2015年12月28日

症例検討会BRONCHO2−5・所見の解釈

診察したところ、呼吸音には特に問題ありませんでした。


胸部X線写真


スライド3.JPG


胸部X線写真にも異常所見なし。



副鼻腔X線写真


スライド4.JPG


副鼻腔X線写真では、両側上顎洞に鏡面形成を認めました。



症状、所見から、副鼻腔炎〜後鼻漏の要素はあるようですが、既にGRNXや対症療法としての投薬はなされていて、さらに介入する余地はあまりなさそうです。また、副鼻腔炎だけであるならば、治療によってもう少し症状は軽減していても良さそうです。


そこで何らかの病態が合併していることが想定されます。病歴から、基礎に過敏性、変動性のある症例であることはわかり、喘息、少なくとも気道過敏性の存在はあるようです。そして家族間での伝染ぶりを見ると、マイコプラズマをはじめとする感染性咳嗽の可能性も高いと考えられます。


喘息か感染性咳嗽か、これはしばしば合併するものでもあり、基本的に鑑別困難なものです。感染性咳嗽の後に喘息を発症する、あるいは悪化する、ということも少なくありません。少なくとも喘息が存在するかどうか判断する方法は「経過を見る」ことでしょう。


つまり、今回限りで症状が再燃しないのであれば感染性咳嗽、今後の経過で同様の症状が繰り返すようであれば喘息ありと診断できる、ということです。仮に「今回感染性咳嗽であって、今後喘息を発症する」ということであったにしろ、今後の経過で喘息の存在が確認出来ればよいのです。


で、ここで大事なことは、「是が非でも今、診断をつける」ということではなく、「今、どうするか」です。今回は喘息か感染性咳嗽か判断できないにしても、喘息の可能性もあり、かつ今後発症する可能性もある、そして現に患者さんは咳で困っておられるわけですから、喘息であれば抜群に効果のあるICS/LABAを処方しました。


これが著効すれば喘息と判断できますし、仮に効果がない、ということであっても、感染性咳嗽であれば必ず「日にち薬」でよくなります。そのように説明して患者さん自身に診断をつけて頂く。効いたのであればICSを続ける必要がありますが、ICS/LABAで「効いた」「いい薬だ」という感触をもたれているので、比較的続けて頂きやすいと思います。


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posted by 長尾大志 at 16:49 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2015年12月25日

症例検討会BRONCHO2−4・病歴からの推論

これまでに処方された薬:
プランルカスト、ムコダイン、ムコソルバン、メジコン
GRNX、シングレア、ザイザル、メジコン、ムコダイン
HOK


ロイコトリエン拮抗薬、HOKの効果はすぐには出ない。
これまでの処方が効かない=喘息でない、とはいえない。

GRNXは何を目的に使われているのか。(おそらく『何となく』)
去痰薬では本質的治療にならない。

⇒治療効果からの診断、判断は困難。



副鼻腔症状なし、頬部圧痛なし。⇒パンパンに溜まっている副鼻腔炎ではない。

幼少時蓄膿はなかった。⇒現在の副鼻腔炎を否定は出来ない。


春には明らかに花粉症がある。横になると咳が強くなる。就寝中にも咳が出て目覚める。ここ最近痰が絡んで咳が出る感じもある。⇒後鼻漏症状はありそう。


就寝中にも咳が出て目覚める。ここ最近痰が絡んで咳が出る感じもある。


未熟児であったが、幼少時の喘息などはない。


数年前に咳で困ったことはあったが、その時は1ヶ月くらい続いたため、病院受診したが原因はわからず、結局自然軽快。その後、秋ごろに咳を繰り返すことは毎年のようにあったが、ここまで強いことはなかったと。春にも咳が多いが、春は明らかに花粉症であり、そうかなと思っていた。⇒喘息の存在を思わせる「繰り返し」「変動性」。


父も自身と同じ時期に咳がでて、昨日ひどくなって救急車で他院を受診し、肺炎との診断だった。⇒マイコプラズマ?感染性咳嗽の要素。



このように考えると、後鼻漏、感染性咳嗽、喘息の要素はどれもあるように思われます。実際、これらの合併はしばしば見かけますね…。


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posted by 長尾大志 at 16:33 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2015年12月24日

症例検討会BRONCHO2−3

さて冬休みも無事に終わりましたが、その前に何をやっていたか、覚えておられるでしょうか。
1ヶ月程度続く咳の症例を提示しました。


私が追加して尋ねた情報は以下の通りです。


初回耳鼻科受診時はプランルカスト、ムコダイン、ムコソルバン、メジコンを処方された。


3日前にはGRNX、シングレア、ザイザル、メジコン、ムコダインを1週間分処方されている。


昨日はHOK処方された。昨夜使用したが、効果は実感しない。


数年前に咳で困ったことはあったが、その時は1ヶ月くらい続いたため、病院受診したが原因はわからず、結局自然軽快。その後、秋ごろに咳を繰り返すことは毎年のようにあったが、ここまで強いことはなかったと。春にも咳が多いが、春は明らかに花粉症であり、そうかなと思っていた。


副鼻腔症状なし、頬部圧痛なし。


横になると咳が強くなる。就寝中にも咳が出て目覚める。ここ最近痰が絡んで咳が出る感じもある。


幼少時蓄膿はなかった。未熟児であったが、幼少時の喘息などはない。



さて、病歴から、どのような疾患を思い浮かべられますか?


