2017年03月03日

第111回医師国家試験問題解説・突然の呼吸困難シリーズ

A35
69歳の女性.呼吸困難と胸痛とを主訴に来院した.1時間前から突然,呼吸困難と胸痛が出現した.様子をみていたが,30分以上症状が軽快しないため来院した.既往歴に特記すべきことはない.自宅の修繕のため,ここ数日は夜間に自家用車の中で睡眠をとっていた.身長155cm,体重76kg.体温36.0℃.脈拍104/分,整.血圧110/80mmHg.呼吸数22/分.SpO2 91%(room air).心音と呼吸音とに異常を認めない.胸部に圧痛を認めない.症状の呼吸性変動を認めない.胸部X線写真で異常を認めない.心電図で洞性頻脈を認めるが他に異常を認めない.
この患者の診断に有用性が低いのはどれか.
a DLCO
b 心エコー
c Dダイマー
d 胸部造影CT
e 動脈血ガス分析


こちら、震災の後にトピック的に出題されていたりしましたが、既に定番となったのでしょうか。突然の呼吸困難と胸痛⇒破れた詰まった捻れた、自家用車の中での睡眠、低酸素と頻呼吸と頻脈、胸部X線写真で異常なし、と、診断は肺血栓塞栓症で間違いなさそうです。


今回は診断に使われる検査のうち、有用性が低いものを問うています。診断に使われるものはどれか、胸部造影CT、はもう食傷気味?ということでしょうか。知識として有用性が低いものを知らなくても、病態と検査を理解していればわかる、ということで、このブログを読まれている方ならどうということはないでしょう。


肺血栓塞栓症は肺動脈内に血栓・塞栓ができて、血流が途絶え、そのエリアの換気と血流がミスマッチを起こす、そのための低酸素血症です。急に右心系(肺静脈系)の一部の血管が詰まるわけですから、流れが悪くなって右室なんかが張ってきます。血栓ができることでDダイマーが上昇し、低酸素刺激で過換気になり、PaCO2が低下します。


…これらのことを検出するための検査は有用性が高く、あまり関係のない機序である拡散障害を調べても有用ではない、ということになります。正解はaかと。


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2017年03月02日

第111回医師国家試験問題解説・発作の治療

I73
26歳の女性.呼吸困難を主訴に来院した.1週間前に咽頭痛,鼻汁および微熱が出現した.その後解熱したが本日の午前2時ごろから呼吸困難が著明となったため午前4時に救急外来を受診した.小児期に気管支喘息と診断されたが中学生時に寛解している.呼吸困難はみられるが会話はかろうじて可能である.SpO2 89%(room air).両側の胸部全体にwheezesを聴取する.酸素投与を開始し,末梢静脈路を確保した.
直ちに行うべき治療はどれか.2つ選べ.
a 抗菌薬点滴静注
b 副腎皮質ステロイド吸入
c アミノフィリン点滴静注
d 短時間作用性β2刺激薬吸入
e ロイコトリエン受容体拮抗薬内服


これ、パッと見たところでは、「ああ、いつものアレね」と、あまり問題がないように見えたのですが…選択肢を見て驚きました。



診断については、若年の女性、上気道症状後の呼吸困難、夜間の発作性の症状、小児喘息〜寛解の既往、wheezesの聴取、と揃っていて、喘息発作であることは間違いありません。


それでは、喘息発作の治療は…まずβ刺激薬の吸入、次に全身ステロイド投与ですね。じゃあ、選択肢は、dと…ん?b 副腎皮質ステロイド「吸入」?点滴じゃないのか…そうです。ないんです、全身ステロイド。


これまでと傾向を変えるためとはいえ、重要な治療のチョイスを選択肢から省くというのはいかがなものかと思いますね。替わりに選択するとしたら、c アミノフィリン点滴静注しかありませんが、最近あまりアミノフィリン系は現場では使われていない印象がありますから、現場をよくみている人ほど、指導医から「最近はアミノフィリンを使わないからね〜」なんて言われた、そのセリフが頭に残っていて、間違える可能性があるのではないか、そう危惧します。


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2017年03月01日

第111回医師国家試験問題解説・誤嚥性肺炎の原因微生物

I4
誤嚥性肺炎の原因微生物として頻度が高いのはどれか.
a 腸球菌属
b 放線菌属
c Candida属
d 連鎖球菌属
e Pseudomonas


おお、誤嚥性肺炎の原因微生物ですか。なかなか物議を醸しそうな出題ですね。


なぜか。「諸説あり」だからです。出題されたのはどなたでしょうか…。そもそも誤嚥性肺炎は、口腔内にいる菌が肺に誤嚥されて発症する、とされていて、その原因微生物としては口腔内由来の菌、ということになっています。


それでこれまでは口腔内常在菌、嫌気性菌が多い、とされていましたが、実際嫌気性菌は培養で生えませんので確認が難しく、また、施設間でも検出頻度に差がある。そういうこともあって、「誤嚥性肺炎の原因菌としては○○菌が多い」という全国的、あるいは世界的な統一見解はないのではないかと思います。


で、まず選択肢には嫌気性菌が含まれていない。腸球菌は嫌気性といえばそうですが、一般的にそういう分類ではない。誤嚥性肺炎を起こす嫌気性菌とされるバクテロイデスやプレボテラがない。また、院内発症のHCAPで多いとされたPseudomonasが選択肢に入っている…と、何を答えさせたいのか、今ひとつ見えてこないのですね…。


口腔内常在菌として有名なStreptococcus anginosus group(Streptococcus milleri group)、それに、誤嚥性肺炎でもやはり多いといわれている肺炎球菌が一応Streptococcus属、ということで、回答はdだと思うのですが…。なんかスッキリしません。


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2017年02月28日

第111回医師国家試験問題解説・身体診察を疎かにする事なかれ2

H37〜38
次の文を読み,37,38の問いに答えよ.
26歳の男性.左胸痛と息苦しさとを主訴に来院した.
現病歴:昼ごろに咳き込んだ際,左胸痛が出現した.しばらく様子をみていたが改善せず,呼吸困難も出現したため夜間救急外来を家族とともに受診した.
既往歴:16歳時に右側,18歳時に左側で同様の症状のため通院.
生活歴:会社員.独身.両親と同居.喫煙は15本/日を5年間.飲酒は機会飲酒.
家族歴:特記すべきことはない.
現症:意識は清明.身長172cm,体重52kg.体温36.9℃.脈拍84/分,整.血圧112/76mmHg.呼吸数16/分.SpO2 94%(room air).皮膚と口腔内は乾燥している.眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない.頸静脈の怒張を認めない.頸部リンパ節を触知しない.心音に異常を認めない.呼吸時に胸郭の動きに左右差を認める.呼吸音は左側で減弱しているが,副雑音は聴取しない.左胸部の打診は鼓音を呈している.腹部は平坦,軟で,肝・脾を触知しない.下腿に浮腫を認めない.
検査所見:血液所見:赤血球480万,Hb 15.5g/dL,Ht 47%,白血球8,400(桿状核好中球30%,分葉核好中球45%,好酸球1%,好塩基球1%,単球6%,リンパ球17%),血小板23万.血液生化学所見:総蛋白7.3g/dL,アルブミン4.7g/dL,総ビリルビン0.3mg/dL,AST 20U/L,ALT 18U/L,LD 195U/L(基準176〜353),ALP 189U/L(基準115〜359),クレアチニン0.6mg/dL,Na 137mEq/L,K 4.4mEq/L,Cl 97mEq/L.CRP 0.3mg/dL.動脈血ガス分析(room air):pH 7.41,PaCO2 39Torr,PaO2 62Torr,HCO3− 24mEq/L.


H37
立位で胸部X線撮影を行った.
想定される所見はどれか.
a 左肺野多発腫瘤影
b 左肺野浸潤影
c 左肋骨骨折
d 左肺虚脱
e 胸水貯留



こちらも、身体診察を使う問題です。まあでも昼ごろに咳き込んだ際(ピンポイント)、左胸痛が出現した、ということで、発症様式が特徴的である点、16歳時に「右側」、18歳時に「左側」で同様の症状、と、「側」のある病態である点から、診断としてはわかってしまうわけですが。


一応診察上は、呼吸時に胸郭の動きに左右差を認め、呼吸音は左側で減弱しているが副雑音は聴取せず、左胸部の打診は鼓音を呈している、ということで気胸は間違いないでしょう。


選択肢がちょっといやらしいですが、気胸は胸部X線撮影でd肺の虚脱所見が見られます。



H38
胸部X線写真を確認して初期対応を行い入院となった.
この患者に手術を勧める根拠となるのはどれか.
a SpO2
b 既往歴
c 喫煙歴
d 性別
e 年齢


まあこれは知識の問題です。b既往として気胸を繰り返す場合には手術適応です。


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2017年02月27日

第111回医師国家試験問題解説・身体診察を疎かにする事なかれ

もう少しだけ、国試問題の解説を続けます。


H28
62歳の男性.呼吸困難を主訴に来院した.1ヵ月前に呼吸困難が出現し,増強してきた.喫煙は30本/日を40年間.体温36.4℃.脈拍104/分,整.血圧132/86mmHg.呼吸数24/分.SpO2 92%(room air).心音に異常を認めない.呼吸時に胸郭の動きに左右差を認める.左胸部の打診は濁音を呈し,聴診では左肺の呼吸音が減弱している.
考えられるのはどれか.
a 気胸
b 肺炎
c 肺気腫
d 無気肺
e 肺塞栓


イヤ臨床実習の学生さんを見ていて、身体診察に対する「温度差」みたいなものを感じているんですよ。熱心な人は積極的に練習してみるんだけれど、なんか事務的に、「形だけ出来てりゃいいんでしょ」みたいな人もいる。


これって、OSCEとかで、「形さえ出来てりゃ合格」という教育がなされているからではないか、と思ったりするわけです。それと、ひょっとしたら他科では身体診察をちゃんとやらせてもらっていないのでは?という穿った見方も出来たりして。


自分の学生時代のことは棚に上げて、この状況はいかがなものか、と思いますが、考えてみれば自分の学生時代も、身体診察のことなんてこれっぽっちも習っていなかったような。誰にも教えてもらわずに、興味なんて生まれるわけがないですよね。


呼吸器内科では幸い、身体診察の所見がいろいろあって、しかもある程度(胸部X線写真などを使って)答え合わせが出来る、という恵まれた状況だと思うのですね。それで、学生さんに興味を持ってもらうべく、いろいろやってみるのですけど…このように国家試験にもでる、となれば、もう少しきちんと所見をとる、という方向に目を向けてもらえないかなー、と期待しています。


本症例では胸郭の動きに左右差を認め、左胸部の打診で濁音、聴診で左肺呼吸音が減弱…ということで、左胸郭内の含気が低下して肺が動いていない様子がわかります。選択肢ではb肺炎、が若干紛らわしいですが、1ヶ月前からの慢性経過なので否定的と考えてよいでしょう。正解はd。


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2017年02月24日

第111回医師国家試験問題解説・睡眠時無呼吸症候群+α

D58
52歳の女性.就寝中に呼吸が止まるのを夫に指摘されて来院した.3ヵ月前から動悸と昼間の眠気とを感じている.4ヵ月前からうつ病で内服治療中である.喫煙は10本/日を30年間.飲酒はビール1,000mL/日を20年間.身長161cm,体重78kg.脈拍76/分,整.血圧156/104mmHg.心音と呼吸音とに異常を認めない.簡易モニター検査後のポリソムノグラフィで無呼吸低呼吸指数は26(基準5未満),無呼吸の最長持続時間は112秒(基準9未満),睡眠中のSpO2は最低値77%,平均値96%,いびきの回数は428/時間である.
この患者に対する働きかけとして適切なのはどれか.3つ選べ.
a 「禁煙しましょう」
b 「減量手術をしましょう」
c 「飲酒を制限しましょう」
d 「仰向けに寝るようにしましょう」
e 「内服薬の見直しについて相談しましょう」



これも学生さんは困ったかもしれません。新傾向というか現実に即したというか意地悪というか


就寝中に呼吸が止まる、昼間の眠気、ポリソムノグラフィーから、睡眠時無呼吸症候群の診断は問題ないでしょう。問題はココから。


おそらく出題者の意図としては、「睡眠時無呼吸症候群=○○、みたいな問題は出さないゾ」ということなのでしょうが…狙い過ぎか。


その他の状況として、喫煙、大量の飲酒、うつ病の内服治療、肥満傾向(BMI30)があります。ってことで、「全人的にみる視点を学生も持っておくように」みたいな意図があるのでしょうかね。


さて選択肢をみますと、c「飲酒を制限しましょう」飲酒は睡眠時無呼吸症候群のリスクとなりますし、e「内服薬の見直しについて相談しましょう」うつ病の内服薬もリスク。d「仰向けに寝るようにしましょう」仰向けは気道の閉塞につながりますから×ですね。


