2016年12月28日

『肺血管や骨を追う』11・肺血管と骨

CTを見てみましょう。


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矢印のところで骨が蝕まれています。


ということで、胸部X線写真で濃度の高い部分は骨を溶かしている、つまり溶骨性変化がある、ということがわかります。炎症性の疾患で溶骨、といえばカリエスぐらいで、相当レアですから、可能性の高いところでいうと腫瘍性疾患かな、ということになるでしょう。


すなわち、本症例は嚢胞もさることながら、骨溶解像を捉えることが読影のポイントでした。


今日は仕事納め。今年一年無事に乗り切れたこと、関係の皆さまに感謝します。また来年もよろしくお願い申し上げます。

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posted by 長尾大志 at 16:54 | Comment(0) | 胸部X線道場

2016年12月27日

『肺血管や骨を追う』10・肺血管と骨

例によって間にいろいろと挟まりましたが、今年中に何とか終わらせましょう。


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こちらの写真で、矢印に囲まれた濃度の高い部分は、一体どういう性質を持っているか、というお話でした。覚えておられますか?


濃度の高い部分が、何かをしている。それによってそこの性質がわかる、ということです。よ〜くご覧下さい。


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矢印のところで、肋骨が途切れているのが見えます…。

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posted by 長尾大志 at 17:33 | Comment(0) | 胸部X線道場

2016年12月19日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・間質性肺炎番外編・第10回びまん性肺疾患フォーラム見聞録

12月の天気のよい土曜日の午後、第10回びまん性肺疾患フォーラムが開かれました。今回のテーマは、第10回大会に相応しく「やっぱりUIP」。先だってより間質性肺炎についてああだこうだ、と書いてきましたが、ちょっとここで整理になれば、と思って参加したわけですが、余計に混乱してきました(苦笑)。


おそらく非専門医の先生方が、IPFや間質性肺炎の権威の先生方同士のお話を聴かれても、「???」となることが多かろうと思われます。そのぐらい、専門の先生方の間でのお話はだいぶ浮き世離れしている感が。


でも今回は、結構いろんなエビデンスをまとめて紹介頂いたので、そのあたりをまとめられたら、と思います。


1.特別講演T 「間質性肺炎の画像診断 〜RAP-C〜」

福井大学名誉教授 特命教授、という肩書きよりも、「あの」という冠詞でご紹介すべき伊藤晴海先生のご講演。このフォーラムの目玉であり、このご講演だけを聴きに来られていた先生方も多かったですね。


私のような者が総括するような内容ではありませんでしたので、まとめはここではいたしません。とにかくスゴい。達人の演舞を拝見するような感じでしょうか。


2.シンポジウム

2)UIPの画像診断up-to-date

久留米大学の藤本公則先生によるご講演でした。例の2011年のATS他ガイドラインによる”possible UIP”をどう扱うか、というお話に関連して、ニンテダニブの治験であるIMPULSISレジスタードマーク試験において、症例登録を増やすために厳密なUIP以外の所見も登録基準に含めた、というお話もあり。


CTでいうところのUIPパターンはほとんど病理でUIPだが、inconsistent UIPでも30%が病理でUIPで、CTでNSIPパターン、といっていても、病理のUIPがそこそこ入っている。
Pathologically proved nonspecific interstitial pneumonia: CT pattern analysis as compared with usual interstitial pneumonia CT pattern. Sumikawa H, Radiology. 2014


蜂巣肺の診断はかくも難しい、見る人によって一致率がずいぶん違う、という論文。
Interobserver variability in the CT assessment of honeycombing in the lungs. Watadani T, Radiology. 2013


違ってくるところはやはり蜂巣肺と牽引性気管支拡張(の短軸像)。しかし、そもそも区別する意味があるのかどうか、誰もわかっていない…。


いえることは、UIP病変を想定するときに「蜂巣肺」という用語を使うのだ、ということ。そして「病理のUIP」と「画像のUIP」を無理に一致させようとしない方がよさそうだ(無理だ)、ということ。


その他ポロポロ出てくる裏話が興味深かったです。ここには書けませんが…。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

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posted by 長尾大志 at 18:51 | Comment(0) | 胸部X線道場

2016年12月16日

『肺血管や骨を追う』9・肺血管と骨

こちらの症例では、これまでに学んだ知識をフル活用します。まずはこの前に学んだ、肺血管を追ってみましょう。胸郭の端まで行かずに途切れているところがありますね。


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ここに線があって、ここまでで血管影が止まっています。この線は肺側に向かって凸ですから、嚢胞であろうと考えられます。


加えて、反対側の肺野を見てみましょう。濃度が高いところがありますね。


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この部分は、一体どんな性質を持っているのか、よ〜く「線」を追って頂くとわかるのですが、如何でしょうか。

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posted by 長尾大志 at 17:49 | Comment(0) | 胸部X線道場

2016年12月15日

『肺血管や骨を追う』8・骨を追う2

よ〜くご覧頂くと、右の肋骨の連続性が途切れていることがわかります。上から数えてみると、どうやら第Y肋骨のようです。


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こちらは肋骨骨折でした。


肺血管や骨を追う、シリーズもいよいよ大詰めですが、それではこちらはどうでしょうか。


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posted by 長尾大志 at 17:31 | Comment(0) | 胸部X線道場

2016年12月14日

『肺血管や骨を追う』7・骨を追う

血管影の次には、骨を折って、いや、追っていくことを意識してみましょう。


基本的には、線の連続性を追う、という姿勢でよろしいかと思います。肺の大きさを見るのに、肋骨を数える、その時に左右の差を意識しつつ、サッサッと追いかけておきましょう。


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如何でしょうか。よ〜くご覧下さい。元々右に胸水がある症例なので、左右の胸郭がアンバランスなのはご容赦ください。

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posted by 長尾大志 at 19:53 | Comment(0) | 胸部X線道場

2016年12月13日

『肺血管や骨を追う』6・余計な線が見えたら…

肺血管を追うつながりで、異常影、特に結節影を探す、見逃しを減らすために、役に立つ知識を一つご紹介します。


本来ある肺紋理(血管影)以外に、余計な線が見えたら、その線に原因・意味があるのかどうかを判断する必要があります。線が出来る原因はいくつかありますが、例えば肺炎など、感染・炎症の後に組織が引きつれてできたものにはあまり病的意義がありません。でも、腺癌などで見られる胸膜陥入像、これが線を作ってくることがあります。


ですから、不自然な線が見えたら、その両端に結節など見られないか、確認する必要があるのです。


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例えばこちら。数年前の写真(下図)と比較してください。


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どこが変わったでしょうか。まあ、この文脈から、新たに出現した線を探せばいい、ということは見え見えですね(笑)。


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こいつが出現しました。その先端に…


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結節がぼんやりと見えます。CTを見てみましょう。


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結節があります。少しスライスをずらすと…


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胸膜が引っ張られて、線をなしているのがわかります。これを前から見ると線に見えると考えられます。

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posted by 長尾大志 at 17:01 | Comment(0) | 胸部X線道場

2016年12月12日

『肺血管や骨を追う』5・無気肺と血管影

無気肺とは、気道が閉塞し、その場所以降の肺に空気の出入りがなくなることで、その部分の空が抜けてくなり、肺がしぼんでくる現象です。


元々肺はこんな感じになっています。


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ここで、例えば右の中下葉に行く気管支が詰まったとしますと、中葉、下葉がしぼみます。


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また、図を見て頂くとおわかりだと思いますが、つぶれていない部分(この場合は上葉)がフン伸ばされてきます。


ここに血管の走行を加味して考えますと、無気肺の部分は血管も狭い範囲に集まってくるでしょうし、フン伸ばされた部分は血管も広がっていきますから、疎になる、つまり単位体積あたりの血管密度が減ってくると考えられます。


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こんな感じですね。


そうすると、無気肺以外の部分では血管の走行があまり見えない、血管影が少ない、ということになります。結果、


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のように、血管影が少なくてちょっと黒っぽく見える、という感じになるのです。

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posted by 長尾大志 at 18:27 | Comment(0) | 胸部X線道場

2016年12月11日

照林社さんより、『まるごと図解 呼吸の見かた』発売です。発売記念?セミナーでした。

おかげさまで、エキスパートナースの照林社さんより、『まるごと図解 呼吸の見かた』が無事に発売されました!


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Amazonで購入するのはこちら


照林社さんの書籍紹介ページはこちら


呼吸のアセスメントに必要な、呼吸器の基礎事項から、診察の基本、胸部X線や血ガスなど検査の見かた、そしてコモンな疾患たちについて、各々診察や検査でどうなるか、その理由を解説しています。看護師さん向けではあるのですが、大きな声では言えませんが(言ってもいいのですが)、ドクターの卵の方々、特に診察のところがちょっと自信が…という方にもお勧めなのです。


私もともかく今持っているわかりやすさ力を全開で書きましたし、編集さんがステキなイラストを山ほどつけてくださったので、実にわかりやすいものになったと自負しております。多くの看護師さんに役立てて頂きたいと思います。


…それで今日はその発売記念?照林社さんのセミナーでした。諸々の事情にて、昨日更新ができませんで失礼致しました。


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JAさんの立派なビルでございます。


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こちらのカンファレンスルームにて…。


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基本のところは書籍の内容に沿った内容でしたが、診察、胸部X線の基本を説明しましたので時間の関係から、各論のところは限られた疾患と人工呼吸のところのみ取り上げての説明となりました。


『まるごと図解 循環器疾患』の著者、大八木秀和先生とご一緒させて頂いたのですが、心不全の解説、お話の進め方など、いろいろと勉強させて頂きました。ありがとうございました!


