2025年03月12日

真菌症のちょっとしたこと8・抗真菌薬について

抗真菌薬はかつて(大昔は)フルコナゾールとアムホテリシンBだけ、みたいな状況でしたが近年では新しいものが使えるようになりまして、数も増えて参りました。使い分けは比較的ハッキリしているので、整理しておきましょう。

ミカファンギン(MCFG;ファンガード Ⓡ  )
カスポファンギン(CPFG;カンサイダス Ⓡ )
昨今よく使われているように思いますが、その主な理由は、副作用が少なく、併用注意もない、つまり何も考えなくても安全に使えるからではないかと思います。特に専門外の先生にとっては、何も考えずに使えるというのはポイントが高いため、頻用される傾向にあります。ただ、効果という点においては、カンジダにはいいが、カンジダ以外にはお勧めできません。

ところでカスポファンギンのメーカー(MSD)は「関西ダス」だの「効いとるんだ(キイトルーダレジスタードマーク)」だの……。

フルコナゾール(F-FLCZ;プロジフ Ⓡ 、FLCZ;ジフルカン Ⓡ )
カンジダ、クリプトコッカスによく、髄液移行も良好です。予防投与を含め、よく使われていますが、アスペルギルスには無効です。

ボリコナゾール(VRCZ;ブイフェンド Ⓡ )
カンジダ、アスペルギルス、クリプトコッカスに効きますが、接合菌には効きません。アムホテリシンBより副作用が少なく、効果もアムホテリシンBと同等以上とされ、アスペルギルス症に対する第一選択になっています。

ボサコナゾール(PSCZ;ノクサフィル Ⓡ )
アスペルギルスに加えて接合菌にも効く、新しい広域抗真菌薬ですが、いずれの菌に対しても第一選択薬を上回るものではなく、副作用で使えないときや無効時の代替薬としての役割、それに深在性真菌症の予防目的での役割が中心となっています。

イサブコナゾール(ISCZ;クレセンバ Ⓡ )
2024年12月現在の最新抗真菌薬で、最強というか最広域スペクトラムを持ちます。接合菌もそうですしCandida aurisという耐性菌にも効果があります。すなわち抗真菌薬のカルバペネム系的立ち位置になるでしょうか。副作用も比較的少なく、使いやすい、ということは裏を返せば、「大切に使うべき薬剤」ということになります。狙いを絞ってピンポイント攻撃的に使っていただきたいところです。

イトラコナゾール(ITCZ;イトリゾール Ⓡ )
カンジダ、アスペルギルス、クリプトコッカスに効きます。当初カプセル剤しかなく、血中濃度が上がらず全然効かなかったことから、印象があまりよくなかったのですが、注射剤、内用液の登場で使いやすくはなっています。しかし、どの菌に対しても第一選択薬があり、こちらは併用注意が多かったりして、相変わらず考えて使う必要がある状況です。そのためあまり使われることはなくなっています。

アムホテリシンB(L-AMB;アムビゾーム Ⓡ 、AMPH;ファンギゾン Ⓡ )
接合菌までカバーするスペクトラムの広さと、殺菌力の強さ、それと引き替えの毒性の強さから、使用するには習熟が必要な薬剤でしたが、リポソーム製剤のL-AMBが出現してからはかなり使いやすくなったと思います。
副作用ではInfusion reaction(投与関連反応)と電解質異常(低カリウム血症、低マグネシウム血症、低カルシウム血症)、腎障害が有名です。腎障害は不可逆性ですから注意が必要です。

フルシトシン(5-FC;アンコチル Ⓡ )
古来からある薬ですが、単独使用では耐性となりやすく使用する場面は限られていて、クリプトコッカス髄膜炎のときにアムホテリシンBと併用する、というくらいです。

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posted by 長尾大志 at 18:23 | Comment(0) | 真菌症のちょっとしたこと

2025年03月11日

真菌症のちょっとしたこと7・アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)

アレルギー性気管支肺真菌症(allergic bronchopulmonary mycosis:ABPM)は、以前アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(allergic bronchopulmonary aspergillosis:ABPA)と呼ばれていましたが、アスペルギルス以外の真菌によっても同様の病変が見られることがわかり、現在ではABPMという呼び名が一般的です。