問題は残る2つですが、国試的にはb減量手術なんつー大げさな治療を積極的に勧めるのは、よほどの根拠がないと…BMIたかだか30ですから、アウト、って感じでいいのかもしれませんが、a禁煙、これだって、別に睡眠時無呼吸症候群のリスクとは言えない。と言えれば言えるわけで、「ん?」という感じです。


まあおそらく、「この患者さんに対する働きかけとして」という文言から、「睡眠時無呼吸症候群だけでなく、この患者さんの有する病態に対しての働きかけ」という意味合いと取れば、禁煙でよかろうとなるように思いますが。


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2017年02月23日

第111回医師国家試験問題解説・ポリソムノグラフィ

そして、医師国家試験に戻りましょう。


B9
ポリソムノグラフィに含まれないのはどれか.
a 脳波
b 血圧
c 筋電図
d 心電図
e SpO2



これ、どう思われますか?ポリソムノグラフィに必須の項目、といえば、脳波、筋電図、SpO2でしょう。これは間違いない。


あとは血圧か心電図…まあ、血圧測定は刺激になりますから、心電図のところが多いか…でも血圧測定しているところもあるけど…苦しい選択。


「含まれない」という表現も紛らわしい。必須の、ということであればbもdもSASの診断に必須とは言えません。でも循環動態をモニターするために通常は測定します。だったら血圧も含んでもよい、と言えるでしょう。無理やり感はありますが、どちらか、問われたらbかなあと思います。


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2017年02月22日

第106回看護師国家試験問題解説・喀血とは・高齢者の肺

例年通り、ここで看護師国家試験問題の解説作成がカットインして参りました。割とシンプルな問題ですので、すすっといきましょう。


A12
喀血が起こる出血部位で正しいのはどれか.
1.頭蓋内
2.気道
3.食道
4.胆道


喀血は気道内の出血です。正解は2。


P49
高齢者に術後の呼吸器合併症が発症しやすい理由で正しいのはどれか.
1.残気量の減少
2.肺活量の低下
3.嚥下反射の閾値の低下
4.気道の線毛運動の亢進


これ、一瞬、どれもそうじゃないか、なんて思ってしまったのですが、よくみると間違っている項目ばかりです。正解は2。


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2017年02月21日

第111回医師国家試験問題解説・ナニコレ?

E57
68歳の女性.腹膜炎の手術後でICUに入院中である.3日前に消化管穿孔による急性汎発性腹膜炎で緊急手術が行われた.術後は気管挿管されたままICUに入室し,人工呼吸管理を受けている.本日から呼吸状態が悪化し,気管からピンク色泡沫状の分泌物が吸引された.心拍数86/分,整.血圧120/80mmHg.動脈血ガス分析(FIO2 0.7):pH 7.32,PaCO2 42Torr,PaO2 69Torr,HCO3- 23mEq/L.胸部X線写真(両側肺野にすりガラス影)を別に示す.心エコーで左室駆出率60%,左室壁運動に異常を認めない.有意な弁膜症を認めない.

診断はどれか.
a 肺炎
b 肺胞出血
c 心原性肺水腫
d 急性間質性肺炎
e 急性呼吸促迫症候群〈ARDS〉



こちら、微妙です。国試レベルだったらたぶん正解は1つになるんでしょうけど、臨床の現場を知っていればいるほど、正解は1つに絞れないですよね。現場重視を謳う国家試験にしては、ちょっとアレじゃないか、と思った次第です。


それはさておき、医師国家試験レベルでの解答は…


  • 急性汎発性腹膜炎で緊急手術後

  • 両側すりガラス影・呼吸不全

  • 循環障害、心疾患の否定

  • 気管からピンク色泡沫状の分泌物が吸引



ということで、挙げられている条件からはアレしかなかろう、という感じなのでしょうけれども。


基礎に感染、術後という状態があり、両側すりガラス影を来した呼吸不全、心不全は否定…そうです、診断は…



ARDSでしょうね。


正解:e



でもこれ、確かにARDSの診断基準に基づいて、心不全の除外は出来てますけど、肺胞出血の除外、急性間質性肺炎の除外は出来てるんか、と問われたらどうでしょう。


出来てませんよね…。


ひょっとすると出題された先生は救急畑の方で、ARDSの診断基準のことに集中されていたのかもしれません。心不全の除外をすべし、と明記されていますからね。少なくとも呼吸器専門医試験でこの問題が出たら、正解はe 1つにはならないでしょう。


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2017年02月20日

第111回医師国家試験問題解説・画像一発

今年もメディックメディアさんから、医師国家試験問題の解説を作成するお仕事を頂きました。いち早く国家試験の問題をチェック出来る、ありがたい機会であります。今年は結構新傾向、既視感のない問題がみられ、受験生の方々の中から「心折れた」という声も聞かれたような気がいたしますが、私なりの解釈、独り言も少し交えて、解説の下書きをしたいと思います。あ、こちらはあくまで、下書きですよ〜お仕事はもっとキッチリ解説いたします。



E41
68歳の女性.易疲労感と咳嗽とを主訴に来院した.6ヵ月前から左上葉肺癌で抗癌化学療法と放射線療法とを受けていた.2ヵ月前に治療は終了し経過観察されている.2週間前から易疲労感と乾性咳嗽があり,次第に悪化したため受診した.身長160cm,体重58kg.体温36.6℃.脈拍88/分,整.血圧126/80mmHg.呼吸数18/分.SpO2 96%(room air).眼瞼結膜は軽度貧血様である.心音に異常を認めないが,左胸部で気管支呼吸音と軽度のwheezesを聴取する.血液所見:赤血球389万,Hb 10.2g/dL,Ht 32%,白血球5,800,血小板25万.血液生化学所見:総蛋白6.7g/dL,アルブミン3.7g/dL,総ビリルビン0.3mg/dL,AST 16U/L,ALT 13U/L,LD 273U/L(基準176〜353),クレアチニン0.9mg/dL,Na 143mEq/L,K 4.4mEq/L,Cl 105mEq/L,CEA 4.8ng/mL(基準5以下).CRP 1.3mg/dL.胸部X線写真(左上肺野に限局性の浸潤影)と肺野条件の胸部CT(左上葉にビシッと境界線のある限局性の浸潤影)とを別に示す.

最も考えられるのはどれか.
a 癌性リンパ管症
b 放射線肺炎
c 細菌性肺炎
d 肺水腫
e 膿胸



イヤ、これで画像なしはキツいですよね。たぶん。転載可能かどうかわからないので、イラストで再現しますと…


スライド1.JPG


まあこれを見てしまうと診断は簡単、ではないでしょうか。


ビシッと、いかにも人工的な境界線のある浸潤影…。


あんまり急性・炎症感の強くない症状、所見…。


診断は…


放射線肺炎でしょう。


正解:b


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2016年02月26日

第110回医師国家試験問題解説・いつものアレ?

今年の医師国家試験解説、担当分は今日で終わりです。


110I76
66歳の男性.労作時呼吸困難を主訴に来院した.約1年前から労作時の息切れを自覚するようになったが,徐々に増強するため受診した.会社の健康診断で3年前から胸部X線写真で両側の下肺野に淡い浸潤影を指摘されていた.喫煙は現在まで20本/日を46年間.粉塵曝露の生活歴はない.意識は清明.身長170cm,体重65kg.体温36.3℃.脈拍64/分,整.血圧130/70mmHg.呼吸数20/分.SpO2 96%(room air).心音に異常を認めない.両側の下背部でfine cracklesを聴取する.血液所見:赤血球430万,Hb 14.9g/dL,Ht 42%,白血球7,300,血小板20万.血液生化学所見:AST 28IU/L,ALT 18IU/L,LD 370IU/L(基準176〜353),CK 42IU/L(基準30〜140),尿素窒素12mg/dL,クレアチニン0.6mg/dL,KL-6 780U/mL(基準500未満).CRP 0.2mg/dL.胸部X線写真(別冊No.26 A)と胸部CT(別冊No.26 B)とを別に示す.
(図はこのサイトでは引用しませんので、他で確認して下さい)


この患者の検査結果で予測されるのはどれか.2つ選べ.
a %VC低下
b %RV上昇
c PaCO2上昇
d %DLco低下
e FEV1%低下



この問題、医師国家試験であれば別にどうということはない問題ですが、呼吸器専門医試験であれば「不適切問題」となるであろうと思われます。まあ、胸部X線写真と胸部CTがないので、ちょっとイメージが湧きにくいかもしれませんが…。


特に基礎となる疾患や粉塵曝露のない間質性肺炎=特発性間質性肺炎、かつ特徴的な陰影で、=特発性肺線維症(IPF)を答える問題だと思います。


これまでにもさんざん述べてきましたが、間質性肺炎の領域で唯一「問題にしても文句を言われない」のが特発性肺線維症。学生レベルでは、他に紛らわしい疾患はないといっても差し支えないでしょう。


しかし本問は、写真を見て頂ければわかりますが、純粋な特発性肺線維症ではなくて、かな〜り気腫が合併したタイプです。重喫煙歴もありますし。どうしてこんな紛らわしい症例を選んだのか、これは出題者の見識が疑われる問題だと思います。


何故そこまで言うかといいますと、気腫が合併していると、通常のIPFとは異なり


  • %VCの低下が、気腫による肺の伸びで打ち消され、目立たなくなる

  • %RVの上昇が、線維化による肺の収縮で打ち消され、目立たなくなる

  • FEV1%の低下も、線維化による牽引性気管支拡張で打ち消され、目立たなくなる



からです。ということは、呼吸器専門医の間では常識なので、呼吸器専門医試験においては、正解はd DLco低下のみが確実な正解、ということになってしまうのですね。


出題者は何故このような症例を問題にされたのでしょうか。


あまり気腫合併肺線維症のことに興味がないか、どうせ国家試験レベルだからこの画像もIPFと思うだろう、と考えられたか、純粋なIPF症例の胸部画像がお手持ちになかったか、まさかご存じない、ということはないでしょうから、どれかだと思うのですが、あまりこういう前例を作ると教育的にはよろしくないような気がするのですね…。


一応、国家試験的な正解は:a,dとします。


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2016年02月25日

第110回医師国家試験問題解説・外来での急変3

H36
その後の経過:適切な治療により状態は安定し,肺炎の診断で入院となった.喀痰のGram染色で好中球によるGram陽性双球菌の貪食像を認めたため,酸素投与に加えてペニシリン系抗菌薬の点滴静注が開始された.5日後,喀痰は減り,呼吸状態も改善して酸素も不要となったが,38℃台の発熱が再燃するとともに頻回の下痢が出現した.
まず行うべき検査はどれか.
a 抗核抗体
b 注腸造影
c 腹部造影CT
d 上部消化管内視鏡検査
e 便中Clostridium difficile毒素



初期診断は肺炎ですから呼吸器の問題かと思わせといて、救急や消化器の要素を入れてきました。これからはこういう問題が増えてくるでしょうね。


肺炎で抗菌薬治療をして、一旦よくなったあとに発熱と下痢。頻出問題ですね。これは脊髄反射で!?答えられるようになっておきましょう。偽膜性腸炎です。


偽膜性腸炎=Clostridium difficile、ということでCDトキシンチェックをまず行います。


正解:e


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2016年02月24日

第110回医師国家試験問題解説・外来での急変2

まずは初期診断。

3日前からの咳嗽と喀痰、その後徐々に呼吸困難を感じるようになり、昨晩から発熱も認めて、家族の運転する車で受診したとのこと。


既往に気管支喘息があり、喫煙歴と飲酒歴はないのでCOPDはないでしょう。元々ADLは自立していたとのことです。


体温38.1℃.脈拍92/分,整.血圧118/62mmHg.呼吸数24/分.SpO2 93%(room air).以上から、そこそこの発熱で呼吸に影響が来ていることがわかります。右側の下胸部でcoarse cracklesを聴取することから、「肺炎かな」と見当が付きます。


検査所見:血液所見:白血球9,800.血液生化学所見:尿素窒素22mg/dL,クレアチニン1.2mg/dL.CRP 5.2mg/dL.


