昨日のご質問は、
「間質性肺炎利用者の夜間咳嗽(主治医はフスコデシロップを処方しています)を軽減させる方法や自宅で本人ができる呼吸リハビリをお願いできればうれしいです。」
というものでした。ちょっとお答えが遅くなってスミマセン。
まずは間質性肺炎症例における夜間の咳ですが、コレが結構難しい、のです。なぜか。咳の原因、理由がさまざまであるから。当然、原因によって使用すべき薬も異なります。ハズレの薬では全く効きません。
もっとも直接的な原因は、線維化、炎症そのものによる刺激です。これは現病の治療(ステロイド、免疫抑制薬、抗線維化薬)以外に、介入することはなかなか難しい。結果、主として中枢性鎮咳薬を使用することになります。そうすると、ご質問のフスコデや、よく使われるのはリン酸コデインなどですが、そういう弱オピオイド系薬を使ってもなかなか止まらない、というケースが見られます。そのときは塩酸モルヒネまで行くことも…。
ただ、他にも原因があって、まあ、多いのは後鼻漏でしょうか。特に在宅酸素をしている方は鼻腔が冷えたり乾燥したり、ということから水様鼻汁が結構あるのです。それが前に出ていると「鼻水」と認識されるのですが、後ろに垂れると「のどに痰が絡む、咳が出る」という症状に。
夜間に限らず臥床で咳が出る、うつぶせになると(前に流れるので)咳が軽減する、などのことがあれば、点鼻ステロイドや抗ヒスタミン薬(第1世代)を使ってみるといいでしょう。
それ以外に、例えば喘息の要素があることも。夜間の咳、というキーワードに加えて、季節性であったり、急に冷えたりのときに咳が多い、とかでしたら、アドエアやシムビコートを就寝前に使ってみてもいいかもしれません。効果があれば喘息です。効果がなければ中止で。
また、胃食道逆流でも臥床で咳が出ることがあります。前屈位で増強するようならさらにあやしい。この場合はPPIなどの制酸薬が効果的です。
そこまでやっても原因がよくわからない、あるいは上記のどれも効かない、となってくると、困ったときの漢方薬、となることがあります。
ただ、漢方薬はそれこそ、「証」を見て合うものを選ばないと、全く効かない。患者さんが漢方嫌いになったりしますので…。簡単に挙げると、乾燥症状を伴う乾性咳嗽には麦門同湯、誤嚥がありそうなら半夏厚朴湯。それ以外に、麻杏甘石湯が良かったりすることもあります。他にもいくつかありますが、ちょっとマニアックになってくるので、この辺で。
何気なく投与している酸素についてちゃんと考えるを最初から読む
咳の鑑別を最初から読む
2013年09月13日
在宅酸素療法・在宅人工呼吸療法症例におけるご質問・間質性肺炎症例の夜間咳嗽
posted by 長尾大志 at 23:22
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| 3学会合同呼吸療法認定士認定試験対策講座
2013年09月11日
3学会合同呼吸療法認定士認定試験対策講座・酸素解離曲線7・酸素解離曲線の移動する条件・その他の条件・温度と2.3‐DPG
要するに右方移動とは、酸素を離しやすくなること。
左方移動は酸素を結合しやすくなることです。
CO2、pH以外にも酸素解離曲線に影響を与える因子があるのですが、どれもCO2同様、
肺胞(っぽい)環境で左方移動(酸素を結合しやすくなる)し、組織(っぽい)環境で右方移動(酸素を離しやすくなる)する。
と覚えておけば問題ありません。なんと生物、人間はうまいことできてるんでしょうね!
