食物などが気道に誤嚥された際にはほぼ反射的に咳嗽反射が起こることから、咳嗽は元々咳反射によるものが大きいと想定されていました。ですが最近、特に慢性の咳嗽は単なる反射ではなく、気道への何らかの刺激によって「咳をしたい感覚」が生じた結果発生すると考えられるようになってきています。
その考え方の一環として「咳を一種のニューロパチーと考えることによって難治性の咳に対しニューロモジュレーターで治療しようとする」考えがあり、咳嗽・喀痰の診療ガイドラインでも示されているところです。
加えて、咳嗽運動を自発的に発生させる、あるいはある程度抑制することができるため、咳はいわゆる脳幹による「反射」だけでなく、より上位の大脳皮質領域も関わっていると考えられています。
気道など末梢からの刺激がなくても、心因性咳嗽などでは随意的に咳が出る一方で、全身麻酔など無意識な状態ではその咳が消失することも知られているのですね。
2021年12月09日
2021年12月06日
咳のメカニズム2021ー3
咳のお話、続きです。
ヒトにおける咳嗽反射の神経経路はいくつか明らかになっています。有髄神経であるAδ線維の受容体はRARs(速順応性刺激受容器)と呼ばれていて、物理的な刺激に主に反応して咳を出します。一方無髄線維であるC線維はその終末が直接化学的刺激に対して反応します。その2本の経路が末梢で「刺激」を拾い、延髄の咳中枢に至り、その信号で咳を引き起こします。C線維は咳嗽抑制的に作用するともいわれていて、まだまだ分かっていないことも多いようです。
また昨今の知見で、Transient receptor potential vanilloid 1(TRPV1)という受容体が慢性咳嗽状態で発現が増えている、とのことで、これをターゲットとした阻害薬もついに発売されます。
それはそれとして、神経の細かい名称よりも咳の臨床を考える上で重要なことは、咳の原因が何であるかを考えることです。気道内に存在する異物ないし過分泌による痰の存在、咳受容体の感受性が亢進することによる反応性の咳、それに気道炎症そのもの、特に細気管支の炎症(気管支喘息や咳喘息、細気管支炎など)による過剰な咳、線維化などの機械的な刺激、などなど多様な刺激によって咳受容体が刺激され、咳が出るのです。
……とまあ、咳の機序、いいところですが、また明日から出張です。今回デカい仕事?ですので、たぶん2日ほど、更新はできませんのであらかじめ申し上げておきます。
ヒトにおける咳嗽反射の神経経路はいくつか明らかになっています。有髄神経であるAδ線維の受容体はRARs(速順応性刺激受容器)と呼ばれていて、物理的な刺激に主に反応して咳を出します。一方無髄線維であるC線維はその終末が直接化学的刺激に対して反応します。その2本の経路が末梢で「刺激」を拾い、延髄の咳中枢に至り、その信号で咳を引き起こします。C線維は咳嗽抑制的に作用するともいわれていて、まだまだ分かっていないことも多いようです。
また昨今の知見で、Transient receptor potential vanilloid 1(TRPV1)という受容体が慢性咳嗽状態で発現が増えている、とのことで、これをターゲットとした阻害薬もついに発売されます。
それはそれとして、神経の細かい名称よりも咳の臨床を考える上で重要なことは、咳の原因が何であるかを考えることです。気道内に存在する異物ないし過分泌による痰の存在、咳受容体の感受性が亢進することによる反応性の咳、それに気道炎症そのもの、特に細気管支の炎症(気管支喘息や咳喘息、細気管支炎など)による過剰な咳、線維化などの機械的な刺激、などなど多様な刺激によって咳受容体が刺激され、咳が出るのです。
……とまあ、咳の機序、いいところですが、また明日から出張です。今回デカい仕事?ですので、たぶん2日ほど、更新はできませんのであらかじめ申し上げておきます。
posted by 長尾大志 at 19:06
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3学会合同地方会
この土日は3学会合同の地方会。3学会とは何か。
第65回日本呼吸器学会中国・四国地方会、ならびに第30回日本呼吸器内視鏡学会中国四国支部会、ならびに第72回日本結核・非結核性抗酸菌症学会中国四国支部会、のことです。長いです。
島根大学の呼吸器・化学療法内科が主催で、松江で対面開催、このタイミング、でしたので、対面参加してまいりました!

対面参加の醍醐味、書籍販売に〜

会場の謎オブジェなど、いろいろ楽しめましたが、やはり来られている先生方は近隣の先生方が多かったようで、会場は十分に疎、でした!
第65回日本呼吸器学会中国・四国地方会、ならびに第30回日本呼吸器内視鏡学会中国四国支部会、ならびに第72回日本結核・非結核性抗酸菌症学会中国四国支部会、のことです。長いです。
島根大学の呼吸器・化学療法内科が主催で、松江で対面開催、このタイミング、でしたので、対面参加してまいりました!
対面参加の醍醐味、書籍販売に〜
会場の謎オブジェなど、いろいろ楽しめましたが、やはり来られている先生方は近隣の先生方が多かったようで、会場は十分に疎、でした!
posted by 長尾大志 at 08:15
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2021年12月02日
咳のメカニズム2021ー2
ヒトにおける咳嗽反射の神経経路はいくつか明らかになっているのですが、(神経の細かい名称よりも)咳の臨床を考える上で重要なことは、咳の原因が何であるかを考えることです。
気道内に存在する異物ないし過分泌による痰の存在、咳受容体の感受性が亢進することによる反応性の咳、それに気道炎症そのもの、特に細気管支の炎症(気管支喘息や咳喘息、細気管支炎など)による過剰な咳、線維化などの機械的な刺激によって咳受容体が刺激されることなどによって咳が出ます。
元々咳嗽反射は食物などが気道に誤嚥された際にほぼ反射的に起こるものであり、咳嗽は咳反射による部分が大きいと想定されていたのですが、最近の考えでは特に慢性の咳嗽は単なる反射ではなく、気道への何らかの刺激によって咳をしたい感覚が生じた結果発生するとも考えられています。そのため新たな概念として、咳を一種のニューロパチーと考えることによって難治性の咳に対しニューロモジュレーターで治療しようとする考えや、新たな受容体の拮抗薬で難治性の咳に対応しようという流れもあります。
気道内に存在する異物ないし過分泌による痰の存在、咳受容体の感受性が亢進することによる反応性の咳、それに気道炎症そのもの、特に細気管支の炎症(気管支喘息や咳喘息、細気管支炎など)による過剰な咳、線維化などの機械的な刺激によって咳受容体が刺激されることなどによって咳が出ます。
元々咳嗽反射は食物などが気道に誤嚥された際にほぼ反射的に起こるものであり、咳嗽は咳反射による部分が大きいと想定されていたのですが、最近の考えでは特に慢性の咳嗽は単なる反射ではなく、気道への何らかの刺激によって咳をしたい感覚が生じた結果発生するとも考えられています。そのため新たな概念として、咳を一種のニューロパチーと考えることによって難治性の咳に対しニューロモジュレーターで治療しようとする考えや、新たな受容体の拮抗薬で難治性の咳に対応しようという流れもあります。
posted by 長尾大志 at 20:53
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2021年12月01日
気道から肺にかけてのお掃除機構2
鼻で捕集されない、微細な粒子(数μm以下の粒子)は気道内に入り込みます。ごく小さな粒子は入り込んでもどこにも沈着せず、そのまま体外に排出されますが、ある程度の大きさ、特に数μm程度の粒子は肺胞まで入り込みそこに沈着します。
その程度の大きさの粒子はちょうど肺胞を巡回している肺胞マクロファージが貪食しやすい大きさで、パクパク貪食されます。すなわち、肺胞領域のお掃除は肺胞マクロファージが担当しているのです。
もう少し大きな粒子は肺胞より手前の、(末梢の)細気管支のエリアで気管支壁に沈着します。その大きさの粒子は、肺胞マクロファージが貪食しにくい大きさ。そういう粒子は肺胞には沈着しない、うまいことなっているものですね。
気管支壁に沈着した粒子のお掃除は、粘膜面に存在している粘液が行います。粒子を粘液が絡め取り、線毛の動きでもって口方向に移動していくのです。
で、より中枢の気管支になってくると末梢から集められた粘液・異物等が集積し、「痰」になってきます。こうなると、線毛の動きだけでは動かなくなって参りますので、「咳」によって集積した痰を喉頭まで移動させるのです。あとは体外へ排出するもよし(カーッ、ペッ)、ゴックンして胃酸ですべてを溶かすもよし。
その程度の大きさの粒子はちょうど肺胞を巡回している肺胞マクロファージが貪食しやすい大きさで、パクパク貪食されます。すなわち、肺胞領域のお掃除は肺胞マクロファージが担当しているのです。
もう少し大きな粒子は肺胞より手前の、(末梢の)細気管支のエリアで気管支壁に沈着します。その大きさの粒子は、肺胞マクロファージが貪食しにくい大きさ。そういう粒子は肺胞には沈着しない、うまいことなっているものですね。
気管支壁に沈着した粒子のお掃除は、粘膜面に存在している粘液が行います。粒子を粘液が絡め取り、線毛の動きでもって口方向に移動していくのです。
で、より中枢の気管支になってくると末梢から集められた粘液・異物等が集積し、「痰」になってきます。こうなると、線毛の動きだけでは動かなくなって参りますので、「咳」によって集積した痰を喉頭まで移動させるのです。あとは体外へ排出するもよし(カーッ、ペッ)、ゴックンして胃酸ですべてを溶かすもよし。
posted by 長尾大志 at 17:22
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2021年11月30日
気道から肺にかけてのお掃除機構1
肺という臓器は、外気を取り込んでそこから酸素を体内に取り込み、二酸化炭素を排出する、酸素と二酸化炭素の交換を行なっている場所になります。
そのために気道はもちろん肺胞に至るまで、外気に直接触れることになります。この体の外に存在する外気というのは、細菌や真菌、コロナウイルスに至るまで、感染症を引き起こすような外敵でいっぱいなわけです。
例えばエアコンなんかですと、フィルターがあってそれでゴミを引っ掛けたりするわけですが、肺においてはそういった構造物は存在しません。それでは病原体をはじめとるする異物はどのようにしてふるいにかけられているのでしょうか??
大きな粒子(10μm以上)は鼻腔内で、鼻甲介が存在することによって生じる「乱流」によって遠心力で吹き飛ばされ、鼻粘膜や鼻毛(びもう)に付着します。まあそれが固まって鼻○○になるわけですけれども……割と大きな粒子はそこで捕集されるわけです。いわゆるサイクロン式掃除機(ダ〇ソンとか)と同じ理屈になります。
このように鼻で捕集される異物や微粒子は非常に多く、口呼吸をしていると風邪をひきやすい、なんていう都市伝説?があるわけですが、確かに口呼吸をしていると病原体が体内に入りやすいという面はあるようです。
そのために気道はもちろん肺胞に至るまで、外気に直接触れることになります。この体の外に存在する外気というのは、細菌や真菌、コロナウイルスに至るまで、感染症を引き起こすような外敵でいっぱいなわけです。
例えばエアコンなんかですと、フィルターがあってそれでゴミを引っ掛けたりするわけですが、肺においてはそういった構造物は存在しません。それでは病原体をはじめとるする異物はどのようにしてふるいにかけられているのでしょうか??
大きな粒子(10μm以上)は鼻腔内で、鼻甲介が存在することによって生じる「乱流」によって遠心力で吹き飛ばされ、鼻粘膜や鼻毛(びもう)に付着します。まあそれが固まって鼻○○になるわけですけれども……割と大きな粒子はそこで捕集されるわけです。いわゆるサイクロン式掃除機(ダ〇ソンとか)と同じ理屈になります。
このように鼻で捕集される異物や微粒子は非常に多く、口呼吸をしていると風邪をひきやすい、なんていう都市伝説?があるわけですが、確かに口呼吸をしていると病原体が体内に入りやすいという面はあるようです。
posted by 長尾大志 at 18:24
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2021年11月29日
咳のメカニズム2021
このたび、とある雑誌において咳特集の編集幹事をさせていただくことになりました。
これまでそういう役割は自分の柄ではない、ということでことごとくお断りしてきたわけですが、この度は咳に関する特集を、あの亀井先生とやらせていただけるということでお請けしました次第です。
咳といえば……ということで、多くの著名な先生方に原稿をお願いすることとなってしまいました。皆様大変お忙しいことは重々承知しておりますが、同時に先生方の筆が早いということも承知しておる次第でございます。大変ご無理を申しますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
私の担当は胸部画像かな……?と思っていましたら、まさかの咳の機序ということになりました。考えてみれば咳の機序なんか学生時代の生理学でやったんでしょうかね??全く記憶にございません。本当にございません。しかもその時とは、分かっていること、常識がずいぶん変わっているであろうと思われます。そこで、今一度この生理学的な部分に関して勉強をし直してみる次第です。
これまでそういう役割は自分の柄ではない、ということでことごとくお断りしてきたわけですが、この度は咳に関する特集を、あの亀井先生とやらせていただけるということでお請けしました次第です。
咳といえば……ということで、多くの著名な先生方に原稿をお願いすることとなってしまいました。皆様大変お忙しいことは重々承知しておりますが、同時に先生方の筆が早いということも承知しておる次第でございます。大変ご無理を申しますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
私の担当は胸部画像かな……?と思っていましたら、まさかの咳の機序ということになりました。考えてみれば咳の機序なんか学生時代の生理学でやったんでしょうかね??全く記憶にございません。本当にございません。しかもその時とは、分かっていること、常識がずいぶん変わっているであろうと思われます。そこで、今一度この生理学的な部分に関して勉強をし直してみる次第です。
posted by 長尾大志 at 16:11
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2021年11月25日
睡眠時無呼吸症候群の診断・合併症
睡眠時無呼吸症候群の診断は、まず問診などでSASを疑い、自宅で施行できる携帯型装置による検査施設外睡眠検査(out of center sleep testing:OCST)や睡眠ポリグラフ検査(polysomnography:PSG)によって睡眠中の呼吸状態の評価を行います。
PSGにて、1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせた回数である無呼吸低呼吸指数(AHI)が5以上であり、かつ上記の症状を伴う際にSASと診断します。その重症度はAHI5〜15を軽症、15〜30を中等症、30以上を重症としています。
睡眠時無呼吸症候群による睡眠中の低酸素血症や高炭酸ガス血症によって、高血圧、脂質代謝異常、糖尿病、脳血管障害、虚血性心疾患、肺高血圧症などの合併症を引き起こすといわれています。
これらの病態を早期に発見し適切に管理することも重要です。また、CPAPによってこれらが改善することも知られていますので、睡眠時無呼吸症候群を早期に診断し、必要に応じてCPAPにつなげることが重要です。
PSGにて、1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせた回数である無呼吸低呼吸指数(AHI)が5以上であり、かつ上記の症状を伴う際にSASと診断します。その重症度はAHI5〜15を軽症、15〜30を中等症、30以上を重症としています。
睡眠時無呼吸症候群による睡眠中の低酸素血症や高炭酸ガス血症によって、高血圧、脂質代謝異常、糖尿病、脳血管障害、虚血性心疾患、肺高血圧症などの合併症を引き起こすといわれています。
これらの病態を早期に発見し適切に管理することも重要です。また、CPAPによってこれらが改善することも知られていますので、睡眠時無呼吸症候群を早期に診断し、必要に応じてCPAPにつなげることが重要です。
posted by 長尾大志 at 12:36
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2021年11月22日
DNAR(Do Not Attempt Resuscitation)について
DNAR(Do Not Attempt Resuscitation)とは、蘇生(Resuscitation)を試みない(Do Not Attempt)ということを意味し、具体的には心停止しても心肺蘇生(心臓マッサージ、心臓の電気ショック、昇圧剤投与、そして人工呼吸など)を行わないことを指します。
癌診療における終末期の「DNAR」の表す意味合いは、あくまで抗癌治療にもかかわらず癌が不可逆的に悪化し、いかなる治療によっても改善が見込めないという文脈において、元の病態そのものによって心肺停止が生じた場合に、蘇生処置が(蘇生の見込みがない状況において)かえって患者さんご本人の不利益になる、という考えで、そういう処置をしないということであります。
決してDNAR=何も治療的行為はしない、ということではないことに注意が必要です。なんか言葉の普及に伴って、そういう雑な扱いをされているような場面があったりなかったりすると聞くような聞かないような気がしますので、当たり前のことを再確認です。
上級医や指導医と、もちろん患者さんとご家族、それに医療スタッフ全ての話し合いと合意が必要です。
癌診療における終末期の「DNAR」の表す意味合いは、あくまで抗癌治療にもかかわらず癌が不可逆的に悪化し、いかなる治療によっても改善が見込めないという文脈において、元の病態そのものによって心肺停止が生じた場合に、蘇生処置が(蘇生の見込みがない状況において)かえって患者さんご本人の不利益になる、という考えで、そういう処置をしないということであります。
決してDNAR=何も治療的行為はしない、ということではないことに注意が必要です。なんか言葉の普及に伴って、そういう雑な扱いをされているような場面があったりなかったりすると聞くような聞かないような気がしますので、当たり前のことを再確認です。
上級医や指導医と、もちろん患者さんとご家族、それに医療スタッフ全ての話し合いと合意が必要です。
posted by 長尾大志 at 15:35
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2021年11月21日
がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版4 新しい機序の便秘薬
オピオイドの副作用として知られている「便秘」。便秘には酸化マグネシウム(マグミット
3錠分3)、ビコスルファート頓用、センノシド頓用などが以前から使われてきましたが、なかなか頑固な便秘ですと効果が得られないこともあり、困っていたところです。
最近ようやく、立て続けに新しい作用機序の便秘治療薬(ポリエチレングリコール製剤(モビコール
、リナクロチド(リンゼス
)、エロピキシバット(グーフィス
)が発売され、がん疼痛の薬物療法に関するガイドラインに掲載されました。
また、最近発売されたナルデメジン(スインプロイク
)は末梢性μオピオイド受容体拮抗薬であり、オピオイド誘発性便秘症専用の治療薬です。1日1回1錠投与で使いやすく、オピオイドの投与量にかかわらずオピオイド誘発性便秘症を改善したとして期待されています。いずれも主な副作用として、下痢が報告されています。

