2017年06月05日

非専門の一般内科医のための抗がん剤、化学療法の考え方3

これまで主に肺がんの1次治療に関して、治療の選択肢をどう考えるかご紹介しました。


1次治療が有効であればあるほど、それが使えない、とか無効になった、というときの選択肢である2次治療も、生命予後を改善するためには大切になってきます。しかしながら、2次治療に関してはなかなかしっかりしたエビデンスがない、というのが現実です。


というのも、2次治療に関するエビデンスを出そうとすると、症例の属性・1次治療を揃えた上で、2次治療に関するRCTを組まなくてはならない。ところが現状、新薬が次々と出る中で、1次治療からしてどんどん新しい研究が進んでいて方針が変わり、なかなか属性が揃うほどの症例数が揃わないのでは?という印象です。


ですからガイドラインでも2次治療としての推奨される選択肢がいくつかある場合、特に優劣が示されていないことが多いのです。


ハッキリしたエビデンスが示されているのは、EGFR変異があって、EGFR-TKIを使って効かなくなった、という場合、再生検をしてT790Mという耐性遺伝子が見いだされれば、オシメルチニブを使う。


それから、EGFR遺伝子変異が陽性であるものの1次治療でTKIが使われていないケースでは、2次治療にTKIを使う。


1次治療にTKIを使われて効果がなくなった場合、2次治療にも(世代の新しい)TKI、ということが以前はよく見受けられましたが、今ではT790Mのオシメルチニブ以外には推奨されません。それだけ世代間の効果に(今のところ)差が少ないことがわかった、ということなのでしょう。


一方、ALK転座陽性例ですと、1次治療にクリゾチニブ(旧世代ALK-TKI)を使って効果が無くなった症例では、2次治療にアレクチニブ、セリチニブ(新世代ALK-TKI)OK、なんですね。こちらは世代間の効果に差があるということです。



まとめメッセージ・喫煙者の肺がん

喫煙者の肺がん、先に書いたようにdriver mutationが存在せず、TKIの適応にならないことが多い上に、間質性肺炎が併存して多くの抗がん剤が使えない、という現状です。喫煙者かつ間質性肺炎あり、の症例については、ここ最近進歩はありません。とにもかくにもタバコはダメなのです!と最後に申し添えたいと思います。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年06月02日

非専門の一般内科医のための抗がん剤、化学療法の考え方2

高齢の基準とは75歳で、75歳以上では主にカルボプラチンを使います。シスプラチンをどうしても使いたければ分割投与しますが、無理するほどのメリットはないようにも思われます。


PSはperformance status、要するに「元気ですか?」というもので、以下の目安があります。

  • 0:無症状で社会活動ができ,制限を受けることなく発病前と同等にふるまえる.

  • 1:軽度の症状があり,肉体労働は制限を受けるが,歩行,軽い家事,事務などはできる.

  • 2:歩行や身の周りのことはできるが,時に少し介助がいることもある.軽労働はできないが,日中の50%以上は起居している.

  • 3:身の回りのある程度のことはできるが,しばしば介助がいり,日中の50%以上は就床している.

  • 4:身の回りのこともできず,常に介助がいり,終日就床を必要としている.



通常固形がんの化学療法では、このPSが3以上の「ほぼ寝たきり」状態だと抗癌剤投与の対象にならない(「耐えられない」と判断する)ことが多いのですが、小細胞肺がんのように効果が高く、全身状態も改善することが期待出来るような状況ではPS3でも化学療法が勧められるのです。


あと、問題になるのは間質性肺炎の存在です。喫煙者の肺がんって、結構間質性肺炎が存在していることが多くて、抗癌剤の選択に制限がかかってしまうのです。


添付文書に「副作用:間質性肺炎」とか、「慎重投与:間質性肺炎」とか記載があるもの(しかも大多数の薬剤!がそうなのです)は、HRCTで間質影がみられる症例には投与しない方向になってきているのですね。


しばしばあるパターンで、他のところで薬を使ったら間質性肺炎になった!と紹介されて、開始前のCTを見ると、しっかり間質影が見えていた…ということがあり、是非ご注意頂きたいと思うのです。


添付文書上「イリノテカンは間質性肺炎または肺線維症の患者に『禁忌』」ですので、当然使いません。他の薬剤でも『禁忌』とされている症例に投与されているのを見かけることが…お気をつけ下さい。



4.非小細胞肺がん、かつ非扁平上皮がん

こちらが今や百花繚乱のやつであります。ただし大前提条件として、化学療法の対象になるのはPSが2よりもいい症例に限られます。唯一、PS3-4 でも抜群に効果を発揮することでPSの改善が期待出来る、EGFR変異(中でもEx19欠失・L858R変異)症例にゲフィチニブを使う、これのみ推奨されています。


2017年5月時点で知られていて、阻害薬が適用出来るdriver mutationは…

  • EGFR変異遺伝子:ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、オシメルチニブ

  • ALK融合遺伝子:クリゾチニブ、アレクチニブ、セリチニブ

  • ROS1融合遺伝子:クリゾチニブ



これにハマれば、まずは上にある阻害薬を使うということでよろしい。EGFR-TKIの中で使い分けとしては、まあ好き好きでいいですが、オシメルチニブだけは特殊で、T790Mという耐性遺伝子を検出した症例でないと使えません。


それと、ここにあるものは間質性肺炎があると「慎重投与」になります。ゲフィチニブ(イレッサレジスタードマーク)が有名ですが、他でも然り。ひとたび発症、または増悪すると清明に関わることになりますから、正直、非専門の先生方は投与されないのが無難かと思います。というかウチでも基本、投与はしない方向です。万が一投与される場合、十分なリスクの説明は必須です。ご注意下さい。


driver mutationがない場合、次に予後延長効果を期待出来るのが免疫チェックポイント阻害薬。こちらは薬価がバカ高くいろいろ物議を醸しましたが、結局PD-L1の発現を見ることで効果予測因子としたペムブロリズマブ(キイトルーダレジスタードマーク)がガイドラインを制した形になりました。


PD-L1の発現が50%以上であればペムブロリズマブを使う。
PD-L1の発現が50%未満であれば、さらに組織型によって決める。


非扁平上皮がんであれば、プラチナ併用療法(昔ながらの)、ということになってきますが、75歳以上だとカルボプラチンを使います。併用療法の中でも次に予後延長効果を期待出来る薬剤として、ベバシズマブ(アバスチンレジスタードマーク)、ペメトレキセド(アリムタレジスタードマーク)を使うかどうかを検討します。


ベバシズマブは血管新生阻害薬で、他剤との併用で効果が高まりますが、血管の修復がなされないということから出血などの副作用があります。したがって、出血のリスクがあるケースでは投与出来ませんし、中枢の太い血管にがん組織が食い込むような場面や扁平上皮癌では使えません。75歳以上においてもリスクの問題から勧められません。


ペメトレキセドは比較的副作用も少なく、維持療法がハマる症例では長くSDを続けられたりしますが、扁平上皮がんには効果が乏しく適応はありません。


それでは扁平上皮がんだとどうなるか。



5.非小細胞肺がんで扁平上皮がん

PD-L1の発現が50%以上であればペムブロリズマブを使う。
PD-L1の発現が50%未満であれば、プラチナ併用療法(75歳以上だとカルボプラチン)〜昔ながらの化学療法。


という感じになります。


トピックとして、ベバシズマブと似た系統の血管新生阻害薬であるラムシルマブレジスタードマークが、肺がん2次治療においてドセタキセルとの併用で生存期間の上乗せが得られた、ということで、こちらは扁平上皮がんにも使用可能。治療選択肢がまだまだ少ない扁平上皮がんですが、こちらは効果が期待出来ます。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年05月31日

非専門の一般内科医のための抗がん剤、化学療法の考え方1

まあ、これは肺がんに限ったことではなく、悪性新生物すべてに共通する考え方ではあると思いますが…。


がんが体内に存在すると、徐々にではありますが細胞分裂を繰り返し、増殖していきます。倍々で増えていきますから、2倍⇒4倍⇒8倍⇒16倍⇒…10回細胞分裂すると1024倍になります。1回細胞分裂するのに数ヶ月かかることが多いのですが、1回細胞分裂しても細胞数≒体積が倍になるわけです。どんどん大きくなっていきます。


その場で大きくなるだけであれば、手術などで除去すればいいのですが、問題はその場を通る血管やリンパ管を流れる液体に乗って、がん細胞が遠くへ運ばれていくことです。遠くへ運ばれたがん細胞は血行性転移やリンパ節転移巣として発育し、できた臓器の機能を損なったり、数自体が増えることで栄養やエネルギーを奪って悪液質にしたりします。


ひとたび血行性転移が成立している、ということは、原発巣から血流内にがん細胞が流れ込んでいる、ということですから、通常転移は1箇所だけでなく、あちこちに生じ、予想も出来ないということになります。そうなると化学療法、体内全域に行き渡る抗がん剤によって、転移巣ごと細胞分裂を止める、あるいは免疫細胞に作用するなどの治療を行うことになります。


肺がんは他臓器の癌よりも予後が悪いとして知られていますが、その理由としては血行性転移が多いことが挙げられます。肺は元々酸素を目一杯効率よく体内に取り込むために、血管が豊富で、肺胞内と血液の間には薄い薄い上皮+内皮しかありません。ですからひとたびそこにがんができてしまうと、血行に乗るハードルが低いのですね。それで、固形癌だったらまず考えたい、手術で除去する、という選択肢が採れないことが多い、それが予後の悪さにつながっています。


以前でしたら手術不能=予後はせいぜい1年、というのが肺がん業界の常識でしたが、2000年以降の分子標的治療、免疫治療の画期的な進歩によって、いくつかのブレイクスルーがもたらされ、手術不能、あるいは再発例であっても「がんと共生」し、それまで考えられなかった長期生存が期待出来るようになりました。


これまであった「5年生存率」、肺がん業界では、「治癒」とイコールの意味でした。手術でがん組織を取りきって、治癒してしまえば5年間、いやそれ以上生きられる。でも取り切れなければ早晩転移や再発巣がぐんぐん大きくなってきて、3〜5回程度の細胞分裂(≒がん組織の体積が8〜32倍になる)を起こす1年程度の経過で生命を維持出来なくなる、そんな感じであったわけです。


でもこれが、細胞分裂をストップ出来たり、少なくとも細胞が増えるのと減るのが同じくらいである状態に維持出来たりすれば、(つまり進行がなければ、)患者さんは生き続けることができるわけで、そのあたりのことが、特にここ数年でぐぐっ、と進歩してきた感がありますね。担癌状態でも5年生存される症例が、決して珍しくはなくなってきています。
(もちろん、一方で、なかなかそういった恩恵を受けられないケースもまだまだあることも紛れもない現実であります。特に喫煙者の肺がんは、後で述べる間質性肺炎の合併などあるため大変厄介です。)


という前置きをふまえまして…肺がん診療の基本的考え方を。


肺がんに限らず、がん化学療法は昨今日進月歩であり、どんどん新しい薬剤が登場して、毎年のようにガイドラインや取り扱い規約が書き換えられています。ですから、ここでは現時点での最新のガイドラインをフォローする、というよりは、現在のガイドラインに通底する基本的な考え方を解説し、今後も長く応用して頂けるようにしたいと思います。



1.とにかく手術出来るものは手術を

とはいえ、その確実性において、手術に勝る治療はありません。手術で取り切れる可能性が高ければ手術する、これは大原則です。予後をグンと伸ばすために検討すべき第一の方策ですね。


手術をして取り切れる、と見込まれるのは、少なくとも画像上、原発巣と同側のリンパ節転移しか病変が見えない、ということです。原発巣も、手術が無理なところ(心筋とか)に食い込んでいるとダメ。リンパ節転移って、種となるがん細胞が流れてきて、大きくなるにはけっこう時間がかかりますから、数が増えているということはそれだけ微少な(=見えないけど後で出てくる)転移が既に成立している可能性が高まる≒再発の可能性が高まるわけです。


なので、リンパ節転移が拡がっているもの中心に、化学療法とか化学放射線療法を加えて再発率を低下させる試みが行われているわけなのです。


手術できない、しない症例に関しては、次に予後を伸ばせる因子を検索します。



2.組織型を確認する

次に予後がグンと伸びるのは、driver mutationが明らかで、それを薬でブロックするとメッチャ効果があるものです。遺伝子の突然変異によって、細胞分裂が無軌道に行われるスイッチが入る、そのスイッチを切る薬がある、と言い換えてもいいでしょう。


基本的には1ポイントの変異でして、喫煙者は少ない。喫煙によって発がんする場合、もっとあちこちに傷がついて(変異して)1ポイントでは済まないのでしょうか。タバコがんである小細胞肺がんや扁平上皮がんでは見られない現象で、非小細胞肺がん・非扁平上皮がんのときに見られます。


ですから肺がん、と診断がついたら、まずは小細胞肺がんと非小細胞肺がんを分け、続いて非小細胞がんの中で扁平上皮がんと非扁平上皮がんを分けます。



3.小細胞肺がん

小細胞肺がんはさらなるブレイクスルーがない限り、昔ながらのPI(シスプラチン+イリノテカン)、PE(シスプラチン+エトポシド)、CE(カルボプラチン+エトポシド)です。


病変が限局していて、胸部放射線照射と併用する場合はエトポシドを、高齢とか、心機能、腎機能に心配がある場合もエトポシドを使います。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年03月17日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・薬剤による咳

■ 薬剤性咳嗽

薬を飲み始めたら咳が出た、という病歴があれば、当然薬剤による咳嗽が鑑別に挙がります。患者さんが気付かれていないこともありますから、正しい病歴聴取が本当に大切です。


「咳嗽」の副作用があるので有名な薬剤はACE阻害薬ですね。ものによりますが、頻度は10〜30%程度と、結構高い。ただし最近では、同じような作用でも咳が出ない、ARBに取って代わられ、「ACE阻害薬による咳」自体を見かけることが少なくなりました。


