2013年04月04日

難病患者さんの肺炎に対する抗菌薬治療9・肺炎の具体的治療の流れ6・推定原因菌にあった抗菌薬を投与4・入院治療、その中でも集中治療を要するグループに対する抗菌薬選択

集中治療を要するような、生死に関わるような場面では、抗菌薬を出し惜しみするとか言ってられません。考えられる原因菌に対して絨毯爆撃を行います。


具体的なターゲットは肺炎球菌・インフルエンザ菌・MSSA・クレブシエラ・クラミドフィラ・ウイルスに加え、耐性菌として緑膿菌・アシネトバクター・ESBL(基質特異性拡張型βラクタマーゼ)産生腸内細菌・MRSA・ステノトロフォモナスなどが想定されています。


抗生剤の選択では、中等症群のペニシリン、セフェム、またはカルバペネムのいずれかに加えて、非定型病原体も確実にカバーするためにキノロン、マクロライドを併用する、という使い方になります。


  • ペニシリン系:タゾバクタム/ピペラシリン注射薬

  • セフェム系:セフェピム注射薬+クリンダマイシンまたはメトロニダゾール注射薬

  • カルバペネム系注射薬


のいずれかに、

  • パズフロキサシン、シプロフロキサシン注射薬

  • アジスロマイシン注射薬



を加える、


という感じです。もちろん、MRSAのリスクがある場合には、抗MRSA薬も併用することとなっています。


以上、簡単ではありますが、難病患者さんが肺炎にかかられたときの抗菌薬治療について、エッセンスをまとめました。お読みの皆さんの参考になれば幸いです。


* 難病と在宅ケア(7月号)に改変の上掲載予定

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2013年04月03日

難病患者さんの肺炎に対する抗菌薬治療8・肺炎の具体的治療の流れ5・推定原因菌にあった抗菌薬を投与3・入院治療を要するグループの中でも耐性菌のリスクがあると考えられる患者に対する抗菌薬選択

このカテゴリーに含まれる患者さんの肺炎、具体的なターゲットは肺炎球菌・インフルエンザ菌・MSSA・クレブシエラ・クラミドフィラ・ウイルスに加え、耐性菌として緑膿菌・アシネトバクター・ESBL(基質特異性拡張型βラクタマーゼ)産生腸内細菌・MRSA・ステノトロフォモナスなどが想定されています。


抗菌薬の選択では、副作用が少なく広域スペクトラム、というか、抗緑膿菌活性がしっかりあるものが推奨されます。当然、ここは注射薬をチョイスします。


  • ペニシリン系:タゾバクタム/ピペラシリン注射薬

  • セフェム系:セフェピム注射薬+クリンダマイシンまたはメトロニダゾール注射薬

  • カルバペネム系注射薬

  • キノロン系注射薬+スルバクタム/アンピシリン注射薬



併用療法の説明として、セフェム系とキノロン系は、嫌気性菌に弱いため、それをカバーするために嫌気性菌に強いクリンダマイシン、メトロニダゾール、スルバクタム/アンピシリン注射薬を併用するということが特記されています。


また、MRSAのリスクがある、つまり、過去にMRSAが分離されている場合には、抗MRSA薬のうちいずれか1種類を併用すること、となっています。


ちょっと気づいた追加事項、後ほどfacewbookにてご紹介します。


* 難病と在宅ケア(7月号)に改変の上掲載予定

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2013年04月02日

難病患者さんの肺炎に対する抗菌薬治療7・肺炎の具体的治療の流れ4・推定原因菌にあった抗菌薬を投与2・入院を要する中等症の患者(耐性リスクなし)に対する抗菌薬選択

この場合の具体的なターゲットは軽症群と同様、肺炎球菌・インフルエンザ菌・MSSA・クレブシエラ・クラミドフィラ・ウイルスを想定します。


ただ、入院で治療する場合は患者さんの状態の変化をすぐに察知することができるため、治療開始時から非定型菌をカバーするということはせず、軽症群よりむしろ細菌にターゲットを絞った選択になっています。また、当然、注射薬が主体です。選択薬は…


  • スルバクタム/アンピシリン注射薬

  • セフトリアキソン注射薬

  • パニペネム/ベタミプロン注射薬

  • レボフロキサシン注射薬



となっています。先に書きましたように、ここでキノロンを使ってしまうのは惜しいので、ガイドラインには上の通り書いてありますけど、出し惜しみをしておきたいところですね。


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2013年04月01日

難病患者さんの肺炎に対する抗菌薬治療6・肺炎の具体的治療の流れ3・推定原因菌にあった抗菌薬を投与1・軽症患者の抗菌薬選択

ここまで知って頂いた上で、まず外来治療で良い、比較的軽症な患者さんの治療を考えましょう。この場合、原因菌は耐性菌のリスクも少ないであろうとして取り扱います。


具体的なターゲットは肺炎球菌・インフルエンザ菌・MSSA・クレブシエラ・クラミドフィラ・ウイルスなどを想定します。抗菌薬の選択は、比較的狭域スペクトラムで、耐性菌リスクの少ないものを選びます。外来治療になると必ずしも毎日医師の診察を受けられないこともありますので、非定型菌もカバーしておきます。


そして外来治療なので、基本経口薬を選びますが、ここで便利なのはセフトリアキソン(セフェム系注射薬)。注射薬なのですが1日1回の注射できっちり効果を現しますので、外来治療に適しているのですね。


逆に言うと、これ以外の注射薬を外来で1日1回、とかいう使い方をするのは効果が期待できない、ナンセンスである、というか経口薬の方がよい、ということになります。基本、注射薬は入院で、1日2回以上の投与で使うものです。


なお、キノロン系やマクロライド系などで、1日1回投与でよい、とされる注射薬もありますが、それらの薬剤は重症肺炎例で使用が推奨されているものです。


軽症患者さんの抗菌薬選択

  • アモキシシリン/クラブラン酸またはスルタミシリン経口薬+マクロライド系経口薬

  • セフトリアキソン注射薬+マクロライド経口薬

  • レスピラトリーキノロン経口薬



全国的にうんざりするほど頻用されているレスピラトリーキノロン、特にレボフロキサシンは嫌気性菌には効果が弱く、誤嚥があると考えられる症例には避けた方がよい、と明言されています。


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2013年03月29日

難病患者さんの肺炎に対する抗菌薬治療5・肺炎の具体的治療の流れ3・推定原因菌にあった抗菌薬を投与・抗菌薬の簡単なまとめ

治療のお話をする前に、抗菌薬についておおまかな話をしておきましょう。抗菌薬には大きい区分である「系統」が何種類かあり、それぞれに「くせ」があります。また、同じ系統の中でもいくつかの区分がありますが、ここではよく肺炎治療に使われる代表的な薬剤を取り上げます。


話をわかりやすくするために、上で述べた耐性菌代表として緑膿菌に登場いただき、緑膿菌に効かない薬(耐性菌に使わない)と効く薬(耐性菌に使用する)に分けて考えましょう。


なお、ここに挙げたのは、コメディカルの方や患者さんも読まれることを考えて、本当に代表的な数種類のみです。ドクターの皆さんはもちろん、もっと多くの抗菌薬について習熟しておく必要がありますよ!



A. ペニシリン系

歴史上最初に作られた抗菌薬で、歴史があります。多くの改良を受けて、現在でも第一線で活躍しています。誤嚥性肺炎の原因になる嫌気性菌にも強いです。


代表例
緑膿菌に効果がない:スルバクタム/アンピシリン
緑膿菌に効果がある:タゾバクタム/ピペラシリン



B. セフェム系

経口薬でも注射薬でも広く使われている薬です。嫌気性菌には少し効果が劣ります。


代表例
緑膿菌に効果がない:セフトリアキソン
緑膿菌に効果がある:セフェピム



C. マクロライド系

ペニシリン系やセフェム系が細胞壁合成阻害薬であるのに対し、DNA合成を阻害します。そのため、細胞壁を持たない菌、細胞内寄生菌に対して効果があります。主に使われるのはマイコプラズマなどが想定されるときです。


一方で、あまりにも広く使われすぎたために、肺炎球菌やH.influenzae(インフルエンザ菌)に対しては耐性化が進んでいて、効かなくなってきています。緑膿菌に対しては元々効果がありません。


代表例
クラリスロマイシン、アジスロマイシン



D. キノロン系

肺炎球菌やH.influenzae(インフルエンザ菌)、さらには緑膿菌にまで広く効果があります。加えて、マクロライド同様に細胞壁を持たない菌、細胞内寄生菌に対して効果があり、いわば「万能」とも言える抗菌薬ですが、こちらも広く使われすぎの嫌いがあり、今後の耐性化が懸念されています。そのため、心ある臨床医はできるだけ大切に使おう、出し惜しみしようと心がけています。


代表例
経口薬:レボフロキサシン、ガレノキサシン、モキシフロキサシン
注射薬:レボフロキサシン、パズフロキサシン、シプロフロキサシン


キノロン系経口薬にはたくさんの種類がありますが、肺炎球菌への効果がよいのは上記の3種類で、特にこれらはレスピラトリーキノロンと呼ばれています。


注射薬は強力ですが、本当に必要とされる場面は重症なケースに限られます。それと、嫌気性菌には少し効果が劣りますので、誤嚥があると思われる場合には注意が必要です。



E. カルバペネム系

こちらも肺炎球菌やH.influenzae(インフルエンザ菌)、さらには緑膿菌にまで広く効果がありますが、細胞壁を持たない菌には効果がありません。それ以外の菌には嫌気性菌、緑膿菌を含めほぼ万能で、キノロン系同様、心ある臨床医はできるだけ大切に使おう、出し惜しみしようと心がけています。


代表例
メロペネム、ドリペネム、イミペネム・シラスタチン、ビアペネム



F 抗MRSA薬

これまでに書いた抗菌薬はいずれも、MRSAには効果がありません。それだけMRSAの耐性はキツイのだということです。MRSAが原因であると考えられる感染症に対しては、専用の薬剤がありますから、それを使います。


代表例
バンコマイシン、テイコプラニン、リネゾリド


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2013年03月28日

難病患者さんの肺炎に対する抗菌薬治療4・肺炎の具体的治療の流れ2・原因菌を想定

以前書いたように、何らリスクのない生活をされている方(市中肺炎)の肺に入って肺炎を引き起こすような菌は、肺炎球菌・H.influenzae(インフルエンザ菌)・マイコプラズマ・クラミドフィラ・ウイルス(インフルエンザ、水痘他)などが考えられます。


「医療・介護関連肺炎」の場合にも、在宅で過ごしておられる方は基本的に同様の菌が肺に入ると考えられますが、下の表のような状況の患者さんは、原因菌が薬剤耐性菌である可能性が高いと考えられます。


耐性菌に対しては使用すべき抗菌薬もランクアップするため、以下のような状況の患者さんは特別扱いとなります。


  • 過去90日以内に広域抗生剤が投与された

  • 経管栄養を施行している

  • 過去に鼻腔や口腔などからMRSAが分離された(MRSAのリスク)



薬剤耐性菌:
  • 緑膿菌

  • アシネトバクター

  • ESBL〈基質特異性拡張型βラクタマーゼ〉産生腸内細菌

  • MRSA

  • ステノトロフォモナスなど



それ以上細かく菌を推定することは現実的には困難で、また、抗菌薬の使い分けという点からもそれほど意味がないので、この原因菌を想定するにあたっては、この「耐性菌がいそうかどうか」が最も重要な区分けになります。


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2013年03月27日

難病患者さんの肺炎に対する抗菌薬治療3・肺炎の具体的治療の流れ1・治療の場

肺炎治療の流れは、まず@治療の場を決め、A原因菌を想定し、Bその菌にあった抗菌薬を投与する、こういう流れになります。


治療の場とは、病院に入院するのか、これまで通り在宅や施設で治療をするか、ということです。重症度に応じて入院適応を決めることになります。これは、市中肺炎ガイドラインで定められている分類、A-DROPを参考に決めていきます。


ちなみにA-DROPとは、既出ではありますが重要なので再掲しておきますと…

  • A:Age(年齢) 男性≧70歳、女性≧75歳

  • D:Dehydration(脱水) BUN≧21または脱水
    英語が難しければ「脱水のD」でよいでしょう。

  • R:Respiration(呼吸)SpO2≦90%
    レスピのRで覚えましょう。

  • O:Orientation(意識障害)
    「起きてる?のO」で覚えましょう。

  • P:Pressure(血圧) 収縮期≦90mmHg



この覚え方、ポリクリ学生さん考案です。ブログ掲載の許可を頂いています(笑)。


上記5項目を1つ満たすごとに1点カウントし、点数によって重症度、および入院・外来いずれで治療するかを決めます。

  • 0点:軽症→外来治療

  • 1-2点:中等症→外来、または入院治療

  • 3点以上:重症→入院治療

  • 4点以上→ICU 管理



…という具合に入院/外来を判断します。ちなみに1-2点であれば、主治医の総合判断で入院するかどうかを決めることになります。


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2013年03月26日

難病患者さんの肺炎に対する抗菌薬治療2・肺炎ガイドラインによる「ターゲット」の違い

誤解を恐れずに極論しますと、これらのガイドラインは、患者さんの状態、発症の場によって「原因(分離)菌」が異なる、従って抗生剤を使い分ける必要がある、ということが柱としてあるのです。肺内には、常在菌というべきものはほとんどいないわけですが、病原性を持つ菌で、肺が好きな菌というものはいるわけです。肺の環境を好み、かつ、エアロゾル・微少な飛沫として空中に浮かぶことができる(つまり肺に入る経路を持つ)菌、それが肺炎の原因菌になりうるわけです。

たとえば、他人の「咳」「痰」「しぶき」を吸い込むことで感染が成立するような菌は、人混みに出かけたり、咳をしている子供に接触したりするような、「市中での生活」で肺炎の原因になります。


市中肺炎の原因菌

  • 肺炎球菌

  • H.influenzae(インフルエンザ菌)

  • マイコプラズマ

  • クラミドフィラ(クラミジア)

  • ウイルス(インフルエンザ、水痘他)



市中での生活で罹患する「市中肺炎」の原因菌はこれらであることが多いため、市中肺炎の治療は、まずはこれらの菌をターゲットとして行います。


ここで、肺炎球菌やH.influenzae(インフルエンザ菌)には通常ペニシリンなどのβラクタムを使いますが、マイコプラズマやクラミドフィラは非定型病原体といってβラクタムが効かない。ということで、これらの鑑別が必要になるわけです。


一方、病院に入院していると、市中で生活しているときに肺に進入するような菌は感染機会がなく、元々院内に住んでいるような菌が原因菌になります。それはやはりグラム陰性桿菌が主体。


特に、水周りなどには、それまでに入院していた肺炎患者さんが喀出したしぶきに含まれていた緑膿菌などが住み着いたりしているものです。 また、医療従事者の手にはMRSA がついていたりします。とすると、病院内で罹った「院内肺炎」の場合は、そういった菌を原因菌として考えるのが妥当、ということになります。


また、抗菌薬を使ったかどうか、というのも原因菌の推定に深く関与します。たとえば3世代セフェムを使うと菌交代で緑膿菌が残ります。広域抗生剤の長期投与はMRSAのリスクになりますし、そもそも抗菌薬を使うと、大なり小なり耐性がついてくるものなのです。