最近ようやく、立て続けに新しい作用機序の便秘治療薬(ポリエチレングリコール製剤(モビコール



また、最近発売されたナルデメジン(スインプロイク

posted by 長尾大志 at 16:51
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2021年11月20日
がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版3
癌疼痛マネジメントの基本的な7つの原則、続きです。
E鎮痛薬は「経口的」「時間を決めて」「患者ごとに」「細かい配慮をもって」投与する
・経口的に
可能な限り自宅で投与しやすい経口投与で行うのが原則です。
・時間を決めて
薬剤を適正な決まった時間に投与する、これは薬剤を規則正しく投与し、血中濃度をできるだけ安定させるという意味で、決まった時間かつ薬の効果がなくなる前に次の投与を行うということが重要です。
・患者ごとに
薬剤の適切な投与量とは、その患者さんが納得するレベルまで痛みが取れる量であるゆえに、患者さんごとにきめ細かく治療法を選択する必要があります。その上で
・細かい配慮をもって
これも当然ですね。
Fがん疼痛治療は、がん治療の一部として考えられる
さすがに昨今では手術、抗がん剤、放射線など、がんそのものに対する治療をやっている間にはがん疼痛治療は優先しなくてよい、と考える医療関係者は少なくなっていると思いますが、患者さんがどのようなステージであっても痛いものは痛いわけで、痛みはできる限り除去するのが原則になります。
E鎮痛薬は「経口的」「時間を決めて」「患者ごとに」「細かい配慮をもって」投与する
・経口的に
可能な限り自宅で投与しやすい経口投与で行うのが原則です。
・時間を決めて
薬剤を適正な決まった時間に投与する、これは薬剤を規則正しく投与し、血中濃度をできるだけ安定させるという意味で、決まった時間かつ薬の効果がなくなる前に次の投与を行うということが重要です。
・患者ごとに
薬剤の適切な投与量とは、その患者さんが納得するレベルまで痛みが取れる量であるゆえに、患者さんごとにきめ細かく治療法を選択する必要があります。その上で
・細かい配慮をもって
これも当然ですね。
Fがん疼痛治療は、がん治療の一部として考えられる
さすがに昨今では手術、抗がん剤、放射線など、がんそのものに対する治療をやっている間にはがん疼痛治療は優先しなくてよい、と考える医療関係者は少なくなっていると思いますが、患者さんがどのようなステージであっても痛いものは痛いわけで、痛みはできる限り除去するのが原則になります。
posted by 長尾大志 at 17:43
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2021年11月19日
がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版2
この癌疼痛マネジメントの基本的な7つの原則は以下の通りです。
@疼痛治療の目標
これは患者さんにとって許容可能な生活の質を維持できるレベルまで痛みを軽減するということです。痛みを持ったまま生活をすると、やはり生活の質を著しく低下させることになりますので、これが重要な目標となります。
A包括的な評価
マネジメントの最初のステップとして患者さんの評価が非常に重要です。痛みというのは主観的なものであり、痛みの重症度を適切に測定すること、また患者さんの置かれた状況を心理的な問題とも含めてしっかりとした評価することが必要です。
B安全性の保証
特に薬物を使用するにあたって副作用を管理することが重要であることはもちろんですが、特にオピオイドは患者さん本人以外の人へ転用されてしまう危険性、という面もあり、きちんとした管理が必要です。
Cがん疼痛マネジメントは薬物療法が含まれるが、心理社会的および精神的ケアも含まれる
がんそのものによる直接的な痛みももちろんですが、痛みが主観的な表現型を示すという意味で、心理社会的精神的なサポートは痛みのマネジメントに大変重要であるということです。
Dオピオイドを含む鎮痛薬は、いずれの国でも使用できるべきである
これはその通りです。
明日に続きます。
@疼痛治療の目標
これは患者さんにとって許容可能な生活の質を維持できるレベルまで痛みを軽減するということです。痛みを持ったまま生活をすると、やはり生活の質を著しく低下させることになりますので、これが重要な目標となります。
A包括的な評価
マネジメントの最初のステップとして患者さんの評価が非常に重要です。痛みというのは主観的なものであり、痛みの重症度を適切に測定すること、また患者さんの置かれた状況を心理的な問題とも含めてしっかりとした評価することが必要です。
B安全性の保証
特に薬物を使用するにあたって副作用を管理することが重要であることはもちろんですが、特にオピオイドは患者さん本人以外の人へ転用されてしまう危険性、という面もあり、きちんとした管理が必要です。
Cがん疼痛マネジメントは薬物療法が含まれるが、心理社会的および精神的ケアも含まれる
がんそのものによる直接的な痛みももちろんですが、痛みが主観的な表現型を示すという意味で、心理社会的精神的なサポートは痛みのマネジメントに大変重要であるということです。
Dオピオイドを含む鎮痛薬は、いずれの国でも使用できるべきである
これはその通りです。
明日に続きます。
posted by 長尾大志 at 15:34
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2021年11月18日
がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版1
がん疼痛に関するマネジメントのガイドラインとしては、有名なWHOのガイドライン (WHO 方式がん疼痛治療法)があり、その三段階除痛ラダーはご存知の方も多いかもしれません。
そのWHOがん疼痛治療法が2018年に改定され、新しいガイドラインに変更となっています。それを受けて日本ガイドラインも2020年に『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版』として新しくなっていて、三段階除痛ラダーもなくなって?いますので、少しそれについて触れておきたいと思います。
そもそも三段階ラダーは1996年の報告で取り上げられ、シンプルかつわかりやすいものであったこともあって普及していたわけですが、1996年以降の医療技術等の発展によって、治療方法・薬剤など新たな物が出てきました。
またWHOはいわゆる途上国といいますか低・中所得国をカバーするわけで、例えばオピオイドなど、病院での入手が難しい薬剤があったりする国の現実も踏まえて、全世界的に使えることが必要であるというところでの改定になったという理解でよろしいかと思います。
そのWHOがん疼痛治療法が2018年に改定され、新しいガイドラインに変更となっています。それを受けて日本ガイドラインも2020年に『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版』として新しくなっていて、三段階除痛ラダーもなくなって?いますので、少しそれについて触れておきたいと思います。
そもそも三段階ラダーは1996年の報告で取り上げられ、シンプルかつわかりやすいものであったこともあって普及していたわけですが、1996年以降の医療技術等の発展によって、治療方法・薬剤など新たな物が出てきました。
またWHOはいわゆる途上国といいますか低・中所得国をカバーするわけで、例えばオピオイドなど、病院での入手が難しい薬剤があったりする国の現実も踏まえて、全世界的に使えることが必要であるというところでの改定になったという理解でよろしいかと思います。
posted by 長尾大志 at 19:24
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2021年11月17日
肺癌の治療ガイドラインについて、少しだけ
呼吸器内科で診療する肺癌は、外科手術適応でない症例、すなわち一般的には多くの小細胞肺癌および非小細胞肺癌のステージVB期以上、ということになります。もちろん個々の症例の状況によって手術適応は厳密に検討されるべきです。
小細胞肺癌は外科手術適応になるのはステージT、UAの一部のみで実際にはほとんどみられません。外科手術適応外のもののうち、放射線治療の適応となる限局型(病変が同側胸郭内に加え,対側縦隔,対側鎖骨上窩リンパ節までに限られており悪性胸水,心嚢水を有さないもの)は化学放射線療法の適用になり、それ以上病変が進展している進展型は化学療法のみの治療になります。詳しくは日本肺癌学会の肺癌診療ガイドライン、最新版が公開されていますのでそちらを参照してください。
非小細胞肺癌においてもVB、VC期の治療とW期の治療は少し異なるところもあります。特にW期の治療において、昨今では抗癌剤の新製品が次々と発売され、新たなエビデンスがどんどん発表され、ガイドラインがどんどん書き換えられている現状です。ですから肺癌領域の診療に関しては日本肺癌学会の肺癌診療ガイドラインを必ず参照し、その上で上級医、指導医の先生と診療方針についてよくディスカッションしましょう。ただ大前提としては、ドライバー遺伝子の変異や転座があれば、それに対するキナーゼ阻害薬が他の治療に対して圧倒的に優れた成績であり、その治療を最優先する、という点を知っておきましょう。
小細胞肺癌は外科手術適応になるのはステージT、UAの一部のみで実際にはほとんどみられません。外科手術適応外のもののうち、放射線治療の適応となる限局型(病変が同側胸郭内に加え,対側縦隔,対側鎖骨上窩リンパ節までに限られており悪性胸水,心嚢水を有さないもの)は化学放射線療法の適用になり、それ以上病変が進展している進展型は化学療法のみの治療になります。詳しくは日本肺癌学会の肺癌診療ガイドライン、最新版が公開されていますのでそちらを参照してください。
非小細胞肺癌においてもVB、VC期の治療とW期の治療は少し異なるところもあります。特にW期の治療において、昨今では抗癌剤の新製品が次々と発売され、新たなエビデンスがどんどん発表され、ガイドラインがどんどん書き換えられている現状です。ですから肺癌領域の診療に関しては日本肺癌学会の肺癌診療ガイドラインを必ず参照し、その上で上級医、指導医の先生と診療方針についてよくディスカッションしましょう。ただ大前提としては、ドライバー遺伝子の変異や転座があれば、それに対するキナーゼ阻害薬が他の治療に対して圧倒的に優れた成績であり、その治療を最優先する、という点を知っておきましょう。
posted by 長尾大志 at 14:30
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2021年11月16日
肺炎・敗血症まとめ7 非定型肺炎を鑑別する6項目
昨日述べた非定型肺炎(≒マイコプラズマ)に特徴的な要素を6項目にしたのがこちら。
若年者(<60歳)
基礎疾患なし、あっても軽微
痰が少ない
ラ音が聴かれない
空咳が多い
採血で白血球が増えない(<1万)
このうち4項目以上を満たすと非定型肺炎を疑います。
マイコプラズマは一般的な細菌よりもずいぶん小さな微生物で、自分で細胞壁を合成して増殖することはできません。そのためヒトの細胞内に感染(寄生)して、細胞の仕組みを利用して増殖しており、細胞内寄生菌と呼ばれます。細胞壁を持たないので通常よく使われるβラクタム(細胞壁の合成阻害薬)は原理的にも実際にも全く効果がありません。マイコプラズマに「効く」のは、マクロライド系やキノロン系といった DNA 合成阻害薬になります。
若年者(<60歳)
基礎疾患なし、あっても軽微
痰が少ない
ラ音が聴かれない
空咳が多い
採血で白血球が増えない(<1万)
このうち4項目以上を満たすと非定型肺炎を疑います。
マイコプラズマは一般的な細菌よりもずいぶん小さな微生物で、自分で細胞壁を合成して増殖することはできません。そのためヒトの細胞内に感染(寄生)して、細胞の仕組みを利用して増殖しており、細胞内寄生菌と呼ばれます。細胞壁を持たないので通常よく使われるβラクタム(細胞壁の合成阻害薬)は原理的にも実際にも全く効果がありません。マイコプラズマに「効く」のは、マクロライド系やキノロン系といった DNA 合成阻害薬になります。
posted by 長尾大志 at 17:02
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2021年11月15日
肺炎・敗血症まとめ6 非定型肺炎を鑑別する
A-DROP(CURB-65)などで治療の場を決定したら、次は抗菌薬の選定です。「いや、ウチはスルバシリン一択!」「セフトリ一択で!」「キノロンでええやん」などと言わず、少しは考えましょう。
少なくとも「非定型肺炎もあるかもしれないしキノロンで」ではなくて、非定型肺炎(マイコプラズマ)くらいはしっかり鑑別したいものです。元々ガイドラインができた2005年当時は、非定型肺炎といえばマイコプラズマ、クラミジア、オウム病、レジオネラ、Q熱などを含んで考えられていました。
しかしながら、レジオネラは急速に悪化し、早期にきちんと診断しないとβラクタム系が効きませんから生命予後が悪くなる、また臨床的な特徴が「非定型」と一絡げにするには微妙に異なる、ということで特別扱い。
クラミジアはじめ、マイコプラズマ以外の病原体肺炎は当初考えられていたほど多くはない、と最近いわれていますので、実質的に非定型肺炎といえばほぼマイコプラズマ肺炎と考えて良いでしょう。
マイコプラズマは気管支粘膜上皮細胞の線毛にくっついて感染します。喫煙していたりCOPDがあったりして線毛が傷んでいるよりも、線毛が元気な方が感染しやすいといいます。また、感染が成立するには、それなりに長い時間同じ空間(≒教室)にいる必要がある、ということから、保育園、幼稚園、学校に行っている、若くて元気なヒトが罹りやすい……ということになります。
気管支上皮の炎症から気道過敏性が亢進しめっちゃ咳が出ますが、痰は産生されず、気道に痰がないのでラ音も聴かれません。
少なくとも「非定型肺炎もあるかもしれないしキノロンで」ではなくて、非定型肺炎(マイコプラズマ)くらいはしっかり鑑別したいものです。元々ガイドラインができた2005年当時は、非定型肺炎といえばマイコプラズマ、クラミジア、オウム病、レジオネラ、Q熱などを含んで考えられていました。
しかしながら、レジオネラは急速に悪化し、早期にきちんと診断しないとβラクタム系が効きませんから生命予後が悪くなる、また臨床的な特徴が「非定型」と一絡げにするには微妙に異なる、ということで特別扱い。
クラミジアはじめ、マイコプラズマ以外の病原体肺炎は当初考えられていたほど多くはない、と最近いわれていますので、実質的に非定型肺炎といえばほぼマイコプラズマ肺炎と考えて良いでしょう。
マイコプラズマは気管支粘膜上皮細胞の線毛にくっついて感染します。喫煙していたりCOPDがあったりして線毛が傷んでいるよりも、線毛が元気な方が感染しやすいといいます。また、感染が成立するには、それなりに長い時間同じ空間(≒教室)にいる必要がある、ということから、保育園、幼稚園、学校に行っている、若くて元気なヒトが罹りやすい……ということになります。
気管支上皮の炎症から気道過敏性が亢進しめっちゃ咳が出ますが、痰は産生されず、気道に痰がないのでラ音も聴かれません。
posted by 長尾大志 at 15:20
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2021年11月13日
島根リハビリテーション学院からの、お隣の町立奥出雲病院
昨日は島根リハビリテーション学院で2回目の講義。講義の感想、頂いておりますので明日ご紹介します。
講義の後、お隣の町立奥出雲病院にお邪魔してまいりました。総合診療科の遠藤先生にお招きいただき、病院内をご案内いただいたのですが、築20年という病院の建物、パッと見は築2年くらいで、大変手入れ、お掃除が行き届いていると感じました。また、森の中の高台に立地し、窓からの眺望がすばらしいのも印象的でした。


今力を入れておられる在宅医療部門を中心に、病院の取り組みをご紹介いただきました。町の規模と病院の規模、町との関係性、スタッフの皆様のお人柄や頑張りなど、多方面にわたり「いい塩梅」で調和しているというか、働く喜びを感じられるようなステキな病院でした。

遠藤先生、藤原先生、ご案内ありがとうございました!
講義の後、お隣の町立奥出雲病院にお邪魔してまいりました。総合診療科の遠藤先生にお招きいただき、病院内をご案内いただいたのですが、築20年という病院の建物、パッと見は築2年くらいで、大変手入れ、お掃除が行き届いていると感じました。また、森の中の高台に立地し、窓からの眺望がすばらしいのも印象的でした。


今力を入れておられる在宅医療部門を中心に、病院の取り組みをご紹介いただきました。町の規模と病院の規模、町との関係性、スタッフの皆様のお人柄や頑張りなど、多方面にわたり「いい塩梅」で調和しているというか、働く喜びを感じられるようなステキな病院でした。