ACE阻害薬による咳ほど多くなくても、咳が出るような副作用としては、薬剤性間質性肺炎や肺胞出血、それにアスピリン喘息が挙げられます。


それぞれ病態に特徴はあり、診断には画像をはじめ各種検査がひつようではありますが、とにもかくにも薬剤の副作用情報、薬剤を使用しはじめたタイミング、それに咳が出だしたタイミングが重要であることは強調しておきたいと思います。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年03月16日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・誤嚥による咳

ドレーンについて、一段落つきました。咳の鑑別に戻ります。


■ 誤嚥

誤嚥性肺炎ではなく、誤嚥によるむせ・咳、こちらは高齢化によって増えてきている印象です。こういう咳に、気軽に?安易に?咳止めを投与するとどうなるか…咳反射を減弱させ、誤嚥性肺炎への道を進むことになります。

高齢者、脳血管障害の既往がある患者さんの、
食事中、食後の咳、痰(の絡んだ感じ)。

という訴えでは、誤嚥の要素を疑う必要があります。もちろん症状だけで決めつけることはできませんし、他の疾患が併存する可能性もあり、胸部X線写真も確認をしておきたいところですが、少なくともそういう訴えのある方に、「咳止め(中枢性鎮咳薬)」を処方するのは避けたいものです。


一般的によく使われる「咳止め」は咳中枢の感度を鈍らせて咳を止めるものですから、誤嚥がある場合には咳の感度が鈍ることで悪化の危険性があるのですね。まずは、高齢者には禁忌、と考えて頂いてもいいと思います。


そういう、不顕性の誤嚥、初期は食後以外には出ませんが、進行してくるとしょっちゅう咳き込む、むせる。逆に咳が出なくなったら、反射がなくなってきた…ということかもしれません。


初期の?誤嚥による咳に対して、漢方薬の半夏厚朴湯は効果的なことが多いです。


半夏厚朴湯 7.5g 分3間



咳を止める、ということではなくて、誤嚥性肺炎の予防として使われるものは、有名どころで言うとACE阻害薬があります。空咳が出る、という副作用を逆用して、咳を出させることで誤嚥した物質が肺内に入ることを防止する、ということです。ですから咳は増えます…。


それ以外に、パーキンソン症候群などでも用いられるアマンタジンは、ドーパミン合成能の促進作用があり、咳反射の低下を改善するといわれていますが、パーキンソンの治療としても中途半端ですし、少し使いにくい面があるように思います。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年03月15日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・これでよかった?胸腔ドレナージ学び直し8・癌性胸水に用いる薬剤と手順

■ タルク(ユニタルクレジスタードマーク

タルクは使用量が多いとARDSが発症した、ということで、保険の縛りがありますが、成功率はまあいいようです。


(添付文書より)

<効能・効果>

悪性胸水の再貯留抑制

《効能・効果に関連する使用上の注意》
本剤は悪性胸水の再貯留抑制のために使用し、腹水の減少を目的として本剤を使用しないこと。

<用法・用量>

通常、成人には、本剤(4g/バイアル)を日局生理食塩液50mLで懸濁して、胸膜腔内に注入する。


タルク投与でまれに発現することが知られているARDSは、10g以上の投与で発現率が高いとされています。安全性を考慮し、5gを超えるタルクの投与は避けるべきとの報告があることから、追加投与や両側胸腔への投与など、総投与量が5gを超えるような投与法については認められていません。

(添付文書よりの引用ここまで)


それ以外にも選択基準、除外基準、いくつかの注意点がありますので、実際に使う場合には、「ユニタルクレジスタードマーク適正使用ガイド」を参照して下さい。
http://nobelpark.jp/product/unitalc/unitalc_gm.pdf



■ ピシバニールレジスタードマーク

元々抗癌剤として開発された薬剤ですが、今や抗癌剤としてはオワコン?で、その炎症惹起性を利用した癒着剤としてのみ使われています。


他の一般的な薬剤と異なり、KEという単位を使いますが、5KE〜10KEを生食100mLなどに溶かして使います。他の薬剤同様ドレナージチューブから注入し、クランプ〜体位変換の後吸引、という手順です。



癒着術の手順は、気胸のときとほぼ同じですが、とにかく大事なことは、「肺がきちんと再膨張して、壁側胸膜と臓側胸膜がピッタリ接触している状態でやる」ということでしょう。胸水が残っていて、胸膜が離れている状態で薬剤を入れても、糊付け効果は期待しにくいですから、胸水が抜けてしまってからやる方がいいでしょう。


スライド56.JPG


「ドレーンから胸水が出なくなるまで待つのですか?」とよく尋ねられますが、特に癌性胸水だと毎日相当量の胸水が出続けていることは多いです。胸水の産生はあっても、肺が再膨張さえしていれば、癒着術は試みるべきです。また、既に胸膜播種病変によって臓側胸膜がカチカチになり、完全には再膨張が得られない、というケースでも、一部でもくっつけば…ということで行われることもあります。


スライド57.JPG


@ 1%キシロカイン10〜20mLをドレナージチューブから胸腔に注入します。


A 薬剤(タルクレジスタードマーク、ピシバニールレジスタードマーク、ミノマイシンレジスタードマークなど)+生理食塩水50〜100mLを点滴ラインにつなぎ、ドレナージチューブから胸腔に注入します。


B チューブのクランプを行い、2時間待ちます。


C その間体位変換(仰臥位〜右下側臥位〜腹臥位〜左下側臥位、のように4方向で1時間)を行います。


D 2時間経過したら、クランプを解除し−15〜20cmH2Oで吸引を開始します。チューブの閉塞がしばしば起こりますので、肺の虚脱がないか、適宜確認します。チューブが閉塞したら肺の虚脱がないか、胸部X線写真で確認します。


E 排液量が1日150〜200mLになったらドレナージチューブを抜去します。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年03月14日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・これでよかった?胸腔ドレナージ学び直し7・癌性胸水の場合

癌性胸膜炎から癌性胸水が生じてきた場合、胸膜にできた播種病変を縮小させる方法は全身化学療法しかありません。しかしながら、分子標的療法や小細胞肺癌など、一部の化学療法を除いては、胸膜播種病変に対して効果を期待するのは難しい。


そうすると胸水はどんどん増えてきます。そしてだんだん肺を圧迫して虚脱させ、低酸素や呼吸困難を来したり、アルブミンが胸腔内に漏れ漏れになることで倦怠感や悪液質の原因になったりします。


そこで、全身化学療法でコントロールの難しい癌性胸水に対しては、ドレナージを挿入して胸水を排液し、その後胸膜癒着術を施行されることが多いです。


胸膜癒着術は、胸膜を癒着させるということで、壁側胸膜と臓側胸膜を物理的にくっつけることです。よく「糊付け」に例えられますが、実際に使うのは糊というよりも、刺激性・炎症を起こすような薬剤です。悪性胸水に適応のあるタルク、ピシバニールがよく使われますが、テトラサイクリン系抗菌薬を併用したりもします。


スライド55.JPG


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年03月13日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・これでよかった?胸腔ドレナージ学び直し6・胸水貯留の場合

胸水が貯留した、そういう場面でもドレナージを行います。


胸水は常に産生され、吸収されています。諸説あるようですが、胸水は壁側胸膜の毛細血管由来で、胸腔を通過して壁側ないし臓側胸膜にて吸収されます。その量は数十〜数百mLといわれています。


スライド43.JPG


胸水の産生が増加した、または吸収が少なくなった、ということで胸水(の異常に多い量の)貯留が起こります。元々健常者でも5〜10mLは貯留しているわけですから、あえて「貯留」というのは、それよりもずいぶん多くて、胸部X線写真やエコーなどで画像的に確認出来る状態のことをいいます。


スライド53.JPG


胸水でも、心不全や低アルブミンなど、圧力によって滲みだしてくる漏出性胸水は、その圧力を軽減させる治療を優先し、ドレナージは通常行いません。


一方、癌や感染症、結核などの病変があって血管透過性が亢進して出てくる滲出性胸水、特に内科的?(投薬による)治療で改善が期待出来ないような病態ではドレナージを施行します。


細菌性肺炎に随伴する胸水でも、素直な(膿胸のように固まる傾向のない)ものであれば抗菌薬投与で治癒が期待出来ます。また、結核性胸膜炎でも、抗結核薬のみで治ることが多い。こういうものでは必ずしもドレナージ、とはなりません。


感染症でしたら、やはり膿胸。膿胸では抗菌薬の効果が期待しにくく、ドレナージなしでは治療になりません。


肉眼的に胸水が膿性である、とか、pH<7.2、とか、画像で隔壁が見える、ということになりますと、早急にドレナージが必要でしょう。ボヤボヤしているとすぐに隔壁がカチカチになって部屋がたくさん出来てしまい、ドレナージしても部分的にしか水が抜けない、ということになります。


スライド54.JPG


ドレナージでうまく胸水が抜けない、固まりつつある状態では、胸腔鏡によってフィブリンの膜(壁)を掻爬・洗浄する治療が必要になります。胸腔鏡が出来ない、施設に呼吸器(の手術が出来る)外科医がいない、リスクなど患者さんの状況によってはストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、t-PAといった線維素溶解薬を注入します。


(例)ウロキナーゼ12万単位+生理食塩水100mL 1日1回 3日間

点滴ラインにつないで全開で注入後、2時間程度クランプ、その後開放。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年03月10日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・これでよかった?胸腔ドレナージ学び直し5・気胸の胸膜癒着術

自己血注入に対して、一般的に「癒着術」といわれているものは、意味合いが異なります。読んで字のごとく、壁側胸膜と臓側胸膜を物理的に癒着させてはがれないようにすることで、縮んだ肺をふくらませた状態に保とう、という考え方です。


自己血注入は孔をカサブタで塞ぐ、という発想ですが…


スライド51.JPG


癒着術は壁側胸膜と臓側胸膜をのり付けすると理解して頂くといいでしょう。


スライド52.JPG


癒着術に使う糊は、実際の糊というよりは、刺激性・炎症を起こすような薬剤がよく使われます。それゆえに施行後疼痛や発熱は必発で、薬剤の注入前にキシロカインを入れて疼痛を軽減する試みが行われています。


気胸のときに使用する薬剤は、テトラサイクリン系抗菌薬(ミノサイクリンなど)が中心です。タルクなど、より成功率が高いといわれているものは悪性胸水、癌性胸水にしか適応がありません。最近では50%ブドウ糖やポビドンヨードの報告がありますが、まだ一般的とは言えません。


ウチでやっている具体的な手順は以下の通りです。この手順にも様々な流儀があるようです。逆に言うと、決定的なエビデンスがなにもない、ということです。


@ 1%キシロカイン10〜20mLをドレナージチューブから胸腔に注入します。


A ミノマイシンレジスタードマーク100mg〜200mg+生理食塩水100mLを点滴ラインにつなぎ、ドレナージチューブから胸腔に注入します。


B チューブのクランプを行います。固めるのが目的なので、自己血のように薬剤は動かしません。


C 2時間待ちます。その間一般的には体位変換をすることが多いです。決まったものはありませんが、仰臥位〜右下側臥位〜腹臥位〜左下側臥位、のように4方向で1時間、てな感じがわかりやすいです。


D 2時間経過したら、クランプを解除し−15cmH2Oで吸引を開始します。チューブの閉塞がしばしば起こりますので、肺の虚脱がないか、適宜確認します。チューブが閉塞したら肺の虚脱がないか、胸部X線写真で確認します。


E エアリークが止まり、肺の再膨張が得られたら成功です。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年03月09日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・これでよかった?胸腔ドレナージ学び直し4・気胸のときの自己血注入・実際の手順

自己血注入のやり方といってもいくつか流儀があるようですが、ウチでやっているのはこんな感じです。参考までにご紹介します。下の文献の方法に則っています。
Autologous "blood patch" pleurodesis for persistent pulmonary air leak.
Dumire R, Crabbe MM, Mappin FG, Fontenelle LJ.
Chest. 1992 Jan;101(1):64-6.