そんなABPMは、感染症とアレルギー疾患の両方の性格を持っています。そのため、教科書でも載せるところに困っていたり、変なところに載っていたりします。そのせいか、なじみが薄く、よくご存じない人が多いように思います。

ABPMの病態としては、気管支の中に粘液栓の形で住み着いているアスペルギルスのかたまりに対してアレルギー反応が起こっている、こう考えるとわかりやすいですね。

診断基準についてはこれまで紆余曲折、といいますか、なかなか決定版といえるものがなかった感がありますが、2019年に日本から提唱された診断基準(論文掲載は2021年)が、特に日本におけるABPMの診断には妥当なものではないかと考えます(J Allergy Clin Immunol. 2021 Apr;147(4):1261-1268.)。

ABPMの臨床診断基準(6項目以上で診断確定、5項目で疑い)
1)喘息の既往または喘息様症状あり
2)末梢血好酸球数(ピーク時)≧500/μL
3)血清総IgE値(ピーク時)≧417IU/mL
4)糸状菌に対する即時型皮膚反応あるいは特異的IgE陽性
5)糸状菌に対する沈降抗体あるいは特異的IgG陽性
6)喀痰・気管支洗浄液で糸状菌培養陽性
7)粘液栓内の糸状菌染色陽性
8)CTで中枢性気管支拡張
9)粘液栓喀出の既往あるいはCT・気管支鏡で中枢気管支内粘液栓あり
10)CTで粘液栓の濃度上昇(high attenuation mucus:HAM)

症状は、喘息様の発作があり、末梢血好酸球も増えます。ですので、治療はアレルギー反応を抑えるためのステロイド投与、となるわけです。それで症状が治まり、粘液栓が分解されてアスペルギルスが出ていってくれれば一件落着ですが、体内にアレルゲンがあったわけですから、一時的に軽快してもまた増悪、というパターンも見られます。アスペルギルスがしつこく居座る場合は、抗真菌薬の投与を行うこともあります。

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posted by 長尾大志 at 16:40 | Comment(0) | 真菌症のちょっとしたこと

2025年03月09日

真菌症のちょっとしたこと6・アスペルギローシス

アスペルギローシスは深在性のアスペルギルス症で、正式には侵襲性アスペルギルス症と呼ばれます。全身的に好中球がいなくなるような、免疫力が低下した状態で、肺や他の臓器の中に直接菌糸が入り込んできます。

「免疫力が低下した状態」というのは、とにかく好中球減少なのですが、それ以外には次のような場合が挙げられます。

•ステロイド大量長期投与
•免疫抑制薬投与
•既存の肺病変
•低栄養
•糖尿病
•ADL低下

好中球減少以外の状況では、T細胞の働きが弱っている場面で起こりがちです。冒される臓器は、まず進入する肺から、血行性に全身に及びます。

好中球減少患者さんの病変部では血栓や梗塞を作り、それによる出血や浮腫を反映したhalo signがみられ、特異的所見といわれています。また、好中球数の回復とともに、好中球が壊死組織を処理して病変部に空洞ができ、air-crescent sign(前項のアスペルギローマとは機序がちょっと異なります)がみられます。

侵襲性アスペルギルス症は免疫能が落ちた方に起こるため、気管支鏡など、検査が困難であることも多く、生前診断がつきにくい疾患であります(剖検で診断されることが多いわけです)。

幸いボリコナゾールやL-AMBなど、強力な治療薬が使えるようになっていますから、疑わしい症例には逡巡することなく治療を始めるべきです。

アスペルギローマと侵襲性アスペルギルス症の間のような、「慢性壊死性肺アスペルギルス症」という病態もあります。これは侵襲性アスペルギルス症ほどではない、軽度の免疫低下がある患者さんに起こるものです。アスペルギローマとは異なり、肺実質に浸潤していきますが、進行は比較的ゆっくりです。

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posted by 長尾大志 at 16:11 | Comment(0) | 真菌症のちょっとしたこと