遠藤先生、藤原先生、ご案内ありがとうございました!
posted by 長尾大志 at 13:55
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2021年11月12日
肺炎・敗血症まとめ5 BTSのCURB-65
続いて英国BTS…といっても某国のアイドルグループではありません。British Thoracic SocietyのガイドラインであるCURB-65をご紹介します。まあ、A-DROPとほとんど同じなのですが、(重症になりそうな)年齢のカットオフが若めなのと、SpO2の替わりに呼吸数が項目に入っている点が異なります。
A-DROPができた当時、日本のエライ方々は呼吸数も見ていないのか…とある筋からdisられていたのが懐かしいですね……。
C:Consciousness 意識レベル低下
U:Uremia BUN>20mg/dL
R:Respiratory rate 呼吸回数30回以上
B:Low Blood Pressure 収縮期圧≦90mmHg または拡張期圧≦60 mmHg
65:65歳以上
0-1点:軽症→外来治療
2点:中等症→一般病棟入院治療
3点以上:重症→ICU管理
A-DROPができた当時、日本のエライ方々は呼吸数も見ていないのか…とある筋からdisられていたのが懐かしいですね……。
C:Consciousness 意識レベル低下
U:Uremia BUN>20mg/dL
R:Respiratory rate 呼吸回数30回以上
B:Low Blood Pressure 収縮期圧≦90mmHg または拡張期圧≦60 mmHg
65:65歳以上
0-1点:軽症→外来治療
2点:中等症→一般病棟入院治療
3点以上:重症→ICU管理
posted by 長尾大志 at 17:35
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肺炎・敗血症まとめ4 A-DROP
昨日はブログのサーバーが反応せず更新できませんでした。失礼いたしました。
さて日本呼吸器学会の市中肺炎ガイドラインで設定されているA-DROP、これはぜひとも知っておきましょう。
A:Age(年齢) 男性≧70歳、女性≧75歳
D:Dehydration(脱水) BUN≧21または脱水
英語が難しければ「脱水のD」でよいでしょう。
R:Respiration(呼吸)SpO2≦90%
レスピのRで覚えましょう。
O:Orientation(意識障害)
「起きてる?のO」で覚えましょう。
P:Pressure(血圧) 収縮期圧≦90mmHg
上記5項目を1つ満たすごとに1点カウントし、点数によって重症度、および入院・外来いずれで治療するかを決めます。
0点:軽症→外来治療
1-2点:中等症→外来、または入院治療
3点以上:重症→入院治療
4点以上→ICU 管理
さて日本呼吸器学会の市中肺炎ガイドラインで設定されているA-DROP、これはぜひとも知っておきましょう。
A:Age(年齢) 男性≧70歳、女性≧75歳
D:Dehydration(脱水) BUN≧21または脱水
英語が難しければ「脱水のD」でよいでしょう。
R:Respiration(呼吸)SpO2≦90%
レスピのRで覚えましょう。
O:Orientation(意識障害)
「起きてる?のO」で覚えましょう。
P:Pressure(血圧) 収縮期圧≦90mmHg
上記5項目を1つ満たすごとに1点カウントし、点数によって重症度、および入院・外来いずれで治療するかを決めます。
0点:軽症→外来治療
1-2点:中等症→外来、または入院治療
3点以上:重症→入院治療
4点以上→ICU 管理
posted by 長尾大志 at 16:38
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2021年11月10日
肺炎・敗血症まとめ3 SSCG2021(Surviving sepsis campaign:international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021)
qSOFAとSOFA、ようやく浸透してきましたが…ところが!
国際的な敗血症ガイドラインSSCG2021(Surviving sepsis campaign:international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021)の推奨2として、「敗血症や敗血症性ショックのスクリーニングツールとして、SIRS、NEWS、MEWSと比較して、qSOFAを単独で使用しない(強い推奨、中程度の質のエビデンス)」という提言がなされ、敗血症界隈?集中治療界隈?がざわざわっと?したとかしてないとか。イキナリ梯子外すのか…って感じで。
これはあくまで「単一のスクリーニングツールとして」ということですなわちqSOFAは感度が低いため、これが2点に満たないからといって敗血症の疑いを解除しては駄目ですよ、という意味に捉えておくといいと思います。
国際的な敗血症ガイドラインSSCG2021(Surviving sepsis campaign:international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021)の推奨2として、「敗血症や敗血症性ショックのスクリーニングツールとして、SIRS、NEWS、MEWSと比較して、qSOFAを単独で使用しない(強い推奨、中程度の質のエビデンス)」という提言がなされ、敗血症界隈?集中治療界隈?がざわざわっと?したとかしてないとか。イキナリ梯子外すのか…って感じで。
これはあくまで「単一のスクリーニングツールとして」ということですなわちqSOFAは感度が低いため、これが2点に満たないからといって敗血症の疑いを解除しては駄目ですよ、という意味に捉えておくといいと思います。
posted by 長尾大志 at 19:01
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2021年11月09日
肺炎・敗血症まとめ2 SOFA
集中治療室あるいはそれに準じる環境でSOFAスコアを用います。既に感染症と診断されている場合や感染症が疑われる状態ではSOFAスコアの推移を評価し、SOFAスコアの2点以上の急上昇により敗血症と診断します。
SOFAスコアの項目
【スコア0,1,2,3,4】
呼吸(P/F比)
【≧400,<400,<300,<200(+呼吸補助),<100(+呼吸補助)>】
凝固(血小板数,×1,000/μL)
【≧150,<150,<100,<50,<20】
肝機能(ビリルビン,mg/mL)
【<1.2,1.2〜1.9,2.0〜5.9,6.0〜11.9,>12.0】
循環(平均動脈圧,mmHg)
【≧70,<70,ドーパミン<5またはドブタミン,ドーパミン5.1〜15またはアドレナリン≦0.1またはノルアドレナリン≦0.1,ドーパミン>15またはアドレナリン>0.1またはノルアドレナリン>0.1】
中枢神経(GCS)
【15,13〜14,10〜12,6〜9,<6】
腎(クレアチニン,mg/dL・尿量mL/日)
【<1.2,1.2〜1.9,2.0〜3.4,3.5〜4.9・<500,>5.0・<200】
SOFAスコアの項目
【スコア0,1,2,3,4】
呼吸(P/F比)
【≧400,<400,<300,<200(+呼吸補助),<100(+呼吸補助)>】
凝固(血小板数,×1,000/μL)
【≧150,<150,<100,<50,<20】
肝機能(ビリルビン,mg/mL)
【<1.2,1.2〜1.9,2.0〜5.9,6.0〜11.9,>12.0】
循環(平均動脈圧,mmHg)
【≧70,<70,ドーパミン<5またはドブタミン,ドーパミン5.1〜15またはアドレナリン≦0.1またはノルアドレナリン≦0.1,ドーパミン>15またはアドレナリン>0.1またはノルアドレナリン>0.1】
中枢神経(GCS)
【15,13〜14,10〜12,6〜9,<6】
腎(クレアチニン,mg/dL・尿量mL/日)
【<1.2,1.2〜1.9,2.0〜3.4,3.5〜4.9・<500,>5.0・<200】
posted by 長尾大志 at 15:40
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2021年11月08日
肺炎・敗血症まとめ1 qSOFA
肺炎ガイドラインの市中肺炎で重症度の評価などに使うqSOFA(Quick Sequential [Sepsis-related] Organ Failure Assessment)スコア、並びにSOFAスコアについて再確認をしておきます。qSOFAスコアはこれまで何度か取り上げていますが、SOFAスコアに関してはこちらで取り上げるのは初めてだと思います。
qSOFAスコア
呼吸数≧22/分
意識レベルの変容
収縮期血圧≦100mmHg
qSOFA は救急外来や一般病棟など、集中治療室の外で敗血症を疑うためのスクリーニングに用いる指標です。qSOFA2点(2項目)以上であれば、敗血症の疑い、となり、臓器障害の評価を行ってSOFA(Sequential Organ Failure Assessment)スコアをつけます。
qSOFAスコア
呼吸数≧22/分
意識レベルの変容
収縮期血圧≦100mmHg
qSOFA は救急外来や一般病棟など、集中治療室の外で敗血症を疑うためのスクリーニングに用いる指標です。qSOFA2点(2項目)以上であれば、敗血症の疑い、となり、臓器障害の評価を行ってSOFA(Sequential Organ Failure Assessment)スコアをつけます。
posted by 長尾大志 at 15:54
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2021年11月07日
抗癌剤まとめ5 免疫チェックポイント阻害薬
抗PD-1抗体
ニボルマブ オプジーボ
ぺムブロリズマブ キイトルーダ
抗PD-L1抗体
アテゾリズマブ テセントリク
デュルバルマブ イミフィンジ
抗CTLA-4抗体
イピリムマブ ヤーボイ
今最も熱い、というかどんどん新たな薬が発売されるとともに、これまでに出ていた薬も新たな併用などの使用法が認められて、どんどんガイドラインが書き換えられている領域になります。ここも結構マニアック、もとい専門的な状況になりつつあるといえるでしょう。
ニボルマブ オプジーボ

ぺムブロリズマブ キイトルーダ

抗PD-L1抗体
アテゾリズマブ テセントリク

デュルバルマブ イミフィンジ

抗CTLA-4抗体
イピリムマブ ヤーボイ

今最も熱い、というかどんどん新たな薬が発売されるとともに、これまでに出ていた薬も新たな併用などの使用法が認められて、どんどんガイドラインが書き換えられている領域になります。ここも結構マニアック、もとい専門的な状況になりつつあるといえるでしょう。
posted by 長尾大志 at 19:54
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2021年11月04日
抗癌剤まとめ4 その他の阻害薬
ROS1/ALK阻害薬
クリゾチニブ ザーコリ
ROS1/TRK阻害薬
エヌトレクチニブ ロズリートレク
ROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌ではこの2剤が選択肢になります。各々、他の遺伝子変異を保つ肺癌でも使われます。
BRAF阻害薬
ダブラフェニブ タフィンラー
MEK阻害薬
トラメチニブ メキニスト
BRAF遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌ではこの2剤併用で用いられます。
MET阻害薬
テポチニブ テプミトコ
カプマチニブ タブレクタ
MET遺伝子変異(エクソン14スキッピング変異)陽性の非小細胞肺癌に対して推奨されますが、こちらの変異を検出すること自体のハードルが高く、専門医レベルの扱う薬剤といえるでしょう。
クリゾチニブ ザーコリ

ROS1/TRK阻害薬
エヌトレクチニブ ロズリートレク

ROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌ではこの2剤が選択肢になります。各々、他の遺伝子変異を保つ肺癌でも使われます。
BRAF阻害薬
ダブラフェニブ タフィンラー

MEK阻害薬
トラメチニブ メキニスト

BRAF遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌ではこの2剤併用で用いられます。
MET阻害薬
テポチニブ テプミトコ

カプマチニブ タブレクタ

MET遺伝子変異(エクソン14スキッピング変異)陽性の非小細胞肺癌に対して推奨されますが、こちらの変異を検出すること自体のハードルが高く、専門医レベルの扱う薬剤といえるでしょう。
posted by 長尾大志 at 18:17
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2021年11月03日
抗癌剤まとめ3 抗EGFR抗体、ALK阻害薬
抗EGFR抗体
ネシツムマブ ポートラーザ
非小細胞肺癌のうち扁平上皮癌のPS 0-1症例に対して,シスプラチン+ゲムシタビンにネシツムマブを併用することがガイドラインで「提案」されています。この薬剤はEGFRに対するモノクローナル抗体ですが、特にEGFR変異の発現などは関係なく…というか、単独の遺伝子変異があまり期待できない扁平上皮癌における効果が認められたものです。
ALK阻害薬
クリゾチニブ ザーコリ
アレクチニブ アレセンサ
セリチニブ ジカディア
ロルラチニブ ローブレナ
ブリグチニブ アルンブリグ
現時点では、ALK融合遺伝子陽性例の一次治療としては他のTKIよりもアレクチニブが推奨されています。クリゾチニブは初めて発売されたALK阻害薬ですが、他剤よりも効果が高いと言いがたく、現在は下のROS1阻害薬としての使い方にシフトしてきている印象です。
ネシツムマブ ポートラーザ

非小細胞肺癌のうち扁平上皮癌のPS 0-1症例に対して,シスプラチン+ゲムシタビンにネシツムマブを併用することがガイドラインで「提案」されています。この薬剤はEGFRに対するモノクローナル抗体ですが、特にEGFR変異の発現などは関係なく…というか、単独の遺伝子変異があまり期待できない扁平上皮癌における効果が認められたものです。
ALK阻害薬
クリゾチニブ ザーコリ

アレクチニブ アレセンサ

セリチニブ ジカディア

ロルラチニブ ローブレナ

ブリグチニブ アルンブリグ

現時点では、ALK融合遺伝子陽性例の一次治療としては他のTKIよりもアレクチニブが推奨されています。クリゾチニブは初めて発売されたALK阻害薬ですが、他剤よりも効果が高いと言いがたく、現在は下のROS1阻害薬としての使い方にシフトしてきている印象です。
posted by 長尾大志 at 14:58
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2021年11月02日
抗癌剤まとめ2 血管新生阻害薬、EGFR阻害薬
血管新生阻害薬
ベバシズマブ アバスチン
ラムシルマブ サイラムザ
EGFR阻害薬
ゲフィチニブ イレッサ
エルロチニブ タルセバ
アファチニブ ジオトリフ
オシメルチニブ タグリッソ
ダコミチニブ ビジンプロ
オシメルチニブは、活性型EGFR遺伝子変異と、薬剤耐性変異であるEGFR T790M変異の両方を阻害する第三世代EGFR-TKIです。発売後しばらくは、第一・二世代のEGFR-TKIによる治療の後にT790M変異陽性となった患者を対象とした二次治療としてのみの使用しかできないという縛りがありましたが、最近他のEGFR-TKIを一次治療で使用するよりもオシメルチニブを一次治療で使用するほうが予後が延長したという結果が出ました。
Soria JC, Ohe Y, Vansteenkiste J, et al. Osimertinib in untreated EGFR-mutated advanced non-small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2018; 378(2): 113-25.
Ramalingam SS, Vansteenkiste J, Planchard D, et al. Overall survival with osimertinib in untreated, EGFR-mutated advanced NSCLC. N Engl J Med. 2020; 382(1): 41-50. Epub 2019 Nov 21.
この結果をもって、最新のガイドラインでは一次治療からオシメルチニブを使うことが推奨されるようになりました。
(いずれの記載も2021年10月現在)
ベバシズマブ アバスチン