@ 患者さんから静脈採血します。


A その血液をそのままドレナージチューブから胸腔に注入します。


B 血液がチューブ内で凝固しチューブが閉塞するのを防止するために、チューブの途中を身体から60cm程度の高さに持ち上げて保持します。このとき、チューブのクランプは行いません。クランプする流派もあるようですが、クランプしたら固まりやすいという意見もあります。水封にしておくことで、血液はチューブ内を(呼吸に合わせて)行ったり来たりしますが、60cmの高低差は乗り越えられず、排出はされません。


スライド50.JPG


C 2時間待ちます。その間一般的には体位変換をすることが多いです。決まったものはありませんが、仰臥位〜右下側臥位〜腹臥位〜左下側臥位、のように4方向で1時間、てな感じがわかりやすいです。


D 2時間経過したら、クランプを解除し−15cmH2Oで吸引を開始します。チューブの閉塞がしばしば起こりますので、肺の虚脱がないか、適宜確認します。チューブが閉塞したら肺の虚脱がないか、胸部X線写真で確認します。


E エアリークが止まり、肺の再膨張が得られたら成功です。


F 1回でエアリークが止まらなくても、何度も繰り返すことが出来るのがこれのいいところ。また@から繰り返します。採血しすぎて貧血にならないよう注意して下さい。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年03月08日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・これでよかった?胸腔ドレナージ学び直し3・気胸のときの胸腔ドレナージ

孔は塞がっても、肺外(胸腔内)には空気が残っています。この空気は、なかなか吸収されていかないので、肺はずっと縮んだ状態になります。このままでは具合が悪いので、肺外の空気を抜くために胸腔ドレナージを行うのです。


スライド47.JPG


もし完璧に孔が塞がっていれば、その時点でそこに存在する空気を抜いてしまえばいいわけで、ドレナージチューブを留置せず脱気だけでもいいはずです。しかし孔が塞がっていなければ、再び肺から空気漏れが起こるでしょう。ドレナージチューブを留置しチェストドレーンバックなどにつなぐことで、孔があい(て、エアリークが出)ているかどうかが確認出来ます。管理しやすい、ということでドレナージチューブを挿入されることが多いようです。


ちなみに、通常患者さんは昼間立位、ないし坐位が多いので、肺は重みで下がつぶれ、肺尖部に空気が残っていることが多いものです。ですから、ドレナージの先端は肺尖にあるべきですね。


スライド48.JPG


エアリークがなくなったら胸部X線写真を撮り、再膨張を確認してクランプし、虚脱のないことを確認して抜去、というのが、通常なされている手順でしょう。


さてそれでは、なかなか孔が閉じない(=エアリークが止まらない)ときにはどうするか。確実なのは手術でしょう。昨今では胸腔鏡下で侵襲も少なく、孔のある場所ごと肺を切り取る手術が行われています。若くてリスクの少ない症例ではまず手術が選択されます。


スライド49.JPG


しかしこれが高齢者、特に喫煙者でCOPDがあり、肺機能が不良で手術にはリスクが高い、てな場合、よく行われているのはまず自己血注入です。


これは患者さん自身の血液を注射器で抜いて、そのままドレナージチューブから注入するもので、合併症の危険が少なく比較的気軽?に出来ますので結構普及しているようです。原理としては、血液が凝固してカサブタができ、それで孔を塞ぐことを期待するわけです。ですから、厳密な意味では「癒着術」とは少し違います。


効果としてはビシッと治る、というものではありませんが、1回よりも複数回行う方が成功率が高い、50mLよりも100mLの方が成功率が高いなどとされています。リスクの高い方でも合併症の危険が少ない、というのはありがたいものです。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年03月07日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・これでよかった?胸腔ドレナージ学び直し2・気胸の機序

「気胸のときに胸腔ドレナージを入れる、で、肺がふくらんだらクランプして、それから抜去する」
「なかなかリークが止まらなかったら、まず癒着術をする」


これは正解でしょうか?微妙ですね…。


気胸とはどのような状態で、何のためにドレナージをしているのか、癒着術とは何をしているのか、それをご理解頂ければ、きっと間違いも生じないはず。




気胸とは、臓側胸膜、ないしは壁側胸膜(+胸壁)に孔があいて、空気が胸腔内に侵入したことを指します。通常言われる「自然気胸」は前者で、外傷や医原性に起こる気胸は後者が多いです。後者を、機序の違いを強調して「外気胸」と呼ぶこともあります。


スライド43.JPG


通常、壁側胸膜と臓側胸膜とはピッタリくっついていて、間には空気はなく真空状態です。ピッタリくっついた状態では動きが制限されますので、ツルツル動けるように間に少量の胸水が存在して、潤滑油の働きをしています。胸水の量は5〜10mL程度といわれています。


臓側胸膜に孔があいて、空気が肺から胸腔内に漏れてくるのが自然気胸。


スライド44.JPG


壁側胸膜(+胸壁)に孔があいて、空気が胸腔内に入ったものが外気胸です。


スライド45.JPG


で、気胸の治療とは何をしているのか。ドレナージにはどういう効果があるのか。


それは簡単ですね。胸腔内に入った空気を抜く、ということです。自然気胸の場合、空気が抜けることで肺がしぼみます。しぼむと肺に空いた孔も小さくなり、塞がってきます。多くのケースでは、こうして自然と孔は塞がるのです。


スライド46.JPG


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年03月06日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・これでよかった?胸腔ドレナージ学び直し

非専門医の先生方に(専門医の先生方も?)誤解されていることが多いように感じられる事項の1つに、胸腔ドレナージとそれにまつわる手技、処置があります。


看護師さんのセミナーをやっていて、ご質問を頂くことが多いのが、「うちのドクターはドレナージのときにこんな指示を出すのですが、これでいいのですか?」というもの。


非専門の先生方ならある程度のところは我流でされるのもやむを得ないのかもしれませんが、明らかに間違ったことをされていると、看護師さんはじめコメディカルスタッフの皆さんが困ってしまいます。


そこで、間違いやすいところを中心に、改めて胸腔ドレナージにまつわる手技、処置の説明をしておきたいと思います。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年02月17日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・COPD4・COPDの診断その他

COPDの診断にちょっと戻りますが、喘息以外の


閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans:BO)
肺リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis:LAM)


の鑑別には、胸部CTで、胸部X線写真では見つけられない、特徴的な所見を見つける(BO:呼気時のモザイクパターン、LAM:多発嚢胞)ことが必要です。


そんなわけで、COPDの診断をある程度キッチリつけようとすると、胸部CTはほしいかな、ということになります。もちろん胸部X線写真で所見がわかる、と書いた他の疾患の鑑別にもCTは有効ですし異常の検出に役立つでしょう。


それにそもそもCOPD、いや喫煙者であれば、肺癌発症のリスクがあるわけで、1度はCTをみておきたい、という事情もあります。肺機能は出来なくても胸部CTにはアクセス出来る、という施設は多いんじゃないでしょうか。


まあCTのことは置いとくとしても、いずれの疾患もまずはまれであるということ、そして、病歴からある程度想定は可能であるということも知っておいて頂きたいです。



BO―病歴から


特発性のBOはあまり報告されておらず、骨髄移植や肺移植後の合併症としての発症がよくみられますが、リウマチなどの膠原病に合併することも知られています。それ以外に、マイコプラズマやウイルスなどの感染症や有毒ガスの吸入によって生じることもありますから、そういった病歴の確認が重要です。



LAM―若年女性


好発年齢は20〜40歳代で女性に多い疾患です。若い女性の呼吸困難って、コモンなものは喘息くらいしかありません。喘息とは異なって、呼吸困難に変動性がなく進行していくような場合、自然気胸が繰り返す場合などに想起する必要があります。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年02月16日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・COPD4・薬物以外の治療

COPDの場合、薬剤で病態(破壊された肺胞)がよくなる、というわけではなく、高齢ゆえ併存症が様々にある、ということもあり、喘息とは違って薬物療法だけで事足りるというわけには参りません。


薬物以外の治療・管理、具体的には

  • 禁煙

  • インフルエンザ・肺炎球菌ワクチン接種

  • 感染時の適切なコントロール

  • ADL低下対策・呼吸リハビリテーション

  • 栄養療法

  • 酸素療法・換気補助療法

  • 併存症(虚血性心疾患・高血圧症・心不全・心房細動・肺高血圧症・骨粗鬆症・消化器疾患・抑うつ・気胸・肺癌など)の管理と早期発見・早期介入

  • 上記を含むトータルの患者教育


あたりとなります。無意識のうちに「高齢者一般の治療・管理」の一環としてなされている項目も多いでしょうが、今一度抜けているところなど確認頂ければと思います。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年02月15日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・COPD3・ICSはCOPD増悪を抑制するのか?

COPDの薬物療法を考える上で避けては通れないのが、ICS問題です。ICSは投与すべきなのか否なのか。結論を言うと、結論は出ていません(2017年2月現在)。┐('〜`;)┌ヤレヤレ…


検討によって、「ICSで増悪抑制する」「ICSで感染、肺炎は増加する」…まあ、ICS/LABAを売りたい企業とLAMA/LABAを売りたい企業によるエビデンス合戦の様相もあったりなかったり、相反する結果が出ているようですし、ここで結論は出せません。


言えることは、「喘息の要素があったら、絶対ICSを含める」と、「COPDの要素があったら、LAMAを含める」。それ以上は、増悪が多いとか痰が多いとかであればICSを加えて経過を見て、でも肺炎に罹るようならICSを外す、みたいな、個別の対応になるのではないかと思います。歯切れよく「こう」とは言えない印象。



投与例(2017年3月現在):薬剤がいっぱいありますのでややこしいです。出来るだけシンプルにしてみます。


  • 軽症例:労作時の息切れ程度
    LAMA単剤
    LAMAが副作用(前立腺肥大・緑内障の悪化)などで使えない場合:LABA単剤
    喘息合併あればICS/LABA

  • 中等症例:上記では症状がよくなりきらない、しばしば増悪する
    LAMA/LABA、よくならなければLAMA/LABA +ICSまたはICS/LABA+LAMA
    喘息合併あればLAMA/LABA +ICSまたはICS/LABA+LAMA
    ただしICSのみの製剤はCOPDに保険適応なし

  • それ以上、さらに加えるとしたら…
    +喀痰調整薬
    +テオフィリン系

  • 痰が多い、増悪頻度が多い…
    +マクロライド系
    基本はエリスロマイシン、MACがいないことが確認出来ればクラリスロマイシンやアジスロマイシンも可だが、効果が見られなければ中止を考慮。




商品の名前は、商品名と吸入デバイス(吸入器)の名前が混在していてややこしいです。一般名も併記するとさらに混乱が増す気がするので、商品名とデバイス名のみ併記しています。まだ先発品しかありませんので…。デバイス名が同じものは同じメーカーのもので、複数種を処方する場合は、デバイスを揃える方がいいでしょう。商品名のレジスタードマークは省略しています。順番に意図はありません。何となく登場順な感じですが。


LAMA(商品名:デバイス名)

  • スピリーバ:レスピマット

  • シーブリ:ブリーズへラー

  • エクリラ:ジェヌエア

  • エンクラッセ:エリプタ



LABA

  • セレベント:ディスカス

  • オンブレス:ブリーズへラー

  • オーキシス:タービュヘイラー



LAMA/LABA

  • スピオルト:レスピマット

  • ウルティブロ:ブリーズへラー

  • アノーロ:エリプタ



ICS/LABA

  • アドエア:ディスカス・エアゾール

  • シムビコート:タービュヘイラー

  • レルベア:エリプタ



繰り返しになりますが、ICSの単剤には、COPDでの適応を持つものはありません。


なにせたくさんありますので、なんか忘れているような気も、間違えているような気もしますが…訂正すべきところがありましたら、是非ご指摘をお願い致します。m(__)m


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年02月14日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・COPD2

このうち、鑑別が最も問題となるのは喘息でしょう。困ったことに、しばしばCOPDと喘息は合併も見られ、COPDか、喘息か、はたまたCOPDと喘息の合併(Asthma-COPD Overlap Syndrome:ACOS)か、しばしば迷います。


診断によっては使用する薬剤も(微妙に?)異なるので、キッチリ診断をつけなくてはならないような気もしますが、ここは合理的に参りましょう。「治療」のために「診断」するのです。


使用する薬剤が微妙に異なる、診断のポイント、まず大事なのは…


「喘息(の要素がある)症例には、吸入ステロイド(ICS)を使うべし!」


これはマストです。絶対です(2017年2月現在)。喘息、あるいは喘息の要素がある場合、ICSを必ず使います。ここで、流行りのLAMA/LABAなんかを使ってはいけません。ICSなしでLABAを使うのは、禁忌と考えて頂きたいですね。


喘息の要素は、やはりその「変動性」に表れます。

  • 分単位、時間単位、あるいは日単位で悪化したりよくなったりする「変化」

  • 昼間はいいのに夜から朝方にかけて悪化する「変動」

  • 刺激のあるものやほこりの吸引、運動、感染などで起こる「発作」

  • 全く症状のない期間が存在する「寛解」

病歴にそういった要素があれば、喘息がある⇒ICSを使う、ということになります。


そしてCOPDの診断に関して言えば、


「COPD(の要素がある)症例には、LAMAを使う」


「使うべし!」とまでは申しませんが、使った方が患者さんは楽かな〜とは思います。で、COPDの要素とは…

  • 高齢、重喫煙歴

  • 症状は日常的に存在、寛解せず徐々に悪化

  • それから身体診察や胸部X線写真における過膨張所見

というところです。そういった要素があれば、LAMAを使うと。


身体診察上の過膨張、ないし過膨張に伴って生じる所見とは

  • 樽状胸郭

  • 濁音界の低下

  • 気管短縮

  • 胸鎖乳突筋の発達


あたりです。


喘息の要素、ならびにCOPDの要素が同じくらいあれば、それがいわゆるACOSという病態と考えて頂いて差し支えないと思います。その場合、使用する薬剤としてはICS、LAMAにLABAも加える、いわゆる三剤併用となるでしょう。


喘息でしたらICS+LABAで大半の症例はよくなります。


COPDの場合、高齢であるということもあって併存症が様々にありますので、薬物療法だけで事足りるというわけには参りません。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年02月13日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・COPD1

高齢喫煙者の呼吸器症状(咳・痰・呼吸困難)といえば、原因として最も多いのが慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)です。罹患率は人口の5%以上、慢性に呼吸器症状を呈する高齢喫煙者の半分以上がCOPDともいわれています。以前よりは認知率は上がっているようですが、まだまだ診断されることが少ないといわれているCOPD、早めの介入のためにも、早めに診断しておきたいですね。


ですが、COPDの診断にはスパイロメトリー・肺機能検査が必須、とされていて、なかなか小規模なクリニックや非専門医の先生方には診断して頂けない場面が多いように見受けます。私たちも結局二言目には「スパイロはどうですか?」ですから。1秒率や%1秒量がわからないと話が進みません。


COPDの診断基準:(COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第4版による)

  • 気管支拡張薬投与後のスパイロメトリーで1秒率(FEV1/FVC)が70%未満であること

  • 他の気流閉塞をきたし得る疾患を除外すること



鑑別を要する疾患として挙げられているのが、

  • 喘息

  • びまん性汎細気管支炎、

  • 先天性副鼻腔気管支症候群

  • 閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans:BO)

  • 気管支拡張症

  • 肺結核

  • じん肺

  • 肺リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis:LAM)

  • うっ血性心不全

  • 間質性肺疾患

  • 肺癌



です。このガイドラインには逃げ道がなくて、「スパイロせざるもの、診断するべからず」みたいな、原理主義的なところがあるのですね。


でも、原理主義を押し通すがゆえに、診断されるべきCOPD患者さんが未診断なままでいる、というのはいかがなものか、とも思うのです。原理原則は大事ですが、患者さんのために何をするのか、という合理主義で物事を考えたいところです。


