昨日は時間の都合?でサッサッサッと進みましたが、付いてこられましたか?
まずは低酸素をみたときに、これはハッキリしている病態で説明可能なのかどうか、評価する必要があります。わかっている病態だとこれほど低酸素にならないのではないか、となると、それ以外に低酸素になる理由(換気血流ミスマッチ、シャント、拡散障害と肺胞低換気)のどれかが存在しないか、考えてみる必要があります。
呼吸器疾患によく合併するものとして、肺高血圧症と肺血栓塞栓症が知られています。これらは主にミスマッチによって低酸素を来しますが、肺高血圧の原因として、肺疾患および/または低酸素血症による肺高血圧、というジャンルがあるくらいですから、合併例は少なくありません。特に、COPDに線維化が合併したCPFE(Combined pulmonary fibrosis and emphysema:気腫合併肺線維症)で肺高血圧は多いとされています。
また、膠原病関連の肺高血圧症も肺高血圧の1ジャンルであり、膠原病合併間質性肺炎と肺高血圧症の合併?もしばしばみられます。
それから、ADL低下やステロイドの使用、癌の合併など、呼吸器疾患では血栓のリスクも高まることがありますので、こちらも注意が必要です。
肺高血圧の診断・治療にはガイドラインがあり、それほど悩まずともフローチャート通りに行けばきちんと診断、治療を考えることが出来るのですが、これがちょいちょい(おそらく薬が出るたびに?)変わるので、新しいものを知っておかなくてはいけません。
現状ではこちらになるかと思います。診断フローチャートはFigure1になります。
2015 ESC/ERS Guidelines for the diagnosis and treatment of pulmonary hypertension: The Joint Task Force for the Diagnosis and Treatment of Pulmonary Hypertension of the European Society of Cardiology (ESC) and the European Respiratory Society (ERS): Endorsed by: Association for European Paediatric and Congenital Cardiology (AEPC), International Society for Heart and Lung Transplantation (ISHLT).
Galiè N, et al. Eur Heart J. 2016 Jan 1;37(1):67-119.
PHを疑ったら経胸壁心エコーを行います。そこで三尖弁逆流速度や右心負荷所見を評価し、PHが疑わしいとなったらPHの原因として頻度の高い左心系疾患や肺疾患の評価を行います。
それらがない、関与が少ない、となりますと、次は慢性血栓閉塞性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension:CTEPH)の有無を確認するために換気血流シンチグラフィや造影CTを施行します。その後診断確定、および分類のために右心カテーテル検査で肺動脈圧、肺動脈楔入圧や肺血管抵抗などを測定していきます。
で、平均肺動脈圧≧25mmHg、かつ肺動脈楔入圧≦15mmHgであれば肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension:PAH)と診断、ということになります。
本症例ではIPFに合併したPH、ということで、nintedanibを導入し経過、治療効果を確認するとともに、PHに対して血管拡張薬を考慮することになりました。いずれも薬価が高く副作用のこともあり、効果がなければダラダラと継続すべきではありませんので、きちんと効果の確認が必要です。
また、間質性肺炎と肺高血圧症があることから、その基礎疾患としての膠原病が今後発症してこないかどうかも、注意深く観察する必要があるでしょう。
症例検討会BRONCHO
posted by 長尾大志 at 19:19
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