2023年10月22日

クライオバイオプシー2

クライオバイオプシーはクライオプローブという、先端部を冷却してその周囲の組織を凍結し、そのまま引きちぎることができる道具を使って行います。この方法であれば5mm程度の大きな組織を得ることができます。

利点:大きな組織を得られることで、間質性肺炎の組織型を詰めることができます。明らかな特発性肺線維症以外の間質性肺炎の分類には、原則として(小葉内における病変分布がわかる程度の大きさの組織による)病理組織診断が必要と(建前上)されています。そこでこれまで専門施設ではVATs(全身麻酔)による外科的肺生検を選択されていましたが、より侵襲の少ない局所麻酔下での手技としてクライオバイオプシーの有用性が検証されています。他に肺癌症例でもより大きな組織が得られることで個別化医療に寄与します。

欠点:大きい組織を引きちぎってくるわけですから、合併症として、TBLBなどで知られている気胸や出血、といった事象が起こるリスクはあるだろうな、と思えるわけですが、案の定その発生率は普通の鉗子生検より高いとする報告が多いです。止血の方法などについて、専門医によるトライアルがいろいろと行われています。

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posted by 長尾大志 at 16:31 | Comment(0) | 気管支鏡・BAL/TBLB

2023年10月21日

クライオバイオプシー1

経気管支生検TBBや経気管支肺生検TBLBで採取できる肺組織の大きさはせいぜい0.5mm〜2.0mmくらいの大きさです。これですと悪性細胞を含む組織かどうかという「癌の診断」や、肉芽腫を含むかどうかの判断は出来ても、特に間質性肺炎の診断につながる組織型の判断は困難です。

また、昨今では肺癌でも腺癌か扁平上皮癌か、という「組織型」だけで治療法が決まるものではなく、遺伝子変異の探索やPD-L1発現の有無などによる「個別化医療」の時代になっています。それらを調べるためには、いちいち対応する検査を行う必要があり、多くの組織標本を必要とします。つまり大きなサンプルが必要なのです。

そこで,従来の経気管支肺生検よりも大きな検体を採取できるクライオバイオプシー(生検)が用いられるようになってきました。

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posted by 長尾大志 at 21:31 | Comment(0) | 気管支鏡・BAL/TBLB

2023年01月08日

第117回医師国家試験対策講座 気管支鏡の適応

第117回医師国家試験、呼吸器分野対策講座動画、こちらは滋賀時代の対策講座動画が発掘されましたので、期間限定で公開します⇒
https://youtu.be/NCncDCdtzqo


こういう、現場というか検査というか、適応を考える問題、一見「検査の問題」に見えますが、実際は病態をちゃんと理解していて、検査の内容を理解していれば解ける問題なのですね。「こんなん知らん!」と焦るのではなく、しっかり考えれば解けるようになっているはずです。

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posted by 長尾大志 at 19:54 | Comment(0) | 気管支鏡・BAL/TBLB

2018年12月27日

気管支鏡の新たなワザ・気管支温熱形成術/サーモプラスティー

これまでご紹介してきた気管支鏡を用いた手技は、主に検査に使われているものですが、サーモプラスティ(bronchial thermoplasty:BT)というものは慢性喘息の治療に使われる手技になります。

慢性の喘息になると、平滑筋が肥厚してリモデリングという現象が起きてきます。リモデリングが起きてしまった喘息は重症化し、治療は困難を伴いますが、物理的に平滑筋を減少させたり断裂させたりすることで、喘息の治療につなげようというのがサーモプラスティの発想です。薬剤ではなく物理的にやってしまおうという発想の転換がスゴいですね。

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気管支鏡を通してにゅっとだした針金を熱して65℃にします。

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65℃で10秒間加熱することで、平滑筋は変性し減少します。それでリモデリングが軽減し、喘息発作を緩和させるのです。

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気管支鏡・BAL/TBLB

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2018年12月26日

気管支鏡の新たなワザ・EBUS-GS(ガイドシース)

EBUS-GS(endobronchial ultrasonography with a guide sheath:ガイドシース併用気管支腔内超音波断層法)、ウチではガイドシースと呼ばれています。シースというのはsheath、さや(鞘)のことですね。

これまでの生検は、結節の生検であれば、X 線透視装置を使って、透視で結節を見ながら鉗子を入れていって、結節に当たっているとか当たっていないとか言ってつまんできていました。

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EBUS-GSでは、ガイドになるようなさや、外筒(ガイドシース)に、先端に超音波装置(プローブ)のついたワイヤーを挿したものを、気管支鏡に挿して挿入します。

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まず結節の場所にガイドシース+超音波装置を持って行って、そこで超音波画像を見て、実際に結節の中にある、入っている(within)ということを判断します。判断したら、その場所で次は生検をしますが、超音波装置をシースから抜いて、代わりに生検の鉗子をシースに入れて生検をします。超音波でより確実に結節の場所を確認して生検ができるものであります。

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posted by 長尾大志 at 18:40 | Comment(0) | 気管支鏡・BAL/TBLB

2018年12月25日

気管支鏡の新たなワザ・EBUS-TBNA

呼吸器内科でやる気管支鏡といえば、長らく洗浄・生検・BAL・TBLBだったわけですが、最近デバイスの進化によって、新しい手技が経気管支鏡下で施行できるようになりました。


■ EBUS-TBNA

EBUS-TBNA(endobronchial ultrasound-guided transbronchial needle aspiration:超音波気管支鏡ガイド下針生検)は、経気管支鏡的に縦隔(肺門)リンパ節の生検を行うことが出来る手技です。

例えば縦隔や肺門リンパ節が腫脹している症例で、針生検ができれば…でも、blindで刺すのは…というような場合。気管支鏡の先端に小型の超音波装置がついたもの(超音波気管支鏡(EBUS))を挿入し…。

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超音波装置をリンパ節とおぼしき部位に押しつけて、描出…

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血管ではなくリンパ節であることを確認したら、先端から針を出して、吸引生検!!

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という感じの手順で、以前に比べて格段に安全に、リンパ節の生検ができるようになりました。以前は安全に縦隔リンパ節生検をしようと思ったら、全身麻酔下での縦隔鏡検査になりましたから、ずいぶんとやりやすくなったものです。

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2013年05月22日

肺胞洗浄液の構成成分とその意義・肺胞洗浄液の成分について・細胞成分15・リンパ球が増える場合9・間質性肺炎の鑑別8・原因が特定できる=特発性群じゃないやつ2・膠原病性間質性肺炎

膠原病が基礎にある間質性肺炎も、原因のある間質性肺炎の例に漏れず、基礎疾患によって分類するのが理にかなっています。これは、特発性群とは異なり、病理像が必ずしも治療反応性や予後につながらないからであります。


例えば筋症状のない皮膚筋炎(amyopathic dermatomyositis)は、病理組織がDADを取るような、きわめて予後の不良な間質性肺炎を引き起こしますが、慢性関節リウマチなんかですと、特発性よりむしろゆっくり進行する例が多い、とかですね。


まあそもそも、臨床病理パターンで言うと膠原病がらみの間質性肺炎はNSIPパターンが見られることが多いのですね。じゃあ、肺胞洗浄液の分画は特発性NSIP同様、リンパ球が多いのか?