来週末には大阪でやります。まだ若干お席はあるようですので、ご興味がある方はこちらのページをご覧になってください。
https://seminar.shorinsha.co.jp/seminar/detail/78

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posted by 長尾大志 at 21:23 | Comment(0) | 胸部X線道場

2016年12月09日

『肺血管や骨を追う』4・血管影を使えるもの

さらに、血管をきちんと追っていると、こんなこともわかります。


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左右で血管影の密度というか、混み具合というか…差がありますね。以前の写真と比較してみましょう。


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こちらでは右肺門部に腫瘤影があります。このときは右の血管影はよく見えていますが…


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こちらでは血管影が少なくなっています。そのせいもあり、肺野も少し黒っぽく見えます。そして右の下肺野には真っ白いエリアが出現しています。


そもそもぱっと見で、気管の位置が右寄りであることから、右肺の容量減少があるかと思われ、下肺野が真っ白いことから無気肺が考えられますね。それでは、無気肺と血管影の密度には何か関係があるのでしょうか。


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posted by 長尾大志 at 16:40 | Comment(0) | 胸部X線道場

2016年12月08日

『肺血管や骨を追う』3・血管影が途切れたら疑うもの

左肺、この辺で血管影が途切れているのは見えるでしょうか。


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よくよく見ると、(血管の存在するエリアと存在しないエリアの境界)線が見えてきます。線の内側は肺が縮んだもので、これは気胸です。


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嚢胞と気胸、どちらも空気のたまったスペースと肺との間に境界線が見えますが、その違いは、どっち向きの袋か、によります。袋というものは、中に空気が入っていると、外に向かってふくらみますから外向きに凸になります。


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嚢胞と気胸って、各々こんな風に見えるのですが…


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嚢胞っていうのは、肺内に出来た「袋」。ですから、肺側に向かって袋が凸になります。それに対して、気胸は袋としての肺が胸腔に向かって凸になりますから、嚢胞とは凸になる方向が異なってくるのです。


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posted by 長尾大志 at 17:30 | Comment(0) | 胸部X線道場

2016年12月07日

『肺血管や骨を追う』3・血管影が途切れたら

この血管影ですが、不自然に途切れることがあります。COPDの場合は先細り、というか、いつの間にか無くなっている感じなのですが、そうではなくてあるところで急になくなる。例えばこちら。


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パッと見でも両側下肺野の血管影がなくなって、黒っぽく見えます。しかも気腫と違うのは、ここら辺に肺との境界らしき線がある。


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ということで、これは肺内に出来た袋、嚢胞です。こちらは多発症例で、CTで見るとこんな感じ。


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気腫と嚢胞、違いはなんでしょうか。


気腫は、主に喫煙が原因で、肺胞壁が(いつの間にやら)溶けて?無くなってしまってできた、がらんどうの空間です。


正常肺は、無数(3億個程度)の肺胞が集まって出来ていますが…


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その肺胞がいつの間にか無くなって空気だけになってしまった、それが気腫です。


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例えばそうやって出来た気腫の縁が膠原線維などで裏打ちされ、空気のたまったスペースと肺胞の間に壁(袋)ができあがると、その袋は嚢胞と呼ばれます。嚢胞は気腫から出来るもの以外に、生まれつき存在しているもの、胸膜の一部が牽引されて出来るもの、線維化に伴って出来るものなどがあります。


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その壁が、胸部X線やCTで境界線として見えていたのですね。


それではこちらはどうでしょうか。


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posted by 長尾大志 at 17:15 | Comment(0) | 胸部X線道場

2016年12月06日

『肺血管や骨を追う』2・血管影を追う

慣れていれば、ぱっと見で「肺が大きい」ことに気付くでしょう。


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横隔膜低位で肋横角も鈍、心陰影も小さめで、典型的な過膨張所見です。では所見はそれだけでしょうか…?過膨張だったら、肺野で気付くことは何があるでしょうか、ってことです。


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正常肺と比較してみましょう。過膨張、ってことはCOPD(気腫病変)があると考えられますから、そのエリアには肺が少ないはずですね…。


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両側下肺野の血管影が少ないように見えます。そのためにそのエリアが黒っぽく見えますね。


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正常像の血管影は、こんな感じになります。


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肺内の血管には血液(水の密度)が通っていますから、ほぼ空気である肺内を、肺門を中心に放射状に枝分かれして少しずつ細くなりながら拡がっていく様子が見えます。


立位正面であれば、下の肺野に行く血管の方が重力によって多く血液が流れますから、太めに見えます。上の肺野に行く血管の1.5倍〜2倍の太さになるといわれています。まあ、こんなイメージでしょうか。


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それを意識して、肺野を見ていきましょう。基本、同じ高さの血管は同じような太さだと考えて頂いて結構ですから、左右に差、違和感がないか、比較しながら追っていきます。


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COPD(気腫)があると、その部分の肺胞+血管が減り、そのエリアに行く血流自体も減りますので、中枢の血管の径も細〜くなってきます。CTで正常例と比較してみましょう。まずは正常例。


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こちらが上に挙げたCOPD症例のCTです。血管の太さが正常例と全然違いますね。


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気腫(真っ黒)の部分が多く、その間の血管もか細いですね。


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これが単純X線写真だと、上の写真のように血管影が少なく見えるのです。

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posted by 長尾大志 at 19:01 | Comment(0) | 胸部X線道場

2016年12月05日

「研修医の胸部画像診断(仮)」原稿『肺血管や骨を追う』執筆開始

さて大きなイベントも終わり、地方会の予習も出来た?ところで、懸案であった原稿執筆に取り組むとしましょう。


ともかく最近は目の前に取りかかっていない仕事がある、という状態がすごくストレスになっておりまして、目の前に何かやるべき仕事が来たら全力でそれに取りかかり、それを終わらせる、というやり方でやっております。


ですが、少し大きな、時間のかかりそうなお仕事を頂くと、それがとてつもないストレスになってしまい、一刻も早く終わらせたいのです。といいつつ、お話を頂いてから結構長期間目の前にあり、ストレスの原因となっていたこの原稿に取りかかれるのがありがたく、うれしいことなのです。



さて原稿ですが、今回は研修医の先生方が対象となるようで、執筆者の先生方は(私を除いて)有名な方々ばかり。それも研修医教育に熱心な先生方で、コンセプトはよくわかりました。


研修医の先生方が読影に困る画像所見を取り上げ、「なぜ困るのか」「困らずに(見落としなく)読影するための方法・考え方はどういうものか」を学べるようにする、すぐに役立つ一冊を目指す、ということです。


頂いたテーマは、『肺血管や骨を追う』。ちょっと組み立てというか構成が難しいんですが、こちらで書いていきたいと思います。原稿というか文章は、少し凝ったものに統一される予定、ということで、まずは、こちらで症例をピックアップし、たたき台となる原稿を作ってみましょう、ということになります。



症例は60歳代男性、


<主訴>
咳嗽、労作時呼吸困難

<現病歴>
3年前より他院通院中。肺炎に他院入院となり、低酸素血症を指摘された。

<既往歴>
25歳:虫垂炎
57歳:右耳ヘルペス,その後右難聴

<服薬歴>
ユニフィルLA錠200r 1 錠 1日1回:眠前 6 日分 (β刺激薬)
オンブレス吸入用カプセル150μg 1 Cap噴霧薬:1日1回(β2刺激薬)
スピリーバ2.5μgレスピマット60吸入 1 キット 吸入薬:1日1回 1回2 吸入(長時間作用型抗コリン薬)
フルタイド200ディスカス 60ブリスター 1 個 吸入薬:1日2回 1回1 吸入(副腎皮質ステロイド薬吸入薬)

<家族歴>
母:脳卒中

<生活歴>
長女、長女の夫、孫の4人暮らし

<喫煙歴>
20歳〜60歳まで20本/日 former smoker

<飲酒癧>
焼酎1日1合

<職業>
トラック運転手(19-64歳)

<粉塵・アスベスト暴露癧>
なし

<アレルギー>
なし


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この画像を見た感想はどうでしょう。典型的な画像ですので、もう慣れている方でしたら一発かもしれません。

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posted by 長尾大志 at 18:00 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年03月21日

肺胞洗浄液の構成成分とその意義・肺胞洗浄液の成分についての話は置いといて、過敏性肺炎の典型的画像は「粒状影」なのか、「すりガラス影」なのか?

過敏性肺炎の機序は、吸入した(カビなどの)抗原によって、肺胞領域の間質にV型、W型のアレルギーが起こり、「そのエリアに」間質性肺炎が生じるものです。


そのエリア、というのが、気管支を通ってやってきた抗原が細気管支(の出口?)から肺胞内に散らばった場所、すなわち気管支末端付近の肺胞にあたります。そのあたりに間質性肺炎が生じるのです。


普通の?間質性肺炎では、肺胞領域の変化は連続性に生じるため、陰影も連続性なのですが…


30連続性に生じている間質性肺炎.JPG


過敏性肺炎(特に急性、亜急性の、アレルギーが起こりたてホヤホヤの時期)では、気管支末端付近の肺胞に間質性肺炎が生じます。


31過敏性肺炎では「この辺」に間質性肺炎が.JPG


「その辺」は小葉の中心部にあたるため、陰影としては小葉中心部に「飛び飛びに」「すりガラス影」が見られるわけです。小葉…覚えておられるでしょうか。


32小葉構造.JPG


こんな感じで病変ができる、ということです。


33小葉の中心部に飛び飛びに病変が.JPG


まとめると、細気管支周囲の肺胞に飛び飛びに間質性肺炎が生じるために、「小葉中心性に」「粒状に(飛び飛びに、の意)」分布するすりガラス影が見られる、というわけです。


34小葉中心性のすりガラス影.JPG


ここんとこ、ちゃんとわかっている人、それほど多くない印象です。


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posted by 長尾大志 at 13:26 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年03月08日

胸部レントゲン道場63・各論26・レントゲンで白くなる病態20・べったりと白くなる連続性の(肺胞性)陰影まとめ・すりガラス影を来す疾患

昨日の記事は、何となく既出の事項が多かったですね。まあ、よい復習になったのではないでしょうか。


今日は、重なって存在する血管影が認識できる程度の薄い白色陰影である、すりガラス影の鑑別を考えましょう。


すりガラス影はそのエリアの肺胞の全てではなく、何割かが水っぽくなっている状況を意味しますので、何てったって

  • 間質性肺炎
    が鑑別の1番手になりますが、

  • 線維化のない間質性肺炎

  • 線維化のある間質性肺炎
    の鑑別が重要です。ただそれ以外に、

  • 肺胞内(実質)の病変だけれども、100%水で満たされていない


てな状況でも見られるのです。


そこの鑑別、1つは牽引性気管支拡張。また、それ以外の所見(浸潤影、蜂巣肺、広義間質の肥厚)にも目を向けます。

それ以上突っ込んだ鑑別となると、症状やその他の検査という情報が必要になってきます。



■間質性肺炎だとすると、線維化があるかどうか

線維化の指標として、牽引性気管支拡張、蜂巣肺などがあります。これらの所見があると、線維化がある、ということになるので、線維化を来す間質性肺炎が存在する可能性が高くなります。


