今日は、明日のセミナーに備えて前乗りです。

久々に富士さまを拝めました。
さて、先日、といっても昨年のことですけれども、『第13回びまん性肺疾患フォーラム』に参加してきました。こちらの会、これまでにもちょこちょこ参加させて頂いてるのですが、いつも大変学びが多く、学んだことが盛りだくさんになってしまい、振り返ることもできていませんでした。
今回はテーマが『線維化性間質性肺疾患の疾患進行性フェノタイプ』ということで、色々とエキスパートの先生方の貴重なお話もあり、学ぶことも多くやはり振り返っておかねばと思いましたので、ちょっとここで振り返っておきたいと思います。基本的にはお話になったことの核を、箇条書きにする感じでまとめていきます。
なお、この手の会の御多分に洩れず、本フォーラムもCOI(某S社さん)がありますことを申し添えておきます。
例年通り、初めの1時間は福井大学の伊藤晴海先生による、肺の微小構造の解剖、及び先人の(特に病理における)業績のご紹介でありました。個人的には大変勉強になりましたが、ここではあえてまとめということはしないでおきます。
引き続き、テーマに沿ったシンポジウムが開始されました。
まずはNHO近畿中央呼吸器センターの井上義一先生による『線維化性間質性肺疾患の疾患進行性フェノタイプ概論』。
・IPAFは今の日本ではIIPに管理的にも含めていて、臨床的に膠原病の要素を取り立てて、というよりはむしろ研究用カテゴリーとしての意味合いになる。
・IPFとINSIP、そしてさらにIPPFEのオーバーラップはかなりあり、不可分だったりすると考えられる。特にIPPFEはほとんどがUIP病変を合併していて、管理も事実上IPF/UIPと同じ。
・日本でIPFの急性増悪や肺癌の発症が多いのは、ステロイドや免疫抑制薬を使っているからだという批判がある。
・NSIP独立論はずっとある。
・ANCA陽性間質性肺炎はスタディによってUIPに含めてしまったりNSIPにしたり。肺胞蛋白症は線維化に注目しUIPぽいものは予後が悪い。
・線維化肺疾患へのニンテダニブの効果(N Engl J Med. 2019 Oct 31;381(18):1718-1727.)がポジティブであり、他の抗線維化薬でも第U層第V層試験が走り出している。これが今回の会のきっかけとなった。
続いて関西労災病院放射線科の上甲剛先生によります、『線維化性間質性肺疾患の疾患進行性予後不良因子:画像から』というお話でしたが、いきなり「そういうものはない」というオチで、現状の画像業界での混乱がよくわかりました。
・PF-ILD(Progressive Fibrosing Interstitial Lung Diseases)の中に、進行する一群のフェノタイプがあることは間違いない。
・NSIPの分類に関しても混乱してきているが、今NSIPに分類される疾患群の画像は、強皮症関連の間質性肺炎における画像にとても似ている。胸膜直下がスペアされていて、さりながら決して正常ではない、そういう特徴がある。
・RA-IPはUIP、NSIP、OP、気道病変、色々混在している。雑な米国の放射線科医は(彼らはもうボロボロ…)、結局IPF/UIPとRA-IPのCTは同じ、とまで言ってしまっている。
・CHPに関しては一時上肺野優位、それに対してUIPは中下肺野優位と言われていたこともあるが、現状では結論は出ていない。むしろ特に分布に特徴なしという意見が多い。画像所見の特徴としては、Head Cheese appearance、モザイクというキーワードがある。リンパ管や胸膜にも病変が認められ、小葉辺縁性の陰影が特徴的である。
続いて長崎大学の福岡順也先生によります、『線維化性間質性肺疾患の疾患進行性予後不良因子:病理から』のお話。要するにCottinらの総説(Eur Respir Rev. 2019 Feb 27;28(151).)を見ろということなのですが、進行するかどうか病理で予測できるか?という問いにははっきり「無理だ」と、こちらも病理業界の混乱ぶりがよくわかるお話でした。
・間違いないのはUIPがあるかないかで予後が違うということ、それ以外にはfibroblastic foci、fibroelastosisなどなどの要素でもって予後を推定する研究が現在進んでいるということ。とにもかくにもUIPは病理での一致率が悪いのが問題。
・言えることは、UIPという、わりと確立した病態があって、それを悪化させるファクターが色々あり、それによって修飾されている(例えばIPF、IPAF-UIP、CHP-UIP、CPFEなどのように)プラスアルファ溢れてきたものが悪化するという考え方で整理すれば良いのではないか。
・最近注目されつつあるクライオバイオプシーにおいて、病因まで言うのは難しい、VATsとの不一致がある。
…というなかなか残念なお話がありました。
福岡先生の口ぶりでは、すでに福岡先生はじめ最先端の先生方は、形態学的な病理にはあまり興味がなく、AIなどを絡めた新たなステージに移っておられる、そのような印象を持ちました。
長いので、明日以降に続きます。
posted by 長尾大志 at 22:27
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