当初1週間程度は、普通感冒他の急性ウイルス性疾患となかなか見分けがつかないものの、その時期に介入すべき治療も現時点では残念ながら、特にありません。ということは逆に考えると、見分けをつけ(て何らかの治療をす)る必要も、初期の段階ではないということになります。
そこから急に悪化する・重症化する時期としては、平均発症後7日程度、といわれていますから、COVID-19の初期の状況への対処としては、
・まずは学校・会社を休んでしっかり休養すること
・当初一週間程度そしてそこで自然軽快が見られればよし
・その段階で悪化する場合、おそらくそこでPCR検査などで診断をし、入院などの対処が必要となってくる、という感じです。
それよりも厄介なのはインフルエンザですね。例年であればこれから冬にかけて流行してくると考えられます(コロナ対策で昨シーズンはずいぶん抑えられていましたが…)。インフルエンザであれば初期にインフルエンザ薬の適応になるわけで、これはできればしっかりと鑑別したい。
しかしながら初期の段階の症状から鑑別するというのはなかなか困難かと思われます。そういう意味で、(これまでインフルエンザの抗原検査迅速キットに関しては、私はあまりポジティブな考えではなかったのですが)今シーズンに関しては抗原検査迅速キットの積極的な使用が望ましいかもしれん、という考えになっています。
コロナな時代にこそ重要なことは、コロナ以外の、きちんと治療出来る疾患を、しっかり診断すること。そこで、これから今一度、呼吸器症状からの診断手順を見直してみましょう。
2020年08月26日
2020年08月25日
呼吸器疾患手順ガイドふたたび2
COVID-19の診断は、やはり難しいのですが、知見が蓄積されてある程度わかってきたことがあります。一つは初期の段階だと、他の感染症(感冒など)との病歴による区別は極めて難しいということ。
初期症状にはこれら↓↓↓のものがいわれています。
・そもそも30〜40%程度は無症状(だからこそその間に他人にうつしてしまう、ということがあるのですが、感染対策についてはここでは述べません)。
・微熱・発熱
・咳
・息切れ
・痰
・倦怠感
・食欲低下
・筋肉痛
普通感冒では強調される、鼻汁や咽頭痛は比較的軽度だといわれています。
そして診断には時間経過が大変特徴的であるということ。既に皆さんご存知と思いますが、当初感冒様の症状で経過していても途中でグッと症状が悪化する。特に呼吸器症状が出現し、息切れ・呼吸困難・低酸素血症が生じます。これがやばい兆候です。
また、同じような時期に嗅覚障害や味覚障害が出現する点が一時期取り上げられました。これは普通感冒や他のウイルス性疾患などでも見られるのですが、ある程度特異的な症状ではないかと考えられています。
初期症状にはこれら↓↓↓のものがいわれています。
・そもそも30〜40%程度は無症状(だからこそその間に他人にうつしてしまう、ということがあるのですが、感染対策についてはここでは述べません)。
・微熱・発熱
・咳
・息切れ
・痰
・倦怠感
・食欲低下
・筋肉痛
普通感冒では強調される、鼻汁や咽頭痛は比較的軽度だといわれています。
そして診断には時間経過が大変特徴的であるということ。既に皆さんご存知と思いますが、当初感冒様の症状で経過していても途中でグッと症状が悪化する。特に呼吸器症状が出現し、息切れ・呼吸困難・低酸素血症が生じます。これがやばい兆候です。
また、同じような時期に嗅覚障害や味覚障害が出現する点が一時期取り上げられました。これは普通感冒や他のウイルス性疾患などでも見られるのですが、ある程度特異的な症状ではないかと考えられています。
posted by 長尾大志 at 15:22
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2020年08月24日
呼吸器疾患手順ガイドふたたび1
ここしばらく、ネット上ではコロナウイルス感染症(COVID-19)話題で持ちきりですが、このブログではこれまであえて取り上げないで参りました。
というのも、全貌が明らかになってない状況で不確実な情報を拡散するのは好ましくない、と判断したからです。同時に、全貌が明らかになっていない以上、自分としても自信を持って若い先生や学生さんや非専門医の先生方にお伝えすることができるものではない、と判断したからです。
正直、春先は「呼吸器疾患の診断をしっかり体系立てるのは無理じゃないか」と思っていました。今も難しいとは思いますが、ともあれ最近ではようやくある程度の情報が出揃い、エビデンスも蓄積されてきて、なんとなくではありますがCOVID-19の病像が見えてきたような気がしないでもない昨今ですので、一度ここで診断という観点からCOVID-19の情報をまとめ、診断の体系を改めて考えたいと思います。治療は今もって混沌としている状況ですから…。
というのも、全貌が明らかになってない状況で不確実な情報を拡散するのは好ましくない、と判断したからです。同時に、全貌が明らかになっていない以上、自分としても自信を持って若い先生や学生さんや非専門医の先生方にお伝えすることができるものではない、と判断したからです。
正直、春先は「呼吸器疾患の診断をしっかり体系立てるのは無理じゃないか」と思っていました。今も難しいとは思いますが、ともあれ最近ではようやくある程度の情報が出揃い、エビデンスも蓄積されてきて、なんとなくではありますがCOVID-19の病像が見えてきたような気がしないでもない昨今ですので、一度ここで診断という観点からCOVID-19の情報をまとめ、診断の体系を改めて考えたいと思います。治療は今もって混沌としている状況ですから…。
posted by 長尾大志 at 17:47
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2015年02月03日
次の企画
長々と連載を続けてきました「呼吸器疾患診断手順ガイド」ですが、昨日の記事で大体まとまったのではないか、と思います。原稿をまとめて出版社さんと打ち合わせに入ります。
それで今後どういう感じで行くか、ですが、実は次の出版についてお話を頂いておりまして、今後はそちらに関する記事を書いていく予定です。以前に内容、書きましたっけ?
