいものです……。
まあそれはそれとして、現時点(2024年12月)で最新のガイドラインである『特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き第4版』(2022年)に、最新の米国胸部学会(ATS)/欧州呼吸器学会議(ERS)/日本呼吸器学会(JRS)/南米胸部学会(ALAT)合同の、IPF(特発性肺線維症)の診断に関するclinical practice guidelineをからめた形で、診断と治療の手順をお届けしようと思います。
なお、特に肺線維症のガイドラインは、どうやって抗線維化薬を使う(使わせる?)かと、各分野の専門医による議論(MDD:multidisciplinary discussion)というところに力点が置かれていますが、正直、初学者の皆さんや非専門医の先生方にとってはどうでもいい?話なので、そこは端折っていきたいと思います。あくまで診断と治療における、エキスパート以外の方がアクセスできる最新の状況を知っていただくということを目的にしています。
posted by 長尾大志 at 12:35
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| 間質性肺疾患シリーズ
2021年11月24日
間質性肺炎の安定期治療について
特発性肺線維症についてはステロイド治療はむしろ禁忌といってもよく、治療は抗線維化薬(ピルフェニドン、ニンテダニブ)を使います。
例
ピルフェニドン(ピレスパ
)|3錠分3後
ニンテダニブ(オフェブ
)|3錠分3後
ただしこれらの薬剤はまだ薬価が高く、またピルフェニドンは光線過敏症、そしてどちらの薬剤も下痢などの消化器症状といった副作用が見られ、全ての特発性肺線維症患者さんに手放しで使った方がいいという位置づけではありません。
特発性肺線維症以外の間質性肺炎については、ステロイドを使ってみるという治療方針が一般的でしたが、昨今では線維化が前面に立っている間質性肺炎では特発性でなくても抗線維化薬を使うという方向性も見られてきています。まあ、大人の事情、みたいなこともあったりなかったり……。
例
ピルフェニドン(ピレスパ

ニンテダニブ(オフェブ

ただしこれらの薬剤はまだ薬価が高く、またピルフェニドンは光線過敏症、そしてどちらの薬剤も下痢などの消化器症状といった副作用が見られ、全ての特発性肺線維症患者さんに手放しで使った方がいいという位置づけではありません。
特発性肺線維症以外の間質性肺炎については、ステロイドを使ってみるという治療方針が一般的でしたが、昨今では線維化が前面に立っている間質性肺炎では特発性でなくても抗線維化薬を使うという方向性も見られてきています。まあ、大人の事情、みたいなこともあったりなかったり……。
posted by 長尾大志 at 14:10
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| 間質性肺疾患シリーズ
2012年04月22日
日本呼吸器学会総会ガイドラインセッション「薬剤性肺障害の手引きについて」見聞録
引き続き、日本呼吸器学会総会のご報告。
ガイドラインセッション「薬剤性肺障害の手引きについて」見聞録です。
最近やはり当院でも薬剤性肺障害が多く、講演、質疑とも大変興味深く承りました。
超満員、立ち見多数でしたが、本講演が終わって質疑応答の時間になったとたん、
ぞろぞろと出て行く人が多く、最初の谷口先生の大変重要なご質問が聞き取りにくかったのが残念です。
出て行かれた方々は、もったいないことでした。
備忘のため、メモをoutputしておきます。
うちのスタッフ、誰にも会いませんでしたが、誰かいたかな〜?
追加事項があったら教えてください。
ガイドラインセッション「薬剤性肺障害の手引きについて」見聞録です。
最近やはり当院でも薬剤性肺障害が多く、講演、質疑とも大変興味深く承りました。
超満員、立ち見多数でしたが、本講演が終わって質疑応答の時間になったとたん、
ぞろぞろと出て行く人が多く、最初の谷口先生の大変重要なご質問が聞き取りにくかったのが残念です。
出て行かれた方々は、もったいないことでした。
備忘のため、メモをoutputしておきます。
うちのスタッフ、誰にも会いませんでしたが、誰かいたかな〜?
追加事項があったら教えてください。
- MTXとニューモシスチス肺炎は、臨床像(画像、BAL、組織)に差はなく、鑑別はしばしば困難。
喀痰でのニューモシスチスPCRは常在との鑑別の問題あり、論議があるところ。
βDグルカンも当初陰性例あり、治療開始をやめる根拠にはならない。 - そもそもニューモシスチス肺炎自体、病原体による直接傷害というより、免疫機序による傷害であるので、ある程度の呼吸状態悪化あれば、ステロイド使用は必須である。
- 逆にMTX肺炎の診断で、LSTは(特に外注では)手法の標準化ができておらず、信頼性が薄い。
特に、漢方薬・MTX・TS1他、会社によってばらつきやすく、そこが問題である。健康コントロールが本来必要であることから、BALによるLSTは結局評価できないことになる。 - 結局、PSLを0.5〜1mg/kg使用して改善なければ、STを使用してみる、というのが現実的。
- 薬剤性肺障害は血液によって来る薬剤による反応なので、健康肺優位になることも有り。
- ペメトレキセドによる間質性肺炎はあるデータでは0.5%程度報告されており、時に致死的。
- インフリキシマブとエタネルセプトでは、市販後調査でも間質性肺炎の新規発症はほとんど報告されていないが、既存病変の悪化はあり、使用前のスクリーニングが重要である。
- エルロチニブによる間質性肺炎は、HRCTにてすりガラス影を呈していても、組織的にDADであることが知られている。
- エルロチニブは今後、膵臓癌に対してゲムシタビンとの併用療法を予定されており、ゲムシタビンにも間質性肺炎のリスクがあることから、気をつけておかなければならない。
- ALK阻害薬に関しては、相当よい効果も得られているようだが、間質性肺炎についてはまだ1例のみの報告で、これからの評価が必要。
posted by 長尾大志 at 12:17
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| 間質性肺疾患シリーズ
2011年04月02日
薬剤性肺障害 実例さらに1例
込み入った経過なので、かいつまんで紹介します。
(経過ここから)
躁鬱病に対してラモトリギンの内服を開始してからの皮疹が出現し、その後、クエチアピン・炭酸リチウム・バルプロ酸ナトリウムの定期内服を開始したところ、38℃台の発熱を認め、同時に皮疹が増悪した。
ラモトリギンを中止し、アセトアミノフェンを内服し経過をみたが解熱しなかった。咳嗽と呼吸困難が出現し、39℃以上の発熱が生じたため受診したところ、好酸球増多(15%)を認めた。数日で労作時の咳嗽が増悪し、呼吸困難も悪化した。
その後40℃の発熱を認めて初めて当院を受診し、胸部CTで両側びまん性のスリガラス影を認めたため入院となった。ここまでの経過は約3週間。
(経過ここまで)
こんな陰影です。

CTはこんな感じ。



特発性間質性肺炎との違いは、陰影の分布(場所)です。胸膜直下に病変が少ないのは、特発性間質性肺炎ではあまり見られないことです。
診断は薬剤性好酸球性肺炎でした。
一部DIHS(dug-induced hypersensitivity syndrome)様でもあり、関連薬剤の可能な限りの中止と、ステロイド治療で軽快しました。
治療日の胸部レントゲン。