あまり激しくはありませんが、炎症所見も軽度見られ、肺炎に矛盾しません。



で、その後、酸素投与を開始し,胸部X線撮影を行い、撮影室から車椅子で救急外来に戻ったところで突然意識レベルがJCSU-30に低下したということです。橈骨動脈の脈拍が触知不能で脈拍(頸動脈)124/分,整ということは、急な血圧低下〜敗血症性ショックなどが想定されます。


ショックの鑑別は問題文の情報だけでは何とも困難ですが、選択肢が


a β遮断薬急速静注
b ブドウ糖液急速輸液
c 生理食塩液急速輸液
d 重炭酸ナトリウム静注
e 副腎皮質ステロイド静注


ですので、これは一般的なショック対策の外液輸液でいいでしょう。


正解:c


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2016年02月23日

第110回医師国家試験問題解説・外来での急変

110H35〜36
次の文を読み,35,36の問いに答えよ.
70歳の女性.発熱,咳嗽,喀痰および呼吸困難を主訴に来院した.
現病歴:3日前から咳嗽と喀痰とを自覚していた.その後,徐々に呼吸困難を感じるようになり,昨晩から発熱も認めたため,家族の運転する車で受診した.
既往歴:32歳時に虫垂炎.気管支喘息のため,5年前から時々吸入薬を使用している.
生活歴:長女夫婦と孫との4人暮らし.喫煙歴と飲酒歴はない.ADLは自立している.家事を分担しながら近所の児童館で読み聞かせのボランティアをしている.この1年間で特記すべき旅行歴はない.
現症:意識は清明.身長153cm,体重48kg.体温38.1℃.脈拍92/分,整.血圧118/62mmHg.呼吸数24/分.SpO2 93%(room air).頸静脈の怒張を認めない.心音に異常を認めない.右側の下胸部でcoarse cracklesを聴取する.下腿に浮腫を認めない.
検査所見:血液所見:赤血球368万,Hb 11.9g/dL,Ht 36%,白血球9,800,血小板23万.血液生化学所見:尿素窒素22mg/dL,クレアチニン1.2mg/dL.CRP 5.2mg/dL.
その後の経過:酸素投与を開始し,胸部X線撮影を行った.撮影室から車椅子で救急外来に戻ったところで突然意識レベルがJCSU-30に低下した.橈骨動脈の脈拍は触知不能.すぐにベッドに移した.脈拍(頸動脈)124/分,整.


H35
直ちに行うべきなのはどれか.
a β遮断薬急速静注
b ブドウ糖液急速輸液
c 生理食塩液急速輸液
d 重炭酸ナトリウム静注
e 副腎皮質ステロイド静注


最初にパッと読んだときには、問題の狙いが今ひとつよくわかりませんでしたが、実際の臨床現場で遭遇しうる事象を問題にした、という感じでしょうか。


まあそもそもこれが『呼吸器』の問題になるのか、ということもありますが、逆に、臨床の現場では患者さんがいろいろな問題を抱える、ということは普通にあるわけです。最初の診断を下して、そのまま治療までスーッと進むとおもったら、そうはいかないよ、という問題ですね。


H35はどちらかといえば救急志向の問題。検査に行ったら患者さんが急変、という状況です。何を考え、どうするか。これはちょっと考えて頂きましょうか。


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2016年02月22日

第110回医師国家試験問題解説・心不全と両側の肺門リンパ節腫脹

メディックメディアさん提出分は先週のうちに何とか済ませました♪(´ε` )が、折角ですのでこちらはもう少し続けます。


110D31
34歳の女性.労作時の息切れと易疲労感とを主訴に来院した.1ヵ月前から,階段昇降時に息切れと疲労感とを自覚するようになった.その後,症状が続くため心配になって受診した.意識は清明.体温36.1℃.脈拍64/分,整.血圧110/76mmHg.呼吸数16/分.SpO2 97%(room air).左の鎖骨上窩に径1pのリンパ節を3個触知する.胸部の聴診でV音を聴取するが,呼吸音に異常を認めない.眼所見と神経学的所見とに異常を認めない.血液所見:赤血球512万,Hb 14.6g/dL,白血球3,900,血小板28万.血液生化学所見:総蛋白6.5g/dL,アルブミン3.8g/dL,AST 27IU/L,ALT 42IU/L,LD 151IU/L(基準176〜353),CK 37IU/L(基準30〜140),クレアチニン0.9mg/dL,Ca 9.8mg/dL,P 4.5mg/dL.免疫血清学所見:CRP 0.1mg/dL,抗核抗体陰性,ACE 41.2U/L(基準8.3〜21.4),可溶性IL-2受容体726U/mL(基準550以下).胸部X線写真で両側の肺門リンパ節の腫脹を認める.心電図は洞調律で心拍数68/分,不完全右脚ブロックを認める.心エコーで左室拡張末期径64mm,左室駆出率34%,左室壁厚は中隔,後壁とも9mmで心室中隔基部の菲薄化を認める.左の鎖骨上リンパ節の生検組織のH-E染色標本(別冊No.9 A,B)を別に示す.
(図はこのサイトでは引用しませんので、他で確認して下さい)


この患者で,心不全の治療とともに行うべきなのはどれか.
a 放射線照射
b α遮断薬投与
c 抗結核薬投与
d 副腎皮質ステロイド投与
e 植込み型除細動器〈ICD〉の植込み


こちらも新傾向問題。診断自体は何ということはありませんが、治療のところがこれまでにないパターンです。




診断は組織標本すら要らないでしょう。リンパ節、ACE高値、BHL、組織でも割と典型的な肉芽腫を見ますので、Sarcoidosisの診断は容易でしょう。


Sarcoidosisであれば、通常よくある方針は「経過観察」。でも今回は、心不全症状が出ている⇒生命の危険がある⇒要治療介入、という流れになるのです。


その場合に選択するのはステロイド、というわけで、


正解:d


となります。


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2016年02月19日

第110回医師国家試験問題解説・ウイルスと疾病

昨日の「平成27年度 第2回滋賀県病院薬剤師会感染制御委員会研究会」は久々の薬剤師さんとの勉強会、とのことでいろいろ盛り込みすぎ、いろいろな意味で中途半端に終わってしまいました。やはり欲張るとダメですね。受講された方々の感想を集めて頂いたので、また見せて頂こうと思いますが…。


さて問題の続きに参りましょう。


110D3
成人の病態と関連性が強いウイルスとの組合せで正しいのはどれか.
a 肺炎・・・・・・アデノウイルス
b 上気道炎・・・・・・ライノウイルス
c 喘息の増悪・・・・・・サイトメガロウイルス
d 気管支拡張症の増悪・・・・・・RSウイルス
e 慢性閉塞性肺疾患の増悪・・・・・・パラインフルエンザウイルス


こういう問題はいろいろ考え出すとハマってしまいますので、素直に解きましょう。


上から見ていくと、「そうだったっけ?何か自信ないな…。」という選択肢ばかりに見えますが、落ち着いて見ると、「上気道炎・・・・・・ライノウイルス」は知っているのでは?他はわからなくても、何とかなるでしょう。


正解:b


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2016年02月18日

第110回医師国家試験問題解説・身体診察のキホン

看護師国家試験の解説は終わりましたので、医師国家試験の方に戻りましょう。今週中に提出してしまいたいところです。


110C21
62歳の男性.呼吸困難を主訴に来院した.1ヵ月前に労作時呼吸困難が出現し増強してきたため受診した.喫煙は30本/日を40年間.体温36.4℃.脈拍104/分,整.血圧132/86mmHg.呼吸数24/分.SpO2 94%(room air).呼吸時に胸郭の動きに左右差を認める.心音に異常を認めず,呼吸音は左肺で減弱している.左胸部の打診は濁音を呈している.
考えられるのはどれか.
a 気胸
b 肺炎
c 肺気腫
d 無気肺
e 肺塞栓


こういう問題が出る、ということは、「身体診察をちゃんと見ておくように」という出題者のメッセージが感じ取られますねー。


診察所見としては…


  • 胸郭の動きに左右差→片側に病変があり、胸郭が動かないということ

  • 呼吸音は左肺で減弱→左肺の換気低下、左肺に空気が入らないということ

  • 左胸部の打診は濁音→左胸郭内の空気が減少していること



上の2つで気胸か無気肺に絞られ、最後の項目で無気肺とわかります。


正解:d



今日はこれから、、「平成27年度 第2回滋賀県病院薬剤師会感染制御委員会研究会」肺炎の勉強をみっちり2時間行います。少々風邪気味になっておりますが、薬剤師の方々とお勉強をする機会はなかなかないので、楽しみです。


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2016年02月17日

第105回看護師国家試験解説・身体診察所見

看護師国家試験解説、もう一つ。


105P100
Aさん(81歳,女性)は,6年前にレビー小体型認知症dementia with Lewy bodiesと診断された.Aさんは雨の中を1人で外出して自宅に戻れなくなり,同居している娘に発見された.その夜,娘が話しかけたときのAさんの反応が鈍くなったため,かかりつけの病院を受診し,細菌性肺炎bacterial pneumoniaと診断され入院した.呼吸器疾患の既往はない.

入院時にみられる所見はどれか.
1.樽状胸郭
2.呼気の延長
3.粗い断続性副雑音
4.高調性連続性副雑音


細菌性肺炎に見られる所見ということで、3.粗い断続性副雑音 が正解でしょう。これはもうこれ以上説明のしようがありませんね。書籍版の解説では、各選択肢についても説明を致します。


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2016年02月16日

第105回看護師国家試験解説・誤嚥の理由

と、ここで第105回看護師国家試験解説がカットインして参りました。実はこちらの方が、医師国家試験問題解説よりもさらに締め切りが早いという。ぎちぎちのスケジュールですが、タイトな方が私も効率よく出来るのです。まあ、他に仕事がなければですが…。


気になっているのは、『やさしイイ血ガス・呼吸管理』の校正。まだ初稿は手元に届いていないのですが、そろそろやってきそうな予感がしています。これは気合いを入れて臨まなくてはなりませんが、実は年末に一通り見直して、かなり手直しを済ませていますので、若干余裕がありそうな気もしております。それはさておき、早速取りかかりましょう。



105P86
Aさん(63歳,男性)は,胃癌gastric cancerにて胃亜全摘出術後3か月目に誤嚥性肺炎aspiration pneumoniaで緊急入院した.食物の通過や排便は問題なかったが,食事摂取量が少なく,術前より体重が10kg減少した.総義歯が外れやすく歯科を受診予定であった.
Aさんの肺炎pneumoniaの原因として考えられるのはどれか.2つ選べ.
1.消化管内容物の逆流
2.義歯の不適合
3.消化吸収障害
4.吻合部狭窄
5.腸閉塞



こちらはまず「呼吸器の問題なのかどうか」という問題があるかもしれませんが…とりあえず依頼頂いたものはきちんとやります。


誤嚥性肺炎の原因となる状況を問う問題ですね。1つ1つの項目を覚えるよりも、そもそも「なぜ誤嚥するのか、しやすいのか」を考える方がわかりやすいと思います。


もちろん嚥下機能自体の低下は主な要因ですが、それ以外に、口腔内に長時間食物などが存在してしまう状況があると、誤嚥のリスクが高まりますから、そういう状況を考えることになります。


  • 脳血管障害とか神経筋疾患に起因する嚥下機能の直接の低下

  • 寝たきり状態などADLの低下

  • 食物がスムーズに食道へ進めない状態



胃亜全摘出術後には胃食道逆流が起こりやすく、喉頭まで戻ってくることで誤嚥の原因となります。義歯が合っていないことも、なかなか飲み込めない⇒誤嚥につながるでしょう。


正解:1,2


書籍版の解説では、誤答肢についても解説しますが、取り急ぎ正答のみ。


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2016年02月15日

第110回医師国家試験問題解説・喘息における病歴聴取

それでは、個々に問題を見ていきましょう。


110A29
41歳の女性.喘鳴と呼吸困難とを主訴に来院した.1年前から感冒に罹患すると咳が長引くことが多く,一度,市販の解熱薬を服用した際に呼吸困難で,自宅近くの診療所を受診したことがあった.2日前から咽頭痛,鼻汁および発熱が出現し,その後,咳嗽,呼吸困難および喘鳴も出現した.本日の午前1時ころから呼吸困難が著明となったため,午前2時に救急外来を受診した.25歳からアレルギー性鼻炎を指摘されている.喫煙歴と飲酒歴はない.喘鳴と呼吸困難とを認めるが会話はかろうじて可能である.体温38.2℃.SpO2 88%(room air).両側の胸部で呼気時のwheezesを聴取する.胸部X線写真で異常を認めない.酸素投与を開始した.
次に行うべき治療はどれか.
a 人工呼吸
b 非ステロイド性抗炎症薬〈NSAIDs〉投与
c 利尿薬投与
d 抗菌薬投与
e 副腎皮質ステロイド全身投与


こちらはそれほど難しい問題ではありませんが、禁忌肢の存在と、実際の臨床現場では若干迷うことがあるかもしれない選択肢が含まれているので、これからの受験生の皆さんにはしっかり勉強して頂きたい良問だと思います。


繰り返す咳の病歴、発作性の咳嗽、呼吸困難、喘鳴などから喘息の診断容易でしょう。さらに市販解熱薬の服用後に呼吸困難が生じていることから、アスピリン喘息の存在を想起しなくてはなりません。


普通の?喘息もアスピリン喘息も、いずれも治療は共通で、安定期には吸入ステロイドが治療の柱となりますし、発作時にはβ2刺激薬吸入⇒副腎皮質ステロイド全身投与⇒エピネフリン皮下注、アミノフィリン点滴を使用します。


