2014年01月21日

ユニタルク(R)=商品名(滅菌調整タルク)が使えるようになりました。

これまでにも何度かご質問を頂いておりました、胸膜癒着術に使うタルクですが、ようやく保険適応となる商品(ユニタルク(R))が市販されました。


滋賀医大でもようやく使えるようになり、昨日説明会を聴いてきたのでご報告。


タルクについては、悪性胸水の癒着術に、他薬(ピシバニールなど)よりも効果的である、しっかりくっつく、と言われてはいましたが、いろいろな事情で保険適応がなかったのです。


私自身がこれまで、保険適応外の使用は原則行わない、という施設にばかり居たものですから、適応になっていない薬剤などについては積極的に情報収集をしてこなかったところがあります。タルクなどはまさにそれで、使われていない理由もうろ覚えで「発癌性が高い」と一時言われていた、先輩医師からの話を鵜呑みにしておりました。

それを一時ここに記載していたことがあり、お叱りを受けたことは以後の貴重な教訓になっております。


いろいろな事情の一つは、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)の発症であります。まれではありますが、ARDSの発症が報告されていて、そこから安全性に関する疑問符がついていた様子です。


いろいろな調査で、タルクの粒子径が小さなものだと肺に侵入してARDSを起こすのではないか、とされ、粒子径の大きなフランス製?のタルク(Steritalc(R))では発症率が低かったことも確認されました。


ユニタルク(R)はSteritalc(R)と同一の原料を用いて生産されているということで、国内第U相試験ではARDSの発現なし、ということになっています。


それ以外にもタルクの使用量を5g以内に制限する、片側に限る、追加投与しないなどの注意事項がたくさんあります。注意して使わなくてはなりません。


ただそれを上回る「確実な癒着」というメリットがあることは間違いなさそうです。是非近いうちに使って見たいと思います。


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posted by 長尾大志 at 17:15 | Comment(3) | 気胸・胸水・ドレナージ

2012年12月21日

ブラとブレブの違い

今日も、先日頂いたご質問にお答えいたします。


(質問ここから)
失礼いたします。獣医師をしております。ブラとブレブ、臨床的には細かく鑑別する必要がないようですが、できましたらイラストなども用いながらこの2つの違いを説明していただけないでしょうか?よろしくお願いいたします。
(ここまで)



以前にも書きましたが、肺の中にできた空気の袋を肺嚢胞と言います。


袋があって、中身が空気、ということで、袋にあたる周りの隔壁は白く薄い壁として見え、その中身が真っ黒に見える、これが嚢胞の見え方です。肺胞が破壊されたために肺の中にいきなり黒い空間が出現する気腫とは、壁のあるなしが違います。


8嚢胞と気腫.jpg


嚢胞には定義としてブラとブレブ、2つのものが決められていますが、ブラとブレブに関しては、教科書によって若干書いてあることが違っていたりします。画像の教科書か病理の教科書かによっても若干。ここではFleischner Societyの用語集(Radiology 2008)やHRCT of the LUNG(Webb)あたりの画像の教科書を参考にしてみましょう。


■ブラ(Bulla):径1cmを超える(通常数cm)気腔で、1mm以下の薄い壁によって境界されています。隣接する肺にしばしば気腫性変化を伴うので、気腫に伴って形成されたものと解釈されます。


こちらは喫煙者の、特に胸膜直下によく見られます。喫煙で肺胞が破壊されると気腫になるわけですが、その一部が壁を形成してブラとなるようです。壁は折りたたまれた肺胞や結合組織などから形成されています。


ということで、高齢喫煙者の気胸の原因は、こちらが破れることによる、というケースが多いハズですが、たぶん厳密には調べられていないでしょう。



■ブレブ(Bleb):基本、臓側胸膜内に存在する小さな気腔で、径が1cmに満たないものをいいます。ただ、径の大きさによってブレブとブラを区別する意義は臨床的に乏しいので、ブレブという言葉を放射線科医が使用することは勧められないとまで書いてあったりします。


定義からしても、ブレブの壁を形成するのは胸膜、ということになります。いわゆる若年男性における自然気胸の時の説明で、破れるのは(定義としては)ブレブであることが多いのですが、たいてい「ブラが…」と言われていますね。


そもそも、画像的には(大きさ以外)、ブラとブレブを区別することはできませんので、これを区別することに意義は少なく、たいてい「ブラ」という用語が使われる、とまで教科書に記載があります。なので、「ブラが…」と言うておいたらいいのです。



イラストを、ということでしたので、作ってみました。いかがでしょうか。


3ブラとブレブ.jpg


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posted by 長尾大志 at 11:20 | Comment(1) | 気胸・胸水・ドレナージ

2012年12月20日

胸腔ドレナージの実際・呼吸性変動(呼吸性移動)について

そういうわけで、先日頂いたご質問にお答えいたします。


(質問ここから)
先生こんにちは。ブログ大変わかりやすく勉強になります。私は准看護師をしているのですが、胸腔ドレナージについて分からないことがあります。


1つめは呼吸性変動を見るときは吸引を止めた状態で見るのが正しいですよね?持続吸引をしていても呼吸性変動がある場合は吸引圧が足りないということでしょうか?


2つめは肺の再膨張がはかられると、呼吸性変動が徐々に少なくなるのは何故ですか?


とても初歩的なことだと思うのですが、教えて頂けるとありがたいです。よろしくお願いします。
(ここまで)



初歩的、かもしれませんが、ドレナージをやっている患者さんの担当になられたときに、誰もが一度は持つ疑問ではないかと思います。早速お答えいたします。


>1つめは呼吸性変動を見るときは吸引を止めた状態で見るのが正しいですよね?
>持続吸引をしていても呼吸性変動がある場合は吸引圧が足りないということでしょうか?