原理主義的に申し上げると、スパイロメトリーがない、というセッティングであれば、一度は呼吸器専門医にご紹介頂き、治療指針などを定めて頂きたいところです。昨今、喘息や肺線維症の合併、鑑別、それにたくさん出てきた吸入薬の使い分け、HOT導入・設定など、専門医がお役に立てるところは少なからずあると考えます。


それでもどうしても、諸事情で気軽にはコンサルト出来ない、あるいは、離島や遠隔地のようなケースもあるでしょう。そのときに合理的にはどうすればいいか。


そこで、COPDを臨床的に診断する「妥当」な方法を考えてみましょう。それには症候からのアプローチが優れています。GOLDのウェブサイト(http://goldcopd.org/)に掲載されている『2015 Asthma, COPD and Asthma-COPD Overlap Syndrome (ACOS)』の表に基づいて考えてみます。


上にも書いたとおり、慢性に呼吸器症状を呈する高齢喫煙者の半分以上がCOPDともいわれています。すなわち、慢性に咳、痰、息切れなどがある、高齢の(少なくとも40歳以上)、喫煙者(少なくとも20本✕20年以上)であれば、COPDの可能性が高い。次に、上の「鑑別を要する疾患」を除外する必要がありますが、その多くが、胸部X線写真で何らかの特徴的な所見を有しています。


COPDはある程度の典型例・重症になると胸部X線写真で嚢胞形成や過膨張所見などが見られますが、多くの疾患とは鑑別が可能です。COPD同様に閉塞性障害が主体の、

  • 喘息

  • 閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans:BO)

  • 肺リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis:LAM)



も、胸部X線写真で所見に乏しく、それだけではしばしばCOPDと鑑別が難しいです。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年02月10日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・止まらない咳35・急性〜慢性の咳で、肺炎以外、画像で見えないもの・気管支結核、気管支内の腫瘍

■ 気管支結核、気管支内の腫瘍

これはもう、忘れたときにやってくる、ぐらいのレアなケースになりますが、いずれも見落としをしたくないのは間違いありません。なんてったって、結核と腫瘍ですから。


とはいっても気管支内にあるだけで無気肺も起こしていないような病変は、なかなか単純X線写真では発見出来ず、「X線写真では異常なし」となってしまうかもしれません。でも咳の出る症例で全例胸部CT、気管支鏡、というのも現実的ではありません。


そこで、なるべく見落としを少なくするためにはどうするか。



まず、当たり前のことではありますが、これまでに挙げた「咳の鑑別」をしっかり詰めていくこと。ここが疎か、あるいは雑になってしまうと、非典型的な部分が多々あるのに「まあ喘息だろう」「まあGERDかな」と思考がストップしてしまいます。


ですから、最初に診断をつけてそれで終わり、ではなく、経過、治療反応性も含めて診断の見直し、振り返りをすることも重要です。


喘息と思って治療していたけれども、ビシッとよくならない、しばしば遭遇するケースですが、後鼻漏やGERD、COPDの合併なんかはよくあることです。それらの治療を併用することでよくなることもある。でもでも…考えられる治療を全部やってもやっぱりよくならない、そんなときには、今一度精査が必要なのかもしれません。


そこで比較的ハードルが低いのは、「痰を採る」こと。痰が出るケースでは、やはり積極的に検査をして頂きたい。細菌、抗酸菌の存在、好酸球や好中球のの増多、悪性細胞の検出などなど、得られる情報は意外に多くあるものです。


肺機能(スパイロメトリー)も、出来ない施設では仕方がありませんが、出来るのであれば得られる情報は多く、有用です。閉塞性障害だけでなく、上気道の狭窄もフローボリューム曲線が特徴的なパターンになるのでわかります。


健常者であれば、フローボリューム曲線は図のようになりますが…


スライド41.JPG


上気道が狭窄していると、その部分で呼出流速が頭打ちになるため、曲線もある速度以上が出ずに頭打ちになる、そういう曲線になります。このパターンを見れば、「上気道狭窄がある」ことがわかり、CTや気管支鏡などを行う根拠になります。


スライド42.JPG


もちろん検査だけでなくて、診察上も、中枢付近で吸気に連続性の雑音を聴取したら肺の外、上気道の狭窄があることがわかりますから、その場合にはさらなる精査を行います。


まあでも、検査や診察ではわからない、悩ましいケースも多いのです。やはり、症状が治ってしまわない、治療がうまくいかない場面では、一度はCTあたりまで、ということになるのかもしれません。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年02月09日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・止まらない咳34・急性〜慢性の咳で、肺炎以外、画像で見えないもの・胃食道逆流症

慢性の咳の原因として胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)が話題に上がるようになったのは、私が医師になってしばらくした頃だったかと記憶しています。


その後、喘息に合併して難治化するとか、そもそも喘息発症の原因になるとか、喘息に関わった報告が多数見られるようになり、2005年の『含嗽に関するガイドライン』で取り上げられたことで、咳の原因としても広く知られるに至った印象です。



診断するにはまずは疑うことが大事です。典型的には『含嗽に関するガイドライン 第2版』に診断基準として挙げられているのは、以下のような症状です。

  • 食道の逆流症状:胸焼け、食後胃重感、おくび(ゲップ)、呑酸(酸っぱいものが上がってくる感覚)、喉頭違和感

  • 喉咽頭の逆流症状:咳払い、喉頭痛(喉がイガイガ)、嗄声

  • 前屈位、会話、食事で増強する咳。



上記のような症候を呈する、他の原因に使われる薬(気管支拡張薬、吸入ステロイド薬、抗アレルギー薬)が無効な咳に、PPIを試験投与して効果があれば診断可能…とされてはいますが、上記のような特徴的症状を呈しない症例も、決して少なくはないともいわれています。


咳払いや、喉がイガイガといった症状は、後鼻漏にも似た症状がありますし、必ずしも特異性の高い症状ではないのも困ったところです。そこで、咳の出る場面(前屈位、会話、刺激物や脂っこい食事)、咳が軽減する場面(立位、飴、飲水)が手がかりになることもあります。「胸焼けはないですか〜」で終わるのではなく、丹念に症状を確認することで診断に至ることも経験されますから。



また、頑固な咳や難治性の喘息症例では、GERDがしばしば合併している、ともいわれていますので、そういう場合、あまり典型的症状がなくても、(GERDの合併を想定して)一度はPPIを試験投与してみる、というケースがあるかもしれません。


GERDにPPI、というのはいいのですが、必ずしもビシッと?効くわけではありません。2週間ぐらいで効くこともあれば、2〜3ヶ月かかることもあり、判断には時間がかかるのです。


PPIだけでなく、リスクとなるような生活習慣(肥満、喫煙、飲酒、激しい運動、カフェイン、チョコレート、脂っこい食事、炭酸、柑橘類、トマト製品など)を避ける、ということも有効なことがあります。(Chronic cough due to gastroesophageal reflux disease: ACCP evidence-based clinical practice guidelines. Irwin RS. Chest. 2006 Jan;129(1 Suppl):80S-94S. Review.)


逆にいうと、PPIの投与だけでなく、生活習慣にも介入することで、診断、治療の質が向上する可能性があるわけです。他に、薬剤でも降圧薬として頻用されているCa拮抗薬をはじめ、硝酸薬、抗ヒスタミン薬、三環系抗うつ薬などは下部食道括約筋を弛緩させ、GERDを悪化させるといわれていますから、注意が必要です。


胸焼け=GERD=PPI=すぐに効く、というだけではないことを知っておきましょう。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年02月08日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・止まらない咳33・急性〜慢性の咳で、肺炎以外、画像で見えないもの・後鼻漏の治療

昨日は静岡県志太医師会にて、「こんなときどーする?咳と抗菌薬」と題して、咳のみかたと抗菌薬の使い方、昨今こちらでも記事にしておりましたマクロライドと慢性気道感染問題とか、キノロンと肺炎問題とか、DUセフェム問題とかをお話しさせて頂きました。


IMG_4121.JPG


座長の労をお執り頂きました小清水先生、丹羽先生はじめ関係の先生方、本当にありがとうございました。




さてその講演でもお話しいたしましたが、後鼻漏は鼻汁が後ろへ流れ込む全ての疾患で起こる「現象」であります。その原因となる疾患は、鼻疾患。


  • アレルギー性鼻炎・花粉症

  • アレルギー性副鼻腔炎

  • 細菌性副鼻腔炎



が代表的です。これらの鑑別には鼻汁、喀痰などのグラム染色や培養、それに細胞診を行います。細菌が存在しているか、好中球がたくさんであれば細菌感染、好酸球が優位に見られればアレルギーの存在を考えます。


そこまでは出来ない、という場合、膿性鼻汁や感染徴候の有無で判断されていることが多いようです。


薬物治療としては
  • アレルギー性鼻炎・花粉症、アレルギー性副鼻腔炎
    ⇒抗ヒスタミン薬・去痰薬・点鼻ステロイド、(鼻閉主体なら)ロイコトリエン拮抗薬

  • 細菌性副鼻腔炎
    ⇒抗菌薬、去痰薬、抗ヒスタミン薬など



慢性細菌性副鼻腔炎に対して、ダラダラ少量マクロライド、という場面をしばしば見かけますが、これはあくまで「エリスロマイシンのみ、使ってみて効果があれば続けてよし」とご理解頂きたいと思います。


細菌性副鼻腔炎に対してはまず去痰薬、症状が強ければ狭域の経口抗菌薬(AMPCなど)を短期間(10〜14日程度)投与して、去痰薬、EM試用、鼻汁の色が透明になったら点鼻ステロイドなどを使う、そんな感じでしょうか。


厄介なのは、アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎って、ものすごくコモンでありながら、決定的なコントロールはイマイチなこと。なかなか、ビシッと治まらないこともしばしばですねー。そういうこともあってか、耳鼻科であまり取り合って頂けないケースもあると伝え聞きます。



喘息に合併した好酸球性副鼻腔炎、これまたしばしば難治ですが、吸入ステロイド(ICS)の経鼻呼出が効果的、とする報告があります。感染がなければ、吸入のついで?に出来ますし、試みる価値は大いにあると思います。やり方としては、普通にICSを吸入して、息を吐くときに鼻から、ゆっくり目に吐き出す、というところです。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年02月07日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・止まらない咳32・急性〜慢性の咳で、肺炎以外、画像で見えないもの・後鼻漏

■ 後鼻漏

私自身アレルギー性鼻炎・後鼻漏持ちのため、個人的に後鼻漏には思い入れがあります。


イヤ実際、「呼吸器内科」外来をやっていて、「咳がずっと続く」という訴えで来られる方には、後鼻漏の方がかなり含まれている印象です。しかも、それが長期間気付かれてこなかった、というケースが多い。


ちょっとしたことで診断がついて、患者さんが本当に喜ばれる。非専門の先生方にも是非そのような経験をして頂きたいところです。咳診療が喜びになります。


ちょっとしたこと、と書きましたが、実際はどういうことで診断するか。これはもう病歴聴取に尽きます。こんなことはありませんか…?


  • 痰が喉に絡んで咳が出る。

  • 痰が粘ついて、引っかかってなかなか取れない。

  • 喉がイガイガする、いがらっぽい。

  • 咳払いしたくなる、咳払いして痰が切れるとスッキリする。

  • 喉にエヘン虫がついている。

  • 上を向くと咳き込む、仰向けに寝ると咳き込む。

  • 上を向くと(喉に粘液が流れ込んで)からえずきがある。

  • 下を向く、腹ばいに寝ると咳は軽減する。



診察上では、口腔内〜咽頭を視るときに、上(鼻腔)から鼻漏が降りてきていないかどうかを確認します。一瞬だけでなく、しばらく視ていると降りてくることもありますし、呼吸によって泡ができることもありますので、少し時間をかけて観察します。


こういう病歴、診察所見が何個あったら診断、という基準はありませんが、典型的には多く合致するもの。何例か診断されると慣れてくると思います。




それではこれから静岡に向かいます。志太医師会の先生方、ご無沙汰しておりました、よろしくお願い申し上げます。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年02月06日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・止まらない咳31・急性〜慢性の咳で、肺炎以外、画像で見えないもの・感染性咳嗽

一体何の話や?と思われるかもしれませんが、NTM、間質性肺炎の前には、咳の鑑別についてお話をしていたのでした。


慢性の咳、でも胸部X線画像上原因疾患を示唆する異常は見当たらない、
  • on-off

  • 繰り返し

  • 過敏性

も病歴上明らかでなく、喘息らしくはない、そういうときにどう考えるか。という話でした。


で、続きです。その場合、

  • 感染症

  • 後鼻漏

  • GERD

  • COPD

  • 気管支結核

  • 気管支内の腫瘍


あたりを鑑別に考える必要があります。



■ 感染症

喘息との鑑別が必要なくらい「慢性の、激しい咳」をひき起こす感染症として、マイコプラズマ(M. pneumoniae)やクラミジア(C. pneumoniae)、それに百日咳菌などによる細気管支炎が挙げられます。


これらの感染症、日本呼吸器学会「咳嗽に関するガイドライン第2版」によると、病歴に以下のような特徴があれば疑う、とされています。

  • 感冒様症状が先行している

  • 自然軽快傾向である

  • 周囲に同じような症状の人がいる

  • 経過中に膿性度の変化する痰が見られる




診断のために行う検査として、以前はペア血清の抗体検査が行われていましたが、結果が2週間以上かかります。マイコプラズマ、クラミジア、百日咳菌いずれの場合でも、感染の治療をするのであれば病初期に抗菌薬を投与する必要があり、これでは間に合いません。


そういうこともあって、マイコプラズマについては最近使えるようになった迅速診断キットを使われることが多いようです。感度も特異度も少し心許ないようですが、特徴的な病歴がある症例で診断を固めるのには使えるでしょう。