逆にこういう所見がないすりガラス影は、線維化のない間質性肺炎の可能性もありますが、後に述べる「間質性肺炎ではない」すりガラス影の可能性も出てきます。


細かい組織学的診断はともかく、一般的に線維化のある間質性肺炎をないものと比べると、あるものの方が予後は悪い、ということは言えると思います。


ですからすりガラス影+牽引性気管支拡張や蜂巣肺の存在は、線維化を伴う性質を持つ、予後の悪めな間質性肺炎を考えます。


聴診でfine crackleがあれば、間質性肺炎の存在を支持する所見になりますね。



■肺胞実質の病変で、肺胞の100%が水で満たされていない病態

例えば

  • うっ血性心不全

  • 肺胞出血

  • 肺胞蛋白症

  • 細菌性肺炎(の、ちょっと病勢が弱いところ)


などは、肺胞実質内に水濃度の液体が出てくる病態ですが、細菌性肺炎のように100%全ての肺胞が水浸し、になるわけではありません。ですからそのエリア内の水の割合によって、すりガラスのように見えて来ることが多いわけです。


29ドッチも画像上はすりガラスに見える.jpg


この場合、原理的には牽引性気管支拡張や蜂巣肺を伴わない、ということは理解していただけると思います。それゆえvolume lossもない。容量変化を伴うような所見がないのですね。


で、しばしば肺胞内の液体をwashoutするために、リンパ管が頑張る。そのため、リンパ系が顕在化して見えるのです。が…リンパ系については、このブログではまだ一言も触れていませんね!残念!( ̄▽ ̄;) まだまだ先は長いですなあ…。


ここでは、リンパ系の顕在化≒広義間質の肥厚としておきましょう。すなわち、広義間質の肥厚、カーリーBラインの出現を伴うようなすりガラス影は、こういった「水が肺胞内に出てくる」疾患を想起すべし、と覚えておきます。


いやあ〜すりガラス影って、本っ当に奥が深いですね。


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posted by 長尾大志 at 17:07 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年03月07日

胸部レントゲン道場62・各論25・レントゲンで白くなる病態19・べったりと白くなる連続性の(肺胞性)陰影まとめ・浸潤影

このたび線維化、蜂巣肺について勉強しましたので、白くなる連続性の陰影、すなわち肺胞性の陰影について、ようやくまとめることができます。


まずはその濃度によって2つに分けます。


  • べったりと真っ白、水濃度が連続性に拡がる、浸潤影っぽい影

  • 薄い白色で、重なって存在する血管影が認識できる、すりガラス影



浸潤影はそのエリアの肺胞全体が水に置き換わった結果生じた影ですので、それに似た陰影が生じる現象としては、


  • 浸出液の出てくる、細菌性肺炎
    以外に、

  • (大きな)腫瘍性疾患

  • 胸水

  • 無気肺



などが考えられるでしょう。


これらの鑑別のため、容量(volume)の変化=縦隔などの動き辺縁の凸具合、air bronchogramなどを評価します。


細菌性肺炎では、連続性に肺胞が水浸しになることで、浸潤影が生じます。浸潤影は元々空気のあった肺胞腔が水浸しになってできた陰影、と考えて頂くと理解しやすいと思います。スポンジに水が染みこんだ感じとでもいいましょうか。ですから、原理的にはそのエリアの容量は変化しない、辺縁がまっすぐ、となるわけです。


また、air bronchogramの存在は、水で満たされた肺胞の中に、侵されずに残っている気管支の空気が見えていることを意味します。これが見られると浸潤影クサイですね。



それに対して腫瘍性疾患ではどうなるか。増殖していく病変ですから、辺縁は外向きに凸、となります。また、内容物が密であればあるほど、病変内を走る気管支は押しつぶされ、air bronchogramは見えなくなります。

逆に言うと内容が疎な場合、air bronchogramが見えることもありますが、それはまた他の機会で。今回は原則を理解しましょう。


1腫瘤=外向きに凸.JPG



また、胸水は肺外の胸郭内に存在する水のことですから、容量が多くなってくると縦隔を圧してきます。従って気管や縦隔は健側に圧される。また、肺外には気管支が存在しませんから、air bronchogramは生じません。


11左側は真っ白、そして縦隔は.JPG



そして無気肺は、以前にも書いたように気管支が閉塞して肺胞に空気が出入りしなくなり、肺がしぼんでくるものですから、そのエリアの容量は減少します。とすると、気管や縦隔は患側に偏位し、横隔膜は挙上します。気管支内に空気は存在しなくなるため、air bronchogramは生じません。


縦隔スライド7.JPG



ということで、べったりと真っ白、水濃度が連続性に拡がる陰影の鑑別ポイントは、以下のようになります。


  • 容量不変・air bronchogramあり:浸潤影

  • 容量増大・air bronchogramなし:腫瘍性疾患・胸水

  • 容量減少・air bronchogramなし:無気肺



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posted by 長尾大志 at 17:31 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年03月06日

胸部レントゲン道場61・各論24・レントゲンで白くなる病態18・べったりと白くなる連続性の陰影から白と黒が混在する陰影へ・線維化とは5・肺線維症であんなことやこんなこと(拘束性障害・捻髪音fine crackle・フローボリューム曲線のカタチ・拡散障害)が起こるわけ

ということで、恒例?となりました脇道シリーズ、今回は間質性肺炎〜蜂巣肺を呈する肺線維症患者さんに起こってくる現象を理由づけましょう。既出のものもありますが、この機会にまとめておこうと思います。



■拘束性障害

線維化を起こした箇所は基本的にカチカチです。健常な肺とは比較にならないくらいカチカチです。そのため、動きが悪くなります。特に線維化、蜂巣肺の形成は、ナゼかはわかりませんが、肺底部と胸膜直下優位(要するに肺の中でよく動くところ)に分布するもんですから、そこの動きが悪くなると困るのです。


一番動いてほしいところが動かなくなるため、全体的に肺の伸び縮みが悪くなります。これを、自由が奪われた状態になぞらえて「拘束性障害」といいます。拘束、というのは何というか、味わい深い?言葉で、縛り付けて身動きがとれないような状態ですね。


まさに、自由を奪われる、というか。よく学生さんに「日常生活で『拘束』されることってある?」と尋ねてみたりすると、バカ受けしたり、微妙な笑いであったり…まあ、何を連想してるんだか(笑)。ともかく、イメージで理解しておくと、忘れなくてよいですね。




■捻髪音fine crackle

間質性肺炎・肺線維症につきものの捻髪音(fine crackle)、別名「ベルクロラ音」などとも呼ばれるもので、(特に線維化のある)間質性肺炎の時に、しなやかさが失われた肺胞が、吸気で膨らむときになかなか膨らまず、最後(吸気時末)にバチンと鳴る音が集合して聞こえるものです。


28捻髪音fine crackle図.jpg


ですから、線維化が生じやすい肺底部、背側でよく聞こえますし、基本、吸気時の終わりの方でのみ聞こえるはずなのです。




■フローボリューム曲線

さて、肺線維症・拘束性障害のフローボリューム曲線、どんなカタチだったでしょうか。
既出ですが、随分昔の記事ですので、取り上げてみましょう。


スライド79.JPG


こんなカタチです。
どうしてこうなるのか。


肺胞領域の線維化のため、肺活量が低下することと、牽引性気管支拡張により細気管支が拡張し、末梢気道の抵抗が減ることによります。


肺活量が低下する、ということは、最初の一瞬で出てくる空気量(≒最初の一瞬のフロー)は健常者よりも少なくなり、フローボリューム曲線の最初の立ち上がり、ピークフローは、健常者よりも低くなります。


スライド74.JPG


それ以降、末梢の空気が出てくる相のフローで、気道抵抗が健常者と同じであれば、そこから描かれる曲線はまっすぐ、図の点線のようになるはずです。


いつものように、50%息を吐いた状態を考えますと…。


スライド75.JPG


フローも本来、ピークの50%になるはず。


スライド76.JPG


しかし、先に書いたとおり、末梢気道は拡張しており、抵抗は減るのです。すると、フローはピークの50%まで落ちない、ということになります。


スライド77.JPG


そしてその後は、徐々にではありますが「本来の」フローボリューム曲線に近づき、最終的には容量=0となった時点(最大呼気位)でフローも0になるのです。ですから、この場合のフローボリューム曲線は、上向きに凸の曲線になります…。


スライド78.JPG


最終的には、こんなカタチの曲線になるのですね。


スライド79.JPG




■間質性肺炎では肺拡散能(DLco)が低下します。

こちらも既出ですが、折角ですのでまとめて記載しておきます。


拡散させる能力を見る検査が、肺機能検査で出てくる「拡散能」です。当然酸素の拡散能が大事なのですが、測定が難しいことから通常は一酸化炭素(CO)を用いたDLcoを拡散能の指標として用います。で、DLcoが低下する病態を拡散障害と言います。


6(狭義の)間質に炎症が起こる.JPG


間質性肺炎では、間質が炎症のために浮腫を来たし分厚くなってきます。その結果、本来ですとごく薄い、肺胞腔と毛細血管の間が分厚くなり、酸素の拡散がしにくくなる、拡散障害といわれる状態になるのです。


9間質が分厚くなるので拡散障害になる.jpg


間質性肺疾患シリーズを最初から読む
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posted by 長尾大志 at 18:45 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年03月05日

胸部レントゲン道場60・各論23・レントゲンで白くなる病態17・べったりと白くなる連続性の陰影から白と黒が混在する陰影へ・線維化とは4・蜂巣肺

肺胞領域は元々含気の多いところですから、肺胞のある部分が縮んで線維化を起こすと…。


23引っ張られることで空間があくところがある.jpg


そこに引っ張られて空間があいてくるところもできてきます。肺胞領域は縮むと同時に膠原線維が増殖してカチカチになり、元々あった一部の空間は周りに引っ張られて大きな孔=嚢胞みたいなものを形成します。


この大きな孔はやがて肉眼で見える程度の大きさになり、まるで蜂の巣を連想させるような孔だらけの構造(=蜂巣肺、蜂窩肺:honeycomb lung)になってきます。