その通りです。吸引を掛けている間は、通常は胸腔内圧(−5〜8cmH2O)に打ち勝つ程度の陰圧(−10cmH2O以上)がかかるはずです。そのため、吸引をかけていると呼吸性移動を見る(チェストドレーンバックの場合)青い水の部屋では水面が下に下がって動きません。


1チェストドレーンバック青.JPG


吸引しているにもかかわらず、呼吸性移動を見るということは、胸腔内圧が吸引圧に勝っているということですから、吸引圧不足が考えられます。


吸引圧を見る(チェストドレーンバックの場合)黄色い水の部屋を確認してください。ここで泡がボコボコ出ていなければ、吸引圧不足ということになります。


2チェストドレーンバック黄.JPG



>2つめは肺の再膨張がはかられると、呼吸性変動が徐々に少なくなるのは何故ですか?


肺が膨張してきてくると、ドレナージチューブの入っている部分の隙間が狭くなりますね。すると肺がチューブの孔をふさぐ形になり、呼吸性変動が少なくなったり、なくなったりするのです。


3膨張した肺が孔をふさぐ.JPG


ドレナージチューブには先端以外に、横にも孔(側孔)が空いています。この側孔が肺に圧されてふさがりがちになるようです。完全にふさがってしまうとやはり意味がありませんから、医師・上級医に報告しましょう。

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posted by 長尾大志 at 12:05 | Comment(22) | 気胸・胸水・ドレナージ

2012年07月25日

今日の症例・ドレナージあれこれ・呼吸性移動もエアリークもありません2

チェストドレーンバックの青い水の部屋(水封部)を見て、呼吸性移動とエアリークがあるかないかを確認します。


スライド6.JPG


呼吸性移動があるかないかは、ドレナージチューブが開通しているかどうかを表し、エアリークがあるかないかは、文字通りエアリークの有無を表します。


それぞれのあるなしで、4通りの組み合わせが考えられます。各々どういう状態を表すか、おさらいをしておきましょう。


1.呼吸性移動+ エアリーク−
 望ましい状態。チューブがきちんと効いていて、エアリークがない=穴がふさがっている状態。これで胸部レントゲン写真上、肺の再膨張があれば、 クランプテストへ。


2.呼吸性移動+ エアリーク+
 まだ穴がふさがっていません。エアリークがなくなるまで、もう少し待ちましょう。


3.呼吸性移動− エアリーク−
 チューブのどこかが閉塞しています。どこかで折れ曲がっていないか、目に見えるところで詰まっていないか、確認しましょう。上級医に報告を。


4.呼吸性移動− エアリーク+
 普通はあり得ません。いや、チューブのどこかが外れているとこうなりますね…。すぐ、上級医に報告して指示を仰ぎましょう。


となります。


本症例は3にあてはまり、「呼吸性移動もエアリークもありません」状態を確認したら、直ちに体外のチューブを隅々まで確認します。多いのは、いつの間にかチューブがねじれてコキッと折れ曲がった状態。


撮影した胸部レントゲン写真でもわかるように、


ドレナージあれこれCR4.JPG


ココ(矢印)が折れ曲がっていましたね。
研修医の先生にとってはよい経験となったことでしょう。


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posted by 長尾大志 at 15:44 | Comment(0) | 気胸・胸水・ドレナージ

2012年07月24日

今日の症例・ドレナージあれこれ・呼吸性移動もエアリークもありません

ドレナージあれこれCR1.jpg


こんな胸水を呈する症例で、胸腔ドレナージ施行いたしました。


ドレナージあれこれCR2.jpg


臓側胸膜の厚みが増しており、肺の拡張が妨げられているようですが、この段階では特に問題はございません。


翌日、研修医の先生がやってきて、「呼吸性移動もエアリークもありませんが、どうしたらいいですか?」と尋ねられました…。


ここでおさらいです。呼吸性移動とエアリークとは、チェストドレーンバックの青い水の部屋(水封部)を見るのでしたね。それぞれがあるかないかで、4通りの組み合わせが考えられます。それぞれ、どういう状態を表すか、すぐに答えられるようにしておきましょう。


呼吸性移動+ エアリーク−
呼吸性移動+ エアリーク+
呼吸性移動− エアリーク−
呼吸性移動− エアリーク+


本症例では、呼吸性移動− エアリーク−。


撮影した胸部レントゲン写真では、


ドレナージあれこれCR3.jpg


となっていました。おー…。
さて、どういう状況であると考えられますか。


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posted by 長尾大志 at 18:10 | Comment(4) | 気胸・胸水・ドレナージ

2012年06月27日

気胸つながり・自然気胸の好発年齢・性別・部位・体格・気候の覚え方2・気胸発生のきっかけ

以前に書いた記事で、嵐の相葉雅紀さんが気胸になった件を覚えておられるでしょうか。ほとんど同じ事柄ですが、せっかく気胸の機序を学んでいますので、気胸の発生するきっかけになりやすい状況をまとめておきます。



■体内(気道内)の圧が上昇するような状況

  • 人工呼吸による陽圧換気。

  • ダイビング。



人工呼吸により陽圧をかけていると、気胸が発生しやすいことは以前にも書きました。陽圧換気中に気胸が発生すると、すぐに肺が虚脱し、SpO2低下を来しますので、常に用心しておかなくてはなりません。


また、ダイビングではかなりの高圧空気を吸入しますから、胸腔内が陽圧になり、発症しやすい上に、海中で発症すれば命取りになりかねません。気胸になった方は、原則禁止だと思っておきましょう。



■体外の圧が低下するような状況

  • 小さな飛行機(圧力調節装置がない)で急上昇する。

  • 台風や前線など、急に気圧が下がるとき(避けようがありませんが)。



結構台風や前線通過の時に、気胸患者さんが続けて来院、ということを経験しますね。




そう、

気胸=嵐

(やせ形・高身長男子・イケメン=嵐、低気圧で発症)
と覚えましょう。

今日は要するに、これが言いたかった…。


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posted by 長尾大志 at 15:07 | Comment(2) | 気胸・胸水・ドレナージ