その因子は温度、それと2.3‐DPGです。
肺胞では体温は外気に触れていますから低め、となり、組織は活動しているから高め、となりますね。したがって、低体温では左方移動、高温では右方移動します。
DPGはちょっとピンと来ませんが、ジフォスフォグリセレートという赤血球の最終代謝産物の一つです。高地や慢性の低酸素状態で上昇し、輸血用に貯蔵された血液では枯渇する、とされていて、酸素が少ない状態=組織っぽい環境では上昇する、と考えて下さい。
ではまとめましょう。
■肺胞ではHbとO2がくっつきやすい方がいい。
→同じPaO2でもSaO2が高くなる方向へ=左方移動。
肺胞って、低炭酸ガス血=アルカレミア、低体温、2.3‐DPGの低下がある。
■組織ではHbとO2が離れやすい方がいい。
→同じPaO2でもSaO2が低くなる方向へ=右方移動。
組織って、高炭酸ガス血=アシデミア、高体温、2.3‐DPGの上昇がある。
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左方移動は酸素を結合しやすくなることです。
CO2、pH以外にも酸素解離曲線に影響を与える因子があるのですが、どれもCO2同様、
肺胞(っぽい)環境で左方移動(酸素を結合しやすくなる)し、組織(っぽい)環境で右方移動(酸素を離しやすくなる)する。
と覚えておけば問題ありません。なんと生物、人間はうまいことできてるんでしょうね!
その因子は温度、それと2.3‐DPGです。
肺胞では体温は外気に触れていますから低め、となり、組織は活動しているから高め、となりますね。したがって、低体温では左方移動、高温では右方移動します。
DPGはちょっとピンと来ませんが、ジフォスフォグリセレートという赤血球の最終代謝産物の一つです。高地や慢性の低酸素状態で上昇し、輸血用に貯蔵された血液では枯渇する、とされていて、酸素が少ない状態=組織っぽい環境では上昇する、と考えて下さい。
ではまとめましょう。
■肺胞ではHbとO2がくっつきやすい方がいい。
→同じPaO2でもSaO2が高くなる方向へ=左方移動。
肺胞って、低炭酸ガス血=アルカレミア、低体温、2.3‐DPGの低下がある。
■組織ではHbとO2が離れやすい方がいい。
→同じPaO2でもSaO2が低くなる方向へ=右方移動。
組織って、高炭酸ガス血=アシデミア、高体温、2.3‐DPGの上昇がある。
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posted by 長尾大志 at 20:36
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| 3学会合同呼吸療法認定士認定試験対策講座
2013年09月10日
3学会合同呼吸療法認定士認定試験対策講座・酸素解離曲線6・酸素解離曲線の移動する条件・Bohr効果とは
肺胞ではHbとO2がくっつきやすい方がいいということで、肺胞環境においては、本来の酸素解離曲線よりもさらに曲線が上に(左に)移動する。
じゃあ肺胞って、どういう環境?と考えてみますと、CO2は少ない。CO2は炭酸ガスで酸性物質ですから、CO2が少ない→アルカリ傾向、となります。
逆に組織では、HbとO2が離れた方がいい。すなわち酸素解離曲線はより下に(右に)移動する、ということになります。組織ではCO2が産生されてきますから、CO2が多い環境になります。すなわち酸性環境となるのです。
もう一度移動する様子を図で表します。