ただ、成人のマイコプラズマ感染症は基本的に自然軽快しますから、早期診断・早期治療が患者さんの予後を改善する、だから積極的に検査をせねばならない、ということにはなりません。小児の場合には治療が必要になるので、このキットも小児科で備えられていることが多いようです。



百日咳の場合、ワクチン未接種の乳児が発症すると重症化する恐れがあるため、もう少し積極的に診断したいところです。患者さんご本人は病初期を過ぎていても、抗菌薬を投与することで周囲への感染予防に役立つといわれていますし、ご本人の咳が軽減することも経験されています。



日本呼吸器学会「咳嗽に関するガイドライン第2版」にはある程度診断のためのフローチャートがありますのでそれをご紹介します。


・14日間以上続く咳があり、

  • 発作性の咳き込み

  • 吸気性笛声(whoop):コンコンと連続で咳が出た後に息を吸うときに笛のような音がすること

  • 咳き込み後の嘔吐


のいずれか1つを伴う場合、臨床的に百日咳と診断します。しかし成人の場合、なかなかこのような典型的な症状は呈さないことも多いので、次の検査による診断を考えます。



・発症から4週間以内のとき、咽頭ぬぐい液の培養、PCR・LAMP法(遺伝子増幅法)を行う、となっていますが、保険適用がない、そもそも出来る施設が少ない、感度も低いと、なかなかハードルが高いものです。なので、そのタイミングでも血清診断を行うことが多いです。


・発症から4週間以降になると、直接菌を検出することは出来ませんので、血清診断を行います。こちらは保険適用もあり、役立ちます。PT(pertussis toxin:百日咳毒素)-IgG抗体が100EU/mL以上であれば、百日咳と確定します。


PT-IgG抗体が10〜100EU/mLのときは、DTPワクチンの接種歴を確認します。接種していなければこんなに上がるのは感染だ〜百日咳確定。1回以上接種していれば、ペア血清で細菌の感染による上昇かどうかを確認します。ペア血清で2倍以上上昇していれば百日咳確定です。接種歴が不明なときは判定が難しいですが、少なくともペア血清で2倍以上の上昇がなければ、百日咳ではないでしょう、と判断します。


PT-IgG抗体が10EU/mL未満のときは、発症から4週間以上経過しているかどうかで判断します。4週間以上経過しているのに抗体価が上昇していない場合、これは百日咳ではないとします。4週間以内であれば、まだ抗体価が上昇していないタイミングである可能性もありますから、ペア血清で10EU/mL以上になるかどうかを確認します。10EU/mL以上になれば百日咳と確定し、ならなければ違ったと判断します。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年02月03日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診療・まとめ2

  • 画像上空洞が見られたら、外科手術の適応を一度は検討する。専門医への相談が望ましい。

  • M.kansasii症の場合、INH、RFP、EBにて1年間治療する。

  • 菌がMAC、M.kansasiiでなければ、呼吸器専門医に相談をして頂きたい。

  • 菌がMACでも、CAM耐性が判明した場合、RFP+EB+STFX、出来れば初期にはSMを数ヶ月〜6ヶ月併用、また出来れば呼吸器専門医に相談をして頂きたい。

  • 治療を型どおりに開始して、副作用が生じた場合、「肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解―2012年改訂 - 日本結核病学会非結核性抗酸菌症対策委員会 日本呼吸器学会感染症・結核学術部会.(Kekkaku Vol. 87, No. 2 : 83_86, 2012)」や結核診療ガイドラインなどを参照するが、出来れば早めに呼吸器専門医に相談をして頂きたい。

  • 治療中、副作用などで中断する場合を含め、単剤で治療している期間がないよう注意する。あったとしても数日にとどめたい。

  • 治療期間は菌陰性化後1年が目安だが、ある程度効果がみられ、副作用の問題がなければ2〜3年を目処に継続が望ましい。

  • 治療終了した後に再燃、再排菌があれば、それまでに終了していた化学療法を再開する。

  • 出来れば早めに呼吸器専門医に相談をして頂きたい、とはいっても相談・紹介出来ない状況であれば、これまでの記載や上記のガイドラインなどを参照して頂ければ、一通りの対応は可能かと思います。



呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年02月02日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診療・まとめ1

肺非結核性抗酸菌症に関して、非専門医の先生方に是非お願いしたいことをまとめてみます。


  • 慢性の咳や痰、あるいは健診発見異常影で、『結節性陰影、小結節性陰影や分枝上陰影の散布、均等性陰影、空洞性陰影、気管支または細気管支拡張所見』を見かけたら、可能な限り喀痰検査で菌の確認をする。

  • 菌が検出されたら、治療について検討する。可能な状況なら呼吸器専門医に相談。

  • 菌がMACで、画像上空洞が見られたら、CAM+EB+RFP(+SM)で治療開始。

  • 高齢(70歳以上が目安)、胃が弱い、などの状況ではCAM400mgから少しずつ増やす。1剤ずつ加えていくなどの工夫をする。

  • 治療前に得られた菌でCAMの感受性を確認しておく。

  • 治療開始後も定期的に喀痰検査を行い、菌陰性化を確認する。

  • 各種副作用についてあらかじめ患者さんに説明し、毎回確認する。

  • 菌がMACで、画像上結節・気管支拡張のみであったら、患者さんに治療のメリットと副作用について説明し、方針を決定する。受けいれの時間を取るために、「一旦様子を見る」ことも妥当と考えられるが、悪化がみられないかどうか密にフォローアップする。

  • 明らかな悪化がある、または症状がある場合、治療開始する。

  • 呼吸器専門医に紹介する場合、紹介先に行ったら、気管支鏡をする可能性、気管支鏡のリスク、菌が確定したら治療をする、投薬による副作用の可能性などをある程度説明しておいて頂けると助かります。



呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年02月01日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診療・MAC以外の肺非結核性抗酸菌症

■ M.kansasii

肺非結核性抗酸菌症のうち、日本で肺MAC症についで多いのが肺M.kansasii症です。画像所見としては、薄壁の空洞が特徴的…といわれていますが、必ずしもそうとは限りません。ちょっときれいな薄壁空洞の例が乏しくて、お示し出来ませんが。


いずれにしても診断は他のNTM症と同じく、喀痰などから菌を検出することで行われます。


M.kansasii症は、肺NTM症の中では治療反応性がよく、INHも効果が見られまして、治療法は、投与量は結核に準じます。ただPZAは効果が期待出来ず、使われません。


INH 5 mg / kg(300 mgまで)/日 分1
RFP 10 mg / kg(600 mg まで)/日 分1
EB 15 mg / kg(750 mg まで)/日 分1


の3剤併用療法、排菌陰性化から1年間の投与が標準的です。



■ M.abscessus

厄介です。何かと。


日本ではM.kansasii症に次いで多いとされています。画像的にMAC症と類似した所見で、しかもMAC症例で同時に排菌し、重複感染と考えられる場合もあります。


こんな風に診断面でも厄介ですが、治療の面でも厄介です。CAMは効果があるとされますが、その次が難しい。特に内服薬は厳しく、注射薬のアミカシン(AMK)、イミペネム・シラスタチン(IPM/CS)が使われますが、これらは点滴が必要なわけで、入院での投与が現実的です。リネゾリド(LZD)も効果があるとか。そうすると、せいぜい1ヶ月ほど入院、投与してそれから外来へ、となりますが、その時に何を使うか。RFP、EB、ファロペネム(FRPM)、キノロンなどが試みられていますが、まだまだ標準治療というには道のりが遠いようです。


M.abscessusはNTMの中では迅速発育菌と呼ばれ、増殖速度が早いほうになります。固形培地で1週間以内にコロニー形成があるものが迅速発育菌、1週間以上かかるものを遅発育菌と分けています。


もちろん一般細菌に比べれば発育は遅いですが、育つのが早い=分裂速度が速い=治療で減るのも早い、ということで治療すると割とよく効くように見えることもあるのですが、結局再燃、再排菌する例が多いです。で、NTMの中で一番予後が悪い、と評されています。


そんなわけで、M.abscessus症が出ましたら、専門医へ、と申し上げたいところではあるのですが、私どもにご紹介頂けましたら確実によくなります!とも言えないのが現状です。上記以外の菌も、専門医へのコンサルトが望ましいです。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年01月31日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診療・MACの外科治療

線維空洞型のように菌量が多い病態では、抗菌化学療法の効果が非力であることから、手術療法を考慮されることもあるかと思います。


NTM症の外科治療に関しては、日本結核病学会の「指針(Kekkaku Vol. 83, No. 7 : 527_528, 2008)」を参照して頂くのがいいと思います。


(ここから引用)
外科治療(肺切除術)の適応 として、

(1)排菌源または排菌源となりうる主病巣が明らかで、かつ以下のような病状の場合

  • 化学療法にても排菌が停止しない、または再排菌があり、画像上病巣の拡大または悪化傾向が見られるか予想される。

  • 排菌が停止しても空洞性病巣や気管支拡張病変が残存し、再発再燃が危惧される。

  • 大量排菌源病巣からのシューブ(急速な悪化)を繰り返し、病勢の急速な進行がある。



(2)喀血、繰り返す気道感染、アスペルギルスの混合感染例などでは排菌状況にかかわらず責任病巣は切除の対象となる。


(3)非結核性抗酸菌症の進行を考えると年齢は70歳程度までが外科治療の対象と考えられるが、近年の元気な高齢者の増加や、症状改善の期待などを考慮すると70歳代での手術適応もありうる。


(4)心肺機能その他の評価で耐術である。


(5)対側肺や同側他葉の散布性小結節や粒状影は必ずしも切除の対象としなくてよい。
(引用ここまで)



外科手術を行ってもそれで解決、とはならず、あくまで外科手術は菌の多い部分を「減らす」ものであり、化学療法の併用は必須です。


明快にまとめられているので、参考になりますね。問題は手術を引き受けて下さる、相談に乗って頂ける呼吸器外科医の先生が近くにおられるかどうか、ということになるかもしれません。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年01月30日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診療・MACの治療・薬に対するあれこれ・投与期間など

治療期間についても、定まったものはありません。日米のガイドラインでは「菌陰性化後約1年間投与」なんて書いてありますが、エビデンスのある話ではありません。


ただ、「菌陰性化後」という言葉もあるように、菌が陰性化するかどうか、陰性化したタイミングを認識することは重要であります。その治療の効果があったかどうかがある程度わかりますから。ということは、治療中にも喀痰を定期的に採らなくてはならない。診断時にやっとの思いで採った、なんていうケースでは至難の業でしょうが、試みては頂きたいところです。


初回治療時には60〜80%で菌が陰性化するようですが、その後治療を止めるとまた悪化する例も少なからずあり、投与期間が菌陰性化後1年でいいのか、もっと長ければ再悪化が防げるのかわかっていません。再悪化したら再治療となりますが、止めると悪化⇒止められない、となってしまう症例もしばしば経験されます。まあそこは、副作用がなければ続けざるを得ない、という感じでしょうか。


現実的には菌が陰性化するかどうか(効果がどの程度か)を見ながら、また副作用が出てこないかどうかを確認しながら、まずは「菌陰性化後約1年間」を意識して投与します。


ただまあ、すぐに菌が陰性化、あるいは画像がきれいになって、効果がスゴくあったと考えられる場合は投与期間が短くてもいいのか、あるいは、出来るだけ菌を減らすべく長い方がいいのか、ということについてもハッキリした答えはありません。何となく、安全に使えるのであれば長い方がよさそう、という感触はありますが…。



SMは注射ですし、第[脳神経障害のこともありますから、2年や3年とはなかなかなりにくいでしょうが、少なくとも6ヶ月、有効例ではより長く使用したいといわれているようです。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年01月27日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診療・MACの治療6・薬に対するあれこれ・診断と治療開始のタイミング・治療すんのかい!?せーへんのかい!?

そもそも、MAC症と診断したら全例直ちに治療するか、イヤその前の診断という話に戻ります。


線維空洞型は菌量も多く、進行が早くて予後が悪いので、診断即治療。これはいいでしょう。問題は近年増加している結節気管支拡張型の方です。まず診断自体、菌量が少なくてなかなか喀痰から菌が検出されないことも多いのです。また、そもそも罹りやすい「高齢でやせ型の女性」は普段から「カーッ、ペッ」と痰を吐くこともしない、Lady Windermereタイプの振る舞いなワケです。


そうすると、そもそも「痰が出ません」「痰なんて、出したことがない」みたいな話になります。だいたいそういう方は、健診発見無症状か、症状で受診したとしても「咳」「痰が絡む」程度の症状であったりして、痰が出るわけではない。それでパラパラッと中葉舌区なんかに、粒状影+気管支拡張像が見える。そういうパターンが多いでしょう。


痰が出て診断出来れば、次の話になりますが、この時点で足踏みすることも多いのではないかと思います。結節気管支拡張型で無症状の場合、「痰なんかでません」といわれたらどうするか…。


ここで考えなくてはならないのが、「MAC症と診断⇒即治療」となるかどうか、ということです。MAC症、特に結節気管支拡張型の臨床経過、予後にはかなりばらつきがあり、特に初期にはあまり進行しない、あるいは改善したように見える症例も少なくありません。そういう患者群ではランダム化比較試験が難しく、介入すべきなのかしなくてもいいのか、はたまた副作用のことを考えるとしない方がいいのか、議論のあるところになるわけです。


まあ結局結論は出ておらず、「専門医に相談してね」みたいなことになっていますが、専門医だって困っているのです。そんなこと言われても困りますわね。じゃあ実際どうするか。


現状ではどこにも明記されておらず、高齢者で、症状がなくて、あるいはあってもたまに痰が出る程度、画像上陰影もそんなに強くない、そんな場合、まずは経過観察をしてもよいのでは、悪化があればその時点でまた考えましょう、そんなフワッとした感じの考え方がコンセンサスではないかと思っています。