2025年03月08日

真菌症のちょっとしたこと5・アスペルギローマ

アスペルギルスは真菌ですから、空中に胞子が浮いています。それを吸い込んで体内に入る。アスペルギルスは好中球に弱いので、通常の免疫力がある人、つまり好中球がちゃんと働いている人で感染が成立し発病することはありませんが、何らかの理由で好中球が働いていないと菌が増殖してきます。

結核や嚢胞性肺疾患などでできた空洞は空っぽなので、好中球もいません。そのため、その場にはアスペルギルスが生育することができるのです。生育した菌体はキノコのようなかたまり(菌球fungus ball)を作り、空洞いっぱいになるまで発育します。そうやってできたアスペルギルスのかたまりをアスペルギローマといいます。〜omaとは、「かたまり」を意味します。

空洞の外は血流があり、好中球がウロウロしていますから、アスペルギローマが空洞の外にはみ出して発育することは通常はありません(全身の免疫力が低下しているような状態ではあり得ますが)。

キノコ成分が空洞を埋めてくると、残存している空気部分が三日月状になり、 air-crescent sign と呼ばれる状態になります。クレッセント(crescent)は三日月の意味で、クロワッサンの語源でもあります。

まず結節・腫瘤ありきで、内容物が壊死して流れ出してできる、普通の空洞とはでき方が違いますので、機序と合わせて覚えておくと忘れにくいと思います。

アスペルギローマは無症状のことも多いのですが、血痰や喀血を来すこともあり、その場合は治療を要します。治療は切除が原則ですが、患者さんの状態によって、抗真菌薬を使うこともあります。出血のコントロールが難しくて手術も困難な場合、塞栓術で止血を図ることもあります。

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posted by 長尾大志 at 13:44 | Comment(0) | 真菌症のちょっとしたこと

2025年03月07日

真菌症のちょっとしたこと4・ニューモシスチス肺炎

β−D−グルカンが高値を示す真菌症のうち、緊急性が高いものとして、ニューモシスチス肺炎が挙げられます。
今どきの先生方はこの病原体について、最初から「ニューモシスチス・イロヴェツィー」として習っておられるでしょうが、私たちの世代では「ニューモシスチス・カリニ」と呼ばれていましたもので、カリニ肺炎と呼んでいました。

ニューモシスチス・イロヴェツィー(Pneumocystis jirovecii)は、かつては原虫ともいわれていたのが、ちょいと前に遺伝子解析で真菌と決着した、何とも曖昧な立ち位置の微生物です。

多くの哺乳類に感染するのですが、種によって固有のものが感染します。かつての名称であるニューモシスチス・カリニ (Pneumocystis carinii)が動物由来のものを示す名称となり、ヒト由来のものはニューモシスチス・イロヴェツィーと呼ばれるようになりました。

Jirovecはチェコ人の学者で、その名前が日本語で表記しにくいため、本によっては「イロベッチ」や「イロベチー」「ジロベチ」などいろいろです。そんなわけで、混乱を避けるべく、「ニューモシスチス肺炎」と呼ばれるようになったわけです。

ニューモシスチス肺炎の診断
ニューモシスチス肺炎は、HIV感染からAIDSを発症し、CD4 陽性Tリンパ球が減少した患者さん、あるいは膠原病やリウマチ性疾患でステロイド使用中の免疫抑制状態にある患者さん、血液腫瘍や骨髄・臓器移植後の患者さんに発症します。要はT細胞免疫が低下している患者さんですね。逆にそうでない患者さんではあまり考える必要がないともいえます。

他の真菌症と比べてもβ−D−グルカン値は高めで、両側すりガラス影(地図状の分布)、A-aDO2開大(著明な低酸素)、LDH高値などの特徴的所見がみられます。

確定診断には、気管支鏡によるBALで菌体を直接検出したり、PCRでDNAを検出したりします。が、低酸素のため施行できないことや、施行しても検出できない(偽陰性)ことも少なくありません。そのため、上記のリスクがあってβ−D−グルカン高値、特徴的なCT像を見たら治療を開始することも多いです。

ニューモシスチス肺炎の治療
治療は、大量のST合剤+ステロイドを3週間投与します。ステロイドを使うのは、呼吸不全の治療(予防)の意味合いがあります。

バクタ 12錠 分3 経口
呼吸不全を伴う重症の場合 プレドニゾロン 80mg分2(最初の5日)40mg分1(次の5日)20mg分1(残りの11日間)