26やがてカチカチの線維化と空間=蜂巣肺に.jpg


蜂巣肺という言葉は肉眼で見えるようになった嚢胞(気腔)に焦点が当てられているようですが、本質的には嚢胞周囲にあるカチカチの線維化が病気の本態です。そう、穴ぼこだらけなんですけど、硬いんです。スイスチーズを思い浮かべましょう。


この線維化のために、本来ぐにゃぐにゃで簡単に伸び縮みをする肺組織が、硬く、動きにくくなってくるのです。機会があれば是非正常肺を触らせて頂きましょう。おそらく皆さんが思っている以上にぐにゃぐにゃで、軽いものです。それが、ゴムのカタマリのようにカチカチになってくるのです。


この蜂巣肺をCTで撮ると、嚢胞部分は空気ですので黒く、線維化部分は白く映ります。それでこのような、黒い丸が積み重なったような病変が見えるのです。


27蜂巣肺.jpg


蜂巣肺の画像的な定義は、そこそこの壁厚の嚢胞が積み重なったもの、となりますので、この画像の感じを味わってください。


ただ、何度も言いますが、この嚢胞の薄い壁が硬いんです…。


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posted by 長尾大志 at 19:03 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年03月04日

胸部レントゲン道場59・各論22・レントゲンで白くなる病態16・べったりと白くなる連続性の陰影から白と黒が混在する陰影へ・線維化とは3・牽引性気管支拡張

肺胞領域は元々含気の多いところですから、肺胞のある部分が縮んで線維化を起こすと…。


23引っ張られることで空間があくところがある.jpg


そこに引っ張られて空間があいてくるところもできてきます。肺胞領域は縮むと同時に膠原線維が増殖してカチカチになり、元々あった一部の空間は周りに引っ張られて大きな孔=嚢胞みたいなものを形成します。


24カチカチの線維化と空間.jpg


また、末梢の細気管支壁が周りの肺胞に引っ張られて拡張してきます。これは気管支そのものに病変が生じて拡張する、気管支拡張症とは全く異なるメカニズム、肺胞の病変に牽引されて生じるものですので、特に牽引性気管支拡張、といいます。


正常CTでは、通常気管支は割と中枢のものしか見えない、末梢は見えないハズですが、牽引性気管支拡張がすりガラス影や線維化内に存在すると、径が大きくなってハッキリと見えるようになってきます。


25牽引性気管支拡張.jpg


拡張した気管支が結構末梢まで、すりガラス影の中に見えますね。


逆にいうと、すりガラス影でも、牽引性気管支拡張が見られたら、そのすりガラスは間質性肺炎のみならず線維化が含まれていることを意味します。つまり、牽引性気管支拡張の存在は、すりガラス影における線維化の存在を意味する、ということです。


単純化すると、

  • すりガラス影のみ:線維化のない間質性肺炎

  • 牽引性気管支拡張のあるすりガラス影:線維化のある間質性肺炎


と考えることができます。


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posted by 長尾大志 at 16:33 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年03月01日

胸部レントゲン道場58・各論21・レントゲンで白くなる病態15・べったりと白くなる連続性の陰影から白と黒が混在する陰影へ・肺の線維化とは2

線維化という現象、とっても理解しにくいと思います。基本的には膠原線維が産生され、臓器が縮んでカチカチになる現象をいいます。


間質性肺炎で炎症部分に繊維芽細胞(fibroblast)がやってきて、膠原線維を産生すると、線維はできたてホヤホヤの段階では水を含んでいますが、やがて乾燥して?カチカチになる。そのときに周りの組織を引っ張り込むようにぎゅっと縮んでくるのです。


21線維化が起こると….jpg


22肺胞領域がぎゅーっと縮んで….jpg


肺胞領域は元々含気の多いところですから、肺胞のある部分が縮んで線維化を起こすとそこに引っ張られて空間があいてくるところもできてきます。すなわち、末梢の細気管支の壁が周りの肺胞に引っ張られて拡張してきたり、肺胞領域に嚢胞みたいなものが形成されてきたりするのです。


23引っ張られることで空間があくところがある.jpg


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posted by 長尾大志 at 16:21 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年02月28日

胸部レントゲン道場57・各論20・レントゲンで白くなる病態14・べったりと白くなる連続性の陰影から白と黒が混在する陰影へ・肺の線維化とは

ここ最近、執筆依頼を頂くことが増えてきました。少し前に頂いた執筆依頼については、そろそろ締め切りも近く、書き始めなくてはなりませんが、とりあえず直近の締め切りモノは出せたので、少しの間レントゲンに戻りたいと思います。


なぜか。国試問題解説、その他の記事を書いていて、特に間質性肺炎や線維化については機序のところを理解していただかないとどうも話がしにくい、ということがあります。ちゃんと説明していないよな〜、とストレスが溜まっていたので、ここらで重い腰を上げ、説明を試みることにしました。




前回シリーズで(だいぶ前…汗)間質性肺炎はすりガラス影を呈する、と申しました。実はこの「間質性肺炎」という状況は間質(肺胞隔壁)の浮腫を見ていることが多いのですが、浮腫というぐらいですから、−原因にもよりますけれども−可逆性があるわけです。


20間質性肺炎の段階では可逆性あり.jpg


原因によって、抗菌薬や抗ウイルス薬であったり、ステロイドであったりするわけですが、そういう治療で元に戻る可能性があるわけですね。


ところが、間質性肺炎ではしばしば、線維化が起こってきます。炎症部分に繊維芽細胞(fibroblast)がやってきて、膠原線維を産生するのです。線維はできたてホヤホヤの段階では水を含んでいますが、やがて乾燥して?カチカチになる。そのときにぎゅっと縮んでくるのです。


ここ、理解しにくいところですから、念入りにやりましょう。


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posted by 長尾大志 at 12:14 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年02月07日

胸部レントゲン道場56・各論19・レントゲンで白くなる病態13・べったりと白くなる連続性の陰影・すりガラス影といえば間質性肺炎

すりガラス影を来す疾患、もう一つは(というかこちらがメインですが)、間質性肺炎という病態です。お、そういえば、この前「間質」について勉強しましたね。ちょっと復習しましょう。



実質が実際にガス交換をしている、肺胞上皮に囲まれた、肺胞腔、空間のことを指すのに対して、肺胞上皮と隣の上皮の間に存在する結合組織、肺胞中隔にあたる場所を間質と呼んでいます。


20実質と間質.jpg


図の青色の部分(実際にはほとんど空気)が実質、オレンジ色の部分が間質です。

広義間質のことを言い出すとややこしいので、ここでは忘れてください。


この間質で炎症が起こるのが間質性肺炎です。通常病変は連続性に生じるので、陰影も連続性に出現します。実質は侵されず空気は残ったままになりますから、そのエリアの密度は浸潤影(辺り一面水浸し、密度≒水)よりも低くなります。


すなわち、肺濃度よりは少し白いけれども、浸潤影ほど真っ白ではない。ちょうど、「元々あるもの(=肺内の血管)の存在は認識できる」程度の白さ=すりガラス影を呈するわけです。


6(狭義の)間質に炎症が起こる.JPG


7狭義の間質に炎症が連続性に起こると….JPG


胸部レントゲン写真、CTでは、このように肺紋理(血管影)を認識できる濃度上昇域として認識できます。


8間質性肺炎=すりガラス影.JPG


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posted by 長尾大志 at 13:24 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年02月06日

胸部レントゲン道場55・各論18・レントゲンで白くなる病態12・べったりと白くなる連続性の陰影・すりガラス影の定義

すりガラスの性質としては、光をある程度通すものの、不透明であるため向こう側がハッキリとは見えない、ということになります。


  • 浴室

  • トイレ

  • 面談室



などにすりガラスを使う目的は、まず第一にプライバシーを守る、というところだと思います。しかし、プライバシーを守るだけであれば、わざわざすりガラスにしなくても、ただの板でも良いわけです。


そこをあえてすりガラスにする理由。
いつも学生さんに尋ねるのですが、正解が出るのは半分ぐらいでしょうか。






一つは採光、という面があります。でもそれだけではない。もう一つ、おそらくもっと大切な理由は何でしょうか。



そうです。

「使用中かどうかが外からわかる」ということです。
(正解でしたか?)


上に挙げたような、プライベートな空間は、むやみやたらにドアを開けられたり(カギがかかっているにしても…)、ノックされたり、ということも避けたいものです。従って、外から一目見て「使用中である」ことがわかる、すりガラスが使われているのです。あと、電気がつけっぱなしかどうかわかる、というのも無視できない理由でしょう。



学生さんの答えで、「あまり見えない方がムード?が出るから」といわれたことがありました…(若いな〜)。あながち的外れではありません!?が、この場合の正解とはなりません。



長々とイランことを書きましたが、ここで本題に戻ると、すりガラスの本質は、

「不透明だけれども、向こう側にあるものの存在は認識できる」

ということではないかと思うのです。



同様に、すりガラス影の性質としては

「白い陰影だけれども、向こう側にあるもの(=血管)の存在は認識できる」

ということになるでしょう。


5すりガラス影では向こうにある血管が見える.jpg


エピソードと共に覚えていただくと、忘れにくいと思います。


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posted by 長尾大志 at 18:34 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年02月05日

胸部レントゲン道場54・各論17・レントゲンで白くなる病態11・べったりと白くなる連続性の陰影・浸潤影とすりガラス影

このように、肺胞が水(濃度のもの)で埋め尽くされると浸潤影を呈するのですが、同じように肺胞がやられる疾患であっても、そこまで濃い陰影にはならない、そういう場合もあるのです。


例えば、肺炎でも、肺胞が水で充満していない状態。もっとも病勢が強い部分の周囲などは、肺胞内の滲出液も満タンではない。そうなると、そのエリアの密度は水濃度(≒1)より低くなり、陰影は白っぽいものの真っ白ではない、薄い白色に見えます。


1このあたりは真っ白ではなく薄い白に見える.JPG


昨日挙げた症例でも、浸潤影(air bronchogramを伴う)の周囲にぼんやりしたエリアが少し見られますね。


2浸潤影の周囲にあるすりガラス影.JPG


こういう、浸潤影ほど真っ白ではないのだけれども、ぼんやりと白い、そういうエリアをすりガラス影と呼びます。


肺炎なんかの場合ではごく一部にしかすりガラス影が見えませんが、肺胞出血や肺胞蛋白症などのように、肺胞腔内を液体が満たすものの目一杯までも充満しない、そういった疾患では広範囲にびまん性にすりガラス影が見られます。