2012年06月26日

気胸つながり・自然気胸の好発年齢・性別・部位・体格・気候の覚え方1・気胸発生の機序

気胸といえば、普通は、ブラ(嚢胞)が裂けて肺(臓側胸膜)に穴が開き、肺内の空気が漏れだして肺の外、つまり胸腔内にたまる、という機序で起こります。

外傷などで、胸壁に穴が開いて、外気が胸腔内に入った状態は外気胸といいます。
ここでは、外気胸ではなく、内気胸を取り上げます




この場合のブラは、肺尖部に多く見られます。


自然気胸の好発年齢、性別、体格などは、やせ形男子の10代後半となっています。(この理由は、前回省略したのですが)ブログをご覧の方は、ウチの学生さん以外の方も多いようなので、この機会に書いておこうと思います。


まずは、肺の発育を考えましょう。


生まれてすぐの新生児期、肺の大きさは成人の10分の1くらいです。

肺胞の大きさは変わりませんから、肺胞の数もやはり10分の1。成長に従って肺胞が構築され、12歳頃に成人と同じ肺が完成します(Thorax 1962. vol 17,329)。


1気胸メカニズム.JPG


ところで…男子の身長が急に伸びる時期、いつ頃でしょうか。
ちょうど12歳前後、いわゆる思春期の頃、(特にやせ形の男子の)身長がぐぐっ、と伸びる時期があるのですね。そのときにどうやら、胸郭が上下方向にぐぐっ、と引っ張られる。


2気胸メカニズム.JPG


特にやせ形男子は内臓の成熟が遅く、胸郭の発達に追いつかないと、重力に逆らって引っ張られる上方向に肺がフンのばされ、その結果ブラ(嚢胞)が形成される、という機序が考えられています。


そのブラ(嚢胞)はできたてほやほやの時期から、数年以内が破れやすい(時間が経つと補強される)ため、好発年齢は10代の後半、となるわけです。



そんなわけで、やせ形イケメン男子の肺尖にできたブラが、10代後半に破裂して気胸になることが多い、ということになります。


いや、気胸は必ずしもイケメンには限らない、など、異論もあろうかと思いますが、芸能人で気胸になった方は、ほぼ例外なくイケメン。


なぜか?それは、芸能人で高身長、やせ形でブサ○クな方、というニーズがないからでしょう。


ブサ○クであれば、低身長でデ○(ああ、他人事ではない…)の方がTV的にいいんじゃないでしょうか…って、なんのこっちゃら。


学生さんでも、各学年で1人は気胸になっていたりするのですが…ほぼ例外なく、やせ形高身長。イケメンかどうかは、好みの問題ですので言及しません。


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posted by 長尾大志 at 18:54 | Comment(3) | 気胸・胸水・ドレナージ

2012年02月25日

今日の症例・同門会、一般演題の部より。両側胸水、低アルブミン血症の鑑別4

これだけ引っ張ったので、もったいぶらずに鑑別を出しましょう。
両側胸水の鑑別としては…


  • 心不全

  • 肝硬変・肝疾患

  • ネフローゼ症候群・腎疾患

  • 悪性腫瘍

  • 脚気

  • Meigs症候群

  • SLEないしMCTDなどの膠原病



などを想定し、追加検査をいくつか。
病歴と滲出性〜漏出性の感じから、膠原病かなあと。では低アルブミンは…。



  • 心不全: BNP上昇はごく軽度で、心エコー所見も否定的。

  • 肝硬変:採血結果およびCT検査所見で所見なし。

  • ネフローゼ症候群: 尿蛋白陰性。

  • 悪性腫瘍: 胸水・腹水細胞診結果はclassU。造影CT検査所見からも否定的。

  • 脚気:ビタミンB欠乏なし。

  • Meigs症候群: CA125 高値。しかし、MRI検査にて卵巣腫瘍は否定的であった。



ということで、SLEないしMCTDなどの膠原病以外は除外されました。


皮疹の生検結果はLEに合致する病理組織像で、採血で補体の低下、さらに抗核抗体   640倍(Speckled)、抗SS-A抗体と抗RNP抗体 も陽性でした。


皮膚科にて生検を行った皮疹の病理がループスエリテマトーデスに合致したことと、入院後新たに無痛性の口腔潰瘍が出現したことから、SLEの診断基準のうち、


  • 頬部皮疹

  • 円板状皮疹

  • 日光過敏

  • 口腔潰瘍

  • 関節炎

  • 漿膜炎  a.胸膜炎  b.心外膜炎

  • 腎障害

  • 神経障害

  • 血液異常

  • 免疫異常 a.抗二本鎖DNA抗体 b.抗Sm抗体 c.抗リン脂質抗体

  • 抗核抗体



太字の4項目を満たし、診断に至りました(その後の経過中、神経障害も生じました)。


低アルブミン血症は、蛋白漏出性胃腸症を想定し、

蛋白漏出シンチ
α1-アンチトリプシンクリアランス試験

を行いました。結果、蛋白の漏出が確認され、最終診断に至りました。


本症例は高齢発症のSLEです。高齢発症群はSLE全体の5〜10%を占め、

  • 65歳以上

  • 男女比は1:5

  • 発症は潜行性で緩徐に進行(平均3〜5年)

  • 典型的SLEと表現型が異なる

  • ステロイドに対する反応性が良い


といった特徴があります。


本症例は上の特徴によく合致しますが、蛋白漏出性胃腸症は高齢者には稀です。そもそも膠原病による胸水は滲出性か漏出性かはっきりしない(微妙)であったりするのですが、蛋白漏出性胃腸症の合併で、なお見極め困難でありました。


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posted by 長尾大志 at 14:00 | Comment(0) | 気胸・胸水・ドレナージ