すなわち、CO2が少ない、アルカリ性の環境では酸素解離曲線は左方移動し、CO2が多い、酸性の環境では右方移動するのです。このように、CO2の濃さ、あるいはpHによって酸素解離曲線が移動することを、発見者?報告者?の名前にちなんでBohr(ボーア)効果と呼んでいます。
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じゃあ肺胞って、どういう環境?と考えてみますと、CO2は少ない。CO2は炭酸ガスで酸性物質ですから、CO2が少ない→アルカリ傾向、となります。
逆に組織では、HbとO2が離れた方がいい。すなわち酸素解離曲線はより下に(右に)移動する、ということになります。組織ではCO2が産生されてきますから、CO2が多い環境になります。すなわち酸性環境となるのです。
もう一度移動する様子を図で表します。

すなわち、CO2が少ない、アルカリ性の環境では酸素解離曲線は左方移動し、CO2が多い、酸性の環境では右方移動するのです。このように、CO2の濃さ、あるいはpHによって酸素解離曲線が移動することを、発見者?報告者?の名前にちなんでBohr(ボーア)効果と呼んでいます。
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posted by 長尾大志 at 17:38
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| 3学会合同呼吸療法認定士認定試験対策講座
2013年09月09日
3学会合同呼吸療法認定士認定試験対策講座・酸素解離曲線5・酸素解離曲線の移動
HbがO2をスムーズに運搬・受け渡しするために、さらなる工夫、というかうまいメカニズムがあります。しかしまあこれが勉強する人にとっては頭を悩ませる原因となるのです…。
肺胞と組織ではPaO2が異なるため、結果としてO2が多いところではO2がくっつきやすく、少ないところではO2を離しやすい。この原則をさらに推し進めるメカニズムがあります。それが、あの、例の、いわゆる、酸素解離曲線の右方移動とか左方移動とかいうやつなのです。
基本、肺胞の環境においてはO2がくっつきやすく、組織の環境ではO2が離れやすい、というのが望ましいわけです。そうすると、酸素解離曲線において、より肺胞っぽい?領域では、同じPaO2に対して飽和する酸素量は多くなり、より組織っぽい?領域では、同じPaO2において飽和する酸素量が減る、という方が都合がよいわけです。
そこで、もう一度酸素解離曲線を見てみましょう。

この曲線よりも、さらにO2がくっつきやすくなる、ということは、この曲線が上に(左に)移動すればいいですね。
一方、O2が離れやすくなる、ということは、この曲線よりも下に(右に)移動する、ということになります。
したがって、こんな感じで移動することになります。

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肺胞と組織ではPaO2が異なるため、結果としてO2が多いところではO2がくっつきやすく、少ないところではO2を離しやすい。この原則をさらに推し進めるメカニズムがあります。それが、あの、例の、いわゆる、酸素解離曲線の右方移動とか左方移動とかいうやつなのです。
基本、肺胞の環境においてはO2がくっつきやすく、組織の環境ではO2が離れやすい、というのが望ましいわけです。そうすると、酸素解離曲線において、より肺胞っぽい?領域では、同じPaO2に対して飽和する酸素量は多くなり、より組織っぽい?領域では、同じPaO2において飽和する酸素量が減る、という方が都合がよいわけです。
そこで、もう一度酸素解離曲線を見てみましょう。

この曲線よりも、さらにO2がくっつきやすくなる、ということは、この曲線が上に(左に)移動すればいいですね。
一方、O2が離れやすくなる、ということは、この曲線よりも下に(右に)移動する、ということになります。
したがって、こんな感じで移動することになります。

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posted by 長尾大志 at 17:07
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| 3学会合同呼吸療法認定士認定試験対策講座
2013年09月06日
3学会合同呼吸療法認定士認定試験対策講座・酸素解離曲線4・酸素飽和度と動脈血ガス酸素分圧の関係をグラフで表すと
Hbの性質上、PaO2=80TorrぐらいでHbはほぼ飽和(SaO2=95%程度)し、PaO2が40Torrもない、荒れ果てた地ではHbの酸素結合率が急降下する。それをグラフで表しますと、以下のようになります。

このグラフのミソは、直線ではないということ。
ある程度高いPaO2になると、酸素飽和度は頭打ちになり、平らになります。PaO2が高くなるのは肺胞ぐらいのものですから、ある程度PaO2が高くなったらほぼ飽和する、そんな感じの方が具合がよいのです。病気になって多少PaO2が下がっても、常識範囲?であればSaO2はそんなに変動しない方が良さそうです。
具体的には、PaO2が60Torrを越えたら、まあOKやん、ということで、そこで90%近くまで飽和し、そこからは横ばいになります。

それに対してPaO2が低くなると、急速に酸素飽和度が低下してどんどんO2を離すようになるのです。肺胞を離れて組織に行くと、PaO2は急に低下します。O2を必要とする組織にジャンジャンO2を供給するためのシステム、その一端を担っているのが、Hbの「くっつきやすさ」なのです。
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このグラフのミソは、直線ではないということ。
ある程度高いPaO2になると、酸素飽和度は頭打ちになり、平らになります。PaO2が高くなるのは肺胞ぐらいのものですから、ある程度PaO2が高くなったらほぼ飽和する、そんな感じの方が具合がよいのです。病気になって多少PaO2が下がっても、常識範囲?であればSaO2はそんなに変動しない方が良さそうです。
具体的には、PaO2が60Torrを越えたら、まあOKやん、ということで、そこで90%近くまで飽和し、そこからは横ばいになります。