3肺胞出血.JPG


4肺胞蛋白症.JPG


すりガラスとはなにか。


ガラスではあるものの、表面を研磨することで細かい傷をつけ、不透明にしたものです。向こう側があまり見えない、さりとて全く見えない、ということもない、微妙な透過性を持っています。


昨今ではあまりすりガラスが使われるところも少なくなってきているように思いますが、すりガラスが使われている場所として思い当たるのは…


  • 浴室

  • トイレ

  • 面談室



など。


ナゼ、これらの部屋にはすりガラスが使われているのでしょうか。
賢明な読者の方はピンと来るでしょうが、話が脱線します…。


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posted by 長尾大志 at 18:36 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年02月04日

胸部レントゲン道場53・各論16・レントゲンで白くなる病態10・べったりと白くなる連続性の陰影・浸潤影2・air bronchogramの話

とまあ、紆余曲折の末に、air bronchogramの話にたどり着くことができました。


先に書いたように、正常肺のCTを撮ったとき、気管支は壁の厚みが0.5mm以上ある、割と中枢のレベルのものしか見えません。


5正常CT.jpg


上の写真で見えている白い棒状の、枝分かれしている構造物はほとんどが血管、ということです。気管支は中枢のホンの一部しか見えておりません。それは壁厚が0.5mmに満たないからですね。



ここで肺炎球菌肺炎のような浸潤影の成り立ちをおさらいします。戦いの場では肺胞腔内に「浸出液」があふれ出て、戦いが進むにつれ、浸出液内に山ほど微生物、防衛軍の屍骸が累積する。これが「膿」です。


病変は肺胞から肺胞へ、気道、Kohn孔を通して波及し、連続する病変が生じます。肺胞1個1個を拡大して見てみると…


2Kohn孔.JPG


こうやって連続性に肺胞が水浸しになることで、浸潤影が生じます。浸潤影は元々空気のあった肺胞腔が水浸しになってできた陰影、と考えて頂くと理解しやすいと思います。スポンジに水が染みこんだ感じでしょうか。


3浸潤影の模式図.JPG


で、肺炎球菌は気管支エリアにはあまり興味がなく、気管支内には病変を作りません。それで、気管支内には空気が残ることになります。


すると、周りの肺胞領域(水浸し)との間に逆のコントラストがついて…


径が0.5mm以上ある(割と末梢までの)気管支は可視化してくるわけです。


12径が0.5mm以上の気管支は見える.jpg


それで、あたかも空気によって気管支が(逆に)造影されたかのように見える、air bronchogramという所見が得られます。胸部レントゲン写真でもCTでも、白くべったりした陰影の中に黒くて細い帯(太い線?)として見られます。


13空気による気管支造影=air bronchogram.jpg


目をこらしてみてください。…PC上では見にくいでしょうか。CTも併せてご覧頂きましょう。


14空気による気管支造影=air bronchogram.jpg


このair bronchogramがあると何を意味するか。まず陰影が肺内にあることがわかります。それも、肺胞内に水が滲出していて、気管支内には空気が残っている、そんなことがわかるのです。


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posted by 長尾大志 at 15:45 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年02月01日

胸部レントゲン道場52・CT総論9・で、これらの構造物が侵されるとどうなるか・カーリーのBライン(Kerley's B line)

長々と肺の「構造、構成物」について述べてきましたが、これは全て、「異常影の成り立ちを理解する」ために必要な知識なのです。今日からはいよいよ「ナゼ異常影が生じるのか」を考えます。


まずはわかりやすい例として、いつも学生さんにお話ししている「静脈の陰影」。


17小葉中心の肺動脈と小葉辺縁の肺静脈.jpg


小葉辺縁の肺静脈、端の部分(肺の一番端にあたります)での太さは、0.5mmより細くなっています。従って、肉眼(分解能0.5mm)やCT(分解能0.5mm)では見えないということになります。


23肺静脈の端はXPでもCTでも見えない.jpg


もう少し中枢側の肺静脈や、肺動脈は見えますが、肺の端に近い部分は、正常では何も見えないのです。


ここで、肺静脈、およびその周囲の間質に水が溜まってふくれあがる疾患=うっ血性心不全を考えてみましょう。特に肺の下の方、肺底区を中心に、「間質」に水が溜まります…。


この場合の間質とは、狭義も広義もどちらも指すのですが、特に広義間質(動静脈・気管支周囲の結合組織)に焦点をあてます。


下肺中心の静脈内、あるいは周囲の広義間質に水が溜まって肥厚(拡大)すると…。


24肺静脈、および(広義)間質が拡大する.jpg


通常目立った構造物が見られない肺の最外層で、広義間質が目立ってきます。最外層の広義間質は肺の外縁と垂直、つまり水平に走っています。また、小葉の大きさは1cm程度なので肺静脈の間隔も1cm程度になります。


以上から、肺の下部、最外層に、1cm程度の間隔で並ぶ、水平な線=Kerley’s B lineが生じてくるわけです。

通常水は左右どちらにも溜まりますから、左右両側に見られます。


25肺下部の間質が肥厚= Kerley’s B line.jpg


実例をご覧ください。うっ血性心不全症例です。


26 Kerley’s B line実例.jpg


心拡大、肺紋理の増強(ぷちバタフライ?)、Kerley’s B line、と、いずれも心不全を示唆する所見ですね。


27 Kerley’s B line実例.jpg


CTでは、肺の最外層に限らず、やたらと線が増えているのが目立ちます(黄矢印)。この線が広義間質にあたります。


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posted by 長尾大志 at 15:45 | Comment(2) | 胸部X線道場

2013年01月31日

胸部レントゲン道場51・CT総論8・で、これらの構造物が侵されるとどうなるか・間質と実質

で、これらの構造物が侵されるとどうなるか…を書きかけたのですが、間質の説明をしていないことに気づきました。ここでしておきましょう。


本来の「間質」とは、「実質」に対する言葉です。


実質とは実際にガス交換をしている「場」のことですから、肺胞上皮に囲まれた、肺胞腔、空間のことです。
そして、肺胞上皮と隣の上皮の間に存在する結合組織、肺胞中隔にあたる場所を間質と呼んでいます。


20実質と間質.jpg


図の青色の部分(実際にはほとんど空気)が実質、オレンジ色の部分が間質です。


…なのですが、ややこしいことに、肺にはもう一つ「間質」と呼ばれる場所があります。それは、肺動脈・肺動脈や気管支の周囲、胸膜にある結合組織で、この場所は本来の(上で書いた)間質とは違う、広義の間質、すなわち「広義間質」と呼び習わされています。


21肺動静脈・気管支周囲も「(広義)間質」.jpg


ですから、「間質」という言葉を使われる際には、狭義の間質なのか、広義の間質なのかを必ず意識しておかないと、全然違うことを言ってしまうことになりかねないのです。


22「狭義の間質」と「(広義)間質」.jpg


普通は、狭義の間質を単に「間質」と呼び、広義の方を「広義間質」と呼んで区別しています。


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posted by 長尾大志 at 19:11 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月30日

胸部レントゲン道場50・CT総論7・正常CTで見えるもの・肺の末梢における構造たち・小葉構造5・リンパ系

肺動脈+(細)気管支は小葉中心部に分布し、肺静脈は小葉辺縁部に分布します。


17小葉中心の肺動脈と小葉辺縁の肺静脈.jpg


一方、リンパ管はどこに分布しているかというと、血管系と比べて非常に微細な網目状の構造物として、太い脈管系(要するに血管や気管支)の周りを取り巻くように分布している、といいます。


イメージとしては、

XXXXXXXXXXXX
XXXXXXXXXXXX


こんな感じで網目状に巻き付いているイメージですね。


18気管支・血管・肺静脈の周囲にリンパ管.jpg


こんな感じになります。


リンパのおおまかな流れとしては、肺の一番外側から肺門に向かって、放射状(の逆向き)に流れて肺門に集まると理解しましょう。


19リンパの流れ.jpg


上の図では太い矢印で書いてありますが、実際は細い細い網の目状のリンパ管があって、その中をリンパ液がゆっくりゆっくり流れている、こういう感じです。


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posted by 長尾大志 at 16:06 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月29日

胸部レントゲン道場49・CT総論6・正常CTで見えるもの・肺の末梢における構造たち・小葉構造4・肺静脈

空気は気管支を行ったり来たりできるので、気管支を通って入った空気は、肺胞で行き止まりとなり、また気管支を通って出て行きます。一方、血液は血管内を行ったり来たりはできません。基本的に一方通行であります。


12小葉と肺動脈.jpg


肺動脈は小葉の中心部で終わっている。というか、そこから周りの肺胞(周囲の毛細血管)に静脈血が散らばっていきます。肺胞周囲の毛細血管を通過する過程で、静脈血は空気と触れてガス交換を行い、酸素化されて動脈血になるのです。


15静脈血が肺胞へ.jpg


ここで考えてください。じゃあ、静脈はどこにあるのが一番理にかなっているか。





学生さんにいつも尋ねるのですが、結構正解が出ます。静脈は小葉を囲う隔壁(小葉の辺縁部)内にあるのが理にかなっていますね。


16小葉中心の肺動脈から小葉辺縁の肺静脈へ.jpg


小葉中心の肺動脈から散らばった静脈血は、肺胞周囲の毛細血管を通過する過程で、空気と触れてガス交換を行い、酸素化されて動脈血になった後に小葉辺縁の肺静脈に入り、左房に還っていくのです。


ちなみに小葉辺縁の肺静脈、端の部分(肺の端にあたります)での太さは、0.5mmより細くなっています。この0.5mm内外が、実はレントゲンやCTを見る上で、後ほど大いにものを言うので、意識しておいてください。


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posted by 長尾大志 at 19:24 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月28日

胸部レントゲン道場48・CT総論5・正常CTで見えるもの・肺の末梢における構造たち・小葉構造3

ということで、ようやくA-aDO2の校正も終わり、CT総論に戻らせて頂きます。


自分で横道にそれておいていうのもナンですが、小葉構造を忘れた方はもう一度思い出しましょう。


9小葉構造.jpg


小葉(上図の黄色で囲まれた、1辺1cm程度の多角形の領域)を拡大してみましょう。
細気管支の端っこ(径が0.5mm)と、伴走する肺動脈(径が0.5mm)、その細気管支が支配するひとかたまりの肺胞(大きさ0.2mm)が含まれています。