β−D−グルカンは、ニューモシスチス肺炎の診断には大変役立つのですが、治療をして菌量が減ったからといって、すぐには低下しません。ですから、β−D−グルカンは治療経過を追うには不向きであると思っておきましょう。発症していないリスクのある患者さんで定期的に測定し、上昇がみられたらすぐ検査・治療、というのは推奨される使い方だと思います。

治療の効果判定には、酸素飽和度や呼吸数、LDH値や炎症反応といったものが参考になります。胸部X線写真は、そもそも病初期やすりガラスの濃度によっては見えにくいこともありますし、見える症例でも治療によって必ずしもすぐには反応しないこともあります。X線写真がきれいになっていないという理由で治療を何週間もダラダラ続けることのないようにしましょう。

また、サイトメガロウイルス肺炎がしばしば合併し、かつ悪化の原因になっているといわれています。特に免疫抑制剤を使用している患者さんでは、C7-HRPなどを定期的にチェックすべきです。

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posted by 長尾大志 at 09:28 | Comment(0) | 真菌症のちょっとしたこと

2025年03月06日

真菌症のちょっとしたこと3・β-D-グルカンのこと

若いドクターは皆さん、検査が大好きですね。患者さんのところへ行くよりも、PCの前でカタカタやっています。だもんで、あまり感度とか特異度とか考えず、じゅうたん爆撃的に検査をオーダーして、なんか結果が出たら考える、みたいな光景をよく見かけます。

悪性腫瘍疑いや膠原病などの場合が多いでしょうか。本来、身体所見や生検などで診断の目星がついてから血清学的診断に行くもんだ、と旧世代の私なんぞは思うのですが、もちろん微小な癌など検査でないと捉えられない病変もあるわけで、検査至上主義を頑なに批判は出来ないところではあります。

真菌症の分野でいうと、β−D−グルカンという血清診断法があります。これは真菌の細胞壁に含まれる物質で、真菌による侵襲性病変のある患者さんで血中濃度が上がるというものです。で、「測ってみたらβ−D−グルカンが高値。さあ何だろう?」となるわけです。

検査をオーダーするときは、「この数字が異常値をとれば、こうである可能性がある」という見込みがあってオーダーして欲しいものです。何となくとか、上の先生に言われたからとか、いろいろ突っ込みを入れたくなるような根拠でオーダーされていることも多いのですが……。

とりあえず、β−D−グルカン高値になったとしましょう。じゃあカンジダでしょうか? アスペルギルスでしょうか? ここでもやはり、患者さんの背景によって、何が疑わしいか、何の可能性があるかを考えておく必要があります。

深在性のカンジダ症を疑うべき状況
•カテーテルが留置されている
•繰り返し広域抗菌薬を使用されていた
•絶食/中心静脈栄養
•腹部手術、穿孔の病歴
•糖尿病や透析
•悪性腫瘍があり、化学療法を受けている
•白血球(好中球)減少

起こっている事象としては、菌血症や膿瘍などが挙げられます。

深在性のアスペルギルス症を疑うべき状況
•好中球減少
•ステロイド大量長期投与
•免疫抑制薬投与
•既存の肺病変
•低栄養
•糖尿病
•ADL低下

一般的に好中球やT細胞の働きが弱っている場面で起こりやすいです。冒される臓器は、まず侵入する肺から、血行性に全身に及びます。

ニューモシスチス肺炎を疑うべき状況
呼吸器領域ではこれが一番重要かもしれません。リスク要因としては、以下のようなものがあります。
•HIV感染症(AIDS発症後)
•膠原病・リウマチ性疾患に対するステロイド長期投与
•膠原病・リウマチ性疾患に対する免疫抑制薬投与
•骨髄・臓器移植後
•血液疾患
•悪性腫瘍(長期間の抗腫瘍薬投与)