翌日にはぐっと軽快。熱もその日には下がり、呼吸器症状も軽快しています。

10日後。ほぼ治りました。

DIHS:厚労省HPより→
http://www.info.pmda.go.jp/juutoku/file/jfm0706001.pdf
こういう疾患は、総合内科医としての実力が問われますね。
間質性肺疾患シリーズを最初から読む
(経過ここから)
躁鬱病に対してラモトリギンの内服を開始してからの皮疹が出現し、その後、クエチアピン・炭酸リチウム・バルプロ酸ナトリウムの定期内服を開始したところ、38℃台の発熱を認め、同時に皮疹が増悪した。
ラモトリギンを中止し、アセトアミノフェンを内服し経過をみたが解熱しなかった。咳嗽と呼吸困難が出現し、39℃以上の発熱が生じたため受診したところ、好酸球増多(15%)を認めた。数日で労作時の咳嗽が増悪し、呼吸困難も悪化した。
その後40℃の発熱を認めて初めて当院を受診し、胸部CTで両側びまん性のスリガラス影を認めたため入院となった。ここまでの経過は約3週間。
(経過ここまで)
こんな陰影です。

CTはこんな感じ。



特発性間質性肺炎との違いは、陰影の分布(場所)です。胸膜直下に病変が少ないのは、特発性間質性肺炎ではあまり見られないことです。
診断は薬剤性好酸球性肺炎でした。
一部DIHS(dug-induced hypersensitivity syndrome)様でもあり、関連薬剤の可能な限りの中止と、ステロイド治療で軽快しました。
治療日の胸部レントゲン。

翌日にはぐっと軽快。熱もその日には下がり、呼吸器症状も軽快しています。

10日後。ほぼ治りました。

DIHS:厚労省HPより→
http://www.info.pmda.go.jp/juutoku/file/jfm0706001.pdf
こういう疾患は、総合内科医としての実力が問われますね。
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posted by 長尾大志 at 14:23
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2011年04月01日
『臨床画像』4月号「びまん性肺疾患の臨床:臨床医が知っておくべき基本事項」
『臨床画像』4月号「びまん性肺疾患:これだけは押さえておきたいHRCT診断の基本」(高橋雅士先生ご編集)では、当院の高橋先生はじめ錚々たる顔ぶれの、放射線科の先生方がびまん性肺疾患の画像所見について執筆されています。
肺病理の第一人者、福岡先生も、病理に関する事項の執筆をされています。
そこの片隅に、寄稿させていただく機会をいただきました。
私の項は「びまん性肺疾患の臨床:放射線科医が知っておくべき基本事項」となっておりますが、もちろん、放射線科の先生のみならず、広く初学の先生方に向けて、このあたりを知っておいていただきたい、という内容になっています。
また、放射線科の先生方の書かれたところや福岡先生による病理の項目は、臨床医としても大変勉強になりますので、内科系の若い先生方にも広く推薦させていただきます。
私のところだけでよければ、別冊がありますので進呈しますが、是非是非写真も豊富な本誌をお手に取られてはいかがでしょうか。
肺病理の第一人者、福岡先生も、病理に関する事項の執筆をされています。
そこの片隅に、寄稿させていただく機会をいただきました。
私の項は「びまん性肺疾患の臨床:放射線科医が知っておくべき基本事項」となっておりますが、もちろん、放射線科の先生のみならず、広く初学の先生方に向けて、このあたりを知っておいていただきたい、という内容になっています。
また、放射線科の先生方の書かれたところや福岡先生による病理の項目は、臨床医としても大変勉強になりますので、内科系の若い先生方にも広く推薦させていただきます。
私のところだけでよければ、別冊がありますので進呈しますが、是非是非写真も豊富な本誌をお手に取られてはいかがでしょうか。
posted by 長尾大志 at 09:50
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2011年03月31日
薬剤性肺障害 実例もう1例
ソラフェニブによる間質性肺炎を経験しました。


陰影はかなり早いタイミングでtraction bronchiectasisが生じ、予後の悪さを示唆しています。




胸水も少しですが、あるようです。
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陰影はかなり早いタイミングでtraction bronchiectasisが生じ、予後の悪さを示唆しています。




胸水も少しですが、あるようです。
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posted by 長尾大志 at 09:36
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2011年03月30日
薬剤性肺障害 実例
他科で抗癌剤治療中に発症しました。

