今日は、ARDSの診断基準について、校正の過程で加筆しておりますので、それを掲載しましょう。
ARDSの診断基準は、これまでにも変遷がありました。できる限り広く臨床医にARDSの概念を知らしめ、早期治療を可能にするために、また、さまざまな臨床試験の基準とするために、出来るだけ簡便かつ明快な基準が求められていました。
現在使われている診断基準(ベルリン定義)は、2011年の欧州集中治療医学会で原案が公表され、その後最終版が2012年JAMAに掲載されたものです。
Acute respiratory distress syndrome: the Berlin Definition.
ARDS Definition Task Force. JAMA. 2012 Jun 20;307(23):2526-33
ベルリン定義以前は急性肺損傷(ALI)という用語があり、その中の重篤なものをARDSとしていたのですが、ALIは廃止され、すべてARDSで統一、分類は重症度で、ということになりました。
定義の考え方としては先に述べたとおりで、急速に進行する(1週間以内)心原性でない(両側の)肺障害でもって、酸素化が著しく悪くなる、ということになります。
診断基準は以下の通りです(文献より引用改変)。
- 急性の経過:既知の危険因子による侵襲や、呼吸器症状の出現・増悪から1週間以内の経過である
- 胸部画像:両側性の陰影(胸水、無気肺、結節では説明出来ない)
- 肺水腫の原因:心不全、輸液過剰のみでは説明出来ない(心エコーなどで除外が必要)
- 酸素化(P/F比):201〜300(PEEP、CPAP≧5cmH2O下にて)⇒軽症(mild)
101〜200(PEEP≧5cmH2O下にて)⇒中等症(moderate)
100以下(PEEP≧5cmH2O下にて)⇒重症(severe)