2012年11月05日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」36〜肺炎治療の流れ7・院内肺炎に対するエンピリック治療の基本的考え方2・軽症群に対する治療経過

肺炎でも何でも、治療を開始したら終わり、というわけではありません。院内肺炎ガイドラインの親切なところは、治療の経過で修正すべきポイントも明示してくださっているところです。


2〜3日後に経過を見て効果判定、その際に見るべきは体温、分泌物の状態、酸素化という症状、診察で見た感じであります。白血球、CRP、胸部X線写真といったパラメータは、あくまで参考所見です。


良質な喀痰が採れた場合には、判断材料がさらに増えます。物的証拠が効いてくる、ということですね。


たとえば喀痰のグラム染色で、当初認められていた白血球や菌が治療経過で見られなくなった、これも治療の効果あり、と申し上げていいでしょう。このように、最初だけでなく、経過で痰を見ることも大事ですね。


そして、喀痰培養。培養には数日かかり、大体効果判定の時期に結果が得られてくることになるわけです。その結果を治療にフィードバックしていくわけですね。


院内肺炎軽症群の治療においては、通常緑膿菌やMRSAを外した抗菌薬を選択するわけですが、良質な喀痰培養でMRSA、緑膿菌をはじめとする(現在投与している抗菌薬に対する)耐性菌が検出されるかどうか、これも治療があっているかどうかを判断する材料になります。


誤解を恐れずに、かつシンプルに、症状が軽快しているかいないか、耐性菌が検出されたかどうかでどのように判定をするか、分類して考えてみましょう。


  • 症状軽快・耐性菌検出せず:順調ですね。このまま初期治療薬で治療を継続しましょう。

  • 症状軽快・耐性菌検出:症状が軽快している場合、抗菌薬の変更には勇気がいります。他にどんな菌が検出されたかによっては保菌の可能性もあるわけですから、原則は「悪化するまではやっている治療を維持」ということになるでしょう。

  • 症状悪化・耐性菌検出せず:これも、他にどんな菌が検出されたかによって解釈が難しくなります。「そもそも肺炎という初期診断が正しいのか」「提出した痰は良質であったのか」など、考えるべきことも多いです。ここに入ると、ちょっと一口には語れません。

  • 症状悪化・耐性菌検出:今の治療ではアキマセン。抗菌薬を「検出された菌に有効な」モノに変更します。



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posted by 長尾大志 at 18:38 | Comment(2) | 肺炎ガイドライン解説

2012年11月02日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」35〜肺炎治療の流れ6・院内肺炎に対するエンピリック治療の基本的考え方1・軽症群に対する初期治療

菌をもらった場所別の原因菌・入院している患者さん=院内肺炎で考察したように、院内肺炎、特に病院に長居されている、あるいはリスクの大きな(免疫低下のある)患者さんの肺炎ともなりますと、原因菌は腸内細菌をはじめとするグラム陰性桿菌・MRSAが主体です。


原因菌探しのために検体、グラム染色、培養を採取しておくことはきわめて重要であり、検体を採ったら、グラム染色の結果を解釈して抗菌薬を選択しますが、実際問題必ずしも良質な検体(特に痰は)を得られるわけではありません。そのように物的証拠なしに治療を開始せざるを得ない場面では、状況証拠から犯人を絞っていくことになります。これがエンピリック(経験的)治療ということになります。


院内肺炎のエンピリック治療に関して重要なことは、耐性菌であるところの緑膿菌、あるいはMRSAが原因に関与しているかどうかでしょう。このあたりが関与していると想定される、あるいは、重症の場合はそこまでカバーする抗菌薬をエンピリック治療において使用すべきであります。



そこを理解すれば、後はガイドラインを眺めるだけ。重症度を判断したら、エンピリック治療の選択を行いましょう。



■軽症群(A群)に対する治療

  • セフトリアキソン(CTRX:ロセフィン)

  • スルバクタム・アンピシリン(SBT/ABPC:ユナシンS)

  • パニペネム・ベタミプロン(PAPM/BP:カルベニン)



軽症群に対する治療では基本的に緑膿菌、MRSAを外した選択肢となりますが、それでもグラム陽性球菌〜陰性桿菌に対し広いスペクトラムを持つ抗菌薬が挙げられています。


補足として、再三書いてきたように、誤嚥にご縁のありそうなケースではCTRXを避ける、ということと、PAPM/BPは抗緑膿菌活性が中途半端にあり、IPM/CSとの交差耐性も知られていることから、緑膿菌のいるところで使うと、「効かない上に他のペネムに対する耐性がつく」ということは知っておきましょう。



さらに、軽症群であっても、緑膿菌がいそうであれば中等症群(後述)に対する抗菌薬を選択することを考慮します。


日本の院内肺炎ガイドラインによりますと、以下のような項目が緑膿菌の存在を疑うリスク因子として挙げられています。


  • 15日以上入院している。

  • 第3世代セフェム系抗菌薬を使用したことがある。

  • COPDなどの慢性気道疾患がある。




また、MRSAの関与が疑われる場合には初期治療から抗MRSA薬を使用する方が予後の改善につながるのではないか、という若干奥歯に物がはさまったような言い方をされています。


具体的には、グラム染色でMRSA感染が疑われ、かつ

  • 長期(2週間程度)の抗菌薬投与。

  • 長期入院の既往。

  • これまでに鼻腔や痰などからMRSAが検出された。


のいずれかの項目に該当するケースです。


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posted by 長尾大志 at 18:43 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年11月01日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」34〜肺炎治療の流れ5・市中肺炎に対するエンピリック治療の基本的考え方3・ICU治療・重症肺炎例に対する治療

■市中肺炎・ICU治療・重症肺炎例に対する治療の場合

ガイドラインには以下のごとき「治療の目安」が載っています。


1群

  • カルバペネム系注射薬

  • 第3、4世代セフェム系注射薬+CLDM

  • モノバクタム+CLDM

  • グリコペプチド系+アミノ配糖体系



2群

  • ニューキノロン系注射薬

  • テトラサイクリン系注射薬

  • マクロライド系注射薬



1群、2群から薬剤を選択し、併用する。




ICUに入室する、そこまでではなくても大変な重症の肺炎治療は「待ったなし」であり、治療失敗は許されません。そのため、エンピリック治療の段階から広域抗菌薬使用が許容される、ということになっています。