そういうことを組織学的に証明しようという研究を昔やっていた様な記憶があります…。


いくつかの報告から、以下のような傾向があるようですが、検討数が少なかったり、組織的に統一がとれていなかったりで、鑑別に役立つ、意味がある、とまではいかないようです。


関節リウマチ:リンパ球や好中球が増加することが多い。CD4+/CD8+も上昇する。

全身性強皮症:好中球の増加を示す報告が多く、リンパ球や好酸球が上昇することもある。リンパ球や好中球が増加している症例では、悪化する割合が高い。

多発性筋炎・皮膚筋炎:リンパ球比率が増加するが、特にCD8+が増加し、CD4+/CD8+は低下する。

全身性エリテマトーデス・混合性結合組織病:肺胞出血の診断には肺胞洗浄が有用である。

シェーグレン症候群:CD4+優位のリンパ球増加が見られるが、好中球の増加を伴う報告もある。



では、

「間質性肺炎としての分類はともかくとして、肺胞洗浄液の分画がリンパ球優位であれば、ステロイドを投与する価値があろうかと思われる。」

はここでは正しいか。


これもやや微妙でありますが、少なくとも上でリンパ球が増える、とされている膠原病性間質性肺炎に対しては、どの膠原病であってもステロイド加療を行います。そういう意味では正しい、と言えるでしょう。



かなりしつこく、くどくなって参りましたので、このあたりで一旦〆とさせていただこうと思います。


今回記事を書くにあたって、「気管支肺胞洗浄(BAL)法の手引き(日本呼吸器学会びまん性肺疾患学術部会・厚生労働省難治性疾患克服研究事業びまん性肺疾患調査研究班編集)」を参考にしました。


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posted by 長尾大志 at 18:50 | Comment(0) | 気管支鏡・BAL/TBLB

2013年05月20日

肺胞洗浄液の構成成分とその意義・肺胞洗浄液の成分について・細胞成分13・好酸球が増える場合は予後がいい、と言えるのか?

好酸球性肺炎は急性にしても慢性にしても、予後がよい。これも「好酸球がらみのアレルギーは、ステロイド反応性がよく、予後がよい」という原則で理解できると思います。



では、

「間質性肺炎としての分類はともかくとして、肺胞洗浄液の分画がリンパ球優位であれば、ステロイドを投与する価値があろうかと思われる。」

というセリフの、リンパ球→好酸球と替えてもよいものでしょうか?




それが残念ながら、IPFやNSIPで好中球や好酸球増多がみられる症例があり、その場合は予後不良であるとされています。


ここで誤解していただきたくないのは、好酸球の位置づけです。報告でも明記されているように、IPFやNSIP(特に線維化型)においては、気道感染やアレルギー疾患の合併によらない好中球や好酸球増多が、予後不良につながる…とされています。


この場合の好酸球は、その場での炎症の主役というよりも、免疫系が乱れたついでに出てきた、と理解して頂く方がわかりやすいかもしれませんね。


予後のよい好酸球性肺炎は、これはもうアレルギー性疾患ですから、こういう状況とは異なるものです。


すなわち、

「間質性肺炎としての分類が好酸球性肺炎、すなわち、肺胞洗浄液の分画が好酸球優位であれば、ステロイドを投与する価値があろうかと思われる。」

は正しい。


しかしながら、間質性肺炎としての分類がIPFやNSIP(特に線維化型)であると、肺胞洗浄液の分画が好酸球優位であることは好ましくありません。ここの鑑別は重要であります。


通常はIPFやNSIP(特に線維化型)だと、蜂巣肺や網状影などの線維化所見が見られる一方で、好酸球性肺炎では浸潤影やすりガラス影といった所見が優勢になります。



以上をまとめますと、

「間質性肺炎としての分類はともかくとして、CT所見で蜂巣肺や網状影などの線維化所見のない両側びまん性の浸潤影を呈し、肺胞洗浄液の分画が好酸球優位であれば、ステロイドを投与する価値があろうかと思われる。」

とは言えるように思います。


まあ、ここまでいってしまうぐらいなら、AEPとかCEPとか診断できそうなものですが…(苦笑)。


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posted by 長尾大志 at 14:06 | Comment(0) | 気管支鏡・BAL/TBLB

2013年05月17日

肺胞洗浄液の構成成分とその意義・肺胞洗浄液の成分について・細胞成分12・好酸球が増える場合・好酸球性肺炎2

■慢性好酸球性肺炎(chronic eosinophilic pneumonia:CEP)

教科書を見ると急性好酸球性肺炎(AEP)とは別物、ということが強調されています。イメージとして、AEPは「急な呼吸不全」「急に水が出てきた(うっ血に似た)画像所見」という臨床像であるのに対して、CEPは「器質化肺炎に似ていて、炎症の主体が(リンパ球の代わりに)好酸球」と考えるとわかりやすいと思います。


CEPは慢性、とはいうものの、発症が比較的急性なものもあり、病初期にはAEPと画像的にしか鑑別できないこともあります。臨床的には喫煙のエピソードが関係ない、とか、呼吸不全が少ない、というあたりがAEPとの違いです。


画像所見では、古典的に言われている「逆肺水腫像」「逆バタフライ像」が特徴的です。肺水腫では肺門中心に蝶が羽を広げたような「バタフライ陰影」が典型的ですが…


Butterfly.jpg


この画像の白を黒に、黒を白に入れ替えたような陰影になります。ちょうどいい手持ちの写真がないので、皆さん想像力を働かせて下さい…(汗)。


肺胞洗浄液の細胞分画は、そういうわけでAEP同様増加している、ということになりますが、カットオフ値、というか基準になるのがビシッと決まっているような決まっていないような。30%としてあることが多いようです。


診断は、要するに好酸球が増多していて(末梢血か肺局所で)、典型的な画像で、他疾患を除外できれば診断可能です。


治療はステロイドを用います。好酸球メインの炎症ですので、ステロイドがよく効きます。予後は良好ですが慢性、というだけに減量中に再燃したりします。



アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)は、リンク先でサラッと触れています。体内に住み着いたアスペルギルスによるアレルギー反応のため好酸球が増えている病態です。


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posted by 長尾大志 at 19:44 | Comment(0) | 気管支鏡・BAL/TBLB

2013年05月16日

肺胞洗浄液の構成成分とその意義・肺胞洗浄液の成分について・細胞成分11・好酸球が増える場合・好酸球性肺炎1

好酸球性肺炎。間質性肺炎に含まれるような、含まれないような、教科書によって色々な範疇に位置する、あいまいな立ち位置の疾患であります。


細かいことを論じ出すとどんどんややこしくなるので、シンプルに定義、分類をしておきましょう。


要は好酸球主体の炎症が生じている肺炎、好酸球による肺への浸潤がみられている病態を総称して好酸球性肺炎、といいます。


分類は教科書を見ますとまあ色々書いてあります。最近よく引用されているのは、CottinとCordierによる分類(2005 Allergy)で、こんな疾患群が挙げられています。