ラムシルマブ サイラムザ

EGFR阻害薬
ゲフィチニブ イレッサ

エルロチニブ タルセバ

アファチニブ ジオトリフ

オシメルチニブ タグリッソ

ダコミチニブ ビジンプロ

オシメルチニブは、活性型EGFR遺伝子変異と、薬剤耐性変異であるEGFR T790M変異の両方を阻害する第三世代EGFR-TKIです。発売後しばらくは、第一・二世代のEGFR-TKIによる治療の後にT790M変異陽性となった患者を対象とした二次治療としてのみの使用しかできないという縛りがありましたが、最近他のEGFR-TKIを一次治療で使用するよりもオシメルチニブを一次治療で使用するほうが予後が延長したという結果が出ました。
Soria JC, Ohe Y, Vansteenkiste J, et al. Osimertinib in untreated EGFR-mutated advanced non-small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2018; 378(2): 113-25.
Ramalingam SS, Vansteenkiste J, Planchard D, et al. Overall survival with osimertinib in untreated, EGFR-mutated advanced NSCLC. N Engl J Med. 2020; 382(1): 41-50. Epub 2019 Nov 21.
この結果をもって、最新のガイドラインでは一次治療からオシメルチニブを使うことが推奨されるようになりました。
(いずれの記載も2021年10月現在)
posted by 長尾大志 at 17:55
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2021年11月01日
抗癌剤まとめ1
肺癌業界、肺癌に限らず分子標的薬、そして免疫チェックポイント阻害薬は、毎年というより毎月のように新製品が発売され、今後もどんどん発売予定と聞いています。その都度少しずつガイドラインが書き換えられることから、ガイドライン自体もはや書籍という形では改訂に追いつかず、ウェブの形でどんどん書き換えられているというのが現状かと思います。肺癌に関する最新の知識としては、日本肺癌学会の肺癌診療ガイドラインをご覧いただきたいと思います。
https://www.haigan.gr.jp/
薬剤そのものもそうですし、その使われ方も、新たな併用であったり術後の使い方であったりの新しいエビデンスがどんどん出てきて、使い方が変わってきている、そんな現状でありますので、もはや最新情報を書籍の形で追いかけることはなかなか現実的ではないかなというところがございます。ですから細かい点、最新のところは研修・実習でローテートした時に上の先生に尋ねてみるということでいいかなと思っています。一応これからは2021年10月現在発売されている抗癌剤をざっと挙げておきます。
https://www.haigan.gr.jp/
薬剤そのものもそうですし、その使われ方も、新たな併用であったり術後の使い方であったりの新しいエビデンスがどんどん出てきて、使い方が変わってきている、そんな現状でありますので、もはや最新情報を書籍の形で追いかけることはなかなか現実的ではないかなというところがございます。ですから細かい点、最新のところは研修・実習でローテートした時に上の先生に尋ねてみるということでいいかなと思っています。一応これからは2021年10月現在発売されている抗癌剤をざっと挙げておきます。
posted by 長尾大志 at 07:51
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2021年10月28日
抗菌薬・彼我の差を考える6 アミノグリコシド系
アミノグリコシド系ほど彼我の差があるものはないと思います。ちょっと添付文書をご覧くださいませ。
アミカシン
通常、成人1回アミカシン硫酸塩として100〜200mg(力価)を、1日2回点滴静脈内投与する。なお、年齢、体重及び症状により適宜増減する。
ゲンタマイシン
通常,成人ではゲンタマイシン硫酸塩として1日3mg(力価)/kgを3回に分割して筋肉内注射または点滴静注する。増量する場合は,1日5mg(力価)/kgを限度とし、3〜4回に分割して投与する。
プラチナマニュアルではアミカシンは12mg/kgを24時間ごと、となっていて体重60kgで720mgを1日1回。ゲンタマイシンは4mg/kgを24時間ごと、体重60kgで計算すると240mg1日1回となり、添付文書との乖離がはなはだしい。このあたりもアミノグリコシド系が使いにくいといわれるゆえんでしょう。
アミカシン
通常、成人1回アミカシン硫酸塩として100〜200mg(力価)を、1日2回点滴静脈内投与する。なお、年齢、体重及び症状により適宜増減する。
ゲンタマイシン
通常,成人ではゲンタマイシン硫酸塩として1日3mg(力価)/kgを3回に分割して筋肉内注射または点滴静注する。増量する場合は,1日5mg(力価)/kgを限度とし、3〜4回に分割して投与する。
プラチナマニュアルではアミカシンは12mg/kgを24時間ごと、となっていて体重60kgで720mgを1日1回。ゲンタマイシンは4mg/kgを24時間ごと、体重60kgで計算すると240mg1日1回となり、添付文書との乖離がはなはだしい。このあたりもアミノグリコシド系が使いにくいといわれるゆえんでしょう。
posted by 長尾大志 at 17:20
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2021年10月27日
抗菌薬・彼我の差を考える5 カルバペネム系
イミペネム・シラスタチン
添付文書
通常成人にはイミペネムとして、1日0.5〜1.0g(力価)を2〜3回に分割し、30分以上かけて点滴静脈内注射する。なお、年齢・症状に応じて適宜増減するが、重症・難治性感染症には、成人で1日2g(力価)まで増量することができる。
メロペネム
添付文書
化膿性髄膜炎以外の一般感染症
通常、成人にはメロペネムとして、1日0.5〜1g(力価)を2〜3回に分割し、30分以上かけて点滴静注する。なお、年齢・症状に応じて適宜増減するが、重症・難治性感染症
には、1回1g(力価)を上限として、1日3g(力価)まで増量することができる。
ドリペネム
添付文書
通常、成人にはドリペネムとして1回0.25g(力価)を1日2回又は3回、30分以上かけて点滴静注する。なお、年齢・症状に応じて適宜増減するが、重症・難治性感染症には、1回0.5g(力価)を1日3回投与し、増量が必要と判断される場合に限り1回量として1.0g(力価)、1日量として3.0g(力価)まで投与できる。
ビアペネム
添付文書
通常、成人にはビアペネムとして1日0.6g(力価)を2回に分割し、30〜60分かけて点滴静脈内注射する。なお、年齢、症状に応じて適宜増減する。ただし、投与量の上限は1日1.2g(力価)までとする。
パニペネム・ベタミプロン
添付文書
成人には通常、パニペネムとして1日1g(力価)を2回に分割し、30分以上かけて点滴静注する。なお、年齢・症状に応じて適宜増減するが、重症または難治性感染症には、1日2g(力価)まで増量し2回に分割し投与することができる。ただし、成人に1回1g(力価)投与する場合は60分以上かけて投与すること。
プラチナマニュアルではメロペネムはじめカルバペネム系の使用は基本的に推奨されていませんが、メロペネムとしては1gを8時間ごと、つまり1日3回の投与が例として挙げられています。従ってこれまでに書いてきた通り、添付文書上3回まで認められているものであれば1日3回投与するのが理想的な投与方法、ということかと思います。
添付文書
通常成人にはイミペネムとして、1日0.5〜1.0g(力価)を2〜3回に分割し、30分以上かけて点滴静脈内注射する。なお、年齢・症状に応じて適宜増減するが、重症・難治性感染症には、成人で1日2g(力価)まで増量することができる。
メロペネム
添付文書
化膿性髄膜炎以外の一般感染症
通常、成人にはメロペネムとして、1日0.5〜1g(力価)を2〜3回に分割し、30分以上かけて点滴静注する。なお、年齢・症状に応じて適宜増減するが、重症・難治性感染症
には、1回1g(力価)を上限として、1日3g(力価)まで増量することができる。
ドリペネム
添付文書
通常、成人にはドリペネムとして1回0.25g(力価)を1日2回又は3回、30分以上かけて点滴静注する。なお、年齢・症状に応じて適宜増減するが、重症・難治性感染症には、1回0.5g(力価)を1日3回投与し、増量が必要と判断される場合に限り1回量として1.0g(力価)、1日量として3.0g(力価)まで投与できる。
ビアペネム
添付文書
通常、成人にはビアペネムとして1日0.6g(力価)を2回に分割し、30〜60分かけて点滴静脈内注射する。なお、年齢、症状に応じて適宜増減する。ただし、投与量の上限は1日1.2g(力価)までとする。
パニペネム・ベタミプロン
添付文書
成人には通常、パニペネムとして1日1g(力価)を2回に分割し、30分以上かけて点滴静注する。なお、年齢・症状に応じて適宜増減するが、重症または難治性感染症には、1日2g(力価)まで増量し2回に分割し投与することができる。ただし、成人に1回1g(力価)投与する場合は60分以上かけて投与すること。
プラチナマニュアルではメロペネムはじめカルバペネム系の使用は基本的に推奨されていませんが、メロペネムとしては1gを8時間ごと、つまり1日3回の投与が例として挙げられています。従ってこれまでに書いてきた通り、添付文書上3回まで認められているものであれば1日3回投与するのが理想的な投与方法、ということかと思います。
posted by 長尾大志 at 08:17
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2021年10月26日
抗菌薬・彼我の差を考える4 セフェム系 第3〜4世代
第3世代
セフトリアキソン
添付文書
通常、1日1〜2g(力価)を1回又は2回に分けて静脈内注射又は点滴静注する。難治性又は重症感染症には症状に応じて1日量を2g(力価)まで増量し、2回に分けて静脈内注射又は点滴静注する。
こちらは半減期が長いために1日1回投与でも分割投与と比較して遜色がないアウトカムが得られています。プラチナマニュアルでも一回2gを1日1回が標準的な使い方として紹介されています。
セフタジジム
添付文書
通常、成人には1日1〜2g(力価)を2回に分割し静脈内に注射する。なお、難治性または重症感染症には症状に応じて1日量を4g(力価)まで増量し、2〜4回に分割投与する。
プラチナマニュアルでは緑膿菌性肺炎緑膿菌肺炎に対し2gを8時間ごと、となっており、この使い方ですと1日6gとなってしまい、添付文書に明記されている「最大量」をはみ出してしまいます。ちなみにペニシリン系など「最大量」が「明記」されていないものは、症状詳記で何とかるとしても……。
第4世代
セフェピム
添付文書
一般感染症:通常成人には、症状により1日1〜2g(力価)を2回に分割し、静脈内注射又は点滴静注する。なお、難治性又は重症感染症には、症状に応じて1日量を4g(力価)まで増量し分割投与する。
発熱性好中球減少症:通常成人には、1日4g(力価)を2回に分割し、静脈内注射又は点滴静注する。
プラチナマニュアルでは発熱性好中球減少症に対し1回2gを8〜12時間ごと、となっています。2gを1日3回、としてしまうと最大量4gを超えてしまうので、理想的には使いにくいですね。
セフトリアキソン
添付文書
通常、1日1〜2g(力価)を1回又は2回に分けて静脈内注射又は点滴静注する。難治性又は重症感染症には症状に応じて1日量を2g(力価)まで増量し、2回に分けて静脈内注射又は点滴静注する。
こちらは半減期が長いために1日1回投与でも分割投与と比較して遜色がないアウトカムが得られています。プラチナマニュアルでも一回2gを1日1回が標準的な使い方として紹介されています。
セフタジジム
添付文書
通常、成人には1日1〜2g(力価)を2回に分割し静脈内に注射する。なお、難治性または重症感染症には症状に応じて1日量を4g(力価)まで増量し、2〜4回に分割投与する。
プラチナマニュアルでは緑膿菌性肺炎緑膿菌肺炎に対し2gを8時間ごと、となっており、この使い方ですと1日6gとなってしまい、添付文書に明記されている「最大量」をはみ出してしまいます。ちなみにペニシリン系など「最大量」が「明記」されていないものは、症状詳記で何とかるとしても……。
第4世代
セフェピム
添付文書
一般感染症:通常成人には、症状により1日1〜2g(力価)を2回に分割し、静脈内注射又は点滴静注する。なお、難治性又は重症感染症には、症状に応じて1日量を4g(力価)まで増量し分割投与する。
発熱性好中球減少症:通常成人には、1日4g(力価)を2回に分割し、静脈内注射又は点滴静注する。
プラチナマニュアルでは発熱性好中球減少症に対し1回2gを8〜12時間ごと、となっています。2gを1日3回、としてしまうと最大量4gを超えてしまうので、理想的には使いにくいですね。
posted by 長尾大志 at 15:08
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2021年10月25日
抗菌薬・彼我の差を考える3 セフェム系 第1〜2世代
第1世代
セファゾリン
添付文書
セファゾリンとして、通常、1日量成人には1g(力価)を2回に分けて緩徐に静脈内へ注射するが、筋肉内へ注射することもできる。症状及び感染菌の感受性から効果不十分と判断される場合には、1日量成人1.5〜3g(力価)を3回に分割投与する。症状が特に重篤な場合には、1日量成人5g(力価)までを分割投与することができる。
プラチナマニュアルでは蜂窩織炎に対し1回1〜2gを8時間ごとに投与としています。肺炎に使うことはまずないでしょうから軽く触れるにとどめます。
第2世代
セフォチアム
添付文書
通常、成人にはセフォチアム塩酸塩として1日0.5〜2g(力価)を2〜4回に分けて静脈内に注射する。なお、年齢、症状に応じ適宜増減するが、成人の敗血症には1日4g(力価)まで増量することができる。
セフメタゾール
添付文書
通常成人には、1日1〜2g(力価)を2回に分けて静脈内注射又は点滴静注する。なお、難治性又は重症感染症には症状に応じて、1日量を成人では4g(力価)まで増量し、2〜4回に分割投与する。
プラチナマニュアルでは第2世代はセフメタゾールだけが紹介されていて、一回2gを12時間ごと、となっていますので、2gを1日2回でOKです。
このあたりも、肺炎で使うことは減ってきましたかね……。おそらく施設、ドクターによると思いますが。
セファゾリン
添付文書
セファゾリンとして、通常、1日量成人には1g(力価)を2回に分けて緩徐に静脈内へ注射するが、筋肉内へ注射することもできる。症状及び感染菌の感受性から効果不十分と判断される場合には、1日量成人1.5〜3g(力価)を3回に分割投与する。症状が特に重篤な場合には、1日量成人5g(力価)までを分割投与することができる。
プラチナマニュアルでは蜂窩織炎に対し1回1〜2gを8時間ごとに投与としています。肺炎に使うことはまずないでしょうから軽く触れるにとどめます。
第2世代
セフォチアム
添付文書
通常、成人にはセフォチアム塩酸塩として1日0.5〜2g(力価)を2〜4回に分けて静脈内に注射する。なお、年齢、症状に応じ適宜増減するが、成人の敗血症には1日4g(力価)まで増量することができる。
セフメタゾール
添付文書
通常成人には、1日1〜2g(力価)を2回に分けて静脈内注射又は点滴静注する。なお、難治性又は重症感染症には症状に応じて、1日量を成人では4g(力価)まで増量し、2〜4回に分割投与する。
プラチナマニュアルでは第2世代はセフメタゾールだけが紹介されていて、一回2gを12時間ごと、となっていますので、2gを1日2回でOKです。
このあたりも、肺炎で使うことは減ってきましたかね……。おそらく施設、ドクターによると思いますが。
posted by 長尾大志 at 14:33
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2021年10月24日
抗菌薬・彼我の差を考える2 スルバクタム・アンピシリン/ピペラシリン/タゾバクタム・ピペラシリン
スルバクタム・アンピシリン(SBT/ABPC)
添付文書
<肺炎、肺膿瘍、腹膜炎の場合>
通常成人にはスルバクタムナトリウム・アンピシリンナトリウムとして、1日6g(力価)を2回に分けて静脈内注射又は点滴静注する。なお、重症感染症の場合は必要に応じて適宜増量することができるが、1回3g(力価)1日4回(1日量として12g(力価))を上限とする。
プラチナマニュアルでは1.5〜3gを6時間ごと。添付文書が追いつきましたね。こちらはこのままで大丈夫です。
ピペラシリン
添付文書
ピペラシリンナトリウムとして、通常、成人には、1日2〜4g(力価)を2〜4回に分けて静脈内に投与するが、筋肉内に投与もできる。なお、難治性又は重症感染症には症状に応じて、1回4gを1日4回まで増量して静脈内に投与する。
プラチナマニュアルでは緑膿菌肺炎に対して1回4gを1日4回+ゲンタマイシン。
こちらも肺炎に対して投与するなら、重症として1回4gを1日4回となるでしょうが、院内肺炎などで嫌気性菌に対するカバーを考えると、βラクタマーゼ阻害薬(タゾバクタム)があった方が好ましい。次のタゾバクタム・ピペラシリンが使われることが昨今では多いと思います。
タゾバクタム・ピペラシリン
タゾバクタム・ピペラシリンとして、通常、成人には、1回4.5g(力価)を1日3回点滴静注する。肺炎の場合、症状、病態に応じて1日4回に増量できる。なお、必要に応じて緩徐に静脈内注射することもできる。
プラチナマニュアルも同じく1回4.5g(力価)を1日3回。
こちらは比較的新しい最近の薬ですのでPK/PD理論に則った投与方法が出来るように設定されています。
添付文書
<肺炎、肺膿瘍、腹膜炎の場合>
通常成人にはスルバクタムナトリウム・アンピシリンナトリウムとして、1日6g(力価)を2回に分けて静脈内注射又は点滴静注する。なお、重症感染症の場合は必要に応じて適宜増量することができるが、1回3g(力価)1日4回(1日量として12g(力価))を上限とする。
プラチナマニュアルでは1.5〜3gを6時間ごと。添付文書が追いつきましたね。こちらはこのままで大丈夫です。
ピペラシリン
添付文書
ピペラシリンナトリウムとして、通常、成人には、1日2〜4g(力価)を2〜4回に分けて静脈内に投与するが、筋肉内に投与もできる。なお、難治性又は重症感染症には症状に応じて、1回4gを1日4回まで増量して静脈内に投与する。
プラチナマニュアルでは緑膿菌肺炎に対して1回4gを1日4回+ゲンタマイシン。
こちらも肺炎に対して投与するなら、重症として1回4gを1日4回となるでしょうが、院内肺炎などで嫌気性菌に対するカバーを考えると、βラクタマーゼ阻害薬(タゾバクタム)があった方が好ましい。次のタゾバクタム・ピペラシリンが使われることが昨今では多いと思います。
タゾバクタム・ピペラシリン
タゾバクタム・ピペラシリンとして、通常、成人には、1回4.5g(力価)を1日3回点滴静注する。肺炎の場合、症状、病態に応じて1日4回に増量できる。なお、必要に応じて緩徐に静脈内注射することもできる。
プラチナマニュアルも同じく1回4.5g(力価)を1日3回。
こちらは比較的新しい最近の薬ですのでPK/PD理論に則った投与方法が出来るように設定されています。
posted by 長尾大志 at 14:15
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2021年10月23日
抗菌薬・彼我の差を考える1 アンピシリン(ABPC)
添付文書
静脈内注射の場合 アンピシリンとして、通常、成人には1日量1〜2g(力価)を1〜2回に分けて日局生理食塩液又は日局ブドウ糖注射液に溶解し静脈内注射し、点滴静注による場合は、アンピシリンとして、通常、成人には1日量1〜4g(力価)を1〜2回に分けて輸液100〜500mLに溶解し1〜2時間かけて静脈内に点滴注射する。
敗血症、感染性心内膜炎、化膿性髄膜炎については、一般に通常用量より大量を使用する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
プラチナマニュアルでは腸球菌感染性心内膜炎に対し、2gを4時間ごと(+ゲンタマイシン)。肺炎に対して使うことは推奨されていません。確かにアンピシリンでいける肺炎球菌ならPCGでもいけるはずで、嫌気性菌をカバー、となればスルバクタム(経口薬だとクラブラン酸)が欲しくなりスルバクタム・アンピシリンを選択することになる。嫌気性菌を考えなくてよく、BLNARやBLPARが少ない地域でインフルエンザ桿菌までカバーする、といういささかマニアックなシチュエーションでの出番くらいしかなさそうです。
ということで、肺炎に対して使うのであれば症状詳記しながらせめて2g×4回、とかになるかと思うのですが、そこまでして使う場面はあるかいな?という感じでしょうか。
静脈内注射の場合 アンピシリンとして、通常、成人には1日量1〜2g(力価)を1〜2回に分けて日局生理食塩液又は日局ブドウ糖注射液に溶解し静脈内注射し、点滴静注による場合は、アンピシリンとして、通常、成人には1日量1〜4g(力価)を1〜2回に分けて輸液100〜500mLに溶解し1〜2時間かけて静脈内に点滴注射する。
敗血症、感染性心内膜炎、化膿性髄膜炎については、一般に通常用量より大量を使用する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
プラチナマニュアルでは腸球菌感染性心内膜炎に対し、2gを4時間ごと(+ゲンタマイシン)。肺炎に対して使うことは推奨されていません。確かにアンピシリンでいける肺炎球菌ならPCGでもいけるはずで、嫌気性菌をカバー、となればスルバクタム(経口薬だとクラブラン酸)が欲しくなりスルバクタム・アンピシリンを選択することになる。嫌気性菌を考えなくてよく、BLNARやBLPARが少ない地域でインフルエンザ桿菌までカバーする、といういささかマニアックなシチュエーションでの出番くらいしかなさそうです。