片側性ですが、すりガラス影ですね。


牽引性気管支拡張(traction bronchiectasis)もあり、線維化の進行が疑われます。
被疑薬の中止とステロイド治療により、軽快しました。

CTでもかなり改善。しかし、一部線維化らしきところが残っていますね。


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片側性ですが、すりガラス影ですね。


牽引性気管支拡張(traction bronchiectasis)もあり、線維化の進行が疑われます。
被疑薬の中止とステロイド治療により、軽快しました。

CTでもかなり改善。しかし、一部線維化らしきところが残っていますね。


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posted by 長尾大志 at 14:22
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2011年03月29日
間質性肺疾患11・薬剤性肺障害の人種差
この薬剤性肺障害、困ったことに、どうも日本人で発症頻度が高い薬剤が多いようです。例えばゲフィチニブでは、日本人での発現頻度3.98%に対し、米国では0.3%と10倍の開きがあります。
すべての薬剤において人種差があるわけではないのですが、ブレオマイシンやレフルノミド(アラバ)などは著しく日本人に多く、他にボルテゾミブでも、日本人に発症が多いといわれています。
日本人はそもそも特発性肺線維症の急性増悪を起こしやすいとされていて、そもそも薬剤を含めたさまざまな刺激因子に敏感に反応する性質を有するのではないか、ともいわれています。
現在SNP解析が進行中で、近い将来、民族学・遺伝学的に回答が得られるかもしれません。たいへん興味深いところです。
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すべての薬剤において人種差があるわけではないのですが、ブレオマイシンやレフルノミド(アラバ)などは著しく日本人に多く、他にボルテゾミブでも、日本人に発症が多いといわれています。
日本人はそもそも特発性肺線維症の急性増悪を起こしやすいとされていて、そもそも薬剤を含めたさまざまな刺激因子に敏感に反応する性質を有するのではないか、ともいわれています。
現在SNP解析が進行中で、近い将来、民族学・遺伝学的に回答が得られるかもしれません。たいへん興味深いところです。
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posted by 長尾大志 at 18:09
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2011年03月28日
間質性肺疾患10・注目される薬剤性肺障害の新規原因薬剤
日本内科学会誌1月号、薬剤性肺障害の最前線、という記事(日本医科大学斎藤先生、弦間先生著)より。
薬剤性肺障害で有名なものはゲフィチニブ(イレッサ)がありますが、同様に最近はやりの分子標的薬で、いくつか発症が報告されています。
間質性肺炎が重点調査項目とされている新規薬剤は以下のようなものがあるそうです。
エルロチニブ(タルセバ)
イレッサと同じEGFR-TKIで、非小細胞肺癌に使われます。
副作用調査では4,662例中237例(5.08%)に間質性肺炎が見られ、死亡例は65例でした。
ボルテゾミブ(ベルケイド)
再発または難治性多発性骨髄腫に対して承認されたプロテアソーム阻害薬です。何らかの造血幹細胞移植を施行されていることが危険因子で、ステロイドの併用はリスク減少因子です。
特定使用成績調査の中間解析では、525例中22例(4.19%)に間質性肺炎/肺障害が発現し、重篤例は11例(2.10%)でした。
セツキシマブ(アービタックス)
EGFR陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌に対して承認された抗ヒトEGFRモノクローナル抗体です。
市販直後調査では、3,436例中、16例の間質性肺炎が報告され、全例が重篤であり、うち4例が死亡されています。
ソラフェニブ(ネクサバール)
根治切除不能または転移性の腎細胞癌、肝細胞癌に対するキナーゼ阻害薬です。
特定使用成績調査では2,010例中5例の間質性肺炎か報告され、うち2例が亡くなっています。なお、ソラフェニブによる間質性肺炎は全例が胸水を伴っていたということです。
スニチニブ(スーテント)
イマチニブ抵抗性の消化管間質腫瘍、根治切除不能または転移性の腎細胞癌に対するキナーゼ阻害薬です。
市販直後調査結果では、664例中2例の間質性肺疾患が報告され、うち1例が死亡に至っています。
エベロリムス(アフィニトール)
根治切除不能または転移性の腎細胞癌に使われるmTOR(mammalian target of rapamycin)阻害薬で、間質性肺疾患の発現頻度が非常に高いことが知られています。
頻度は高いのですが、軽症例も多く、薬剤性肺障害が発現しても無症状であれば投与を継続することが可能とされています。
他に、最近使われるようになってきた抗リウマチ薬では既に多くの事例が知られています。もともとリウマチには間質性肺炎の合併が多いため、薬剤そのものによる肺障害との鑑別が困難であることも多いのですが、薬剤開始前後でCTや各種指標を比較し、これまでの報告を参照することで診断は可能です。
古くは金製剤、最近よく使われるメトトレキサートやレフルノミド(アラバ)、他の生物製剤でも注意喚起されていますので、気をつけましょう。
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薬剤性肺障害で有名なものはゲフィチニブ(イレッサ)がありますが、同様に最近はやりの分子標的薬で、いくつか発症が報告されています。
間質性肺炎が重点調査項目とされている新規薬剤は以下のようなものがあるそうです。
エルロチニブ(タルセバ)
イレッサと同じEGFR-TKIで、非小細胞肺癌に使われます。
副作用調査では4,662例中237例(5.08%)に間質性肺炎が見られ、死亡例は65例でした。
ボルテゾミブ(ベルケイド)
再発または難治性多発性骨髄腫に対して承認されたプロテアソーム阻害薬です。何らかの造血幹細胞移植を施行されていることが危険因子で、ステロイドの併用はリスク減少因子です。
特定使用成績調査の中間解析では、525例中22例(4.19%)に間質性肺炎/肺障害が発現し、重篤例は11例(2.10%)でした。
セツキシマブ(アービタックス)
EGFR陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌に対して承認された抗ヒトEGFRモノクローナル抗体です。
市販直後調査では、3,436例中、16例の間質性肺炎が報告され、全例が重篤であり、うち4例が死亡されています。
ソラフェニブ(ネクサバール)
根治切除不能または転移性の腎細胞癌、肝細胞癌に対するキナーゼ阻害薬です。
特定使用成績調査では2,010例中5例の間質性肺炎か報告され、うち2例が亡くなっています。なお、ソラフェニブによる間質性肺炎は全例が胸水を伴っていたということです。
スニチニブ(スーテント)
イマチニブ抵抗性の消化管間質腫瘍、根治切除不能または転移性の腎細胞癌に対するキナーゼ阻害薬です。
市販直後調査結果では、664例中2例の間質性肺疾患が報告され、うち1例が死亡に至っています。
エベロリムス(アフィニトール)
根治切除不能または転移性の腎細胞癌に使われるmTOR(mammalian target of rapamycin)阻害薬で、間質性肺疾患の発現頻度が非常に高いことが知られています。
頻度は高いのですが、軽症例も多く、薬剤性肺障害が発現しても無症状であれば投与を継続することが可能とされています。
他に、最近使われるようになってきた抗リウマチ薬では既に多くの事例が知られています。もともとリウマチには間質性肺炎の合併が多いため、薬剤そのものによる肺障害との鑑別が困難であることも多いのですが、薬剤開始前後でCTや各種指標を比較し、これまでの報告を参照することで診断は可能です。
古くは金製剤、最近よく使われるメトトレキサートやレフルノミド(アラバ)、他の生物製剤でも注意喚起されていますので、気をつけましょう。
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posted by 長尾大志 at 09:25
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2011年03月27日
間質性肺疾患9・薬剤性肺障害の治療
日本内科学会誌1月号、薬剤性肺障害の最前線、という記事(日本医科大学斎藤先生、弦間先生著)より。治療についての内容をご紹介します。
基本は被疑薬剤の中止です。被疑薬がすぐに同定可能であればよいのですが、患者さんは往々にして多くの薬を投与されていることが多く、被疑薬がいくつか想定される場合、あるいはDrug-induced hypersensitivity syndrome(DIHS:薬剤性過敏症症候群)のように多剤感作が想起される場合には、使用中の薬剤を全剤中止せざるを得ないこともあります。
また、中止で軽快する場合は話が簡単ですが、薬剤によっては、あるいは薬剤性肺障害の病型や重症度によっては、ステロイド投与が必要です。例えば、最近話題のゲフィチニブ(イレッサ)で間質性肺炎が生じた場合には、直ちにイレッサ中止とステロイド・パルス療法を行います。そのぐらい、イレッサの肺障害は予後が悪いということが知られているわけです。
ですから、診断のところでも書いたように、被疑薬における薬剤性肺障害の報告、その臨床病型(表現型:CTのパターンや他の検査所見、臨床経過など)を調べることが重要なのです。