  • 原因不明の好酸球性肺疾患
     特発性好酸球性肺炎:急性好酸球性肺炎、慢性好酸球性肺炎
     全身疾患に伴うもの:チャーグ・ストラウス症候群、好酸球増多症候群

  • 原因が明らかな好酸球性肺疾患
    寄生虫・寄生虫以外の感染症
    アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)
    薬剤、中毒物質、放射線によるもの

  • その他の好酸球増多を来しうる肺疾患
     器質化肺炎
     気管支喘息、好酸球性気管支炎
     特発性間質性肺炎
     ランゲルハンス巨細膨肉芽腫
     肺移植後
     その他(サルコイドーシス、悪性腫瘍など)




このうち是非知っておきたいのは急性好酸球性肺炎、慢性好酸球性肺炎。それにアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)あたりかと思います。


急性好酸球性肺炎と慢性好酸球性肺炎は、急性と慢性、というだけではなく随分異なる臨床像を呈していて、別物であると考えられています。急性気管支炎と慢性気管支炎みたいなもんですね。あ、これもまだ書いていませんか(汗)。


かいつまんで臨床的な特徴を述べておきましょう。



■急性好酸球性肺炎(acute eosinophilic pneumonia:AEP)

肺内に好酸球が一気に出てきて、肺胞領域と間質(小葉辺縁)に「浮腫」「うっ血様所見」が生じる病態で、レントゲンやCT上うっ血に似た広義間質の肥厚像、胸水などが特徴です。うっ血との鑑別は画像上はしばしば困難ですが、病歴、身体所見や心拡大が見られることは少ない点が、鑑別のポイントになります。


肺胞内に好酸球が増えますので、肺胞洗浄液の好酸球分画が増多します(診断基準によると好酸球分画≧25%、とされています)。初期には肺局所に好酸球が集中するので末梢血の好酸球分画は増えないことも結構あり、そのうちに末梢血の好酸球も増えてくる、という感じです。


逆に、末梢血の好酸球が高値であれば、体内の好酸球がよっぽど増加している、ということになりますので、それらしい陰影があれば好酸球性肺炎を疑う根拠になります。


特徴的な病歴として、煙草を初めて吸いはじめ、しばらく(1〜2週間)してから発症、というケースが多く報告されています。また、しばらく止めていた人が久しぶりに吸い出しても発症したりします。このあたりがなんともアレルギーっぽいですね。


診断としては、

  • 急速な発症で、発熱を伴う呼吸不全を来たし、

  • 両側びまん性のすりガラス影+広義間質の肥厚像、胸水があり、

  • 肺の好酸球増多が証明され(肺胞洗浄液で好酸球分画≧25%、または生検で肺への好酸球浸潤を証明)、

  • その他の好酸球増多を来しうる肺疾患が除外できること


これらを満たすことでされています。


治療はステロイドを用います。先日書いたように、ステロイドを用いると一気に好酸球はどこかに隠れてしまい、割とすぐに治療効果が得られます。ほとんど線維化はなく、予後は良好です。


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posted by 長尾大志 at 18:20 | Comment(0) | 気管支鏡・BAL/TBLB

2013年05月15日

肺胞洗浄液の構成成分とその意義・肺胞洗浄液の成分について・細胞成分10・間質性肺炎の鑑別6・特発性間質性肺炎群の分類4・急性間質性肺炎(AIP)

急性間質性肺炎(acute interstitial pneumonia:AIP)は、特発性(原因が不明、またはない)群の中でもっとも急速に進行し、予後の不良な疾患です。


病像はARDS。すなわち、急速に呼吸状態が悪くなり、胸部X線写真で両側にすりガラス影〜浸潤影が生じるものです。ARDSの場合、そこに至る原因(感染、薬剤、外傷、熱傷など)があるわけですが、何も原因となるような事態がなくてARDSのような病変が生じたものをAIPと理解するのが、もっともわかりやすいと思います。


定義ではAIPはびまん性肺胞障害(diffuse alveolar damage:DAD)の病理像を持つ、とされていますので、生検で肺胞壁のところに硝子膜(hyaline membrane:DADに特徴的)をみると確定診断となるのですが、そもそもARDSとなっているような呼吸不全の患者さんで肺生検を行う、というのは相当にハードルが高いため、臨床現場ではほとんど行われていないと思います。


実際の診断は、そんなわけで、原因をとことん(臨床的に)除外したARDS様変化、ということで行われることになるのですが、そうなると例えば特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)の急性増悪や、筋症状のない皮膚筋炎(amyopathic dermatomyositis:ADM)でみられる急性の肺障害(が先行している状況)などとの鑑別が、時として非常に困難になります。特に初診患者さんの場合。



で、肺胞洗浄液の所見なのですが、分画で好中球の比率が高いのが特徴、という報告があります。ただ、肺胞洗浄にしても、呼吸状態のよくない方に積極的にやっていこう、とはなかなかならなくて、せいぜい感染症の検査のために少量の生食で洗浄、ぐらいにとどまったりしていると思います。


そのためかAIPについて肺胞洗浄液の分画をみた報告があまりにも少なく、報告によってはリンパ球が増えていた、好酸球が少し増えていた、などというものもあり、一定しません。それゆえ、なおさら肺胞洗浄の診断的価値が重視されず、より施行されなくなる、という経緯になっているようです。



AIPやARDSで肺胞洗浄液中に好中球が増えている、ということから、病態にも好中球の関与が大きいとされ、好中球エラスターゼ阻害薬であるシベレスタットが使われる(効くかどうかはともかく(;゚д゚) …)所以となっているところです。


好中球、といえばステロイドが効かない。ということで、特にARDSにおいて、ステロイド治療はあまり勧められていない、限定的にしか勧められていないのが現状かと思います。


「間質性肺炎としての分類はともかくとして、肺胞洗浄液の分画がリンパ球優位であれば、ステロイドを投与する価値があろうかと思われる。」

というセリフ、AIPでもある程度正しいのかもしれません。ただ、AIPにおいて肺胞洗浄液中リンパ球分画が増加しているような症例のステロイド反応性が、好中球優位の場合に比べてどうか、といったような検討はまだないようです。


今回記事を書くにあたって、細胞分画の正常範囲は、正確を期すために「気管支肺胞洗浄(BAL)法の手引き(日本呼吸器学会びまん性肺疾患学術部会・厚生労働省難治性疾患克服研究事業びまん性肺疾患調査研究班編集)」を参考にしました。

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posted by 長尾大志 at 17:10 | Comment(0) | 気管支鏡・BAL/TBLB

2013年05月13日

肺胞洗浄液の構成成分とその意義・肺胞洗浄液の成分について・細胞成分8・リンパ球が増える場合6・間質性肺炎の鑑別4・特発性間質性肺炎群の分類2・非特異性間質性肺炎(NSIP)

