副鼻腔気管支症候群は、咳嗽に関するガイドライン第2版によると、日本における慢性咳嗽の3大原因疾患の1つであるとされています。実際、少なくとも副鼻腔炎による後鼻漏を含めれば、「慢性の咳」症例の原因としては相当多い印象があります。
おそらく線毛機能の低下によって、元々クリアランスの悪い副鼻腔や中葉、舌区などに慢性感染が生じ、長期間の経過で気管支壁の破壊、修復〜気管支拡張が起こってくると考えられています。
困ったことに欧米には「副鼻腔気管支症候群」という概念がなく、(おそらく人種によって表現型が異なり、びまん性汎細気管支炎(DPB)などはほとんどないようです)後鼻漏や鼻副鼻腔炎、上気道咳症候群といった病名に含められているようで、欧米と日本の疾患概念をすり合わせることが難しいのが現状です。
日本の概念、定義としては、上気道〜下気道の慢性・反復性好中球性気道炎症で、慢性副鼻腔炎に慢性下気道感染症や気管支拡張症、甚だしいものでは両側びまん性に病変が生じる、DPBを合併した病態となります。
診断基準は割とハードルが低い、というか副鼻腔炎+後鼻漏だけでもコレに入ってしまうような基準になります。
- 8週間以上続く呼吸困難発作を伴わない湿性咳嗽
- 次のうち1つ以上を認める
1)後鼻漏、鼻汁、咳払いなどの副鼻腔炎症状
2)敷石状所見を含む口腔鼻咽頭における粘液性あるいは粘膿性の分泌液
3)副鼻腔炎を示唆する画像所見 - 14,15員環マクロライド系抗菌薬や去痰薬による治療が有効
参考所見として、画像的に副鼻腔炎と気管支拡張や細気管支炎を認めますが、X線写真では一般に副鼻腔炎の診断には感度が低いとされていて、副鼻腔のCTで液の貯留などを判定することが多いです。

また、胸部X線写真で索状影、CTでは気管支拡張や小葉中心性粒状影などの存在が見られることも診断の参考になります。
鼻汁や喀痰中の好中球増加を証明すればそれに越したことはありませんが、特段治療方針が変わるわけでもありませんので、それほど熱心にはされていないと思います。
呼吸器診断手順をガイドされる