アスピリン喘息独特の注意事項としては、NSAIDsの投与が禁忌!であること、鼻茸の治療も行うことなどが挙げられますが、基本的な治療は普通の喘息と共通なのです。


というわけで、選択肢は

正解:e

bは禁忌肢でしょうね…。


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2016年02月12日

第110回医師国家試験問題解説のご依頼を頂きました。

症例検討会BRONCHOの途中に思いっきり、割って入りますが、先日行われました第110回医師国家試験の問題解説、今年もメディックメディアさんからご依頼を頂きましたので、最優先で取り組ませて頂きます。今年はこんな問題たちでした…。


110A29
41歳の女性.喘鳴と呼吸困難とを主訴に来院した.1年前から感冒に罹患すると咳が長引くことが多く,一度,市販の解熱薬を服用した際に呼吸困難で,自宅近くの診療所を受診したことがあった.2日前から咽頭痛,鼻汁および発熱が出現し,その後,咳嗽,呼吸困難および喘鳴も出現した.本日の午前1時ころから呼吸困難が著明となったため,午前2時に救急外来を受診した.25歳からアレルギー性鼻炎を指摘されている.喫煙歴と飲酒歴はない.喘鳴と呼吸困難とを認めるが会話はかろうじて可能である.体温38.2℃.SpO2 88%(room air).両側の胸部で呼気時のwheezesを聴取する.胸部X線写真で異常を認めない.酸素投与を開始した.
次に行うべき治療はどれか.
a 人工呼吸
b 非ステロイド性抗炎症薬〈NSAIDs〉投与
c 利尿薬投与
d 抗菌薬投与
e 副腎皮質ステロイド全身投与





110C21
62歳の男性.呼吸困難を主訴に来院した.1ヵ月前に労作時呼吸困難が出現し増強してきたため受診した.喫煙は30本/日を40年間.体温36.4℃.脈拍104/分,整.血圧132/86mmHg.呼吸数24/分.SpO2 94%(room air).呼吸時に胸郭の動きに左右差を認める.心音に異常を認めず,呼吸音は左肺で減弱している.左胸部の打診は濁音を呈している.
考えられるのはどれか.
a 気胸
b 肺炎
c 肺気腫
d 無気肺
e 肺塞栓





110D3
成人の病態と関連性が強いウイルスとの組合せで正しいのはどれか.
a 肺炎・・・・・・アデノウイルス
b 上気道炎・・・・・・ライノウイルス
c 喘息の増悪・・・・・・サイトメガロウイルス
d 気管支拡張症の増悪・・・・・・RSウイルス
e 慢性閉塞性肺疾患の増悪・・・・・・パラインフルエンザウイルス





110D31
34歳の女性.労作時の息切れと易疲労感とを主訴に来院した.1ヵ月前から,階段昇降時に息切れと疲労感とを自覚するようになった.その後,症状が続くため心配になって受診した.意識は清明.体温36.1℃.脈拍64/分,整.血圧110/76mmHg.呼吸数16/分.SpO2 97%(room air).左の鎖骨上窩に径1pのリンパ節を3個触知する.胸部の聴診でV音を聴取するが,呼吸音に異常を認めない.眼所見と神経学的所見とに異常を認めない.血液所見:赤血球512万,Hb 14.6g/dL,白血球3,900,血小板28万.血液生化学所見:総蛋白6.5g/dL,アルブミン3.8g/dL,AST 27IU/L,ALT 42IU/L,LD 151IU/L(基準176〜353),CK 37IU/L(基準30〜140),クレアチニン0.9mg/dL,Ca 9.8mg/dL,P 4.5mg/dL.免疫血清学所見:CRP 0.1mg/dL,抗核抗体陰性,ACE 41.2U/L(基準8.3〜21.4),可溶性IL-2受容体726U/mL(基準550以下).胸部X線写真で両側の肺門リンパ節の腫脹を認める.心電図は洞調律で心拍数68/分,不完全右脚ブロックを認める.心エコーで左室拡張末期径64mm,左室駆出率34%,左室壁厚は中隔,後壁とも9mmで心室中隔基部の菲薄化を認める.左の鎖骨上リンパ節の生検組織のH-E染色標本(別冊No.〓A,B)を別に示す.
(図はこのサイトでは引用しませんので、他で確認して下さい)


この患者で,心不全の治療とともに行うべきなのはどれか.
a 放射線照射
b α遮断薬投与
c 抗結核薬投与
d 副腎皮質ステロイド投与
e 植込み型除細動器〈ICD〉の植込み





110H35〜36
次の文を読み,35,36の問いに答えよ.
70歳の女性.発熱,咳嗽,喀痰および呼吸困難を主訴に来院した.
現病歴:3日前から咳嗽と喀痰とを自覚していた.その後,徐々に呼吸困難を感じるようになり,昨晩から発熱も認めたため,家族の運転する車で受診した.
既往歴:32歳時に虫垂炎.気管支喘息のため,5年前から時々吸入薬を使用している.
生活歴:長女夫婦と孫との4人暮らし.喫煙歴と飲酒歴はない.ADLは自立している.家事を分担しながら近所の児童館で読み聞かせのボランティアをしている.この1年間で特記すべき旅行歴はない.
現症:意識は清明.身長153cm,体重48kg.体温38.1℃.脈拍92/分,整.血圧118/62mmHg.呼吸数24/分.SpO2 93%(room air).頸静脈の怒張を認めない.心音に異常を認めない.右側の下胸部でcoarse cracklesを聴取する.下腿に浮腫を認めない.
検査所見:血液所見:赤血球368万,Hb 11.9g/dL,Ht 36%,白血球9,800,血小板23万.血液生化学所見:尿素窒素22mg/dL,クレアチニン1.2mg/dL.CRP 5.2mg/dL.
その後の経過:酸素投与を開始し,胸部X線撮影を行った.撮影室から車椅子で救急外来に戻ったところで突然意識レベルがJCSU-30に低下した.橈骨動脈の脈拍は触知不能.すぐにベッドに移した.脈拍(頸動脈)124/分,整.


H35
直ちに行うべきなのはどれか.
a β遮断薬急速静注
b ブドウ糖液急速輸液
c 生理食塩液急速輸液
d 重炭酸ナトリウム静注
e 副腎皮質ステロイド静注



H36
その後の経過:適切な治療により状態は安定し,肺炎の診断で入院となった.喀痰のGram染色で好中球によるGram陽性双球菌の貪食像を認めたため,酸素投与に加えてペニシリン系抗菌薬の点滴静注が開始された.5日後,喀痰は減り,呼吸状態も改善して酸素も不要となったが,38℃台の発熱が再燃するとともに頻回の下痢が出現した.
まず行うべき検査はどれか.
a 抗核抗体
b 注腸造影
c 腹部造影CT
d 上部消化管内視鏡検査
e 便中Clostridium difficile毒素





110I76
66歳の男性.労作時呼吸困難を主訴に来院した.約1年前から労作時の息切れを自覚するようになったが,徐々に増強するため受診した.会社の健康診断で3年前から胸部X線写真で両側の下肺野に淡い浸潤影を指摘されていた.喫煙は現在まで20本/日を46年間.粉塵曝露の生活歴はない.意識は清明.身長170cm,体重65kg.体温36.3℃.脈拍64/分,整.血圧130/70mmHg.呼吸数20/分.SpO2 96%(room air).心音に異常を認めない.両側の下背部でfine cracklesを聴取する.血液所見:赤血球430万,Hb 14.9g/dL,Ht 42%,白血球7,300,血小板20万.血液生化学所見:AST 28IU/L,ALT 18IU/L,LD 370IU/L(基準176〜353),CK 42IU/L(基準30〜140),尿素窒素12mg/dL,クレアチニン0.6mg/dL,KL-6 780U/mL(基準500未満).CRP 0.2mg/dL.胸部X線写真(別冊No.〓A)と胸部CT(別冊No.〓B)とを別に示す.
(図はこのサイトでは引用しませんので、他で確認して下さい)


この患者の検査結果で予測されるのはどれか.2つ選べ.
a %VC低下
b %RV上昇
c PaCO2上昇
d %DLco低下
e FEV1%低下


私の担当は以上です。なかなかの良問もあれば、「ん…?」な問題もありますね…。


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2014年02月27日

第108回医師国家試験呼吸器系問題解説・flow-volume曲線

108E49

66歳の男性.労作時の呼吸困難を主訴に来院した.2ヵ月前から階段を昇るときに呼吸困難を自覚するようになった.身長175cm,体重60kg.脈拍72/分,整.血圧136/80mmHg.呼吸数20/分.SpO2 94%(room air).呼吸音は両側でやや減弱し,打診で両側の胸部に鼓音を認める.胸部X線写真(肺過膨張)と肺野条件の胸部単純CT(真っ黒、ほぼ全体的に気腫)とを別に示す.


別に示すflow-volume曲線(別冊No.〓C@〜D)のうち,この患者に予想されるのはどれか.
a @
b A
c B
d C
e D


まあこれは選択肢がなくても、「こんな形だろうな」ということは見当がつくでしょう。


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2014年02月26日

第108回医師国家試験呼吸器系問題解説・レジオネラ肺炎・解答と解説

もったいをつけましたが、温泉=レジオネラ、は国試対策をしていればカキーンとつながるでしょう。ですから抗菌薬として適切なのは


b ニューキノロン系
c マクロライド系


です。これは問題ない。はずです。これがわからん人は今すぐ覚えましょう。
レジオネラには細胞壁合成阻害薬であるβラクタム系(セファロスポリン系、カルバペネム系、ペニシリン系など)は無効です。


これまでの「レジオネラを問う」問題ですと、もう臨床情報が「温泉」しかないんですね。温泉=レジオネラ。それに対して本問題は、「レジオネラを疑う」臨床情報にあふれている。これは今後、「温泉」のキーワードなしでレジオネラ肺炎を診断せよ、という問題を出しますよ、ということじゃないかと思えるのです。



なぜレジオネラ肺炎を「臨床症状」から診断する必要があるのか。それは、


  • 重症例が多く、生命に関わることが少なくないため、早期診断、早期治療が重要である。

  • 通常「肺炎」の時に使われるβラクタム系抗菌薬は全く効果がないため、診断の目星をつけないと初期から効果の期待される薬を使えない。

  • 臨床症状が比較的キャラが立っていて、「なんか普通の肺炎と違う感じがする」。

  • 最近頻用されている尿中抗原が必ずしも感度が高くない。

  • 実臨床では、必ずしも温泉、24時間風呂由来ではないレジオネラ肺炎がある。



などなどの理由によります。臨床的に重要な疾患なのです。


つまり、「肺炎だ」でボーッと何気なくいつものセフトリアキソンを使っていたら、あっという間に…ということがあるから注意しなさい、ということ。じゃあどんな臨床症状で疑うのか。


1つのキーワードは「肺以外の症状」。


医師国家試験過去問(呼吸器系)つまずきポイント徹底解説・レジオネラ肺炎はなぜ、全身症状を起こすのかでも触れました。結局のところ「ナゼ」なのかはよくわかりませんが、レジオネラは肺炎のくせに、全身のあちこちに症状を起こすのです。


「誰も教えてくれなかった『風邪』の診かた」の岸田先生は、「ウイルスとか、非定型病原体による感染症は、一臓器、一器官でなく、多臓器に症状が出るのが特徴だ」と言われていますが、そのように理解しておくと、とってもわかりやすくていいと思います。


肺以外の症状、具体的には…


  • 意識障害、頭痛:細菌性肺炎ではよっぽどの重症例になります。

  • 消化器症状:特に下痢が特徴的、他に嘔吐も。

  • 肝機能障害:あまり特異的とは言えませんが、状況証拠にはなります。

  • 高CK血症:細菌性肺炎でも、激しい悪寒戦慄があると高値になることもありますが…。一般的には特異度の高い所見として知っておきたいものです。

  • 低Na血症:結構特異度が高いです。




もう1つのキーワードは「肺炎にしては…」


  • 比較的脈が速くない=比較的徐脈。本問題ではあまり目立ちませんが、比較的徐脈がある場合にはレジオネラも疑わなアキマセン。

  • 膿性痰が多くない。痰の色は目視で確認したいものです。

  • 胸痛がない。

  • βラクタム系が効かない。3日目に効果判定で効かない、なんて言っていると手遅れになりますが…。



いろいろ挙げてみましたが、やっぱり普通の肺炎にしてはヘンなのです。そのヘンさを嗅ぎ取ることが出来る臨床的センス、知識を持っておきなさいと、この問題は出題者からのそんなメッセージが読み取れるのです(読み過ぎ?)。


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2014年02月25日

第108回医師国家試験呼吸器系問題解説・・ヘンな肺炎・解答と解説

52歳の男性.発熱と咳嗽とを主訴に来院した.3日前から39.2℃の発熱が出現し,市販の総合感冒薬を内服したが症状が改善しなかった.昨日から咳嗽,喀痰および息切れを自覚するようになり受診した.