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基本は被疑薬剤の中止です。被疑薬がすぐに同定可能であればよいのですが、患者さんは往々にして多くの薬を投与されていることが多く、被疑薬がいくつか想定される場合、あるいはDrug-induced hypersensitivity syndrome(DIHS:薬剤性過敏症症候群)のように多剤感作が想起される場合には、使用中の薬剤を全剤中止せざるを得ないこともあります。
また、中止で軽快する場合は話が簡単ですが、薬剤によっては、あるいは薬剤性肺障害の病型や重症度によっては、ステロイド投与が必要です。例えば、最近話題のゲフィチニブ(イレッサ)で間質性肺炎が生じた場合には、直ちにイレッサ中止とステロイド・パルス療法を行います。そのぐらい、イレッサの肺障害は予後が悪いということが知られているわけです。
ですから、診断のところでも書いたように、被疑薬における薬剤性肺障害の報告、その臨床病型(表現型:CTのパターンや他の検査所見、臨床経過など)を調べることが重要なのです。
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posted by 長尾大志 at 17:15
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2011年03月26日
間質性肺疾患8・薬剤性肺障害の診断
将来呼吸器内科を目指す人も、そうでない人にとっても、どんな薬であっても薬を使う以上、避けて通れないのが薬剤性肺障害です。
眼内、膀胱内に注入した薬でも起こったりするのですよ。
先頃、日本内科学会誌1月号に、薬剤性肺障害の最前線、という記事が掲載されていました。(日本医科大学斎藤先生、弦間先生著)。
私なんぞが一から書くよりもずっと整理して書かれていましたので、内科学会に所属されて学会誌が届いている全ての先生方に、是非ご一読をお願いしたいところですが、学生さんや若い先生で、アクセスできない方もあろうかと思いますので、内容をかいつまんで紹介します。
薬剤性肺障害は現在でも非常に重要な疾患群ですが、さらに今後ますます重要度が高まると考えられています。
それはなぜか。
近年どんどん開発されている、抗癌剤(分子標的薬)、抗リウマチ薬などの副作用として多く見られるものであるため、今後ますます症例数の増加が予想され、また、欧米人よりも、日本人に発現頻度が高く、遺伝的素因が考えられていることもあります。
診断について
やはり、まずは薬剤性肺障害を疑うことが重要で、薬剤投与、摂取歴を詳細に聴取すること、もちろんこれは内科医の基本ではありますが、呼吸器内科医では特に求められるスキルであります。
特に、比較的急性〜亜急性に発症し、典型的な特発性間質性肺炎の画像に合致しないようなパターンを取っていると、疑われることが多いです。
薬剤性肺障害の可能性があると判断した場合には、被疑薬でそれまでに薬剤性肺障害の報告があるかどうか、あれば、その臨床病型(表現型:CTのパターンや他の検査所見、臨床経過など)はこのたびのepisodeに合致するか、を確認する必要があります。
診断基準は、以下の通り。
再投与は今では倫理的に問題があり、行いません。
薬剤以外の原因、特に、すりガラス影を呈する間質性肺炎の原因となる感染症の除外は重要です。ニューモシスチス肺炎やサイトメガロウイルスをはじめとするウイルス性肺炎では、抗原や血清マーカーがいくつか適用でき、鑑別に役立ちます。
診断の参考に、薬剤リンパ球刺激試験(DLST)がしばしば実施されますが、偽陽性、偽陰性が多く、結果の解釈はしばしば難しいものです。なかなかクリアカットにこの数字を満たしたら診断、といえるものはありません。
最終的には経過を含めた総合判断、ということになり、臨床的センスが問われるところであります。
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眼内、膀胱内に注入した薬でも起こったりするのですよ。
先頃、日本内科学会誌1月号に、薬剤性肺障害の最前線、という記事が掲載されていました。(日本医科大学斎藤先生、弦間先生著)。
私なんぞが一から書くよりもずっと整理して書かれていましたので、内科学会に所属されて学会誌が届いている全ての先生方に、是非ご一読をお願いしたいところですが、学生さんや若い先生で、アクセスできない方もあろうかと思いますので、内容をかいつまんで紹介します。
薬剤性肺障害は現在でも非常に重要な疾患群ですが、さらに今後ますます重要度が高まると考えられています。
それはなぜか。
近年どんどん開発されている、抗癌剤(分子標的薬)、抗リウマチ薬などの副作用として多く見られるものであるため、今後ますます症例数の増加が予想され、また、欧米人よりも、日本人に発現頻度が高く、遺伝的素因が考えられていることもあります。
診断について
やはり、まずは薬剤性肺障害を疑うことが重要で、薬剤投与、摂取歴を詳細に聴取すること、もちろんこれは内科医の基本ではありますが、呼吸器内科医では特に求められるスキルであります。
特に、比較的急性〜亜急性に発症し、典型的な特発性間質性肺炎の画像に合致しないようなパターンを取っていると、疑われることが多いです。
薬剤性肺障害の可能性があると判断した場合には、被疑薬でそれまでに薬剤性肺障害の報告があるかどうか、あれば、その臨床病型(表現型:CTのパターンや他の検査所見、臨床経過など)はこのたびのepisodeに合致するか、を確認する必要があります。
診断基準は、以下の通り。
- 原因となる薬剤の投与歴があること
- 臨床・画像・病理所見が被疑薬剤に関する過去の報告と一致すること
- 薬剤以外の原因を除外すること
- 被疑薬剤の中止により改善すること
- 再投与により症状が再燃すること
再投与は今では倫理的に問題があり、行いません。
薬剤以外の原因、特に、すりガラス影を呈する間質性肺炎の原因となる感染症の除外は重要です。ニューモシスチス肺炎やサイトメガロウイルスをはじめとするウイルス性肺炎では、抗原や血清マーカーがいくつか適用でき、鑑別に役立ちます。
診断の参考に、薬剤リンパ球刺激試験(DLST)がしばしば実施されますが、偽陽性、偽陰性が多く、結果の解釈はしばしば難しいものです。なかなかクリアカットにこの数字を満たしたら診断、といえるものはありません。
最終的には経過を含めた総合判断、ということになり、臨床的センスが問われるところであります。
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2011年03月25日
間質性肺疾患7・原因が特定できる=特発性群じゃないやつ
原因が特定できる間質性肺炎は、原因ごとに予後、治療法が異なるため、分類も原因ごとに行います。
主な原因は、以下の通りです。
薬剤
膠原病
粉塵曝露(職業・環境)
過敏性肺臓炎・じん肺・金属肺
放射線肺臓炎・酸素中毒
感染
ウィルス・ニューモシスチス・結核
サイトメガロ・マイコプラズマ・真菌
原因ごとに予後、治療法が異なるというのは、例えば薬剤であっても、
パラコートが原因の場合、病理組織はDADをとり、予後不良であるし、
イレッサが原因の場合、病理組織にかかわらず予後不良であるし、
ミノマイシンが原因の場合、好酸球性肺炎をとり、予後は比較的良好である、というようなことです。
また、膠原病が基礎にある場合、
筋症状のない皮膚筋炎(って、皮膚炎じゃないですよ!)は、病理組織がDADを取るような、きわめて予後の不良な間質性肺炎を引き起こしますが、慢性関節リウマチなんかですと、特発性よりむしろゆっくり進行する例が多い、とかですね。
明日からは、どの科に行っても遭遇するであろう、薬剤性の肺障害について取り上げようと思います。
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主な原因は、以下の通りです。
薬剤
膠原病
粉塵曝露(職業・環境)
過敏性肺臓炎・じん肺・金属肺
放射線肺臓炎・酸素中毒
感染
ウィルス・ニューモシスチス・結核
サイトメガロ・マイコプラズマ・真菌
原因ごとに予後、治療法が異なるというのは、例えば薬剤であっても、
パラコートが原因の場合、病理組織はDADをとり、予後不良であるし、
イレッサが原因の場合、病理組織にかかわらず予後不良であるし、
ミノマイシンが原因の場合、好酸球性肺炎をとり、予後は比較的良好である、というようなことです。
また、膠原病が基礎にある場合、
筋症状のない皮膚筋炎(って、皮膚炎じゃないですよ!)は、病理組織がDADを取るような、きわめて予後の不良な間質性肺炎を引き起こしますが、慢性関節リウマチなんかですと、特発性よりむしろゆっくり進行する例が多い、とかですね。
明日からは、どの科に行っても遭遇するであろう、薬剤性の肺障害について取り上げようと思います。
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posted by 長尾大志 at 12:21
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2011年03月24日
間質性肺疾患6・NSIP : nonspecific interstitial pneumonia(非特異性間質性肺炎)
NSIP : nonspecific interstitial pneumoniaは、1994年Katzensteinにより提唱された、間質性肺炎で最も新しい疾患概念です。
提唱された当初は、これまでに分類されていた間質性肺炎の、どのタイプにも当てはまらない病理パターンがあるな〜、という感じで、今までになかったやつ、という意味で“nonspecific=非特異性”なんちゅう名前がついてしまったのですね。
気軽に、「じゃあこれもnonspecificで、これも、これも」と、症例を集積していったら、修正されるタイミングのないまま今に至ってしまった、ある意味かわいそうな?疾患群です。
で、意外に、似たような病理組織をパターン分類してまとめてみると、症例数も結構多かったりして。