とすると、上のような場合、どっちにしろ経過観察なら、無理して診断しなくても、という考え方も出来るでしょう。CT画像的にMAC症の疑いで、痰が採れないときには、ちょっと経過観察、と。


それで悪化するようなら、もうちょっと痰も採りやすくなるだろうから、その時点で診断を考える。明らかに悪化傾向があれば、普通にやって痰が採れなくても、生理食塩水や高張食塩水の吸入後喀痰を誘発するとか、胃液培養や気管支洗浄(出来れば)に踏み切りたいところです。要するに、「治療したくなるタイミングになったら、きちんと診断出来るよう材料を採る」ということですね。


一方で、現在の化学療法に絶対的な効果が保証されておらず、しかも着々と進行する症例も多い、と考えると、とにもかくにも出来るだけ早く、診断時に治療を行ってみるべきだ、とする考え方もあります。


「ガイドライン」や「統一見解」のない世界ですから、どちらが絶対・正解というわけではありません。効果の点、副作用について患者さんやご家族によく説明し、よく相談されて方針を決めていただきたいと思います。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年01月26日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診療・MACの治療5・薬に対するあれこれ・EB・SM/KM

そう、エタンブトール(EB)には視覚障害の副作用がある、これはご存じの方も多いでしょう。エタンブトール中毒性視神経症などといわれています。


エタンブトール中毒性視神経症の発症は体重あたりの1日投与量に依存し、25 mg/kg/日以下での発症は少なくて15 mg/kg/日以下では比較的まれであると報告されています(臨眼 57 :687-690, 2003.)。


投与期間については、、投薬開始から2ヶ月経過後以降に発症し、半年〜1年程度で発症してくることが多いようですので、投与日数もある程度関係するようです。


EBの視神経症はSMの第[脳神経とは異なり可逆性、とはされていますが、投与を中止しても数ヶ月間は進行し、その後回復傾向となるといいます。ただし、回復しない例も報告されていますので、ともかく早期に視力・視野などの異常を発見できるよう、普段から定期的に眼科的診察・検査を受けておくこと、毎日新聞を片眼で読み、見えにくい、何かおかしいといった症状があればすぐに眼科受診するよう説明しておきます。



時にEBでも広範囲な皮疹が生じることがあります。対応はまず休薬ですが、多剤併用療法を行っている場合、一旦休薬した後は減感作療法により1剤ずつ再開して、各々安全に使えるかどうかを確認する必要があります。



SM/KMは注射薬ですから線維空洞型など重症例によく使われます。また、上にも書きましたが不可逆性の第[脳神経障害を生じうるために、使いにくい、若干ハードルが高い、と感じられる方も多いでしょう。私もそうです。


SMはアミノグリコシドの中でも難聴よりは前庭神経障害を起こしやすいといわれています。めまいが起こるということですから、患者さんにはよく説明して、めまいがあればすぐに教えてもらうようにします。重篤副作用疾患別対応マニュアル(厚生労働省:http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1p01.pdf)によると、総投与量が増える、投与間隔が短い、耳毒性を有する他の薬剤と併用する、などにより障害のリスクは上昇するとされています。


SMは1日1g注射で、累積投与量20g前後で副作用を認めることが多いといいます。週3回の注射でしたら7週間、2ヶ月ぐらいですから、その頃には眼や耳と、いろいろと要注意ですね。


聴器毒性を回避するために、SMはじめアミノグリコシド系薬の吸入療法が試みられたりもしておりましたが、局所濃度が高くならないと耐性を誘導する、など、用量設定の問題で一時立ち消えていたと思っていたら、また最近復活しつつあるようです。まだ確たるエビデンスはないようですが…。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年01月25日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診療・MACの治療4・薬に対するあれこれ・RFP/RBT

RFPは抗結核薬としておなじみですが、発熱や皮疹、肝障害といった副作用があります。CAMでもそうですが、非結核性抗酸菌に対して効果が期待出来る薬剤はあまり多くありませんので、1つが使えなければ使わなくてもいい、他を当たればいい、という考え方にはなりません。つまり、原則として、ガイドラインに書いてある通りの治療をしたい、ということです。先の「見解」(Kekkaku Vol. 87, No. 2 : 83_86, 2012)にも、副作用対策についてきちんと書いてありますので、抗結核薬を使われる際には是非参照して頂きたいと思います。


まあでもCAM耐性だったら代替薬、これは仕方ありません。ただCAMの副作用であれば、例えばQT延長みたいにヤバいやつは仕方ありませんが、消化器系のものであれば、投与法の工夫や胃腸薬の投与、一旦休薬〜再投与チャレンジなどで何とか使って行きたいところです。


RFPはどうでしょう。有名な副作用として、肝障害、白血球減少症、それに皮疹や発熱などがあります。肝障害への対応は「抗結核薬使用中の肝障害への対応について」(Kekkaku Vol. 82, No. 2 : 115_118, 2007)に詳しいので参照頂きたいですが、基本はAST/ALT値が施設基準の5倍以上になったら中止、改善してチャンスがあれば再投与、という感じになります。かつては強力ミノファーゲン注を使っていたこともありましたが、エビデンスはありません。


白血球減少も、やはり薬剤中止の対応になります。投与開始数ヶ月以内に発生しますが、多くの場合は白血球2,000/mm3、血小板10万/mm3以下になることは少ないですが、それ以下になる場合には中止を考慮する必要があるでしょう。


また、皮疹は、広範囲なものであれば中止⇒減感作療法で対処出来るケースが多いです。減感作療法のやり方は「日本結核病学会治療委員会:抗結核薬の減感作療法に関する提言」Kekkaku Vol.72, 697_700, 1997. http://www.kekkaku.gr.jp/ga/ga-1.htm)を参照して下さい。


RFPに似た薬剤、ということで、RFPを代替する、あるいはRFPを上回る効果を期待されて登場したのがリファブチン(RBT)です。でも〜でも〜実際登場してみると、何ともかんとも使いにくい。


まずはRFPが投与出来ない、あるいは効果が不十分、というときに使いたいわけですが、「他のリファマイシン系薬剤に対し過敏症のある患者には投与しない」といきなり釘を刺されています。効果の点ではin vitroの活性がRFPよりも高い、とされますが、臨床的に有意な差が認められているわけではありません。


特殊な副作用としてぶどう膜炎があり、しかもそれが投与量に依存する。投与開始から2〜5ヶ月で発症が見られています。RBTはCAMと併用すると血中濃度が上がってしまう、てなこともあり、RBTをRFPに替わって、無条件にNTM治療の第一選択に、ともならないと思います。


わかりやすいのはRFPと比較してCYP3A4に対する作用が弱く、そのテの相互作用は少ない、というところで、そのテの薬を併用する場面では選択しやすいと思います。そのテの薬とはプロテアーゼ阻害薬や逆転写酵素阻害薬、まあHIVの薬ですね。要はHIV合併でHAARTを併用するようなNTM(結核も)のときには、RFPより使いやすい、といったところでしょうか。


もちろんnon-HIVにおけるNTM症に使用してもよいとは思います。


RBT 300 mg⇔ RFP 600 mg換算になるのですが、CAM併用時には血中濃度が上がるため、RBT投与量は当初150mgとし、6ヶ月以上副作用がないことを確認して300mg/日まで増量可とされています。EBを併用する際には特に注意が必要です…。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年01月24日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診療・MACの治療3・薬に対するあれこれ・CAM

CAMは副作用が比較的少なく使いやすい薬、と認識されています。そのために小児から濫用されて一般細菌に効かなくなってしまった…という話はまた改めてするとして、CAMには消化器系の副作用がしばしば見られ、用量が増えると副作用も増えるといわれています。副作用を軽減するためには、いくつかの工夫が必要です。


  • 投与量を減らす

  • 減らすといっても、600mg未満だと効果の点で心配なので、特に高齢者(70歳以上)の場合、低用量より開始し徐々に増やす

  • 分1よりも分2投与


例えば、400mg分2⇒600mg分2⇒800mg分2、と数日〜1週間毎に増やします。


抗結核薬の感受性は、MACの治療効果を推し量る上では役に立たないとされています。唯一、CAMだけは液体培地を用いてMICを測定することが出来、4μg/ml以下を感受性、32μg/ml以上を耐性と判定します。耐性であると判明すればCAMは中止します。


とはいえ、初回治療ではCAM耐性はほとんど考えなくてよい、とされています。でもですね。「副鼻腔気管支症候群」「慢性副鼻腔炎」に対して、CAMをダラダラ長期間使われている症例をよく見かけます。これ、今後問題になってくると思います。後で触れるかもしれません。


副作用や耐性などでCAMを使えない、てな場合、キノロン系としてシタフロキサシン(STFX)が代用されます。キノロン系も確たるエビデンスがある、というわけでもないのですが、なにせ副作用があまりないものですから、気軽に?使われていうことが多いです。これまで、レボフロキサシン(LVFX)やモキシフロキサシン(MFLX)もよく使われていましたが、最近ではSTFX、とする意見が多いようです。


  • RFP 10mg/kg(最大600mg)/日 分1

  • EB 15mg/kg(最大750mg)/日 分1

  • STFX 100-200mg/日 分1



CAM単剤、CAM+キノロン、という投与法がかつては副作用が少ないこともあり、半ば気軽に行われていましたが、今では耐性の元となるため厳禁、とされています。まだされておられる先生方、厳禁です!3剤以上併用が原則です。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年01月23日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診療・MACの治療2

それから、抗結核薬。やはり非結核性抗酸菌、結核と性質が似ているところがあり、抗結核薬がある程度効果を現しますが、抗結核薬のうちイソニアジド(INH)はMACには効果が乏しく、使われることはありません(M.kansasiiには使われます)。


抗結核薬の中ではリファンピシン(RFP)、エタンブトール(EB)、ストレプトマイシン(SM)・カナマイシン(KM)の効果が認められていて、標準治療に使われます。ただ、SM、KMは筋肉注射での投与となりますので、外来診療では若干ハードルが高くなり、優先順位としては少し下がります。


投与量としては、概ね肺結核の治療と同じ量です。


先に挙げた2012年の日本結核病学会・日本呼吸器学会の見解で示されている標準療法は、以下の通りです。

(表)
  • CAM 600-800mg/日(15-20mg/kg)分1または分2(800mg/日なら分2)

  • RFP 10mg/kg(最大600mg)/日 分1

  • EB 15mg/kg(最大750mgまで)/日 分1

  • SMまたはKM(各々15mg/kg以下、最大1,000mgを週2〜3回筋肉注射)は必要に応じて



つまり、CAM、RFP、EBの3剤が基本で、ある程度以上の重症例にSMを追加する、という感じです。


ちなみに米国胸部学会(ATS)/米国感染症学会(IDSA)の提言(An official ATS/IDSA statement: diagnosis, treatment, and prevention of nontuberculous mycobacterial diseases.
Griffith DE, ら Am J Respir Crit Care Med. 2007 Feb 15;175(4):367-416. )では、結節気管支拡張型であれば週3回投与(1回投与量多め)でよい、となっています。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年01月20日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診療・(線維空洞型)MACの治療1

近年増加しているのは結節気管支拡張型の方で、こちらの診断、および治療を考えるのに悩ましいケースがしばしばあるのです。


線維空洞型は菌量も多く、進行が早くて予後が悪いわけですから、菌の検出はより容易で診断は困難ではないでしょう。そして、診断したらすぐに治療開始、そういう意味ではあまり悩ましくはありません。まあ、効果が乏しくて悩ましい、ということはあると思いますが…。


治療は化学療法、つまり抗菌薬を使います。MACに効果がある抗菌薬としては、まずクラリスロマイシン(CAM)です。MACにCAM、うまく出来ています(何が?)。同じマクロライド系であるアジスロマイシン(AZM)もある程度効果が認められていますが、HIV感染ベースの症例で効果に差があるとの報告もあり(差がないという報告もあり)、通常はCAMが先に記載されています。


CAMだったら、一般細菌や普通の?非定型病原体に使われているところの400mg/日ではなく、その倍量の800mg/日を使うことが推奨されています。今では保険適応上もマイコバクテリウム属への投与は800mgが認められています。


胃腸障害など、副作用が生じたり、懸念されたり、という場合、量を減らさざるを得ないこともあるでしょう。体重が少ない場合に600〜400mgに減量することは結核病学会でも認められています(肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解―2012年改訂 - 日本結核病学会非結核性抗酸菌症対策委員会 日本呼吸器学会感染症・結核学術部会.Kekkaku Vol. 87, No. 2 : 83_86, 2012)し、特に高齢者の場合、まず400mg分2から開始し、600mg、800mgと増やしていくのも一法です。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年01月19日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診断3・画像所見でみるMACの病型

非結核性抗酸菌症のうち、原因で最も多いのはMACです。MAC以外の非結核性抗酸菌が相手、となりますとどうでしょう。M.kansasiiだったら、まだ与しやすいですが、それ以外だと呼吸器科以外ではいささか荷が重い、と思われるかもしれません。ということで、まずはMACの病型について考えてみます。


肺MAC症の病型は画像の特徴から大きく分けて2つある、といわれています。


  • 線維空洞型
    名前には「線維」と入っていますが、いわゆる肺線維症みたいなことではなく、空洞形成が病変の中心です。陳旧性肺結核やCOPD、じん肺など、元々肺組織の破壊性病変がある症例に多いといわれています。

  • 結節気管支拡張型
    こちらは元々肺が壊れていない症例で見られ、結節や気管支・細気管支の拡張像が見られるもので、新たに発症する症例ではこちらが多いです。



結節気管支拡張型は中高年の女性が、人前で咳をするのははしたない、ということから咳をしないようにしていて、それで菌を喀出できずに罹るんじゃないか、みたいなことがいわれています。それでオスカー・ワイルドの戯曲”Lady Windermere’s Fan”の登場人物の振る舞いにちなんで”Lady Windermere症候群”とも呼ばれています。