ということで、肺炎に対して使うのであれば症状詳記しながらせめて2g×4回、とかになるかと思うのですが、そこまでして使う場面はあるかいな?という感じでしょうか。
posted by 長尾大志 at 18:24
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2021年10月22日
抗菌薬・彼我の差を考える1 ペニシリンG(PCG)
最近PK/PD理論が確立してから発売されたβラクタム系抗菌薬では、理論に則って1日投与回数を多く設定されたものが出てきています(タゾバクタム・ピペラシリンなど)し、以前からあるスルバクタム・アンピシリンでも1日投与回数を増やして設定され直したものもありますが、未だに旧来の使用法しか認められていないものもあり、玉石混交?の現状です。
そこで現在参照できる最も妥当な文献として感染症プラチナマニュアルを参照し、実際の保険添付文書上の用法用量と対照しながら、実際どの程度の使い方をすればいいのかを探っていきましょう。少なくとも投与量に関しては、1日投与量に関しては添付文書上の最大量、あるいは難治性・重症の場合として書かれている量を用いるのが原則と考えていただいて間違いではないと思います。
■ペニシリン系
ペニシリンG(PCG)
添付文書上
<化膿性髄膜炎・感染性心内膜炎・梅毒を除く感染症>
通常、成人には、ベンジルペニシリンとして1回30〜60万単位を1日2〜4回筋肉内注射する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
となっていて、点滴静注が記載されているのは化膿性髄膜炎・感染性心内膜炎・梅毒になります。例えば化膿性髄膜炎なら通常、成人には、ベンジルペニシリンとして1回400万単位を1日6回、点滴静注する、となっています。
一方プラチナマニュアルでは肺炎球菌肺炎に対し200万単位を4時間ごと静注、となっています。正直これが最も添付文書と理想が乖離しているところかなと思いますが、頻回に筋注も殺生ですし、血中濃度がすぐに下がってしまうところからも、肺炎であっても200万単位を1日6回点滴静注、というのが妥当かなと考えます。症状詳記でしっかり説明しましょう。
そこで現在参照できる最も妥当な文献として感染症プラチナマニュアルを参照し、実際の保険添付文書上の用法用量と対照しながら、実際どの程度の使い方をすればいいのかを探っていきましょう。少なくとも投与量に関しては、1日投与量に関しては添付文書上の最大量、あるいは難治性・重症の場合として書かれている量を用いるのが原則と考えていただいて間違いではないと思います。
■ペニシリン系
ペニシリンG(PCG)
添付文書上
<化膿性髄膜炎・感染性心内膜炎・梅毒を除く感染症>
通常、成人には、ベンジルペニシリンとして1回30〜60万単位を1日2〜4回筋肉内注射する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
となっていて、点滴静注が記載されているのは化膿性髄膜炎・感染性心内膜炎・梅毒になります。例えば化膿性髄膜炎なら通常、成人には、ベンジルペニシリンとして1回400万単位を1日6回、点滴静注する、となっています。
一方プラチナマニュアルでは肺炎球菌肺炎に対し200万単位を4時間ごと静注、となっています。正直これが最も添付文書と理想が乖離しているところかなと思いますが、頻回に筋注も殺生ですし、血中濃度がすぐに下がってしまうところからも、肺炎であっても200万単位を1日6回点滴静注、というのが妥当かなと考えます。症状詳記でしっかり説明しましょう。
posted by 長尾大志 at 17:12
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2021年10月21日
彼我の差を考える
ちょっとここで、しばし抗菌薬について改めて考えてみます。すでに多くの方はご存知と思いますが、少し前から抗菌薬の効果を考える上でPK/PD(Pharmacokinetics薬物動態学、 Pharmacodynamics、薬力学)の理論というものが出てきています。例えばペニシリンやセフェムなどβラクタム系やカルバペネム系などでは時間依存性、つまりMICを超える血中濃度で菌に接触している時間が1日のうちどの程度の割合になるか(time above MIC|T>MIC)が長い方が、効果が高いといわれています。一方でキノロン系やアミノグリコシド系のように濃度依存性、すなわち1回投与の量を多くして最大の血中濃度(Cmax)が高い方が効果が高い、というものもあります。
そこで前者では、MIC を超える濃度を担保しつつ、各回の投与後速やかに血中濃度が低下することから、投与回数をできるだけ多くするために分割投与が推奨され、後者では1日一回でできるだけ多い量を投与する、といった戦略がスタンダードと考えられるようになってきました。
しかしながらここからが重要なんですが、日本においては医療保険制度というものがあり、保険適用をとるにあたって最初に承認された用法用量というものが存在します。多くの抗菌薬において、それはずいぶん以前(当然PK/PD理論が分かるよりずっとずっと以前)に設定されたものであり、正直かなり適当に?決められている感もあるわけです。
しかしながらここは日本ですから、一度決まってしまったことはなかなか変えられない。といって決まりを守らずに、定められた用法用量から逸脱して薬を使用すると保険金の返還など、何らかのペナルティが降る可能性が高いということになります。
そこで前者では、MIC を超える濃度を担保しつつ、各回の投与後速やかに血中濃度が低下することから、投与回数をできるだけ多くするために分割投与が推奨され、後者では1日一回でできるだけ多い量を投与する、といった戦略がスタンダードと考えられるようになってきました。
しかしながらここからが重要なんですが、日本においては医療保険制度というものがあり、保険適用をとるにあたって最初に承認された用法用量というものが存在します。多くの抗菌薬において、それはずいぶん以前(当然PK/PD理論が分かるよりずっとずっと以前)に設定されたものであり、正直かなり適当に?決められている感もあるわけです。
しかしながらここは日本ですから、一度決まってしまったことはなかなか変えられない。といって決まりを守らずに、定められた用法用量から逸脱して薬を使用すると保険金の返還など、何らかのペナルティが降る可能性が高いということになります。
posted by 長尾大志 at 12:49
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2019年04月08日
第59回日本呼吸器学会学術講演会ポスター発表「内視鏡1」セッション予習2
■ クライオバイオプシーの安全性有用性に関する多施設共同前向き研究
背景
クライオバイオプシー(TBLC)はびまん性肺疾患や肺がんの診断に有用であるが本邦における安全性、有用性は未だ明らかではないため、多施設共同にて前向きにTBLCの安全性、有用性を検討した。
方法
対象症例はTBLCが必要な全ての呼吸器疾患とした。主要評価項目は重度又は重篤な有害事象(出血、気胸、肺炎、呼吸不全、間質性肺炎急性増悪)発生割合とし、期待値を10%、閾値を20%、有意水準を両側5%、検出力を80%とした場合の必要症例数を110例とした。
結果
症例は17例、年齢72歳であり、全例で安静時の呼吸不全は認められず、止血用バルーンは全例で施行した。検査時間は34分、生検回数は3回、TBLC検体サイズは17.5平方mmであった。重度または重篤な出血は認められず、気胸は一例のみであり他の有害事象は認められていない。
結論
これまでの結果では許容範囲内の安全性プロファイルであり、症例集積が終了した時点で最終解析を行う。
所感
良好な結果で、最終解析が楽しみですね。
■ 当院における免疫不全患者に対する気管支鏡検査の有用性の検討
【背景・目的】
免疫不全患者に新たに出現した陰影に対する気管支鏡検査(BF)の確定診断への寄与度や検査の合併症は報告により様々であり、その適応基準は施設ごとに異なる。
【対象・方法】
免疫不全患者へのBF(肺がん診断目的を除外した69例)を後ろ向きに解析した。活動性の悪性腫瘍、自己免疫疾患、ステロイド5 mg/日以上、維持透析中、免疫抑制剤投与中の患者を免疫不全患者とした。
【結果】
背景疾患の内訳は悪性腫瘍23例、自己免疫疾患42例、その他4例であった。BALを49例、生検を19例、擦過洗浄のみを10例に施行した。50例は感染の除外を含め最終診断に寄与した。最終的に感染と臨床診断された24例のうち14例は起因菌を同定できなかった。検査後合併症は5例に認め重篤な呼吸不全1例、発熱3例、血痰1例であった。全例で速やかに回復した。
【結論】
免疫不全患者においてもBFは安全に施行でき診断への寄与は大きいが、起因菌の検出率は高くない。
所感
免疫不全患者においてBFどうしようかな…と躊躇われることも少なくありません。この報告は後押しをしてくれるでしょうが、確かに起因菌検出にはなかなか至りませんね。
■ 睡眠時無呼吸症候群と気管支鏡中の酸素飽和度低下に関する前向き観察研究
【背景・目的】
気管支鏡検査中の静脈麻酔が広まる一方、酸素投与を必要とする危険因子は明らかでない。
睡眠時無呼吸症候群を危険因子と仮定し、前向き観察研究を行った。
【方法】
気管支鏡中の最大酸素投与量を記録した。また同日にアプノモニターを行った。アプノモニターの解析者は酸素投与量に対して盲検され呼吸障害指数(RDI)を求めた。RDI値5回/時間以上の患者をSAS群とし、酸素投与量とSAS群の単回帰解析を行った。交絡因子として性別、年齢、鎮静薬使用量、マランパチー分類を含め多重回帰解析した。
【結果】
解析対象者は70人で女性は33人、SAS群は29人だった。単回帰分析でSAS群は有意に酸素投与量が増加した。多重回帰分析でもSAS群で有意に酸素投与量が増えた。その他女性で有意に酸素が多く投与された。
【結論】
気管支鏡中の酸素飽和度低下の危険因子として、SASと女性が挙げられた。
所感
この研究を始めるにあたっての背景をもう少し知りたいですね。SASが危険因子であるとして、それがわかったことで酸素投与量が多くなると予想され、それで…。
背景
クライオバイオプシー(TBLC)はびまん性肺疾患や肺がんの診断に有用であるが本邦における安全性、有用性は未だ明らかではないため、多施設共同にて前向きにTBLCの安全性、有用性を検討した。
方法
対象症例はTBLCが必要な全ての呼吸器疾患とした。主要評価項目は重度又は重篤な有害事象(出血、気胸、肺炎、呼吸不全、間質性肺炎急性増悪)発生割合とし、期待値を10%、閾値を20%、有意水準を両側5%、検出力を80%とした場合の必要症例数を110例とした。
結果
症例は17例、年齢72歳であり、全例で安静時の呼吸不全は認められず、止血用バルーンは全例で施行した。検査時間は34分、生検回数は3回、TBLC検体サイズは17.5平方mmであった。重度または重篤な出血は認められず、気胸は一例のみであり他の有害事象は認められていない。
結論
これまでの結果では許容範囲内の安全性プロファイルであり、症例集積が終了した時点で最終解析を行う。
所感
良好な結果で、最終解析が楽しみですね。
■ 当院における免疫不全患者に対する気管支鏡検査の有用性の検討
【背景・目的】
免疫不全患者に新たに出現した陰影に対する気管支鏡検査(BF)の確定診断への寄与度や検査の合併症は報告により様々であり、その適応基準は施設ごとに異なる。
【対象・方法】
免疫不全患者へのBF(肺がん診断目的を除外した69例)を後ろ向きに解析した。活動性の悪性腫瘍、自己免疫疾患、ステロイド5 mg/日以上、維持透析中、免疫抑制剤投与中の患者を免疫不全患者とした。
【結果】
背景疾患の内訳は悪性腫瘍23例、自己免疫疾患42例、その他4例であった。BALを49例、生検を19例、擦過洗浄のみを10例に施行した。50例は感染の除外を含め最終診断に寄与した。最終的に感染と臨床診断された24例のうち14例は起因菌を同定できなかった。検査後合併症は5例に認め重篤な呼吸不全1例、発熱3例、血痰1例であった。全例で速やかに回復した。
【結論】
免疫不全患者においてもBFは安全に施行でき診断への寄与は大きいが、起因菌の検出率は高くない。
所感
免疫不全患者においてBFどうしようかな…と躊躇われることも少なくありません。この報告は後押しをしてくれるでしょうが、確かに起因菌検出にはなかなか至りませんね。
■ 睡眠時無呼吸症候群と気管支鏡中の酸素飽和度低下に関する前向き観察研究
【背景・目的】
気管支鏡検査中の静脈麻酔が広まる一方、酸素投与を必要とする危険因子は明らかでない。
睡眠時無呼吸症候群を危険因子と仮定し、前向き観察研究を行った。
【方法】
気管支鏡中の最大酸素投与量を記録した。また同日にアプノモニターを行った。アプノモニターの解析者は酸素投与量に対して盲検され呼吸障害指数(RDI)を求めた。RDI値5回/時間以上の患者をSAS群とし、酸素投与量とSAS群の単回帰解析を行った。交絡因子として性別、年齢、鎮静薬使用量、マランパチー分類を含め多重回帰解析した。
【結果】
解析対象者は70人で女性は33人、SAS群は29人だった。単回帰分析でSAS群は有意に酸素投与量が増加した。多重回帰分析でもSAS群で有意に酸素投与量が増えた。その他女性で有意に酸素が多く投与された。
【結論】
気管支鏡中の酸素飽和度低下の危険因子として、SASと女性が挙げられた。
所感
この研究を始めるにあたっての背景をもう少し知りたいですね。SASが危険因子であるとして、それがわかったことで酸素投与量が多くなると予想され、それで…。
posted by 長尾大志 at 17:41
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2019年04月07日
束の間の春休みが終わりました〜
ウチの5年生の皆さんは4月から臨床実習が始まるのですが、これが教授×2週間となっておりまして、最近立て続けに教授が新設されたためにどんどん夏休みなどの長期休暇が減らされまして、もはや長期休暇は2週間ずつとかになっております。ということは、私たちの長期休暇?学生さんが来ないので腰を据えていろいろ物事を考えたり、授業の組み立てを考えたり出来る期間もそれだけ短縮されています。
で、この春休みも2週間だったのですが、この春から循環器と呼吸器で2週間、というカリキュラムを、循環器と呼吸器、完全に分けるという試みを始めました。
ということで、循環器さんは先週から実習開始となりましたが、呼吸器は明日月曜日からの開始です。
全く新しい試みがいろいろと始まるので、大変緊張しております。
まあでも、学生さん次第、そして症例次第なところがありますから、どうなっていくでしょうか…??
で、この春休みも2週間だったのですが、この春から循環器と呼吸器で2週間、というカリキュラムを、循環器と呼吸器、完全に分けるという試みを始めました。
ということで、循環器さんは先週から実習開始となりましたが、呼吸器は明日月曜日からの開始です。
全く新しい試みがいろいろと始まるので、大変緊張しております。
まあでも、学生さん次第、そして症例次第なところがありますから、どうなっていくでしょうか…??
posted by 長尾大志 at 22:19
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2019年04月05日
第59回日本呼吸器学会学術講演会ポスター発表「内視鏡1」セッション予習1
ふと気がついてみれば、来週末には日本呼吸器学会学術講演会ですね。
今回私はポスター発表「内視鏡1」セッションの座長になりましたので、例によって予習をして参りたいと思います。
いつもは座長を仰せつかっている日の日帰りが多いのですが、今回はポスターの日程が金曜日の午前中、そして土曜日の夜に別件があるため、木曜日の夜から日曜日まで東京にステイするという、なかなか珍しい日程となっております。
こうなったら普段あまり勉強できない学会場での勉強を、この機会ですのでしっかり頑張ろうと思います。
さて今回は内視鏡のセッションです。なかなか興味深い演題が見られますね…。
■ 大口径ブロンコガイドシースを用いたEBUS-GS Cryobiopsy
背景
2.2mmのシースではクライオプローブが通過困難であるが、大口径のブロンコガイドシースは2.7mm口径であり、GS-TBLCが可能となる。
目的
当院で施行したGS-TBLCについて検討する。
対象と方法
末梢肺病変に対しGS-TBLCを施行した例を検討した。
結果
13症例で施行し、採取回数中央値2回、施術時間中央値30.5分、重篤な合併症は認めなかった。EBUS所見がwithinであった症例とadjacent toであった症例は100%の診断に至った。
所感
大口径のブロンコガイドシースを用いてクライオプローブによるクライオバイオプシーを施行された記録です。
クライオバイオプシー…皆さんのご施設ではいかがでしょうか。まだまだウチでも…でもどんどんされているところはされている。この報告では腫瘤に対してですね。
症例数が13例ですのでなかなか統計的にものは言えないかもしれませんが、少なくともEBUSの所見がwithinであった症例とadjacent toであった症例は100%の診断に至ったということで、やっぱり大きな組織を採った方がいいよね〜、という話にはなると思います。
個人的には、TBLBではなかなか診断に至らない、間質性肺炎もそうですがリンパ増殖性疾患なんかが診断出来るといいなあ、と思っております。
今回私はポスター発表「内視鏡1」セッションの座長になりましたので、例によって予習をして参りたいと思います。
いつもは座長を仰せつかっている日の日帰りが多いのですが、今回はポスターの日程が金曜日の午前中、そして土曜日の夜に別件があるため、木曜日の夜から日曜日まで東京にステイするという、なかなか珍しい日程となっております。
こうなったら普段あまり勉強できない学会場での勉強を、この機会ですのでしっかり頑張ろうと思います。
さて今回は内視鏡のセッションです。なかなか興味深い演題が見られますね…。
■ 大口径ブロンコガイドシースを用いたEBUS-GS Cryobiopsy
背景
2.2mmのシースではクライオプローブが通過困難であるが、大口径のブロンコガイドシースは2.7mm口径であり、GS-TBLCが可能となる。
目的
当院で施行したGS-TBLCについて検討する。
対象と方法
末梢肺病変に対しGS-TBLCを施行した例を検討した。
結果
13症例で施行し、採取回数中央値2回、施術時間中央値30.5分、重篤な合併症は認めなかった。EBUS所見がwithinであった症例とadjacent toであった症例は100%の診断に至った。
所感
大口径のブロンコガイドシースを用いてクライオプローブによるクライオバイオプシーを施行された記録です。
クライオバイオプシー…皆さんのご施設ではいかがでしょうか。まだまだウチでも…でもどんどんされているところはされている。この報告では腫瘤に対してですね。
症例数が13例ですのでなかなか統計的にものは言えないかもしれませんが、少なくともEBUSの所見がwithinであった症例とadjacent toであった症例は100%の診断に至ったということで、やっぱり大きな組織を採った方がいいよね〜、という話にはなると思います。
個人的には、TBLBではなかなか診断に至らない、間質性肺炎もそうですがリンパ増殖性疾患なんかが診断出来るといいなあ、と思っております。
posted by 長尾大志 at 19:23
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2019年04月04日
気管支喘息/COPD安定期の対応4
・増悪の予防
増悪の原因として、呼吸器感染症(細菌感染・ウイルス感染・非定型病原体による感染など)、大気汚染などが大きな割合を占めていると考えられています。そのため増悪の予防としては手洗いなどの感染予防が重要であることは論を待たないわけですが、それ以外には以下のようなものが勧められています。
・禁煙
・肺炎球菌ワクチン
・インフルエンザワクチン
・リハビリテーション
・長時間作用性気管支拡張薬
・禁煙
喫煙者では線毛機能が障害されたりして感染のリスクが高く、禁煙者に比べて増悪頻度が高いものです。禁煙によって増悪頻度が1/3程度に減少するとされています。
・ワクチン
気道感染の予防策として、手洗いとともにワクチン接種が有効です
@肺炎球菌ワクチン
肺炎球菌ワクチンにはPPSV23(ニューモバックス
)と、PCV13(プレベナー
)の2種類があります。日本では65歳以上のすべてのCOPD患者に肺炎球菌ワクチン接種が推奨され、65歳未満でも重症のCOPD患者にはPPSV23の投与が推奨されています。
Aインフルエンザワクチン
あらゆるCOPD患者にインフルエンザワクチン接種が推奨されています。
・リハビリテーション
身体活動性の低下は誤嚥などにつながり、増悪が増加し生命予後も不良になるため、身体活動性を維持するよう努めることが重要です。
・長時間作用性気管支拡張薬
メタ解析の成績ではLAMA、LABA、ICSいずれもCOPDの増悪頻度を減少させることが分かっています。しかし一方で、ICSは肺炎のリスクが増加することが示されており、ICS の使用に関してはまだまだ議論があるところです。
呼吸器研修ノート
増悪の原因として、呼吸器感染症(細菌感染・ウイルス感染・非定型病原体による感染など)、大気汚染などが大きな割合を占めていると考えられています。そのため増悪の予防としては手洗いなどの感染予防が重要であることは論を待たないわけですが、それ以外には以下のようなものが勧められています。
・禁煙
・肺炎球菌ワクチン
・インフルエンザワクチン
・リハビリテーション
・長時間作用性気管支拡張薬
・禁煙
喫煙者では線毛機能が障害されたりして感染のリスクが高く、禁煙者に比べて増悪頻度が高いものです。禁煙によって増悪頻度が1/3程度に減少するとされています。
・ワクチン
気道感染の予防策として、手洗いとともにワクチン接種が有効です
@肺炎球菌ワクチン
肺炎球菌ワクチンにはPPSV23(ニューモバックス