12小葉と肺動脈.jpg


吸気の時は、気管支を通じて空気が入ってきて、肺胞に散らばり…


13小葉息を吸うと.jpg


ガス交換の後に、同じルートを帰って行きます。


14小葉息を吐くと.jpg


一方、血液は違うルートをたどることになるのですね。


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posted by 長尾大志 at 13:02 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月22日

胸部レントゲン道場47・CT総論4・正常CTで見えるもの・肺の末梢における構造たち・小葉構造2

小葉構造に着目します。


9小葉構造.jpg


まずは、小葉(上図の黄色で囲まれた多角形の領域)を拡大してみましょう。
細気管支の端っこと、その細気管支が支配するひとかたまりの肺胞が含まれています。


10小葉拡大図.jpg


小葉の1辺は1cm程度で、細気管支の端っこは、径が0.5mm、そして肺胞は大きさ0.2mm。略図なので縮尺が少しおかしいですが(少し肺胞がデカ過ぎるのですが…汗)、理解しやすいようにこういう表示にしておきます。


11小葉拡大図.jpg


気管支にはずっと肺動脈が伴走してきています。肺動脈には静脈血が流れていますから、青く塗ってあります。そして、径は気管支と同じ、故に肺動脈の端っこは0.5mm。


12小葉と肺動脈.jpg


…てところで図を作るのに力尽きました。明日に続きます。


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posted by 長尾大志 at 18:15 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月21日

胸部レントゲン道場46・CT総論3・正常CTで見えるもの・肺の末梢における構造たち・小葉構造

今日からのお話は厳密に書くとかなりややこしくなるため、まずは「わかりやすさ、理解しやすさ」を最優先に、大胆に細かいところを端折ってお送りします。また、病理画像やシェーマ図も持ち合わせがありませんので、簡単な図になってしまいます。


ですので、もっと深く小葉構造について勉強されたり、HRCTの教科書を読まれたりする方は、もうそちらで理解してください(開き直り)。




正常の胸部レントゲン写真やCT上で見える肺の構造物は、大きさ(太さ・厚さ)が0.5mm以上である、割と末梢までの血管と中枢付近の気管支であります。


気管支は肺門で肺内に入る、そのときから肺動脈と伴走します。そして分岐するときも同じタイミングで分岐し、基本、最後まで伴走しています。


最後…ってどの辺かというと、大体肺の一番外から5mmほど入ったところです。


7気管支+肺動脈の最後はこの辺.jpg


その「最後」の気管支と肺動脈が支配しているひとかたまりの肺胞を小葉といいます。

正式には「二次小葉」と言いますが、ここでは単に「小葉」としておきます。
ちなみに小葉に対する「大葉」は、例の上葉・中葉・下葉です。


小葉とはある程度の数の肺胞が集まった、肺の構成単位です。大体1辺が1cm程度の多面体(CTで見ると多角形)で、中心部に細気管支と伴走する肺動脈があります。周囲は小葉間隔壁と呼ばれる薄い壁で境されています。


8小葉構造.jpg


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posted by 長尾大志 at 18:41 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月18日

胸部レントゲン道場45・CT総論2・正常CTで見えるもの・肺の末梢における構造たち

これからのお話は、本来組織標本と対応させてこそ理解できるものですが、残念ながら手持ちの組織標本がないため、イラストで代用させて頂くことになりそうな予感がいたします。



血管や気管支は、肺門部で最も太く、1cm以上ありますが、そこから20回近く分岐を繰り返して、細気管支と呼ばれる領域になって参りますと、径が0.5mm程度になります。


4肺内血管(気管支も)の太さ.jpg


先に述べましたとおり、正常の胸部レントゲン写真やCT上で見える肺の構造物は、大きさ(太さ・厚さ)が0.5mm以上である、血管(割と末梢まで)と気管支(中枢付近)であります。


5正常CT.jpg


上の写真で見えている白い棒状の、枝分かれしている構造物はほとんどが血管、ということです。気管支は中枢のホンの一部しか見えておりません。


6見える気管支はこれだけ.jpg


これが正常CT像です。


さまざまな病気になり、さまざまな肺内の構造物

  • 肺胞

  • 気管支

  • 血管(動静脈)

  • リンパ管

  • (広義の)間質


などがやられて参りますと、その構造物が

  • 空気濃度に近くなって黒っぽく写ったり

  • 水濃度に近くなって白っぽく写ったり


します。


肺胞や末梢の気管支、リンパ管は正常では(小さすぎて、細すぎて)見えませんが、病気になると水成分が増えたり結節ができたり、さまざまな機序で見える大きさになってきます。つまり、病気になることで可視化する、そのパターンを捕まえる作業が必要になるのです。


何が可視化したか、これを理解すれば陰影の成り立ちは理解できます。


そのためには可視化の機序を知っておいて頂く必要があります。なかなか、つらいところかもしれませんが、しばらくお付き合いください。


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posted by 長尾大志 at 18:52 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月17日

胸部レントゲン道場44・CT総論1・正常CTで見えるもの

胸部レントゲンやCTの分解能は、およそ人間の肉眼の分解能である0.5mmですから、0.5mm以上の大きさのものが「見える」はずです。


肺の構造物の中で、0.5mm以上の大きさのものは血管と気管支ですが、血管の中には血液が通っていて、気管支の中には空気が通っています。


1血管と気管支の見え方.JPG


そのため、血管は1本の棒に見えますが、気管支は平行に走る2本の(細い)棒として見えるはずです。


ここで考えてください。径が0.5mmの意味を。


血管径が0.5mmの場合、その血管は0.5mmの棒状構造物として、胸部レントゲン写真やCT上で見えるはずですね。


2血管の見え方.JPG


一方、径が0.5mmの気管支はどうでしょうか。その場合、気管支壁は0.5mmよりも随分薄いはず。そのような構造物は胸部レントゲン写真やCT上では見えません。気管支(の壁)が見えるようになるのは、壁の厚さが0.5mm以上なければならないのです。


3気管支の見え方.JPG


壁の厚さが0.5mm以上、ということは、相当中枢に近い、太い気管支であります。そういうレベルの気管支しか胸部レントゲン写真やCT上で見えない、ということになります。


まとめると、正常の胸部レントゲン写真やCT上で見える肺の構造物は、血管(割と末梢まで)と気管支(中枢付近)である、ということになります。


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posted by 長尾大志 at 10:59 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月16日

胸部レントゲン道場43・各論16・レントゲンで白くなる病態10・べったりと白くなる連続性の陰影・浸潤影2・air bronchogramの話をする前に

浸潤影と来れば、air bronchogramを採り上げないわけには参りません。が、その話をしようとすると、前提条件となる基本事項をお話ししなくてはなりません。


これ、もっと最初のうちにお話ししておくべきだったような気がいたしますが…。



胸部レントゲンやCTの分解能は、およそ人間の肉眼の分解能である0.5mmです。従って、胸部レントゲン写真やCTを撮影した場合、0.5mm以上の大きさのものが「目に見える」はずです。


肺を構成する成分には、次のようなものがあります。


  • 肺胞

  • 気管支

  • 血管(動静脈)

  • リンパ管

  • (広義の)間質



このうち0.5mm以上、という条件を満たすものは実は少ないのですね。


  • 肺胞:径0.2mm

  • 気管支:径0.5mm〜2cm

  • 血管(動静脈):径0.5mm〜2cm

  • リンパ管:0.5mmより細い

  • (広義の)間質:血管や気管支などよりもずっと薄い



要は、血管と気管支だけなのです。ところで、血管の中には血液が通っていますが、気管支の中には空気が通っていますね。


1血管と気管支の見え方.JPG


すると、血管は血管壁(水濃度に近い)と血液(水濃度)が一体化して見えますが…。


2血管の見え方.JPG


気管支は中を通っている空気を挟んで、気管支壁が上下(?)2本、平行に走っているのが見えるのです。


3気管支の見え方.JPG


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posted by 長尾大志 at 20:06 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月15日

胸部レントゲン道場42・各論15・レントゲンで白くなる病態9・べったりと白くなる連続性の陰影・浸潤影1

胸部レントゲン写真でべったりと白くなる病変、胸水(腫瘤)と無気肺に引き続いて浸潤影(consolidation)を採り上げます。総論のところでも述べたように、病変部が大きくなっているのか、小さくなっているのか、大きさが変わらないのか。これが病変部の性質を推測する手がかりになります。


  • 腫瘤は辺縁が外向きに凸

  • 無気肺は辺縁が内向きに凸

  • それに対して、浸潤影は辺縁がまっすぐで大きさに変動がない



XP (95).jpg


XP (96).jpg


XP (97).jpg


浸潤影を作ってくる疾患は、多くの場合、肺炎です。原因となる微生物が肺胞領域で増殖、それに対して防衛軍である好中球、リンパ球、マクロファージなどが局所に遊走してきまして、戦いが始まる。その戦いの場を「炎症」と呼びます。


1肺の模式図.JPG


戦いの場では肺胞腔内に「浸出液」があふれ出ます。そして戦いが進むにつれ、浸出液内に山ほど微生物、防衛軍の屍骸が累積する。これが「膿」です。膿の見た目が白く濁っていたことから、「白血球」の名がついたことはご存じでしょう。


病変は肺胞から肺胞へ、気道、Kohn孔を通して波及し、連続する病変が生じます。肺胞1個1個を拡大して見てみると…


2Kohn孔.JPG


こうやって連続性に肺胞が水浸しになることで、浸潤影が生じます。浸潤影は元々空気のあった肺胞腔が水浸しになってできた陰影、と考えて頂くと理解しやすいと思います。スポンジに水が染みこんだだけ、という感じでしょうか。


3浸潤影の模式図.JPG


浸潤影は肺胞の構造そのものを改変するわけではなく、肺胞は伸びも縮みもしないため、辺縁は「まっすぐ」に見えるのです。



厳密に言うと、肺炎でも病変が膨張というか拡張する場合もあるのですが、ここでは理解のために、まっすぐとしておきます


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posted by 長尾大志 at 18:56 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月14日

胸部レントゲン道場41・各論14・レントゲンで白くなる病態8・べったりと白くなる連続性の陰影・無気肺3(今日こそ)