院内肺炎の原因菌はこのようにグラム陰性桿菌・緑膿菌・MRSAをはじめとする耐性菌であることが多いため、このような菌がターゲットとして想定されます。


また、最近定められた「医療・介護関連肺炎」、難病患者さんの肺炎はこの範疇に入ることが多いのではないかと思いますが、その定義は、以下の表の通りです。


医療・介護関連肺炎の定義

  • 長期療養病床または介護施設に入所

  • 90日以内に病院を退院した

  • 介護*を必要とする高齢者、身体障害者

  • 通院にて継続的に血管内治療*を受けている


  *介護…身の回りのことしかできず日中の50%以上をベッドで過ごす
  *血管内治療…透析・抗菌薬・化学療法・免疫抑制薬など


つまり、病院に入院してはおられない、在宅でありながら、病院内の環境に似た細菌に曝露する機会が多く、肺炎の原因菌がグラム陰性桿菌や耐性菌によることが多い、というグループになります。


今回のお話は難病患者さんの肺炎についてですので、具体的な治療に関しては、医療・介護関連肺炎ガイドラインに沿ってお話しします。


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2013年03月25日

難病患者さんの肺炎に対する抗菌薬治療1・耐性菌を作り出さないために

ポリクリのない、春休み期間もあと1週間。ということは、依頼原稿を書ける時間がとれるのもあと1週間ということになります。時の経つのは早いもの。facebookには書きましたが、家中がインフルエンザのために春休みもあって無きがごとしでした(私は幸いかからずでしたが)。


ということで少し前に頂いた執筆依頼、そろそろ締め切りも近く、書き始めなくてはなりませんので、ちょっと準備に取りかかりたいと思います。よければお付き合いください(最近同じことばかり書いている気もしますが…)。


今回は、「難病患者さんの肺炎に対する抗菌薬治療」というタイトル。


難病の患者さんにおかれましてはADLの低下や誤嚥、それに免疫力の低下などの状況により、肺炎にかかられることが少なからずあるように見受けます。これまでにも肺炎の抗菌薬治療に関しては何度か述べて参りましたが、このたびは、もう少しコメディカルの方々、難病患者さんの介護に当たられる方々に向けて、難病患者さんの肺炎の抗菌薬治療について、まとめさせていただく機会を頂きましたので、ご紹介していきたいと思います。




色々な状況の違いはあれど、基本的に「肺炎」という疾患は、通常は無菌状態である肺の中に細菌が入ることで起こります。その細菌を退治するために抗菌薬を用いるのですが、抗菌薬には実に多くの種類があり、どの細菌に効果があるか(スペクトラム)が異なります。


「色々な菌に効く=広域スペクトラムの」抗菌薬を濫用すると、必ずその抗菌薬が効かない菌(=耐性菌)が誘導されてきます。もちろん患者さんの治療に必要な場合(その抗菌薬でないと効かない菌がターゲットの場合)には、広域スペクトラムの抗菌薬を使うべきですが、不必要な場面で広域スペクトラムの抗菌薬を使用する(=不適切に抗菌薬を用いる)と、「耐性菌」を誘導してしまうのです。耐性菌というのはMRSAが有名ですが、MRSA以外にも今や色々な種類の耐性菌が生み出されてきていて、問題となりつつあるところです。


したがって、肺炎治療の際には「どの菌をターゲットとして治療すべきか」ということを考えて抗菌薬を選択する必要があり、そのあたりを専門外の先生方にも無理なく行っていただけるように、肺炎のガイドラインが定められているのです。


とはいえ、ガイドラインにも市中肺炎(community acquired pneumonia:CAP)、院内肺炎(hospital acquired pneumonia:HAP)、医療・介護関連肺炎(NHCAP:nursing and healthcare-associated pneumonia)の3冊があり、全てを読むのも大変ですので、今回はガイドラインに共通している、基本的な考え方をかみ砕いてご紹介します。


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2012年11月24日

肺炎にシプロキサン…

最近あった衝撃の出来事。


結構名の通った施設で、肺炎、胸膜炎にシプロキサンを使用、良くならないから、とメロペンに変更され、なお胸水貯留が良くならない、という症例を見かけました。


それがどう見ても、嫌気性感染っぽかったわけですよ。比較的穏やかな発症で、口腔内清掃状態も良くない。


「シプロキサンは肺炎に万能」とMRさんに吹き込まれたのでしょうか。確かにほぼ万能と言えなくもありませんが…残念。


肺炎ガイドラインをお読みいただいた方は、私の受けた衝撃がおわかりいただけると思います。滋賀の医療がこんなレベルではダメだ。大学がもっともっと頑張らなければならない、そういう思いを新たにしました。

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posted by 長尾大志 at 21:51 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年11月20日

肺炎と抗菌薬〜ガイドラインの実践にあたって

肺炎の記事に対して、とある病院で働いておられる研修医の先生からご質問を頂きました。


(引用ここから)
いつも無償で知識を与えていただいてありがとうございます。
今回の件に関連して質問です。

画像ではっきり肺炎像を呈しているが上気道症状に乏しい高齢者の肺炎を時折拝見します。
喀痰がとれない場合治療方針が曖昧になる気がするのです。

エンピリックにずっといっていいのか
効果判定の指標はどうするのか
治療期間はどうすればいいのか
喀痰誘発などは行うべきか

など僕にとっては問題が山積みなのですが
コメントいただけたら幸いです。
(引用ここまで)



ガイドラインの解説で強調していたことは、「良質な喀痰があれば、より精度の高い抗菌薬治療が可能になる」ということです。高齢者は典型的症状に乏しく、痰の喀出もままならないことが多いため、理想通りには参りません。そういうときのためのエンピリック治療でもあるのです。


すなわち、「状況証拠からできる限り原因菌を推測し、妥当と思われる抗菌薬を使用する」手順であります。



■エンピリックにずっといっていいのか

エンピリックに治療を開始して、良質な喀痰が得られない場合には、治療継続するかどうかは効果判定によって決めます。治療効果があるようなら、そのまま継続し、できる限り短期間で治療を切り上げます。


この場合、de-escalationは難しいでしょう。従って、当初の治療は(状態によりますが)できる限り狭域でありたいものです。



■効果判定の指標はどうするのか

効果判定も難しいことがありますが、最初におかしかった症状(呼吸数、SpO2 、意識レベル、ラ音、食欲など)や炎症マーカーの改善で判定することが多いでしょうか。


陰影だけあって、上記のような症状は全くなかった、ということであれば、逆に肺炎の診断が正しかったのか、再検討が必要かもしれません。



■治療期間はどうすればいいのか

もちろんケースバイケースですが、合併症がなければ型どおりに終わっていることが多いと思います。まあ、大学の症例では合併症があることがほとんどなので、型どおりに終わることは少なかったりしますが…。



■喀痰誘発などは行うべきか

基本姿勢として、喀痰誘発を試みては頂きたいと思います。生理食塩水、あるいは高張(3%)食塩水を吸入して頂く、喀出困難なら吸引痰で、とにかく判断材料を増やすことがより高級な診療の元となるのです。


また、これも施設によって温度差が大きいものですが、血液培養は入院患者さんなら必ず採っておきたいもの。


なにより検出した菌の存在意義が半端ないですし、菌血症の有無もわかります。「経静脈的に抗菌薬を使用する時には必須」としている施設もある一方、全然なところもあるようですが…。



以上、一般論ではありますが、お答えとさせていただきます。おそらく実際の事例に沿って具体的に説明した方がわかりやすいような気がするので、また具体的にわかりにくいポイントを尋ねてみてください。いつでもご質問は歓迎いたします。


それではI先生、今後も頑張ってください!


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2012年11月19日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」44〜肺炎治療の流れ15・医療・介護関連肺炎(NHCAP)ガイドラインの考え方

市中肺炎、院内肺炎と来まして、最後は医療・介護関連肺炎(NHCAP)ガイドラインでありますけれども、実のところこちらは、以前にきっちりとまとめております。書き直しも考えましたが、ちょっと肺炎はお腹いっぱい感もあり、ここらで一服、ということで、以前に書いた記事にリンクいたしましょう(手抜きとも言う)。


医療・介護関連肺炎(NHCAP)の定義
http://tnagao.sblo.jp/article/53020744.html


医療・介護関連肺炎ガイドラインの基本理念
http://tnagao.sblo.jp/article/53038077.html


治療区分
http://tnagao.sblo.jp/article/53050203.html


群別治療法・A群
http://tnagao.sblo.jp/article/53075084.html


群別治療法・B群
http://tnagao.sblo.jp/article/53122631.html


群別治療法・C群
http://tnagao.sblo.jp/article/53145208.html


群別治療法・D群
http://tnagao.sblo.jp/article/53154370.html



抗菌薬選択については、うまくまとめてありますから、折角ですので再掲しておきます。


  • 非定型をカバーするものは、マクロライドとキノロン。
    キノロンは、細菌も広くカバーするため、ある程度は単剤で使える。

  • 嫌気性菌をカバーするものは、ペニシリン、ペネム、ダラシン。誤嚥がありそうなら、使用または併用。

  • A群、B群では緑膿菌を考慮しない、というか、むしろ緑膿菌に対して効果のないものを選択するべき。

  • C群、D群では抗緑膿菌作用を重視するが、副作用の少ないものが望ましい。
    MRSAは出たことがあれば、カバーする。



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posted by 長尾大志 at 17:36 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年11月16日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」43〜肺炎治療の流れ14・院内肺炎に対する治療に反応しない場合の対応3

正しく効果判定をしているにもかかわらず、抗菌薬治療に反応していない、また、感染症以外の状況が除外できている、すなわち、感染症であるにもかかわらず抗菌薬治療に反応していない場合、いくつかの要因が考えられます。


院内肺炎ガイドラインでは親切なことに、それについても取り上げられています。
一つずつみてみましょう。


■病原微生物側の要因

スペクトラムは正しくても病変が膿瘍や膿胸を形成している場合、その場所には血管があまり存在せず、薬剤が移行しにくい点や局所で薬剤不活化酵素が産生される、ということがいわれており、思ったような治療効果が得られないことがあります。


また、菌血症があると、肺以外の臓器にも感染が散布されることがありますが、抗菌薬移行のよくない部位に感染症が生じると治療効果が得られにくくなります。たとえば、肝膿瘍、感染性心内膜炎、骨髄炎やカテーテル感染などです。肺の炎症以外にそういった合併症がないかどうかは確認が必要です。



スペクトラムは当たっている菌であるにもかかわらず、耐性度が強いために抗菌薬の効果が得られない場合もあります。
代表は耐性緑膿菌ですが、最近ではESBL産生菌やアシネトバクターなども問題になることがあります。


これらの場合、やはり感受性パターンを参考にして抗菌薬を選択していきますので、そもそも菌を検出しないことには話が始まりません。従って、菌を検出する努力は必須といえるでしょう。



それから、いわゆる一般抗菌薬がそもそも効かない病原微生物もいます。


代表は抗酸菌、ウイルス、真菌、ニューモシスチスなど。ウイルス感染は今もって診断、確認が困難ですが、その他の病態では(努力次第で?)診断が可能であります。



■宿主側の要因

合併症がある場合、そちらも治療しなければ肺炎も改善しません。


たとえば糖尿病、低栄養、白血球減少などは免疫力が低下する病態であり、そちらを解決しないことには肺炎の改善も望めないわけです。


臥床状態や繰り返す誤嚥、カテーテル留置など、物理的に菌が入って来やすい状態、定着しやすい場所があるとこれも難治の原因となるため、対策が必要です(しばしば困難ですが)。



■薬剤の要因


施設によってはしばしばみられる状態として、たとえば、抗菌薬の投与量が足りない、というのがありがちです。
メ○ペン 0.5g×2回/日 みたいな使い方では、効くものも効きません。


PK/PDも考慮して(保険適応上の)最大量を、最大限生かして投与するために、PK/PDブレイクポイントがガイドラインに掲載されています。これで最大殺菌作用を得るMICになる投与量と投与回数を選択できます。


あとは組織移行性の問題、それと併用薬との相互作用によって血中濃度が低下する、そのあたりのことが言われています。


そんなん、基本じゃないか…と思うのですが、治療がうまくいかないときは、今一度、基本に立ち返ることが重要、ということでしょう。


さて、院内肺炎もこのぐらいにしておきましょう。ということは…。


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posted by 長尾大志 at 18:36 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年11月15日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」42〜肺炎治療の流れ13・院内肺炎に対する治療に反応しない場合の対応2

各種指標を正確に見ても改善していない、悪化している、こういう場合、「そもそも診断が正しかったのか」「感染症であったのか」を問い直す必要があります。


まあ、最初から鑑別しとけって話ですが、治療中に合併症として新しい陰影が生じてくることもありますので…。



感染症以外の疾患による場合、以下のようなものが鑑別に挙がります。


  • 薬剤性肺炎
    使用した抗菌薬によるものもあり得ます。

  • 器質化肺炎

  • 好酸球性肺炎

  • 放射線肺炎

  • その他の間質性肺炎およびその増悪
    ここまで、広い意味での間質性肺炎に含まれます。

  • 悪性腫瘍
    肺炎だと思っていたら肺癌だった、ということはしばしば経験されます。

  • うっ血性心不全
    肺炎との合併も多く、それにより治癒も遅くなったりしますので、心不全の有無を確認しておくことは重要です。

  • ALI/ARDS

  • 肺梗塞

  • 肺胞出血

  • 気管・気管支内異物

  • 無気肺


など。


上に挙げた一つ一つについて、もちろん鑑別のポイントはありますが、それはまた別の機会に。


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posted by 長尾大志 at 19:08 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年11月14日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」41〜肺炎治療の流れ12・院内肺炎に対する治療に反応しない場合の対応1・その肺炎は本当に良くなっていないのか

いやあ長々と続いてきた肺炎シリーズですが、ようやく終わりが見えてきましたね。もう一踏ん張り、お付き合いください。


肺炎診療において、臨床医(特に非専門の先生方)にとって大事なところ、実のところそれは抗菌薬の使い方よりも、「治療に反応しないケースでどう考えるか」ということではないでしょうか。



院内肺炎のガイドラインでは親切にも、「治療に反応しない患者への対応」と独立した項目で取り扱われています。


肺炎だ、広域抗菌薬だ、あれれ、良くならない…。という流れをあちこちの施設で眼にします。常に、診断と鑑別を正しく行う癖がついていれば、そのようなことにはならないはずが…残念。



まず、「本当に良くなっていない」のか、「実は良くなっているのに主治医がそう解釈できていない」のか、ここの間違い、結構多いです。



肺炎。胸部レントゲンに陰影、CRP6、広域抗菌薬投与、2日後に陰影増強、CRP12。



これを見て、「抗菌薬換えなくちゃ」と思った方、ちょっとヤバイですよ…。


肺炎治療の効果判定に、レントゲンを使うべからずでも書きましたが、胸部X線写真の改善は炎症が沈静化するより遅れます。高齢であったり、合併症があるとなおさら。


また、CRPも急性期に上がりきらなかったり、患者さんの状態によって当初低値であったりして、当てにならないことも多いわけです。


肺炎の効果判定は、患者さんのところに行ってわかる、以下の項目を使いましょう。


  • 全身症状・症候:発熱、心拍数、脱水や経口摂取可能かどうか

  • 臓器特異的な症状・症候:痰の量、性状、胸部ラ音、SpO2、呼吸回数、チアノーゼなど



これらに「改善」が見られたら、その治療は「効果あり」です。自信を持って続行、(あるいはde-escalation)しましょう。


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posted by 長尾大志 at 19:21 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年11月13日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」40〜肺炎治療の流れ11・院内肺炎に対するエンピリック治療の基本的考え方・重症群に対する治療経過とde-escalation