非特異性間質性肺炎(nonspecific interstitial pneumonia:NSIP)は、特発性肺線維症(IPF)よりは少し早い経過(亜急性、と表現されます)の間質性肺炎です。細胞型と線維化型があり、細胞型の予後は特発性器質化肺炎(COP)とほぼ同等、つまり結構よく、線維化型の予後は細胞型より悪いもののIPFよりはよく、ステロイド治療の甲斐があることが多いとされています。


HRCT(高分解CT)では蜂巣肺形成は少なく、すりガラス影や網状影主体です。この画像的特徴も、予後が比較的(IPFよりも)よいことを象徴しています。というのは、蜂巣肺はもう肺胞が破壊され構造化異変が起こってしまっている、ガチの線維化病変を表しますが、すりガラス影は細胞浸潤、炎症の部位も含んでいるとされているからです。


それ以外のポイントはこちらを見ていただければと思いますが、病理学的には、比較的均一に肺胞壁(間質)に炎症細胞が浸潤し、浮腫を来すことで壁が肥厚しているものの、本来の肺組織構造は比較的保たれているのが特徴で、そのために病変に比較的可逆性が見られるわけです。


30連続性に生じている間質性肺炎.JPG


肺胞壁にやってきている炎症細胞がリンパ球主体であるため、肺胞洗浄液中にもリンパ球が増えるということになります。リンパ球主体の炎症反応にはステロイドが効果を示しますから、NSIPの予後が比較的よいのも理解しやすいところです。



…とまあ、原理的にこのような理解をしておけばよろしいかとは思うのですが、実際には、報告によって、あるいは施設によって、NSIPとIPFでは細胞分画に差がなかったとか、NSIPの中でも線維化型はIPFと大差なかったとかいうことも言われていたりします。


そんなことはありながらも、少なくともNSIPにおいても、(IPFと同様に)リンパ球増加症例は治療反応性、予後良好のサインであると考えられておりまして…。


結局のところ、細かいことはさておき、

「間質性肺炎としての分類はともかくとして、肺胞洗浄液の分画がリンパ球優位であれば、ステロイドを投与する価値があろうかと思われる。」

となるのかな、と思われます。


今回記事を書くにあたって、「気管支肺胞洗浄(BAL)法の手引き(日本呼吸器学会びまん性肺疾患学術部会・厚生労働省難治性疾患克服研究事業びまん性肺疾患調査研究班編集)」を参考にしました。


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posted by 長尾大志 at 18:30 | Comment(0) | 気管支鏡・BAL/TBLB

2013年05月10日

肺胞洗浄液の構成成分とその意義・肺胞洗浄液の成分について・細胞成分7・リンパ球が増える?場合5・間質性肺炎の鑑別3・特発性間質性肺炎群の分類1・特発性肺線維症(IPF)の肺胞洗浄分画

リンパ球が増える場合、とタイトルにありますが、必ずしもリンパ球は増えません( ̄▽ ̄;)。じゃあナゼここで紹介するか、というと、リンパ球などの増加が見られることがあるからなのです。


そもそも特発性肺線維症(IPF)は、慢性型で線維化のある間質性肺炎です。肺の下・外側(肺の中で一番よく動くところ)に間質性肺炎〜線維化病変(蜂巣肺)が生じ、カチカチに硬くなっていきます。線維化はゆっくりですが着実に悪化し、ステロイドの効果は限定的とされています。


それ以外の臨床的なポイントはこちらを見ていただければと思いますが、肺胞洗浄液の細胞分画はおおむね健常者と大差がない、すなわちマクロファージが主体であることが特徴であるとされています。


リンパ球増えてないやんけ!?まあ落ち着いて落ち着いて。


実はHRCTなどでIPFと思われた症例でも、肺胞洗浄液中のリンパ球が増えている症例が見受けられ、しかもそういう症例ではステロイド反応性が良好である、ということが経験されているのですね。


ここは色々と議論があり、そういう症例って、実は後述するNSIPやCOP、あるいは、膠原病性間質性肺炎やその他の「リンパ球が増加する間質性肺炎」ではないか、といわれていたりもするのです。


というのも、IPFは外科的肺生検を行わずに臨床診断することが多いわけで、色々な検討において、HRCTでIPFと思われていても病理組織的にはNSIPだった、とかCOPだった、という例が見受けられるのです。しかしながら実際問題、厳密な鑑別は外科的肺生検でも行わない限り困難なんですね。



また、膠原病も、肺病変先行型膠原病といって、当初肺病変(間質性肺炎)だけがおこっており、特発性群に含まれていたものの、経過中に他臓器の症状が出現し、後で膠原病と診断されるケースがこれまた少なくありません。


で、これらのケースでは肺胞洗浄液中のリンパ球が増えていることが多いのです。
かつ、ステロイド反応性もよく、予後も良好であることが多いのです。



だったら…もうおわかりですね。


厳密な診断(本当の意味でIPFかどうか)を下すよりも、患者さんにとって大切なことは、治療方針を決めること、のハズ。


「間質性肺炎としての分類はともかくとして、肺胞洗浄液の分画がリンパ球優位であれば、ステロイドを投与する価値があろうかと思われる。」

ということになるわけです。病理組織所見をどう名付けるか、ということは高度に専門的(でしばしば意見の統一を見ないよう)な話になりますが、少なくとも肺胞洗浄液でリンパ球が多い方が、組織学的に線維化が軽度で炎症成分が多く、ステロイドに反応することが期待される、ということは間違いない、と言えるでしょう。


今回記事を書くにあたって、細胞分画の正常範囲は、正確を期すために「気管支肺胞洗浄(BAL)法の手引き(日本呼吸器学会びまん性肺疾患学術部会・厚生労働省難治性疾患克服研究事業びまん性肺疾患調査研究班編集)」を参考にしました。


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posted by 長尾大志 at 18:31 | Comment(4) | 気管支鏡・BAL/TBLB

2013年05月09日

肺胞洗浄液の構成成分とその意義・肺胞洗浄液の成分について・細胞成分6・リンパ球(や好酸球)が増える場合4・間質性肺炎の鑑別2

「間質性肺炎としての分類はともかくとして、肺胞洗浄液の分画がリンパ球優位であれば、ステロイドを投与する価値があろうかと思われる。」

…とだけ言ってしまうと身もフタもなくなってしまいますので、今日はもう少し具体的に見ていきましょう。



間質性肺炎の分類をおさらい。まずは病歴などから原因のあるものとないものを分けます。


原因のない(わからない)ものを、特発性の間質性肺炎群(IIP:idiopathic interstitial pneumonitis)といい、病理組織学的所見に基づいて分類します。なぜ特発性群を特別扱いするか。それは予後、治療適応がおおよそ、病理組織学的な分類で決まるからです。


特発性群の鑑別には本来、外科的肺生検による大きめの(1cm単位の大きさ)組織標本が必要です。このため、実際問題外科的肺生検のリスクなどを勘案しますと、生検組織が得られる症例はそれほど多くありません。そのため経過やHRCT所見、肺胞洗浄における細胞分画などから臨床的に判断し、分類することが多くなります。