今日は外勤のハシゴで時間が全くありませんので、詳しくは明日。
それで今後どういう感じで行くか、ですが、実は次の出版についてお話を頂いておりまして、今後はそちらに関する記事を書いていく予定です。以前に内容、書きましたっけ?
今日は外勤のハシゴで時間が全くありませんので、詳しくは明日。
posted by 長尾大志 at 17:44
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| 呼吸器疾患診断手順ガイド
2015年01月04日
応援してくれる人がいる〜選抜総選挙に思う
AKB48グループには、総選挙というものがあります。いわゆる人気投票で、CDを買うと付いてくる投票券などを使って投票する。総選挙の順位が上位になるとメディアへの露出も増え、仕事の幅が拡がる、というものです。
グループには300人ものメンバーがいますから、1位もいれば下位のメンバーもいる。2014年の例で言うと、80位より下のメンバーは「圏外」となり、順位すら出ない。
圏外、あるいはスレスレと見込まれるメンバーの少なからずに、
「総選挙になんか、出たくない。ファンに(無理やりCDを買う、などの金銭的な)負担をかけてしまう。どうせ順位は下位だし、現実を突きつけられるのは怖い…」
という考えがあっても不思議ではありません。悪い結果のことを考えると怖い。心が折れてしまうかもしれない。
でも、とあるメンバーが
「また、圏外かもしれない。選挙は怖い。だけど、応援してくれる人がいる。
『頑張って、自分も頑張るから』といってくれる人がいる。
応援してくれる人のために、私は選挙に出る。」
と述懐していました。応援してくれる人の存在はありがたい。だからこそ、気持ちを奮い立たせて、前向きに進んでいく。
私もブログの読者の方や、講演を聴いて下さった方から応援を頂くことがあり、大変励みになっております。応援を頂くことが力になるのです。
このたび、とある選挙に出ることになったのも、とある方に熱心に応援頂いたから。最初は思いもよらなかったお話で、逡巡する気持ちもありましたが、お話を伺ううちに前向きな気持ちになりました。今では全力で取り組もうと考えています。本当に、応援頂けるというのはありがたいことです。
グループには300人ものメンバーがいますから、1位もいれば下位のメンバーもいる。2014年の例で言うと、80位より下のメンバーは「圏外」となり、順位すら出ない。
圏外、あるいはスレスレと見込まれるメンバーの少なからずに、
「総選挙になんか、出たくない。ファンに(無理やりCDを買う、などの金銭的な)負担をかけてしまう。どうせ順位は下位だし、現実を突きつけられるのは怖い…」
という考えがあっても不思議ではありません。悪い結果のことを考えると怖い。心が折れてしまうかもしれない。
でも、とあるメンバーが
「また、圏外かもしれない。選挙は怖い。だけど、応援してくれる人がいる。
『頑張って、自分も頑張るから』といってくれる人がいる。
応援してくれる人のために、私は選挙に出る。」
と述懐していました。応援してくれる人の存在はありがたい。だからこそ、気持ちを奮い立たせて、前向きに進んでいく。
私もブログの読者の方や、講演を聴いて下さった方から応援を頂くことがあり、大変励みになっております。応援を頂くことが力になるのです。
このたび、とある選挙に出ることになったのも、とある方に熱心に応援頂いたから。最初は思いもよらなかったお話で、逡巡する気持ちもありましたが、お話を伺ううちに前向きな気持ちになりました。今では全力で取り組もうと考えています。本当に、応援頂けるというのはありがたいことです。
posted by 長尾大志 at 11:21
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| 呼吸器疾患診断手順ガイド
2013年09月16日
呼吸器疾患診断手順ガイド予告
月刊KOKUTAIの連載をやらせていただいて、病歴聴取と身体所見から診断を導いていく手順がすごく面白いことを再認識しました。
これまでにもある程度無意識でやっていた部分が多かったのですが、きちんと調べて、何となくやっていたところを言葉に換えていくと、思い違いであったり、知らなかったことであったり…とにかく新しく学ぶことが多かったのです。
common diseaseでは病歴聴取や身体診察が「モノを言う=診断につながる」ことが多いわけですが、呼吸器内科領域では特に病歴聴取が診断のカギになる疾患が多く、また、身体診察と胸部画像が結構密接に関わりがあったりするのです。またこれがやればやるほど面白い。