一般的に線維空洞型の方が菌量が多く、治療に難渋して予後が悪い、結節気管支拡張型の方が菌量が少なく、予後がよい、とされています。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年01月18日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診断2・画像所見

胸部画像で典型的な所見、とサラッと書きましたが、典型的って、どんな陰影?って話です。


先の「基準」には、胸部画像所見として『結節性陰影、小結節性陰影や分枝上陰影の散布、均等性陰影、空洞性陰影、気管支または細気管支拡張所見のいずれかを示す』としてあります。


流し読みしていると、「フーン」てなもんですが、よくよく見ると、胸部画像で見られる大概の所見が含まれていることに気付かれるでしょう。結核同様、非結核性抗酸菌症も、多種多様な陰影を呈するのです。


例えば、結節性陰影、小結節性陰影はこんな陰影。


スライド36.JPG


分枝状陰影の散布、といいますと、こんな感じでしょうか。


スライド37.JPG


均等性陰影、なかなかいい症例がありません。他の疾患でこんなイメージです。


スライド38.JPG


空洞性陰影はよく見かけますね。


スライド39.JPG


気管支または細気管支拡張所見はこんな感じでしょうか。空洞もありますけど。


スライド40.JPG


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年01月17日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症の診断

まずは診断です。正しい診断なくして治療なし。で、こちらも肺結核同様、喀痰なり胃液なり気管支洗浄液なりから菌を検出する、これが標準となります。ですから同じく、痰をしつこく採りましょう、気管支鏡も考慮しましょう、となります。ただ、結核との違いは「抗MAC抗体」なる抗体検査が適用出来ること。


抗MAC抗体(MAC特異的血清診断)は、MACの壁を構成する抗原成分に対する抗体を測定していて、感度40〜80%、特異度90〜100%程度です。結核におけるIGRAと異なり、肺非結核性抗酸菌症が発症して十分量の菌がいる、ということを意味しますから、IGRAよりは「診断の」役に立ちそうです。


でも抗原成分がMAC以外の非結核性抗酸菌にも存在すること、それから環境中のMACに曝露しても抗体が産生されうるともいわれていることから、これだけが陽性=MAC症、とは決めがたいところです。臨床上、画像上疑わしくて、喀痰が1回だけ陽性、なんて症例で陽性であれば、役に立ちそうですけど。


一応、日本結核病学会・日本呼吸器学会による確定診断の基準は、臨床的基準として

  • 胸部画像で典型的な所見所見がある

  • 他の疾患を除外出来る


上で、細菌学的基準のいずれかを満たすとされています。この原則はその通りですので、現状では抗MAC抗体は、あくまで「補助診断」という位置づけになります。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年01月16日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺非結核性抗酸菌症について

肺結核と診断した瞬間、保健所に届け出る必要があり、その治療についてもある程度決まったものがあります。培養陽性であれば専門施設へのコンサルトをされることも多いでしょう。そんなわけで、肺結核の診療において、悩ましい問題、というのは比較的少ないのではないでしょうか。


一方最近では、すっかり肺結核よりも多くなった肺非結核性抗酸菌症。こちらには悩ましい症例も多いです。それなのに、患者さんの症状もはっきりせず、呼吸器にコンサルトしたものかどうか、それすらも悩んでしまう。そんな場面も多いのではないでしょうか。


結局どうしたものか、ガイドラインを見てもよくわからない。近くに気軽に聞ける専門医がいない…。


いや、実のところ私たちも、「本当にこれでいいのか」悩みながら診療を行っているのが実際のところです。というのも、

  • 治療薬の決定版がない

  • その割には(それゆえに)多剤、長期間の治療が必要で、副作用の懸念がある

  • 進行がゆっくり、あるいは進行しない例もある

  • 一方で、治療抵抗例では悪化し出すと手がつけられない

  • 外科治療の適応が難しい・外科治療自体が困難


といった状況があるのですね。エビデンスがないというか、足りないというか。それゆえに「こうすべし」と言い切れない。でも、何か指針はほしい。という感じでしょうか。少し考えてみましょう。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年01月13日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・IGRAについて

これも、以前から何度もこちらで書いていることではありますが…。


誰でも、同じ結果が得られるんだったら、楽な方がいい、まあこれはわかります。でも、結果が違うのに、楽な方を進むのはどうでしょう。そう言われると、「結果が違うんだったら、結果によるよね」と思われるでしょう…。




IGRA(interferon gamma release assay:インターフェロンガンマ放出試験)という検査があります。IGRAは一般名で、商品名としてはQuantiFERON-TB-Goldレジスタードマーク(QFT-G/QFT-3G:クォンティフェロン)、T-スポット.TBレジスタードマークが有名です。


この検査のポイントは、「採血をすれば、結核感染の有無が高精度にわかる」というもの。「採血」という、気軽な、楽な方法で、「高精度に」わかるのがミソです。そのため、割と気軽に「結核の診断法」として用いられているのが気になります。


「Tスポット陽性なので、結核と考えられます」
「クォンティフェロン陰性なので、結核は否定的です」
と、かなり短絡的に、結果と診断がリンクしてしまっていることが多いのですね。


IGRAの意味するところはあくまで、結核の「感染」です。IGRA陽性は結核菌が体内に入って感染が成立していることを意味しますが、イコール「肺結核(=発症)」ではありません。これは繰り返し強調したいところです。


IGRA陽性は、あくまで感染。肺結核の可能性はありますが、肺結核の診断は、あくまでも「喀痰・胃液・肺から結核菌を証明すること」ですから、IGRA陽性であれば、頑張って菌を証明する努力をしましょう。


特に70歳以上の高齢者の方は、戦後の結核蔓延期、菌がそこら中でまき散らされていた時期に吸い込んでしまっている可能性があり、IGRA陽性者が多いのが現状です。そうなるとIGRA陽性に診断的意義は期待出来ません。


IGRA陰性のときはどうか。IGRA陰性は、結核菌の感染がない、と考えてよい。とすると、それで結核が発症する可能性は低いと考えられます。



結論として…

・IGRA陽性であっても、肺結核とは限らない。喀痰検査、胃液培養、気管支鏡などを施行し菌の検出に努めるべし。

・IGRA陰性であれば、肺結核をさしあたり考える必要はない。


IGRAという簡便な検査だけで、結核の診断は出来ません。楽な検査ではありますが、得られるものも少ない。これは覚えておいて頂きたいと思います。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年01月12日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診療・肺結核の診断

間質性肺炎もいろいろ書いてきて、どこまで網羅したやらわからなくなってきましたので、一旦頭を冷やすことにします。


しばらくはこれまたご質問の多い、肺結核と非結核性抗酸菌の診断と治療について考えてみることに致します。



肺結核

肺結核は診断してしまうと、呼吸器専門医なり専門施設に紹介、というケースが多いようですから、診断の方が治療よりも問題となることが多いでしょう。


肺結核の診断には、喀痰、または胃液から結核菌を検出することが何よりも大切です。Tスポットもツ反も、傍証でしかありません。これは間違いない。


肺結核を疑うような状況、症状があり、矛盾しない画像所見があれば、積極的に喀痰検査を3回(3連痰)行うべきです。どうしても採取出来ない場合、胃液培養を3回行います。早朝の食前に経鼻胃管を挿入し、シリンジで吸引するだけです。外来で施行可能。気管支鏡よりもよっぽどハードルが低く、しかも確実に診断が可能な検査ですので、是非積極的に行って頂きたいと思います。


肺結核を疑う状況

・既往がある

・塗抹陽性患者の接触者である

・下記のようなリスクがある

  • 重喫煙者

  • 糖尿病

  • 胃切除後

  • AIDS

  • 担癌状態・血液疾患

  • 人工透析中

  • ステロイド・免疫抑制治療中

  • 珪肺




肺結核を疑う症状

・長引く咳・痰で喘息のような変動性に乏しい

・微熱・寝汗や体重減少がある。



・矛盾しない画像所見

・「肺結核に矛盾する画像所見なんてない」と諫められるように、様々な画像所見を呈することが知られている。

・したがって、「胸部X線写真で何らかの陰影が見られる」のであれば、それは結核を疑う根拠になる。

・典型的には粒状影〜結節影、空洞を伴うことが多い。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年01月11日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・間質性肺炎・肺線維症42・好酸球性肺炎(好酸球増多症)3

急性好酸球性肺炎 典型例のCT


スライド32.JPG



慢性好酸球性肺炎(CEP)の方は、画像的にはCOP(OPパターン)と類似していて、多発する斑状の浸潤影が特徴です。分布は末梢、特に胸膜直下に多く見られ、陰影が移動する(自然軽快する部分がある)というキーワードがあります(必ずというわけではありません)。


スライド33.JPG


こんな感じの陰影で、抗菌薬が無効であれば、ステロイドを使いたくなるのではないでしょうか…。


OPとの鑑別は臨床症状などからは困難ですが、CEPの場合、AEPと異なり末梢血の好酸球増多がほとんどの場合に見られる、という点で診断の手がかりになります。


また、治療の点でも、よく似ているCOPはステロイド単独〜漸減投与が多く、CEPもステロイド単独で比較的コントロールが得られることが多いので、厳密に診断をしなくても、まあ何とか対応は可能かと思われます。


まあ、CEPの場合、ステロイドを切ろうとすると再燃することがままあって、10mg以内の維持量を投与継続することも多いのですが、COPでもそういうことはありますから、結局「漸減していって、10mg以下になったらさらにゆっくり減量して、再燃あればそのあたりを維持量とする」という方針で大間違いではないように思われます。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年01月10日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・間質性肺炎・肺線維症41・好酸球性肺炎(好酸球増多症)2

(表 文献より引用)
■ 原因不明の好酸球性肺疾患

・特発性好酸球性肺炎
  急性好酸球性肺炎
  慢性好酸球性肺炎

・全身疾患に伴うもの
  好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
  好酸球増多症候群


■ 原因が同定される好酸球性肺疾患

・寄生虫などの感染症
・アレルギー性気管支肺真菌症
・薬剤や有毒物質など


■ 好酸球増多を来しうる(が、好酸球性肺疾患とはいいがたい)肺疾患

・器質化肺炎
・特発性間質性肺炎
・気管支喘息・好酸球性気管支炎
・肺ランゲルハンス細胞組織球症
・肺移植
・その他



このうち、一般的なイメージである「末梢血の好酸球増多があり、肺に移動する浸潤影がある」疾患は、慢性好酸球性肺炎と好酸球増多症候群、それに原因が同定される群あたりです。


急性好酸球性肺炎では、急性期には好酸球はほとんど肺に集中していて、末梢血にはあまり現れませんし、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症では肺に陰影が見られないことも多く、見られてもすりガラス影程度で、あまり典型的ではありません。


そんなわけで、「末梢血の好酸球増多」が、必ずしも「好酸球性肺疾患」を表すものではない、逆もまた然り、ということになります。


とすると、BALを行うことが出来ない施設において、「好酸球性」肺疾患の「診断」はもう無理、となります。これは仕方がありません。問題は、BALを行わないことでどの程度診断に迫れるか、また「治療方針」が変わるかどうか。このあたりです。



好酸球性肺疾患が鑑別診断に挙がるのは、呼吸困難などの症状があり、両側にすりガラス影〜浸潤影が斑状に見られるときです。


それで原因となるものが同定されない特発性好酸球性肺炎のうち、急性好酸球性肺炎は、比較的特徴的な症状と画像所見を呈することが多いです。


急性好酸球性肺炎の症状:喫煙開始、再開が契機になって発症する例が多い。喫煙以外に煙やスプレーなどの吸引が契機になるとの報告もある。症状は急速に生じて進行する発熱、咳嗽、呼吸困難などが典型的である。


急性好酸球性肺炎の画像所見:両側びまん性の広範なすりガラス影+カーリーBラインなど広義間質の肥厚が見られる。両側に少量の胸水も認められる。


典型例に見られる広義間質の肥厚像は割と特徴的で、他には心不全・肺水腫と癌性リンパ管症・リンパ増殖性疾患あたりが鑑別となりますから、きちんと読影が出来て、臨床症状から他疾患の除外ができれば、なんとかBALなしでも診断は可能かもしれません。


また、急性好酸球性肺炎であればステロイドがよく効きますから、ステロイドの反応性も診断の一助になるでしょう。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2017年01月06日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・間質性肺炎・肺線維症40・好酸球性肺炎(好酸球増多症)1

正直、「好酸球性肺炎(eosinophilic pneumonia:EP)」の診断を、気管支鏡(気管支肺胞洗浄:BAL)なしで行う、というのは無理な話です。EPの定義ともいえるのが、肺胞洗浄液内の好酸球が増多している、ということですから、BALか生検が必要になります。


じゃあ、BALが出来ない施設ではどうすればいいか。一般的なイメージとしては、「末梢血の好酸球増多があり、肺に移動する浸潤影がある=好酸球性肺炎」となるかもしれません。でも、その公式は正しくない。


そもそも現在「好酸球性肺炎」という病名自体、正しくはありませんので、診断を考える前に、そもそも好酸球性肺炎、と呼ばれているものの再定義といいますか、分類を整理する必要があるでしょう。


おそらく「好酸球性肺炎」という言葉で連想されるのは、肺の中に好酸球がいっぱいあって、浸潤影があって…というものだと思いますが、そういう疾患は、実はたくさんあるのです。ただこの疾患群、これぞ、という決定版的な分類基準がありません。病因であったり機序であったりの全貌が明らかでない、ということにも関係しているかもしれません。


よく使われている、というかわかりやすく表になっているのはCottin とCordierの基準かと思います。
Eosinophilic pneumonias. Cottin V, Cordier JF. Allergy. 2005 Jul;60(7):841-57.