それに対してPaO2が低くなると、急速に酸素飽和度が低下してどんどんO2を離すようになるのです。肺胞を離れて組織に行くと、PaO2は急に低下します。O2を必要とする組織にジャンジャンO2を供給するためのシステム、その一端を担っているのが、Hbの「くっつきやすさ」なのです。
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posted by 長尾大志 at 14:39
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| 3学会合同呼吸療法認定士認定試験対策講座
2013年09月05日
3学会合同呼吸療法認定士認定試験対策講座・酸素解離曲線3・酸素飽和度と動脈血ガス酸素分圧の関係
酸素がHbとくっついて飽和する、そのしやすさというのは、主に2つの要素で規定されます。その2つとは…
まあ当たり前ですね。その場に酸素が多い方がたくさんくっつく。くっつきやすい方が飽和しやすい。で、知れば知るほどに、酸素を運搬するメカニズムがめちゃくちゃ効率よく運用されていることを実感します。
以前にも書きましたが、人間が万物の霊長とか言って偉そうな顔をしていられるのは脳がものすごく発達しているから、ですが、その脳が鬼のように要求する酸素をジャンジャン供給しているのは肺〜内呼吸系ですよ、ってことを忘れないで頂きたい。とにかく極限まで、あらゆる手段を用いて効率よく酸素を大気から組織へと運んでいるのです。
どのように効率的なのかを見てみましょう。

肺〜組織でのO2受け渡しにあたって、上図のように、肺胞(左側)ではHbが酸素を受け取るわけですから、HbとO2はくっつきやすい方がいいですね。一方、運んでいった先の組織(右側)では、HbからO2が放出されやすい、つまりHbとO2は離れやすい方が、具合がいいわけです。
で、肺胞と組織の環境を考えてみましょう。
ということは…おー、イイ感じですね。
Hbの性質上、PaO2=80TorrぐらいでHbはほぼ飽和(SaO2=95%程度)します。肺胞エリアではそれ以上のPaO2があるため、Hbはほとんどが飽和して=O2を満載して肺胞を出発します。
組織に到着すると、そこはゴーストタウン。PaO2が40Torrもない、荒れ果てた地。そこではHbの酸素結合率が急降下し、O2はジャンジャン離れていき、組織に供給されるのです。
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- その場にある酸素の量
- Hbそのものの「くっつきやすさ」
まあ当たり前ですね。その場に酸素が多い方がたくさんくっつく。くっつきやすい方が飽和しやすい。で、知れば知るほどに、酸素を運搬するメカニズムがめちゃくちゃ効率よく運用されていることを実感します。
以前にも書きましたが、人間が万物の霊長とか言って偉そうな顔をしていられるのは脳がものすごく発達しているから、ですが、その脳が鬼のように要求する酸素をジャンジャン供給しているのは肺〜内呼吸系ですよ、ってことを忘れないで頂きたい。とにかく極限まで、あらゆる手段を用いて効率よく酸素を大気から組織へと運んでいるのです。
どのように効率的なのかを見てみましょう。

肺〜組織でのO2受け渡しにあたって、上図のように、肺胞(左側)ではHbが酸素を受け取るわけですから、HbとO2はくっつきやすい方がいいですね。一方、運んでいった先の組織(右側)では、HbからO2が放出されやすい、つまりHbとO2は離れやすい方が、具合がいいわけです。
で、肺胞と組織の環境を考えてみましょう。
- 肺胞(とそのエリアを環流する血液)には酸素が多い。
- 組織(とそのエリアを環流する血液)には酸素が少ない。
ということは…おー、イイ感じですね。
- 肺胞(とそのエリアを環流する血液)には酸素が多いため、Hbに酸素がくっつきやすくなる。
- 組織(とそのエリアを環流する血液)には酸素が少ないため、Hbから酸素が離れやすくなる。
Hbの性質上、PaO2=80TorrぐらいでHbはほぼ飽和(SaO2=95%程度)します。肺胞エリアではそれ以上のPaO2があるため、Hbはほとんどが飽和して=O2を満載して肺胞を出発します。
組織に到着すると、そこはゴーストタウン。PaO2が40Torrもない、荒れ果てた地。そこではHbの酸素結合率が急降下し、O2はジャンジャン離れていき、組織に供給されるのです。
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| 3学会合同呼吸療法認定士認定試験対策講座
2013年09月04日
3学会合同呼吸療法認定士認定試験対策講座・酸素解離曲線2・酸素飽和度と動脈血ガス酸素分圧の関係
酸素は血液中では、血液そのものに溶けるよりもずっとたくさん、Hbにくっついて効率よく運搬されています。Hb1個には4個のO2分子がくっつきます。4個全部くっついている状態を「飽和(=お腹いっぱい)」といいます。
Hbは4個O2がくっついている状態、または全くO2がくっついていない状態が安定で、1〜3個くっついている、という状態はあまりありませんので、要は「O2が飽和しているHb」か、「O2がくっついていないHb」がある、ということですね。
で、流れる血液中に、「O2が飽和しているHb」が何%あるか、というのが酸素飽和度になります。全体のHbのうち何%が飽和しているか、ということです。