それなのに、学生さん、研修医の皆さんといった初学者の方々にとって、診断手順を学ぶ機会がきわめて少ない。あったとしても、診断学というとやれ感度だ、特異度だ、尤度比だ…と、いきなり取っつきにくい用語が飛び交う現場であったりします。私自身、そういうのがすごく苦手で、何となく避けてきた経緯があるわけです。
そこで、呼吸器初学者の皆さん、ならびに、呼吸器を専門としない先生方、また、呼吸器を専門とするコメディカルの方々にも参考になるように、病歴の聴取に始まり、身体診察、検査所見を解釈して診断に至る、そういう過程を楽しみながら学んでいただけるような記事を書いていこう、と考えるに至りました。将来的な書籍化の話もあったりします。
近々、ぼちぼち始めていこうとお思います。ご期待ください。
呼吸器診断手順をガイドされる
これまでにもある程度無意識でやっていた部分が多かったのですが、きちんと調べて、何となくやっていたところを言葉に換えていくと、思い違いであったり、知らなかったことであったり…とにかく新しく学ぶことが多かったのです。
common diseaseでは病歴聴取や身体診察が「モノを言う=診断につながる」ことが多いわけですが、呼吸器内科領域では特に病歴聴取が診断のカギになる疾患が多く、また、身体診察と胸部画像が結構密接に関わりがあったりするのです。またこれがやればやるほど面白い。
それなのに、学生さん、研修医の皆さんといった初学者の方々にとって、診断手順を学ぶ機会がきわめて少ない。あったとしても、診断学というとやれ感度だ、特異度だ、尤度比だ…と、いきなり取っつきにくい用語が飛び交う現場であったりします。私自身、そういうのがすごく苦手で、何となく避けてきた経緯があるわけです。
そこで、呼吸器初学者の皆さん、ならびに、呼吸器を専門としない先生方、また、呼吸器を専門とするコメディカルの方々にも参考になるように、病歴の聴取に始まり、身体診察、検査所見を解釈して診断に至る、そういう過程を楽しみながら学んでいただけるような記事を書いていこう、と考えるに至りました。将来的な書籍化の話もあったりします。
近々、ぼちぼち始めていこうとお思います。ご期待ください。
呼吸器診断手順をガイドされる
posted by 長尾大志 at 16:03
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| 呼吸器疾患診断手順ガイド
2011年04月22日
呼吸音・ラ音について・断続性ラ音
断続性ラ音:粗雑な→coarse crackles「ブツブツ」
:細かい→fine crackles「パリパリ」「パチパチ」
でした。
この2つは、連続性の時のように、同じ範疇のもの、と思われがちなのですが、実は、全く違うものなのです。
coarseの方は、別名「水泡音」ともいわれ、気道内の分泌物がブルブル震えるときに出る音といわれています。呼気時主体ともいわれますが、吸気時に聞こえても不思議はありません。
痰なんかだったら、咳をしてもらって、それで変化することもあるので、参考になります。
それに対して、fineの方は、別名「捻発音」「ベルクロラ音」などと呼ばれるもので、(特に線維化のある)間質性肺炎の時に、しなやかさが失われた肺胞が、ふくらむときにバチンと鳴る音が集合して聞こえるものです。ですから、線維化が生じやすい肺底部、背側でよく聞こえますし、基本、吸気時の終わりの方でのみ聞こえるはずです。
音色そのものの違いもさることながら、呼吸相のどこで聞こえるか、あるいは聴取の場所はどこか、というところが鑑別のミソとなるのです。
:細かい→fine crackles「パリパリ」「パチパチ」
でした。
この2つは、連続性の時のように、同じ範疇のもの、と思われがちなのですが、実は、全く違うものなのです。
coarseの方は、別名「水泡音」ともいわれ、気道内の分泌物がブルブル震えるときに出る音といわれています。呼気時主体ともいわれますが、吸気時に聞こえても不思議はありません。
痰なんかだったら、咳をしてもらって、それで変化することもあるので、参考になります。
それに対して、fineの方は、別名「捻発音」「ベルクロラ音」などと呼ばれるもので、(特に線維化のある)間質性肺炎の時に、しなやかさが失われた肺胞が、ふくらむときにバチンと鳴る音が集合して聞こえるものです。ですから、線維化が生じやすい肺底部、背側でよく聞こえますし、基本、吸気時の終わりの方でのみ聞こえるはずです。