他の真菌と比べてもβ−D−グルカン値は高めで、両側すりガラス影(地図状の分布)、A-aDO2開大(低酸素)、LDH高値などの特徴的所見がみられます。

以上を逆に考えると、そもそも上に挙げたような(カンジダ、アスペルギルス、ニューモシスチスの)リスクがある場合に限り、β−D−グルカンを測るべきなのです。

あと、真菌といえばクリプトコッカス、ムーコル(ムコール)なども思いつくかもしれませんが、これらの真菌ではβ−D−グルカンの上昇はみられにくいので、注意が必要です。厳密にはクリプトコッカスの細胞壁にも少量ながらβ−D−グルカンは含まれているので、上昇しないこともないそうです。

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posted by 長尾大志 at 22:02 | Comment(0) | 真菌症のちょっとしたこと

2011年06月21日

昨日の「今日の症例・真菌編2」 回答

繰り返し広域抗生剤を使っていて、肺に空洞形成を起こすような病変を生じる…
しかも、β-D-グルカンが0→20に上昇と来れば、やはり、アスペルギルスを疑いたいところです。


本症例では、アスペルギルス抗原陽性となり、診断され、L-AMBを使用開始しました。

ここまで読んでこられた皆さんなら、簡単でしたよね。


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posted by 長尾大志 at 18:14 | Comment(2) | 真菌症のちょっとしたこと

2011年06月20日

今日の症例・真菌編2

肺癌の化学療法中、繰り返しFN(発熱性好中球減少症)を来していた患者さんです。発熱の都度、繰り返し血液培養を施行していたものの、起因菌はわかっていませんでした。


何度も広域抗生剤を使っていたら…。
こうだったものが


Aspercr1.jpg


Asperct11.jpg


Asperct12.jpg


こんな感じに。


Aspercr2.jpg


Asperct21.jpg


Asperct22.jpg


おお、空洞形成!


しかも、β-D-グルカンが0→20に上昇。
さて、何を想定しますか?


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posted by 長尾大志 at 12:51 | Comment(0) | 真菌症のちょっとしたこと

2011年06月14日

昨日の今日の症例・真菌編 回答

喘息で吸入ステロイド導入し、通院中に、咳と痰が多い。と来院された患者さん。


胸部レントゲン写真とCTで…


ABPA11.JPG


ABPAct1.jpg



棒みたいに見えるもの…
これぞ、粘液栓(子)。


というわけで、IgEや抗体陽性を確認し、ABPAと診断しました。
ステロイド(PSL 20mg)投与で改善!


ABPA2.jpg


…したのですが、5mgまでtaperしたところで再燃。


ABPA3.jpg


うーむ。ITCZ投与で!


ABPA4.jpg


軽快しました。


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posted by 長尾大志 at 08:38 | Comment(0) | 真菌症のちょっとしたこと

2011年06月13日

今日の症例・真菌編

喘息で吸入ステロイド導入し、通院中の患者さん。

ずいぶん長い間少量の吸入ステロイドで維持できていたのに、なんだか最近、咳と痰が多い。と来院されました。


胸部レントゲン写真を撮ってみると…。


ABPA1.jpg


おお!?ここが!まあ死角ですけどね。


CTを見てみましょう。


ABPAct1.jpg


棒みたいに見えるもの…
これ、何でしょうか?


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posted by 長尾大志 at 12:48 | Comment(0) | 真菌症のちょっとしたこと

2011年06月01日

真菌症のちょっとしたこと2・カンジダ肺炎?

いきなり全否定します。
いわゆる「肺炎」という意味では、カンジダ肺炎って、まずありません


もちろん、免疫力が低下したときに全身に生じる血行性播種の一環としての肺病変はあり得るので、「絶対ないです」とは言えませんが、かなりまれです。



「喀痰からカンジダが生えています。カンジダ肺炎ではありませんか?」という質問をされたら、「ああ、この先生、何も…」と思います。


カンジダが、経気道的に肺に進入して病巣を作ることはまずありません。しかし、抗生剤の使用で他の常在菌が死滅した結果、カンジダが生き残り増殖していくことはしばしばあり、そのために喀痰から検出されることはよくあるのです。その場合はただ「定着」しているだけ、と見守るだけでいいのです。


逆に、カンジダが検出されたときに治療対象となる検体は、何はともあれ血液。それ以外には、髄液とか、膿瘍などを穿刺した穿刺液などです。そのあたりから検出された場合、深在性真菌症である、ということですから、直ちに治療開始します