2012年02月24日

今日の症例・同門会、一般演題の部より。両側胸水、低アルブミン血症の鑑別3

検査所見を見ましょう。

気になるところでは、
TP 6.0g/dL
Alb 2.2g/dL 低アルブミンはあるものの、
LDH 183U/L

F-T4 1.75ng/dL
F-T3 2.3pg/mL
TSH 3.53μIU/mL

ACE 11.9IU/L
BNP 18.44pg/mL

このあたりはまあまあ、正常範囲から大きく逸脱せず。


尿は異常所見なし。


胸部X線写真は、こんな感じで、両側胸水が見られます。


図CAM.png


さて、その胸水ですが、

TP3.5 g/dL
LDH103 U/L
AMY52 U/L
ADA15.5 IU/L
比重1.017
リバルタ反応陰性
Glu105 mg/dL

細胞数2336/3
細胞分画は
  好中球2.0%
  リンパ球35.0%
  マクロファージ37.0%

細胞診 classU
一般細菌・抗酸菌培養 陰性

でした。これは、どのように解釈されるべきでしょうか。結構、漏出性か、滲出性か、微妙な気がいたします。


Lightの基準

蛋白:0.5>胸水中蛋白/血清蛋白
LDH:0.6>胸水中LDH/血清LDHまたは
施設の血清LDHの正常上限の2/3以上

実はこの後、症状が続くため何度か穿刺排液を繰り返し、その都度滲出性であったり、漏出性になったりだったのですが…。カンのいい方なら、このあたりでピンと来られるかも。



さて、ここまでの情報で、鑑別疾患を考えましょうか。


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posted by 長尾大志 at 11:02 | Comment(0) | 気胸・胸水・ドレナージ

2012年02月23日

今日の症例・同門会、一般演題の部より。両側胸水、低アルブミン血症の鑑別。2

両側胸水でよく見かけるもの。


何はなくとも、心不全でしょう。
だから、同門会で提示したわけです。


両側胸水があって、心拡大が見られ、下腿〜全身の浮腫があれば、ほぼ決まりといってもいい。そのくらい、よくある病態ですね。


それ以外に、ネフローゼなどの腎障害や、肝機能の悪化などでも両側胸水が見られます。で、これらの胸水は漏出性、これが基本。


あと一つ、忘れてはならないものは…。



わかりますか?




寒がり、便秘、倦怠感、徐脈など…。
といえば…




甲状腺機能低下ですね。
もうこれは、主治医が気づくかどうか、この一点にかかっているわけです。全てのドクターが知っておかれるべきでしょう。


他にも、あまり見ませんが、脚気なんかも鑑別に入れておきます。


さて、診断を進めていくわけですが、追加で必要な情報、これは、上記疾患を支持する所見はあるか、というところでしょう。


心疾患の既往(一応なし)、心電図異常を指摘されたことはないか(なし)、
腎疾患の既往(一応なし)、検尿異常を指摘されたことはないか(なし)、
肝疾患の既往(一応なし)、肝酵素異常を指摘されたことはないか(なし)、
高体温、むしろ下痢気味、徐脈でなく、浮腫は圧すと容易に凹む。

…このあたりはあまり当てはまらないようですね。


それでは、胸水の鑑別・マネジメントを参考にしましょう。そうです。胸腔穿刺によって、胸水を得るのです。

あ、ちなみに、ドクターによっては、「胸水穿刺」とおっしゃることもありますが、私が教わった先輩は、「水なんて刺せないものを穿刺する訳じゃない。胸腔を穿刺するのだ。」といわれていましたので、こちらで統一します。


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posted by 長尾大志 at 10:06 | Comment(0) | 気胸・胸水・ドレナージ

2012年02月22日

今日の症例・同門会、一般演題の部より。謎の胸水、低アルブミン血症。

先日の同門会、一般演題の部で、当科から2つの症例呈示を行いました。
聴衆のほとんどが循環器Dr. ということを考慮して、興味を持って頂けるような症例を選択。

1つめは循環器の先生にはなじみの深い、両側胸水の症例です。


70歳代 女性
主訴:咳嗽・全身浮腫
3ヶ月前頃から顔面と前腕に軽度掻痒を伴う皮疹が出現し、8月に当院皮膚科を受診。病理診断は扁平苔癬であり外用薬で加療されていた。1ヶ月前咳嗽と呼吸困難を認めたため、当科を紹介受診。その後両側胸水・全身浮腫が出現し、急速に胸水が増加し、浮腫の悪化を認めたため、精査加療目的にて当科入院。

既往歴・家族歴に特記事項なし、never smokerで1日にビール350 mL/day程度飲酒。
金属アレルギーあり。

身体所見
身長:150 cm 体重:56 kg (1週間で約4kgの増加) 体温:36.8 ℃ 心拍数:78 回/分 血圧:116/72 mmHg SpO2:90〜92 % (room air) 呼吸数:18 回/分 
著明な全身浮腫あり
頭部、右頬部、四肢に暗赤色皮疹 硬口蓋に発赤あり
表在リンパ節:触知せず
肺音:両側下肺野で呼吸音減弱
心音:整、心雑音なし
腹部:膨満、軟、腸蠕動音正常、圧痛なし
関節痛なし


さて、この時点で、どのような疾患を想起されますか?
追加で必要な情報は何でしょうか。


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posted by 長尾大志 at 15:16 | Comment(2) | 気胸・胸水・ドレナージ

2011年07月06日

「嵐」の相葉雅紀さん・自然気胸回復、退院。再発の可能性は?生活面で気をつけることは?