ここまでで「肺炎」の診断は困難ではないでしょう。比較的急速な経過で高熱、咳嗽、喀痰、それに息切れといった呼吸器症状がそろっています。


既往歴と家族歴とに特記すべきことはない.ペットは飼育していない.1週前に温泉に行ったという.


出ました温泉。まあこれで受験生の皆さんは「いただき!」となるでしょうが…しかしこの問題のミソはここからです。続いてバイタルサイン。


意識は清明.体温38.5℃.脈拍96/分,整.血圧142/84mmHg.呼吸数30/分.SpO2 93%(リザーバー付マスク 10l/分 酸素投与下).


38℃以上の高体温の割には若干脈拍が低いようにも思います。呼吸数30回は重症肺炎で、SpO2も低いです。


心音に異常を認めない.右胸部にfine cracklesとcoarse cracklesとを聴取する.


心音異常なし〜弁膜症や心不全はなさそうで、肺炎の時に通常聴取されるcoarse cracklesに加えてfine cracklesもある、ってことは、間質性肺炎の存在が考えられます。この時点で、むむむ、なんじゃこりゃ。まあ温泉をみていればああ、あれか、って感じでしょうか。


血液所見:赤血球390万,Hb 13.8g/dl,Ht 39%,白血球8,300(桿状核好中球8%,分葉核好中球79%,好酸球1%,単球2%,リンパ球10%),血小板24万.血液生化学所見:総蛋白5.6g/dl,アルブミン2.8g/dl,AST 40IU/l,ALT 38IU/l,LD 340IU/l(基準176〜353),CK 350IU/l(基準30〜140),尿素窒素27mg/dl,クレアチニン0.9mg/dl,Na 128mEq/l,K 3.6mEq/l,Cl 102mEq/l.CRP 35mg/dl.


血液検査です。重症肺炎なのに白血球の総量がさほど増えていないのは、局所で動員されて使い果たされたか、免疫状態が良くないか、細菌性肺炎でないかどれかでしょう。CKが高値なのは、筋そのものの炎症症状に加えて、高熱、悪寒戦慄でガタガタ震えまくっていてもありでしょう。それ以外に気になるのは低Na血症ですね。CRPはしっかり上がっているので、炎症はちゃんと起こっていそう。


喀痰のヒメネス〈Gimenez〉染色標本で桿菌を認める.胸部X線写真にて右中下肺野に浸潤影を認める.肺野条件の胸部単純CT(浸潤影+すりガラス影)を別に示す.


はい、ヒメネス染色、これがキーワード( ̄▽ ̄;)。ヒメネス染色なんて、受験生は誰も知らなかったのでは?まあここまでで答えは出ていますから、今後「イヤーノート」「病気がみえる」「QB」に掲載してね!という出題者のメッセージでしょう。┐('〜`;)┌


CTでは聴診から予想されたとおり、浸潤影に加えてすりガラス影を認め、間質性肺炎の存在が考えられます。


…てことで診断自体はアレでいいですが、じゃあ「温泉」というキーワードなしにアレの診断が出来ますか?この問題の本質はそこじゃないかと思うのです。


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2014年02月24日

第108回医師国家試験呼吸器系問題解説・ヘンな?肺炎

108D55

52歳の男性.発熱と咳嗽とを主訴に来院した.3日前から39.2℃の発熱が出現し,市販の総合感冒薬を内服したが症状が改善しなかった.昨日から咳嗽,喀痰および息切れを自覚するようになり受診した.既往歴と家族歴とに特記すべきことはない.ペットは飼育していない.1週前に温泉に行ったという.意識は清明.体温38.5℃.脈拍96/分,整.血圧142/84mmHg.呼吸数30/分.SpO2 93%(リザーバー付マスク 10l/分 酸素投与下).心音に異常を認めない.右胸部にfine cracklesとcoarse cracklesとを聴取する.血液所見:赤血球390万,Hb 13.8g/dl,Ht 39%,白血球8,300(桿状核好中球8%,分葉核好中球79%,好酸球1%,単球2%,リンパ球10%),血小板24万.血液生化学所見:総蛋白5.6g/dl,アルブミン2.8g/dl,AST 40IU/l,ALT 38IU/l,LD 340IU/l(基準176〜353),CK 350IU/l(基準30〜140),尿素窒素27mg/dl,クレアチニン0.9mg/dl,Na 128mEq/l,K 3.6mEq/l,Cl 102mEq/l.CRP 35mg/dl.喀痰のヒメネス〈Gimenez〉染色標本で桿菌を認める.胸部X線写真にて右中下肺野に浸潤影を認める.肺野条件の胸部単純CT(浸潤影+すりガラス影).


抗菌薬として適切なのはどれか.2つ選べ.

a セファロスポリン系
b ニューキノロン系
c マクロライド系
d カルバペネム系
e ペニシリン系


2つ選ぶヤツですね。これも重要疾患で、いくつものポイントが含まれている良問だと思います。


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2014年02月21日

第108回医師国家試験呼吸器系問題解説・肺癌の病期決定・解答と解説

それでは選択肢を考えましょう。


肺腺癌患者の手術適応を決定する上で有用でないのはどれか.

a PET/CT

b 頭部造影MRI

c 腫瘍マーカー

d 胸腹部造影CT

e 腹部超音波検査


といっても、画像検査でないのは1つしかありません。臨床病期を決める作業は画像所見によっている、ということがわかっていれば答えは一つしかない、はずなのです。で腫瘍マーカー。


腫瘍マーカーは特異性に乏しく診断的意義は少ない、もちろんすごく高値であれば「癌だろうな」とは思いますが…。身体のどこにあるか、転移の有無、などを示すものではない、ということが頭の片隅にでもあれば、回答自体に迷うことはそうないのではないでしょうか。


ということで、回答はcでよいかと思います。


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2014年02月20日

第108回医師国家試験呼吸器系問題解説・肺癌の病期決定・解説

この問題のミソは診断ではありません。診断はもう問題文中でついているのです。とはいえ臨床情報をざっと見ておくことは、決してムダではありません。


65歳の男性.胸部異常陰影を指摘され来院.自覚症状なしから感染は考えにくいでしょう。
喫煙は30本/日を30年間→肺癌、肺結核、その他多くの呼吸器疾患のリスクとなります。


バイタルサインでは、体温36.8℃.脈拍92/分と微妙に高い(多い)。ガッツリした感染症ではないけれども、何かある、というニュアンスでしょうか。血圧130/84mmHg.呼吸数16/分.SpO2 98%(room air)は特に問題ありません。


心音と呼吸音とに異常を認めないので、大きな弁膜症他の心疾患、あるいは肺実質の広範囲の異常もなさそうです。


血液所見で気になるのはLD 410IU/l(基準176〜353),高いです。国試レベルでは「なんかイヤなことがある」ぐらいの指標になります。特異性は全くありません。呼吸機能検査所見は異常と言えず、心電図にも異常なし。


初診時の胸部X線写真(末梢に結節影).気管支内視鏡検査を行い左B3から肺生検で腺癌の診断を得た.ってことで肺腺癌の診断は問題ありません。


何が新しいって、病期の決定にどのような検査を行うか、という、一歩臨床に踏み込んだことを問われた点であります。まあ少しでも実習で肺癌症例を担当していれば問題なくわかると思われる点も、新傾向ならではの特徴と言えるでしょう。


現場にいる私としては、出題者の先生の苦悩と工夫が偲ばれる、良問だと思いました。「どうやったら学生さんに勉強してもらえるか」は大学教員にとって永遠の課題なのですね。その一つの回答は「勉強しないと解けない試験を出す」こと。


実習をおろそかにすると解けないような問題を作る、しかも(新傾向ゆえに)難易度のさほど高くない問題で、というのはなかなかに難しいものですが、この問題が出題されたことで少しは呼吸器の臨床実習にモチベーションが上がってもらえるのではないか、と期待しています。


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2014年02月19日

第108回医師国家試験呼吸器系問題解説・肺癌の病期決定

続いてのこちらは、「新傾向」問題になるのでしょうか。


108D23

65歳の男性.胸部異常陰影を指摘され来院した.既往歴に特記すべきことはない.喫煙は30本/日を30年間.意識は清明.身長170cm,体重62kg.体温36.8℃.脈拍92/分,整.血圧130/84mmHg.呼吸数16/分.SpO2 98%(room air).心音と呼吸音とに異常を認めない.血液所見:赤血球517万,Hb 17.0g/dl,Ht 50%,白血球6,200,血小板22万.血液生化学所見:総蛋白7.0g/dl,アルブミン4.6g/dl,総ビリルビン1.1mg/dl,AST 18IU/l,ALT 6IU/l,LD 410IU/l(基準176〜353),クレアチニン1.0mg/dl,Na 145mEq/l,K 4.2mEq/l,Cl 108mEq/l.CRP 0.1mg/dl.呼吸機能検査所見:%VC 93%,FEV1% 73%.心電図に異常を認めない.初診時の胸部X線写真(末梢に結節影).気管支内視鏡検査を行い左B3から肺生検で腺癌の診断を得た.


この患者の手術適応を決定する上で有用でないのはどれか.

a PET/CT
b 頭部造影MRI
c 腫瘍マーカー
d 胸腹部造影CT
e 腹部超音波検査


確かに、これまでに問われたことのないパターンかもしれません。そういう意味ではこの問題にもメッセージ性を感じますね…。


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2014年02月18日

第108回医師国家試験呼吸器系問題解説・悪性腫瘍と血栓症・解答と解説

それでは選択肢を考えましょう。


肺血栓塞栓症の患者にみられるのはどれか.

a PaCO2は上昇する.
b A-aDO2の開大を認める.
c 肺血流シンチグラムは正常である.
d 心エコー検査で左室の拡大を認める.
e 血液検査所見でDダイマーは正常である.



a 呼吸数が増え、換気量が増えますからPaCO2は低下します。

b 病変部の血流が減り、換気血流不均衡によってA-aDO2は開大します。

c 肺血流シンチグラムでは血流の減少を反映して欠損が見られます。

d 肺動脈が詰まるので、その手前にある右室に大きな負荷がかかり、右室肥大、右心不全になります。

e Dダイマーは感度95%以上で肺血栓塞栓症を感知する、優れものの検査です。臨床でも必須の知識ですから、必ず知っておきましょう。


ということで、回答はbでよいかと思います。


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2014年02月17日

第108回医師国家試験呼吸器系問題解説・悪性腫瘍とアレ・解答と解説

問題を再掲します。


108A25

53歳の女性.持続する乾性咳嗽を主訴に来院した.2ヵ月前に感冒様症状が出現し,咽頭痛と微熱とは消失したが,乾性咳嗽が持続している.数日前から,動悸,息苦しさ及び下腿の浮腫を自覚していた.既往歴と家族歴とに特記すべきことはない.喫煙歴はない.意識は清明.身長157cm,体重57kg.体温36.5℃.脈拍112/分,整.血圧96/50mmHg.呼吸数20/分.SpO2 92%(room air).心音と呼吸音とに異常を認めない.左下腿に浮腫を認める.血液所見:赤血球480万,Hb 14.0g/dl,Ht 42%,白血球6,500,血小板26万.血液生化学所見:総蛋白7.4g/dl,アルブミン3.9g/dl,AST 20IU/l,ALT 12IU/l,LD 296IU/l(基準176〜353),尿素窒素10mg/dl,クレアチニン0.7mg/dl,CEA 25ng/ml(基準5以下).喀痰細胞診で悪性細胞を認める.胸部X線写真(肺野に腫瘤影あり)と胸部造影CT(肺動脈内に血栓あり)とを別に示す.


この患者にみられるのはどれか.

a PaCO2は上昇する.
b A-aDO2の開大を認める.
c 肺血流シンチグラムは正常である.
d 心エコー検査で左室の拡大を認める.
e 血液検査所見でDダイマーは正常である.