名前からして多そうなIPF=UIP(通常型間質性肺炎)に次いで多くみられます。
臨床的な特徴
亜急性の発症で徐々に進行します。IPFの「慢性」は、月〜年単位、「亜急性」は週〜月単位の変化を表します。
細胞型と線維化型があり、細胞型の予後はCOPとほぼ同等、つまり、結構よいです。
線維化型の予後は細胞型より悪いが、IPFよりはよく、ステロイド治療の甲斐があることが多いです。
HRCT(高分解CT)では蜂巣肺形成は少なく、すりガラス影や網状影主体です。分布はIPFと同じく、肺底部と胸膜直下優位となります。典型的には、気管支と血管の走行に沿って陰影が分布します。
NSIP: nonspecific interstitial pneumonia(非特異性間質性肺炎)の病理組織型もNSIP : nonspecific interstitial pneumonia(非特異性間質性肺炎)です。NSIPの病理組織を持ち、原因のない(わからない)特発性間質性肺炎をNSIPと呼ぶわけです。
病理学的には、比較的均一に肺胞壁が肥厚(細胞浸潤/線維化による)し、本来の肺組織構造は比較的保たれているのが特徴で、そのために病変に比較的可逆性が見られるわけです。
NSIPの病理組織パターンは、膠原病肺・薬剤・感染・過敏性肺臓炎で多く見られます。
特に膠原病の場合には、肺病変先行型であったりすると、当初特発性と考えていたが、あとからリウマチが発症したとか、結構ありがちで、特発性の診断には慎重であるべきです。
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提唱された当初は、これまでに分類されていた間質性肺炎の、どのタイプにも当てはまらない病理パターンがあるな〜、という感じで、今までになかったやつ、という意味で“nonspecific=非特異性”なんちゅう名前がついてしまったのですね。
気軽に、「じゃあこれもnonspecificで、これも、これも」と、症例を集積していったら、修正されるタイミングのないまま今に至ってしまった、ある意味かわいそうな?疾患群です。
で、意外に、似たような病理組織をパターン分類してまとめてみると、症例数も結構多かったりして。
名前からして多そうなIPF=UIP(通常型間質性肺炎)に次いで多くみられます。
臨床的な特徴
亜急性の発症で徐々に進行します。IPFの「慢性」は、月〜年単位、「亜急性」は週〜月単位の変化を表します。
細胞型と線維化型があり、細胞型の予後はCOPとほぼ同等、つまり、結構よいです。
線維化型の予後は細胞型より悪いが、IPFよりはよく、ステロイド治療の甲斐があることが多いです。
HRCT(高分解CT)では蜂巣肺形成は少なく、すりガラス影や網状影主体です。分布はIPFと同じく、肺底部と胸膜直下優位となります。典型的には、気管支と血管の走行に沿って陰影が分布します。
NSIP: nonspecific interstitial pneumonia(非特異性間質性肺炎)の病理組織型もNSIP : nonspecific interstitial pneumonia(非特異性間質性肺炎)です。NSIPの病理組織を持ち、原因のない(わからない)特発性間質性肺炎をNSIPと呼ぶわけです。
病理学的には、比較的均一に肺胞壁が肥厚(細胞浸潤/線維化による)し、本来の肺組織構造は比較的保たれているのが特徴で、そのために病変に比較的可逆性が見られるわけです。
NSIPの病理組織パターンは、膠原病肺・薬剤・感染・過敏性肺臓炎で多く見られます。
特に膠原病の場合には、肺病変先行型であったりすると、当初特発性と考えていたが、あとからリウマチが発症したとか、結構ありがちで、特発性の診断には慎重であるべきです。
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posted by 長尾大志 at 11:55
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2011年03月23日
間質性肺疾患5・COP: cryptogenic organizing pneumonia(特発性器質化肺炎)
Epler, Colbyらが1983~1985年にかけて提唱した疾患概念(当初はBOOPと呼ばれる)です。
臨床的な特徴
亜急性の発症で徐々に進行します。IPFの「慢性」は、月〜年単位、「亜急性」は週〜月単位の変化を表します。時に自然消退もあるほどで、一般的にはステロイドが著効し、予後良好といわれています。
画像所見は一見細菌性肺炎に似た、浸潤影が胸膜直下主体・斑状に分布します。器質化肺炎は肺胞を埋め尽くす病変が多いため、間質性肺炎なのですが浸潤影よりの濃い陰影を取ることが多いとされています。
また、教科書によっては1/3の症例で移動する、と書かれていたりしますが、実際、病変がえっちらおっちら移動するはずもなく、ある部分が自然消退して別の部分に新病変が出てきたのを、そう表現していると思って下さい。
特発性器質化肺炎(COP: cryptogenic organizing pneumonia)の病理パターンはOP: organizing pneumonia(器質化肺炎)です。
肺胞領域の胞隔炎・浸出液(器質化肺炎:OP)と、細気管支のポリープ様閉塞性変化(閉塞性細気管支炎:BO)が特徴的であることから、一時期BO+OP=BOOPという名称が使われていたこともありました。が、なぜか、いつの間にか、COPに取って代わられました…。
OP: organizing pneumonia(器質化肺炎)の病理組織は、感染症・膠原病・薬剤性間質性肺炎・悪性腫瘍などでも見られます。OPの病理組織を持ち、原因のない(わからない)特発性間質性肺炎をCOPと呼ぶわけです。
さらっと書きましたが、潜在性の悪性腫瘍に伴って、OP病変が肺に出現することがあるため、安易にCOPという診断を下すのではなく、基礎疾患(特に悪性腫瘍)をしっかり除外する必要があるのです。
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臨床的な特徴
亜急性の発症で徐々に進行します。IPFの「慢性」は、月〜年単位、「亜急性」は週〜月単位の変化を表します。時に自然消退もあるほどで、一般的にはステロイドが著効し、予後良好といわれています。
画像所見は一見細菌性肺炎に似た、浸潤影が胸膜直下主体・斑状に分布します。器質化肺炎は肺胞を埋め尽くす病変が多いため、間質性肺炎なのですが浸潤影よりの濃い陰影を取ることが多いとされています。
また、教科書によっては1/3の症例で移動する、と書かれていたりしますが、実際、病変がえっちらおっちら移動するはずもなく、ある部分が自然消退して別の部分に新病変が出てきたのを、そう表現していると思って下さい。
特発性器質化肺炎(COP: cryptogenic organizing pneumonia)の病理パターンはOP: organizing pneumonia(器質化肺炎)です。
肺胞領域の胞隔炎・浸出液(器質化肺炎:OP)と、細気管支のポリープ様閉塞性変化(閉塞性細気管支炎:BO)が特徴的であることから、一時期BO+OP=BOOPという名称が使われていたこともありました。が、なぜか、いつの間にか、COPに取って代わられました…。
OP: organizing pneumonia(器質化肺炎)の病理組織は、感染症・膠原病・薬剤性間質性肺炎・悪性腫瘍などでも見られます。OPの病理組織を持ち、原因のない(わからない)特発性間質性肺炎をCOPと呼ぶわけです。
さらっと書きましたが、潜在性の悪性腫瘍に伴って、OP病変が肺に出現することがあるため、安易にCOPという診断を下すのではなく、基礎疾患(特に悪性腫瘍)をしっかり除外する必要があるのです。
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posted by 長尾大志 at 19:23
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2011年03月22日
間質性肺疾患4・IPF: idiopathic pulmonary fibrosis(特発性肺線維症)
IPFは、慢性型で線維化のある間質性肺炎で、ゆっくり、着実に悪化し、ステロイドの効果は限定的とされています。
肺の下・外側(肺の中で一番よく動くところ)に間質性肺炎〜線維化病変(蜂巣肺)が生じ、硬くなることで肺が動かなくなり、拘束性障害となります。
身体所見としてばち指や捻髪音(ベルクロラ音・fine crackles)が特徴的です。
HRCT(高分解CT)で肺底部と胸膜直下優位に浸潤影・すりガラス影・蜂巣肺形成を認めます。典型的なものは、それだけでIPFの診断基準にも用いられるほど特徴的で、UIPパターンとも呼ばれています。
特発性肺線維症(IPF : idiopathic pulmonary fibrosis)の病理組織型は通常型間質性肺炎(UIP : usual interstitial pneumonia)です。その名の通り、間質性肺炎の中では通常よく見られる病型、とされてきました。
UIPの病理組織は、膠原病・石綿肺・慢性過敏性肺臓炎・薬剤性間質性肺炎などでも見られます。UIPの病理組織を持ち、原因のない(わからない)特発性間質性肺炎をIPFと呼ぶわけです。
治療は、ガイドラインにはステロイド+免疫抑制薬(アザチオプリン・シクロホスファミド・シクロスポリン)と書いてありますが、本物の?IPFでは効果がなかなか難しいのが現実です。
抗線維化薬として鳴り物入りで登場したピルフェニドン(ピレスパ)にしても、進行してしまった線維化を戻す能力は期待できませんので、軽症例で進行を抑える、というのが現実的な使い方かもしれません。でも軽症例で使うには、副作用が多すぎてためらわれることも多いです。