そうはいっても、何でもかんでも併用すればいいということではなく、市中にいそうな病原体がターゲットであることは間違いありません。


市中肺炎における原因微生物を頻度順に並べると、大体こんな感じになります。

肺炎球菌
インフルエンザ菌
マイコプラズマ
クラミドフィラ
レジオネラ
黄色ブドウ球菌
モラクセラ
クレブシエラ
ミレリ・グループ
嫌気性菌


嫌気性菌の頻度が低いのは、検出された数の統計であるためで、(空気に触れてしまう)喀痰ではなかなか検出されない嫌気性菌には不利な統計です。近年は特に高齢化などにより、誤嚥、嫌気性菌の関与が疑われる症例は多くなっていそうですね。


こうやって見渡すと、肺炎球菌(PISP〜PRSP含む)、インフルエンザ菌(BLNAR含む)、嫌気性菌、βラクタマーゼを産生するその他の菌たちに非定型病原体を含めた広いスペクトラムの抗菌薬が必要である、ということが理解できます。


ただ、市中で緑膿菌感染は少ない。(多剤)耐性緑膿菌ともなると、よほど事情がある方以外はあまりないんじゃないか、ということで、緑膿菌をターゲットにした2剤併用は不要と考えられています。


一方、市中肺炎で重症肺炎となったときに、カバーしておく必要があるのはなんといってもレジオネラですから、そちらのカバーは必須なわけです。そういう意味では、2群からのチョイスはキノロンが好ましいか、と思います。


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posted by 長尾大志 at 17:43 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年10月31日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」33〜肺炎治療の流れ4・市中肺炎に対するエンピリック治療の基本的考え方2・細菌性肺炎疑い例に対する入院治療

■市中肺炎・細菌性肺炎疑い例の入院治療の場合

ガイドラインには以下のごとき「治療の目安」が載っています。

  • 1.基礎疾患、がない、あるいは若年性人の場合:βラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン注射薬、PIPC(高用量)

  • 2.65歳以上あるいは軽症の基礎疾患(糖尿病、腎疾患、肝疾患、心疾患)がある場合:1に加えセフェム系注射薬

  • 3.慢性の呼吸器疾患がある場合:1,2に加えカルバペネム系薬、ニューキノロン系注射薬




細菌性肺炎疑い例の場合、PISPあたりまでを含む肺炎球菌が、まずはメインターゲットでした。


他に、喫煙者、COPD患者さんのように、線毛機能が低下していそうな方では(地域によって、BLNARまでを含む)インフルエンザ菌とモラクセラ、大酒家ではクレブシエラ、誤嚥にご縁がありそうな方は嫌気性菌、このあたりの菌を想定しておきます。


入院患者さんの場合、翌日には呼吸数が減って、ラ音が改善して…と効果判定ができるので、スペクトラムを狭域に設定できます。治療がうまくいかなくても早期の修正が可能なのです。


その代わり、入院ですから注射薬を目一杯使います。


基礎疾患がなければペニシリン大量でよろしいかと思いますが、BLNARやクレブシエラを考えるとABPCでは心許ない、となります。とはいえ、今時PIPCでもないと思います。緑膿菌に下手に届いてしまうので、PIPCは避けた方が良いでしょう。


高齢、基礎疾患ありなどとなってきますと、BLNARやクレブシエラをより想定することになるため、セフェムを選択肢に入れるべきでしょうが、続いての項目、慢性の呼吸器疾患がある、最近抗菌薬を使用したという患者さんの場合にカルバペネムやキノロンが必要か…となると、どうでしょうか。


もちろん、1,2に加えて、ということですから、1,2でもよろしいわけです。このあたりが主治医の裁量、ということになるでしょう。



こう見ていくとおわかり頂けるように、ガイドラインにおけるエンピリック治療は、どうしても広域に向きがちになります。それはガイドラインという(万人に無難に、という)性格上やむを得ないところでありまして、だからこそ逆に、できる限り物的証拠を得る努力をして、狭域ですむよう心がけたいものですね。


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posted by 長尾大志 at 18:01 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年10月30日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」32〜肺炎治療の流れ3・市中肺炎に対するエンピリック治療の基本的考え方1・細菌性肺炎疑い例に対する外来治療

肺炎に限らず感染症診療を行う上で、検体、グラム染色、培養を採取しておくことはきわめて重要です。しかしながら必ずしも良質な検体(特に痰)を得られるわけではありません。そのように物的証拠がない場合、状況証拠から犯人を絞っていく、これがエンピリック治療ということになります。


それではいよいよ肺炎のエンピリック治療を行う上で知っておくべき、基本事項を学んで参りましょう。


肺炎の診断がついた。その治療を考える際には、まず重症度の判定をします。市中肺炎や医療・介護関連肺炎であれば入院すべきか、外来で治療をするかの判断材料になりますが、実はもっと大事なことは、「重症であれば待ったなし」であり、広域抗菌薬使用が許容される、という点にあります。


すなわち、市中肺炎であればPRSPやBLNAR、緑膿菌(や、はたまたレジオネラまで)もカバーする必要があり、医療・介護関連肺炎や院内肺炎であれば耐性緑膿菌(や、はたまたMRSAまで)をも当初からカバーしておく必要がある、ということになります。



そこまで重症ではない、仮に初期治療が外れることがあっても充分挽回が効く、という状態であれば、そこまで広域にカバーする必要はなく、肺炎の原因菌が入ってきた「場」にいがちな菌をターゲットにした治療で十分である、ということになるわけです。



そこを理解すれば、後はガイドラインを眺めるだけ。重症度を判断して、細菌性肺炎と非定型肺炎を鑑別したら、エンピリック治療の選択を行います。




■市中肺炎・細菌性肺炎疑い例の外来治療の場合

ガイドラインには以下のごとき「治療の目安」が載っています。

  • 1.基礎疾患、危険因子がない場合:(βラクタマーゼ阻害剤配合)ペニシリン系経口抗菌薬(高用量)

  • 2.65歳以上あるいは軽症の基礎疾患(糖尿病、腎疾患、肝疾患、心疾患)がある場合:βラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン系±マクロライド系またはテトラサイクリン系経口抗菌薬