院内肺炎ガイドラインでは、重症群に関しても、治療の経過で修正すべきポイントを明示してくださっています。


しかしそこは重症院内肺炎相手ですから、思い切った狭域化のde-escalationは紹介されていません。緑膿菌は少なくとも一剤がカバーし続けるようになっています。


しかし、抗菌薬投与前の良質な喀痰培養で緑膿菌が検出されない、こうなりますと、緑膿菌による感染症の可能性は低くなります。


少なくとも「多剤耐性緑膿菌を考慮して2系統で緑膿菌を叩く」必要はなさそうかと。


従って、ガイドラインでは、抗菌薬投与前の良質な喀痰培養で緑膿菌が検出されない場合は、(副作用の多い)アミノグリコシドを中止する、とされています。


実臨床では、抗菌薬開始後の経過が順調で、喀痰から有意な菌が得られた場合、それに従って抗菌薬を変更する、ということはあっても良いでしょう。



また、キノロンの位置づけとしては、特に重症肺炎の場合、レジオネラ対策の意味合いが強いものです(CPFX300mg×2では1回投与量が少なく、緑膿菌には届かなかったりする)。ですから、臨床的にレジオネラを疑うような状況がなければ、キノロン薬を中止して良い、となっています。


レジオネラを疑う状況

  • レジオネラ尿中抗原陽性

  • 進行する重症肺炎

  • 多肺葉性陰影

  • 胸水

  • 間質性陰影の混在

  • (病院、病棟内での)集団発生



今ではクラビット全盛ですから、ガイドラインが改定される頃には、少し意味合いは違ってきているかもしれません。


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posted by 長尾大志 at 18:26 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年11月12日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」39〜肺炎治療の流れ10・院内肺炎に対するエンピリック治療の基本的考え方・重症群に対する治療

院内肺炎の重症になりますと、もう待ったなしです。当初から耐性緑膿菌、さらにレジオネラを含む非定型病原体をカバーした選択になります。




■重症群(C群)に対する治療

中等症群(B群)の抗菌薬に、以下を併用します。

  • アミカシン(AMK:アミカシン、ビクリン)
    または

  • ゲンタマイシン(GM:ゲンタシン)

  • トブラマイシン(TOB:トブラシン)

  • イセパマイシン(ISP:イセパシン、エクサシン)

  • アルベカシン(ABK:ハベカシン)


のアミノグリコシド系、あるいはB群でキノロン系を用いていない場合、

  • シプロフロキサシン(CPFX:シプロキサン)
    または

  • パズフロキサシン(PZFX:パシル、パズクロス)

  • 当時なかったレボフロキサシン(LVFX:クラビット)もOK。




耐性緑膿菌対策のため、B群で選択したβラクタム系に、キノロン系、あるいはアミノグリコシド系を加えます。相乗効果も報告されていますし、耐性菌をカバーできる可能性は増すでしょう。


ガイドラインではここでアミノグリコシド系の使い方について、当時(今も?)あまり使われていなかったことを反映して結構説明がなされています。基本的な考え方としてPK/PDを考えると、1日1回投与、TDMを見ながら投与量を決める、ということが原則になると思います。


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posted by 長尾大志 at 17:20 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年11月07日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」38〜肺炎治療の流れ9・院内肺炎に対するエンピリック治療の基本的考え方・中等症群に対する治療経過とde-escalation

院内肺炎ガイドラインでは、中等症群に関しても治療の経過で修正すべきポイントを明示してくださっています。


2〜3日後に体温、分泌物の状態、酸素化という症状、診察で見た感じで、そして喀痰培養の結果を見て、治療効果を判断し、軌道修正を行います。


院内肺炎中等症群の治療においては、通常緑膿菌をカバーする抗菌薬を選択するわけですが、良質な喀痰培養で緑膿菌が検出されるかどうか、これも治療があっているかどうかを判断する材料になります。


軽症群との違いは、「中等症群ではエンピリックに緑膿菌をカバー」というところになります。今の考えでは、緑膿菌をカバーする抗菌薬はなるべく温存、ということになっていますから、緑膿菌がいなさそうなら、緑膿菌をカバーしない抗菌薬に変更しましょう、ということになります。これが、de-escalationの考え方です。


誤解を恐れずに、かつシンプルに、症状が軽快しているかいないか、良質な痰から緑膿菌(をはじめとする耐性菌)が検出されたかどうかでどのように判定をするか、分類して考えてみましょう。



  • 症状軽快・緑膿菌検出せず:順調です。緑膿菌が原因菌ではないと考えられますので、緑膿菌をカバーから外す、de-escalationを行いましょう。具体的には、 A群(軽症群)に使用する抗菌薬への切り替えと書かれてあります。

  • 症状軽快・緑膿菌検出:緑膿菌が検出され、それに対して使用している抗菌薬が効果あり、という状況ですから、やっている治療をこのまま維持しましょう。

  • 症状悪化・緑膿菌検出せず:軽症群のときにも書きましたが、ここに入ると、ちょっと一口には語れません。診断の見直しも必要かも。ただ、 MRSAの関与が疑われ、MRSA貪食像が見られて、臨床像もあいそうな場合には抗MRSA薬をドカンといけ、となっています。

  • 症状悪化・緑膿菌検出:今の治療ではアカン、効いてないということですから、菌の感受性を見て、それに基づいた治療に変更します。



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posted by 長尾大志 at 18:27 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年11月06日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」37〜肺炎治療の流れ8・院内肺炎に対するエンピリック治療の基本的考え方3・中等症群に対する治療

院内肺炎の中等症になりますと、当初から緑膿菌をカバーした選択になります。ただ、重症群(待ったなし)と違って耐性緑膿菌を最初から想定しておらず、基本単剤でのカバーとなります。




■中等症群(B群)に対する治療
グループ1.単剤投与

  • タゾバクタム・ピペラシリン(TAZ/PIPC:ゾシン)

  • イミペネム・シラスタチン(IPM/CS:チエナム)

  • メロペネム(MEPM:メロペン)


IPM/CS、MEPMの代替薬として、ドリペネム(DRPM:フィニバックス)、ビアペネム(BIPM:オメガシン)があります。


グループ1はTAZ/PIPC、あるいはペネム系という、MRSA以外にはほぼ万能といえるスペクトラムを持つ抗菌薬がチョイスされています。まあこれは特に申し上げることもないでしょう。



グループ2.条件*により併用投与
*条件:誤嚥か嫌気性菌の関与が疑われる場合

  • セフェピム(CFPM:マキシピーム)±

  • クリンダマイシン(CLDM:ダラシン)



誤嚥がなく、嫌気性菌をカバーする必要がなければ、CFPM単独でよいのですが、嫌気性菌には少し弱いため、必要時にはCLDMを追加する、というものです。


なお、第4世代セフェムであるセフピロム(CPR:ケイテン、ブロアクト)、セフォゾプラン(CZOP:ファーストシン)がCFPMの代替薬として挙がっています。



グループ3.原則併用投与

  • セフタジジム(CAZ:モダシン)+CLDM

  • シプロフロキサシン(CPFX:シプロキサン)+スルバクタム・アンピシリン(SBT/ABPC:ユナシンS)



何でも単剤では能がない、ということで、お互いの長所と短所を組み合わせた併用のご紹介です。


CAZはグラム陰性桿菌・緑膿菌に有効なのですが、グラム陽性菌・嫌気性菌に弱いので、そこをカバーするCLDMを組み合わせるとうまく広くカバーできるんですね。


CAZの代替薬として、似たスペクトラムの(玄人好み)アズトレオナム(AZT:アザクタム)、スルバクタム・セフォペラゾン(SBT/CPZ)が挙げられます。特にSBT/CPZは、CLDMと共に肝代謝される薬剤であり、腎機能障害時に使いやすいものです。



後者の組み合わせも渋いです。CPFXというキノロンをSBT/ABPCというペニシリンに組み合わせ、キノロンに緑膿菌と非定型病原体をカバーさせ、キノロンの弱いグラム陽性球菌と嫌気性菌にSBT/ABPCを当てているわけです。


当然、CPFXのところには当時なかったレボフロキサシン(LVFX:クラビット)が入ってもよく、パズフロキサシン(PZFX:パシル、パズクロス)も使えます。


また、先ほどと同じことで、SBT/ABPCの代わりにCLDMも使えます。


最後に、MRSAの関与が疑われる場合には初期治療から抗MRSA薬を使用する方が予後の改善につながるのではないか、というあたりのことは軽症群の治療のところでも書いたとおりです。


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posted by 長尾大志 at 18:14 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年11月05日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」36〜肺炎治療の流れ7・院内肺炎に対するエンピリック治療の基本的考え方2・軽症群に対する治療経過

肺炎でも何でも、治療を開始したら終わり、というわけではありません。院内肺炎ガイドラインの親切なところは、治療の経過で修正すべきポイントも明示してくださっているところです。


2〜3日後に経過を見て効果判定、その際に見るべきは体温、分泌物の状態、酸素化という症状、診察で見た感じであります。白血球、CRP、胸部X線写真といったパラメータは、あくまで参考所見です。


良質な喀痰が採れた場合には、判断材料がさらに増えます。物的証拠が効いてくる、ということですね。


たとえば喀痰のグラム染色で、当初認められていた白血球や菌が治療経過で見られなくなった、これも治療の効果あり、と申し上げていいでしょう。このように、最初だけでなく、経過で痰を見ることも大事ですね。


そして、喀痰培養。培養には数日かかり、大体効果判定の時期に結果が得られてくることになるわけです。その結果を治療にフィードバックしていくわけですね。


院内肺炎軽症群の治療においては、通常緑膿菌やMRSAを外した抗菌薬を選択するわけですが、良質な喀痰培養でMRSA、緑膿菌をはじめとする(現在投与している抗菌薬に対する)耐性菌が検出されるかどうか、これも治療があっているかどうかを判断する材料になります。


誤解を恐れずに、かつシンプルに、症状が軽快しているかいないか、耐性菌が検出されたかどうかでどのように判定をするか、分類して考えてみましょう。


  • 症状軽快・耐性菌検出せず:順調ですね。このまま初期治療薬で治療を継続しましょう。

  • 症状軽快・耐性菌検出:症状が軽快している場合、抗菌薬の変更には勇気がいります。他にどんな菌が検出されたかによっては保菌の可能性もあるわけですから、原則は「悪化するまではやっている治療を維持」ということになるでしょう。

  • 症状悪化・耐性菌検出せず:これも、他にどんな菌が検出されたかによって解釈が難しくなります。「そもそも肺炎という初期診断が正しいのか」「提出した痰は良質であったのか」など、考えるべきことも多いです。ここに入ると、ちょっと一口には語れません。

  • 症状悪化・耐性菌検出:今の治療ではアキマセン。抗菌薬を「検出された菌に有効な」モノに変更します。



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posted by 長尾大志 at 18:38 | Comment(2) | 肺炎ガイドライン解説

2012年11月02日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」35〜肺炎治療の流れ6・院内肺炎に対するエンピリック治療の基本的考え方1・軽症群に対する初期治療

菌をもらった場所別の原因菌・入院している患者さん=院内肺炎で考察したように、院内肺炎、特に病院に長居されている、あるいはリスクの大きな(免疫低下のある)患者さんの肺炎ともなりますと、原因菌は腸内細菌をはじめとするグラム陰性桿菌・MRSAが主体です。


原因菌探しのために検体、グラム染色、培養を採取しておくことはきわめて重要であり、検体を採ったら、グラム染色の結果を解釈して抗菌薬を選択しますが、実際問題必ずしも良質な検体(特に痰は)を得られるわけではありません。そのように物的証拠なしに治療を開始せざるを得ない場面では、状況証拠から犯人を絞っていくことになります。これがエンピリック(経験的)治療ということになります。


院内肺炎のエンピリック治療に関して重要なことは、耐性菌であるところの緑膿菌、あるいはMRSAが原因に関与しているかどうかでしょう。このあたりが関与していると想定される、あるいは、重症の場合はそこまでカバーする抗菌薬をエンピリック治療において使用すべきであります。



そこを理解すれば、後はガイドラインを眺めるだけ。重症度を判断したら、エンピリック治療の選択を行いましょう。



■軽症群(A群)に対する治療

  • セフトリアキソン(CTRX:ロセフィン)

  • スルバクタム・アンピシリン(SBT/ABPC:ユナシンS)

  • パニペネム・ベタミプロン(PAPM/BP:カルベニン)



軽症群に対する治療では基本的に緑膿菌、MRSAを外した選択肢となりますが、それでもグラム陽性球菌〜陰性桿菌に対し広いスペクトラムを持つ抗菌薬が挙げられています。


補足として、再三書いてきたように、誤嚥にご縁のありそうなケースではCTRXを避ける、ということと、PAPM/BPは抗緑膿菌活性が中途半端にあり、IPM/CSとの交差耐性も知られていることから、緑膿菌のいるところで使うと、「効かない上に他のペネムに対する耐性がつく」ということは知っておきましょう。



さらに、軽症群であっても、緑膿菌がいそうであれば中等症群(後述)に対する抗菌薬を選択することを考慮します。


日本の院内肺炎ガイドラインによりますと、以下のような項目が緑膿菌の存在を疑うリスク因子として挙げられています。


  • 15日以上入院している。

  • 第3世代セフェム系抗菌薬を使用したことがある。

  • COPDなどの慢性気道疾患がある。




また、MRSAの関与が疑われる場合には初期治療から抗MRSA薬を使用する方が予後の改善につながるのではないか、という若干奥歯に物がはさまったような言い方をされています。


具体的には、グラム染色でMRSA感染が疑われ、かつ

  • 長期(2週間程度)の抗菌薬投与。

  • 長期入院の既往。

  • これまでに鼻腔や痰などからMRSAが検出された。


のいずれかの項目に該当するケースです。


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posted by 長尾大志 at 18:43 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年11月01日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」34〜肺炎治療の流れ5・市中肺炎に対するエンピリック治療の基本的考え方3・ICU治療・重症肺炎例に対する治療

■市中肺炎・ICU治療・重症肺炎例に対する治療の場合

ガイドラインには以下のごとき「治療の目安」が載っています。


1群

  • カルバペネム系注射薬

  • 第3、4世代セフェム系注射薬+CLDM

  • モノバクタム+CLDM

  • グリコペプチド系+アミノ配糖体系



2群

  • ニューキノロン系注射薬

  • テトラサイクリン系注射薬

  • マクロライド系注射薬



1群、2群から薬剤を選択し、併用する。




ICUに入室する、そこまでではなくても大変な重症の肺炎治療は「待ったなし」であり、治療失敗は許されません。そのため、エンピリック治療の段階から広域抗菌薬使用が許容される、ということになっています。


そうはいっても、何でもかんでも併用すればいいということではなく、市中にいそうな病原体がターゲットであることは間違いありません。


市中肺炎における原因微生物を頻度順に並べると、大体こんな感じになります。

肺炎球菌
インフルエンザ菌
マイコプラズマ
クラミドフィラ
レジオネラ
黄色ブドウ球菌
モラクセラ
クレブシエラ
ミレリ・グループ
嫌気性菌


嫌気性菌の頻度が低いのは、検出された数の統計であるためで、(空気に触れてしまう)喀痰ではなかなか検出されない嫌気性菌には不利な統計です。近年は特に高齢化などにより、誤嚥、嫌気性菌の関与が疑われる症例は多くなっていそうですね。