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肺の下・外側(肺の中で一番よく動くところ)に間質性肺炎〜線維化病変(蜂巣肺)が生じ、硬くなることで肺が動かなくなり、拘束性障害となります。
身体所見としてばち指や捻髪音(ベルクロラ音・fine crackles)が特徴的です。
HRCT(高分解CT)で肺底部と胸膜直下優位に浸潤影・すりガラス影・蜂巣肺形成を認めます。典型的なものは、それだけでIPFの診断基準にも用いられるほど特徴的で、UIPパターンとも呼ばれています。
特発性肺線維症(IPF : idiopathic pulmonary fibrosis)の病理組織型は通常型間質性肺炎(UIP : usual interstitial pneumonia)です。その名の通り、間質性肺炎の中では通常よく見られる病型、とされてきました。
UIPの病理組織は、膠原病・石綿肺・慢性過敏性肺臓炎・薬剤性間質性肺炎などでも見られます。UIPの病理組織を持ち、原因のない(わからない)特発性間質性肺炎をIPFと呼ぶわけです。
治療は、ガイドラインにはステロイド+免疫抑制薬(アザチオプリン・シクロホスファミド・シクロスポリン)と書いてありますが、本物の?IPFでは効果がなかなか難しいのが現実です。
抗線維化薬として鳴り物入りで登場したピルフェニドン(ピレスパ)にしても、進行してしまった線維化を戻す能力は期待できませんので、軽症例で進行を抑える、というのが現実的な使い方かもしれません。でも軽症例で使うには、副作用が多すぎてためらわれることも多いです。
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posted by 長尾大志 at 18:16
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2011年03月21日
間質性肺疾患3・特発性群の分類2
昨日挙げた7つの病名、病理所見名をごらんになって、
途方に暮れた方も多いと思います。
特に専門家になるのでなければ、さしあたり、
頻度の多い下の3疾患を覚えましょう。
IPF
病名:IPF: idiopathic pulmonary fibrosis(特発性肺線維症)
病理:UIP: usual interstitial pneumonia(通常型間質性肺炎)
NSIP
病名:NSIP: nonspecific interstitial pneumonia(非特異性間質性肺炎)
病理:NSIP: nonspecific interstitial pneumonia(非特異性間質性肺炎)
COP
病名:COP: cryptogenic organizing pneumonia(特発性器質化肺炎)
病理:OP: organizing pneumonia(器質化肺炎)
病理所見によって分類されてはいますが、
現在、これらの疾患を診断するために生検を行うことはほとんどありません。
というのも、これらの疾患を診断するためには、
1cm程度の大きな組織が必要だからです。
それほどの大きさの組織を得るのは、気管支鏡では無理で、胸腔鏡を用いた生検(外科的肺生検)が必要なのですが、これは侵襲が大きく、しばしば急性悪化の原因にもなります。
また、HRCTにより多くの情報が得られるようになってきたことから、HRCTなどから病理組織を「推測」し、病名診断を行うことが多くなってきています。
それぞれの特徴を明日から挙げていきます。
教科書的な、細かいことは、成書に譲り、大きくつかんでいただけるような事柄を書いていこうと思います。
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途方に暮れた方も多いと思います。
特に専門家になるのでなければ、さしあたり、
頻度の多い下の3疾患を覚えましょう。
IPF
病名:IPF: idiopathic pulmonary fibrosis(特発性肺線維症)
病理:UIP: usual interstitial pneumonia(通常型間質性肺炎)
NSIP
病名:NSIP: nonspecific interstitial pneumonia(非特異性間質性肺炎)
病理:NSIP: nonspecific interstitial pneumonia(非特異性間質性肺炎)
COP
病名:COP: cryptogenic organizing pneumonia(特発性器質化肺炎)
病理:OP: organizing pneumonia(器質化肺炎)
病理所見によって分類されてはいますが、
現在、これらの疾患を診断するために生検を行うことはほとんどありません。
というのも、これらの疾患を診断するためには、
1cm程度の大きな組織が必要だからです。
それほどの大きさの組織を得るのは、気管支鏡では無理で、胸腔鏡を用いた生検(外科的肺生検)が必要なのですが、これは侵襲が大きく、しばしば急性悪化の原因にもなります。
また、HRCTにより多くの情報が得られるようになってきたことから、HRCTなどから病理組織を「推測」し、病名診断を行うことが多くなってきています。
それぞれの特徴を明日から挙げていきます。
教科書的な、細かいことは、成書に譲り、大きくつかんでいただけるような事柄を書いていこうと思います。
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posted by 長尾大志 at 23:59
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2011年03月20日
間質性肺疾患2・特発性群の分類
疾患群を分類する理由は、予後を推定し適切な治療を行うためです。
分類あるところに治療あり。ん?治療あるところに分類あり、でしょうか。
例えば、大まかに言って以下のような特徴があります。
AIP:急性で予後不良
NSIP・COP:亜急性・ステロイドはCOPとNSIPの一部(細胞型)に効果有り
IPF:慢性でステロイド単独ではしばしば効果がない
IIP: idiopathic interstitial pneumonitis(特発性間質性肺炎群)には、
以下の7つの分類があります。
病名の分類
IPF: idiopathic pulmonary fibrosis
(特発性肺線維症)
NSIP: nonspecific interstitial pneumonia
(非特異性間質性肺炎)
COP: cryptogenic organizing pneumonia
(特発性器質化肺炎)
AIP: acute interstitial pneumonia
(急性間質性肺炎)
RB-ILD: respiratory bronchiolitis associated interstitial lung disease
(呼吸細気管支炎を伴う間質性肺炎)
DIP: desquamative interstitial pneumonia
(剥離性間質性肺炎)
LIP: lymphocytic interstitial pneumonia
(リンパ球性間質性肺炎)
この「病名」に対応する「病理所見」が、以下の7つです。
これらは、通常「〜パターン」と呼ばれています。
病理組織のパターン分類
UIP: usual interstitial pneumonia
(通常型間質性肺炎)
NSIP: nonspecific interstitial pneumonia
(非特異性間質性肺炎)
OP: organizing pneumonia
(器質化肺炎)
DAD: diffuse alveolar damage
(びまん性肺胞障害)
RB-ILD: respiratory bronchiolitis associated interstitial lung disease
(呼吸細気管支炎を伴う間質性肺炎)
DIP: desquamative interstitial pneumonia
(剥離性間質性肺炎)
LIP: lymphocytic interstitial pneumonia
(リンパ球性間質性肺炎)
初学者の方がわかりにくいのは、この「病名」と「病理所見」が微妙に
一致していたりしていなかったりするからでしょう。
長い歴史の中で、色々な病名の混乱・変遷・統合があったためにこうなってしまったのですが、今となっては迷惑なだけですね。
「病名」と「病理所見」の対応は、以下の通りです。
つまり、UIP: usual interstitial pneumonia(通常型間質性肺炎)という病理組織を持つ、原因のない(わからない)特発性間質性肺炎をIPF: idiopathic pulmonary fibrosis(特発性肺線維症)と呼び、
NSIP: nonspecific interstitial pneumonia(非特異性間質性肺炎)という病理組織を持つ、原因のない(わからない)特発性間質性肺炎をNSIP: nonspecific interstitial pneumonia(非特異性間質性肺炎)と呼び、
OP: organizing pneumonia(器質化肺炎)という病理組織を持つ、原因のない(わからない)特発性間質性肺炎をCOP: cryptogenic organizing pneumonia(特発性器質化肺炎)と呼び、
DAD: diffuse alveolar damage(びまん性肺胞障害)という病理組織を持つ、原因のない(わからない)特発性間質性肺炎をAIP: acute interstitial pneumonia(急性間質性肺炎)と呼び、
RB-ILD: respiratory bronchiolitis associated interstitial lung disease(呼吸細気管支炎を伴う間質性肺炎)という病理組織を持つ、原因のない(わからない)特発性間質性肺炎をRB-ILD: respiratory bronchiolitis associated interstitial lung disease(呼吸細気管支炎を伴う間質性肺炎)と呼び、