  • 3.慢性の呼吸器疾患がある、最近抗菌薬を使用した、ペニシリンアレルギーのある場合:レスピラトリーキノロン系経口薬

  • 4.外来で注射を使用する場合:CTRX




細菌性肺炎疑い例の場合、PISPあたりまでを含む肺炎球菌が、まずはメインターゲット。


他に、喫煙者、COPD患者さんのように、線毛機能が低下していそうな方では(地域によって、BLNARまでを含む)インフルエンザ菌とモラクセラ、大酒家ではクレブシエラ、誤嚥にご縁がありそうな方は嫌気性菌、このあたりの菌を想定しておきます。


ただ、外来での治療ということになりますと、もちろん軽症であるのはその通りなのですが、入院と違って、治療後の経過を事細かに追うことができないという点で少〜し注意が必要です。


入院患者さんなら、翌日には呼吸数が減って、ラ音が改善して…と効果判定ができるわけですが、外来患者さんではそうは参りません。次回受診時は数日後であったり、場合によっては1週間後であったり。ことによると「良くならない」と他院に行かれたりして、再受診なし、もあり得るわけです。


ですからどちらかというと、エンピリックな場合には、広めのカバーを意識する場面もあろうかと思います。


まあ基礎疾患がなければペニシリン大量でよろしいかと思いますが、高齢、基礎疾患ありなど、症候がハッキリしない、あるいは少し後がない状態の患者さんであれば、非定型病原体、嫌気性菌などをしっかりカバーしたいわけです。


そうなると、βラクタマーゼ阻害薬を配合したペニシリンが良いとか、マクロライドやテトラサイクリンを併用するのがいいとかいう話になります。



続いての項目、慢性の呼吸器疾患がある、最近抗菌薬を使用したという患者さんの場合。回りくどい書き方をしていますが要するにBLNAR対策です。こうなると経口薬では(私の嫌いな)レスピラトリーキノロンになってしまいます。


他にペニシリンアレルギーのある場合にもレスピラトリーキノロン系経口薬、となっておりますが、誤嚥があるとかインフルエンザ菌でなさそうならCLDMでも良いわけです。


最後に、患者さんが事情でどーしても入院できない、何とか外来でいけそうだ、でも点滴をしておきたい、というワガママな状況では、1日1回点滴で効果のあるCTRXの出番です。特に前述のBLNAR対策が必要な場面では効果的と言えるでしょう。


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posted by 長尾大志 at 19:24 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年10月29日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」31〜肺炎治療の流れ2・検体を採ったら、グラム染色の結果を解釈

そういうわけで、良い検体(喀痰)を採ったら、グラム染色をしましょう。


グラム染色の具体的な手順や、どんなんが見えたらどう解釈、などは写真も豊富な成書をご覧頂きたいのですが、グラム染色から原因菌を想定し治療薬に反映させる、基本的な考え方みたいなところを書いておきます。



1.グラム陽性の双球菌が見えたら

これはもう、肺炎球菌でいいでしょう。初心者のうちは、それさえわかればグラム染色をやった価値は充分ありますね。


市中肺炎患者さんの喀痰から肺炎球菌を見つけたら、自信を持ってペニシリンを使いましょう。ただし、何度も書いていますが、量は目一杯です。



2.グラム陽性球菌が集塊状に見えたら

ブドウ球菌を連想します。ここで大切なことは、「だから、ブドウ球菌肺炎である」と思わないこと。良質な喀痰であること、そして貪食像があるかどうかの評価が必要です。


貪食像があってMRSAの存在を疑わせる臨床状況があれば、MRSAもカバーする必要が出てくるかもしれませんが、貪食像がなければ保菌かと考えていける、という感じです。



3.グラム陰性桿菌が見えたら

緑膿菌かどうかが問題になってきます。技師さんや慣れた先生に見てもらいましょう。良質な痰から得られた緑膿菌は、きわめて重要な意味を持ちます。必ず培養し、感受性検査を行いましょう。


インフルエンザ菌の場合にも、耐性パターンによって治療薬が異なりますから、施設や周囲での菌の状況を知っておく必要があるでしょう。


ちなみにインフルエンザ菌、耐性パターンによる抗菌薬の選択は、

  • BLNAS :ABPC

  • BLNAR:第3世代セフェム

  • BLPAR:βラクタマーゼ阻害剤+ABPC配合剤


となりましょう。



4.多様な菌が見えたら

嫌気性菌の可能性が想定されます。誤嚥の要素を確認する必要がありますね。



5.菌が見えなかったら

色々な可能性がありますが、臨床状況から(マイコプラズマをはじめとする)非定型病原体が想定されるのであるならば、合致する所見と言えます。また、肺炎以外の疾患である可能性も想定する必要があるでしょう。


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posted by 長尾大志 at 18:16 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年10月26日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」30〜肺炎治療の流れ1

「もうお腹いっぱい」「いい加減にしろ!」「UZA!」との声もなく、長々と抗菌薬のお話を続けて参りましたが、そろそろよろしいでしょう。


どういう文脈であったか、自分でも忘れかけていますが、これ、肺炎の治療を考えていたのですね。多くの方はもうお忘れでしょうから、少しおさらいをしておきましょう。




肺炎の診断、治療を考える上で大切なことは、

如何に適切な抗菌薬を使うか

に尽きると思います。


原因となる菌に対して、できる限りのピンポイント攻撃をしたい。絨毯爆撃でも原因菌は死に絶え、患者さんは良くなるでしょうが、必ず爆撃の後の焼け野原に耐性菌が生えてきて、後顧の憂いとなるわけで、人類全体の将来を考えるならば、できる限り爆撃機は来るべき「背水の陣、総力戦」に備えて温存しておきたいところです。


書いていて、皆さんが文脈についてきておられるか不安になってきました。何言ってるかよくわからん、という方は、この記事(3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」)をできれば1からお読みください。



適切な抗菌薬を選択するためには、原因菌が何であるかを見定める必要があります。見定めるために必要なポイントは、


  • 肺(など)から菌を検出する。

  • 菌が検出されなければ、状況証拠から類推する。



これしかありません。


まずは、菌を検出する努力をしましょう。生半可な努力では検出できません。具体的には、


  • 良質な(唾液ではない)喀痰を採取する。痰が採れたらちゃんとした良質の痰であるか肉眼で確認しましょう。

  • 痰の喀出が困難な場合、3%食塩水などを吸入の後排痰を試みる。

  • 気管支鏡、局所の穿刺などを試みる(特に嫌気性菌が疑われる場合は、喀痰からの検出は空気に触れるために困難です)。

  • 血液培養を採取する(複数箇所で、複数回)。

  • 尿、便、膿瘍など、採れそうなところのモノはすべて採る。



これらは意識をしておかないとなかなかできることではありませんが、判断材料は多ければ多いほどいい。「尿なんて、関係ないところのモノを採っても、判断に迷うだけじゃないの?」いえいえそうではなくて、それを判断するスキルを身につけるのが研修なのです。