上の図では、酸素飽和度は100%。
Hbが100個あって、そのうち97個が飽和していたら酸素飽和度は97%。
これが動脈血(a)の酸素(O2)の飽和度(S)ですから、SaO2といいます。
通常、SaO2はパルスオキシメーターを用いて経皮的に測定するので、そうやって測定された値であることを表すために、
1文字目はsaturation(飽和度)のSを置き、
2文字目にpercutaneous(経皮的)という言葉の頭文字であるpを下付き文字にして、
酸素の割合を表すO2をつけて
SpO2
と表記します。
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Hbは4個O2がくっついている状態、または全くO2がくっついていない状態が安定で、1〜3個くっついている、という状態はあまりありませんので、要は「O2が飽和しているHb」か、「O2がくっついていないHb」がある、ということですね。
で、流れる血液中に、「O2が飽和しているHb」が何%あるか、というのが酸素飽和度になります。全体のHbのうち何%が飽和しているか、ということです。

上の図では、酸素飽和度は100%。
Hbが100個あって、そのうち97個が飽和していたら酸素飽和度は97%。
これが動脈血(a)の酸素(O2)の飽和度(S)ですから、SaO2といいます。
通常、SaO2はパルスオキシメーターを用いて経皮的に測定するので、そうやって測定された値であることを表すために、
1文字目はsaturation(飽和度)のSを置き、
2文字目にpercutaneous(経皮的)という言葉の頭文字であるpを下付き文字にして、
酸素の割合を表すO2をつけて
SpO2
と表記します。
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posted by 長尾大志 at 16:53
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| 3学会合同呼吸療法認定士認定試験対策講座
2013年09月03日
3学会合同呼吸療法認定士認定試験対策講座・酸素解離曲線1・酸素飽和度とは
酸素解離曲線。頭の痛いところですね。覚えてもすぐ忘れる(私だけ?)。一体全体アレはそもそも何を表しているのか、それを理解すると、少しは覚えやすくなるかもしれません。
あの曲線は、まあこんなやつですが、横軸がPaO2、縦軸が酸素飽和度(SaO2)になっています。「曲線」がガタガタしてるのは手書きだからです。ガタガタ言わないように!

PaO2の意味は以前に説明していますが、ちょっと復習。体内の「ある場所」における「あるガスの割合」を表す表記方法は、こんなふうになっています。
PaO2
まず1文字目には、そもそも割合を表すのか、圧力(分圧)を表すのか、飽和度を表すのか、を示す文字を置きます。使う文字は…
P:pressure(圧力)、単位はTorr=mmHg
F:fraction(分画、割合)、単位は%
S:saturation(飽和度)、単位は%
次の2文字目は、どこにあるガスのことか(ガスのある場所)を表す文字を置きます。使う文字は…
I:inspiratory(吸入気)
A:alveolus(肺胞)
a:artery(動脈)
最後に、何のガスのことを見ているかを置きます。
O2:酸素
CO2:二酸化炭素
N2:窒素
ですからPaO2は、動脈血における酸素の分圧を表します。この分圧、というのはその場にあるガスの圧力割合のことで、圧力が高いということはその場にたくさん存在する、ということです。また、分圧が高いとより多く水に溶け込みますし、移動もしやすいことになります。
次に酸素飽和度(SaO2)。これは動脈血における酸素飽和度のことを表します。飽和度とは何か。というか、飽和とは何かってことですが、これはヘモグロビン(Hb)に酸素がどのくらいくっついているのか、という指標となります。
ご存じの通り酸素は血液中では、血液そのものに溶けるよりもずっとたくさん、Hbにくっついて効率よく運搬されているわけですが、Hb1個には4個のO2分子がくっつきます。4個全部くっついている状態を「飽和(=お腹いっぱい)」といい、どの程度飽和しているかを%で表したものを飽和度といいます。