先日も書きましたが、担癌患者さんは凝固能が亢進しており、しばしば血栓症を合併することが問題になっています。これまでに出題はなかったようですが、今回ついに出題された、ということですね。


まずは診断です。


2ヵ月前に感冒様症状が出現し,咽頭痛と微熱とは消失したが,乾性咳嗽が持続しているという症状から、ある程度慢性の疾患の存在が想定されます。加えて、数日前から動悸,息苦しさ及び下腿の浮腫を自覚、というところは、急性のepisode。


すなわち病態としては慢性疾患の急性増悪、または慢性疾患に急性疾患が合併した、と考えられます。


バイタルサインを見ますと、体温36.5℃とほぼ平熱で、急性感染症の気配はない。脈拍112/分と頻脈で血圧は96/50mmHgと低め、循環系に何らかの問題があることを示唆します。


呼吸数20/分と少し早め。SpO2 92%(room air)は明らかに低いです。心音と呼吸音とに異常を認めないとしているのは、明らかな心不全、肺炎ではないということでしょうか。


検査データを見ていくと…CEA 25ng/ml(基準5以下)と腫瘍マーカーの高値があり、さらに喀痰細胞診で悪性細胞を認める!という記載が。まあこれで癌は間違いなし、ということになります。ああそうか。慢性にあった疾患はこれだな、ということですが、では、急性の症状をどう考えるか。


手がかりは画像所見しかありません。まあしかし、肺動脈内に血栓のある画像は見ればわかります。100A19の問題などで必ず確認しておきましょう。


ということで、肺癌+肺血栓塞栓症の診断自体は、それほど難しくはありません。ただ、一度こういう「悪性腫瘍に血栓」という問題が出た以上、今後はこの関連を前提条件とした問題が出題される可能性があります。


つまり、悪性腫瘍があって、急に生じた胸痛と呼吸困難、といわれたら「肺血栓塞栓症」と答えていただかなくてはならないのです。臨床的にも増えてきており、緊急性もあることからとっても重要なポイントです。


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2014年02月15日

第108回医師国家試験呼吸器系問題、予想的中(笑)

第108回医師国家試験の呼吸器系問題解説依頼が来てビックリ。昨日の問題ですけど、「悪性腫瘍に合併した肺血栓塞栓症」が問題になっていました。


実は昨今、肺癌に肺血栓塞栓症が合併する例を多く経験していて、調べて見るとやはり多いなー、ということで、先だって監修を引き受けたクエスチョン・バンク呼吸器では、今後の見通しとして「担癌患者における肺血栓塞栓症の合併に注意すべし」と記述したものであります。まあ、今年の試験には間に合いませんでしたが…今度出るQBを手にされる方にとっては有用な記述となっております。


年末の12月に6回生諸君を対象に行った「国家試験対策補講」でも、特別サービスとして「担癌患者における肺血栓塞栓症」について言及したのです!お〜的中だ(笑)。


他にもいくつか新傾向を予想していましたが、全ての問題を確認したわけではないので「的中」かどうかはわかりません。またそのうち確認したいところですね。

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2014年02月14日

第108回医師国家試験呼吸器系問題解説・悪性腫瘍とアレ

6回生諸君は、医師国家試験お疲れでした。今頃思い思いのやり方で羽を伸ばしておられることでしょう。


こちらはメディックメディア社さんから、第108回医師国家試験の呼吸器系問題解説依頼が来ました。締め切りが近くタイトな日程であり、ブログ書籍化の校正と並行して行う必要があるため、こちらで解説をあらかた作っていこうと思います。


今年は全般的にも新傾向が見られた、とのことで、呼吸器系、私の担当分に関しても、おおっ、という問題が見られましたね。早速1問ずつ見て参りましょう。


108A25

53歳の女性.持続する乾性咳嗽を主訴に来院した.2ヵ月前に感冒様症状が出現し,咽頭痛と微熱とは消失したが,乾性咳嗽が持続している.数日前から,動悸,息苦しさ及び下腿の浮腫を自覚していた.既往歴と家族歴とに特記すべきことはない.喫煙歴はない.意識は清明.身長157cm,体重57kg.体温36.5℃.脈拍112/分,整.血圧96/50mmHg.呼吸数20/分.SpO2 92%(room air).心音と呼吸音とに異常を認めない.左下腿に浮腫を認める.血液所見:赤血球480万,Hb 14.0g/dl,Ht 42%,白血球6,500,血小板26万.血液生化学所見:総蛋白7.4g/dl,アルブミン3.9g/dl,AST 20IU/l,ALT 12IU/l,LD 296IU/l(基準176〜353),尿素窒素10mg/dl,クレアチニン0.7mg/dl,CEA 25ng/ml(基準5以下).喀痰細胞診で悪性細胞を認める.胸部X線写真(肺野に腫瘤影あり)と胸部造影CT(肺動脈内に血栓あり)とを別に示す.


この患者にみられるのはどれか.

a PaCO2は上昇する.
b A-aDO2の開大を認める.
c 肺血流シンチグラムは正常である.
d 心エコー検査で左室の拡大を認める.
e 血液検査所見でDダイマーは正常である.


ついに出ました、例のアレ、ですね。

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2013年08月07日

医師国家試験過去問(呼吸器系)つまずきポイント徹底解説・呼気二酸化炭素濃度の上昇

6回生のTさんからご質問をいただきました。
今日の過去問は、こちら。


102G21

呼吸ガスモニター上、呼気二酸化炭素濃度が上昇するのはどれか。

a 体温低下
b 肺塞栓症
c 肺胞低換気
d 食道内挿管
e 出血性ショック


呼気二酸化炭素濃度、ということは、呼気中に含まれる二酸化炭素の濃度ですね。それが上昇するという状態は血中の二酸化炭素濃度が上昇している、ということとほぼ同義です。


血中二酸化炭素濃度(分圧)が高いと、呼気中の濃度も高くなるわけです。


それはそれでシンプルなのですが、この問題のイヤらしいところは「食道内挿管」みたいに「呼気が出るのか?」どう考えたらいいのかハッキリしない状態を選択肢に入れているところです。これで混乱した人もいるかもしれません。


一応選択肢を一つ一つ考えましょう。


a 体温低下:体温が低下すると代謝が抑制されます。結果、二酸化炭素の産生も低下します。

b 肺塞栓症:肺塞栓症は肺動脈が詰まるだけで肺胞に障害はありませんから、換気はしっかり出来ています。換気が残って血流がなくなりますので、換気血流ミスマッチによって低酸素血症になり、それを関知した呼吸中枢の働きで過換気となり、血中の二酸化炭素濃度は低下します。

c 肺胞低換気:肺胞低換気は要するに換気してない、ということで、低酸素血症になると共に血中の二酸化炭素濃度が上昇しますので、呼気中の二酸化炭素濃度も上昇することになります。これが正解となります。

d 食道内挿管:食道内に挿管すると換気は一切出来ませんから、血中の二酸化炭素濃度は上昇してきます。ただし、挿管チューブから出てくる空気(呼気??)は胃内のガスですから、二酸化炭素をほとんど含みません。

e 出血性ショック:組織が低酸素になるため過換気になり、血中の二酸化炭素濃度は低下します。


ということで、
正解:c


となりますが、ご質問は「肺胞低換気だと、二酸化炭素を出すことができないため、PaCO2があがり、呼気からはむしろ排出されないので低下するのではないか」というもの。


これはちょっと肺胞低換気のイメージをキッチリ理解していただくようにしましょう。それと呼気二酸化炭素濃度の意味とですね。


肺胞低換気というのは分時換気量が低下した状況ですから、呼吸数が落ちるということを考えて頂くと良いでしょう。そうなると血中の二酸化炭素濃度は上昇します。


血中の二酸化炭素濃度が上昇すると肺胞から1呼吸あたり出て行く二酸化炭素も増えます(=呼気二酸化炭素濃度も上昇)。ただし呼吸回数が少ないので、たとえば1分あたりで肺から排出される量としては少ない、そんな感じで理解していただければと思います。


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2013年02月27日

第107回医師国家試験呼吸器系問題解説・高齢男性に徐々に発症する呼吸困難・解答と解説2

特発性肺線維症と診断がついたところで、選択肢について考えましょう。


×a 1秒率は閉塞性肺障害になると低下しますが、特発性肺線維症は拘束性障害です。末梢の気管支は線維化した肺胞領域に引っ張られてむしろ拡張します。
○b 拘束性障害を呈するため、肺活量は低下しますね。
×c A-aDO2は肺胞内の酸素分圧と動脈血内の酸素分圧の差でなので、低酸素血症を来す場合は開大することになります。
○d 肺拡散能は間質性肺炎があると低下します。
×e KL-6は線維化の存在で上昇します。

ということで、正解はb,dとなります。


特発性肺線維症は毎年必ず出題されるといってもいいですね。キャラも立っているし、議論の余地もあまりない、ある意味出題しやすい疾患といえます。


逆に特発性肺線維症以外の特発性間質性肺炎は、臨床の現場で診断や分類に議論のあるところでもあり、診断確定には生検が必要なのですが、組織を見ても学生さんレベルでは診断がつくとも思えず、問題にしにくいことから、これまではあまり出題されていないように見受けます。


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2013年02月26日

第107回医師国家試験呼吸器系問題解説・高齢男性に徐々に発症する呼吸困難・解答と解説1

まずは診断から。徐々に増強する労作時の呼吸困難から、慢性の呼吸器、循環器疾患の存在を想定します。で、両側背下部にfine cracklesを聴取。もうこれで、間質性肺炎の存在は明らかとなります。


大事なので、もう一度書きます。


fine crackles=間質性肺炎、です。


そうです。fine cracklesが聴かれたら、そこには間質性肺炎があるのです。


これ、臨床でも本当に大事ですからね。カルテに「fine cracklesを聴取」って書くときは、「この患者さんの肺には間質性肺炎がある」と書いてるのと同じことである、ということを肝に銘じておきましょう。


サーファクタントプロテインD高値、まあこれもダメ押しで間質性肺炎の存在を示唆しますが、とにかくfine cracklesがあるんだから間質性肺炎があるのです。


で、画像所見は両側下肺野に網状影、実物は肺容量低下と肺底部、胸膜直下優位に蜂巣肺を認めました。線維化のしるしですね。この特徴的な画像所見から、間質性肺炎の中でも特発性肺線維症が出てこないようではアキマセン。よーくポリクリで画像を見せてもらって下さいね。


もう、間質性肺炎で特発性だったらこれぐらいしかないわけですから、必ずや特徴をしっかりと押さえておくべきなのです。ナゼか。理由は明日。


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2013年02月25日

第107回医師国家試験呼吸器系問題解説・高齢男性に徐々に発症する呼吸困難

107D52

68歳の男性.労作時の呼吸困難を主訴に来院した.3年前から労作時の呼吸困難を自覚していたが,3ヵ月前から徐々に増強した.喫煙は20本/日を35年間.10年前に禁煙した.既往歴と家族歴とに特記すべきことはない.意識は清明.身長172p,体重73kg.脈拍72/分,整.血圧136/76mmHg.呼吸数18/分.SpO2 95%(room air).聴診で両側の背下部にfine cracklesを聴取する.血液所見:赤血球461万,Hb 13.9g/dl,Ht 44%,白血球8,700(好中球58%,好酸球5%,単球6%,リンパ球31%),血小板26万.血液生化学所見:総蛋白7.6g/dl,アルブミン4.1g/dl,尿素窒素14mg/dl,クレアチニン0.9mg/dl,AST 22IU/l,ALT 19IU/l,LD 247IU/l(基準130〜235).免疫学所見:CRP 1.0mg/dl,サーファクタントプロテインD〈SP-D〉240ng/ml(基準0〜109).胸部X線写真と胸部高分解能CTでは両側肺底区中心に網状影あり.