昨日の記事で書いたような、肺炎で入院した患者さん、広域抗生剤開始したが、なかなか良くならない、という症例は、以下のような可能性が考えられます。

  • 抗生剤の使い方に問題があった

  • 肺炎が治りにくい、他の基礎疾患があった

  • そもそも診断が違っていた


そのあたりの判断は、正しい知識がないと苦しいのも確かですが、安直に「カンジダ肺炎」という病名を付けるのは、抗真菌薬のメーカーさん以外には誰も喜ばないことを覚えておきましょう。


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posted by 長尾大志 at 10:26 | Comment(0) | 真菌症のちょっとしたこと

2011年05月31日

真菌症のちょっとしたこと1・菌交代で真菌になる?

よくある光景です。


肺炎で入院した患者さん、広域抗生剤開始。
が、なかなか良くならない。


「これは、菌交代を起こして、真菌になっている。」と判断され、
抗真菌薬を開始…でも良くならない。


何が問題なのか?




まあ、問題は色々ありますが、まず第一に、「ある疾患に対する知識がないと、わからなくなったときに、無条件に『それだ』と決めてしまう心理」があるようです。


呼吸器の知識がないDr.が、胸部レントゲン写真で肺野が白くなっているのを見て、無条件に「肺炎に違いない」と思われるのと同じですね。


真菌や肺炎の知識がないと、「真菌性肺炎」という、滅多にお目にかからない病名を付けてしまいがちです。じゃあ、この場合の真菌とは何か?カンジダ?アスペルギルス?はたまたクリプトコッカス?…



おそらく、学生の時に習った、↓↓↓この知識が問題なのでしょう。

〜抗生剤を使い続けていると、菌交代が起こる。グラム陽性菌→陰性菌→真菌の順番である〜

ふむふむ。そこまでは間違いではありません。その場合の真菌はカンジダを指す、これもそう。


問題は、「どこで?」ということ。
本来カンジダは皮膚、消化器、泌尿器などに(いるときは)いる真菌で、それが抗生剤の使用で他の常在菌が死滅した結果、生き残り増殖していく。カンジダが検出されたとき、その臓器でただ「定着」しているだけなのか、「感染症」を起こしているのか?は、臓器によってある程度決まるわけです。


例えばカンジダ肺炎って、まずありません
「喀痰からカンジダが生えています。カンジダ肺炎ではありませんか?」と尋ねられることは本当に多いですが、だいたい、「違うでしょ」と即答です。


カンジダで、あるのは表在性(皮膚、粘膜)と、深在性(血液、髄液、尿路)ぐらい。
だから、カンジダが検出されたときに治療対象となる検体は決まっているのです。


肺で病変を作る真菌としては、アスペルギルスがありますが、こちらは相当免疫能が低下した患者さんで起こるものです。また日を改めて取り上げます。


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posted by 長尾大志 at 18:05 | Comment(0) | 真菌症のちょっとしたこと

2011年05月30日

真菌症のちょっとしたこと

うちのように、担癌患者さんであったり、膠原病にステロイドと免疫抑制薬を使っていたり、免疫力が落ちがちなケースを多く診ていると、しばしば「日和見感染」らしき状態というものを経験します。


で、そうそう症例としては多くないのですが、多くないが故になかなか学ぶ機会が少ないのが「真菌症」ではないかと思います。


でも、やはり時々迷う場面に遭遇したりして、ちょっとしたことが疑問であったりしがちですので、何回かに分けて真菌症を取り上げようと思います。


今思いつくのは、以下のような事項ですが、何かリクエストがあれば追加していきます。

  • 「カンジダ肺炎」のこと

  • β-D-グルカンのこと

  • ニューモシスチス肺炎

  • アスペルギローマと、アスペルギローシス(と、ABPA)の違い

  • クリプトコッカス感染症

  • 治療薬のこと

  • 予防投薬のこと

  • 治療期間のこと



内容としては、主に「深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2007」に基づいています。


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posted by 長尾大志 at 10:26 | Comment(0) | 真菌症のちょっとしたこと