もっと言いますと、外科的肺生検をやって厳密に分類しなくても、臨床診断で多くの場合、治療方針は決定できる、ということになります。具体的には各論で述べたいと思います。



一方原因のわかっているものは、(病理学的にもある程度規定されるとはいえ)その原因に予後、治療が左右されることが多いため、その原因に応じて分類します。


間質性肺炎の主な原因

  • 薬剤

  • 粉塵曝露(職業・環境)
     過敏性肺臓炎・じん肺・金属肺
     放射線肺臓炎・酸素中毒

  • 感染
     ウィルス・ニューモシスチス・結核
     サイトメガロ・マイコプラズマ・真菌

  • 膠原病・血管炎



これらの分類に肺胞洗浄液所見がどの程度寄与するかを確認していきましょう。


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posted by 長尾大志 at 10:53 | Comment(0) | 気管支鏡・BAL/TBLB

2013年05月08日

肺胞洗浄液の構成成分とその意義・肺胞洗浄液の成分について・細胞成分5・リンパ球が増える場合3・間質性肺炎の鑑別1

肺胞洗浄液の構成成分のうちリンパ球が増える疾患について、サルコイドーシスの次には間質性肺炎を取り上げます。


そうはいっても、間質性肺炎を取り上げるのは茨の道。間質性肺炎の分類だけでも結構大変なのですね…。詳しくはリンク先をご覧頂くとして、今日のところは肺胞洗浄液の分画、という観点からの理解を試みましょう。


これも以前にアレルギー総論2・アレルギーに関与する細胞ごとの特色のところで書きましたが、炎症に関与する細胞によってクセがありまして、例えばステロイドに対する反応(効くか、効かないか)も異なってくるのです。


ということは…そう、肺胞洗浄液で優位な細胞が何であるか、によって、ある程度ステロイド反応性がわかる、ということになるのですよ。具体的にはリンク先にもあります通り、


  • 主に好酸球の関与する病態は、ステロイドが著効する。

  • 主にリンパ球の関与する病態は、ステロイドにある程度反応する。

  • 主に好中球の関与する病態は、ステロイドの効果は限定的、あるいは、効かない。



ということでした。そこで、大胆に提案したいのは、まずは


「間質性肺炎としての分類はともかくとして、肺胞洗浄液の分画がリンパ球優位であれば、ステロイドを投与する価値があろうかと思われる。」


と理解してみよう、ということです。


本来間質性肺炎は分類してはじめて予後やらステロイド適応やらを考えることになり、全くそれはその通りなのですが、初学者にとっては分類のところが誠に取っつきにくいわけです。


そこで肺胞洗浄液の分画で分類すると、少なくとも治療適応のところは、割と理解しやすいのではないかと思います。もちろんこれだけでは具合が悪いので、明日以降きちんと分類していきます。


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posted by 長尾大志 at 19:26 | Comment(0) | 気管支鏡・BAL/TBLB

2013年05月07日

肺胞洗浄液の構成成分とその意義・肺胞洗浄液の成分について・細胞成分4・リンパ球が増える場合2・サルコイドーシス

ちょっと間に色々挟まりましたが(お忘れの方も多いでしょうが)、ACEが出てきたついでに、肺胞洗浄液の構成成分のうちリンパ球が増える疾患について、もう少し触れておきます。



肺胞洗浄液の細胞分画、正常値の目安は以下の通りです。


  • マクロファージ:80%以上

  • リンパ球:15%以下

  • 好中球:3%以下

  • 好酸球:0.5%以下

  • CD4/CD8:1〜2



これを逸脱したものを、一応異常とします。

以前にも書きましたが、疾患、病態によって、細胞分画でどの細胞が優位になっているか(増加しているか)が異なるため、疾患を鑑別するおおよその目安となります(あくまで「目安」ですが)。既出ですがおさらいをして置きましょう。


  • リンパ球が増加: NSIP、COP、膠原病性間質性肺炎、薬剤関連性肺疾患、過敏性肺炎、サルコイドーシスなど

  • 好中球が増加:細菌性肺炎、びまん性汎細気管支炎、AIP、IPの急性悪化、ARDSなど

  • 好酸球が増加:好酸球性肺炎、好酸球増多症候群、一部の薬剤関連性肺疾患など



そして、リンパ球が増加する疾患でも、リンパ球のうちCD4+とCD8+、どちらが優位であるかによって、疾患を推定することができることもおさらいしておきます。

  • CD4+>CD8+:サルコイドーシス、農夫肺、慢性ベリリウム肺、結核

  • CD4+<CD8+:COP、NSIP、AIP、薬剤関連性肺疾患、夏型過敏性肺炎など



肺胞洗浄液でリンパ球の分画が増加している場合、想定される病態として過敏性肺炎は以前取り上げました。

ということで、ようやくサルコイドーシスのお話になります。


サルコイドーシスは結局のところ、原因がよくわかっていないまま放置されてしまっている疾患の代表みたいな感じになっています。一時期アクネ菌が原因では…などという話が出てきた頃はそれなりに盛り上がっていた感がありましたが、どうも最近話題がございません。


なぜか。やはりそれは、「自然に治る症例が多い」というところが大きいでしょう。もちろん、一部の症例ではどうにもうまくいかないことが経験されるのですが、実感としてはBHL(両側肺門リンパ節腫脹)のみなら8〜9割方、経過を見ているだけで勝手によくなっていきます。で、よくなるのか悪くなるのか、予測が困難である点が問題なのですね。


例えば薬を開発しよう、という話になったときに、今日日は二重盲検ランダム化試験が要求されますが、自然寛解する可能性がある症例が少なからず含まれていると、薬効がサッパリ評価できませんね。これは薬が効いたのか、勝手に治ったのか…そういうこともあり、製薬会社の薬剤開発意欲、ひいては各種研究へのスポンサーシップ意欲が失われた…のではないか、と勝手に空想しています。


そういうわけでか否か、昨今では盛り上がりに欠ける感の強い(以前いた施設が盛り上がりすぎていたのかも…汗)サルコイドーシスですが、肺胞洗浄液の分析は以前からなされていて、ある程度病態に関する説明(仮説)はできあがっています。



抗原物質(これが謎)が気道を通して肺に進入します。抗原は肺胞マクロファージに貪食され、マクロファージがサイトカインを産生し、これによって炎症部位にTリンパ球が集まってきます。リンパ球は活性化されて各種サイトカインを産生し、炎症細胞の集積、増殖が促されます。また、サイトカインによってマクロファージが類上皮細胞に分化し、肉芽腫を形成するのです。


おそらく抗原は肺から時に血行性、あるいはリンパ行性に運搬され、全身の臓器に播種されて各々の場所で同様の反応が起こり、類上皮細胞肉芽腫を形成していくのでしょう。


リンパ球はそんなわけで炎症の起こっている局所に多数動員されていますので、リンパ球を介した免疫反応は手薄になります。このためツ反(結核抗原に対するT細胞性免疫反応を見る検査)は陰性になるのです。