相葉雅紀さん、無事に退院されたそうです。軽症であったようで、よかったです。

報道によりますと、


  • 今回は軽症であり、手術もなく薬を飲んでいた?程度で回復した。

  • 前回の手術は右側(つまり、今回と反対側)であった。

  • ちなみにそのときはサックスを吹きすぎて発症したとのこと。

  • 主治医からは、「日常生活には全く支障がない」と太鼓判を押された。



とのことです。


自然気胸の治療方針から考えると、やはりごく軽度の気胸であったと思われます。穿刺やドレナージも不要であったのでしょうか。


で、こうなると、問題は再発の可能性です。


以前手術を受けられた左でなく、右側ですので初発とすると、2回目を起こす可能性は一般的には50%程度、つまり2人に1人は再発するといわれています。ひとたび再発すれば、以降は何度も起こすといわれており、手術が勧められますが、初発の場合は必ずしも手術は「必須」ではありません。


ということで、再発しやすそうな状況はなるべく避けていただきたいものですが、芸能活動をされている以上、身体を張ったお仕事も多いかと思います。教科書的には以下のような状況はなるべく避けるべき、といわれていますので、老婆心ながら挙げておきます。



■体内(気道内)の圧が上昇するような状況

  • サックスを吹く、というのはちょっと気づきませんでした。でも確かに気道内圧が上がりますね。

  • 今後お仕事としてありそうなのはダイビング。これは気道内圧がかなり上がります。ダイビング中に発症すれば命取りになりかねません。

  • 人工呼吸による陽圧換気。




■体外の圧が低下するような状況

  • 小さな飛行機(圧力調節装置がない)で急上昇する。

  • 台風や前線など、急に気圧が下がるときには注意が必要です(避けようがありませんが)。



これらのことに気をつけて、これからも、お仕事頑張っていただきたいと思います。
家族皆で応援しています!


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posted by 長尾大志 at 09:37 | Comment(0) | 気胸・胸水・ドレナージ

2011年06月30日

「嵐」相葉雅紀が入院 安静加療必要(Yahoo!ニュースより)

ニュース速報です。
以下Yahoo!ニュースより引用します。


「嵐」の相葉雅紀(28)が1週間程度入院すると29日、所属のジャニーズ事務所が発表した。

 相葉は28日、胸に痛みを感じ、レギュラー出演する日本テレビ「嵐にしやがれ」(土曜後10・00)の収録後、都内の病院で検査。当直の医師の判断でそのまま入院した。

 29日に肺に穴があき空気が漏れる「左自然気胸」と判明。1週間ほど入院して安静加療が必要と診断された。


引用ココまで。


うちの子供たちにも人気のです。車の中ではずっと嵐。2歳の娘もTVでメンバーの1人でも出ると「あーし!あーし!」と叫びます。そんなにあって、相葉さんといえば絶妙のポジション。


息子(9歳)は、「1番好きなのは櫻井くん、2番が相葉くん」といい、
娘(5歳)は、「1番はマツジュン、2番が相葉くん」といいます。


このように、大活躍中の相葉さんですが、心配ですね。


初期の対応としては、 気胸・胸水・ドレナージにも書いたように、虚脱率が低ければ安静加療で自然軽快します。ドレナージとか手術とかいう記載はニュースにはないので今回は軽度のものかと想像しますが、気になるのは9年前にも自然気胸で入院、手術しているという点です。果たして今回と同じ左なのか、はたまた右なのか。

左だとすれば手術しているにもかかわらずの再発、右ならタイミングとしては少し遅いですが、初発ということになります。今後のことを考えて手術に踏みきるかどうか、軽度なのでこのまま経過観察、とされるのか、注目されます。


なお、一般的には、初発でも5割程度の再発、再発の場合は8割以上再々発するといわれています。なかなか穴が閉じない場合や、再発予防のためには積極的に手術を行いますが、手術した側での再発、となりますと、施設によって方針や治療成績が異なるのが現状です。


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posted by 長尾大志 at 12:54 | Comment(0) | 気胸・胸水・ドレナージ

2011年04月20日

胸水のマネジメント・胸膜癒着術

主に癌性胸水で胸水量のコントロールが困難、つまり、どんどん胸水がたまってきて、呼吸困難や倦怠感などの症状がある場合、胸膜癒着術を行います。


これは、胸腔内(臓側胸膜と壁側胸膜の間)に薬剤を注入してわざと炎症を起こし、臓側胸膜と壁側胸膜を癒着させることで、胸水のたまる空間を物理的になくすというものです。


使われる薬剤には、以下のようなものがあります。


■タルク:かつて安全性に問題があるといわれていたことがあり、施設、医師によって使用に温度差がある。

■ピシバニール:元々抗癌剤。5KE〜10KE(ピシバニール独特の単位)使用。

■ミノマイシン:100〜200mg使用。

■抗癌剤(CDDPなど):胸水量が多い場合、あらかじめ使用し減少させる(癒着目的ではない)


具体的な方法としては、まずドレナージチューブでしっかり水を抜いて、肺を再膨張させて臓側胸膜と壁側胸膜を密着させ、その後局所麻酔のキシロカインにひき続き上の薬剤を注入します。


注入後は2時間クランプ(管を鉗子ではさんで薬剤が出てこないようにする)し、その間薬剤が満遍なく行き渡るよう、15分ごとに体位交換(コロコロ…)をします。

2時間後、クランプを解放して、−15cmH2O以上で吸引をかけます。




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posted by 長尾大志 at 13:16 | Comment(36) | 気胸・胸水・ドレナージ

2011年04月19日

胸水のマネジメント・胸腔ドレナージ・膿胸

漏出性胸水の治療は、浸透圧の差を減らす、これに尽きます。
よっぽどでない限り、ドレナージなんかしてはいけません。スペースに余裕ができて、圧が下がるため、余計水が出てくるだけです。


胸水があって、ドレナージの適応になるのは、以下のような場合。

  • 胸水pH<7.1で、膿胸と考えられるとき

  • 滲出性胸水で、胸水による症状(呼吸困難、倦怠感など)があるとき

  • 血胸、乳び胸のとき


あたりです。いずれにしても、まずは水を抜いて調べる、というのが大前提です。

膿胸というのは、胸腔内(臓側胸膜と壁側胸膜の間)に膿(酸性:pH<7.1)がたまった状態です。膿の中にはフィブリンが析出し、速やかに被包化します(膜が張って胸腔内に袋がいっぱいできてくる感じです)。きて、抗生剤の移行が不良になり、治療困難になるため、直ちにドレナージの適応となります。