Aインフルエンザワクチン
あらゆるCOPD患者にインフルエンザワクチン接種が推奨されています。
・リハビリテーション
身体活動性の低下は誤嚥などにつながり、増悪が増加し生命予後も不良になるため、身体活動性を維持するよう努めることが重要です。
・長時間作用性気管支拡張薬
メタ解析の成績ではLAMA、LABA、ICSいずれもCOPDの増悪頻度を減少させることが分かっています。しかし一方で、ICSは肺炎のリスクが増加することが示されており、ICS の使用に関してはまだまだ議論があるところです。
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posted by 長尾大志 at 17:50
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2019年04月03日
気管支喘息/COPD安定期の対応3
■ COPDの安定期治療
COPDは「タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入暴露することなどにより生ずる肺疾患であり、呼吸機能検査で気流閉塞を示す。気流閉塞は末梢気道病変と気腫性病変がさまざまな割合で複合的に関与し起こる。臨床的には徐々に進行する労作時の呼吸困難や慢性の咳・痰を示すが、これらの症状に乏しいこともある」(COPD診断と治療のためのガイドライン第5版2018、日本呼吸器学会)と定義されています。
安定期の管理目標は、現状の改善と将来のリスクの低減を目指すものです。
COPDは、肺胞の破壊という不可逆的な病変を伴いますので、禁煙以外に進行を止める手立てはないのが現状です。したがって、可逆性のある気道病変に対する薬物療法も重要ではありますが、それ以外の、非薬物療法(運動療法とか、栄養療法とか、教育とか)の占めるウエイトが大きいのが特徴です。
ガイドラインにある、「安定期COPDの重症度に応じた管理の図」をみると、重症度もハッキリ区切られておらず、薬物療法、非薬物療法とも区切りが何とも漠然としているのに気づかれるでしょう。
以前は肺機能(予測値に対する%1秒量)をある程度重症度の目安にしていたのですが、昨今では自覚症状がどの程度あるか、増悪の頻度がどの程度か、ということがらの方が予後やQOL、ADLに大きく関わってくるということが明らかになってきました。
そのため、例えば症状が強い人は薬物を追加するとか、リハビリテーションを追加するとか、症状を見ながらやっていきましょうという感じになっています。どちらかというと薬物の管理アルゴリズムを見た方がいいかもしれません。
薬物療法は比較的シンプルな考え方で、症状が強ければ薬剤を追加していきます。また増悪の回数が多い場合にも薬剤を追加した方がいいようです。
まずは必要に応じてSABA→LAMAまたはLABA→LAMA+LABA、さらにテオフィリンや喀痰調整薬の追加、という感じで、それほど複雑ではありません。
症状がどの程度であるか、という目安にはmMRC(modified Medical Research Council:修正MRC)質問票(息切れの評価)とCAT(COPD assessment test)質問票(症状やQOLの評価)という2つの指標がよく使われます。
呼吸器研修ノート
COPDは「タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入暴露することなどにより生ずる肺疾患であり、呼吸機能検査で気流閉塞を示す。気流閉塞は末梢気道病変と気腫性病変がさまざまな割合で複合的に関与し起こる。臨床的には徐々に進行する労作時の呼吸困難や慢性の咳・痰を示すが、これらの症状に乏しいこともある」(COPD診断と治療のためのガイドライン第5版2018、日本呼吸器学会)と定義されています。
安定期の管理目標は、現状の改善と将来のリスクの低減を目指すものです。
COPDは、肺胞の破壊という不可逆的な病変を伴いますので、禁煙以外に進行を止める手立てはないのが現状です。したがって、可逆性のある気道病変に対する薬物療法も重要ではありますが、それ以外の、非薬物療法(運動療法とか、栄養療法とか、教育とか)の占めるウエイトが大きいのが特徴です。
ガイドラインにある、「安定期COPDの重症度に応じた管理の図」をみると、重症度もハッキリ区切られておらず、薬物療法、非薬物療法とも区切りが何とも漠然としているのに気づかれるでしょう。
以前は肺機能(予測値に対する%1秒量)をある程度重症度の目安にしていたのですが、昨今では自覚症状がどの程度あるか、増悪の頻度がどの程度か、ということがらの方が予後やQOL、ADLに大きく関わってくるということが明らかになってきました。
そのため、例えば症状が強い人は薬物を追加するとか、リハビリテーションを追加するとか、症状を見ながらやっていきましょうという感じになっています。どちらかというと薬物の管理アルゴリズムを見た方がいいかもしれません。
薬物療法は比較的シンプルな考え方で、症状が強ければ薬剤を追加していきます。また増悪の回数が多い場合にも薬剤を追加した方がいいようです。
まずは必要に応じてSABA→LAMAまたはLABA→LAMA+LABA、さらにテオフィリンや喀痰調整薬の追加、という感じで、それほど複雑ではありません。
症状がどの程度であるか、という目安にはmMRC(modified Medical Research Council:修正MRC)質問票(息切れの評価)とCAT(COPD assessment test)質問票(症状やQOLの評価)という2つの指標がよく使われます。
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posted by 長尾大志 at 19:18
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2019年04月02日
気管支喘息/COPD安定期の対応2
・薬剤介入における注意点
特に吸入薬は内服薬よりも「面倒くさい」ので、服薬アドヒアランスを確認することがが大切です。
@残薬が多くないかを確認し、実際に吸入しているかの確認を行う。
喘息あるある
→症状が良くなっているからと吸入薬を自己中断や減薬、吸入忘れ
面倒なのでコントローラーを使用せずリリーバーだけ使う
A吸入手技を確認する。
薬剤開始後1度は実際に患者さんに目の前でやってもらって確認しましょう。
・薬剤を変更するタイミング
@コントロール不良の場合のステップアップ
季節性の花粉症薬の追加など、季節に応じた対応も大切です。
Aコントロール良好の場合のステップダウン
コントロール良好な状態が3〜6ヵ月維持されたら、治療のステップダウンを試みます。
B副作用への対応
吸入ステロイドの副作用は口腔・咽頭カンジダ症と嗄声といった局所の副作用が多いものです。対応としては吸入後のうがいや水分摂取がありますが、比較的コントロールが良好であれば吸入回数を減らすことも考慮します。
また、製剤タイプでは加圧噴霧式定量吸入器(pMDI)が粒子径が小さく、局所の副作用を起こしにくいといわれていますが、ドライパウダー吸入器(DPI)でも、ブデソニドは粒子径が小さいといわれていますので、それらに変更することもあります。pMDIであれば吸入にスペーサー(吸入補助具)を用いる方法もあります。
高齢者の方で吸入手技が難しいとの理由で、ホクナリンテープ貼付だけが処方されている症例(喘息にLABA単独使用は禁止です!)や、内服のステロイド製剤が長期に処方されている症例を見かけることもごくまれにあります。内服ステロイドには副作用も多くみられます(6日目、ステロイドの章を参照)。吸入デバイスを変更したり、家族の協力を得たり、スペーサーを用いたり、などなど工夫してなんとか吸入ステロイドを使ってみましょう。
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特に吸入薬は内服薬よりも「面倒くさい」ので、服薬アドヒアランスを確認することがが大切です。
@残薬が多くないかを確認し、実際に吸入しているかの確認を行う。
喘息あるある
→症状が良くなっているからと吸入薬を自己中断や減薬、吸入忘れ
面倒なのでコントローラーを使用せずリリーバーだけ使う
A吸入手技を確認する。
薬剤開始後1度は実際に患者さんに目の前でやってもらって確認しましょう。
・薬剤を変更するタイミング
@コントロール不良の場合のステップアップ
季節性の花粉症薬の追加など、季節に応じた対応も大切です。
Aコントロール良好の場合のステップダウン
コントロール良好な状態が3〜6ヵ月維持されたら、治療のステップダウンを試みます。
B副作用への対応
吸入ステロイドの副作用は口腔・咽頭カンジダ症と嗄声といった局所の副作用が多いものです。対応としては吸入後のうがいや水分摂取がありますが、比較的コントロールが良好であれば吸入回数を減らすことも考慮します。
また、製剤タイプでは加圧噴霧式定量吸入器(pMDI)が粒子径が小さく、局所の副作用を起こしにくいといわれていますが、ドライパウダー吸入器(DPI)でも、ブデソニドは粒子径が小さいといわれていますので、それらに変更することもあります。pMDIであれば吸入にスペーサー(吸入補助具)を用いる方法もあります。
高齢者の方で吸入手技が難しいとの理由で、ホクナリンテープ貼付だけが処方されている症例(喘息にLABA単独使用は禁止です!)や、内服のステロイド製剤が長期に処方されている症例を見かけることもごくまれにあります。内服ステロイドには副作用も多くみられます(6日目、ステロイドの章を参照)。吸入デバイスを変更したり、家族の協力を得たり、スペーサーを用いたり、などなど工夫してなんとか吸入ステロイドを使ってみましょう。
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posted by 長尾大志 at 18:37
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2019年03月26日
気管支喘息/COPD安定期の対応1
気管支喘息と診断したら、どの程度の重症度かを評価し、それに基づいて安定期の治療を組み立てます。未治療で始めて診断されたときの重症度は、主に喘息症状の頻度、強度、夜間症状とPEFやFEV1を参考に評価します。
で、症状によって、治療ステップを決め、そのステップに基づいてコントローラーを適宜組み合わせて治療をします。
実臨床では、よほどの重症でなくてステップ3くらいまでなら、ICS/LABA合剤の標準量を開始してみる、という感じで治療を進めることが多いように思います。
で、治療中の症例においては、コントロールが出来ているかどうかを評価し、コントロール不良であれば治療ステップを上げる(=薬剤を増やす、追加する)、コントロール良好であれば治療ステップを下げる(=薬剤を減らす)、という感じになります。
現在のコントロール状況を把握する
現在のコントロール状況を把握する項目として、咳、呼吸苦、喘鳴、睡眠障害、活動制限や増悪の頻度などを確認します。
また、ピークフローをモニタリングし、日内/週内の変動をみるのも参考になります。
…ちょっと諸事情で、これ以降しばらく更新がストップいたします。3,000記事目も間近で、楽しみにお待ち頂いている方には申し訳ございませんが、気長にお待ち頂ければ幸いです。
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で、症状によって、治療ステップを決め、そのステップに基づいてコントローラーを適宜組み合わせて治療をします。
実臨床では、よほどの重症でなくてステップ3くらいまでなら、ICS/LABA合剤の標準量を開始してみる、という感じで治療を進めることが多いように思います。
で、治療中の症例においては、コントロールが出来ているかどうかを評価し、コントロール不良であれば治療ステップを上げる(=薬剤を増やす、追加する)、コントロール良好であれば治療ステップを下げる(=薬剤を減らす)、という感じになります。
現在のコントロール状況を把握する
現在のコントロール状況を把握する項目として、咳、呼吸苦、喘鳴、睡眠障害、活動制限や増悪の頻度などを確認します。
また、ピークフローをモニタリングし、日内/週内の変動をみるのも参考になります。
…ちょっと諸事情で、これ以降しばらく更新がストップいたします。3,000記事目も間近で、楽しみにお待ち頂いている方には申し訳ございませんが、気長にお待ち頂ければ幸いです。
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posted by 長尾大志 at 17:37
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2019年03月25日
気管支喘息/COPD急性期の対応4
急性期を乗り越えて安定したら、診断を確定して安定期治療に移行します。
ただし、気管支喘息か、COPDか、はたまた合併例(ACO:Asthma and COPD Overlap)かの鑑別はしばしば難しいものです。
初学者の方には、わかったようなわからないような『喘息予防・管理ガイドライン2018』の診断基準よりも『喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:ACO)診断と治療の手引き2018』に挙げられている基準の方が明快でわかりやすいと思いますので、そちらを参照されることをお勧めします。
■ COPD と診断がついている症例の急性期診療(COPDの増悪)
COPDの増悪とは、「息切れの増加、咳や痰の増加、胸部不快感・違和感の出現あるいは増強を認め、安定期の治療の変更が必要となる状態をいう。ただし、他疾患(心不全、気胸、肺血栓塞栓症など)の先行の場合を除く。症状の発現は急激のみならず緩徐の場合もある。」と定義されます。(『COPD診断と治療のためのガイドライン第5版2018』より引用)原因としては感染などが契機になる事が多く経験されます。
治療の基本はABC+呼吸管理です。
A(antibiotics)抗菌薬
B(bronchodilators)気管支拡張薬
C(corticosteroids)ステロイド
喘息発作のときと似た薬剤を使いますが、COPDとわかっていると進め方がいささか異なります。そもそも喘息発作は治療に速やかに反応することが多いですが、COPD症例の回復には時間がかかります。ですから喘息症例は「治療への反応」をみて入院の判断をしますが、COPD症例では重症度、現在の状態などから判断することが多いと思います。
・COPD増悪を疑ったときに必要な検査
動脈血液ガス分析
胸部単純X線写真
血液検査
心電図
また、必要に応じて胸部CTや、感染を疑った際には喀痰検査も行います。心不全との鑑別が必要な際は血清BNP測定や、心臓超音波検査を行います。
・入院適応の判断
総合的な評価が必要ですが、目安として以下のような項目を参考にして判断します。
低酸素血症の悪化・呼吸不全
錯乱、傾眠などの症状
初期治療に反応がない
入院が必要なレベルの感染症が原因の場合(点滴抗菌薬が必要)
独居や高齢者など、在宅サポートが乏しい
外来での投薬
@β2刺激薬(SABA)吸入
メプチン1A+生理食塩水10mLをネブライザーで吸入 繰り返し吸入も可能
Aステロイド
経口プレドニン
0.5mg/kg 5〜7日間処方
BCOPD増悪時には発熱、膿性痰などを認めることが多く、抗菌薬を投与することが多いでしょう。
COPDの気道感染原因菌はH.influenzae、肺炎球菌、M.catarrhalisなどの頻度が高いとされているので、アモキシシリン+クラブラン酸やレスピラトリーキノロンなどがよく使われます。
入院での投薬
@β2刺激薬(SABA)吸入
メプチン1A+生理食塩水10mLをネブライザーで吸入 1日3〜4回
Aステロイド点滴静注
ソルメドロール
40〜125mg+生食50〜100mLを点滴投与 1日数回
B低酸素であれば、(血ガスで二酸化炭素貯留の有無を確認し)酸素投与
COPD症例では増悪時にCO2ナルコーシスをきたす危険性があり、二酸化炭素貯留の有無を必ず確認しておくべきです。二酸化炭素貯留がありアシデミアになっていればNPPVを導入します。
C抗菌薬
スルバクタム・アンピシリン
セフトリアキソンなどが使われます。
呼吸器研修ノート
ただし、気管支喘息か、COPDか、はたまた合併例(ACO:Asthma and COPD Overlap)かの鑑別はしばしば難しいものです。
初学者の方には、わかったようなわからないような『喘息予防・管理ガイドライン2018』の診断基準よりも『喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:ACO)診断と治療の手引き2018』に挙げられている基準の方が明快でわかりやすいと思いますので、そちらを参照されることをお勧めします。
■ COPD と診断がついている症例の急性期診療(COPDの増悪)
COPDの増悪とは、「息切れの増加、咳や痰の増加、胸部不快感・違和感の出現あるいは増強を認め、安定期の治療の変更が必要となる状態をいう。ただし、他疾患(心不全、気胸、肺血栓塞栓症など)の先行の場合を除く。症状の発現は急激のみならず緩徐の場合もある。」と定義されます。(『COPD診断と治療のためのガイドライン第5版2018』より引用)原因としては感染などが契機になる事が多く経験されます。
治療の基本はABC+呼吸管理です。
A(antibiotics)抗菌薬
B(bronchodilators)気管支拡張薬
C(corticosteroids)ステロイド
喘息発作のときと似た薬剤を使いますが、COPDとわかっていると進め方がいささか異なります。そもそも喘息発作は治療に速やかに反応することが多いですが、COPD症例の回復には時間がかかります。ですから喘息症例は「治療への反応」をみて入院の判断をしますが、COPD症例では重症度、現在の状態などから判断することが多いと思います。
・COPD増悪を疑ったときに必要な検査
動脈血液ガス分析
胸部単純X線写真
血液検査
心電図
また、必要に応じて胸部CTや、感染を疑った際には喀痰検査も行います。心不全との鑑別が必要な際は血清BNP測定や、心臓超音波検査を行います。
・入院適応の判断
総合的な評価が必要ですが、目安として以下のような項目を参考にして判断します。
低酸素血症の悪化・呼吸不全
錯乱、傾眠などの症状
初期治療に反応がない
入院が必要なレベルの感染症が原因の場合(点滴抗菌薬が必要)
独居や高齢者など、在宅サポートが乏しい
外来での投薬
@β2刺激薬(SABA)吸入
メプチン1A+生理食塩水10mLをネブライザーで吸入 繰り返し吸入も可能
Aステロイド
経口プレドニン