そういうわけで、無気肺の特徴は「しぼむ」「縦隔、横隔膜などを引っ張り込む」ということです。


例えば今日日、大学にやってくる症例で一側肺が真っ白になるような状況は胸水か無気肺が多いのですが、胸水か無気肺かでは、次のactionが全く異なるわけです。


  • 胸水だったら、胸膜疾患であるため、次は胸膜側から(つまり、経皮的な)アプローチになる。

  • 具体的には、胸腔穿刺による胸水採取、胸膜生検、胸腔鏡

  • 無気肺の場合、気管支の病変が想定されるため、次は気管支側からのアプローチ。

  • すなわち、気管支鏡を施行する必要があるわけです。



ということで、一発でこの二つを見分けるために、縦隔(気管)の偏位を確認しましょう。


33縦隔(気管)の偏位を確認.jpg


もうおわかりですね。上の2枚、いずれも左に病変がありますが、このうち、左は気管が左にshiftしていますが、右は右にshiftしています。


34縦隔(気管)の偏位.jpg


左は無気肺、すなわち気管支病変、右は胸水(あるいは腫瘤)ということは、ここまで読んできていただければ明らかですね。


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posted by 長尾大志 at 22:58 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月13日

今日の症例・無気肺で肺が縮むということ3

一昨日の今日の症例、まだ引っ張ります。


できたてホヤホヤの無気肺を、できたてホヤホヤとして見る機会、そうないように思います。是非ご覧ください。


29できたてホヤホヤの無気肺.JPG


30できたてホヤホヤの無気肺.JPG


造影されたリンパ節(黄矢印)で気管支が閉塞したことで、赤線で囲まれた領域に無気肺が生じています。


31できたてホヤホヤの無気肺.JPG


32できたてホヤホヤの無気肺.JPG


冠状断では、横隔膜の挙上(黄矢印)も認識できますね。


造影CTでは、


  • 血管(白に近い)

  • 肺実質(軟部濃度)
    そして、

  • 気管支(黒に近いグレー)



が認識できます。時間が経つと、血流が減り、肺実質が器質化して、だんだん均一になってきますが、できたてホヤホヤですとまだ血管もハッキリ、そして気管支もしっかり見えます。よーく見ておいてください。


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posted by 長尾大志 at 23:30 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月12日

今日の症例・無気肺で肺が縮むということ2

4日後のCTでは腫瘤が消失して見えますが、その代わりに新しい影が見えるようになっていますね(赤線)。


25_4日後のCT.JPG


この陰影は真っ白で内向きに凸、すなわち無気肺です。
初診時のCTで、右肺門におそらくリンパ節転移による腫瘤が見られます(黄矢印)。
そのため、左で見える底区枝(緑矢印)が右では見られず、閉塞し(かかっ)ていることがわかります。


26リンパ節転移による腫瘤.JPG


そして4日後には、右下葉の無気肺が完成。そのために、下葉は大幅に縮むことになります(下図)。


27下葉はこんなに縮んだ.JPG


縮んだ下葉に引っ張り込まれる形で、原発の腫瘤は後ろに移動します。そして無気肺部分と一体化したわけです。下図の赤丸部分が無気肺と一体化した原発腫瘤で、少し空洞が見られるのが原発の名残、というわけですね。


28原発巣は引っ張られて後ろへ.JPG


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posted by 長尾大志 at 22:11 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月11日

今日の症例・無気肺で肺が縮むということ

昨日の記事を書いていたら、思い出した症例がありました。
随分前の、でも印象深い症例。


電子カルテになる前なので、細けえことはさておき。
非小細胞肺癌(腺癌)症例です。


初診時のCTをご覧ください。


23初診時のCT.jpg


左はリンパ節転移、右が(少し空洞のある)原発巣です。
4日後、今度は造影CTを取りに来られました。


24 4日目のCT.jpg


あれれ…?
同じスライスで見ているのに、原発の腫瘤がなくなった?


さて、何が起こったのでしょうか。


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posted by 長尾大志 at 16:33 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月10日

胸部レントゲン道場41・各論14・レントゲンで白くなる病態8・べったりと白くなる連続性の陰影・無気肺3(なんだけど気管の偏位について触れておかねば2)

気管が左に偏位している場合は、


8気管が左に偏位.JPG


その原因は右の逆で、


  • 右から何かが圧しているか

  • 左に何かが引っ張っているか



のどちらかです。


15圧されるか引っ張られるか.jpg


てことは、気管の左右を見て、どちらかが白ければ、その白いところが原因で、


  • 右が白ければ、圧しているので腫瘤

  • 左が白ければ、引っ張っているので無気肺



であるとわかります。


例えば、こちらの症例では気管が左に偏位していますが…おわかりですね?


16気管が偏位している理由は.JPG


このように。


17気管が偏位している理由は.JPG


左右どちらにその原因があるでしょうか。
ポリクリ学生さんに聞いていると、1班4〜6人いますが、そのうち数人はわかるようです。


18気管の左が白い.JPG


そうです。左側ですね。大動脈弓とシルエット陰性の陰影が見られます。


19気管の左に無気肺があり、気管を左に引っ張る.JPG


気管の左に無気肺があり、気管を左に引っ張っていると考えられます。
この症例は気管支結核でした。治療経過を見ると…。


20肺結核治療後、気管の偏位は解消.JPG


気管の左にあった白い陰影の消失と共に、気管の偏位も解消されています。
CTでは、左S3の無気肺であったことがわかります。


21肺結核治療後、気管の偏位は解消.JPG


CTを見ると、無気肺でかなり肺が縮んでいることがわかります。


22元々のS3が無気肺になって縮む.JPG


こんなに縮むんですね。


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posted by 長尾大志 at 11:50 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月09日

胸部レントゲン道場41・各論14・レントゲンで白くなる病態8・べったりと白くなる連続性の陰影・無気肺3(なんだけど気管の偏位について触れておかねば)

偏位のことを書いたら、言うとかなあかんことがありました。


気管が右に偏位している場合、


7気管が右に偏位.JPG


その原因は、


  • 左から何かが圧しているか

  • 右に何かが引っ張っているか



のどちらか。


14圧されるか引っ張られるか.jpg


てことは、気管の左右を見て、どちらかが白ければ、その白いところが原因で、


  • 左が白ければ、圧しているので腫瘤

  • 右が白ければ、引っ張っているので無気肺



であるとわかります。


例えば、こちらの症例では気管が右に偏位していますが…



9気管が偏位している理由は.JPG


気管の左あたりが妙に白いですね。


10気管が偏位している理由.JPG


気管の左に腫瘤があって、そいつが圧しているわけです。


11気管の左に腫瘤があり、気管を右に圧している.JPG


そんなに白くないじゃん、と思われた方もおられるかもしれません。
この症例は小細胞肺癌だったのですが、治療後の写真と比較してみましょう。


12化学放射線療法で気管の偏位も戻る.JPG


黄矢印に注目。白い腫瘤影が縮小して、シルエットサイン陽性であった大動脈弓の上縁が見えるようになってきています。気管の偏位も解消されつつありますね。


こうやって比較をすることで、左の画像で気管が圧されている様子がよくわかると思います。小細胞肺癌は陰影の変化が早く起こってくるので、初学者の先生方が「陰影の変化」を掴むのに適していると言えます。


CTでも、大血管を巻き込む腫瘤に気管が圧排されている様子、治療後に腫瘤が縮小した様子がよくわかります。


13化学放射線療法で気管の偏位も戻る.JPG


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posted by 長尾大志 at 19:03 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月08日

胸部レントゲン道場40・各論13・レントゲンで白くなる病態7・べったりと白くなる連続性の陰影・無気肺2・右上葉無気肺

例えば肺癌によって気道が閉鎖して、それより遠位の空気が吸収される例を考えましょう。


右上葉枝が閉鎖したとします(左図)。
元々の上葉は、元々の上葉は、おおよそ、右図の緑色の範囲を占めています。


4右上葉枝が閉塞.JPG


右上葉内の空気は、上葉枝の閉鎖後肺胞壁に存在する豊富な毛細血管から吸収されていきます。そうすると、上葉はだんだんしぼんできます。


その際のしぼみ方は、気道の閉鎖した箇所を頂点とした扇形になります(右図)。扇が折りたたまれるイメージを持って頂くと良いでしょう。


5右上葉がしぼむ=無気肺.JPG


ここで昨日の記事を思い出していただきましょう。無気肺はしぼむ。しぼんで周囲の構造物を引っ張り込み、辺縁が内向きに凸となるのでしたね。辺縁が内向きに凸、というのは、次の図で左のようになることです。


6無気肺は内向きに凸.JPG


左の図では無気肺の縦隔側に空気が入っているようですが、ちゃんとした?無気肺なら、縦隔を引っ張り込んで右のように気管が右に偏位するはずです(右図)。


あ…


右に偏位って、どういうことだかご存じですか?
書いてなかったような気がする…検索し得た範囲では書いてないですね( ̄▽ ̄;)。
書いておきましょう。


右に偏位とは、元々の気管が走っている経路よりも(患者さんの)右側へはみ出すこと。


7気管が右に偏位.JPG


その反対が左に偏位です。


8気管が左に偏位.JPG


今日はこれにて。


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posted by 長尾大志 at 18:55 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月07日

胸部レントゲン道場39・各論12・レントゲンで白くなる病態6・べったりと白くなる連続性の陰影・無気肺1

それでは次に無気肺(atelectasis)を採り上げます。まずは言葉の定義から。


以前、取り急ぎ「気胸と違って空気漏れを伴うことなく、肺内の空気がなくなって肺がぺちゃんこになった状態」と書きました。あながち的外れではありませんが、もう少し正確に書くために、Fleischner Society: glossary of terms for thoracic imaging.(Radiology 2008)を珍しく引用しましょう。


肺のすべて、または一部がしぼむこと。


う〜んシンプル。さらに引き続いて、


もっともよくある原因の一つは気道の閉鎖(例:気管支内新生物)による遠位の空気の吸収である。同義語のcollapseは、特に程度が強かったり、肺濃度が明らかに上昇しているときに、atelectasisに替わってしばしば用いられる。

レントゲンとCT:病変部の、濃度上昇に伴う容量減少が見られる。しばしば、葉間裂、気管支、血管、横隔膜、心臓、縦隔の位置異常を伴う。

(引用ここまで)