すでに隔壁(袋)ができてしまって、ドレナージが効かない場合には、ウロキナーゼを直接胸腔内に注入することもあります。


また、胸腔鏡下に隔壁、フィブリンを取り除く方法もありますが、専門的になりますので、ここでは触れないでおきます。




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posted by 長尾大志 at 18:06 | Comment(6) | 気胸・胸水・ドレナージ

2011年04月18日

胸水の鑑別・マネジメント

胸水がたまっている患者さんを診たら…。
できる限り、抜いて調べたいもの。

先輩の言葉を紹介します。

「水があったら、抜くべし。抜けるモノは皆抜くべし。」


抜いてみないと、何もわかりません。
ただ一つの点を除いては…。

ただ一つの点とは、
両側性か、片側性か
ということです。

両側に同じようにあったら、まあだいたい心不全です。
肝不全や腎不全など、いわゆる漏出性胸水を来すものも含みます。
利尿薬を使って反応があれば、確信できます。


そうは言ってもやはりどうかわからない、そういうときは、抜いて調べるより他にありません。
抜いたらまず性状を見てみましょう。

まずは色。大抵、黄色っぽいものです。尿と同じ原理です。
血性であれば、癌や外傷、梗塞が想起されます。
きれいな白色であれば乳び胸。

次に透明度。
向こうに書いてある文字が読めるくらい澄んでいたら、透明と言えます。
細胞成分が多くなってくると、粉っぽくなり「混濁」と表現します。

白く濁って膿性であれば、膿胸の可能性があり、すぐドレナージが必要かもしれません。

悪臭があれば、なおさら膿胸、嫌気性菌の関与が疑われます。


次に検査に出します。そのときに測定すべき項目を挙げます。

なんといっても大事なのは、蛋白とLDH。なぜなら、滲出性か漏出性かを区別する基準はこの2つによっているからです。


Lightの基準
蛋白:0.5>胸水中蛋白/血清蛋白
LDH:0.6>胸水中LDH/血清LDHまたは
 施設の血清LDHの正常上限の2/3以上
 このうち1個でも満たせば、滲出性胸水


ちなみに、このLightさんは、かのバイブル「Pleural Diseases」を著された方です。彼のいうことは業界では絶対です。呼吸器部屋にも当然おいてあります。

滲出性、ということは何か病変があり、そこから水が産生されているということ。
そうではない、漏出性ということは、浸透圧の関係などで水があふれ出たということ。

これで、ある程度鑑別を絞り込みます。

他に、測定しておくとよい項目は、以下のようなものがあります。ただ、血清中の値と異なり、カットオフ値が定まっていなかったりする項目もあるため、注意が必要です。

ADA:結核性胸膜炎
AST, ALT:肝障害
アミラーゼ:膵炎
ヒアルロン酸:中皮腫
糖:低値(<60mg/dl)で肺炎随伴性、悪性腫瘍、リウマチ性疾患、結核性といった糖を消費する疾患を示唆
CEA他、腫瘍マーカー:癌
pH:<7.1→膿胸
   <7.3→結核・>7.4→悪性腫瘍

細胞分画:リンパ球優位の場合、悪性腫瘍、結核
     好中球優位なら細菌感染


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posted by 長尾大志 at 13:30 | Comment(2) | 気胸・胸水・ドレナージ

2011年04月17日

ドレナージの実際・クランプテスト

一昨日、さらりと出てきた「クランプテスト」。
これについて説明します。


肺の穴がふさがって、エアリークがなく、胸部レントゲン写真上、肺の再膨張があれば、いよいよドレーンチューブを抜きましょう。


しかし、ほんの小さな穴が塞がらずに残っていた場合、吸引をかけている間は肺が広がっていても、ドレーンチューブを抜いてしまって何時間か経つと、また肺がへこんでしまうかもしれません。

そこで、擬似的にドレーンチューブを抜いたのと同じ状態を作り出します。


具体的には、チューブの途中を鉗子ではさみ(=クランプ)、チューブ内の交通を遮断します。これで、チューブを抜いたのと同じ状態になります。


クランプを24時間続けて(つまり翌日に)、胸部レントゲン写真を撮影し、気胸の再発がなければ、穴はほぼ塞がっていると解釈し、ドレーンチューブを抜去します。

このようにクランプしてみることを、クランプテストというのです。


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posted by 長尾大志 at 10:27 | Comment(2) | 気胸・胸水・ドレナージ

2011年04月16日

キューインワン(チェストドレーンバック)の実際・観察すべきところ・吸引部・排液部

スライド6.JPG


吸引をかけるとき

吸引圧の調節は、「吸引圧」の部屋に入れる水の量で行います。目盛が書いてありますから、「−10cm」と指定されたら、10の目盛まで水を入れましょう。ここに入れた水も着色(黄色など)します。なぜか。ブクブク出る泡を見るためです。


上の図にもあるように、第3のビンの中で水につかっている管(大気に通じている)の長さ分水柱以上の陰圧がかかると、その管から大気が入り、(ブクブク泡が出て)それ以上の陰圧が胸腔内にかかるのを防ぐのでした。


逆に考えると、泡が出ていない、ということは、それ未満しか陰圧がかかっていない、つまり、圧が不足しているということになります。これでは困ります。


−10cmなら−10cm、きっちりそれだけの陰圧で吸引するために、このシステムがあるのです。ですから、この部屋はブクブク泡が出ていなければなりません。エアリークと混同しないよう、よく理解して下さい。



吸引をかけないとき

再膨張性肺水腫の予防のため、吸引をかけない場合も多いです。この場合、吸引チューブをつながないでおきます。「水封で」という場合がこれです。いつでも吸引が開始できるよう、吸引圧の部屋に10cm程度水を入れておくことが多いと思います。



最後に排液部ですが、これはそのまま、排液量を見ます。一日○○ml、とかいう風に記録しましょう。


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posted by 長尾大志 at 10:46 | Comment(4) | 気胸・胸水・ドレナージ