奇しくも今朝の教育カンファレンスで言ったことなのですが、物的証拠がないところでの判断はバクチの要素が大きくなります(もちろん、その要素を最小にするべく、状況証拠を積み重ねていくわけですが)。


事件があったときに犯人を推定するにあたって、物的証拠は何よりの手がかりとなるはず。それの蒐集をせずして、犯人捜しをするのはちょっと違うんじゃないの?と、ドラマを見ていると思いますよね。じゃあ、臨床の場でもそうしましょう。


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posted by 長尾大志 at 16:51 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年10月25日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」29〜抗菌薬の種類と特徴19・リンコマイシン系

ダラダラゾシン、とか、ダラダラクラリスロマイシン、とか、あまりいい意味で語られてこなかったダラシンですが(勝手にお前が変な書き方をしただけだろ、という声もなく)、実は大変使えるお薬です。


ただし、誤嚥にダラシン、みたいな感じで何となく使われることが多いことも確か。もう少し知っておかれると良いことをまとめたいと思います。



リンコマイシン系の抗菌薬は、クリンダマイシン(CLDM:ダラシン)だけ知っておかれれば大丈夫でしょう。CLDMのスペクトラムはグラム陽性球菌と嫌気性菌です。ペニシリンに似ていますね。このスペクトラムから、誤嚥にご縁のある肺炎にはダラシン、とされてきたのです。


ガイドラインでも、広域抗菌薬を投与する場面で嫌気性菌のスペクトラムがあやしい第3世代〜第4世代セフェムやキノロン系抗菌薬を選択した場合、嫌気性菌(とグラム陽性球菌)をカバーする目的で追加されていますね。


基本的には殺菌性作用ではなく、静菌性作用があるということですが、それで効力が殺菌性抗菌薬より劣るということはなさそうです。通常の免疫力のある患者さんには普通に使って大丈夫でしょう。


メリットとして、CLDMは肝代謝であるため、腎機能障害があっても基本的に量を調節する必要がない、ということが挙げられます。また、ペニシリンなどにアレルギーがあってもこちらは大丈夫なので、そういうときの代替薬としても重宝します。



CLDMといえば、偽膜性腸炎が有名です。CLDMに限らず、腸内細菌(嫌気性菌も多い)の多くが死滅してClostridium difficileが生き残る菌交代減少の結果発症します。CLDMに限らず、抗菌薬治療後の下痢、血便等を見たら偽膜性腸炎を疑う必要があります。


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posted by 長尾大志 at 12:37 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年10月24日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」28〜抗菌薬の種類と特徴18・アミノグリコシド系抗菌薬・モノバクタム系抗菌薬

その使いにくさから、一時期完全に?忘れ去られた存在となったものの、ガイドラインで取り上げられたことで再び脚光を浴びつつある、そんな感じでしょうか。アミノグリコシド系。


こちらはそもそもから現在に至るまで、グラム陰性桿菌専用といっても良いスペクトラムを持ちます。特に緑膿菌に対して、しばらく使われていなかったことから感受性が保たれていたりしまして、治療のkey drugとなることもあります。


何が使いにくいか、といいますと、腎毒性や第8脳神経障害といった副作用、筋注があったり静注があったり血中濃度を見たり、という使用の煩雑さ、要するに「何も考えない」で使うことができない、という点であります。だから生き残った、良かった、という面もあるのですが。


モノバクタム系はアミノグリコシド系とよく似た、グラム陰性桿菌(緑膿菌を含む)専用スペクトラムで、アミノグリコシド系よりも比較的使いやすくて個人的には好きなのですが、なぜか当院の緑膿菌は一時モノバクタムがダメで、いつの間にやら採用中止となってしまいました。マイナーすぎるところもあって、採用しているところは少ないのではないかと思います。


でも、モノバクタム系のアズトレオナム(AZT:アザクタム)なんかを適切にびしっと使える先生、かっこいいな〜と思いますね。



アミノグリコシド系に限らず、抗菌薬を使う際には「書いてある最大量を使う」が原則ですが、アミノグリコシドの場合は効果が投与後の最大血中濃度に依存するため、1回投与量をできる限り高めてあげることが必要です。


例えばゲンタマイシン、保険による認可用量・用法は80〜120mg/日を1日2〜3回分割投与、となっていますが、Sanfordによる推奨用量は5mg/kg/日。体重30kgで150mg/日必要となります。


ですから、認可容量を超えず、かつ最も効果がありそうな投与法としては、どうしても120mg/回の1日1回、とせざるを得ません。それでも全然足りないわけで…まあそこら辺は、主治医の裁量で、ということになるでしょう。


用量やTDM(therapeutic drug monitoring:治療薬物モニタリング)の細々としたことに関しては、院内肺炎ガイドラインに詳しく書かれていますので、使ってみよう、という方は参照してください。


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posted by 長尾大志 at 18:37 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年10月23日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」27〜抗菌薬の種類と特徴17・キノロン系抗菌薬2・キノロン系で知っておくべきこと

「キノロンは何にでも効く」「何にでも使っていいや」と思っていると、時々足下を掬われることがあります。まあ、掬われたご本人は掬われたことにも気づかれないことが多いのですが…。是非知っておきたいポイントをまとめました。



■嫌気性菌にはあまり効力がない。

元々グラム陽性球菌には決して強くありません。レスピラトリーキノロンといっても、肺炎球菌に対する抗菌力を強化しているだけで、嫌気性菌はカバーし切れていません。そういうわけで、誤嚥にご縁のありそうな肺炎には、実は不向きです。肺炎だったら何でもいいわけではありません。



■経口薬で唯一、緑膿菌にスペクトラムがある。

これはまあ、どちらかというといい点なんですが…。


緑膿菌に限らず、経口薬でこれだけ広域のスペクトラムを持ち、組織移行もいい薬はありません。故に、緑膿菌感染症であっても外来である程度「粘れる」というところはあるでしょう。しかしながらその分、濫用されてしまうわけです。



