さて肺炎について一区切り付きましたが、そういえば心不全のガイドラインもいつの間にか?改訂されていました。少しガイドライン改訂の骨子について取り上げたいと思います。
このガイドライン改訂の主なポイントは、定義の明確化と、急性/慢性という位置づけを止めて、心不全を一続きの「心臓が弱っていく」流れであると見做してその進行を防止する、というコンセプトの導入です。
急性・慢性心不全診療ガイドライン2017年改訂版によりますと、心不全の定義は「なんらかの心臓機能障害,すなわち,心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果,呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し,それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群」とされています。
一般向けのわかりやすい定義として、「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」という表現もされています。
原因疾患はいろいろですが、悪化していく心機能によって出てくる症状に対処すると共に、悪化を食い止める方策をとる、というのが心不全診療の基本になります。
■ 心不全の分類
心不全の分類にもいくつかありますが、新しいガイドラインで出てきた分類として左室の収縮能≒左室駆出率(left ventricular ejection fraction:LVEF)による分類はおさえておきたいですね。
・HFrEF(heart failure with reduced ejection fraction:LVEFの低下した心不全)
収縮不全、すなわち心臓の動き自体が損なわれているもので、昔ながらの「心不全」です。LVEF<40%のものをいいます。ヘフレフ、と呼ばれています。
かつて循環器内科医の先生方は、これこそが心不全であり、収縮力が保たれていれば心不全ではない、という姿勢であったことを記憶されている方も少なからずおられるかも知れません。
・HFpEF(heart failure with preserved ejection fraction:LVEFの保たれた心不全)
LVEF≧50%と、収縮力が保たれているものをいいます。ヘフペフ、と呼びます。主に拡張不全による機序が主体です。
こちらに対しては、なかなかこれ、といった有効な治療がないのが現状で、実際問題診断しても、循環器内科の先生でなくては…的なところがなかったりする、そんなところも冷淡に取り扱われていた理由かもしれません。
・HFmrEF(heart failure with midrange ejection fraction:LVEFが軽度低下した心不全)
これまで分類はHFrEFとHFpEFだけだったのを、LVEFが40〜50%未満のものをカテゴリー分けしました。HFrEFに有効な薬剤がこの群にも効くのかどうか、エビデンスの構築が期待されるところなので、新たに分類したとのことです。ヘフムレフ…ではなく、ミッドレンジなどと呼ばれているようです。
・HFrecEF(heart failure with preserved ejection fraction, improved; HFpEF improvedまたはheart failure with recovered EF:LVEFが改善した心不全)
こちらも新たな分類で、当初LVEFが低下していた(LVEF<40%)ものの、治療などで改善して40%以上になった群をいいます。HFrEFより予後がいい可能性がありますが、まだ確たるデータはないようです。
呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践