胸部X線写真
胸部X線写真にも異常所見なし。
副鼻腔X線写真
副鼻腔X線写真では、両側上顎洞に鏡面形成を認めました。
症状、所見から、副鼻腔炎〜後鼻漏の要素はあるようですが、既にGRNXや対症療法としての投薬はなされていて、さらに介入する余地はあまりなさそうです。また、副鼻腔炎だけであるならば、治療によってもう少し症状は軽減していても良さそうです。
そこで何らかの病態が合併していることが想定されます。病歴から、基礎に過敏性、変動性のある症例であることはわかり、喘息、少なくとも気道過敏性の存在はあるようです。そして家族間での伝染ぶりを見ると、マイコプラズマをはじめとする感染性咳嗽の可能性も高いと考えられます。
喘息か感染性咳嗽か、これはしばしば合併するものでもあり、基本的に鑑別困難なものです。感染性咳嗽の後に喘息を発症する、あるいは悪化する、ということも少なくありません。少なくとも喘息が存在するかどうか判断する方法は「経過を見る」ことでしょう。
つまり、今回限りで症状が再燃しないのであれば感染性咳嗽、今後の経過で同様の症状が繰り返すようであれば喘息ありと診断できる、ということです。仮に「今回感染性咳嗽であって、今後喘息を発症する」ということであったにしろ、今後の経過で喘息の存在が確認出来ればよいのです。
で、ここで大事なことは、「是が非でも今、診断をつける」ということではなく、「今、どうするか」です。今回は喘息か感染性咳嗽か判断できないにしても、喘息の可能性もあり、かつ今後発症する可能性もある、そして現に患者さんは咳で困っておられるわけですから、喘息であれば抜群に効果のあるICS/LABAを処方しました。
これが著効すれば喘息と判断できますし、仮に効果がない、ということであっても、感染性咳嗽であれば必ず「日にち薬」でよくなります。そのように説明して患者さん自身に診断をつけて頂く。効いたのであればICSを続ける必要がありますが、ICS/LABAで「効いた」「いい薬だ」という感触をもたれているので、比較的続けて頂きやすいと思います。
症例検討会BRONCHO