通常単に「無気肺」という時には、上述の機序のごとく、

気道の閉鎖によってそこより末梢の肺に存在する空気が吸収され、肺のすべて、または一部がしぼんだ状態

を指します。空気の出入りがなくなると、肺胞の周りに豊富にある毛細血管からどんどん空気が吸収されて、やがてなくなってしまうのです。



胸水のところでも書きましたが、気道が閉鎖する、という機序ではなく、胸水に圧されて生じた無気肺のことを特に圧迫性無気肺(compression atelectasis)とか、受動無気肺(passive atelectasis)とかいいます。「普通の」無気肺とは機序が異なるための特別扱いですね。



話は普通の無気肺に戻りますが、この無気肺、「しぼむ」という言葉がキーワードです。元の大きさよりも、肺が縮む、小さくなるのです。その結果、無気肺になったエリアは周囲の構造物(葉間裂、気管支、血管、横隔膜、心臓、縦隔など)を引っ張り込みます。


周りを引っ張り込む病変は、辺縁が内向きに凸となります。無気肺以外に線維化病変も周りを引っ張り込みますが、下の図の通り、いかにも引っ張られている感が出ていますね。


3無気肺のエリアは辺縁が内向きに凸.JPG


そして、空気が抜けてしまうわけですから、そのエリアは真っ白になります(線維化病変でも辺縁が内向きに凸になりますが、病変のエリアがすりガラス影であったり、網状影であったりするので鑑別可能です)。


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posted by 長尾大志 at 18:28 | Comment(0) | 胸部X線道場

2013年01月04日

胸部レントゲン道場38・各論11・レントゲンで白くなる病態5・べったりと白くなる連続性の陰影・腫瘤影

ということで、仕事始めの方も多いかと思いますので、今日は平常運転で参りましょう。


レントゲンでべったりと白くなる連続性の陰影、胸水の次は腫瘤影です。


そもそも腫瘤影とは、カタマリを表す言葉。目で見てカタマリに見えたら、それは腫瘤と呼んでいいでしょう。具体的には、径が3cm以上の大きさの陰影を指すことが多いようです。


腫瘤影を形作る病変は、腫瘍のようにモコモコと大きくなる、外へ外へと進出していく性質を持つ疾患であることから、陰影の特徴としては、


辺縁が外に飛び出している=外向きに凸である


ことがポイントになります。


1腫瘤=外向きに凸.JPG


2腫瘤実例.JPG


もちろんそういう病変は腫瘍が多いのですが、結核や非結核性抗酸菌のように、腫瘤を形成する感染症もこういう陰影を作ります。


腫瘤が大きくなってきて、一側肺の大部分を占めるようになってくると、腫瘤は当然、縦隔を圧してきます。そこで縦隔、気管が健側にshiftするようになってきます。


11左側は真っ白、そして縦隔は.JPG


…というのが原理的には正しいのですが、実際、こういう病変を見ることはほとんどありません。上の写真も、実は胸水によるものであったりします。ナゼか。


それは、一側を占めるような巨大な腫瘍が存在するような症例が少ないからであります。


通常、悪性腫瘍はある程度の大きさになると、何らかの症状が出てきます。肺癌であれば呼吸器症状が出ますし、そうでなくても腫瘍が栄養を奪い取り、「だるい、しんどい」「微熱」「苦しい」というような症状が見られたり、果ては悪疫質となり致命的になったりすることもあります。


特に一側胸郭を占めるような巨大な腫瘍になると、それを持った状態で生存すること自体が困難になるのです。ですから時々見かける巨大腫瘤は、肺癌ではなくて大量の胸水であったり、腫瘤であっても良性や縦隔腫瘍などであったり、というケースが多いのですね。

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posted by 長尾大志 at 16:36 | Comment(0) | 胸部X線道場

2012年12月28日

胸部レントゲン道場37・各論10・レントゲンで白くなる病態4・べったりと白くなる連続性の陰影・胸水3・縦隔の偏位と肺水腫

胸水がもっと増えて、満タンに近づいてくると、胸水の重みで縦隔が圧され、健側にshiftします。


11左側は真っ白、そして縦隔は.JPG


この症例では、見事に縦隔、気管が健側の右側に圧されていますね。


12胸水貯留によって縦隔、気管が圧排.JPG


このような縦隔の動きが、同じような「白い」陰影である浸潤影や無気肺との最大の違いです。縦隔の動きは、さまざまなことを物語るのですね。



●胸水と肺水腫(学生さんからの質問)

胸水の話をすると、学生さんなどからは「それって、肺水腫とは違うんですか?」みたいなことを聞かれます。


肺に水が溜まった、というフレーズから、肺水腫を連想されるんですね。
これは全然違う病態です。図をご覧ください。


13袋に入ったスポンジと容れ物.JPG


袋(臓側胸膜)に包まれたスポンジ(肺)と、容れ物(胸郭・壁側胸膜=赤線)があります。容れ物に袋入りスポンジが入ったものが普段の状態ですね。


14臓側胸膜に包まれた肺が胸郭内に存在.JPG


胸水、というのは、袋の外(つまり肺・臓側胸膜の外)、容れ物の中(つまり胸郭内)に水が溜まることです。


15胸水=肺の外に存在する水.JPG


それに対して、肺水腫は肺の中に水があふれ出すことです。スポンジが水浸しになっている様子を思い浮かべてください。


16肺水腫=肺の中が水浸し.JPG




あと、胸水でニボーが見える病態について書こうかと思いましたら、既に以前きちんと書いてありました(忘れてた…)。ので、そちらを参照ください。


こんなところで、胸水の解説を終わろうと思います。今年の「お勉強」はここまでとしますが、毎日一応更新はしていきますので、よろしければのぞいてみてください。


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posted by 長尾大志 at 16:30 | Comment(0) | 胸部X線道場

2012年12月27日

胸部レントゲン道場36・各論9・レントゲンで白くなる病態3・べったりと白くなる連続性の陰影・胸水2

そんな胸水ですが、たっぷり溜まって参りますとどんどん水面が上昇してきます。水のある部分は白くなっていますので、白い範囲が下から上がってくる感じです。


8胸水が増加してくると.JPG


胸水が増えてくると、主に胸水に接する部分の肺が圧されてぺちゃんこになります。ぺちゃんこ、ということは空気が抜けることですから、そのエリアは無気肺になるわけです。


9胸水に圧されてつぶれた肺.JPG


そういえばこれまでにも何度か無気肺無気肺と書いてきましたが、きっちりと定義を書いていませんでしたねー。近々書きましょう。取り急ぎ、「気胸と違って空気漏れを伴うことなく、肺内の空気がなくなって肺がぺちゃんこになった状態」とでもいいましょうか。


このように胸水に圧されて生じた無気肺のことを圧迫性無気肺(compression atelectasis)とか、受動無気肺(passive atelectasis)とかいいます。いずれにしても、つぶれた肺にはほとんど空気は入っていませんから、胸部レントゲン写真では隣接する水と区別は付きません。


CTだと水と軟部影、ということで少し濃度が異なり、違いがわかります。


10CTによる圧迫性無気肺部と胸水の区別.JPG


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posted by 長尾大志 at 19:12 | Comment(0) | 胸部X線道場

2012年12月26日

胸部レントゲン道場35・各論8・レントゲンで白くなる病態2・べったりと白くなる連続性の陰影・胸水1

胸水とは、胸腔内、すなわち肺の外にたまった水のことです。健常者でも胸腔内には潤滑油として胸水が5〜10ml程度存在しています(胸水がないと臓側胸膜と壁側胸膜は密着し、摩擦が強くて動かなくなってしまいます…)。


胸水の産生、吸収バランスが崩れて産生が増加(これがほとんど)、または吸収が減少すると胸水の量が増加してきます。


水は当然水濃度なので、X線写真で真っ白に見えます。また、水は下にたまりますが、毛細管現象によって臓側胸膜と壁側胸膜の間をつつーっと上がってきます。


1毛細管現象.JPG


2水は引っ張り上げられる.JPG


肺はこの辺まであるわけですが…


3肺はここまで.JPG


胸水は下から溜まってきます。
こんな感じですね。


4胸水は下から溜まってくる.JPG


ですから、胸水が少ないうちは横隔膜の影に隠れて余り見えませんが、およそ300mlを超えてくると肋横角(costo-phrenic angle:CP angle)付近に円弧として見えるようになってくるのです。


5胸水は肋横角上に顔を出してくる.JPG


この状況を肋横角が鈍(CP angle dull)などと言いますが、この時点で既に結構水の量が多いことに気をつけましょう。


6肋横角が鈍.JPG


これが側面像であれば25ml程度、側臥位であれば10ml程度の肺の外に水が溜まってくるとわかりますので、正面像は「少量胸水の発見には向かない」、ということを知っておいてください。


7側面像の肋横角.JPG


この症例では、左胸水(赤矢印)は正面像ではほとんどわからないものの、側面像では丸くなっているのがわかりますね。


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posted by 長尾大志 at 20:52 | Comment(0) | 胸部X線道場

2012年12月25日

胸部レントゲン道場34・各論7・レントゲンで白くなる病態1・べったりと白くなる連続性の陰影

さて、というわけで、胸部レントゲンのお話に戻りましょう…

って、何ヶ月ぶりやねん、とセルフツッコミしておきます。


間にアシドーシスとか、抗菌薬が入ってしまったために、自分でも忘れるほどの時が流れてしまいました。もはや、以前の連載時に読んでおられた方もお忘れに違いありません。


タイトルの番号も、果たしてあっているのかどうか自信がありません。気づかれた方はご指摘ください。


自分でも忘れるほどであったのに、ナゼ連載を再開するのか?これにはちゃんと理由があるのですが、それはまたおいおい明らかになることでしょう。



確か前回?は、黒くなる病態(気腫、嚢胞、気胸)を終わらせた(と思う)ので、再開第1弾は、白くなる病態の各論(のはず)です。


白くなる病態は色々とありますが、まずは「べったりと白くなる」病態を考えましょう。ある程度の大きさに、連続性に拡がる、真っ白い領域です。


110715CR.jpg


連続性に白くなるにはそれなりの理由があります。パッと見こんなんでも、色々な病態を含んでいるのです。以下に鑑別すべき病態を挙げてみます。


  • 胸水

  • 腫瘤

  • 無気肺

  • 浸潤影



それでは、明日からそれぞれの病態について、紐解いてみましょう。


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posted by 長尾大志 at 18:58 | Comment(0) | 胸部X線道場