こうやって見渡すと、肺炎球菌(PISP〜PRSP含む)、インフルエンザ菌(BLNAR含む)、嫌気性菌、βラクタマーゼを産生するその他の菌たちに非定型病原体を含めた広いスペクトラムの抗菌薬が必要である、ということが理解できます。


ただ、市中で緑膿菌感染は少ない。(多剤)耐性緑膿菌ともなると、よほど事情がある方以外はあまりないんじゃないか、ということで、緑膿菌をターゲットにした2剤併用は不要と考えられています。


一方、市中肺炎で重症肺炎となったときに、カバーしておく必要があるのはなんといってもレジオネラですから、そちらのカバーは必須なわけです。そういう意味では、2群からのチョイスはキノロンが好ましいか、と思います。


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posted by 長尾大志 at 17:43 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年10月31日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」33〜肺炎治療の流れ4・市中肺炎に対するエンピリック治療の基本的考え方2・細菌性肺炎疑い例に対する入院治療

■市中肺炎・細菌性肺炎疑い例の入院治療の場合

ガイドラインには以下のごとき「治療の目安」が載っています。

  • 1.基礎疾患、がない、あるいは若年性人の場合:βラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン注射薬、PIPC(高用量)

  • 2.65歳以上あるいは軽症の基礎疾患(糖尿病、腎疾患、肝疾患、心疾患)がある場合:1に加えセフェム系注射薬

  • 3.慢性の呼吸器疾患がある場合:1,2に加えカルバペネム系薬、ニューキノロン系注射薬




細菌性肺炎疑い例の場合、PISPあたりまでを含む肺炎球菌が、まずはメインターゲットでした。


他に、喫煙者、COPD患者さんのように、線毛機能が低下していそうな方では(地域によって、BLNARまでを含む)インフルエンザ菌とモラクセラ、大酒家ではクレブシエラ、誤嚥にご縁がありそうな方は嫌気性菌、このあたりの菌を想定しておきます。


入院患者さんの場合、翌日には呼吸数が減って、ラ音が改善して…と効果判定ができるので、スペクトラムを狭域に設定できます。治療がうまくいかなくても早期の修正が可能なのです。


その代わり、入院ですから注射薬を目一杯使います。


基礎疾患がなければペニシリン大量でよろしいかと思いますが、BLNARやクレブシエラを考えるとABPCでは心許ない、となります。とはいえ、今時PIPCでもないと思います。緑膿菌に下手に届いてしまうので、PIPCは避けた方が良いでしょう。


高齢、基礎疾患ありなどとなってきますと、BLNARやクレブシエラをより想定することになるため、セフェムを選択肢に入れるべきでしょうが、続いての項目、慢性の呼吸器疾患がある、最近抗菌薬を使用したという患者さんの場合にカルバペネムやキノロンが必要か…となると、どうでしょうか。


もちろん、1,2に加えて、ということですから、1,2でもよろしいわけです。このあたりが主治医の裁量、ということになるでしょう。



こう見ていくとおわかり頂けるように、ガイドラインにおけるエンピリック治療は、どうしても広域に向きがちになります。それはガイドラインという(万人に無難に、という)性格上やむを得ないところでありまして、だからこそ逆に、できる限り物的証拠を得る努力をして、狭域ですむよう心がけたいものですね。


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posted by 長尾大志 at 18:01 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年10月30日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」32〜肺炎治療の流れ3・市中肺炎に対するエンピリック治療の基本的考え方1・細菌性肺炎疑い例に対する外来治療

肺炎に限らず感染症診療を行う上で、検体、グラム染色、培養を採取しておくことはきわめて重要です。しかしながら必ずしも良質な検体(特に痰)を得られるわけではありません。そのように物的証拠がない場合、状況証拠から犯人を絞っていく、これがエンピリック治療ということになります。


それではいよいよ肺炎のエンピリック治療を行う上で知っておくべき、基本事項を学んで参りましょう。


肺炎の診断がついた。その治療を考える際には、まず重症度の判定をします。市中肺炎や医療・介護関連肺炎であれば入院すべきか、外来で治療をするかの判断材料になりますが、実はもっと大事なことは、「重症であれば待ったなし」であり、広域抗菌薬使用が許容される、という点にあります。


すなわち、市中肺炎であればPRSPやBLNAR、緑膿菌(や、はたまたレジオネラまで)もカバーする必要があり、医療・介護関連肺炎や院内肺炎であれば耐性緑膿菌(や、はたまたMRSAまで)をも当初からカバーしておく必要がある、ということになります。



そこまで重症ではない、仮に初期治療が外れることがあっても充分挽回が効く、という状態であれば、そこまで広域にカバーする必要はなく、肺炎の原因菌が入ってきた「場」にいがちな菌をターゲットにした治療で十分である、ということになるわけです。



そこを理解すれば、後はガイドラインを眺めるだけ。重症度を判断して、細菌性肺炎と非定型肺炎を鑑別したら、エンピリック治療の選択を行います。




■市中肺炎・細菌性肺炎疑い例の外来治療の場合

ガイドラインには以下のごとき「治療の目安」が載っています。

  • 1.基礎疾患、危険因子がない場合:(βラクタマーゼ阻害剤配合)ペニシリン系経口抗菌薬(高用量)

  • 2.65歳以上あるいは軽症の基礎疾患(糖尿病、腎疾患、肝疾患、心疾患)がある場合:βラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン系±マクロライド系またはテトラサイクリン系経口抗菌薬

  • 3.慢性の呼吸器疾患がある、最近抗菌薬を使用した、ペニシリンアレルギーのある場合:レスピラトリーキノロン系経口薬

  • 4.外来で注射を使用する場合:CTRX




細菌性肺炎疑い例の場合、PISPあたりまでを含む肺炎球菌が、まずはメインターゲット。


他に、喫煙者、COPD患者さんのように、線毛機能が低下していそうな方では(地域によって、BLNARまでを含む)インフルエンザ菌とモラクセラ、大酒家ではクレブシエラ、誤嚥にご縁がありそうな方は嫌気性菌、このあたりの菌を想定しておきます。


ただ、外来での治療ということになりますと、もちろん軽症であるのはその通りなのですが、入院と違って、治療後の経過を事細かに追うことができないという点で少〜し注意が必要です。


入院患者さんなら、翌日には呼吸数が減って、ラ音が改善して…と効果判定ができるわけですが、外来患者さんではそうは参りません。次回受診時は数日後であったり、場合によっては1週間後であったり。ことによると「良くならない」と他院に行かれたりして、再受診なし、もあり得るわけです。


ですからどちらかというと、エンピリックな場合には、広めのカバーを意識する場面もあろうかと思います。


まあ基礎疾患がなければペニシリン大量でよろしいかと思いますが、高齢、基礎疾患ありなど、症候がハッキリしない、あるいは少し後がない状態の患者さんであれば、非定型病原体、嫌気性菌などをしっかりカバーしたいわけです。


そうなると、βラクタマーゼ阻害薬を配合したペニシリンが良いとか、マクロライドやテトラサイクリンを併用するのがいいとかいう話になります。



続いての項目、慢性の呼吸器疾患がある、最近抗菌薬を使用したという患者さんの場合。回りくどい書き方をしていますが要するにBLNAR対策です。こうなると経口薬では(私の嫌いな)レスピラトリーキノロンになってしまいます。


他にペニシリンアレルギーのある場合にもレスピラトリーキノロン系経口薬、となっておりますが、誤嚥があるとかインフルエンザ菌でなさそうならCLDMでも良いわけです。


最後に、患者さんが事情でどーしても入院できない、何とか外来でいけそうだ、でも点滴をしておきたい、というワガママな状況では、1日1回点滴で効果のあるCTRXの出番です。特に前述のBLNAR対策が必要な場面では効果的と言えるでしょう。


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posted by 長尾大志 at 19:24 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年10月29日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」31〜肺炎治療の流れ2・検体を採ったら、グラム染色の結果を解釈

そういうわけで、良い検体(喀痰)を採ったら、グラム染色をしましょう。


グラム染色の具体的な手順や、どんなんが見えたらどう解釈、などは写真も豊富な成書をご覧頂きたいのですが、グラム染色から原因菌を想定し治療薬に反映させる、基本的な考え方みたいなところを書いておきます。



1.グラム陽性の双球菌が見えたら

これはもう、肺炎球菌でいいでしょう。初心者のうちは、それさえわかればグラム染色をやった価値は充分ありますね。


市中肺炎患者さんの喀痰から肺炎球菌を見つけたら、自信を持ってペニシリンを使いましょう。ただし、何度も書いていますが、量は目一杯です。



2.グラム陽性球菌が集塊状に見えたら

ブドウ球菌を連想します。ここで大切なことは、「だから、ブドウ球菌肺炎である」と思わないこと。良質な喀痰であること、そして貪食像があるかどうかの評価が必要です。


貪食像があってMRSAの存在を疑わせる臨床状況があれば、MRSAもカバーする必要が出てくるかもしれませんが、貪食像がなければ保菌かと考えていける、という感じです。



3.グラム陰性桿菌が見えたら

緑膿菌かどうかが問題になってきます。技師さんや慣れた先生に見てもらいましょう。良質な痰から得られた緑膿菌は、きわめて重要な意味を持ちます。必ず培養し、感受性検査を行いましょう。


インフルエンザ菌の場合にも、耐性パターンによって治療薬が異なりますから、施設や周囲での菌の状況を知っておく必要があるでしょう。


ちなみにインフルエンザ菌、耐性パターンによる抗菌薬の選択は、

  • BLNAS :ABPC

  • BLNAR:第3世代セフェム

  • BLPAR:βラクタマーゼ阻害剤+ABPC配合剤


となりましょう。



4.多様な菌が見えたら

嫌気性菌の可能性が想定されます。誤嚥の要素を確認する必要がありますね。



5.菌が見えなかったら

色々な可能性がありますが、臨床状況から(マイコプラズマをはじめとする)非定型病原体が想定されるのであるならば、合致する所見と言えます。また、肺炎以外の疾患である可能性も想定する必要があるでしょう。


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posted by 長尾大志 at 18:16 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年10月26日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」30〜肺炎治療の流れ1

「もうお腹いっぱい」「いい加減にしろ!」「UZA!」との声もなく、長々と抗菌薬のお話を続けて参りましたが、そろそろよろしいでしょう。


どういう文脈であったか、自分でも忘れかけていますが、これ、肺炎の治療を考えていたのですね。多くの方はもうお忘れでしょうから、少しおさらいをしておきましょう。




肺炎の診断、治療を考える上で大切なことは、

如何に適切な抗菌薬を使うか

に尽きると思います。


原因となる菌に対して、できる限りのピンポイント攻撃をしたい。絨毯爆撃でも原因菌は死に絶え、患者さんは良くなるでしょうが、必ず爆撃の後の焼け野原に耐性菌が生えてきて、後顧の憂いとなるわけで、人類全体の将来を考えるならば、できる限り爆撃機は来るべき「背水の陣、総力戦」に備えて温存しておきたいところです。


書いていて、皆さんが文脈についてきておられるか不安になってきました。何言ってるかよくわからん、という方は、この記事(3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」)をできれば1からお読みください。



適切な抗菌薬を選択するためには、原因菌が何であるかを見定める必要があります。見定めるために必要なポイントは、


  • 肺(など)から菌を検出する。

  • 菌が検出されなければ、状況証拠から類推する。



これしかありません。


まずは、菌を検出する努力をしましょう。生半可な努力では検出できません。具体的には、


  • 良質な(唾液ではない)喀痰を採取する。痰が採れたらちゃんとした良質の痰であるか肉眼で確認しましょう。

  • 痰の喀出が困難な場合、3%食塩水などを吸入の後排痰を試みる。

  • 気管支鏡、局所の穿刺などを試みる(特に嫌気性菌が疑われる場合は、喀痰からの検出は空気に触れるために困難です)。

  • 血液培養を採取する(複数箇所で、複数回)。

  • 尿、便、膿瘍など、採れそうなところのモノはすべて採る。



これらは意識をしておかないとなかなかできることではありませんが、判断材料は多ければ多いほどいい。「尿なんて、関係ないところのモノを採っても、判断に迷うだけじゃないの?」いえいえそうではなくて、それを判断するスキルを身につけるのが研修なのです。


奇しくも今朝の教育カンファレンスで言ったことなのですが、物的証拠がないところでの判断はバクチの要素が大きくなります(もちろん、その要素を最小にするべく、状況証拠を積み重ねていくわけですが)。


事件があったときに犯人を推定するにあたって、物的証拠は何よりの手がかりとなるはず。それの蒐集をせずして、犯人捜しをするのはちょっと違うんじゃないの?と、ドラマを見ていると思いますよね。じゃあ、臨床の場でもそうしましょう。


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2012年10月25日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」29〜抗菌薬の種類と特徴19・リンコマイシン系

ダラダラゾシン、とか、ダラダラクラリスロマイシン、とか、あまりいい意味で語られてこなかったダラシンですが(勝手にお前が変な書き方をしただけだろ、という声もなく)、実は大変使えるお薬です。


ただし、誤嚥にダラシン、みたいな感じで何となく使われることが多いことも確か。もう少し知っておかれると良いことをまとめたいと思います。



リンコマイシン系の抗菌薬は、クリンダマイシン(CLDM:ダラシン)だけ知っておかれれば大丈夫でしょう。CLDMのスペクトラムはグラム陽性球菌と嫌気性菌です。ペニシリンに似ていますね。このスペクトラムから、誤嚥にご縁のある肺炎にはダラシン、とされてきたのです。


ガイドラインでも、広域抗菌薬を投与する場面で嫌気性菌のスペクトラムがあやしい第3世代〜第4世代セフェムやキノロン系抗菌薬を選択した場合、嫌気性菌(とグラム陽性球菌)をカバーする目的で追加されていますね。


基本的には殺菌性作用ではなく、静菌性作用があるということですが、それで効力が殺菌性抗菌薬より劣るということはなさそうです。通常の免疫力のある患者さんには普通に使って大丈夫でしょう。


メリットとして、CLDMは肝代謝であるため、腎機能障害があっても基本的に量を調節する必要がない、ということが挙げられます。また、ペニシリンなどにアレルギーがあってもこちらは大丈夫なので、そういうときの代替薬としても重宝します。



CLDMといえば、偽膜性腸炎が有名です。CLDMに限らず、腸内細菌(嫌気性菌も多い)の多くが死滅してClostridium difficileが生き残る菌交代減少の結果発症します。CLDMに限らず、抗菌薬治療後の下痢、血便等を見たら偽膜性腸炎を疑う必要があります。


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2012年10月24日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」28〜抗菌薬の種類と特徴18・アミノグリコシド系抗菌薬・モノバクタム系抗菌薬

その使いにくさから、一時期完全に?忘れ去られた存在となったものの、ガイドラインで取り上げられたことで再び脚光を浴びつつある、そんな感じでしょうか。アミノグリコシド系。


こちらはそもそもから現在に至るまで、グラム陰性桿菌専用といっても良いスペクトラムを持ちます。特に緑膿菌に対して、しばらく使われていなかったことから感受性が保たれていたりしまして、治療のkey drugとなることもあります。