DIP: desquamative interstitial pneumonia(剥離性間質性肺炎)という病理組織を持つ、原因のない(わからない)特発性間質性肺炎をDIP: desquamative interstitial pneumonia(剥離性間質性肺炎)と呼び、
LIP: lymphocytic interstitial pneumonia (リンパ球性間質性肺炎)という病理組織を持つ、原因のない(わからない)特発性間質性肺炎をLIP: lymphocytic interstitial pneumonia (リンパ球性間質性肺炎)と呼ぶ、ということです。
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分類あるところに治療あり。ん?治療あるところに分類あり、でしょうか。
例えば、大まかに言って以下のような特徴があります。
AIP:急性で予後不良
NSIP・COP:亜急性・ステロイドはCOPとNSIPの一部(細胞型)に効果有り
IPF:慢性でステロイド単独ではしばしば効果がない
IIP: idiopathic interstitial pneumonitis(特発性間質性肺炎群)には、
以下の7つの分類があります。
病名の分類
IPF: idiopathic pulmonary fibrosis
(特発性肺線維症)
NSIP: nonspecific interstitial pneumonia
(非特異性間質性肺炎)
COP: cryptogenic organizing pneumonia
(特発性器質化肺炎)
AIP: acute interstitial pneumonia
(急性間質性肺炎)
RB-ILD: respiratory bronchiolitis associated interstitial lung disease
(呼吸細気管支炎を伴う間質性肺炎)
DIP: desquamative interstitial pneumonia
(剥離性間質性肺炎)
LIP: lymphocytic interstitial pneumonia
(リンパ球性間質性肺炎)
この「病名」に対応する「病理所見」が、以下の7つです。
これらは、通常「〜パターン」と呼ばれています。
病理組織のパターン分類
UIP: usual interstitial pneumonia
(通常型間質性肺炎)
NSIP: nonspecific interstitial pneumonia
(非特異性間質性肺炎)
OP: organizing pneumonia
(器質化肺炎)
DAD: diffuse alveolar damage
(びまん性肺胞障害)
RB-ILD: respiratory bronchiolitis associated interstitial lung disease
(呼吸細気管支炎を伴う間質性肺炎)
DIP: desquamative interstitial pneumonia
(剥離性間質性肺炎)
LIP: lymphocytic interstitial pneumonia
(リンパ球性間質性肺炎)
初学者の方がわかりにくいのは、この「病名」と「病理所見」が微妙に
一致していたりしていなかったりするからでしょう。
長い歴史の中で、色々な病名の混乱・変遷・統合があったためにこうなってしまったのですが、今となっては迷惑なだけですね。
「病名」と「病理所見」の対応は、以下の通りです。
病名 | 病理所見 |
IPF | UIP |
NSIP | NSIP |
COP | OP |
AIP | DAD |
RB-ILD | RB-ILD |
DIP | DIP |
LIP | LIP |
つまり、UIP: usual interstitial pneumonia(通常型間質性肺炎)という病理組織を持つ、原因のない(わからない)特発性間質性肺炎をIPF: idiopathic pulmonary fibrosis(特発性肺線維症)と呼び、
NSIP: nonspecific interstitial pneumonia(非特異性間質性肺炎)という病理組織を持つ、原因のない(わからない)特発性間質性肺炎をNSIP: nonspecific interstitial pneumonia(非特異性間質性肺炎)と呼び、
OP: organizing pneumonia(器質化肺炎)という病理組織を持つ、原因のない(わからない)特発性間質性肺炎をCOP: cryptogenic organizing pneumonia(特発性器質化肺炎)と呼び、
DAD: diffuse alveolar damage(びまん性肺胞障害)という病理組織を持つ、原因のない(わからない)特発性間質性肺炎をAIP: acute interstitial pneumonia(急性間質性肺炎)と呼び、
RB-ILD: respiratory bronchiolitis associated interstitial lung disease(呼吸細気管支炎を伴う間質性肺炎)という病理組織を持つ、原因のない(わからない)特発性間質性肺炎をRB-ILD: respiratory bronchiolitis associated interstitial lung disease(呼吸細気管支炎を伴う間質性肺炎)と呼び、
DIP: desquamative interstitial pneumonia(剥離性間質性肺炎)という病理組織を持つ、原因のない(わからない)特発性間質性肺炎をDIP: desquamative interstitial pneumonia(剥離性間質性肺炎)と呼び、
LIP: lymphocytic interstitial pneumonia (リンパ球性間質性肺炎)という病理組織を持つ、原因のない(わからない)特発性間質性肺炎をLIP: lymphocytic interstitial pneumonia (リンパ球性間質性肺炎)と呼ぶ、ということです。
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posted by 長尾大志 at 06:37
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| 間質性肺疾患シリーズ
2011年03月19日
間質性肺疾患1・特発性か、それ以外(原因のあるもの)か
間質性肺炎の分類を考えるときに大事なことは、原因のあるものか、ない(わからない)ものか、を分けるということです。
原因のない(わからない)ものを、特発性の間質性肺炎(群)といいます。
IIP: idiopathic interstitial pneumonitis(特発性間質性肺炎群)
原因のわかっているものは、その原因に応じて分類します。
なぜ、このように分けるかというと…。
特発性群の予後、治療は病理学的な分類で決まるのに対し、原因のわかっているものは(病理学的にもある程度規定されるとはいえ)、その原因に予後、治療が左右されることが多いからです。
間質性肺炎の主な原因
薬剤
粉塵曝露(職業・環境)
過敏性肺臓炎・じん肺・金属肺
放射線肺臓炎・酸素中毒
感染
ウィルス・ニューモシスチス・結核
サイトメガロ・マイコプラズマ・真菌
膠原病
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原因のない(わからない)ものを、特発性の間質性肺炎(群)といいます。
IIP: idiopathic interstitial pneumonitis(特発性間質性肺炎群)
原因のわかっているものは、その原因に応じて分類します。
なぜ、このように分けるかというと…。
特発性群の予後、治療は病理学的な分類で決まるのに対し、原因のわかっているものは(病理学的にもある程度規定されるとはいえ)、その原因に予後、治療が左右されることが多いからです。
間質性肺炎の主な原因
薬剤
粉塵曝露(職業・環境)
過敏性肺臓炎・じん肺・金属肺
放射線肺臓炎・酸素中毒
感染
ウィルス・ニューモシスチス・結核
サイトメガロ・マイコプラズマ・真菌
膠原病
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posted by 長尾大志 at 10:10
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| 間質性肺疾患シリーズ
2011年03月17日
間質性肺疾患シリーズ開幕にあたって
学生さんや若い先生で、必ずつまずくポイントになっているといえば、間質性肺疾患のところでしょう。
まず第一に、用語が色々あって、よくわからない。
そして、定義が混沌としている。病気と病理がごっちゃ。
私自身、なかなか整理できませんでした。若い非専門の先生方はなおさらだと思います。
授業や講義において、解説にはかなり時間をかけているつもりですが、ポリクリなどでは時間の関係で触れられないことも多く、忸怩たる思いでいるのです。この機会に、じっくりと取り上げてみたいと思います。
ただ、かなり膨大であるので、シリーズを一気にやるのは難しいかもしれません(これからテキスト化していきますので、どんな感じで進んでいくかはちょっと不確定です)。ある程度のところで区切るか、休み休み行くことになるかもしれませんが、その辺はご容赦下さい。
そもそも、間質性肺疾患というと、間質性肺炎だけでなく、サルコイドーシスやら癌性リンパ管症やらを含めるとあまりにも範囲が広範になるので、まずは、間質性肺炎に絞って考えましょう。
間質性肺炎とは、肺の実質でなく、間質の炎症です。
実質とは何か?
肺の果たすべき役割を行うところ、つまり、肺胞隔壁(肺胞上皮)と肺胞腔内(空気のところ)です。
それに対して間質とは何か?
実質以外のところ、つまり、肺胞隔壁でも上皮と隣の肺胞上皮の間(裏側)、結合組織と考えましょう。