難治例においては、おなじみステロイドを使用しますが、大量に使うと効果を現すものの減らすと再燃、というケースも多いため、適応は限られています。具体的には、命に関わるか、よほど患者さんが困るケースでないと使いません。


呼吸器領域で使うことは滅多になくて、


  • 点眼でコントロール困難なブドウ膜炎

  • 心臓のブロック・不整脈(突然死の危険性)

  • 腎障害・高カルシウム血症

  • 神経病変



などが適応になることが多いです。


今回記事を書くにあたって、細胞分画の正常範囲は、正確を期すために「気管支肺胞洗浄(BAL)法の手引き(日本呼吸器学会びまん性肺疾患学術部会・厚生労働省難治性疾患克服研究事業びまん性肺疾患調査研究班編集)」を参考にしました。

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posted by 長尾大志 at 19:26 | Comment(0) | 気管支鏡・BAL/TBLB

2013年03月15日

べったりと白くなる連続性の(肺胞性)陰影・浸潤影とすりガラス影関連・肺胞洗浄液の構成成分とその意義・肺胞洗浄液の成分について・異常な物質の出現

肺胞洗浄液の中には、肺胞内に存在するモノが含まれてくるわけですが、普通では見られない(存在しない)モノが出現していると、それは診断に大きく寄与します。


例えば、以下のようなモノが検出されれば、確定診断につながります。いずれも健常者の肺胞には存在していないモノです。



■病原体関連

  • ニューモシスチス・イロヴェツィーPneumocystis jirovecii
    Diff-Quik染色による栄養型の検出、グロコット染色によるcyst嚢壁の認識、PCR法によるDNAの検出

  • 抗酸菌・非結核性抗酸菌
    塗抹鏡検(蛍光法、Ziehl-Neelsen染色)、培養(MIGT法、小川培地)、PCR法

  • 真菌
    塗抹鏡検(グロコット染色、墨汁染色)、培養

  • ウィルス
    封入体巨細胞(サイトメガロウイルス感染を示唆)




■悪性細胞

・癌細胞(細胞診による)
癌・癌性リンパ管症・リンパ腫・リンパ増殖性疾患



■特異物質など

  • 白濁した回収液(だんだん薄くなる)
    肺胞蛋白症

  • だんだん濃くなる血性回収液/ヘモジデリン貪食細胞
    肺胞出血




白濁した回収液

PAPBALF.JPG


だんだん濃くなる血清回収液

DAHBALF0007.JPG


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posted by 長尾大志 at 12:30 | Comment(0) | 気管支鏡・BAL/TBLB

2013年03月14日

べったりと白くなる連続性の(肺胞性)陰影・浸潤影とすりガラス影関連・肺胞洗浄液の構成成分とその意義・肺胞洗浄液の成分について・細胞成分2・細胞数、細胞分画、リンパ球サブセットの正常範囲

今回記事を書くにあたって、細胞分画の正常範囲は、正確を期すために「気管支肺胞洗浄(BAL)法の手引き(日本呼吸器学会びまん性肺疾患学術部会・厚生労働省難治性疾患克服研究事業びまん性肺疾患調査研究班編集)」を参考にしました。



■細胞数

細胞数は、回収された肺胞洗浄液の1mlあたり、細胞が何個あるかを通常の血球計算版を用いて測定したものです。


上記データによると272人の健常非喫煙者の肺胞洗浄液を調べたところ、細胞数は(12.7±8.4)×10,000という結果でした。平均12万個。でもよく見ると、標準偏差が8万もある。それだけ、ばらつきが大きな集団、ということになります。


しかも喫煙者群だと、報告者にもよりますが20万〜40万程度に増えるようです。


さまざまな(肺胞に炎症が起こる)疾患で肺胞洗浄液中の細胞数は増加しますが、喫煙者ではそのあたりが目立ちにくくなることを知っておきましょう。


こうしたことを鑑みて、一応の基準として、健常非喫煙者での細胞数、これを10万〜20万、としておきましょう。細胞数の増加は、喫煙や炎症性疾患の存在を考えます。



■細胞分画・リンパ球サブセット

細胞分画も、先に書いたように、特に非喫煙者と喫煙者の間でばらつきがあります。特に喫煙者ではマクロファージが増加します。


健常非喫煙者における細胞分画の目安は、


  • マクロファージ:85〜90%

  • リンパ球:10〜15%

  • 好中球:0.5~1%

  • 好酸球:0.5~1%

  • 好塩基球:0.5~1%未満

  • 形質細胞:0.5~1%未満



で、正常値の目安は以下の通りです。


  • マクロファージ:80%以上

  • リンパ球:15%以下

  • 好中球:3%以下

  • 好酸球:0.5%以下



これを逸脱したものを、一応異常と扱っておきます。



また、リンパ球は見た目均一ですが、その表面マーカーでサブセットが分類されています。肺胞洗浄液中のリンパ球はほとんどがT細胞で、CD4陽性のヘルパーT細胞とCD8陽性のサプレッサーT細胞に分けられます。この比率(CD4+/CD8+:フォーエイト比、よんはち比)が疾患によって変化することが知られていて、臨床でも用いられます。


健常非喫煙者ではCD4+/CD8+は1〜2程度とされています。



* 臨床検査増刊号(第57巻11号)「はじめよう検査説明(仮題)」に改変の上掲載予定

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posted by 長尾大志 at 14:56 | Comment(0) | 気管支鏡・BAL/TBLB

2013年03月13日

べったりと白くなる連続性の(肺胞性)陰影・浸潤影とすりガラス影関連・肺胞洗浄液の構成成分とその意義・肺胞洗浄液の成分について・細胞成分1

肺胞に病変がありそうな、浸潤影やすりガラス影を呈した疾患には肺胞洗浄液を分析します。


肺胞洗浄液の構成成分には、大きく分けて細胞成分と液性成分の2つがあります。



細胞成分は文字通り、どんな細胞が肺胞にいるかを見たもので、細胞数、細胞分画、細胞表面マーカーなどの項目があります。


液性成分は肺胞洗浄液の上清に含まれる各種タンパク質やサーファクタント、サイトカインなどになりますが、臨床上カットオフ値まで確立した物質、というものはなく、まだまだ研究の段階である、といえるかと思います。そんなわけで、肺胞洗浄液の成分といえば細胞成分、という感じであります。



それで細胞成分の項目を見ていきたいのですが、項目を見るときに注意するところは、「正常値の幅が広い」「非喫煙者と喫煙者でかなり数値が異なる」ということです。


血液と異なり、肺胞洗浄液は洗浄手技や回収手技によって、つまり(おそらく)報告者によって、「正常」「平均」値が若干ずつ異なります。そこがまた、覚えることが多くなってややこしいところです。


また、喫煙者では気道や肺胞に煙に含まれているゴミが多量に沈着するため、お掃除をするために肺胞に多数マクロファージが動員されます。そのため、喫煙者のBALF中にはそもそも細胞数が多く、細胞分画でマクロファージの増加が認められてしまうのです。