何が使いにくいか、といいますと、腎毒性や第8脳神経障害といった副作用、筋注があったり静注があったり血中濃度を見たり、という使用の煩雑さ、要するに「何も考えない」で使うことができない、という点であります。だから生き残った、良かった、という面もあるのですが。


モノバクタム系はアミノグリコシド系とよく似た、グラム陰性桿菌(緑膿菌を含む)専用スペクトラムで、アミノグリコシド系よりも比較的使いやすくて個人的には好きなのですが、なぜか当院の緑膿菌は一時モノバクタムがダメで、いつの間にやら採用中止となってしまいました。マイナーすぎるところもあって、採用しているところは少ないのではないかと思います。


でも、モノバクタム系のアズトレオナム(AZT:アザクタム)なんかを適切にびしっと使える先生、かっこいいな〜と思いますね。



アミノグリコシド系に限らず、抗菌薬を使う際には「書いてある最大量を使う」が原則ですが、アミノグリコシドの場合は効果が投与後の最大血中濃度に依存するため、1回投与量をできる限り高めてあげることが必要です。


例えばゲンタマイシン、保険による認可用量・用法は80〜120mg/日を1日2〜3回分割投与、となっていますが、Sanfordによる推奨用量は5mg/kg/日。体重30kgで150mg/日必要となります。


ですから、認可容量を超えず、かつ最も効果がありそうな投与法としては、どうしても120mg/回の1日1回、とせざるを得ません。それでも全然足りないわけで…まあそこら辺は、主治医の裁量で、ということになるでしょう。


用量やTDM(therapeutic drug monitoring:治療薬物モニタリング)の細々としたことに関しては、院内肺炎ガイドラインに詳しく書かれていますので、使ってみよう、という方は参照してください。


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2012年10月23日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」27〜抗菌薬の種類と特徴17・キノロン系抗菌薬2・キノロン系で知っておくべきこと

「キノロンは何にでも効く」「何にでも使っていいや」と思っていると、時々足下を掬われることがあります。まあ、掬われたご本人は掬われたことにも気づかれないことが多いのですが…。是非知っておきたいポイントをまとめました。



■嫌気性菌にはあまり効力がない。

元々グラム陽性球菌には決して強くありません。レスピラトリーキノロンといっても、肺炎球菌に対する抗菌力を強化しているだけで、嫌気性菌はカバーし切れていません。そういうわけで、誤嚥にご縁のありそうな肺炎には、実は不向きです。肺炎だったら何でもいいわけではありません。



■経口薬で唯一、緑膿菌にスペクトラムがある。

これはまあ、どちらかというといい点なんですが…。


緑膿菌に限らず、経口薬でこれだけ広域のスペクトラムを持ち、組織移行もいい薬はありません。故に、緑膿菌感染症であっても外来である程度「粘れる」というところはあるでしょう。しかしながらその分、濫用されてしまうわけです。



■結核や非結核性抗酸菌に対しても有効である。

中途半端に?効いてしまうが故の問題点があります。


例えば、肺炎様の陰影があって、キノロン投与して何となく良くなったものの、治りきらない。やめたらまた悪化してきて、そこではじめて喀痰検査→肺結核と判明、という流れ。


時々見かけます。初診から診断までに2週間以上。doctor’s delayのため周囲に感染が広がり、下手をするとキノロン耐性になっていたりして。
単剤投与は耐性結核を生み出します。


肺炎にキノロンを使う前には、結核が除外されているか、検討が必要です。ていうか、こういうこともあるので、肺炎にキノロン系を闇雲に使うのは本当にオススメしません。



■マグネシウム、アルミニウムの含まれている薬剤と同時に内服するとキレートを形成し、吸収が悪くなる。

これは常識でしょうが、頻用されているが故に注意喚起しておきます。効くはずが効いていない、というときには色々な要素を考える必要がありますが、「何らかの理由で想定通りの血中濃度、組織濃度になっていない可能性」もその一つです。


また、キノロン系は(NSAIDsとの併用での)痙攣、めまい、光線過敏、QT延長、、血糖異常、横紋筋融解やアキレス腱断裂など独特の副作用があり多くの薬剤が使われなくなっていった経緯があります。今頻用されているキノロン系抗菌薬たちはそういった副作用が少なく「何も考えずに」使いやすいモノですが、それでも注意すべき、とされていることは知っておきましょう。


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2012年10月22日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」26〜抗菌薬の種類と特徴16・キノロン系抗菌薬・キノロン系を「使うべき」場面

やってきました、キノロン系。


ここで最も言いたいことは、「日常臨床でできる限りキノロン系を使わないように努めることで、抗菌薬使用に関するセンスが磨かれる」ということです、以上。




…というわけにもいかないので、もう少し歴史を紐解いてみましょう。


そもそもキノロン系は他の多くの抗菌薬と異なり、人間によって合成された化合物です。


キノロン系ができた頃の初期のキノロン(オールドキノロン)は、グラム陰性桿菌(と非定型病原体)にしか効果が期待できませんでしたが、その後着々と改良が進んできました。


そうしてできたキノロンは(オールドに対して)ニューキノロンと名付けられました。ニューキノロンになりますと、グラム陽性球菌にもスペクトラムが広がり、組織移行も良くなって、どんどん使用される場面が増えてきました。


そして近年、さらに改良が加えられたキノロンは、それまで弱点であった肺炎球菌への活性が高められて、肺炎など、気道感染症に(自信を持って)使えるようになりました。結果、「レスピラトリーキノロン」と銘打たれ、頻用されるに至っています。



確かに、肺炎球菌に強く、インフルエンザ菌にも( BLNAR にも!)効いて、非定型病原体もカバーする、何だったら緑膿菌にまでスペクトラムを有する、ということになりますと、もう肺炎の原因菌だったら何でも来い状態の、便利な、便利な抗菌薬。


それゆえ、かつてのマクロライドのように頻用されています。現実に、不適切な濫用でニューキノロン耐性肺炎球菌や、ニューキノロン耐性緑膿菌が報告されていて、今後の蔓延が心配されています。



実際には、キノロンでなくてはならない場面というのはほとんど無くて、呼吸器領域では


レジオネラ肺炎(キノロン静注用を使います)


ぐらいなのですね。

ウチのカンファレンスで「ク○ビットの点滴を使ってる」と発言して「レジオネラ肺炎だと思ったの?」と訳のわからないことを言われた方、そういうことなのです



まあもちろん、副作用で他剤が使えない…、とか、耐性が…、とか、移行が…、とか、色々な理由で使わざるを得ないことはありますが、その場合にも、「根拠を明示する」習慣をつけて、根拠無く何となく使う、ということを避けて頂くのがいいと思います。


とっても素晴らしく、大事な薬ですので、できるだけ出し惜しみしましょう。


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2012年10月19日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」25〜抗菌薬の種類と特徴15・カルバペネム系抗菌薬3・カルバペネム系はどれも同じ?

現在カルバペネム系には以下のようなものがあります。

  • イミペネム・シラスタチン(IPM/CS:チエナム)

  • メロペネム(MEPM:メロペン)

  • ドリペネム(DRPM:フィニバックス)

  • ビアペネム(BIPM:オメガシン)

  • パニペネム・ベタミプロン(PAPM/BP:カルベニン)



まあ、スペクトラムは大体同じ、で間違いはありませんが、いくつか注意点。



パニペネム・ベタミプロン(PAPM/BP:カルベニン)は、ちょっと癖があります。というのは、グラム陽性球菌、嫌気性菌に対してはめっぽう強い一方、グラム陰性桿菌、特に緑膿菌については、明らかに弱いとされているのです。


院内肺炎ガイドラインでは、主にグラム陽性球菌を念頭に、軽症例に推奨されていますが、緑膿菌に対して若干の抗菌力があり、他のカルバペネム系薬と交差耐性を示すとも言われています。つまり、緑膿菌のいるところで使うと、「効かない上に耐性がつく」わけですね。


そのため、「(原因菌ではなく、保菌であっても)緑膿菌がいそうであれば使わないように」と明記されているのです。以前は肺炎にもよく使われていましたが、大変具合が悪いので、個人的にはもう使っていません。グラム陽性球菌、嫌気性菌狙いなら、他にもいい薬がたくさんありますから。



他の違いといえば、

  • IPM/CSが比較的グラム陽性菌に強い。

  • IPM/CSは痙攣の報告が他より多い。

  • MEPMとDRPMは1日3g使用可能となり、海外(米国)の使用量に近い。



まあ、細かいことは他にも色々あるようですが、「どれも大差ない」という意見も多いですね。施設にカルバペネム系は1つだけ、というところも多いでしょうから、(PAPM/BPでなければ)あるやつを使う、でいいんじゃないでしょうか。


カルバペネム系の間での違い、よりも、カルバペネム系と他系統の薬剤の違い、を知る方が有用であり重要です。


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posted by 長尾大志 at 12:51 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年10月18日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」24〜抗菌薬の種類と特徴14・カルバペネム系抗菌薬2・カルバペネム系が「効かない」場面

カルバペネム系については「ほぼ万能である」と言っておけば、大体間違いではないので、それで済ませてもいいのですが、効かない場面も是非知っておいて頂きたいものです。


特に頭を使わずにカルバペネム系を開始して、効かなかったら…どうしましょう。お手上げですか。



■カルバペネム系が「効かない」「使えない」場面

  • 量が不足:未だにあちこちでよく見かけますけど、いい加減にしてほしいものです。βラクタム系は量もそうですし、多数回投与が基本です。1日2回はダメ、効きませんよ。

  • スペクトラムが届かない:MRSAぐらいはさすがに…誰でもご存じでしょうが、非定型菌(レジオネラとか)はダメで、他にも腸球菌の一部とか、S.maltophiliaなどもアキマセン。

  • 耐性菌である:スペクトラムが理論的に良くても、耐性菌であればダメです。なので、培養から感受性を知ることがきわめて重要なのです。また、自施設の耐性具合を把握しておくことも重要です。

  • そもそも肺炎ではない、合併症がある:診断違い。学生さんは論外、と思われるかもしれませんが、現実問題、結構ありますよ(苦笑)。心不全、うっ血、その他の合併症があると治りにくいし。



この手の話になると熱くなってしまうので、今日はそこそこで。
明日の告知をしておきましょう。




     第6回卒後臨床研修イブニングセミナー

日時:平成24年10月19日(金) 18:30〜19:45

会場:臨床講義室1(臨床講義棟1階)

学術情報 18:30〜18:45 
 『吸入ステロイド喘息治療剤
          アズマネックス ツイストヘラー』MSD株式会社

特別講演 18:45〜19:45
 『「咳がでる患者さん」を診たときに〜病歴と身体所見から診断にい
          たり、正しく治療するためのClinical Pearls』
            呼吸器内科 講師(学内) 長尾 大志 先生

座長:滋賀医科大学医学部附属病院 消化器内科 助教
    医師臨床教育センター セミナー担当 稲 富 理 先生



そもそもこのイブニングセミナーは研修医、学部6年生向けのセミナーですが、今回のこれに関しては3年目とか4年目の、外来をやるようになったドクター向けかもしれません。

まあでもその時期の(特に他科の)ドクターに向けてセミナーをやることは現実にはございませんので、今回のお話が多くの方々にとっては、人生最後のちゃんとした咳に関する講義を聴く機会となるでしょう。


たかが「咳」、されど「咳」。咳が出るには理由があるのです…。


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posted by 長尾大志 at 12:56 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年10月17日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」23〜抗菌薬の種類と特徴13・カルバペネム系抗菌薬1・カルバペネム系を「使うべき」場面

やってきました、カルバペネム系。ひょっとしたら、これをご覧の方の中にも、「ウチの病院では、肺炎にはまずカルバペネムを使っています。」という方もおられるかもしれません…残念!


ややこしいことを言い出せばきりがありませんが、カルバペネム系は最終兵器であって(最強兵器とは限りませんが…)、大事に使っていただきたい、ということは何度でも言っていきましょう。こいつらの次(の抗菌薬)はありません。


そういうわけで、まともな病院!?であれば、カルバペネム系などには登録制のような、何らかの使用制限がかかっていることが多いはずです。
まあ、本当にまともな病院であれば、使用制限しなくても滅多に使われないはずですけど



カルバペネム系については「ほぼ万能である」と言っておけば、大体間違いではないので、それで済ませてもいいのですが、いくつか是非知っておいて頂きたいことを書いておきます。あと、以前に述べたゾシンについても、ほぼ同じことですので同様に考えていただければと思います。



■カルバペネム系を「使うべき」場面

呼吸器領域、すなわち肺炎治療においてカルバペネム系を使うべき場面は、それほど多くはないはずです。


基本、これまで書いてきたとおり、抗菌薬は「これしか効かない」「これでなくてはならない」選択をすべきであって、「これだったら頭を使わずになんでも効くよ」という選択はすべきではありません。


抗菌薬選択戦略.jpg


赤い星には1の抗菌薬を使うべきで、4を使うべきではない。4を使うのは緑の星に対してのみ。この原則です。


しかしながら、「今日これからいく治療が万一失敗したら、この患者さんの命にかかわる」という場面では、赤い星から緑の星まで、あらゆる病原体に効く抗菌薬を(上の図なら4を)使うべきであり、そこで出し惜しみしてはいけません。ここは、勘違いしないようにしましょう。


要するにICUに入室されるような重症肺炎。この場合、レジオネラなどの非定型菌や耐性緑膿菌などを想定し、他剤との多剤併用でいくことになります。


あとは、良質な喀痰から緑膿菌が培養されたときのように、原因菌として緑膿菌が想定される場合、これも使ってよろしい。


日本のガイドラインであれば、軽症であっても、院内肺炎で下のリスク因子を満たす場合にはカルバペネム系の使用を考慮、としてあります。


  • 15日以上入院している。

  • 第3世代セフェム系抗菌薬を使用したことがある。

  • COPDなどの慢性気道疾患がある。



この場合、使う「べき」とは申しませんが。



で、ここからが大事なのですが、こういう広域抗菌薬を開始する前には、必ず「ありとあらゆる培養」を採るようにしましょう。文字通りのあらゆるもんです。


そして、その結果、緑膿菌の可能性が低い、となったらde-escalationのチャンス、という感じで進めていくのです。

…と前にも書きましたが、de-escalationについても近々説明をしなくてはなりませんね〜


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2012年10月16日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」22〜抗菌薬の種類と特徴12・マクロライド系抗菌薬2・マクロライドの「気道分泌都市伝説」

マクロライド系が頻用されている根拠の一つに、「気道分泌を整える作用」「線毛運動を改善させる作用」みたいな都市伝説?があります。


これの根拠は、びまん性汎細気管支炎(Diffuse panbronchiolitis:DPB)だと思われるのですが、この疾患は線毛機能が低下することで発症する副鼻腔炎+びまん性の細気管支炎です。


DPB発症の機序を理解する。


このDPB、かつては治療法もなく、平均予後2年とも言われた「難病」でありましたが、エリスロマイシン少量長期療法によって、感嘆、いや「簡単に治る」疾患となったのです。イヤもう当時は感嘆の嵐…。


未だにこの作用機序がすべて明白になった、とは言い難いところでありますが、少なくともエリスロマイシンの抗菌作用以外の「気道分泌を整える作用」が大いに功を奏していることは確か。


そこから、気道分泌の問題にはエリスロマイシンが頻用されるようになってきました。副鼻腔炎にエリスロマイシン、気管支拡張症にエリスロマイシン、気管支炎にエリスロマイシン…そして、痰が多ければエリスロマイシン。