この患者で低下しているのはどれか.2つ選べ.

a 1秒率
b 肺活量
c A-aDO2
d 肺拡散能
e 血清KL-6


これも取らなアカン問題じゃないでしょうか。


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2013年02月22日

第107回医師国家試験呼吸器系問題解説・疾患と呼吸機能異常との組合せ・解答と解説

今日は症例問題ではありませんので、早速、選択肢について考えましょう。


×a 肺気腫は肺胞が破壊されて、呼気時に閉塞性障害が生じ、肺の中にだんだん空気が溜まってくることで過膨張を来すものです。結果、最大呼気位でも吐ききれない空気(=残気量)は増加します。

○b 肺コンプライアンスとは肺の柔らかさを表すので、高いと肺は柔らかい、低いと硬いということになります。肺線維症では肺は硬くなるため、コンプライアンスは低下する、ということになります。

×c 肺動静脈瘻は、動脈と静脈が毛細血管を介さずに直接接続し、肺内のシャントによって低酸素血症になるものです。肺胞の病気ではないので、拡散能は低下しません。

×d 呼吸筋麻痺が生じると、換気量が低下します。しかし、肺胞は影響を受けないため、換気血流不均等分布は生じません。

×e 肺血栓塞栓症は血管が閉塞する病態ですから、気道が閉塞することによって生じる1秒率の低下は起こりません。


リンク先には詳しい説明がありますので、物足りない方はその項目をお読みください。


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2013年02月21日

第107回医師国家試験呼吸器系問題解説・疾患と呼吸機能異常との組合せ

107B13

疾患と呼吸機能の異常との組合せで正しいのはどれか.
a 肺気腫・・・・・・残気量の減少
b 肺線維症・・・・・・肺コンプライアンスの低下
c 肺動静脈瘻・・・・・・肺拡散能の低下
d 呼吸筋麻痺・・・・・・換気血流不均等分布
e 肺血栓塞栓症・・・・・・1秒率の低下



こちらも基本、というか必須事項が並んでいます。いつも似たようなことを聞かれるので、是非知っておきたいものですね。


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2013年02月20日

第107回医師国家試験呼吸器系問題解説・若い女性の息切れ・解答と解説2

特発性肺動脈性肺高血圧症と診断ができたところで、選択肢について考えます。


特発性肺動脈性肺高血圧症は左心系に異常がないにもかかわらず、肺高血圧症ですから肺動脈圧が高い、というのが血行動態の特徴です。


平均肺動脈楔入圧(PAWP)はほぼ左房圧に等しい、ということで特発性肺動脈性肺高血圧症においては正常値をとると考えられます。それに対して平均肺動脈圧は上でも書いたとおり高い、ということで、正解は…。


×a
×b 
×c 
○d 
×e 


となります。


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2013年02月19日

第107回医師国家試験呼吸器系問題解説・若い女性の息切れ・解答と解説1

徐々に進行する労作時の息切れ、動悸があって、所見としては肺動脈の拡大、右室肥大所見を呈する疾患はなんでしょうか。


少なくとも、肺高血圧症があり、しかも若年女性。ただし、中学、高校で陸上部に所属していた、という記載からは先天性心疾患はちと違うか…。


ということで、特発性肺動脈性肺高血圧症を想起することは困難ではないでしょう。


まあ、若年女性に徐々に進行する労作時の息切れ、と来たら国試レベルでは2つです。何でしょうか(そっちから攻めるのかい)。






1つはこの、特発性肺動脈性肺高血圧症(idiopathic pulmonary arterial hypertension:IPAH)、そしてもう1つは、肺リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis:LAM)ですね。


問題としては、若年女性に徐々に進行する労作時の息切れがあり、肺動脈の拡大、右室肥大所見を呈する、となりますとIPAHでしょうし、肺野にCTなどで低吸収域、というか嚢胞があり、気胸や呼吸困難といったエピソードがあればLAM、ってことになるでしょう。


いずれもかなりキャラが立っていますので、過去問を何問かやれば診断は難しくないと思います。実臨床でも、頻度としては少ないですが、やはりこんな感じで受診されることが多いので、国家試験勉強の中でこうやって覚えておくことは意味があると思います。


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2013年02月18日

第107回医師国家試験呼吸器系問題解説・若い女性の息切れ

107A30

28歳の女性.労作時の息切れと動悸とを主訴に来院した.生来健康で,中学と高校では陸上部に所属していた.1年前に第1子を出産した頃から,自宅の階段を昇る時に息切れと動悸とを感じるようになった.次第に症状が強くなり,1週前に急いで階段を昇った時に眼の前が暗くなったため,心配になり受診した.既往歴と家族歴とに特記すべきことはない.意識は清明.脈拍80/分,整.血圧98/66mmHg.SpO2 94%(room air).両側の頸静脈の怒張を認める.呼吸音に異常を認めない.心臓の聴診でU音の亢進を認める.血液所見:赤血球480万,Hb 14.7g/dl,Ht 46%,白血球8,500,血小板17万.胸部X線写真(肺動脈突出像)と心電図(V1のR波増高、V5,6の深いS波).



この患者で予想される血行動態はどれか.

平均肺動脈楔入圧 平均肺動脈圧
a 高値 高値
b 高値 正常
c 高値 低値
d 正常 高値
e 低値 低値


この症例も割と頻出のように思います。やはりこういうキャラの立った疾患は問題にしやすいのですね。


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2013年02月17日

第107回医師国家試験呼吸器系問題解説・微妙な免疫低下状態に合併した結節影の鑑別・解答と解説2

まあ、クリプトコッカスがわからなくても、何とか正解に至ることは可能だと思います。


訳のわからない染色で酵母のようなものが染まっている。ということで真菌かなと考えるわけですが、アスペルギルスは外因性感染、β-D-グルカン高値で原因微生物はAspergillus fumigatesであることから、正しい選択肢が2つとなってしまいます。これはおかしい。


もう一つ、よく問われるニューモシスチスにしても、内因性感染で、β-D-グルカン高値、ST合剤で予防が可能、という点から正解選択肢が3つにもなってしまう。


正解が1つであるとすれば、これらではない。じゃあこの中で1つだけ選ぶとなると、よくわからないけれども血清抗原検査の感度が高い、ぐらいかな?と考えられれば(結果的に)正解に至ることになるのです。(・U・)



…まあ、そんなこと言わずに、墨汁染色像を覚えておきましょう。過去問ではどこかで見たような気がするのですが…QBには墨汁染色=クリプトコッカスについての問題が掲載されていないので、この問題は今年分のQBに掲載しましょうかね。


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2013年02月16日

第107回医師国家試験呼吸器系問題解説・微妙な免疫低下状態に合併した結節影の鑑別・解答と解説

墨汁染色で見られる物体を知っているか知らないか。


墨汁染色を行う意味は、夾膜を有する菌体の存在を見たいからなのです。夾膜は墨汁で染まらず、周りの黒に対して色が抜けるためよく見えるのです。胸膜を持つ、球形の酵母様菌体を持つ菌として、クリプトコッカスを想起しましょう。


国試レベルであれば、菌体が何らかの染色で示される感染症はそれほど多くありません。Ziehl-Neelsen染色における抗酸菌、Grocott染色におけるアスペルギルス、ニューモシスチスと並んで、墨汁染色のクリプトコッカスは是非覚えておきたいものですね。


選択肢について考えます。

×a:クリプトコッカスは主に鳩などの糞の中で増殖して、排泄された糞からモワモワ空気中に浮遊し、それを吸い込むことで感染が成立する、典型的な外因性感染です。

○b:肺クリプトコッカス症における血清抗原検査の感度は、ある程度以上の大きさ(2cm以上)の病変に関しては高いといわれています。これが正解。

×c:クリプトコッカス症において血清β-D-グルカン値は通常、上昇しないのが特徴です。真菌感染と思ってこれを選んではいけません。

×d:発症予防にST合剤の内服が有効であるのはニューモシスチス肺炎です。クリプトコッカスの予防には抗真菌薬を使います。

×e:原因微生物はCryptococcus neoformansであります。


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2013年02月15日

第107回医師国家試験呼吸器系問題解説・微妙な免疫低下状態に合併した結節影の鑑別

6回生諸君は、医師国家試験お疲れでした。今頃思い思いのやり方で羽を伸ばしておられることでしょう。


こちらは某M社さんから、第107回医師国家試験の呼吸器系問題解説依頼が来ました。締め切りが近くタイトな日程であり、ブログ書籍化の校正と並行して行う必要があるため、こちらで解説を作っていこうと思います。


今年は全般的には難しかったとのことですが、呼吸器系の私の担当分に関しては、これまでの傾向とそう変わらず、割と素直な問題が多かったように思います。早速1問ずつ見て参りましょう。



107A28

65歳の女性.全身倦怠感と微熱とを主訴に来院した.1週前から全身倦怠感を自覚していた.3日前から37℃台の微熱が続いている.5年前から関節リウマチで抗リウマチ薬と副腎皮質ステロイドとを服用中.意識は清明.身長156cm,体重46kg.体温37.4℃.脈拍92/分,整.血圧120/70mmHg.呼吸数14/分.SpO2 97%(room air).心音と呼吸音とに異常を認めない.血液所見:若干の炎症のみ.胸部X線写真で右側下肺野に多発結節影を認める.気管支肺胞洗浄〈BAL〉液の墨汁染色標本とを下に示す.


これは実際の写真と違いますが、まあこんな感じのものです。


107A28墨汁染色で見られる夾膜を有する菌体.jpg


この疾患について正しいのはどれか.
a 内因性感染である.
b 血清抗原検査の感度は高い.
c 血清β-D-グルカン値は上昇する.
d 発症予防にST合剤の内服が有効である.
e 原因微生物はAspergillus fumigatusである.


これは墨汁染色で見られる物体を知っているか知らないか、ってことなんですが、色々な面から正解は1つしか出てきません。関連事項を是非知っておきましょう。

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2012年07月27日

医師国家試験過去問(呼吸器系)つまずきポイント徹底解説・サイトメガロウイルス肺炎

大澤先生に聞いてみよう!シリーズ第2弾。
今日の過去問は、こちら。


98D-13

46歳の女性、呼吸困難のため来院した。数年来、関節リウマチに対して副腎皮質ステロイド薬による治療を受けていたが、急激に呼吸困難が増強してきた。胸部X線写真で、両側中下肺野にすりガラス影が見られた。気管支肺胞洗浄液Papanicolaou染色標本を別に示す。

診断はどれか。

a 肺胞出血 b 薬剤性肺臓炎 c 肺血栓塞栓症 d ニューモシスチス肺炎 e サイトメガロウイルス肺炎



これは、別に示された封入体細胞(ここには掲載できませんので、国試過去問を参照してください)を認識し、封入体細胞=e サイトメガロウイルス感染、と結びつける問題であります。


学生さんからのご質問は、「封入体って何ですか?何でこんなふうに見えるんですか?」


以下、大澤先生による回答を引用します。


黒目の部分にウイルス粒子がたくさんあるようです。電子顕微鏡では核内および細胞質内いずれの封入体にもウイルス粒子が確認されます。日本病理学会のコア画像(http://jsp.umin.ac.jp/corepictures2010/05/c08/04.html)がまさしくフクロウの目に見えて、くちばしも見えそうな勢いです。


なぜhalo(白目の部分)ができるかはさすがに検討した論文が見つかりませんでしたが、フクロウの目ができるまでを観察している論文を読みますと、「三つ目」は未熟で「片目」が最も成熟した段階のようです。


国家試験レベルでは、フクロウの目→CMV感染、で終わりですが、実際の診断では

*CMVは核内にも細胞質内にも封入体を形成するが、ヒトヘルペスウイルス属の中で細胞質封入体を形成するのはCMVだけなので、細胞質封入体を見たらCMVの他に単純ヘルペスの抗体が上昇していようが水痘・帯状疱 疹ウイルスの抗体が上昇していようがその臓器についてはCMV感染と診断される。

*CMVの診断でフクロウの目の有無を問われないのはCMV網膜炎(おいそれと生検できないので眼底所見±前房水や硝子体液からのCMV-DNAの検出で診断)だけ。他の臓器の感染症ではフクロウの目は確定診断には必須(しばしば検査できないこともありますが)、と日本造血細胞移植学会のCMV感染症のガイドラインにあります。http://www.jshct.com/guideline/pdf/guideline_CMV_2.pdf


論文によると感染細胞には早期(感染後6時間)からそれなりの形態変化が起こっています。組織を採取して免疫染色なりin situ hybridizationなりで染まっても形態変化がない部分が染まったらそれは非特異的な反応ではないか?(超急性期では形態変化は起きないのかもしれませんが組織を採取しているということはその時点では感染の超急性期ということはあまりないはず)など、最新の免疫染色やDNA検査よりもまずHE染色やパパニコロウ染色のフクロウの目ありき、のようです。CTや採血検査よりも病歴と身体所見、とする先生の主張に似ています。
(引用ココまで)


病理の教科書にも載ってないし、どうしようかなと思っていましたが、haloの部分ができる理由は不明なのですね。CMVの診断のことも、やはりフクロウの目が大事、ということでよくわかりました。

大澤先生、どうもありがとうございました。それでは17時30分からセミナー、よろしくお願い申し上げます。


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2012年07月26日

医師国家試験過去問(呼吸器系)つまずきポイント徹底解説・レジオネラ肺炎はなぜ、全身症状を起こすのか

6年生からの質問にお答えするコーナー、実は未解決の問題がありました。


私自身よくわからなくて、回答保留にしていた問題ですが、明日夕方にある感染症セミナーにおいでいただく草加市立病院 健康管理課 医長の大澤先生にお尋ねしたところ、快くお答えいただいたので、せっかくのご回答をシェアしたいと思います。


まず1つめは、「レジオネラ肺炎は肺炎なのに全身症状が出るのはナゼでしょうか?」
う…なんでやろ…あまり考えたことがなかったです。大澤先生、教えてください〜。


以下、回答を引用します。一部改行挿入など、読みやすく改変しております。

:::::::::::


これについては感染症領域で成書参照、というときによく出てくる「マンデルの感染症」に「レジオネラ菌が細胞内寄生した単球が関与している可能性はあるが今のところよくわかっていない」とビシッと書かれていました。書かれるだけにみんな不思議に思っていることなのでしょう。


学生さんにお伝えしていただきたいのですが、レジオネラのように説明のつかない全身症状・多/他臓器症状を引き起こすものこそ、臨床医が最も見逃してはいけない(でも診断はしばしば難しい)急性重症感染症なのです。