■結核や非結核性抗酸菌に対しても有効である。

中途半端に?効いてしまうが故の問題点があります。


例えば、肺炎様の陰影があって、キノロン投与して何となく良くなったものの、治りきらない。やめたらまた悪化してきて、そこではじめて喀痰検査→肺結核と判明、という流れ。


時々見かけます。初診から診断までに2週間以上。doctor’s delayのため周囲に感染が広がり、下手をするとキノロン耐性になっていたりして。
単剤投与は耐性結核を生み出します。


肺炎にキノロンを使う前には、結核が除外されているか、検討が必要です。ていうか、こういうこともあるので、肺炎にキノロン系を闇雲に使うのは本当にオススメしません。



■マグネシウム、アルミニウムの含まれている薬剤と同時に内服するとキレートを形成し、吸収が悪くなる。

これは常識でしょうが、頻用されているが故に注意喚起しておきます。効くはずが効いていない、というときには色々な要素を考える必要がありますが、「何らかの理由で想定通りの血中濃度、組織濃度になっていない可能性」もその一つです。


また、キノロン系は(NSAIDsとの併用での)痙攣、めまい、光線過敏、QT延長、、血糖異常、横紋筋融解やアキレス腱断裂など独特の副作用があり多くの薬剤が使われなくなっていった経緯があります。今頻用されているキノロン系抗菌薬たちはそういった副作用が少なく「何も考えずに」使いやすいモノですが、それでも注意すべき、とされていることは知っておきましょう。


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posted by 長尾大志 at 18:55 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年10月22日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」26〜抗菌薬の種類と特徴16・キノロン系抗菌薬・キノロン系を「使うべき」場面

やってきました、キノロン系。


ここで最も言いたいことは、「日常臨床でできる限りキノロン系を使わないように努めることで、抗菌薬使用に関するセンスが磨かれる」ということです、以上。




…というわけにもいかないので、もう少し歴史を紐解いてみましょう。


そもそもキノロン系は他の多くの抗菌薬と異なり、人間によって合成された化合物です。


キノロン系ができた頃の初期のキノロン(オールドキノロン)は、グラム陰性桿菌(と非定型病原体)にしか効果が期待できませんでしたが、その後着々と改良が進んできました。


そうしてできたキノロンは(オールドに対して)ニューキノロンと名付けられました。ニューキノロンになりますと、グラム陽性球菌にもスペクトラムが広がり、組織移行も良くなって、どんどん使用される場面が増えてきました。


そして近年、さらに改良が加えられたキノロンは、それまで弱点であった肺炎球菌への活性が高められて、肺炎など、気道感染症に(自信を持って)使えるようになりました。結果、「レスピラトリーキノロン」と銘打たれ、頻用されるに至っています。



確かに、肺炎球菌に強く、インフルエンザ菌にも( BLNAR にも!)効いて、非定型病原体もカバーする、何だったら緑膿菌にまでスペクトラムを有する、ということになりますと、もう肺炎の原因菌だったら何でも来い状態の、便利な、便利な抗菌薬。


それゆえ、かつてのマクロライドのように頻用されています。現実に、不適切な濫用でニューキノロン耐性肺炎球菌や、ニューキノロン耐性緑膿菌が報告されていて、今後の蔓延が心配されています。



実際には、キノロンでなくてはならない場面というのはほとんど無くて、呼吸器領域では


レジオネラ肺炎(キノロン静注用を使います)


ぐらいなのですね。

ウチのカンファレンスで「ク○ビットの点滴を使ってる」と発言して「レジオネラ肺炎だと思ったの?」と訳のわからないことを言われた方、そういうことなのです



まあもちろん、副作用で他剤が使えない…、とか、耐性が…、とか、移行が…、とか、色々な理由で使わざるを得ないことはありますが、その場合にも、「根拠を明示する」習慣をつけて、根拠無く何となく使う、ということを避けて頂くのがいいと思います。


とっても素晴らしく、大事な薬ですので、できるだけ出し惜しみしましょう。


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2012年10月19日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」25〜抗菌薬の種類と特徴15・カルバペネム系抗菌薬3・カルバペネム系はどれも同じ?

現在カルバペネム系には以下のようなものがあります。

  • イミペネム・シラスタチン(IPM/CS:チエナム)

  • メロペネム(MEPM:メロペン)

  • ドリペネム(DRPM:フィニバックス)

  • ビアペネム(BIPM:オメガシン)

  • パニペネム・ベタミプロン(PAPM/BP:カルベニン)



まあ、スペクトラムは大体同じ、で間違いはありませんが、いくつか注意点。



パニペネム・ベタミプロン(PAPM/BP:カルベニン)は、ちょっと癖があります。というのは、グラム陽性球菌、嫌気性菌に対してはめっぽう強い一方、グラム陰性桿菌、特に緑膿菌については、明らかに弱いとされているのです。


院内肺炎ガイドラインでは、主にグラム陽性球菌を念頭に、軽症例に推奨されていますが、緑膿菌に対して若干の抗菌力があり、他のカルバペネム系薬と交差耐性を示すとも言われています。つまり、緑膿菌のいるところで使うと、「効かない上に耐性がつく」わけですね。


そのため、「(原因菌ではなく、保菌であっても)緑膿菌がいそうであれば使わないように」と明記されているのです。以前は肺炎にもよく使われていましたが、大変具合が悪いので、個人的にはもう使っていません。グラム陽性球菌、嫌気性菌狙いなら、他にもいい薬がたくさんありますから。



他の違いといえば、

  • IPM/CSが比較的グラム陽性菌に強い。

  • IPM/CSは痙攣の報告が他より多い。

  • MEPMとDRPMは1日3g使用可能となり、海外(米国)の使用量に近い。



まあ、細かいことは他にも色々あるようですが、「どれも大差ない」という意見も多いですね。施設にカルバペネム系は1つだけ、というところも多いでしょうから、(PAPM/BPでなければ)あるやつを使う、でいいんじゃないでしょうか。


カルバペネム系の間での違い、よりも、カルバペネム系と他系統の薬剤の違い、を知る方が有用であり重要です。


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posted by 長尾大志 at 12:51 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年10月18日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」24〜抗菌薬の種類と特徴14・カルバペネム系抗菌薬2・カルバペネム系が「効かない」場面