残念ながら、DPB以外のこうした使い方にはエビデンスも根拠もなく、昨今では批判の多いところであります。まあ、他に薬がないから、仕方なく使っている面もあり、痛し痒し、でもあったりするのですが。


そこへさらに新しいクラリスロマイシンなどのニューマクロライドがスペクトラムの拡大と副作用の低減を謳って登場したわけです。


使いやすく、肺炎球菌などにも効果があるクラリスロマイシンは、「何も考えずに使える」抗菌薬として、瞬く間に市場を席捲したのでありました。


最初はエリスロマイシンが効かなくなってきたDPBに対して、次第に副鼻腔炎にクラリスロマイシン、気管支拡張症にクラリスロマイシン、気管支炎にクラリスロマイシン…そして、痰が多ければクラリスロマイシン。


今でも某科では、副鼻腔炎にダラダラクラリスロマイシン(略してダラシン、ではありません)、をよく見かけます。



というわけで、細菌感染に対する翼をもがれてしまったクラリスロマイシン(CAM)。今更、という感は否めませんが、呼吸器領域での適正な使用法を考えてみましょう。



  • 非定型肺炎:主にマイコプラズマだと思いますが、以前にも書いたように若い人の軽症肺炎だったら、CAM単剤でも良さそうです。

  • 百日咳:こちらを活動期に使用できるタイミングは難しいでしょうが、周りで流行っていれば自信を持って使いましょう。

  • 非定型(非結核性)抗酸菌:最近は非結核性、といわれますが、昔の名前で非定型。要するに、非定型にはCAMってことでよろしいでしょうか。



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posted by 長尾大志 at 18:42 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年10月12日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」21〜抗菌薬の種類と特徴11・マクロライド系抗菌薬1

それでは抗菌薬のお話に戻りましょう。


まあ、ペニシリンとセフェムが終わったら、終わったようなもんですが。というのも、ここからは割とお話がシンプルなので、長々とは続かなくていい(ハズ)なのですね。


マクロライド系。日本では不適切に濫用されていて、菌の耐性化がじゃんじゃん進んでいるのが問題です。以上。





というわけにもいかないので、もう少し歴史を紐解いてみましょう。


そもそもマクロライドは、βラクタム系(細胞壁合成阻害薬)と異なり、細菌の蛋白合成を直接阻害するという機序で働きます。そのため、細胞壁を持たないマイコプラズマや、細胞内寄生菌であるクラミドフィラやレジオネラなど、βラクタム系が無効な微生物に対して効果がある。これが特徴です。


また、元々のスペクトラムがグラム陽性球菌と、一部のグラム陰性桿菌ということで、肺炎をはじめとする気道系感染の原因菌を広くカバーするのです。


そして(実はこれがキモなのですが)、安全性が高い。小児に使っても安全。これはつまり、「何も考えずに使える」ということにつながります。



これまでにも繰り返して強調してきましたが、「何も考えずに使える抗菌薬は、ずぼらに使われて、耐性菌を生み、使い物にならなくなる」流れがあります。マクロライド系はまさにその流れに乗った形で、どんどん耐性化が進み、使えなくなっていったんですね。私の世代あたりの方々は印象深いのではないでしょうか。


具体的には、小児にバンバン使われたのが痛かったようですね。「子供が熱を出している」事象に対して、「とりあえず」処方する抗菌薬として、何となく効きそうで安全そうなマクロライド系を「何となく」処方していた、ということでしょう。


何てったって子供たちの間では菌は移動し放題(苦笑)。耐性がつけばその菌は広がり放題。ということで、小児の中耳炎や副鼻腔炎の原因菌であり、そのあたりに常在すらしている肺炎球菌に対しては、9割方マクロライドが効かないという悲惨な状況になりました。



肺炎球菌に効かない肺炎の薬なんて…クリープを入れないコーヒーみたいなもんで(このたとえも私の世代向け?)、今や使われる機会が激減…と思いきや、結構使われていたりします。日本は世界で一番使ってるとか。それが、最初に書いた「βラクタム系が無効な微生物(=非定型病原体)」。それと、気道系の分泌がなんちゃら。そして、「何となく」。



特に若い世代の人々に多い、比較的軽症の肺炎、これはマイコプラズマが多い。マイコプラズマに対してはマクロライド単剤でもいいでしょう。とはいえ、耐性マイコプラズマが問題、とキノロンメーカーさんが煽ってきていて、専門家の先生方でもおっしゃることは色々です。


まあ個人的には、キノロンを温存したい派ですので、マイコっぽい軽症肺炎だったらマクロライドでいいんじゃないか、とは思っていますが。


ただ、もうそろそろ、「何となく抗菌薬を出さないと不安だから」マクロライドを処方するのは、やめにしましょう。ホンマモンの肺炎球菌感染だったらまず効かないし、上気道炎みたいに使わなくたって良くなるものも多いわけで。きちんと頭を使って診断をし、原因菌を考えて薬剤を選択したいものです。


気道系の分泌云々に関しては日を改めます。


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2012年10月05日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」20〜抗菌薬の種類と特徴10・セフェム系抗菌薬6・第4世代セフェム

第3世代の反省を踏まえて開発されたのが、第4世代セフェムであります。


■セフェピム(CFPM:マキシピーム)
■セフォゾプラン(CZOP:ファーストシン)
■セフピロム(CPR:ブロアクト、ケイテン)


これらはグラム陽性球菌に弱くてMRSAを蔓延らせた第三世代の反省から、グラム陽性球菌への活性が強化されました(とはいえ、第一世代と同程度あるいは以下)。グラム陰性桿菌への作用はCAZと同程度に保たれています。そういう意味ではほぼ万能の抗菌薬、と言えましょうか。


しかし、とき既に遅し。MRSAや耐性緑膿菌の台頭もあり、そういうときには役立たず、となっています。あと、嫌気性菌にはアカンので、誤嚥性肺炎には不向きです。


昨今しばしば使われる場面は、何だか分からないけど発熱していて、細菌感染を疑うとき、中でもグラム陰性桿菌、緑膿菌を疑うとき、かつ嫌気性菌を疑わないときであります。


その代表は、発熱を伴う白血球減少症(FN:febrile neutropenia)でしょう。腸内細菌や(素直な?)緑膿菌による菌血症、敗血症に対してはよい適応かと思います。


また、原因菌の不明な院内肺炎(中等症)のempiric therapyでもガイドラインで推奨されていますが、上記の通り、誤嚥がありそうならCLDMとの併用が勧められています。


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2012年10月04日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」20〜抗菌薬の種類と特徴9・セフェム系抗菌薬5・第3世代セフェム2・セフタジジム

第3世代はセフェム黄金時代と没落の歴史。進化について2種類の方向性がありました。1つは、グラム陽性球菌、グラム陰性桿菌の耐性菌対策。もう一つは、グラム陽性球菌を捨てて緑膿菌へのスペクトラムを得ること。


前者の代表セフトリアキソンは昨日紹介しました。今日は後者の代表、セフタジジムを取り上げましょう。


■セフタジジム(CAZ:モダシン):βラクタマーゼによって分解されにくくなり、緑膿菌を含む多くのグラム陰性桿菌に有効となりましたが、それと引き替えにグラム陽性球菌に対する効果は全般的に劣ってしまいました。


この第3世代にきて、グラム陰性桿菌のほとんど、緑膿菌にまでもスペクトラムが広がったため、「最強」の称号が付き、セフェムは黄金時代を迎えます。


…しかし、黄金時代は長く続きません。


CAZのみならず、第3世代セフェムで緑膿菌にスペクトラムを持つものは、グラム陽性球菌への効果が弱いことから、結果的にMRSAが生き残って蔓延る原因となりました。また、濫用によって緑膿菌は軒並み耐性を獲得し、より治療しにくくなってきているのです。


そんなこんながありまして、CAZなどは使われる機会が激減、まさに没落の途上にあると言ってしまいましょう。いや、まだまだ使える余地はあるのですが、もはや「何も考えずには」使えないので、敬遠される傾向にある、と言っておきましょうか…。


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2012年10月03日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」20〜抗菌薬の種類と特徴8・セフェム系抗菌薬4・第3世代セフェム1・セフトリアキソン

第3世代。セフェム黄金時代と没落?の歴史を振り返らなければなりません。


第3世代のセフェム系抗菌薬も、進化について2種類の方向性がありました。1つは、グラム陽性球菌、グラム陰性桿菌の耐性菌対策。もう一つは、グラム陽性球菌を捨てて緑膿菌へのスペクトラムを得ること。


前者の代表がセフトリアキソン、後者の代表がセフタジジムです。



■セフトリアキソン(CTRX:ロセフィン):現在肺炎業界で、SBT/ABPC同様のエースと申し上げていいでしょう。いずれが前田か大島か(*前田敦子は現在、AKB48を卒業しています)。


セフェム系、あるいはペニシリン系においても問題となった耐性菌を克服した、素晴らしい抗菌薬です。


ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)にも極めて有効で、ペニシリンや1,2世代のセフェムが苦手としてきたBLNAR型インフルエンザ菌にも有効、さらには多くのグラム陰性桿菌に有効なのです。


また、緑膿菌には無効(何度も言いますよ、ここが一番大事!)ということで、市中〜軽症の院内肺炎に対して、「ほぼ」万能と言えるスペクトラムを持ちます。


あえて「」付きで「ほぼ」と書いたのには理由があります。理由はわかりますか?




マイコプラズマ・クラミドフィラ・レジオネラなどの非定型菌には無効!

正解。でも、だけじゃないです。もう一声!




嫌気性菌です。第2世代よりも弱いとされています。
…だもんで、誤嚥にご縁のありそうな肺炎には向かない。



とっても大事なところですので、まとめて、区別して覚えておきましょう。


  • CTRXは、PRSPやBLNARなど、耐性菌に強いが、嫌気性菌に効力が弱い。

  • SBT/ABPCは、嫌気性菌には強いが、BLNARにはダメ。



ですから、これらの使い分けは


  • 誤嚥にご縁がありそうならSBT/ABPC。

  • インフルエンザ菌にご縁がありそうで、地域のBLNAR率がある程度高ければCTRX。



と考えていただければいいのではないでしょうか。


CTRXとSBT/ABPCはどちらもエース級の働きをしていますが、似て非なるもの(生い立ちからして)なんですね。


子役から芸能界に入っていた大島優子とたまたまオーディションを受けた前田敦子。


切れのあるダンスと脱力系ダンス、びしっとした表情とふとした表情の魅力など、それぞれにそれぞれの特徴、良さがあるのです。プロデューサーは必ず特徴を生かして起用するわけですから、私たちも抗菌薬の特徴をよく理解して起用すべきなのです。


ちなみに私はどちらかが推し、というわけではありません。念のため


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posted by 長尾大志 at 16:23 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年10月02日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」19〜抗菌薬の種類と特徴7・セフェム系抗菌薬3・第2世代セフェム

第2世代のセフェムは、20年近く前には肺炎に頻用されてたんですけどね〜。最近(特に若い先生が)使う機会が減ってきました。


第1世代のセフェム、セファゾリン(CEZ:セファメジン)はペニシリナーゼを産生するグラム陽性球菌と、大腸菌、クレブシエラといったところを得意とするのでした。


次に臨床で問題になったのは、弱毒性のグラム陰性桿菌と嫌気性菌です。


第2世代のセフェムは、これらをターゲットに作られました。


第2世代でもそのターゲットによって、大きく分けて2つの系統に別れます。わかりやすくするために、いわゆる呼吸器系の感染を起こしてくる弱毒性のグラム陰性桿菌(インフルエンザ菌、モラクセラ)と、腹腔内感染の原因となる嫌気性菌(腸内細菌)に分けて考えましょう。



■セフォチアム(CTM:パンスポリン):グラム陽性球菌に加え、インフルエンザ菌、モラクセラにスペクトラムを広げました。βラクタマーゼにも抵抗性があるのですが、最近増えているBLNARにはアキマセン。それから嫌気性菌にもダメ。


そんなわけで、私が研修医になった頃は肺炎といえばこれだったのですが、昨今では誤嚥性肺炎も増え、特に若い先生には人気がありません。まあ、BLNARの少ない地域で誤嚥がなさそうなら大丈夫かと…。



■セフメタゾール(CMZ:セフメタゾン):CTMよりさらに嫌気性菌へとスペクトラムを広げ、腹腔内感染症に対しての1st choiceとして華々しくデビュー…したのでしょうか。私が消化器を回っていた頃は毎日使っていました。腹部手術の術前(術後)投与にも頻用されているかと思います。


また、SBT/ABPC登場前は誤嚥性肺炎に対してもよく使われていました。ただ、グラム陽性球菌やインフルエンザ菌にはCTMよりちと劣るようですので、厳密に言えば想定原因菌によって使い分けるのが理想でしょう。まあ、肺炎にCMZしか使わない施設でも、ちゃんと治っていましたが…。



さて、何よりも大きな第2世代のメリットと言えば…


緑膿菌に効かない


ということでしょう。いくら使っても、耐性を獲得させない。何度も繰り返しますが、緑膿菌に効く薬は、とことん出し惜しみしましょう。
(とはいえ、肺炎業界では第2世代の出番は少なし…。)


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posted by 長尾大志 at 18:35 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年09月28日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」18〜抗菌薬の種類と特徴6・セフェム系抗菌薬2・第1世代セフェム

第1世代のセフェム、特に注射薬は、ほぼセファゾリン(CEZ:セファメジン)と思っていただいていいでしょう。グラム陽性球菌と強毒性のグラム陰性桿菌がメインターゲット。


できた頃はペニシリンの過敏反応やペニシリナーゼによるペニシリン耐性が問題となっていたということでしょうか、過敏反応はペニシリンより少なく、構造上ペニシリナーゼに分解されない性質を持つ、という特徴があります。


そういうわけで、ペニシリナーゼを産生する菌に有効で、黄色ブドウ球菌(MSSA)、連鎖球菌(肺炎球菌を含む)、大腸菌、クレブシエラといったところを得意とします。


かつて、若い頃にとある病院で市中肺炎にCEZを頻用されていたのを覚えていますが…。今だったらどうでしょう。肺炎球菌、クレブシエラに効くので、ある程度は使えるか…いやいや、大事なインフルエンザ菌、モラクセラと嫌気性菌がごっそり抜けていますね。


となると、気軽に肺炎に対して使えるって感じではなさそうですし、他の感染症に対しても、これでOK、とはなかなかいかないようです。



現在よく使われる場面は、黄色ブドウ球菌(MSSA)と素直な大腸菌対策。というかこれだけ、みたいな感じになってきていますね。


具体的には、

  • 皮膚・軟部組織感染症(MSSAに対して)

  • 市中/急性/単純性尿路感染症(大腸菌に対して)

  • 術前予防投与(下部消化管、骨盤内、口腔咽頭部は嫌気性菌の関与が考えられるので難あり)



かつては術後に「感染予防」の名目でダラダラ使われていましたが、エビデンスがないことで今では術前にごく短期間使用されるようになっています。



使える場面が少ないというのはしかし、逆に考えるとメリットもあるわけです。


狭域抗菌薬のメリット、つまり余計な菌を殺さない、影響を与えないというのは、特にCEZの場合、腸内細菌(嫌気性菌)に有効ではない・影響を与えない=下痢しない、というメリットにもつながります。もちろん、余計なスペクトラムがないので耐性菌を作りにくい、というのも大いなるメリットですね。