国家試験の勉強で出会うのはレジオネラくらい(充分危険です)でしょうが、出血性ウイルス熱、リケッチア症、熱帯熱マラリア、腸チフス(日本語では「腸のチフス」みたいですが、英語では「typhoid fever」で「チフスみたいな熱性疾患」でより実情に近い)などなど、空港近くの病院で働けば出会うかもしれない疾患がその括りの中にはたくさん転がっています。


また、劇症型溶連菌感染症、黄色ブドウ球菌などの毒素性ショック症候群、脾摘後の全身性肺炎球菌感染症などは普通の病院でもやってきますし、実際草加市立病院にもやってきました。


臓器別の勉強では理解困難な領域ですが、「理解困難」といえるのはしっかり臓器別の勉強ができている人だけです。(最低限の検査をしないで「不明熱」と言ったらシバかれるのと一緒です)。


レジオネラはそういうものなんだ、で流さなかった学生さんはきっとよき医師になるでしょう。よき総合診療医、よき感染症医にもなれますが、是非よき呼吸器内科医になっていただきたいですね。


学生さんへの答えにはなりませんが、全身症状を呈する急性重症感染症の病原体は前述のように原虫、細菌、リケッチア、ウイルスとさまざまなので、病原体そのものの問題ではなく、病原体とホストの相互作用の問題のように思います。


前述の病原体がサイトカインのネットワークをホストが不利になる方向に傾ける誘因をもっているのでしょう。溶連菌ならSpeA、黄色ぶどう球菌ならTSS-1がスーパー抗原になりえる蛋白質として同定されています。
レジオネラや熱帯熱マラリアでこのような分子が同定できれば大発見、特に熱帯熱マラリアならWHOに招かれるかもしれません…。
(引用ココまで)


脳に病原体が行って…ということではなく、サイトカインやその他の要因がある、ということですね。病理の教科書を見ても脳の病変にはあまり触れられていないので、そうかなとは思っていましたが、自信がありませんでした。

それと、臨床医の心得も頂きました。こちらは是非かみしめておきたいものです。


大澤先生、どうもありがとうございました。

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2012年07月18日

医師国家試験過去問(呼吸器系)つまずきポイント徹底解説・上大静脈症候群における下行性の静脈怒張

今日の過去問は、こちら。

100B-30

前胸壁に下行性の静脈怒張を認めるのはどれか。すべて選べ。

a 肝硬変 b 肺血栓塞栓症 c 上大静脈症候群 d Budd-Chiari症候群 e 骨盤内深部静脈血栓症



身体所見の重要性はいうまでもありませんが、身体所見から得られる情報は、論理的に考えていくことで得られます。今後こういう問題が解けるようにポリクリ、臨床実習でも、ボーッと所見をとるのではなく、論理的に考えながらやるように心がけたいものです。


胸壁、あるいは腹壁に静脈怒張があった場合、その意味するところはどういうことか。機序を理解しておくと、身体所見から論理的に鑑別が導かれるわけです。


まず言葉の定義。胸壁に静脈怒張がある、というのはこういうことです。これはわかるでしょう。


1胸壁の静脈怒張.JPG


胸壁に下行性の静脈怒張、ということは、怒張した静脈内を流れる血流が、下向きであるということ。


2下向きの血流が流れる=下行性静脈怒張.JPG


ちなみに下行性であるかどうか確認するには、


3下行性静脈怒張の確認.JPG


怒張静脈の上部と下部に指をおいて、間の血管がcollapseした後にどちらか一方を離してみるとわかります。


4下行性静脈怒張.JPG


5上行性静脈怒張.JPG


それでは、選択肢について考えましょう。


  • a 肝硬変×:肝硬変では門脈圧が上昇し、本来門脈を通過するはずの血流が臍傍静脈を通って腹壁静脈に逃げる、いわゆる「メズサの頭」所見を呈します。これは臍傍静脈を中心に放射状に流れるものですから、臍より上に行く静脈では上行性の怒張となるはずです。

  • b 肺血栓塞栓症×:肺血栓塞栓症では肺動脈に血栓、塞栓がつまります。静脈系には影響を来しません。

  • c 上大静脈症候群○:上大静脈が圧迫を受けたり閉塞したりすることで、上大静脈を通って右房に還るべき血流が、上大静脈を通れずに皮静脈経由で下へ流れます。つまり、下行性静脈怒張を来します。

  • d Budd-Chiari症候群×:門脈圧亢進症です。

  • e 骨盤内深部静脈血栓症×:骨盤内の腸骨静脈などに起こる血栓ですので、下肢の浮腫や発赤主張、疼痛が主症状です。皮静脈の怒張は下肢に、上行性に生じます。



上大静脈症候群の機序を図にしました。


6本来の上大静脈の流れ.JPG


7せき止められて側副血行路へ.JPG


これで一段落つきましたので、いったん医師国家試験過去問から離れようと思います。
質問は随時受け付けますので、ご遠慮なくどうぞ。


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2012年07月17日

医師国家試験過去問(呼吸器系)つまずきポイント徹底解説・肺動脈性肺高血圧症2

今日の過去問は、こちら。

94F-7

41歳の女性。今朝数歩走った後、激しい動悸と呼吸困難があり、その後意識消失したので救急車で来院した。到着時には意識は回復していた(中略。徐々に増強する労作時息切れ。U音亢進と駆出性収縮期雑音。肝を2cm蝕知。胸部レントゲン写真で肺動脈拡大と心電図の右軸偏位を認める)。

この疾患について正しいのはどれか。すべて選べ。

a 左室肥大 b 肺血流増加 c 右室腔拡大 d 肺血管抵抗増加 e 肺動脈楔入圧高値



示された所見などから、肺高血圧、右心負荷所見を読み取ることはそれほど難しくはないと思います。徐々に発症する病歴も併せて、肺動脈性肺高血圧が考えられたら、あとは病態に当てはめて考えましょう。


病態、機序については、心不全の病態3・左心不全と右心不全1と、心不全の病態4・左心不全と右心不全2をお読みください。



  • a 左室肥大×:左室肥大は全身の高血圧で起こりますが、肺高血圧では生じません。

  • b 肺血流増加×:肺動脈性肺高血圧症は、肺動脈が「締まる」ことで圧が上昇する疾患と考えれば、肺血流が減少すると理解できます。

  • c 右室腔拡大○:肺高血圧による右心負荷のために右室拡大を来します。

  • d 肺血管抵抗増加○:そもそもこれによって、肺動脈圧が上昇するわけです。

  • e 肺動脈楔入圧高値×:肺動脈楔入圧は、左房圧を反映します。つまり、左心不全の指標です。



つまずきポイントは、b 肺血流増加でした。何となく圧が上がるので、血流が増える?みたいな連想だったのでしょうか。


そもそも事の起こりが、「肺動脈が締まる」こと、と考えて理解しましょう。
左心不全、右心不全の違いもしっかり区別しておきましょう。


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2012年07月13日

医師国家試験過去問(呼吸器系)つまずきポイント徹底解説・肺動脈性肺高血圧症

今日の過去問は、こちら。

104A-29

19歳の女性。動機と胸痛とを主訴に来院した。生来健康であったが、1ヶ月前から足のむくみを自覚するようになった。(中略。50m走って失神したコトがある、心電図で右心負荷所見、エコーで拡大した右室を供覧)

この疾患で見られるのはどれか。すべて選べ。

a 喘鳴 b 経静脈怒張 c coarse crackles d 発作性夜間呼吸困難 e 肺動脈性U音の減弱



19歳女性で生来健康であった方が、このタイミングで発症した右心負荷所見から、肺動脈性肺高血圧症の診断は困難ではないでしょう。で、何を問うているかといいますと…


「この選択肢は、左心不全か、右心不全か、どちらによるものか」を問うているのです。


これはもう、心不全の病態3・左心不全と右心不全1と、心不全の病態4・左心不全と右心不全2をお読みいただければ、機序からご理解いただけると思うのですが、かいつまんで書きますと、


左心の前方不全では、倦怠感・疲労感に四肢の冷感、
左心の後方不全では、(労作時、夜間の)呼吸困難、起座呼吸、それに肺の湿性ラ音が

症状として認められ、

右心の前方不全では、(労作時、夜間の)呼吸困難、起座呼吸が、
右心の後方不全では、全身の浮腫、静脈系の拡大、拡張、肝のうっ血と腫大、消化器症状が

症状として認められる、ということです。

しかしながら、実は右心の前方不全が単独で起こることはまれで、左室の後方不全による肺うっ血が出る、という事態が圧倒的です。左心の障害の方が起きやすいことと、右心系の圧が比較的低圧であることによると思われます。


ということで、右心不全で起こってくるのは静脈系の怒張、すなわちbが正解となります。

ちなみにe 肺動脈性U音 は、肺動脈系の圧が上がる病態では亢進します。


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2012年07月12日

医師国家試験過去問(呼吸器系)つまずきポイント徹底解説・closing volume(とclosing capacity)の測定方法2

まず、最大呼気位まで息を吐きます。息を呼出したときには、肺底部の肺胞は肺自らの重みのため、ぺちゃんこになっていて、肺尖部の肺胞には空気が残っています。次に、純酸素(100%O2)を最大吸気位まで吸入します。すると、容量変化の大きな肺底部に多くのO2が流入します。


5容量変化の大きな肺底部に多くのO2が流入.JPG


そのため、この最大吸気位での時点では肺尖部のN2濃度が高く、肺底部はO2濃度が高い(N2濃度が低い)、ということになります。


その後呼出し、口元で呼気中N2(窒素)濃度を測定すると、まず気管内にある100%O2が出てきます。


6まず気管内の100%O2 が出てくる.JPG


つまり、単一呼出曲線でいうと、出だしのN2=0%の相は、気管の中にあった100%O2が出てきている相になります。


7単一呼出曲線の出だしの相(第1相).JPG


息を吐き続けていると、やがてもう少し末梢の気管支内に含まれる100%O2と、早いところでは肺胞領域の中のガスが混合されて出てきます。肺胞領域の中では、まず(重みでつぶれてくる)肺底部から呼気が出てきます。


8気管の次には、重みでつぶれる肺底部の肺胞からO2濃度の高いガスが出てくる.JPG


つまり、単一呼出曲線でいうと、出だしのN2=0%の相に引き続いて、気管支の100%O2と肺底部の酸素濃度の濃い(N2濃度の薄い)ガスの混合気が出て来る相になるのです。この段階になるとN2濃度は0%から跳ね上がります。


9単一呼出曲線の第2相.JPG


その後は肺底部の比較的O2濃度が高めのガスが呼出されます(第3相)。この相においては、徐々にN2濃度はほぼ横ばいです。とはいえ、肺底部から、徐々に上方の肺胞(O2濃度が少しずつ低下する)のガスが出てくるようになり、N2濃度が徐々に上がってきます。


10肺底部から、徐々に上方の肺胞のガスが出てくるようになり、N2濃度が徐々に上がる.JPG


そのため単一呼出曲線においても、ほぼN2濃度がプラトーになりつつじわじわ上昇する、そんな第3相が見られるのです。


11単一呼出曲線の第3相.JPG


その後も呼出し続けて呼気の終わりの方になってくると、とうとう肺底部からのガスが出尽くして呼出が止まりはじめ、肺尖部の肺胞内ガスが出始めます。肺底部からのガスが出尽くす、そのタイミングは(肺底部の)末梢気道が閉塞するタイミング、と考えられ、そのタイミングから息を吐ききるまでに呼出した量を閉塞しかける肺気量(=クロージングボリュームclosing volume, CV)と呼ぶのです。


12肺底部の末梢気道閉塞により、肺尖部からの(N2濃度の高い)ガスが出始める.JPG


肺底部の気道が閉塞すると、肺の上の方、つまりN2濃度の高い(O2濃度の低い)ところのガスが出てきますので、呼気のN2濃度が急激に高くなってくるのです(第4相)。


13単一呼出曲線の第4相.JPG


この第3相から第4相に切り替わってから後の呼出量(肺気量)をクロージングボリュームとしています。クロージングボリュームは末梢気道障害を反映します。末梢気道障害が起こると肺底部の気道閉塞(クロージング)のタイミングが早くなり、クロージングボリュームが増加することになります。


クロージングボリュームが若い健常者であれば肺活量の10%程度です。これが20〜25%以上になれば末梢気道障害があり、換気障害が低酸素血症の原因となりうるといわれています。


ただコトが単純でないのは、クロージングボリュームは加齢に伴って増加が見られる、ということです。65歳頃もなると、実に肺活量の40%に達するとされています。ですから、単純なカットオフ値というものはなく、単一呼出曲線のグラフやその他の指標を見て総合的に判断する、ということになります。


なお、クロージングボリュームに、息を吐ききったときに肺内に残っている空気の量=残気量を加えたものをクロージングキャパシティー(closing capacity:CC)といいます。


14クロージングキャパシティー.jpg


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