カルバペネム系については「ほぼ万能である」と言っておけば、大体間違いではないので、それで済ませてもいいのですが、効かない場面も是非知っておいて頂きたいものです。


特に頭を使わずにカルバペネム系を開始して、効かなかったら…どうしましょう。お手上げですか。



■カルバペネム系が「効かない」「使えない」場面

  • 量が不足:未だにあちこちでよく見かけますけど、いい加減にしてほしいものです。βラクタム系は量もそうですし、多数回投与が基本です。1日2回はダメ、効きませんよ。

  • スペクトラムが届かない:MRSAぐらいはさすがに…誰でもご存じでしょうが、非定型菌(レジオネラとか)はダメで、他にも腸球菌の一部とか、S.maltophiliaなどもアキマセン。

  • 耐性菌である:スペクトラムが理論的に良くても、耐性菌であればダメです。なので、培養から感受性を知ることがきわめて重要なのです。また、自施設の耐性具合を把握しておくことも重要です。

  • そもそも肺炎ではない、合併症がある:診断違い。学生さんは論外、と思われるかもしれませんが、現実問題、結構ありますよ(苦笑)。心不全、うっ血、その他の合併症があると治りにくいし。



この手の話になると熱くなってしまうので、今日はそこそこで。
明日の告知をしておきましょう。




     第6回卒後臨床研修イブニングセミナー

日時:平成24年10月19日(金) 18:30〜19:45

会場:臨床講義室1(臨床講義棟1階)

学術情報 18:30〜18:45 
 『吸入ステロイド喘息治療剤
          アズマネックス ツイストヘラー』MSD株式会社

特別講演 18:45〜19:45
 『「咳がでる患者さん」を診たときに〜病歴と身体所見から診断にい
          たり、正しく治療するためのClinical Pearls』
            呼吸器内科 講師(学内) 長尾 大志 先生

座長:滋賀医科大学医学部附属病院 消化器内科 助教
    医師臨床教育センター セミナー担当 稲 富 理 先生



そもそもこのイブニングセミナーは研修医、学部6年生向けのセミナーですが、今回のこれに関しては3年目とか4年目の、外来をやるようになったドクター向けかもしれません。

まあでもその時期の(特に他科の)ドクターに向けてセミナーをやることは現実にはございませんので、今回のお話が多くの方々にとっては、人生最後のちゃんとした咳に関する講義を聴く機会となるでしょう。


たかが「咳」、されど「咳」。咳が出るには理由があるのです…。


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posted by 長尾大志 at 12:56 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年10月17日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」23〜抗菌薬の種類と特徴13・カルバペネム系抗菌薬1・カルバペネム系を「使うべき」場面

やってきました、カルバペネム系。ひょっとしたら、これをご覧の方の中にも、「ウチの病院では、肺炎にはまずカルバペネムを使っています。」という方もおられるかもしれません…残念!


ややこしいことを言い出せばきりがありませんが、カルバペネム系は最終兵器であって(最強兵器とは限りませんが…)、大事に使っていただきたい、ということは何度でも言っていきましょう。こいつらの次(の抗菌薬)はありません。


そういうわけで、まともな病院!?であれば、カルバペネム系などには登録制のような、何らかの使用制限がかかっていることが多いはずです。
まあ、本当にまともな病院であれば、使用制限しなくても滅多に使われないはずですけど



カルバペネム系については「ほぼ万能である」と言っておけば、大体間違いではないので、それで済ませてもいいのですが、いくつか是非知っておいて頂きたいことを書いておきます。あと、以前に述べたゾシンについても、ほぼ同じことですので同様に考えていただければと思います。



■カルバペネム系を「使うべき」場面

呼吸器領域、すなわち肺炎治療においてカルバペネム系を使うべき場面は、それほど多くはないはずです。


基本、これまで書いてきたとおり、抗菌薬は「これしか効かない」「これでなくてはならない」選択をすべきであって、「これだったら頭を使わずになんでも効くよ」という選択はすべきではありません。


抗菌薬選択戦略.jpg


赤い星には1の抗菌薬を使うべきで、4を使うべきではない。4を使うのは緑の星に対してのみ。この原則です。


しかしながら、「今日これからいく治療が万一失敗したら、この患者さんの命にかかわる」という場面では、赤い星から緑の星まで、あらゆる病原体に効く抗菌薬を(上の図なら4を)使うべきであり、そこで出し惜しみしてはいけません。ここは、勘違いしないようにしましょう。


要するにICUに入室されるような重症肺炎。この場合、レジオネラなどの非定型菌や耐性緑膿菌などを想定し、他剤との多剤併用でいくことになります。


あとは、良質な喀痰から緑膿菌が培養されたときのように、原因菌として緑膿菌が想定される場合、これも使ってよろしい。


日本のガイドラインであれば、軽症であっても、院内肺炎で下のリスク因子を満たす場合にはカルバペネム系の使用を考慮、としてあります。


  • 15日以上入院している。

  • 第3世代セフェム系抗菌薬を使用したことがある。

  • COPDなどの慢性気道疾患がある。



この場合、使う「べき」とは申しませんが。



で、ここからが大事なのですが、こういう広域抗菌薬を開始する前には、必ず「ありとあらゆる培養」を採るようにしましょう。文字通りのあらゆるもんです。


そして、その結果、緑膿菌の可能性が低い、となったらde-escalationのチャンス、という感じで進めていくのです。

…と前にも書きましたが、de-escalationについても近々説明をしなくてはなりませんね〜


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2012年10月16日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」22〜抗菌薬の種類と特徴12・マクロライド系抗菌薬2・マクロライドの「気道分泌都市伝説」

マクロライド系が頻用されている根拠の一つに、「気道分泌を整える作用」「線毛運動を改善させる作用」みたいな都市伝説?があります。


これの根拠は、びまん性汎細気管支炎(Diffuse panbronchiolitis:DPB)だと思われるのですが、この疾患は線毛機能が低下することで発症する副鼻腔炎+びまん性の細気管支炎です。


DPB発症の機序を理解する。


このDPB、かつては治療法もなく、平均予後2年とも言われた「難病」でありましたが、エリスロマイシン少量長期療法によって、感嘆、いや「簡単に治る」疾患となったのです。イヤもう当時は感嘆の嵐…。


未だにこの作用機序がすべて明白になった、とは言い難いところでありますが、少なくともエリスロマイシンの抗菌作用以外の「気道分泌を整える作用」が大いに功を奏していることは確か。


そこから、気道分泌の問題にはエリスロマイシンが頻用されるようになってきました。副鼻腔炎にエリスロマイシン、気管支拡張症にエリスロマイシン、気管支炎にエリスロマイシン…そして、痰が多ければエリスロマイシン。