動脈内にあるほぼ全てのHbが飽和していれば、SaO2=100%、となりますし、半分ぐらい飽和していればSaO2=50%となります。
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あの曲線は、まあこんなやつですが、横軸がPaO2、縦軸が酸素飽和度(SaO2)になっています。「曲線」がガタガタしてるのは手書きだからです。ガタガタ言わないように!

PaO2の意味は以前に説明していますが、ちょっと復習。体内の「ある場所」における「あるガスの割合」を表す表記方法は、こんなふうになっています。
PaO2
まず1文字目には、そもそも割合を表すのか、圧力(分圧)を表すのか、飽和度を表すのか、を示す文字を置きます。使う文字は…
P:pressure(圧力)、単位はTorr=mmHg
F:fraction(分画、割合)、単位は%
S:saturation(飽和度)、単位は%
次の2文字目は、どこにあるガスのことか(ガスのある場所)を表す文字を置きます。使う文字は…
I:inspiratory(吸入気)
A:alveolus(肺胞)
a:artery(動脈)
最後に、何のガスのことを見ているかを置きます。
O2:酸素
CO2:二酸化炭素
N2:窒素
ですからPaO2は、動脈血における酸素の分圧を表します。この分圧、というのはその場にあるガスの圧力割合のことで、圧力が高いということはその場にたくさん存在する、ということです。また、分圧が高いとより多く水に溶け込みますし、移動もしやすいことになります。
次に酸素飽和度(SaO2)。これは動脈血における酸素飽和度のことを表します。飽和度とは何か。というか、飽和とは何かってことですが、これはヘモグロビン(Hb)に酸素がどのくらいくっついているのか、という指標となります。
ご存じの通り酸素は血液中では、血液そのものに溶けるよりもずっとたくさん、Hbにくっついて効率よく運搬されているわけですが、Hb1個には4個のO2分子がくっつきます。4個全部くっついている状態を「飽和(=お腹いっぱい)」といい、どの程度飽和しているかを%で表したものを飽和度といいます。

動脈内にあるほぼ全てのHbが飽和していれば、SaO2=100%、となりますし、半分ぐらい飽和していればSaO2=50%となります。
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posted by 長尾大志 at 16:27
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| 3学会合同呼吸療法認定士認定試験対策講座
2013年09月02日
3学会合同呼吸療法認定士認定試験対策講座・拡散障害について・拡散能の測定法(1回呼吸法)
肺胞内に入った酸素が血中を運搬されるに至るまでの能率を拡散能といいます。当然知りたいのは酸素の拡散能なのですが、酸素と同様の拡散能力を持ちながら生体には存在せず、かつHbに強力にくっついて血液そのもの(溶媒)には溶けない一酸化炭素(CO)を用いて拡散能を測定します。
よく行われるのは、1回換気法という測定方法です。
まず最大呼気位まで空気をはき出します。そのときの肺内には、ほぼN2とO2のみ含まれています。その後、元々体内にない、CO、Heを含む混合ガスを思い切り、最大吸気位まで吸い込みます。そして、10秒間息を止める。
混合ガスの割合