2011年04月15日

キューインワン(チェストドレーンバック)の実際・観察すべきところ・水封部

(昨日の続き)これらの3つのビンを一体化させたものが、キューインワン(チェストドレーンバック)なのです。各々の部屋が順番にビンに対応しています。


スライド6.JPG


ですから、ビンでいうとどこにあたるかを理解し、そのビンの意味を理解すれば、観察のポイントは簡単です。


一番大事なところは水封部です。水封部を見て、呼吸(胸腔内圧の上下動)に伴って、水面が上下するのを観察すると、チューブがきちんと開存して胸腔内とつながっているかどうかがわかります(この上下動を呼吸性移動といいます)。呼吸性移動の有無は必ず観察しましょう。ただし、吸引をかけているとこれはわかりませんから、呼吸性移動を確認するときには吸引を止めて下さい

この呼吸性移動を見やすくするために、水には色(青色など)がついています。

さらに、肺に穴が開いていて、空気漏れが続いていると、水の中にブクブク泡が出ます。これはエアリークといい、穴がふさがっているかどうかがわかります。水に色がついているので、これも見やすいです。


呼吸性移動とエアリークの組み合わせは以下の通りになります。

呼吸性移動+ エアリーク−
呼吸性移動+ エアリーク+
呼吸性移動− エアリーク−
呼吸性移動− エアリーク+


1.呼吸性移動+ エアリーク−
 望ましい状態。チューブがきちんと効いていて、エアリークがない=穴がふさがっている状態。これで胸部レントゲン写真上、肺の再膨張があれば、 クランプテストへ。

2.呼吸性移動+ エアリーク+
 まだ穴がふさがっていません。もう少し待ちましょう。

3.呼吸性移動− エアリーク−
 チューブのどこかが閉塞しています。どこかで折れ曲がっていないか、目に見えるところで詰まっていないか、確認しましょう。上級医に報告を。

4.呼吸性移動− エアリーク+
 普通はあり得ません。いや、チューブのどこかが外れているとこうなりますね…。すぐ、上級医に報告して指示を仰ぎましょう。




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posted by 長尾大志 at 10:17 | Comment(24) | 気胸・胸水・ドレナージ

2011年04月14日

キューインワン(チェストドレーンバック)の実際・3連ビンによる説明

キューインワンとか、チェストドレーンバックとか、会社によって商品名が違うのですが、ドレナージチューブを入れたあとにつなげる、あの箱についても、よくわからずスルーしがちなので、この機会になじんでおきましょう。


こんな箱です。
こんな箱1.jpg


この箱の原理で、ビンが3個連なっているやつ、ご覧になったこともあるかもしれません。この原理を説明するのに、これ以上わかりやすい方法を思いつかないので、ここでも取り上げてみます。


まず、胸腔ドレナージチューブをそのまま解放しておいてはいけません。胸腔内と大気が直結されると、胸腔内が陰圧になったとき(吸気時)には大気が胸腔内に流れ込んできます。


スライド1.JPG


ですから胸腔内が陽圧になったとき(呼気時)には中の空気が出ていき、胸腔内が陰圧になったとき(吸気時)には空気が帰って行かないように一方弁になっていればいい。


スライド2.JPG


ハイムリッヒ弁(ハイムリッヒバルブ)というやつです。これを付けておくと、外来管理も可能という代物です。

弁の代わりに、チューブの先端を水につけておくと、胸腔内が陽圧になったとき(呼気時)には中の空気が出ていき、胸腔内が陰圧になったとき(吸気時)には空気が帰って行かないようにできます。


スライド3.JPG


こうすると、空気が出ていくのも(水の中にあぶくがブクブク出るので)よく見えます。また、チューブがきちんと開存して胸腔内とつながっているいるかどうかも、呼吸(胸腔内圧の上下動)に伴って、水面がチューブ内を行ったり来たりするのを観察することでわかります(この行ったり来たりを呼吸性移動といいます)。


しかしこのままでは、胸腔内から出てきた浸出液(胸水)で、ビンの中の水が汚染されてしまいます。

そこで、胸腔内から出てきた浸出液(胸水)をためるビンを水入りのビンの前に挿みます。


スライド4.JPG


最後に、これが一番難しいのですが、陰圧で吸引をかけたいとします。でもある程度以上陰圧はかけられない。そのようなとき、第3のビンの出番なのです。これはちょっと口で説明するのが難しいので、図を見て下さい。


スライド5.JPG


第3のビンの中で水につかっている管(大気に通じている)の長さ分水柱以上の陰圧がかかると、その管から大気が入り、それ以上の陰圧が胸腔内にかかるのを防ぐ、という説明になります。わかりますかね〜?


これらの3つのビンを一体化させたものが、キューインワン(チェストドレーンバック)なのです。


*上で用いた3連ビンの絵は、古いプリントをスキャンしたもので、出典がわかりません。出典をご存じの方がおられましたら、教えていただけましたら幸いです。




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posted by 長尾大志 at 10:45 | Comment(0) | 気胸・胸水・ドレナージ

2011年04月13日

ドレナージの実際・ドレナージチューブの先端位置

ドレナージチューブを入れる場所については成書に必ず記載してありますが、しばしば抜けがちな視点が、先端の位置です。


ドレナージチューブの先端は、肺尖にあること

が、基本です。何でか?
胸腔内の空気を、効率よく全て排出するためですね。
考えてみれば当たり前なんですが、しばしば若い先生は、

挿入の場所にはこだわるが、先端の位置には無頓着

になりがちなんですねー。まあ、教科書には大抵、「どこそこから挿入する」としか書いてないからだと思いますが。


先端を肺尖に確実におくことができ、かつ、傷つけて困るような大血管などがない場所から挿入すべきなので、

・第2肋間鎖骨中線
・第5−6肋間中腋窩線

から挿入するのがよいのです。


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posted by 長尾大志 at 14:07 | Comment(0) | 気胸・胸水・ドレナージ