残念ながら、DPB以外のこうした使い方にはエビデンスも根拠もなく、昨今では批判の多いところであります。まあ、他に薬がないから、仕方なく使っている面もあり、痛し痒し、でもあったりするのですが。


そこへさらに新しいクラリスロマイシンなどのニューマクロライドがスペクトラムの拡大と副作用の低減を謳って登場したわけです。


使いやすく、肺炎球菌などにも効果があるクラリスロマイシンは、「何も考えずに使える」抗菌薬として、瞬く間に市場を席捲したのでありました。


最初はエリスロマイシンが効かなくなってきたDPBに対して、次第に副鼻腔炎にクラリスロマイシン、気管支拡張症にクラリスロマイシン、気管支炎にクラリスロマイシン…そして、痰が多ければクラリスロマイシン。


今でも某科では、副鼻腔炎にダラダラクラリスロマイシン(略してダラシン、ではありません)、をよく見かけます。



というわけで、細菌感染に対する翼をもがれてしまったクラリスロマイシン(CAM)。今更、という感は否めませんが、呼吸器領域での適正な使用法を考えてみましょう。



  • 非定型肺炎:主にマイコプラズマだと思いますが、以前にも書いたように若い人の軽症肺炎だったら、CAM単剤でも良さそうです。

  • 百日咳:こちらを活動期に使用できるタイミングは難しいでしょうが、周りで流行っていれば自信を持って使いましょう。

  • 非定型(非結核性)抗酸菌:最近は非結核性、といわれますが、昔の名前で非定型。要するに、非定型にはCAMってことでよろしいでしょうか。



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2012年10月12日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」21〜抗菌薬の種類と特徴11・マクロライド系抗菌薬1

それでは抗菌薬のお話に戻りましょう。


まあ、ペニシリンとセフェムが終わったら、終わったようなもんですが。というのも、ここからは割とお話がシンプルなので、長々とは続かなくていい(ハズ)なのですね。


マクロライド系。日本では不適切に濫用されていて、菌の耐性化がじゃんじゃん進んでいるのが問題です。以上。





というわけにもいかないので、もう少し歴史を紐解いてみましょう。


そもそもマクロライドは、βラクタム系(細胞壁合成阻害薬)と異なり、細菌の蛋白合成を直接阻害するという機序で働きます。そのため、細胞壁を持たないマイコプラズマや、細胞内寄生菌であるクラミドフィラやレジオネラなど、βラクタム系が無効な微生物に対して効果がある。これが特徴です。


また、元々のスペクトラムがグラム陽性球菌と、一部のグラム陰性桿菌ということで、肺炎をはじめとする気道系感染の原因菌を広くカバーするのです。


そして(実はこれがキモなのですが)、安全性が高い。小児に使っても安全。これはつまり、「何も考えずに使える」ということにつながります。



これまでにも繰り返して強調してきましたが、「何も考えずに使える抗菌薬は、ずぼらに使われて、耐性菌を生み、使い物にならなくなる」流れがあります。マクロライド系はまさにその流れに乗った形で、どんどん耐性化が進み、使えなくなっていったんですね。私の世代あたりの方々は印象深いのではないでしょうか。


具体的には、小児にバンバン使われたのが痛かったようですね。「子供が熱を出している」事象に対して、「とりあえず」処方する抗菌薬として、何となく効きそうで安全そうなマクロライド系を「何となく」処方していた、ということでしょう。


何てったって子供たちの間では菌は移動し放題(苦笑)。耐性がつけばその菌は広がり放題。ということで、小児の中耳炎や副鼻腔炎の原因菌であり、そのあたりに常在すらしている肺炎球菌に対しては、9割方マクロライドが効かないという悲惨な状況になりました。



肺炎球菌に効かない肺炎の薬なんて…クリープを入れないコーヒーみたいなもんで(このたとえも私の世代向け?)、今や使われる機会が激減…と思いきや、結構使われていたりします。日本は世界で一番使ってるとか。それが、最初に書いた「βラクタム系が無効な微生物(=非定型病原体)」。それと、気道系の分泌がなんちゃら。そして、「何となく」。



特に若い世代の人々に多い、比較的軽症の肺炎、これはマイコプラズマが多い。マイコプラズマに対してはマクロライド単剤でもいいでしょう。とはいえ、耐性マイコプラズマが問題、とキノロンメーカーさんが煽ってきていて、専門家の先生方でもおっしゃることは色々です。


まあ個人的には、キノロンを温存したい派ですので、マイコっぽい軽症肺炎だったらマクロライドでいいんじゃないか、とは思っていますが。


ただ、もうそろそろ、「何となく抗菌薬を出さないと不安だから」マクロライドを処方するのは、やめにしましょう。ホンマモンの肺炎球菌感染だったらまず効かないし、上気道炎みたいに使わなくたって良くなるものも多いわけで。きちんと頭を使って診断をし、原因菌を考えて薬剤を選択したいものです。


気道系の分泌云々に関しては日を改めます。


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posted by 長尾大志 at 17:18 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年10月05日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」20〜抗菌薬の種類と特徴10・セフェム系抗菌薬6・第4世代セフェム

第3世代の反省を踏まえて開発されたのが、第4世代セフェムであります。


■セフェピム(CFPM:マキシピーム)
■セフォゾプラン(CZOP:ファーストシン)
■セフピロム(CPR:ブロアクト、ケイテン)


これらはグラム陽性球菌に弱くてMRSAを蔓延らせた第三世代の反省から、グラム陽性球菌への活性が強化されました(とはいえ、第一世代と同程度あるいは以下)。グラム陰性桿菌への作用はCAZと同程度に保たれています。そういう意味ではほぼ万能の抗菌薬、と言えましょうか。


しかし、とき既に遅し。MRSAや耐性緑膿菌の台頭もあり、そういうときには役立たず、となっています。あと、嫌気性菌にはアカンので、誤嚥性肺炎には不向きです。


昨今しばしば使われる場面は、何だか分からないけど発熱していて、細菌感染を疑うとき、中でもグラム陰性桿菌、緑膿菌を疑うとき、かつ嫌気性菌を疑わないときであります。


その代表は、発熱を伴う白血球減少症(FN:febrile neutropenia)でしょう。腸内細菌や(素直な?)緑膿菌による菌血症、敗血症に対してはよい適応かと思います。