一般的に「間質」というと上記を指します(狭義の間質)。上皮と上皮の間ですから、nm〜μmという単位の話です。実は広義の間質というものがあって、肺胞の集まりである二次小葉の間を区切る小葉間隔壁などを指すのですが、それはもう少し大きい、mm〜cm単位での話になります。ここもごっちゃになっている人が多いように思います。
今回取り上げるのは、狭義の間質の方です。広義のことはいったん忘れて下さい。
実質が炎症を起こすとき、炎症細胞(主にリンパ球、好中球など)は肺胞腔内に分布し、浸出液が肺胞腔内を充満します。
それに対して、間質の炎症では、炎症細胞(主にリンパ球)肺胞の壁内、いわゆる「間質」に分布します。

そのため、実質性肺炎では、水の含有度合いが大きい「浸潤影」になり、間質性肺炎では、空気の含有度合いが大きい「すりガラス影」になるのです。
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まず第一に、用語が色々あって、よくわからない。
そして、定義が混沌としている。病気と病理がごっちゃ。
私自身、なかなか整理できませんでした。若い非専門の先生方はなおさらだと思います。
授業や講義において、解説にはかなり時間をかけているつもりですが、ポリクリなどでは時間の関係で触れられないことも多く、忸怩たる思いでいるのです。この機会に、じっくりと取り上げてみたいと思います。
ただ、かなり膨大であるので、シリーズを一気にやるのは難しいかもしれません(これからテキスト化していきますので、どんな感じで進んでいくかはちょっと不確定です)。ある程度のところで区切るか、休み休み行くことになるかもしれませんが、その辺はご容赦下さい。
そもそも、間質性肺疾患というと、間質性肺炎だけでなく、サルコイドーシスやら癌性リンパ管症やらを含めるとあまりにも範囲が広範になるので、まずは、間質性肺炎に絞って考えましょう。
間質性肺炎とは、肺の実質でなく、間質の炎症です。
実質とは何か?
肺の果たすべき役割を行うところ、つまり、肺胞隔壁(肺胞上皮)と肺胞腔内(空気のところ)です。
それに対して間質とは何か?
実質以外のところ、つまり、肺胞隔壁でも上皮と隣の肺胞上皮の間(裏側)、結合組織と考えましょう。

一般的に「間質」というと上記を指します(狭義の間質)。上皮と上皮の間ですから、nm〜μmという単位の話です。実は広義の間質というものがあって、肺胞の集まりである二次小葉の間を区切る小葉間隔壁などを指すのですが、それはもう少し大きい、mm〜cm単位での話になります。ここもごっちゃになっている人が多いように思います。
今回取り上げるのは、狭義の間質の方です。広義のことはいったん忘れて下さい。
実質が炎症を起こすとき、炎症細胞(主にリンパ球、好中球など)は肺胞腔内に分布し、浸出液が肺胞腔内を充満します。
それに対して、間質の炎症では、炎症細胞(主にリンパ球)肺胞の壁内、いわゆる「間質」に分布します。

そのため、実質性肺炎では、水の含有度合いが大きい「浸潤影」になり、間質性肺炎では、空気の含有度合いが大きい「すりガラス影」になるのです。
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posted by 長尾大志 at 10:05
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