BCOPD増悪時には発熱、膿性痰などを認めることが多く、抗菌薬を投与することが多いでしょう。
COPDの気道感染原因菌はH.influenzae、肺炎球菌、M.catarrhalisなどの頻度が高いとされているので、アモキシシリン+クラブラン酸やレスピラトリーキノロンなどがよく使われます。
入院での投薬
@β2刺激薬(SABA)吸入
メプチン1A+生理食塩水10mLをネブライザーで吸入 1日3〜4回
Aステロイド点滴静注
ソルメドロール

B低酸素であれば、(血ガスで二酸化炭素貯留の有無を確認し)酸素投与
COPD症例では増悪時にCO2ナルコーシスをきたす危険性があり、二酸化炭素貯留の有無を必ず確認しておくべきです。二酸化炭素貯留がありアシデミアになっていればNPPVを導入します。
C抗菌薬
スルバクタム・アンピシリン
セフトリアキソンなどが使われます。
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posted by 長尾大志 at 17:54
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2019年03月22日
気管支喘息/COPD急性期の対応3
既に喘息と診断がついている症例でも、ほぼ同じ治療になりますが、A点滴静注のタイミングで、ステロイドに加えてネオフィリンを投与することがあります。私世代の先生方までは馴染みがあるのではないでしょうか。
A’ アミノフィリン点滴静注
ネオフィリン
125mg〜250mg+ソリタT3号200mL/5%ブドウ糖液250mLを点滴投与
メタ解析などでは有効性がなかった、と分が悪いのですが、効果の立ち上がりが遅いステロイドに併用することで、患者さんの症状改善が早い…と症例報告/経験的にいわれています。
ただし、ネオフィリンは体内でテオフィリンに変化するため、テオフィリン経口薬を常用している症例では血中濃度が上がりすぎて中毒症状(動悸や頻脈、悪心・嘔吐など)が生じる恐れがあるため、経口薬を常用しているかどうかで話がだいぶ違います。
具体的にはアミノフィリン250mgを1時間で点滴静注投与すると、血中濃度が約8μg/mL上昇するとされています。テオフィリン徐放製剤を1日400mg内服している場合、血中濃度は10μg/mL程度になっているといわれていますので、そこにアミノフィリン250mgをどどっと点滴すると、中毒域の15μg/mLを越してしまうので具合が悪い、ということになります。
そこでテオフィリン内服中の症例では、125mgをもう少しゆっくり投与する、など工夫されていましたが、そういうことを考えるのが面倒だ、とばかりに最近はすっかり廃れている印象ですね。なおテオフィリンを内服していない症例では、250mg程度のアミノフィリンを使用することは問題ないのではないかと考えられています。
D最重症例には0.1%アドレナリン(ボスミン
)0.3mg皮下注
■アスピリン喘息、NSAIDs過敏喘息、AERD(aspirin-excerbated respiratory disease)とは?
シクロオキシゲナーゼ1(COX1)阻害作用を持つNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の投与で、鼻閉・鼻汁・喘息発作などの気道症状が出る、非アレルギー性の過敏症(不耐症)です。
名前に「アスピリン」と入っていますが、決して「アスピリンだけに対してのアレルギー」ではありません。日常的に、アスピリンに限らず、NSAIDsの内服、座薬、貼付薬、塗布薬などすべての使用を避ける必要がありますので、最近ではアスピリン喘息という名前を使われなくなってきています。
特に気をつけたいのが発作時のステロイド投与で、コハク酸エステル型ステロイド製剤を急速静注すると発作が悪化しときに致死的な増悪を来すことがありますので注意が必要です。
その場合、内服ステロイドか、リン酸エステル型ステロイド製剤の点滴静注で対応します。
安全に施行できるとされる投与例:
リンデロン
4mg+生食100mLを点滴静注
それでももし過敏症状が出てしまったら・・・!?
迷わず0.1%アドレナリン(ボスミン
)0.3mg皮下注投与を行います。
呼吸器研修ノート
A’ アミノフィリン点滴静注
ネオフィリン

メタ解析などでは有効性がなかった、と分が悪いのですが、効果の立ち上がりが遅いステロイドに併用することで、患者さんの症状改善が早い…と症例報告/経験的にいわれています。
ただし、ネオフィリンは体内でテオフィリンに変化するため、テオフィリン経口薬を常用している症例では血中濃度が上がりすぎて中毒症状(動悸や頻脈、悪心・嘔吐など)が生じる恐れがあるため、経口薬を常用しているかどうかで話がだいぶ違います。
具体的にはアミノフィリン250mgを1時間で点滴静注投与すると、血中濃度が約8μg/mL上昇するとされています。テオフィリン徐放製剤を1日400mg内服している場合、血中濃度は10μg/mL程度になっているといわれていますので、そこにアミノフィリン250mgをどどっと点滴すると、中毒域の15μg/mLを越してしまうので具合が悪い、ということになります。
そこでテオフィリン内服中の症例では、125mgをもう少しゆっくり投与する、など工夫されていましたが、そういうことを考えるのが面倒だ、とばかりに最近はすっかり廃れている印象ですね。なおテオフィリンを内服していない症例では、250mg程度のアミノフィリンを使用することは問題ないのではないかと考えられています。
D最重症例には0.1%アドレナリン(ボスミン

■アスピリン喘息、NSAIDs過敏喘息、AERD(aspirin-excerbated respiratory disease)とは?
シクロオキシゲナーゼ1(COX1)阻害作用を持つNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の投与で、鼻閉・鼻汁・喘息発作などの気道症状が出る、非アレルギー性の過敏症(不耐症)です。
名前に「アスピリン」と入っていますが、決して「アスピリンだけに対してのアレルギー」ではありません。日常的に、アスピリンに限らず、NSAIDsの内服、座薬、貼付薬、塗布薬などすべての使用を避ける必要がありますので、最近ではアスピリン喘息という名前を使われなくなってきています。
特に気をつけたいのが発作時のステロイド投与で、コハク酸エステル型ステロイド製剤を急速静注すると発作が悪化しときに致死的な増悪を来すことがありますので注意が必要です。
その場合、内服ステロイドか、リン酸エステル型ステロイド製剤の点滴静注で対応します。
安全に施行できるとされる投与例:
リンデロン

それでももし過敏症状が出てしまったら・・・!?
迷わず0.1%アドレナリン(ボスミン

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posted by 長尾大志 at 17:18
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2019年03月20日
気管支喘息/COPD急性期の対応2
喘息とCOPDは合併例も多く、しばしば除外鑑別が困難です。また、喘息の発作(急性期)とCOPDの増悪期は、治療法がよく似ています。初診の患者さんで喘息かCOPDか判然としない、という場合に、無理に診断を決めてしまう必要がない、というのもまた一つの見解であります。
これまでに喘息、あるいはCOPDという確定診断がなされていない「喘鳴と呼吸困難を訴えた症例」では、まず少なくとも身体所見や胸部X線写真から、上気道疾患、心不全や他の呼吸器疾患を除外します。それができたら喘息発作および/またはCOPD増悪と考えて、以下のような治療を開始します。
@β2刺激薬(SABA)吸入
メプチン1A+生理食塩水10mLをネブライザーで吸入
Aステロイド点滴静注
ソルメドロール
40〜125mg+生食50〜100mLを点滴投与
B低酸素であれば、(血ガスで二酸化炭素貯留の有無を確認し)酸素投与
二酸化炭素貯留があればNPPV
C発熱、膿性痰など、感染を疑う要素があれば抗菌薬投与
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これまでに喘息、あるいはCOPDという確定診断がなされていない「喘鳴と呼吸困難を訴えた症例」では、まず少なくとも身体所見や胸部X線写真から、上気道疾患、心不全や他の呼吸器疾患を除外します。それができたら喘息発作および/またはCOPD増悪と考えて、以下のような治療を開始します。
@β2刺激薬(SABA)吸入
メプチン1A+生理食塩水10mLをネブライザーで吸入
Aステロイド点滴静注
ソルメドロール