音色そのものの違いもさることながら、呼吸相のどこで聞こえるか、あるいは聴取の場所はどこか、というところが鑑別のミソとなるのです。
posted by 長尾大志 at 09:13
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2011年04月21日
呼吸音・ラ音について・連続性ラ音
ラ音とは、異常に聞かれる呼吸音のこと、と考えましょう。
教科書を見ると、こんな風に書いてあります。
でも意味までは書いていないことが多い。
連続性ラ音:高調性→wheezes 「ピー」「ヒュー」
:低調性→rhonchus 「ブー」「グー」
断続性ラ音:粗雑な→coarse crackles「ブツブツ」
:細かい→fine crackles「パリパリ」「パチパチ」
少し解説します。
連続性ラ音とは、空気の通り道(気道)が狭くなって生じるものです。
笛の原理です。笛って、空気が通る管を作って、そこの一部をわざと狭くして音を出し、管全体で共鳴させて音を出すものですね。
笛の大きさを考えていただくと、高い音を出す笛(ピッコロ、フルートなど)は、小さい、径の細い筒ですが、低い音を出す笛(ホルン、チューバなど)は、大きい、径の太い筒ですね。
ここまで書くと、カンのいい方ならお気づきかもしれません。
連続性ラ音の中でも高音・高調性の音(wheezes)は、細い(末梢の)気管支の狭窄、低音・低調性の音(rhonchus)は、比較的太い(中枢の)気管支の狭窄で聞こえるのです。
つまり、wheezesは末梢の細気管支が閉塞する病態、すなわち喘息に特徴的な所見と言えます。吸気、呼気のいずれでも聴取しうるのですが、吸気の方がわずかながら気管支の径が大きくなるので、呼気の方が聴取しやすい、となります。
一方、rhonchusは、中枢の気管支が閉塞する病態、例えば中枢の腫瘍で気管支が狭窄した、とか、固い痰がこびりついて狭くなっている、とか、そういうことが想定されるのです。こちらも吸気、呼気のいずれでも聴取しうるものです。
痰なんかだったら、咳をしてもらって、それで変化することもあるので、参考になります。
ちなみに、吸気で、気管部でよく聞かれる「スー」「プー」は、上気道からの音であることが多く、肺の領域で強く聞かれる上記の音とは異なるものです。
教科書を見ると、こんな風に書いてあります。
でも意味までは書いていないことが多い。
連続性ラ音:高調性→wheezes 「ピー」「ヒュー」
:低調性→rhonchus 「ブー」「グー」
断続性ラ音:粗雑な→coarse crackles「ブツブツ」
:細かい→fine crackles「パリパリ」「パチパチ」
少し解説します。
連続性ラ音とは、空気の通り道(気道)が狭くなって生じるものです。
笛の原理です。笛って、空気が通る管を作って、そこの一部をわざと狭くして音を出し、管全体で共鳴させて音を出すものですね。
笛の大きさを考えていただくと、高い音を出す笛(ピッコロ、フルートなど)は、小さい、径の細い筒ですが、低い音を出す笛(ホルン、チューバなど)は、大きい、径の太い筒ですね。
ここまで書くと、カンのいい方ならお気づきかもしれません。
連続性ラ音の中でも高音・高調性の音(wheezes)は、細い(末梢の)気管支の狭窄、低音・低調性の音(rhonchus)は、比較的太い(中枢の)気管支の狭窄で聞こえるのです。
つまり、wheezesは末梢の細気管支が閉塞する病態、すなわち喘息に特徴的な所見と言えます。吸気、呼気のいずれでも聴取しうるのですが、吸気の方がわずかながら気管支の径が大きくなるので、呼気の方が聴取しやすい、となります。
一方、rhonchusは、中枢の気管支が閉塞する病態、例えば中枢の腫瘍で気管支が狭窄した、とか、固い痰がこびりついて狭くなっている、とか、そういうことが想定されるのです。こちらも吸気、呼気のいずれでも聴取しうるものです。
痰なんかだったら、咳をしてもらって、それで変化することもあるので、参考になります。
ちなみに、吸気で、気管部でよく聞かれる「スー」「プー」は、上気道からの音であることが多く、肺の領域で強く聞かれる上記の音とは異なるものです。
posted by 長尾大志 at 10:54
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