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posted by 長尾大志 at 18:31 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2015年12月18日

症例検討会BRONCHO2−2

(家族構成、家族、住居について)
父母と同居。隣家に姉の一家が住んでいる。姉も1ヶ月前から同じような咳をしており、姉の方が症状が出るのは早く、現在はだいぶ軽快しているとのこと。姉は子供と同居しており、子供は姉に遅れて感冒様症状があったが、咳症状が続くということはなかった。


父も自身と同じ時期に咳がでて、昨日ひどくなって救急車で他院を受診し、肺炎との診断だった。父は5年前に肺癌罹患しており、当院呼吸器外科通院中である。


住居は築15年の一軒家。姉の家も同じような一軒家。
ペット飼育なし。姉家族もなし。


(職歴)
事務職。今週から症状がひどくて出勤できていない。
職場での粉塵暴露なし。


(既往歴)
特記事項なし。


(家族歴)
父:肺癌。
母:心房細動(当院循環器内科受診)。


(アレルギー)
花粉症があるがそのほかにアレルギーはないという。


その他にどのような病歴を追加されたいでしょうか。


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posted by 長尾大志 at 17:59 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2015年12月17日

症例検討会BRONCHO2−1

40歳代女性

学生さんに病歴聴取をしてもらいました。


(主訴)
咳が止まらない。夜に症状悪化し寝られてない。

(現病歴)
先月中旬から咳が出るようになった。はじめは咳だけで、花粉症を心配し耳鼻咽喉科を受診した。口の中も赤くなってないということで、薬を処方されて一週間ほど飲んだが効かなかった。今月になってから咳がひどくなってきた。5日前に37℃台の熱が出たので、別の病院を受診し処方を受けた。熱は解熱剤を飲まずにその後ひいた。痰が出るようになったのは1週間前からで、黄色いどろっとした痰がでる。熱が出た頃から鼻水も大量に出る。咳のしすぎで脇腹が痛い。胸痛はない。


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posted by 長尾大志 at 16:13 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2015年12月16日

症例検討会BRONCHO4

胸部X線写真では左中肺野にクリッとした小結節影を認めますが、これは以前の胸部単純写真でも見られていて、病的意義はないものと考えられました。


副鼻腔X線写真では両側の上顎洞濃度が上がっていて、液貯留や腫瘍などが考えられますが、よくみると右には空気と鏡面像が見えていて、液貯留≒副鼻腔炎であろうかと推測されます。



以上から、副鼻腔炎の存在はあると考えられました。


治療経過は数日であり、副鼻腔炎症状には乏しく、発熱も著明ではなかったので、まずは抗菌薬投与不要と判断し、去痰薬などの対症療法を開始しました。


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posted by 長尾大志 at 19:55 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2015年12月15日

症例検討会BRONCHO3

よくよく尋ねてみると、1週間ほど前に鼻汁と咽頭痛から症状が始まっています。いずれも現在は軽度でありますが、鼻汁は膿性で、途中から出てきた咳と発熱が現在は主症状だとのことです。


SpO2 96% 呼吸音は清。頬部を圧すと若干違和感があるとのこと。


ということで、胸部X線写真と副鼻腔X線写真を撮影しました。


スライド1.JPG


スライド2.JPG

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posted by 長尾大志 at 20:05 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2015年12月14日

症例検討会BRONCHO2

やはり既往歴は尋ねなくてはなりません。


#AP(LMT50%)
#2型糖尿病(ノボラピッド12-4-8、ランタス12単位)
#高脂血症
#内頚動脈狭窄症
#左室高電位


そこそこのメタボ感ですね。ただ、今回のepisodeとは関係なさそうな印象です。


花粉症、および蓄膿は既往なし。
喫煙 昨年3月で禁煙 それまでは10本/日。



こちらはあまり進みませんが、裏ではかなり頑張っています。今日は査読1本、校正1本済ませ、それに『やさしイイ血ガス・呼吸管理』の仕上げもだいぶ進めました。しかしこちらではあまり進んでいる感がないのがつらいですね。


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posted by 長尾大志 at 18:30 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO

2015年12月10日

症例検討会BRONCHO1

さて、ここら辺で一旦区切りをつけまして、しばらくやっていなかった症例検討シリーズを少し?はじめたいと思います。


以前から要望は頂いていたのですが、なかなか取りかかることが出来ず…このたび出版となった『呼吸器内科 ただいま診断中!』、ケアネットさんの連載『Dr.長尾の症候から学ぶ呼吸器教室』などの執筆を経まして、やはり症例検討方式は有用だと考え、少し?取り組んでみます次第です。


いつも院内でやっている症例検討会BRONCHO(Biwako Respiratory Outstanding Next Conference of Hospital and Outpatient care)と同じ名前で、やっていこうと思っています。



症例 70歳代男性

定期受診中の循環器内科外来受診時に発熱38℃以上であり、ふらつき、低血圧を認めた。血液検査で貧血の進行と腎機能悪化を認めた。
受診時咳と黄色痰が続くとの訴えもあり、PLを処方されたが咳と痰、発熱に改善は無かった。

もっと尋ねたいことは何でしょうか。


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posted by 長尾大志 at 18:19 | Comment(0) | 症例検討会BRONCHO