1.「キャリアブラン」とか「キャリアプランニング」とか
「キャリアブラン」とか「キャリアプランニング」という言葉がありますけれども、仕事をまだ始めてもいない段階で立てるプランの問題点は、所詮その時点で見えている<視点・視座・視野>の範囲でのプランでしかないところです。将来の自分の(無限の)可能性を今の自分の狭い<視点・視座・視野>で見える範囲に限定してしまって、もっと先に広がる可能性を潰してしまっていることになります。
例えば研修中、「こんな雑用やりたくない」「自分はこんなことをやりに来ているのではない」「もっとやりがいのある仕事をやるべきだ」みたいなことを語っている人がいたりしますが、その心は「自分の思うキャリアに必要な、やりがいのあること」以外のことを雑用と切って捨て、できる限り「無駄な作業」抜きで、最短で、一人前になりたい、というようなことだと思われます。昨今はコスパだタイパだと、無駄を省く最短ルートがいいような風潮で、それはそれで効率重視、結構なことですが、そうではないやり方のほうがおススメです、ということが本書には書かれています。
特に医師の仕事って、人とのかかわりの多い仕事ですよね。「こんなことは看護師の仕事だ」「事務員の仕事だ」というセリフも耳にするのですが、看護師さんの仕事がどのようなもので、実際やるにあたってどのようなことに気を付けなくてはならないか、そして医師からどのようにオーダーがあれば仕事がやりやすいか、というようなことは、やってみなければわからなかったりします。他の職種しかり。そういうことに気を配れる医師が結局は「できる医師」として評価されることになるのです。また一見遠回りでも、手間暇かけて学んだことは確実に本人の中に残り、それが次の成長の糧になります。常に無駄なことはしない、雑用にはかかわらないという態度の人は周りにもそう見えますし、その人の力の底がものすごく浅いということが容易に見て取れるものです。一度徹底的に学んで極めたことは自分の血肉になり、その後その分野に関しては2度と学ばなくても良くなり、長い目で見ると実はその方が効率的であったりします。
それ以外のポイントとして、キャリアの転換点って、往々にして非連続的に起こるものですね。それまでやっていたことの連続線上には、それまでやっていたことしか起こらない。チャンスは思いがけないどころから、人とのつながりによってやってきます。でも、それまでにやるべきことをしっかりやっていた人のところにしかチャンスは転がり込んでこない。何もせずしてチャンスだけを待っていても、チャンスはやってこない。そしてまた、チャンスは前髪しかない、とも言われていて、チャンスが来たらすぐさま、「ハイかyesか喜んで!」掴みに行く、すなわちチャンスを掴むには、普段から人並外れて頑張っておき、声をかけられたり誘われたりしたらすぐに行く、という態度が大切とされています。
自分の将来に関係ないと思うようなことを雑にやってしまうと、将来の可能性を潰してしまいます。これは大変もったいないことで、特に無限の可能性がある初期研修の間は、自分に与えられる全てのお仕事を丁寧にこなしていく姿勢が大切ではないかと思います。
さらに、普段の仕事をする上で求められていることよりも一歩先にいる、深く踏み込むということを意識していると、その分野に興味関心が湧いてきます。色々なジャンルの仕事においてそういう態度でやっていると、自分にあっている、大変興味がある、ずっとやっていても苦ではないという分野が見つかったりするものです。自分の元々思っていた興味の範囲外の仕事を振られた時が、キャリアチェンジの大きなチャンスであるとも言えるのです。
また、常に求められた以上の結果を出していると、それだけチャンスが降ってきやすくなるとも言えます。上の方だって、「よくやってくれそう」「うまくやってくれそう」な人にチャンスを渡したい。普段見ていていやいや仕事をしていたり、すぐに「これは自分の仕事じゃない」と言ったりするような人にはあまり仕事を頼みたくなくなるものです。
2.楽な仕事と楽しい仕事は別物
仕事が楽しくなるためには、ある程度以上の負荷をかけて自分の技能を向上させる必要があります。 うまくできる仕事はやっていて楽しく、どんどん楽しくてどんどん仕事を進めることでさらに楽しくなっていきます。その過程は決して「楽」なわけではなくて、かなり大変な代償がつきものです。逆に楽な仕事ばかりやっていても、仕事はいつまでたっても楽しくならないともいえるのです。
好きを仕事にするということについても、そもそも仕事になるようなことで好きなことなんてないというのがデフォルトであって、そのようなところで好きなことを探すよりも、得意なこと、求められていることがあるんだったら、それをもっと磨いていって、それを好きになる方が早いのではないか、実際にもともと「好き」と「得意」が重なっているような幸運な人はごくわずかであるといわれています。
まずは目の前のこと、やってほしいといわれること、求められていることにまず集中することで好きなことが見つかる。いろいろやってどんどん得意を伸ばしていくと、それが好きになるということにつながります。好きになって没頭・没入できる対象が見つかると、四六時中そのことばかり考えることになります。そんなことをしていたらいやでも上達し解像度が高まり、周りから一目置かれる存在になることでしょう。体力・気力が充実している若いうちに、できる限り色々な体験をする、いろいろな仕事をさせてもらうことでいわゆる「天職(=没頭・没入できる対象)」に巡り合う確率は高まります。
そういう意味でも<視点・視座・視野>が出来上がっていない段階で仕事の選り好みをするというのは好ましくなく、若いうちは与えられたあらゆる仕事を「ハイかyesか喜んで」受けるという姿勢が大事じゃないかなと思うんですね。ことに医療の業界においてはあらゆる経験が個人の価値を形作りますから、そういうことをしっかり意識されると将来に繋がるんじゃないかなーと思います。
3.作業を楽しいものにするには
今やっている「押し付けられた(かもしれない)」作業を楽しいものにするもう1つのコツは、今やっている作業に価値を与えるということで、つまりミッションを自分の中に作ることになります。
今やっていることにどのような価値があるか、世の中をどのように変えていくか、他人にどのような幸せを与えるのか、実は医療の世界って、それが実感しやすいという非常にハッピーな領域でもあるわけです。ですから医学部に入ってしまったけれども、どうしていいかわからんと思っている人には、「ひとまず一人前の医師や看護師になりましょう」と。そうすると普通に仕事をしていても、人助けをすることになり自分の仕事にミッションは与えられるのです、というようなお話をしています。
とはいっても若いうちから最終ミッションを決めてしまう必要はなく、自分の<視点・視座・視野>が広がり、上がっていくと自ずとミッションが変わってくることが往々にして経験されます(私自身もミッションがどんどん変わりました)。それが当たり前ですので、若いうちからそういうことを決めつけてしまわない方がいいと思います。
以上、特に私の思いを言語化していただいているところに沿って紹介させていただきましたが、『楽しくなければ仕事じゃない』本当におススメです!若い皆さんに是非読んでいただきたいと思います!!