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posted by 長尾大志 at 17:29 | Comment(2) | 肺炎ガイドライン解説

2012年09月27日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」17〜抗菌薬の種類と特徴5・セフェム系抗菌薬1・世代をたどって考える

むしろペニシリンより広く使われている感のあるセフェムですが、こちらも歴史を紐解くことで、より理解が深まることと思います。


基本的には、

グラム陽性球菌→グラム陰性桿菌に広げる→緑膿菌にまで行く→グラム陽性球菌がおろそかになり、MRSA蔓延→グラム陰性桿菌への効果はそのままに、陽性球菌にも効くようにする、という流れです。


この流れが、およそ第1世代→第2世代→第3世代→第4世代、という感じです。


草加市立病院 健康管理課 医長の大澤先生によるスライドには、ウルトラマンや怪獣たちがたくさん出てきて、(私たちの世代にとっては)非常にたとえがわかりやすいのですが、そのスライドをそのまま見ていただくわけには参りません。


でもあまりにもたとえがいいので、その考え方をしっかりお伝えしたいと思います。


第1世代は強毒菌が相手。
強敵の怪獣相手のウルトラマンをイメージしましょう。


弱毒菌にスペクトラムを広げてきたのが第2世代。
力押しの怪獣に加え、頭脳派宇宙人を相手にしていたウルトラセブンのイメージです。


次の第3世代では、さらに強敵に対抗すべく、2種類のアプローチがとられます。
1つは弱毒菌である緑膿菌への効果。
もう1つは肺炎球菌やインフルエンザ菌の耐性菌へ。

武器を手にしたウルトラマンジャックは、どのような敵にも立ち向かい、登場当初万能にも思われたのですが、しかしながらしばしば返り討ち(耐性)に遭い、兄弟の助けを得ることになります。


そしていよいよ第4世代。
当初から怪獣相手では万能に立ち向かっていたものの、すべての敵に単独で立ち向かう訳ではなく、しばしば父や兄の助けを求めていたウルトラマンエースとイメージが重なります。


第4世代が登場した頃には使う側(私たち)も単剤での使用は必ずしも好ましくはない、場面に応じて併用薬を使う、という具合に使い方が洗練されてきたわけですね。


ということで、ウルトラマンシリーズをご存じない方にとってはナンノコッチャ?な記事となりました。わかる方にはものすごくわかっていただけるのではないかと。大澤先生、どうもありがとうございました!


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posted by 長尾大志 at 16:10 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年09月26日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」16〜抗菌薬の種類と特徴4・ペニシリン系抗菌薬3・広域ペニシリン+βラクタマーゼ阻害薬

広域ペニシリンの弱点であった「βラクタマーゼに分解される」性質を補うべく、βラクタマーゼ阻害薬を配合して生み出されたペニシリン系抗菌薬は、現在肺炎治療においてかなり広く使われていると思います。それにはきちんと理由があるので、是非きちんと理解して使って頂きたいところです。



■緑膿菌に効かない広域ペニシリン+βラクタマーゼ阻害薬

  • スルバクタム+アンピシリン(SBT/ABPC:ユナシン・ユナシンS・スルバシリン)

  • クラブラン酸+アモキシシリン(CVA/AMPC:オーグメンチン・クラバモックス)



成人の肺炎に使われるのは、主に前者です。アンピシリンにβラクタマーゼ阻害薬であるスルバクタムを配合することによって、βラクタマーゼを産生するブドウ球菌や多くのグラム陰性桿菌、はたまた嫌気性菌にまで、一気にスペクトラムが拡大したのです。


こうなると、市中肺炎の原因菌(肺炎球菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌(MSSA)、モラクセラ、クレブシエラ、ミレリ・グループ、嫌気性菌)のほとんどにはOK、となりますよねー。万能万能。SBT/ABPCだけ覚えときゃいいじゃん…。



本当ですか???



こいつはどうですか?

Beta-Lactamase Negative Ampicillin Resistant。


βラクタマーゼに頼らず、アンピシリン耐性を獲得してしまったこやつ(インフルエンザ菌)には、効かないんじゃ…。


ハイ、その通り。


そういうわけで、耐性パターンとしてBLNARの多い地域で、インフルエンザを思わせる市中肺炎には、SBT/ABPCでの治療は失敗の可能性があるのです。


慢性呼吸器疾患があり、線毛機能が低下しているとインフルエンザ菌が定着しやすい素地になり、肺炎の原因となる可能性が高まる、その場合はSBT/ABPCが効かない可能性がある、ということです。



■緑膿菌に効く広域ペニシリン+βラクタマーゼ阻害薬

タゾバクタム+ピペラシリン(TAZ/PIPC:ゾシン)


こちらは、広域ペニシリンでも果たせなかった、緑膿菌に対するスペクトラムを獲得した、超広域のペニシリンにさらにβラクタマーゼ阻害薬を加えた、最強のペニシリンであります。当然、BLNARだって問題なし。


でもねー。緑膿菌に効く、ということは、これまでにさんざん書いてきたとおり、緑膿菌以外の感染症には使わない方がいい、ということであります。一般的な細菌に対してほぼ万能、カルバペネム的なスペクトラムを持っているため、「何だかよくわからない」「頭を使わず治療する」ときに使われがち。


心あるドクター諸兄におかれましては、努々そのようなことの無いよう、頭を使って感染症治療を行われるようにお願いしたいと思います。


だからゾシンについては、あまり詳しくは書きません…?


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posted by 長尾大志 at 16:22 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年09月25日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」15〜抗菌薬の種類と特徴3・ペニシリン系抗菌薬2・広域ペニシリン

PCGの構造を変更して、グラム陰性桿菌にも効くようにした、いわゆる広域ペニシリンという範疇に入るペニシリンには、緑膿菌に効くやつと効かないやつ、大きく分けて2種類あります。


現実的に日本で呼吸器領域の診療に使われるのは、ここのところですから、この2系統を覚えておきましょう。


■緑膿菌に効かない広域ペニシリン

  • アンピシリン(ABPC:ビクシリン)

  • アモキシシリン(AMPC:サワシリン)



グラム陽性球菌群(連鎖球菌、肺炎球菌)のPCGに加えて、グラム陰性桿菌のインフルエンザ菌に対するスペクトルを獲得しました。


てことは、多くの市中肺炎にはこれでOKか?スペクトラム的にはそうですね。
問題は耐性菌です。


肺炎球菌の耐性菌であるPRSPやPISPに対しては、肺炎の場合、よほどのこと(MIC≧4とか)でなければ、ペニシリンの増量で対応できるのでした。


ですので、市中肺炎の軽症例では、「ペニシリン経口、大量投与」が推奨されています。


インフルエンザ菌の耐性株はどうか。BLNAR(β-lactamase negative ampicillin resistant)は名前の中に「アンピシリン耐性」って入っているぐらいですから、効くわけがなさそうです。BLNAS(β-lactamase negative ampicillin sensitive)だったら問題なし。


また、βラクタマーゼを産生する菌には無効です。黄色ブドウ球菌、大腸菌やクレブシエラは産生するのでダメ。インフルエンザ菌だとBLPAR(β-lactamase positive ampicillin resistant)はアキマセン、ということです。これらに対しては、βラクタマーゼ阻害薬の助けが必要になります。



■緑膿菌に効く広域ペニシリン

ピペラシリン(PIPC:ペントシリン)


こちらは、広域ペニシリンでも果たせなかった、緑膿菌に対するスペクトラムを獲得した、超広域のペニシリンであります。当然、陰性桿菌であるインフルエンザ菌にも強い強い。


緑膿菌に効く、ということは、緑膿菌以外の感染症には使わない方がいい、ということであります。また、βラクタマーゼで分解されるので、βラクタマーゼを産生する菌にはやはり効き目がありません。ということで、βラクタマーゼ産生菌が増えている昨今では使いにくくなっています。


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posted by 長尾大志 at 18:10 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年09月24日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」14〜抗菌薬の種類と特徴2・ペニシリン系抗菌薬1

「上級医はペニシリンなんて使ったこともない」「院内にほとんど無い」というアナタ!こそ、ペニシリンについて学ぶべきでしょう。かくいう私も、研修医の頃はほとんどペニシリンについて教えて頂いた記憶がない。そういう施設、今でも少なくないんじゃないかと思います。

そんな若い先生方に、ペニシリンについてよーく知っておいてほしいものですから、ペニシリンの歴史を少し紐解いてみたいと思います。


今回も、正確を期すために草加市立病院 健康管理課 医長の大澤先生によるスライドを大いに参考にさせて頂いて、お話を進めていきますが、ペニシリン、いや、抗菌薬を考える上では、歴史について知っておくととっても理解しやすいんですね。でも、いきなりあれもこれも…と歴史を羅列されるとしんどい。


ですので、端折るところは端折り、なるべく大事なところをピックアップしてお伝えしていこうかと思います。



ペニシリンはご存じの通り、最初に発見された、最も歴史の古い抗菌薬です。


まあ最初のそれがペニシリンG(PCG)。
これができた頃は、第二次世界大戦があり、多くの戦傷者を救ったと言われています。


細かいことはさておき、PCGはグラム陽性球菌、中でも連鎖球菌などによく効きますが、呼吸器領域で使う機会は少ないと思いますので、歴史的位置づけを確認するにとどめましょう。


で、当初ペニシリンはガンガン使われたわけですが、そのうちに問題が出てきます。まあ、要するに効かないケースが出てきたのです。


元々グラム陰性桿菌には効きませんし、ペニシリンを分解する酵素、ペニシリナーゼを産生する菌にもペニシリンはあまり効きません。加えて、黄色ブドウ球菌もペニシリナーゼを産生する性質をもつようになり、耐性化してきたのです。


抗菌薬は、普及しだしてからわずか数年以内に、「たくさん使って耐性獲得される」という事態を招いていたわけです。嗚呼、歴史は繰り返される。



そこで人類は、ペニシリンの「改良」に着手します。


■1つは、構造を変更してペニシリナーゼに分解されにくくする。

これの代表がメチシリン。何でか知らないけど、聞いたことがある、っていう人は多いのではないでしょうか。


それもそのはず、メチシリンは、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の名前の由来になったものです。メチシリンがダメなら全部ダメ、ということは、そんなにすげー薬なのか。


いやー実はそうでもないんです。まあそもそも、黄色ブドウ球菌用として作られたメチシリンですが、メチシリンを使い出して(例によって)ほどなく、メチシリンに耐性を持つように菌の標的部位構造が変化した、これがMRSAなんですが、たまたま、その構造変化によって、ほとんどの抗菌薬が効かなくなってしまったのです。たまたまとはいえ、メチシリンは「MRSAを生み出した」汚名を着せられ、退場となってしまいます。


副作用の問題もあり、この系統のペニシリンは、我が国では表舞台から姿を消しています。



■もう1つは構造を変更して、グラム陰性桿菌にも効くようにする。

いわゆる広域ペニシリンという範疇に入るペニシリンです。この中にも、緑膿菌に効くやつと効かないやつ、大きく分けて2種類あります。


ペニシリナーゼ(βラクタマーゼ)で分解されるので、ペニシリナーゼを産生する菌にはやはり効き目がありません。



■また1つは、ペニシリナーゼ(βラクタマーゼ)阻害剤を混ぜる。

上記の広域ペニシリンにペニシリナーゼ(βラクタマーゼ)阻害薬を混ぜたものです。そのためにペニシリナーゼ産生菌に対するスペクトラムが広がりました。元の広域ペニシリンに、上記のごとく緑膿菌に効くやつと効かないやつがあるため、こちらも同様、緑膿菌に効くやつと効かないやつがあります。

βラクタマーゼ阻害薬が入っても、緑膿菌に効かないやつは効かない、ということです。



明日から各論です。


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2012年09月21日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」13〜抗菌薬の種類と特徴1・菌の分類

いつまでごちゃごちゃやってんねん、はよ抗菌薬の話せーや、という声もなく?、粛々と抗菌薬の話に入りましょう。


ここから先は、肺炎の原因菌として大事な菌を分類し、それらに対してどうか、という観点で見ていきます。


市中肺炎のガイドラインに載っている、原因微生物で非定型病原体(βラクタム系が効かない奴ら)以外のものを上から順に挙げてみましょう。


肺炎球菌
インフルエンザ菌

黄色ブドウ球菌(MSSA、MRSA)
モラクセラ
クレブシエラ

ミレリ・グループ
嫌気性菌

緑膿菌


間が開いているのは、頻度に開きがある、そのニュアンスをお伝えしたかったから


あと、院内肺炎や医療・介護関連肺炎においては、大腸菌をはじめとする腸内細菌系の頻度が高くなってきます。



このうち、肺炎球菌とミレリ・グループ、黄色ブドウ球菌、口腔内の嫌気性菌はグラム陽性球菌。
モラクセラはグラム陰性球菌。
インフルエンザ菌、クレブシエラ、主な腸内細菌、緑膿菌はグラム陰性桿菌ですね。


で、分類としては、まず大きくグラム陽性球菌群、グラム陰性菌群に分けます。


それから、βラクタム系の天敵、βラクタマーゼ産生菌(グラム陽性球菌でも陰性桿菌でもあります)はちょっと特別扱い。

また、市中肺炎の原因菌として割合が多いのと、少しやっかいなBLNARが増えている、ということでインフルエンザ菌も少し別扱いとなります。


緑膿菌はもちろん特別扱い。MRSAも然りですね。

ということで、来週に続きます。


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2012年09月20日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」12〜重症度分類・治療にどうかかわってくるのか。

発症の場、菌をどこでもらったかによって、肺炎の原因として想定すべき菌が異なる、そのために、発症の場別にガイドラインが決まっていることはご理解頂けましたか?