10秒間息止め後、呼出していただきます。
元々最大呼気位でも残気量分は空気が残っていますので、混合ガスはその空気と混ざり、一定割合で希釈されます。ですから呼気のHe濃度を測定することで希釈率が計算されます。
COは希釈されると共に拡散もしますので、COの減少分(=希釈分+拡散分)とHeの希釈分から、純粋にCOの拡散分が求められます。
3学会合同呼吸療法認定士認定試験対策講座を勉強する
よく行われるのは、1回換気法という測定方法です。
まず最大呼気位まで空気をはき出します。そのときの肺内には、ほぼN2とO2のみ含まれています。その後、元々体内にない、CO、Heを含む混合ガスを思い切り、最大吸気位まで吸い込みます。そして、10秒間息を止める。
混合ガスの割合
- O2=21% 拡散する
- CO=0.3% 拡散し、Hbにくっつく、かつ希釈される
- He=5% 拡散せず、ただ希釈される

10秒間息止め後、呼出していただきます。
元々最大呼気位でも残気量分は空気が残っていますので、混合ガスはその空気と混ざり、一定割合で希釈されます。ですから呼気のHe濃度を測定することで希釈率が計算されます。
COは希釈されると共に拡散もしますので、COの減少分(=希釈分+拡散分)とHeの希釈分から、純粋にCOの拡散分が求められます。
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posted by 長尾大志 at 15:21
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| 3学会合同呼吸療法認定士認定試験対策講座
2013年08月30日
3学会合同呼吸療法認定士認定試験対策講座・拡散障害について・拡散能力
先日、3学会合同呼吸療法認定士認定講習会が行われ、当院からも受験されるスタッフが数名受講してこられました。で、お話をしたのですが…
「全然、ちんぷんかんぷんだった \(//∇//)\」「長尾先生の話を聞いていたところしかわからなかった (|||▽||| )」みたいなことで、急遽補講を行うことになりました。
どうもお話を聞いていると、数式がドカドカ出てきてそこでフリーズ、みたいなことのようです。私も数式は苦手なのでおっしゃることはよくわかります。これまでも「いかに数式を使わず説明するか」に腐心して説明してきているので、数式を使ってしか説明できない人には「教える力」はあまり期待できないように思うのですが、カリキュラムも時間の制約も人の都合もある中で効率よくやるためには仕方ないのでしょうか…。
…という独り言はさておき、補講に向けてスライドを作るついでに、同じようにお困りの全国の受験生の皆さんに向けて記事を書こうと思います。
早速ですがDLcoの測定方法が「大切ですよ、って言わはったのにぱっぱっぱっとスライドを飛ばされて…何が何やら。」とのことでしたので取り上げます。
呼吸して肺胞に酸素が入ってきます。その酸素は肺胞を取り巻き、肺胞に接している毛細血管を走る血液中に移動します。この移動を拡散といいます。逆に言うと、酸素は拡散によって血中に拡がって移動していきます。

肺胞に入った酸素が血中に入るには肺胞の壁(図の緑色の部分)と毛細血管(実際にはもっと細いですが…)の壁(水色の部分)を越えていかねばなりませんが、その厚みは併せても0.3μmときわめて薄いもので、割とすんなり越えていくことができます。
血液に入った酸素は一部は血液自体(溶媒)に溶け込みますが、多くはヘモグロビン(Hb:図では船の形で表現しました)にくっついて運搬されます。こうやって、肺胞内に入った酸素が血中を運搬されるに至るまでの能率を拡散能といいます。
当然私たちが知りたいのは酸素の拡散能なのですが、酸素は元々体内に存在し、静脈血の中にも存在します。で、血液中にも溶ける。となると、例えば毛細血管を流れてくる静脈血の酸素濃度が高いと溶け込みにくくなりますし、血管内の血液が増えると、その分酸素は多く溶け込むので、本来の拡散能以外にも酸素の拡散を左右する要素があることになります。それでは困る、ということで、酸素と同様の拡散能力を持ちながら生体には存在せず、かつHbに強力にくっついて血液そのもの(溶媒)には溶けない一酸化炭素(CO)を用いて拡散能を測定します。
拡散能力のことをdiffusing capacity(D)といいます。肺の拡散能力は、diffusing capacity of the lungで、DLと表記します(Lが大文字の下付きでof the lungを表します)。
通常は一酸化炭素(CO)の拡散能力を測定し、O2拡散能力の代わりとし、DLcoと表記するのです。DLcoが低下する病態を拡散障害と言います。