B低酸素であれば、(血ガスで二酸化炭素貯留の有無を確認し)酸素投与
二酸化炭素貯留があればNPPV
C発熱、膿性痰など、感染を疑う要素があれば抗菌薬投与
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2019年03月19日
気管支喘息/COPD急性期の対応1
救急の現場で、喘鳴や呼吸困難のある症例を診ることはしばしばあると思います。喘鳴や呼吸困難があって救急受診するような疾患、鑑別診断はまず喘息が頭に浮かぶかもしれませんが、緊急事態という意味では上気道の疾患を鑑別に入れておく必要があるでしょう。
有名なのは急性喉頭蓋炎、それからしばしばあるのがアナフィラキシーです。急性喉頭蓋炎は咽頭痛(喉の痛み)という特徴的な訴えがあるので、想起することは可能かと思われます。アナフィラキシーはやはりきっかけが大事ですし、加えて蕁麻疹などの皮膚症状それから ショックなどの徴候が見られるでしょう。
上気道を除外しても、特に高齢者の場合、COPDと心不全の可能性を常に考えておく必要があります。
またそれら以外にも喘鳴をきたす疾患はたくさんあり、除外が必要ですが多くのものは胸部 X 線写真を撮影することで除外診断が可能です。
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有名なのは急性喉頭蓋炎、それからしばしばあるのがアナフィラキシーです。急性喉頭蓋炎は咽頭痛(喉の痛み)という特徴的な訴えがあるので、想起することは可能かと思われます。アナフィラキシーはやはりきっかけが大事ですし、加えて蕁麻疹などの皮膚症状それから ショックなどの徴候が見られるでしょう。
上気道を除外しても、特に高齢者の場合、COPDと心不全の可能性を常に考えておく必要があります。
またそれら以外にも喘鳴をきたす疾患はたくさんあり、除外が必要ですが多くのものは胸部 X 線写真を撮影することで除外診断が可能です。
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posted by 長尾大志 at 17:25
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2019年02月27日
市中肺炎の初期診断と評価2
市中肺炎と診断したら、治療の場(外来・入院・ICUまたはそれに準じる病室)を決定します。
まず全身管理が必要な、敗血症の状態かどうかを始めに評価します。これには簡便に評価可能なqSOFAスコアを用いて2点以上であれば敗血症を疑い、さらにSOFAスコアでベースラインから2点以上増加していれば敗血症と診断します。
敗血症であればICU、又はこれに準ずる全身管理可能な病室で入院管理となります。敗血症がないと考えられる場合、A-DROP(日本呼吸器学会による)やCURB-65(英国ガイドラインによる)などのシステムを用いて重症度評価をします。
A-DROPでの5項目を何も満たさないものは軽症、5項目のうち1つまたは2つを有するものを中等症、そして5項目のうち3つを有するものを重症、4つ以上を有するものを超重症とします。ただしショック状態であれば、4項目満たさなくても超重症とします。
A-DROPで軽症の場合外来治療を行い、中等症の場合は外来でも治療可能ですが状況によって入院を考慮します。重症であれば入院加療が必要ですし、超重症となりますと敗血症同様、ICUまたはそれに準じる全身管理可能な病室での管理ということになります。
治療の場が決定したら、非定型肺炎か細菌性肺炎かの目星をつけます。
6項目のうち、4項目以上合致すれば非定型肺炎、特にマイコプラズマ肺炎が考えられます。3項目以下の合致であれば細菌性肺炎を疑うものとします。この項目を用いた臨床診断によって、エンピリック治療が可能となるのです。
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まず全身管理が必要な、敗血症の状態かどうかを始めに評価します。これには簡便に評価可能なqSOFAスコアを用いて2点以上であれば敗血症を疑い、さらにSOFAスコアでベースラインから2点以上増加していれば敗血症と診断します。
敗血症であればICU、又はこれに準ずる全身管理可能な病室で入院管理となります。敗血症がないと考えられる場合、A-DROP(日本呼吸器学会による)やCURB-65(英国ガイドラインによる)などのシステムを用いて重症度評価をします。
A-DROPでの5項目を何も満たさないものは軽症、5項目のうち1つまたは2つを有するものを中等症、そして5項目のうち3つを有するものを重症、4つ以上を有するものを超重症とします。ただしショック状態であれば、4項目満たさなくても超重症とします。
A-DROPで軽症の場合外来治療を行い、中等症の場合は外来でも治療可能ですが状況によって入院を考慮します。重症であれば入院加療が必要ですし、超重症となりますと敗血症同様、ICUまたはそれに準じる全身管理可能な病室での管理ということになります。
治療の場が決定したら、非定型肺炎か細菌性肺炎かの目星をつけます。
6項目のうち、4項目以上合致すれば非定型肺炎、特にマイコプラズマ肺炎が考えられます。3項目以下の合致であれば細菌性肺炎を疑うものとします。この項目を用いた臨床診断によって、エンピリック治療が可能となるのです。
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posted by 長尾大志 at 19:06
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2019年02月25日
市中肺炎の初期診断と評価1
肺炎とは肺実質に生じた炎症のことですが、市中肺炎という場合、通常は感染によって起こった炎症を指します。
症状としては、咳嗽・喀痰・呼吸困難・胸痛といった呼吸器/肺にまつわる症状と、発熱・倦怠感・意識障害・食事不振といった全身症状が認められます。通常急性に発症し、数日間の経過で悪化して受診に至ることが多いです。
診察上、発熱・頻脈・頻呼吸があり、胸部聴診ではcoarse cracklesを聴取します。重症例では意識障害や血圧低下ショックをきたすこともあります。
血液検査では白血球増多(左方移動を伴う)やCRPなど炎症反応の上昇が見られ、胸部X線写真でコンソリデーションや斑状の高吸収域を認めます。
通常これらの典型的な症状・所見があれば肺炎の診断に至りますが、診断に苦慮する場合、喀痰が採れればグラム染色で好中球や菌体を確認することも有効です。
市中肺炎(CAP)とは市中にいる健康な人、すなわち病院や医療介護関連施設に縁のない人に発症した肺炎のことです。
それに対して院内肺炎(HAP)というのは、病院に入院中に発症した肺炎です。入院中ということは何らかの基礎疾患を有しているわけで、加えて院内には耐性菌がうじゃうじゃいますので耐性菌が原因菌となるリスクが高いことになります。
そして医療介護関連肺炎(NHCAP)ですけれども、以前HAPとNHCAPをわざわざ分けたのですが、やはりそれほど分ける意味がなかったということで、日本の最新ガイドライン(成人肺炎診療ガイドライン2017)では院内肺炎とあわせてHAP/NHCAPというような扱いとなっています。
一応NHCAPの定義を挙げておきます。
長期療養型病床群もしくは介護施設に入所している
90日以内に病院を退院した
介護を必要とする*高齢者・身障者
通院にて継続的に血管内治療**を受けている
*Performance Status 3以上
**透析・抗菌薬・抗癌化学療法・免疫抑制薬などによる治療
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症状としては、咳嗽・喀痰・呼吸困難・胸痛といった呼吸器/肺にまつわる症状と、発熱・倦怠感・意識障害・食事不振といった全身症状が認められます。通常急性に発症し、数日間の経過で悪化して受診に至ることが多いです。
診察上、発熱・頻脈・頻呼吸があり、胸部聴診ではcoarse cracklesを聴取します。重症例では意識障害や血圧低下ショックをきたすこともあります。
血液検査では白血球増多(左方移動を伴う)やCRPなど炎症反応の上昇が見られ、胸部X線写真でコンソリデーションや斑状の高吸収域を認めます。
通常これらの典型的な症状・所見があれば肺炎の診断に至りますが、診断に苦慮する場合、喀痰が採れればグラム染色で好中球や菌体を確認することも有効です。
市中肺炎(CAP)とは市中にいる健康な人、すなわち病院や医療介護関連施設に縁のない人に発症した肺炎のことです。
それに対して院内肺炎(HAP)というのは、病院に入院中に発症した肺炎です。入院中ということは何らかの基礎疾患を有しているわけで、加えて院内には耐性菌がうじゃうじゃいますので耐性菌が原因菌となるリスクが高いことになります。
そして医療介護関連肺炎(NHCAP)ですけれども、以前HAPとNHCAPをわざわざ分けたのですが、やはりそれほど分ける意味がなかったということで、日本の最新ガイドライン(成人肺炎診療ガイドライン2017)では院内肺炎とあわせてHAP/NHCAPというような扱いとなっています。
一応NHCAPの定義を挙げておきます。
長期療養型病床群もしくは介護施設に入所している
90日以内に病院を退院した
介護を必要とする*高齢者・身障者
通院にて継続的に血管内治療**を受けている
*Performance Status 3以上
**透析・抗菌薬・抗癌化学療法・免疫抑制薬などによる治療
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2019年02月24日
2019年3月以降の予定(講演など)
3月以降の予定、ちょびっと増えて参りましたので、また並べてみることにします。
3月2日(土) 16時〜17時 山形県医師会 「ドクターX線〜私、読影失敗しないので〜」@大手門パルズ
5月12日(日) 8:20〜9:50 適々斎塾・研修医ことはじめセミナー 「胸部X線写真の読み方(仮)」
5月17日(金)〜日本プライマリ・ケア連合学会学術大会 ようこそ私たちの診察室へAレントゲン写真のない呼吸器科診察室
6月1日(土) 9:30〜16:30 メディカ出版セミナー 「急性期・術後の呼吸器ケア」@大阪・クリスタルタワー
https://www.medica.co.jp/seminar/detail/131
6月14日(金) 音羽病院呼吸器勉強会「京都RIMカンファレンス」あの京都GIMカンファレンスの聖地、音羽病院で、Respiratory Internal Medicineをテーマとするカンファレンスを企画いたします。
6月15日(土) 関西膠原病研究会にて、胸部X線漬けの勉強会やらせて頂きます。
6月22日(土) 9:30〜16:30 メディカ出版セミナー 「急性期・術後の呼吸器ケア」@東京・建築会館
https://www.medica.co.jp/seminar/detail/131
7月12日(金) 某大学にて出張講義 大学名を告知していいのか確認していませんので一応伏せておきます。
10月27日(日) 京都府理学療法士会生涯学習部
11月11日(月)〜日本呼吸ケア・リハビリテーション学会にて教育講演
11月24日(日) 13時〜 日本医療教育プログラム推進機構(JAMEP)スキルアップセミナー「やさしイイ呼吸器」
先の予定は詳細が未定の部分も多いのですが、ご参加ご希望の皆様、講演ご依頼のご参考になれば幸いです。
3月2日(土) 16時〜17時 山形県医師会 「ドクターX線〜私、読影失敗しないので〜」@大手門パルズ
5月12日(日) 8:20〜9:50 適々斎塾・研修医ことはじめセミナー 「胸部X線写真の読み方(仮)」
5月17日(金)〜日本プライマリ・ケア連合学会学術大会 ようこそ私たちの診察室へAレントゲン写真のない呼吸器科診察室
6月1日(土) 9:30〜16:30 メディカ出版セミナー 「急性期・術後の呼吸器ケア」@大阪・クリスタルタワー
https://www.medica.co.jp/seminar/detail/131
6月14日(金) 音羽病院呼吸器勉強会「京都RIMカンファレンス」あの京都GIMカンファレンスの聖地、音羽病院で、Respiratory Internal Medicineをテーマとするカンファレンスを企画いたします。
6月15日(土) 関西膠原病研究会にて、胸部X線漬けの勉強会やらせて頂きます。
6月22日(土) 9:30〜16:30 メディカ出版セミナー 「急性期・術後の呼吸器ケア」@東京・建築会館
https://www.medica.co.jp/seminar/detail/131
7月12日(金) 某大学にて出張講義 大学名を告知していいのか確認していませんので一応伏せておきます。
10月27日(日) 京都府理学療法士会生涯学習部
11月11日(月)〜日本呼吸ケア・リハビリテーション学会にて教育講演
11月24日(日) 13時〜 日本医療教育プログラム推進機構(JAMEP)スキルアップセミナー「やさしイイ呼吸器」
先の予定は詳細が未定の部分も多いのですが、ご参加ご希望の皆様、講演ご依頼のご参考になれば幸いです。
posted by 長尾大志 at 21:05
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2019年02月22日
FD 研修会で『学修の評価』
少し前から、色々な研究会勉強会に参加する機会が多く、色々な講演を拝聴するのですが、なかなか自分の中で消化しきれずスルーしてしまいそうになるので、ちょっと振り返っておきたいと思います。
少し前ですが、学内のFD研修会で、京都大学医学教育・国際化推進センターの小西靖彦先生によります『学修の評価』というタイトルの講演を賜りました。
講演の内容と、拝聴しながら考えたことが少しごっちゃになりますけれども、備忘のために記しておきたいと思います。
最近とかく学生の臨床実習でも研修医でも、『評価』ということがかなり重視されてきており、どのご施設の先生方も大変に事務作業が増え、ご苦労されているのではないかと思います。
評価はなぜ、何のためにやるのか。この目的は「フィードバック」であり、形成的評価、すなわち個人の成長のために用いるということです。誰が評価するのか。これは基本、指導医なのですが、最近では360度評価として、同僚やコメディカルスタッフ、それに患者さんやそのご家族などなど、多くの人々に評価していただく、フィードバックをいただく、ということが重要だと言われています。もちろん理想的にはそうですが、一様にその労をお執り頂く、というのは困難が予想されます。
何を評価するのか。アウトカムであります。アウトカムは各施設で作っていて、まぁ大体同じような「ちゃんとしたお医者さん像」になっているわけですが、アウトカムを作ったからには、それに沿うような結果になっているのかどうかを評価する必要があるということです。
海外の多くの国において、そのようなアウトカム・ゴール・目標が定められていて、そこから逆算して研修なり実習が組まれているというところです。アウトカムをもう少し具体的にし、細かく項目に分けたものをコンピテンシーといって、医師の(評価できる・観察できる)能力のことを表し、それが段階的に達成されていくのを評価者が観察して評価する。それが卒前から卒後にかけてシームレスに段々と達成されていく様子をフィードバックしていく、というのがアウトカム基盤型教育のカタチだと思うのですが、まあ、絵に描いた餅と申しますか、なかなか難しいところがあるかと思います。
アウトカム基盤型教育の目的というのはいくつかあるのですが、学生や研修医に正しい方向性を示すということ、それから重要なトピックを確実に評価するというところ、そしてカリキュラムの欠陥を見つけること、というようなこともあげられています。
到達状況のモニタリングには、プログラム化された評価、つまり誰が評価しても同じような結果になるようなものが近年の考え方で、十分Nを増やす(多面的に山ほど評価する)ことによって、総合的にその医師の能力を評価する、という方向になっています。なので山ほど評価する項目があって、山ほど作業があるわけです。
異なった複数の評価者による評価が10回以上あると、信頼性が80%以上となると言われています。そういう評価を細かくたくさんつけていこうとすると、例えば学生の間のカリキュラムであれば山ほど試験問題を作成する必要があるということになります。臨床実習においてもOSCEにおいても、山ほど問題があって山ほど評価する方が妥当な評価が出てくる。まああそりゃそうですね。
それで果たして労力に見合う「アウトカム(=「いい」医師)が得られるのか。ポートフォリオ(そういう評価を記録し残すもの)についても、きちんとやればおそらく学びは多く、学習者に対するフィードバックは甚大であるのではないかと思いますが、評価者の負担もこれまた甚大であるように思われます。評価することに関するモチベーションがどれだけ保たれるのでしょうか。
コアカリキュラムが改訂され卒前の臨床実習で経験すべき症候病態がものすごく増えました。これを果たしてウチで出来るのかどうか甚だ疑問であります。
他にも知らないことが盛りだくさんの内容をお話し頂き、大いに参考にすべきかと思いましたが、色々と疑問点もわいてきました。
最後に質問をさせていただいたのですが、そもそも指導医の質の担保が可能なのかということです。これに関しては N を増やすことで対処可能と考えておられるということでした。
もう少しそもそも論の話をしますと、指導医自体がその医師としてのあるべき姿に達していない場合、その施設での医学教育というのが端から矛盾してしまうというか、破綻してしまうというか、そういったことにならないかなという疑問がありました。
あと、この評価のために指導医の手間暇、作業がかなり増えることになりますが、それだけの手間をかけてアウトカムが良くなるというエビデンスがあるのか、今後それを検証される予定があるのか、そこが一番知りたかったところでありますが、直接ご質問するのはなんとなく憚られました…。
少し前ですが、学内のFD研修会で、京都大学医学教育・国際化推進センターの小西靖彦先生によります『学修の評価』というタイトルの講演を賜りました。
講演の内容と、拝聴しながら考えたことが少しごっちゃになりますけれども、備忘のために記しておきたいと思います。
最近とかく学生の臨床実習でも研修医でも、『評価』ということがかなり重視されてきており、どのご施設の先生方も大変に事務作業が増え、ご苦労されているのではないかと思います。
評価はなぜ、何のためにやるのか。この目的は「フィードバック」であり、形成的評価、すなわち個人の成長のために用いるということです。誰が評価するのか。これは基本、指導医なのですが、最近では360度評価として、同僚やコメディカルスタッフ、それに患者さんやそのご家族などなど、多くの人々に評価していただく、フィードバックをいただく、ということが重要だと言われています。もちろん理想的にはそうですが、一様にその労をお執り頂く、というのは困難が予想されます。
何を評価するのか。アウトカムであります。アウトカムは各施設で作っていて、まぁ大体同じような「ちゃんとしたお医者さん像」になっているわけですが、アウトカムを作ったからには、それに沿うような結果になっているのかどうかを評価する必要があるということです。
海外の多くの国において、そのようなアウトカム・ゴール・目標が定められていて、そこから逆算して研修なり実習が組まれているというところです。アウトカムをもう少し具体的にし、細かく項目に分けたものをコンピテンシーといって、医師の(評価できる・観察できる)能力のことを表し、それが段階的に達成されていくのを評価者が観察して評価する。それが卒前から卒後にかけてシームレスに段々と達成されていく様子をフィードバックしていく、というのがアウトカム基盤型教育のカタチだと思うのですが、まあ、絵に描いた餅と申しますか、なかなか難しいところがあるかと思います。
アウトカム基盤型教育の目的というのはいくつかあるのですが、学生や研修医に正しい方向性を示すということ、それから重要なトピックを確実に評価するというところ、そしてカリキュラムの欠陥を見つけること、というようなこともあげられています。
到達状況のモニタリングには、プログラム化された評価、つまり誰が評価しても同じような結果になるようなものが近年の考え方で、十分Nを増やす(多面的に山ほど評価する)ことによって、総合的にその医師の能力を評価する、という方向になっています。なので山ほど評価する項目があって、山ほど作業があるわけです。
異なった複数の評価者による評価が10回以上あると、信頼性が80%以上となると言われています。そういう評価を細かくたくさんつけていこうとすると、例えば学生の間のカリキュラムであれば山ほど試験問題を作成する必要があるということになります。臨床実習においてもOSCEにおいても、山ほど問題があって山ほど評価する方が妥当な評価が出てくる。まああそりゃそうですね。
それで果たして労力に見合う「アウトカム(=「いい」医師)が得られるのか。ポートフォリオ(そういう評価を記録し残すもの)についても、きちんとやればおそらく学びは多く、学習者に対するフィードバックは甚大であるのではないかと思いますが、評価者の負担もこれまた甚大であるように思われます。評価することに関するモチベーションがどれだけ保たれるのでしょうか。
コアカリキュラムが改訂され卒前の臨床実習で経験すべき症候病態がものすごく増えました。これを果たしてウチで出来るのかどうか甚だ疑問であります。
他にも知らないことが盛りだくさんの内容をお話し頂き、大いに参考にすべきかと思いましたが、色々と疑問点もわいてきました。
最後に質問をさせていただいたのですが、そもそも指導医の質の担保が可能なのかということです。これに関しては N を増やすことで対処可能と考えておられるということでした。
もう少しそもそも論の話をしますと、指導医自体がその医師としてのあるべき姿に達していない場合、その施設での医学教育というのが端から矛盾してしまうというか、破綻してしまうというか、そういったことにならないかなという疑問がありました。
あと、この評価のために指導医の手間暇、作業がかなり増えることになりますが、それだけの手間をかけてアウトカムが良くなるというエビデンスがあるのか、今後それを検証される予定があるのか、そこが一番知りたかったところでありますが、直接ご質問するのはなんとなく憚られました…。
posted by 長尾大志 at 18:30
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