明日は千葉県船橋市での勉強会です。


ちらし.jpg


家庭の事情?で日帰りになりますので、更新は無理かと思います。ご容赦のほど、お願い申し上げます。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2016年12月26日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・間質性肺炎番外編・第10回びまん性肺疾患フォーラム見聞録5

6) IPFの治療、管理における病理診断UIPの意義

神奈川県立循環器呼吸器センターの小倉高志先生によります、IPFのお話でした。やはり多くの臨床経験をお持ちの方のお言葉には重みがあります。神奈川県立循環器呼吸器センターには、次の4月からウチの若手がお世話になることが決まっております。ありがたいことです。何卒よろしくお願い申し上げます。以下にご講演の概要を記します。




multidisciplinary discussion(MDD)は、一時点での評価ということになってしまうが、間質性肺炎の評価のためにはそれだけではなく、時間経過が大事である。


「UIPパターン」はIPF/UIPのための基準であって、IPF以外の疾患についてはこの概念は当てはまらない。


CTでUIPパターンがみられなくても、病理学的UIPはたくさんある。CTで最後までUIPパターンがみられないのに生検ではUIPであった、という症例もちょいちょいある。やはり生検、病理が大事である。
Pathologically proved nonspecific interstitial pneumonia: CT pattern analysis as compared with usual interstitial pneumonia CT pattern.
Sumikawa H, Radiology. 2014


上肺野にPPFE、下肺野にUIP、という症例群がある。喫煙は少なく、家族歴がある。(UIPの空間的不均一性、と絡めて?)上肺にも下肺にも病変があればUIP、とする先生もいる。


早期のIPFは、fine cracklesで発見出来る(データあり)。


IPFを抗線維化薬で治療すべきか?という命題。IMPULSIS試験ではFVCの低下でみているが、DLcoの低下があり症状があれば治療、と考えていいのではないか。


開業医の先生方が専門医に紹介されるタイミングとして、6分間歩行が4%以上低下したら紹介⇒治療導入、というのがいいのでは。


AIPといわれているものの多くは、潜在的IPFの急性増悪なのではないか。


Centrilobular emphysema(小葉中心性肺気腫)小葉中心性気腫⇒COPD。
Paraseptal emphysema(傍隔壁型肺気腫)⇒UIPが出てくる、つまりCPFEとなることが多いと思う。


かいつまんだだけではありますが、ありがたいお話ばかりでございました。お話し頂いた先生方、また10年間スポンサー頂きましたエーザイさん、本当にありがとうございました。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2016年12月22日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・間質性肺炎番外編・第10回びまん性肺疾患フォーラム見聞録4

5) IPAFないしLDCTDの治療、管理における病理診断UIPの意義

公立陶生病院の谷口先生による、概観、レビュー、といいますか、世界の趨勢、といいますか、裏話、といいますか、とにかく興味深いお話ばかりでした。でも興味深いところはここに書いていいのかどうか、ためらわれたりして。ちょっと控えめにしておきます。


disease behavior(疾患経過)を長期的に観察しよう、というが、どの程度を想定しているのか⇒今は4年後をみよう、ということになっている。


特発性間質性肺炎の診断には臨床・画像・病理のエキスパートによるmultidisciplinary discussion(MDD)が重要、とガイドラインにあるが、レベルの高い方々によらないdiscussionでは意味がない。それだったら、レベルの高い1人が、臨床・画像・病理情報を総合して診断を考える方がいいのではないか。


欧米のエラいさんは、自分たちで集まってガイドラインを都合よく変えては、論文をどんどん作っていく。猫の目criteriaだ。


UIPの要素があるIPAF(Interstitial pneumonia with autoimmune features=膠原病の香りがする間質性肺炎)には、PSL10mg以上は使わない。パルス✕2⇒PSL10mg+TAC のようにやっている。


IPAFに含まれるUIP病変には、ピルフェニドンが効果ありそう。


膠原病の診断基準を満たさなくても、全身症状がある、急性の経過がある、という場合にはステロイド+免疫抑制薬が1st choiceだが、慢性の経過であれば抗線維化薬が1stだろう。


ニンテダニブが皮膚の硬化に効果あり、というデータが出そう。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2016年12月21日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・間質性肺炎番外編・第10回びまん性肺疾患フォーラム見聞録3

4) 慢性過敏性肺炎の治療、管理における病理診断UIPの意義

慢性過敏性肺炎(CHP)の日本における第1人者、東京医科歯科大学の稲瀬先生によります現況のレビューを頂きました。


CHP症例をIIPの分類に当てはめてみた稲瀬先生らの論文がこちら。UIPの予後が悪い。
Chronic bird fancier's lung: histopathological and clinical correlation. An application of the 2002 ATS/ERS consensus classification of the idiopathic interstitial pneumonias. Ohtani Y, Thorax. 2005


CHPの臨床分類では、夏型過敏性肺炎の病型、急性〜亜急性の発熱と呼吸困難症状を繰り返す、recurrent型(BALFのリンパ球増多あり)と、急性症状がなくゆっくりと悪化・進行するinsidious型(BALFのリンパ球は増えているものの有意にrecurrentより少ない)とがあって、前者にはOP、NSIPが多く、後者がUIPを呈する。
Clinical features of recurrent and insidious chronic bird fancier's lung. Ohtani Y, Ann Allergy Asthma Immunol. 2003


CHPの治療には、とにもかくにも抗原回避が重要。ステロイドや免疫抑制薬は、現実的には使っても進行を抑えきれない。でも鳥関連過敏性肺炎だと、抗原とどこで接触しているのか、わからないこともしばしばある。


なので、自宅訪問や環境調査が接触回避のカギになったことも多い。なかなか出来るものではないが。剥製、鶏糞肥料、羽毛布団などが隠れた抗原となりやすい。環境における抗原のサンプリングも手間がかかるが研究が進んでいる。


抗線維化薬はCHPの悪化を抑制した、というデータもあるが、すべての症例に効くわけではない。CHPの中でもUIP病変の症例には早期から使う方がいいかもしれない。



診断については、困難なことも少なくないので、吸入誘発試験をしている施設もあるが、危険性も多々ある。沈降抗体も感度は低い。そのため、いくつかの試みがなされている。


@ 抗原回避試験

2週間入院し、KL-6、WBC、肺機能など各種指標が改善するかどうかを確認する。


A KL-6、SP-Dの季節性変動をみる。

夏<冬、なら鳥関連CHP、夏が高ければ夏型に近い病型である。
Seasonal variation of serum KL-6 and SP-D levels in bird-related hypersensitivity pneumonitis. Okamoto T, Sarcoidosis Vasc Diffuse Lung Dis. 2015


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2016年12月20日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・間質性肺炎番外編・第10回びまん性肺疾患フォーラム見聞録2

3) 膠原病肺の治療、管理における病理診断UIPの意義

浜松医科大学の須田先生によるレビューを頂きました。自験例が豊富で、臨床研究はこうでなくては、という感じでした。


概観として、膠原病合併間質性肺炎(CTD-IP)全体としての病理はNSIPが多く、次にUIP、膠原病の疾患別に見ると、強皮症(SSc)にはNSIPが半分以上、皮膚筋炎/多発性筋炎(DM/PM)にもNSIPが半分以上あるが、慢性関節リウマチ(RA)ではUIPが結構多いということ。
Interstitial lung disease in connective tissue disease--mechanisms and management. Wells AU, Nat Rev Rheumatol. 2014


病理組織パターンで、同じ「UIPパターン」でも、特発性(IPF)と膠原病性(CTD-IP)では違いがある。IPFではfibroblastic fociが多いが、CTD-IPではほとんど見られない。また、RA-IPではgerminal centerを伴ったリンパ球の集蔟が多く見られるが、RA以外のCTDではあまり見られない。


画像パターンでは逆?に、生検で病理のUIPが確認されているCTD-IPでは、画像上NSIPパターンが多い。


CTD-IPにおいて、病理組織のUIPパターンは予後に対して影響があるのか?CTD-IPにおいては、病理のNSIPとUIPでは差が無かった。また、CTD-UIPの方がIPFよりも予後がよかった。
Nonspecific interstitial pneumonia in collagen vascular diseases: comparison of the clinical characteristics and prognostic significance with usual interstitial pneumonia. Nakamura Y, Sarcoidosis Vasc Diffuse Lung Dis. 2003


その理由は、IPFの方がfibroblastic fociが多いことと関係があるかもしれない。
Fibroblastic foci in usual interstitial pneumonia: idiopathic versus collagen vascular disease. Flaherty KR, Am J Respir Crit Care Med. 2003


CTDの中でもRAに限っては、UIPの方がNSIPよりも予後が悪い。
Prognosis of fibrotic interstitial pneumonia: idiopathic versus collagen vascular disease-related subtypes. Park JH, Am J Respir Crit Care Med. 2007


RA-UIPは、IPFと予後が変わらない!?という報告もある。
Predictors of diagnosis and survival in idiopathic pulmonary fibrosis and connective tissue disease-related usual interstitial pneumonia. Moua T, Respir Res. 2014


IPFにおける急性増悪は、これまでの報告では年間5~20%とされているが、CTD-IPでは年間1.25%だった、とする須田先生の論文。組織型ではUIPの方がUIP以外よりも急性増悪のリスクは高く、RA-IPで検討すると明らかにUIPの方が予後が悪かった。
Acute exacerbation of interstitial pneumonia associated with collagen vascular diseases. Suda T, Respir Med. 2009


などなど、ということをふまえまして、CTD-IPではステロイド±免疫抑制剤、が標準的治療ではあるものの、特にRA-UIPにおいては、今後治療の選択肢に抗線維化薬が含まれてくるかもしれない、というお話でした。



お話の後の、大阪医大槇野先生との質疑応答が個人的にはとても興味深かったです。数十例の症例をお持ちの第一人者の方々でも、症例感覚には温度差があり、おそらくもっと多くの知見を重ねる必要があるのか、と思わされました。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2016年11月30日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・間質性肺炎・肺線維症39・間質性肺炎の治療23・慢性期のびまん性肺疾患の取り扱い・HRCTでのパターン5

それでは、先のInconsistent UIPパターンのうち、残りの


  • 嚢胞が散在(多発、両側、蜂巣肺から離れた場所に存在)

  • びまん性のモザイクパターン/エア・トラッピング(両側、3葉以上に存在)



は、どんな疾患を想定しているのか。


嚢胞はCOPDなど嚢胞性疾患で、モザイクパターン/エア・トラッピングは閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans:BO)です。閉塞性細気管支炎(BO)は専門でない先生方にとってはあまり馴染みがないかもしれませんが、細気管支レベルで気管支粘膜下やその周囲組織が線維化を起こすことで、気道の狭窄・閉塞を起こす疾患です。


RAに合併したり、ウイルスなどの感染症であったり、移植後のGVHDとして発症する例が知られていますが、それ以外の背景ではあまり見かけません。ですから呼吸器専門医とそういう背景疾患をご覧になる先生方にしか馴染みがないのです。


BOは細気管支の疾患で、画像所見としては細気管支そのものの病変はCTでも描出されず、吸った空気が出にくくなることを反映して過膨張とかエア・トラッピングが見られますが、それ以外の濃度が上昇する系の陰影はあまり見られません。進行してくると細気管支よりもう少し太い気道壁の肥厚や気管支拡張などが見えてきますが、それでもすりガラス影とか蜂巣肺など、「間質性」の陰影には縁がありません。


写真はすぐには用意出来ませんでした…。


そういう意味でも間質性肺炎の範疇に入れるべきかどうかは微妙な疾患ですが、両側びまん性に病変がある、という意味で、というか、他にあまり同類の疾患がないからか、間質性肺炎に入れて論じられることが多い印象です。RAに合併するからといって間質性肺炎に含めるのも、何だかなあ、という気がしますが。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2016年11月29日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・間質性肺炎・肺線維症38・間質性肺炎の治療22・慢性期のびまん性肺疾患の取り扱い・HRCTでのパターン4

OPパターンの典型例は、こんな感じです。


スライド26.JPG


スライド27.JPG


両側下肺、胸膜直下に分布する浸潤影(コンソリデーション)。周囲にすりガラス影を伴いますが、網状影や蜂巣肺は見られません。


スライド28.JPG


スライド29.JPG


OPパターンを見かけたら、こちらも特発性か原因のあるものかを確認し、OP(COP)の治療を行います。




・HPパターン

HPパターンの特徴は、先のInconsistent UIPパターンのうち、


  • 上中肺優位の分布

  • 小粒状影が多数見られる(両側、上葉優位)



を含んでいます。ここでいう小粒状影はその1つ1つがすりガラス程度の淡い粒であることが多いのですが、これをすりガラスと言ってしまうと話がややこしくなるので、粒状影で通しておきます。HPといっても、慢性型ではなく亜急性に進行してくる、炎症成分の多いやつがこういう感じになります。慢性型は網状影と蜂巣肺形成が有り、UIPパターンとしばしば鑑別が困難です。


典型的には、


スライド30.JPG


スライド31.JPG


のような画像になります。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ

2016年11月28日

呼吸器専門でないドクターのための呼吸器診断・間質性肺炎・肺線維症37・間質性肺炎の治療21・慢性期のびまん性肺疾患の取り扱い・HRCTでのパターン3

NSIPパターンの特徴は、先のInconsistent UIPパターンのうち、


  • 気管支血管束周囲優位の分布

  • 広範囲のすりガラス陰影(範囲が網状影の範囲より大きい)



を含んでいますから、典型的にはUIPじゃない、ということは明らかなのですが、しばしばUIPと鑑別困難な例も見受けられます。




・OPパターン

OPパターンの特徴は、先のInconsistent UIPパターンのうち、


  • 気管支血管束周囲優位の分布

  • 広範囲のすりガラス陰影(範囲が網状影の範囲より大きい)

  • 肺区域や葉に及ぶコンソリデーション



を含んでいます。「斑状のコンソリデーションで周囲にはすりガラス影もある」「胸膜直下や気管支血管束周囲に分布する」「分布は両側下肺が主体」「網状影や蜂巣肺なし」「コンソリデーションは自然軽快もある」などが鑑別のキーワードとして挙げられます。


呼吸器専門でないドクターのための呼吸器実践

トップページへ