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「全然、ちんぷんかんぷんだった \(//∇//)\」「長尾先生の話を聞いていたところしかわからなかった (|||▽||| )」みたいなことで、急遽補講を行うことになりました。
どうもお話を聞いていると、数式がドカドカ出てきてそこでフリーズ、みたいなことのようです。私も数式は苦手なのでおっしゃることはよくわかります。これまでも「いかに数式を使わず説明するか」に腐心して説明してきているので、数式を使ってしか説明できない人には「教える力」はあまり期待できないように思うのですが、カリキュラムも時間の制約も人の都合もある中で効率よくやるためには仕方ないのでしょうか…。
…という独り言はさておき、補講に向けてスライドを作るついでに、同じようにお困りの全国の受験生の皆さんに向けて記事を書こうと思います。
早速ですがDLcoの測定方法が「大切ですよ、って言わはったのにぱっぱっぱっとスライドを飛ばされて…何が何やら。」とのことでしたので取り上げます。
呼吸して肺胞に酸素が入ってきます。その酸素は肺胞を取り巻き、肺胞に接している毛細血管を走る血液中に移動します。この移動を拡散といいます。逆に言うと、酸素は拡散によって血中に拡がって移動していきます。

肺胞に入った酸素が血中に入るには肺胞の壁(図の緑色の部分)と毛細血管(実際にはもっと細いですが…)の壁(水色の部分)を越えていかねばなりませんが、その厚みは併せても0.3μmときわめて薄いもので、割とすんなり越えていくことができます。
血液に入った酸素は一部は血液自体(溶媒)に溶け込みますが、多くはヘモグロビン(Hb:図では船の形で表現しました)にくっついて運搬されます。こうやって、肺胞内に入った酸素が血中を運搬されるに至るまでの能率を拡散能といいます。
当然私たちが知りたいのは酸素の拡散能なのですが、酸素は元々体内に存在し、静脈血の中にも存在します。で、血液中にも溶ける。となると、例えば毛細血管を流れてくる静脈血の酸素濃度が高いと溶け込みにくくなりますし、血管内の血液が増えると、その分酸素は多く溶け込むので、本来の拡散能以外にも酸素の拡散を左右する要素があることになります。それでは困る、ということで、酸素と同様の拡散能力を持ちながら生体には存在せず、かつHbに強力にくっついて血液そのもの(溶媒)には溶けない一酸化炭素(CO)を用いて拡散能を測定します。
拡散能力のことをdiffusing capacity(D)といいます。肺の拡散能力は、diffusing capacity of the lungで、DLと表記します(Lが大文字の下付きでof the lungを表します)。
通常は一酸化炭素(CO)の拡散能力を測定し、O2拡散能力の代わりとし、DLcoと表記するのです。DLcoが低下する病態を拡散障害と言います。

3学会合同呼吸療法認定士認定試験対策講座を勉強する
posted by 長尾大志 at 19:31
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| 3学会合同呼吸療法認定士認定試験対策講座
2013年08月26日
換気と人工換気を理解する・動画完成です。
以前行った、呼吸療法認定士認定試験対策勉強会の動画が完成しました。facebookページに置いておきますので、クリック一つで視聴いただけます。もし登録されていれば、「いいね!」やコメントも頂けます。また、ご質問も受け付けておりますので、どうぞご活用下さい。
もちろん、認定試験を受けない、という方でも、人工呼吸の基礎を勉強しておきたい、という方に是非ご覧いただきたいと思います。PEEPって何?ということもご理解いただけると思います。
普通健常人が行っている換気を理解する動画です。こちらをご覧いただいてから、人工換気へどうぞ。
https://www.facebook.com/photo.php?v=571789302884164&set=vb.247990881930676&type=2&theater
人工換気の原理と合併症が起こる理由を説明しています。
https://www.facebook.com/photo.php?v=572806116115816&set=vb.247990881930676&type=2&theater
PEEPとは何をしているのか、なぜPEEPをかけるとPaO2が上昇するのか。
https://www.facebook.com/photo.php?v=573657676030660&set=vb.247990881930676&type=2&theater
3学会合同呼吸療法認定士認定試験対策講座を勉強する
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posted by 長尾大志 at 12:43
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