このあたりのことを勘案して、一応の正常値、正常範囲を確認しましょう。


* 臨床検査増刊号(第57巻11号)「はじめよう検査説明(仮題)」に改変の上掲載予定

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posted by 長尾大志 at 16:45 | Comment(0) | 気管支鏡・BAL/TBLB

2013年03月11日

べったりと白くなる連続性の(肺胞性)陰影・浸潤影とすりガラス影関連・肺胞洗浄液の構成成分とその意義・気管支肺胞洗浄(BAL:bronchoalveolar lavage)の具体的検査法

少し前に頂いた執筆依頼、そろそろ締め切りも近く、書き始めなくてはなりませんので、ちょっと準備に取りかかりたいと思います。よければお付き合いください。



「肺胞洗浄液の構成成分と、その意義について教えてください。」



まずは気管支肺胞洗浄(BAL:bronchoalveolar lavage)のおさらい。大量(50ml×3回が標準的)の生理食塩水を、気管支鏡を通じて気管支内に注入し、肺の末梢(肺胞領域)まで行き渡らせた上で、吸引、回収します。


それに対して気管支洗浄とは、少量(20ml程度)の生理食塩水を、気管支鏡を通じて気管支内に注入し、陰圧をかけて吸引、回収するものです。その程度の量だと洗浄した液は肺胞まで入っていかず、気管支内に存在する成分を回収することになります。

気管支洗浄の目的は、狙い撃ち。ターゲットとなる病変があって、その部位を少量の生理食塩水で洗うわけです。癌や結核、非結核性抗酸菌などの診断を行うために施行します。




では肺胞洗浄の目的は何でしょうか。


肺胞に存在するものを回収する、ということは、肺胞領域に病変がある、そういう疾患の鑑別をするということです。例えば、肺胞に病変のある感染症、肺胞内の腫瘍、はたまた肺胞内に何かが出現する疾患、そういったもの。


つまり、肺胞に病変がありそうな、浸潤影やすりガラス影を呈した疾患では、肺胞洗浄液を分析することで診断に至る証拠が見つかる可能性がある、ということです。


ここで例えば、浸潤影を呈する細菌性肺炎なんかですと、肺胞内にいる肺炎球菌も喀痰内に含まれて鏡検で発見することができます。また、病歴などからある程度適切な抗菌薬を選択することも可能であり、侵襲などを考えても、あまりそういう疾患で施行されることはありません。


感染症としても、もう少し痰に出にくい感染症、あるいは色々な機序による間質性肺炎を考えるときに施行されると思います。


具体的な手順としては、気管支鏡を中葉、あるいは舌区(前面に位置するので、臥位で上に来る部位になります。そのため、入れた液が還って来やすい)に挿入し、50mlのシリンジを用いて生理食塩水を注入し、そのままシリンジを引いて液を回収する、となります。これを3回繰り返し、終了します。


回収液の量があまりにも少ない場合は、気管支成分(上皮細胞や好中球)の割合が相対的に多くなります。したがって、150ml入れたうち何ml還ってきたか、回収率は重要な情報です。記録しておきましょう。25%以下、大体40ml以下の回収では解析結果の評価は困難とされています。



多くの場合、シリンジ内にもわもわした気道内分泌物が浮かんだ液が回収されます。細菌培養検査はこの液をそのまま使用しますが、もわもわは肺胞洗浄液の評価には不要ですので、滅菌ガーゼを用いて濾過します。3本のシリンジの液を1つに集め、細胞数、分画、細胞表面マーカー、それに液性成分の評価を行います。


回収後の検体は4℃に保ち、1時間以内に速やかに処理します。


* 臨床検査増刊号(第57巻11号)「はじめよう検査説明(仮題)」に改変の上掲載予定

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posted by 長尾大志 at 18:55 | Comment(0) | 気管支鏡・BAL/TBLB

2011年05月02日

気管支鏡・BAL/TBLB4・用語と定義・TBB(経気管支生検 transbronchial biopsy)とTBLB(経気管支肺生検 transbronchial lung biopsy)

これもまた、混同されやすい用語です。
間違えないように気をつけましょう。


TBB(経気管支生検 transbronchial biopsy):鉗子を用いて病巣組織を直接採取し、生検を行います。結節や腫瘤をターゲットにするもので、通常「生検」と言いますと、こちらを指します。


TBLB(経気管支肺生検 transbronchial lung biopsy):びまん性肺疾患の評価目的で末梢肺を採取するものです。通常は胸膜直下の肺を採取するため、気胸などの危険性を考慮し、鉗子が胸膜スレスレの位置にあることを確認しやすい(接線方向が取りやすい)B2b、B3a、B8aなど数カ所で行います。


TBBが陰影のある場所に「当てて」行うのに対し、TBLBは必ずしも陰影の強い箇所で行うとは限りません。というのも、TBLBを行うのは、「びまん性肺疾患」の診断目的がほとんどであり、その場合には、肺のあらゆる場所で「びまん性に」同様の変化が起こっていると考えられ、どこで取っても同様の所見が得られると期待されるためです


鉗子の大きさの制約があり、数mm大の組織サンプルしか得られないため、間質性肺炎の組織型などは判定困難です。病原微生物の検出によって感染症の診断は可能であり、過敏性肺臓炎、サルコイドーシスなどの肉芽腫性疾患の診断も可能です。器質化肺炎や好酸球増多症、リンパ増殖性疾患も、組織から診断可能な場合があります。


TBLBで診断困難で、より大きな組織が必要な場合、胸腔鏡を用いて組織サンプルを得る、胸腔鏡下肺生検(VATs)が行われます。こちらは全身麻酔下で行う、外科的手技になりますので、ここでは割愛いたします。


というわけで、TBBのことをTBLBと言いがちですが、区別をしっかり付けておきましょう。


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posted by 長尾大志 at 11:47 | Comment(0) | 気管支鏡・BAL/TBLB

2011年04月29日

気管支鏡・BAL/TBLB3・気管支肺胞洗浄(BAL)液(=BALF)の解釈

BALは、気管支鏡を通して比較的大量(100〜150ml)の生食を流し込み、肺胞領域まで洗浄することによって、肺胞に存在する細胞の比や、肺胞に存在する病原体・特異的な物質などを検出するものです。


例えば、以下のようなものが検出されれば、確定診断につながります。

■病原体
ニューモシスチス・イロヴェツィーPneumocystis jirovecii(cyst、DNA-PCR)・抗酸菌・真菌・ウィルス・封入体細胞(サイトメガロウイルス感染を示唆)

■悪性細胞
癌・癌性リンパ管症・リンパ腫・リンパ増殖性疾患

■特異物質など
白濁した回収液(肺胞蛋白症)・だんだん濃くなる血性回収液/ヘモジデリン貪食細胞(肺胞出血)・好酸球(好酸球増多症候群)



BALF細胞分画の結果については、解釈は少々厄介です。

まず、明確なカットオフ値というのがない
そもそも正常範囲というのが、喫煙しているかどうかでかなり違います。


喫煙していると、煙に含まれているゴミを掃除するために、マクロファージが多数動員されます。従って、喫煙者のBALF中にはそもそも細胞数が多く、中でもマクロファージが比較的多く見られます。