各々のガイドラインで次に行うべきこととしては、患者さんがどのくらい深刻な状況であるかを評価する、重症度の評価を行います。


評価した重症度の意味合いですが、市中肺炎の場合は、まず入院適応があるかどうかを判断するという、(特に専門外の医師が)現実問題として直面する問題の解決になる、大変有用な判定基準になっています。ですからこれは救急室で肺炎患者さんを診る可能性のあるすべての初期研修医が習熟してほしいところです。


もちろん重症度は予後予測因子でもあります。というよりむしろ、本来はこの重症度によって、予後を予測し治療に反映させる、という重要な役割を担っているのです。その一環として入院適応の判断も決められるわけです。


より重症と考えられる症例では、治療も待ったなし。従って、初期のエンピリック治療においては広域抗菌薬を使用せざるを得ない。使用すべき、ではないですよ。念のため(広域から入っても、培養結果などからde-escalationを考慮すべき、であることは言うまでもありません)。


また、医療・介護関連肺炎のガイドラインにおいては、重症度分類に加えて耐性菌のリスク因子を考慮に入れた「治療区分」という概念が使われていますが、これもやはり抗菌薬を選択するための分類になっています。


このように、重症度分類は、いずれのガイドラインにおいても、予後を予測し治療を決定する重要な指標となっているのです。



各々のガイドラインによって重症度を決める項目が微妙に異なるところが憎い、といいますか面倒なところですね。まあこれは、予後予測因子が市中肺炎か、院内肺炎かで異なるために仕方のないところではありますが…。


市中肺炎の重症度判定に使われるA-DROPシステムは、


A:Age(年齢)
D:Dehydration(脱水)
R:Respiration(呼吸)SpO2≦90%
O:Orientation(意識障害)
P:Pressure(血圧)


という項目を使用しています。これは、英国胸部学会が推奨するCURB-65とほぼ同じものなのですが、あらゆる実地臨床医を対象とし非専門医に広く使われることを基本理念とする我が国のガイドラインにおいて、CURB-65の「呼吸数」という項目は(非専門医にやって頂くには)無理があるため、むしろ最近はどこのクリニックにも置いてありそうなSpO2モニターによる計測値を項目に入れた、という経緯があるのでした。


しかしまあ、日本の臨床医は呼吸数を見ない、とガイドラインに明記されるって、かなり恥ずかしいことじゃないですかね。逆に、ガイドラインで「呼吸数を見よ!」って強調して、啓蒙しようという考えはなかったんでしょうか…


対して、院内肺炎ガイドラインはI-ROAD。


I:immunodeficiency(悪性腫瘍、または免疫不全状態)
R:Respiration(呼吸)SpO2>90%を維持するためにFiO2>35%を要する。
O:Orientation(意識障害)
A:Age(年齢)
D:Dehydration(脱水または乏尿)


順番とちょっとニュアンスが変わっただけで、ほとんど一緒やんけ、と思ったものです。
それなら語呂合わせも一緒にするのが、センスある語呂合わせってもんですが…。


まあ、ともかく、これの3項目以上に該当すれば重症群。


これに該当しない群は軽症、または中等症です。肺炎の重症度規定因子としてCRP≧20mg/dlと、胸部X線写真で陰影の広がりが一側肺の2/3以上、という、予後に影響を与えると調査で判明した2項目を満たすと中等症、満たさない場合を軽症としました。



市中肺炎と院内肺炎で共通するところを見てみると、年齢、脱水(某尿、血圧低下)、意識障害、呼吸状態(酸素化)が、肺炎の予後を決める、というところは間違いがなさそうです。少なくとも、救急室ではこれらの項目をササッと評価できるようになっておきたいですね。


医療・介護関連肺炎においては独特のシステムはなく、A-DROPやI-ROADを参考にして、重症度というか「治療区分」を主治医が決める、みたいなことになっています。


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posted by 長尾大志 at 17:39 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年09月19日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」11〜菌をもらった場所別の原因菌・市中でも院内でもない場所…

肺炎の分類としては、元々菌をもらった場所によって入ってくる菌が違う、そういう考え方から市中肺炎(家やその辺でもらう)と院内肺炎(病院に入院していてもらう)という2つのくくりがまず考えられました。


しかし、その定義でいうと入院はしていないので院内肺炎ではないんだけれども、市中肺炎といえるまで元気でもない、そういう人たちが見えてきたのです。



入院はしていない。そこまで重症の基礎疾患は持っていない。

  • でも、抗菌薬を繰り返し使用するような病歴があって、耐性菌が常在しているリスクがある。

  • あるいは、ステロイド、免疫抑制薬、抗癌剤などの治療によって免疫力が低下している。

  • もしくは、介護を受けていて、介護者の手指を介して耐性菌を受け取ってしまう。

  • はたまた、カテーテルを出し入れする必要があり、その取り扱いの過程で医療関係者の手指に触れる。

  • そんな感じで口腔内(や皮膚、腸管内)の常在菌が耐性菌に入れ替わり、それを誤嚥してしまいがちである。



このような方々は耐性菌リスク、誤嚥のリスクが多く、治療や予後を考える上で、独立したグループとして考えて対応する必要がでてきました。


日本においても2011年、色々な議論の末に、市中、院内に次ぐ第3の概念、慢性期病棟入院を含む医療・介護関連肺炎(NHCAP:nursing and healthcare-associated pneumonia)という概念ができたのです。


その定義は、

  • 長期療養病床または介護施設に入所

  • 90日以内に病院を退院した

  • 介護*を必要とする高齢者、身体障害者

  • 通院にて継続的に血管内治療*を受けている


  *介護…身の回りのことしかできず日中の50%以上をベッドで過ごす
  *血管内治療…透析・抗菌薬・化学療法・免疫抑制薬など

です。おおよそ上に書いたようなことが網羅されているかと思います。


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posted by 長尾大志 at 16:59 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年09月18日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」10〜院内肺炎の原因となる主な耐性菌・MRSA

皆さんよくご存じの通り、MRSAは多剤耐性菌であり、そんじょそこらの抗菌薬では全く歯がたちません。


ですので、抗菌薬治療の末に、菌交代が起こって、その結果MRSAが生み出される…みたいな理屈があります。


しかも、元々は表皮に住んでいる菌ですから、一度生み出されればヒトの表皮に常在して、(医療従事者の手指から手指へと伝わっていき、)音もなく過ごしているわけです。そして、宿主の免疫力が低下、あるいは周囲の競合する菌が絶滅したときに蔓延ってくる。


そういうわけで、院内で感染する菌として、重要な意味を持つわけです。
また、使う抗菌薬もある意味、特別な薬(しかも高い!)ですから、MRSAが感染の原因菌であるかどうかの見極めは、大変重要であると言えます。



ということで、肺炎のガイドラインにおけるMRSAの取り扱いを見てみましょう。


市中肺炎のガイドラインでは、市中肺炎における頻度が少ないこともあり、あまり大々的に取り上げられていませんが、院内肺炎と医療・介護関連肺炎のガイドラインでは大きく取り上げられています。これらのガイドラインでは、どういうときに疑うべきか、という指標が挙げられていて、参考になります。



院内肺炎ガイドラインにおいて、MRSAの保菌リスクが疑われるケースとして挙げられているのは、

  • 長期(2週間程度)の抗菌薬投与。

  • 長期入院の既往。

  • これまでに鼻腔や痰などからMRSAが検出された。


という項目ですが、これはあくまで「保菌リスク」であることに注意してください。


どういうことか。
これを満たせば、「MRSA肺炎として治療せよ」ということではなく、「MRSAを保菌している可能性があると考えよ」ということ。


たとえば、院内肺炎を発症した患者さん。喀痰グラム染色でブドウ球菌の貪食像があったと。で、2週間抗菌薬を投与されていたならば、これはMRSAが原因に関与している可能性が高く、治療当初から抗MRSA薬を併用していくことで、予後の改善につながるものと想定されているのです。


一方、院内肺炎患者さんで仮に上記の条件を満たしても、喀痰グラム染色で何も出ていない。しかも軽症、となりますと、初期治療でMRSAを叩きにいく根拠に乏しい、ということになります。

治療の具体的な考え方は後に詳しく述べますが、こんな感じに理詰めで決めていきます。



医療・介護関連肺炎のガイドラインでは、「耐性菌リスク」として、

  • 過去90日以内に広域抗菌薬を2日以上投与された。

  • 経管栄養を施行された。


という項目がありますが、これらは緑膿菌はじめ、他の耐性菌も含めたリスク因子です。MRSAのリスクは「MRSAが過去に分離された」ことでの判断となります。




このようにガイドラインではMRSAを取り上げていますが、(以前にも紹介しましたが)大阪大学感染制御部の朝野先生は、「普通の肺炎の表現型(浸潤影を生ぜしめる肺炎)でMRSAが原因菌であることは、感染症の専門家としては考えられない」とおっしゃいます。


MRSAは、耐性菌でもありますが、その前にブドウ球菌であります。ブドウ球菌による感染症は、組織障害性が特徴です。肺であれば、普通の肺炎ではなく、肺膿瘍や膿胸といった「肺が破壊される病態」を呈することが多いわけです。


ですから、朝野先生は、「痰からMRSAが出ている普通の肺炎」は、保菌しているだけなのではないか、検出されたMRSAが原因菌として明らかな意味があるのは、空洞や壊死を伴う膿瘍様病変からMSSAやMRSAが分離されたときである、とおっしゃっています。


この考え方に沿うと、「MRSA肺炎」は随分少なくなるだろう、とのことですが、なかなか臨床のセッティングで、重症患者さんのMRSA感染症を「否定」するのも勇気が必要。


ただ少なくとも「痰からMRSA」だけで抗MRSA薬、ではなく、少なくとも貪食像があるかどうかは確認し、そして臨床像はいかがなものかに思いを巡らせたいところです。


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posted by 長尾大志 at 19:52 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年09月14日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」9〜院内肺炎の原因となる主な耐性菌・(多剤耐性)緑膿菌

さて有名な緑膿菌ですが、特に病院内で感染・発症する機会が多いようです。その理由としては、

  • 他に有力な菌が蔓延っている間は増殖しない。

  • 強力な抗菌薬を使用されて他の菌が死滅すると勢力を伸ばす。

  • 院内において水回りの衛生管理・消毒が不完全になりがち。そういう環境を好む。



こういうところから、抗菌薬を使われがちな院内肺炎における重要な原因菌として取り扱われています。最近では多剤耐性緑膿菌が問題となっていることから、いかに「適切に」緑膿菌に対する治療を行うか、ということが抗菌薬治療のカギといっても過言ではない状況です。


「適切な」抗緑膿菌治療、基本的な戦略としては、

  • 緑膿菌が原因菌であることを確実に診断する。

  • 強力な抗菌薬を適切に使用し、確実に治癒を目指す。

  • 中途半端な治療、不適切な治療で耐性がつくことを防ぐ。

  • 緑膿菌が原因でない感染症に対しては、抗緑膿菌抗菌薬を使わない



特に昨今では、最後の項目がかなり大事なのです。

なぜか。


もうそれは、人類に残された「最終兵器」だから。

抗緑膿菌作用のある抗菌薬といえば、カルバペネム系、アミノグリコシド系、ニューキノロン系が中心ですが、この辺よりも新しい系統の抗菌薬は、開発すらなかなかされにくい現状があるのです。


このあたりも製薬会社の方針、昨今の世知辛い情勢など、いいたいことはありますが、それはまたの機会に。


多少大げさな言い方をお許し頂くならば、これらの薬剤が無効になれば、人類滅亡の危機につながる、そういう危機感を持って、私たちは抗菌薬を使っていきたいもの。


抗菌薬を使うと、大なり小なり、必ずその環境にいる菌が影響を受けます。具体的には、使った抗菌薬に感受性のある菌が死に絶え、耐性のある菌が生き残る。かろうじて生き残った菌が、その生き残りのワザを他の菌に伝え、その抗菌薬がだんだん効かなくなってくる…。


こうして、多くの抗菌薬がその翼をもがれ、地に落ちていったのであります。
代表が肺炎球菌に対するニューマクロライド。


私が医師になった当時はまだまだ効果があったはずなのですが…。小児の感染症に、比較的安全に使える、ということ、また、何となく(ここがポイント)線毛機能を改善させそうな気がする、ということなどから、中耳炎や副鼻腔炎、扁桃炎その他小児科領域で濫用されました。


それにより、今となってはスペクトラムから外れようか、というほど効かなくなってしまったのは有名な話です。


同じ轍をカルバペネムやキノロンに踏ませてはならない。アミノグリコシドはそれほど濫用されていないようですが、ペネムとキノロンは「何にでも効く」「便利な」薬です。




便利さを覚えると、人間、退化します。ずぼらになるのです。頭を使わなくなります。これは歴史が証明しています。


ウチにも多くの家電製品があります。電子レンジ、炊飯器、冷蔵庫、アイロン…このあたりは、さすがに無い時代には戻れないでしょう…食器洗い機、スチーマー、フードプロセッサー、フィッシュロースター…ここまでくると、「便利」ではあるけれども、いかにも家事能力が退化しそうではありませんか?いや、断じて嫁批判ではありませんが…(苦笑)。


原因菌をそう突き詰めて考えなくても、「とりあえずキノロン」でハズレ無し。耐性について評価しなくても「とりあえずペネム」で間違いない。


目の前にいる患者さんの治療としては、ハズレがなければいいのでしょう。しかし、人類の将来を考えたときに、果たしてそれでいいのか。抗菌薬を使うすべての医師が意識して頂きたい、こう思っているのです。




そのためには、使おうとしている抗菌薬が「緑膿菌に効くものかどうか」これぐらいは知っておきたいものです。少なくとも、緑膿菌感染の可能性が低い、そのような患者さんに「緑膿菌に効いてしまう」抗菌薬を投与しない、このような見識を求めたいと思います。


じゃあ、緑膿菌感染の可能性はどうやって判断するか。これは日米さまざまなガイドラインによって若干違いはありますが、日本の院内肺炎ガイドラインによりますと、以下のような項目がリスク因子として挙げられています。


  • 15日以上入院している。

  • 第3世代セフェム系抗菌薬を使用したことがある。

  • COPDなどの慢性気道疾患がある。



こういう人だったらすべてペネムOKか、まだです。詳しくは治療のところでお話しますが、重症度によっても「こうだったら広域」という基準があるのです。あくまで、「可能性を考慮」という段階なんですね。


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posted by 長尾大志 at 17:33 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年09月13日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」8〜菌をもらった場所別の原因菌・入院している患者さん=院内肺炎

病院に入院している患者さんの状況を想像してみましょう。

そもそも入院しているということは、何か入院せざるを得ない理由があるはずです。手術をする(した)とか、副作用の大きな(免疫力を低下させるような)薬剤を使うとか、中等症以上の感染症とか、摂食困難とか、挿管チューブやカテーテルが挿入されているとか…。


ということは、患者さんはそれぞれ、ある種の菌が定着、あるいは侵入しやすい状況を持っておられる、ということになります。


そして、周りに浮かんでいる、あるいはそこらに定着している菌も、元気で家にいるときとは異なります。


病院の中には、元気でスタスタ歩き回って、肺炎球菌やマイコプラズマをまき散らす人は少ない(そういう人は入院しない)。


入院している患者さんから出てくるのは、1つは(割と広域なスペクトラムの)抗菌薬を使用されたことによって出てきて、そのあたりに定着した耐性菌、そしてもう1つはなんやかんやの分泌物やら排泄物やらの中に入って出てくる腸内細菌。両方の要素を持つものとして、有名な緑膿菌とMRSAがあります。


いずれにしても、出てきた菌が直接、または間接的に(一旦どこかに定着して)、別の患者さんに入り、肺炎を引き起こしたもの。これが院内肺炎です。


どこに定着するか。MRSAや腸球菌では医療者の手指が有名ですし、緑膿菌やセラチアなどでは水道の流しやネブライザー、加湿器、ボトルやチューブなど、水で濡れているところは怪しいようです。その他、リネンや患者さん自身、ご家族の手指や皮膚も。


そういうところから患者さんの鼻腔、口腔に定着し、いつの間にやら嚥下(誤嚥)され…いうルートが想定されているわけです。


ちなみに鼻腔、口腔には元気で家におられた頃からの肺炎球菌やインフルエンザ菌もいたりしますので、入院して間もない患者さんや、軽症の患者さんではそれらの菌も想定されます。


というわけで、院内肺炎、特に病院に長居されている、あるいはリスクの大きな(免疫低下のある)患者さんの肺炎、原因菌は腸内細菌のグラム陰性桿菌が主体。


問題は、緑膿菌、あるいはMRSAがいるかいないか、ということでしょう。


たとえば3世代セフェムを使うと菌交代で緑膿菌が残ります。広域抗生剤の長期投与はMRSAのリスクになりますし、そもそも抗菌薬を使うと、大なり小なり耐性がついてくるものなのです。


院内肺炎の原因菌はこのようにグラム陰性桿菌、さらには緑膿菌・MRSAをはじめとする耐性菌であることが多いため、エンピリック(経験的)治療はこれらがターゲットとなってきます。


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posted by 長尾大志 at 16:58 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説