2011年04月12日

ドレナージの実際・再膨張性肺水腫

実際の手技は、図や写真のある成書をごらんいただくか、手技DVDも出ていますからそちらをごらんいただきたいのですが、やる上で大事なことをいくつか。


再膨張性肺水腫

特に虚脱期間が長かった肺を急に再膨張させると、一気に肺内の血流が増え、血管透過性が亢進して肺水腫となります。程度がひどいと人工呼吸管理が必要となります。


データによると、少なくとも3日虚脱すると発生する可能性がありますが、1時間の虚脱では発生しないといいます。

多くの症例ではその間になると思われるので、悩ましいわけですが。
発生率自体は、1%前後とそれほど高くありません。


陰圧にすると発生しやすいので、少なくとも発症直後でないとき、数日虚脱していると考えられるときは、まず水封にし、陰圧をかけないでおくのが基本です。24〜48時間再膨張が見られなければ陰圧で吸引します。

また、再膨張の速度の目安として、いくつかの数字があります。これも諸説ありますが、450ml/hr未満、あるいは1000ml/day未満であれば起こる危険は低いといわれています。

胸水の場合は抜く量、速度の調整は容易ですが、気胸の場合、抜いた空気の量を測定するのは容易ではなく、また、リークがあるとこの限りではありませんから、あくまで、参考として下さい。


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posted by 長尾大志 at 18:44 | Comment(0) | 気胸・胸水・ドレナージ

2011年04月11日

自然気胸の治療方針

虚脱率が15%を越えるぐらい大きく虚脱している場合は、問答無用でドレナージでしょう。


問題は、小さく虚脱している場合です。
発症のタイミングがハッキリしている場合は、方針を立てやすいです。


受診のパターンとして、大きく分けると、発症してすぐ受診されるか、数日経つのに症状が続くから受診されるかのどちらかです。


しばらくたってからの受診で虚脱率が小さい場合、既に穴がふさがっているか、開いていたとしてもきわめて小さいと推測されます。従って、経過観察でもよいかと思います。あるいは、1回穿刺によって脱気をしておくと、肺を迅速に再膨張させることができます。


発症すぐで、虚脱率が小さいときは悩ましいです。抜けそうなスペースがあれば1回穿刺によって脱気し、経過観察でもいいでしょう。単純に、数時間後胸部レントゲン写真を再検して方針を決めても良いと思います。


そのときのシンプルな基準として、米国の学会によるコンセンサス
「虚脱した肺が肺尖部から3cmあれば」
を、目安にされればいいのではないかと思います。

もちろん、施設によって方針が決まっている場合は、この限りではありません。


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posted by 長尾大志 at 10:04 | Comment(0) | 気胸・胸水・ドレナージ

2011年04月10日

自然気胸の評価方法・ドレナージの適応

気胸症例を診たときに、まずは虚脱率の計算を勧めている本がたくさんあります。
で、その率が何%だったらドレナージ、という感じです。
この計算方法もいくつかやり方がありますから、成書をご覧下さい。


米国の学会によるコンセンサスでは、かなりシンプルに、以下のようになっています。

原発性気胸:立位で撮った胸部レントゲン写真で、虚脱した肺が肺尖部から3cmあれば穿刺あるいはドレナージの適応
続発性気胸:わずかであってもドレナージの適応

続発性気胸というのは、何らかの原因(外傷とか、医源性とか)があって起こったものなので、すぐにドレナージが必要、ということでよいと思います。
以後は、原発性気胸について考えます。




気胸を診たときに困るのは、「穴は閉じているのか、開いたままなのかわからない」ということです。
開いたままだったら,肺は今後どんどん虚脱するので、ドレナージが必要。穴が閉じていれば、その後ふくらむであろう、ということです。

ただ、穴が閉じれば肺がふくらんでくるのは確かなのですが、肺がふくらむためには肺の外に存在する空気が(胸膜から)吸収される必要があります。そのスピードは結構ゆっくりで、胸郭の15%分の空気を吸収するのに、12日程度かかるといわれています。


ですから、「穴が閉じていて、胸郭の15%ぐらいの虚脱率であれば、経過観察でも許容範囲」と言えるわけです。その際、高濃度の酸素投与をすると、吸収が促進されることが知られています。


しかし、経過を追っているならともかく、今受診した人が胸部レントゲン写真を撮って、気胸であることが初めてわかった場合、穴が開いているか、閉じているかはわかりません。


そこで、経過を含めた総合的な考え方が必要となります。


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posted by 長尾大志 at 20:31 | Comment(0) | 気胸・胸水・ドレナージ

2011年04月09日

自然気胸のマネジメント

気胸とは、肺の外(胸腔内)に、空気がたまることです。

普通は、肺(臓側胸膜)に穴が開いて、空気が抜けることで起こります。
外傷などで、胸壁に穴が開いて、外気が胸腔内に入った状態は外気胸といいます。
今回は、自然気胸について取り上げます。


自然気胸の好発年齢、性別、体格などは、やせ形男子の10代後半となっています。
この理由は、授業などでさんざん説明していますので省略。


気胸のマネジメントについていろいろ本を見ていると、けっこう書いてあることがまちまちです。日本と米国では当然、ずいぶん状況が違う(気軽に?入院できるかどうかが違う)ので、あちらの教科書とこちらの教科書でも書いてあることが違ったりします。


そういうわけでか、気胸というのは、結構ドクターによって、流派によって、やり方が違うなあというのが私の感想です。逆に言うと、多少細かいやり方が違っても、まあ気にしなくていい、ということです。


ですから、若い皆さんは、指導医のやり方をまずはしっかり身につければいいと思います。その際に、「何でこうするんだろう?」と疑問に思われるであろうポイントを、何回かに分けて書いていこうと思います。

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posted by 長尾大志 at 09:56 | Comment(0) | 気胸・胸水・ドレナージ