なので、明確なカットオフ、といわれるとなかなか難しいのですが、一応、特定の細胞が増多傾向にあると、以下のような疾患を考えやすいです。


リンパ球増多: NSIP、COP、膠原病性間質性肺炎、薬剤関連性肺疾患、過敏性肺炎、サルコイドーシスなど
好中球増多:細菌性肺炎、びまん性汎細気管支炎、AIP、IPの急性悪化など。
好酸球増多:好酸球性肺炎など、好酸球増多症候群


また、リンパ球のうち、CD4+とCD8+、どちらが優位であるかによって、疾患を推定することができます。

CD4+>CD8+:サルコイドーシス、農夫肺、慢性ベリリウム肺、結核
CD4+<CD8+:COP、NSIP、AIP、薬剤関連性肺疾患、夏型過敏性肺炎など



BALだけであれば、検査に伴う合併症は比較的少なく、特に生検で生じる気胸や出血はほとんどありません。

生食が比較的多く体内に残ることから、それらが吸収される際に発熱することがありますが、多くは微熱程度で、高熱になることはあまりありません。


また、気管支鏡を通じて起こる感染も、頻度は少ないですがありますので、可能性が想定されるときは検査後経口抗生剤の内服を3日間程度処方する、ということが行われていました。しかしながら、あまりエビデンスのないところでもあり、省略するケースも多いようです。このあたりは上級医に相談しましょう。


また、特発性間質性肺炎の患者さんにBALを施行すると、それを契機に急性増悪が生じる(施行例の2.4%)と言われていますが、これは全く予測不能ですので、検査説明時のインフォームド・コンセントが必要です。


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posted by 長尾大志 at 13:35 | Comment(2) | 気管支鏡・BAL/TBLB

2011年04月28日

気管支鏡・BAL/TBLB2・用語と定義・気管支洗浄と気管支肺胞洗浄(BAL)

このブログでも何度か取り上げていますが、私は、用語を正確に使うのが好きです。用語にはきちんとした意味がありますから、その意味を知っていれば、間違えるはずはないのですね。

逆に言うと、用語を正確に使えない人は、正しく意味をご存じないのだ、と考えています。



気管支鏡関係で、間違えやすい、というか、混同されやすい用語はまず気管支洗浄、BAL(気管支肺胞洗浄 bronchoalveolar lavage)です。結構気軽に間違えて使われる人が多いんです。



気管支洗浄:少量(20ml程度)の生理食塩水を、気管支鏡を通じて気管支内に注入し、陰圧をかけて吸引、回収します。その程度の量であると洗浄した液は気管支内にとどまり、肺胞成分は回収できませんが、陰影のある部位の病原体検出や細胞診は可能です。

すなわち、気管支部分を洗浄することになるのです。



BAL(気管支肺胞洗浄 bronchoalveolar lavage):大量(50ml×3回が標準的)の生理食塩水を、気管支鏡を通じて気管支内に注入し、肺の末梢(肺胞領域)まで行き渡らせた上で、愛護的に吸引、回収します。

愛護的に、ということは、陰圧をかけて吸引する際に、壁からの吸引でなく、シリンジを用いて手で陰圧をかけ、優しく優しく吸引する、ということです。


壁から高い圧で吸引すると、気管支粘膜から出血してしまい、折角の回収液に末梢血が混入してしまいます(あくまでBALは、肺胞内にどのような細胞がいるのか、余計な病原体はいないか、を見るための検査。末梢血の状態が見たければ、血液をそのまま抜いて調べればよいわけで)。
あるいは、高い圧の吸引ですと、気管支がcollapseしてしまう(圧力でぺちゃんこになる)ため、回収が不十分になります。


しっかり気管支内を麻酔し、咳を極力少なくして、気管支鏡の先端を確実に気管支にはめ込み(wedgeする、といいます)、優しく操作しますと、目の細か〜い泡がしゅーっと出てきます。この泡が出るということは、肺胞内の空気が食塩水に置換されていることを意味し、例の「細かい泡はナントカの命」という名言を生んだのです。


BAL液を分析することで、肺胞内の病原体検出、肺胞内の細胞分画、肺胞出血の有無などを調べることができます。びまん性肺疾患の診断に使われることが多いので、必ずしも陰影の濃い部分で施行する必要はないはずです。
というのも、「びまん性」肺疾患は、肺のどこでも(びまん性に)同じこと(リンパ球浸潤など)が起こっているはずなんですね。

とはいえ、感染症が強く疑われるときには陰影の濃い部分で施行することもあります。



…とまあ、BALについて語り出すと、少々熱くなってしまいますのでご容赦下さい。

間違っても、気管支洗浄しかしていないのに、「BALしました」なんて言わないようにしましょうね。


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posted by 長尾大志 at 10:28 | Comment(0) | 気管支鏡・BAL/TBLB

2011年04月27日

気管支鏡・BAL/TBLB1・基礎知識

気管支鏡は、呼吸器内科医が行う、割と専門的な手技ですが、挿管や人工呼吸器管理の時など、使えると大変便利なので、ちゃんとした呼吸器内科医がいる施設では、しっかり学んでおかれるのがよいと思います。


これから、特にあやふやになりやすい用語と、定義、それに適応についていくつか解説しようと思います。



まずは気管支鏡の基礎知識から。



気管・気管支内に挿入する内視鏡で、直接気道内の観察(出血の有無、膿性痰の有無を確認)を行うとともに気道内、肺胞内からの分泌物や組織サンプルを回収するために用います。


年齢、麻酔の行き渡り方にもよりますが、声帯を越えた瞬間から、患者さんは「喉を絞められた」感じとなり、咳き込みもきつくなります。場合によってはそれ以上の検査が困難になるほどのこともあります。


局所麻酔で行う検査の中で、患者さんが感じる侵襲が大きく、多くの患者さんが「二度とやりたくない」と言われる検査の一つです。


そのため、前投薬として、迷走神経反射予防のアトロピン、緊張を取るためのアタラックスなどを使います。
また、局所麻酔薬であるキシロカインを、胃内視鏡などとは桁違いに多く使って、喉頭麻酔をあらかじめ行います。



気管支鏡の適応となる疾患は、サンプルを採取することで診断に至る疾患です。

例えば感染症、悪性腫瘍。
あるいは出現細胞・回収サンプルに特徴のある疾患。


リスクは、局所麻酔薬に基づくもの、前投薬に基づくもの、検査手技に基づくものがあります。

■局所麻酔薬に基づくもの
キシロカインアレルギー・キシロカイン中毒など。

■前投薬に基づくもの
アトロピン使用に伴う、緑内障、前立腺肥大の悪化など。

■検査手技に基づくもの
生理食塩水を入れる検査(気管支洗浄、気管支肺法洗浄)では、感染、発熱など。間質性肺炎の急性悪化も報告されています。
組織を取る検査(生検)では、気胸、出血など。


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posted by 長尾大志 at 17:03 | Comment(0) | 気管支鏡・BAL/TBLB