また、原因菌の不明な院内肺炎(中等症)のempiric therapyでもガイドラインで推奨されていますが、上記の通り、誤嚥がありそうならCLDMとの併用が勧められています。


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2012年10月04日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」20〜抗菌薬の種類と特徴9・セフェム系抗菌薬5・第3世代セフェム2・セフタジジム

第3世代はセフェム黄金時代と没落の歴史。進化について2種類の方向性がありました。1つは、グラム陽性球菌、グラム陰性桿菌の耐性菌対策。もう一つは、グラム陽性球菌を捨てて緑膿菌へのスペクトラムを得ること。


前者の代表セフトリアキソンは昨日紹介しました。今日は後者の代表、セフタジジムを取り上げましょう。


■セフタジジム(CAZ:モダシン):βラクタマーゼによって分解されにくくなり、緑膿菌を含む多くのグラム陰性桿菌に有効となりましたが、それと引き替えにグラム陽性球菌に対する効果は全般的に劣ってしまいました。


この第3世代にきて、グラム陰性桿菌のほとんど、緑膿菌にまでもスペクトラムが広がったため、「最強」の称号が付き、セフェムは黄金時代を迎えます。


…しかし、黄金時代は長く続きません。


CAZのみならず、第3世代セフェムで緑膿菌にスペクトラムを持つものは、グラム陽性球菌への効果が弱いことから、結果的にMRSAが生き残って蔓延る原因となりました。また、濫用によって緑膿菌は軒並み耐性を獲得し、より治療しにくくなってきているのです。


そんなこんながありまして、CAZなどは使われる機会が激減、まさに没落の途上にあると言ってしまいましょう。いや、まだまだ使える余地はあるのですが、もはや「何も考えずには」使えないので、敬遠される傾向にある、と言っておきましょうか…。


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posted by 長尾大志 at 14:29 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年10月03日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」20〜抗菌薬の種類と特徴8・セフェム系抗菌薬4・第3世代セフェム1・セフトリアキソン

第3世代。セフェム黄金時代と没落?の歴史を振り返らなければなりません。


第3世代のセフェム系抗菌薬も、進化について2種類の方向性がありました。1つは、グラム陽性球菌、グラム陰性桿菌の耐性菌対策。もう一つは、グラム陽性球菌を捨てて緑膿菌へのスペクトラムを得ること。


前者の代表がセフトリアキソン、後者の代表がセフタジジムです。



■セフトリアキソン(CTRX:ロセフィン):現在肺炎業界で、SBT/ABPC同様のエースと申し上げていいでしょう。いずれが前田か大島か(*前田敦子は現在、AKB48を卒業しています)。


セフェム系、あるいはペニシリン系においても問題となった耐性菌を克服した、素晴らしい抗菌薬です。


ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)にも極めて有効で、ペニシリンや1,2世代のセフェムが苦手としてきたBLNAR型インフルエンザ菌にも有効、さらには多くのグラム陰性桿菌に有効なのです。


また、緑膿菌には無効(何度も言いますよ、ここが一番大事!)ということで、市中〜軽症の院内肺炎に対して、「ほぼ」万能と言えるスペクトラムを持ちます。


あえて「」付きで「ほぼ」と書いたのには理由があります。理由はわかりますか?




マイコプラズマ・クラミドフィラ・レジオネラなどの非定型菌には無効!

正解。でも、だけじゃないです。もう一声!




嫌気性菌です。第2世代よりも弱いとされています。
…だもんで、誤嚥にご縁のありそうな肺炎には向かない。



とっても大事なところですので、まとめて、区別して覚えておきましょう。


  • CTRXは、PRSPやBLNARなど、耐性菌に強いが、嫌気性菌に効力が弱い。

  • SBT/ABPCは、嫌気性菌には強いが、BLNARにはダメ。



ですから、これらの使い分けは


  • 誤嚥にご縁がありそうならSBT/ABPC。

  • インフルエンザ菌にご縁がありそうで、地域のBLNAR率がある程度高ければCTRX。



と考えていただければいいのではないでしょうか。


CTRXとSBT/ABPCはどちらもエース級の働きをしていますが、似て非なるもの(生い立ちからして)なんですね。


子役から芸能界に入っていた大島優子とたまたまオーディションを受けた前田敦子。


切れのあるダンスと脱力系ダンス、びしっとした表情とふとした表情の魅力など、それぞれにそれぞれの特徴、良さがあるのです。プロデューサーは必ず特徴を生かして起用するわけですから、私たちも抗菌薬の特徴をよく理解して起用すべきなのです。


ちなみに私はどちらかが推し、というわけではありません。念のため


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posted by 長尾大志 at 16:23 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年10月02日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」19〜抗菌薬の種類と特徴7・セフェム系抗菌薬3・第2世代セフェム

第2世代のセフェムは、20年近く前には肺炎に頻用されてたんですけどね〜。最近(特に若い先生が)使う機会が減ってきました。


第1世代のセフェム、セファゾリン(CEZ:セファメジン)はペニシリナーゼを産生するグラム陽性球菌と、大腸菌、クレブシエラといったところを得意とするのでした。


次に臨床で問題になったのは、弱毒性のグラム陰性桿菌と嫌気性菌です。


第2世代のセフェムは、これらをターゲットに作られました。


第2世代でもそのターゲットによって、大きく分けて2つの系統に別れます。わかりやすくするために、いわゆる呼吸器系の感染を起こしてくる弱毒性のグラム陰性桿菌(インフルエンザ菌、モラクセラ)と、腹腔内感染の原因となる嫌気性菌(腸内細菌)に分けて考えましょう。



■セフォチアム(CTM:パンスポリン):グラム陽性球菌に加え、インフルエンザ菌、モラクセラにスペクトラムを広げました。βラクタマーゼにも抵抗性があるのですが、最近増えているBLNARにはアキマセン。それから嫌気性菌にもダメ。


そんなわけで、私が研修医になった頃は肺炎といえばこれだったのですが、昨今では誤嚥性肺炎も増え、特に若い先生には人気がありません。まあ、BLNARの少ない地域で誤嚥がなさそうなら大丈夫かと…。



■セフメタゾール(CMZ:セフメタゾン):CTMよりさらに嫌気性菌へとスペクトラムを広げ、腹腔内感染症に対しての1st choiceとして華々しくデビュー…したのでしょうか。私が消化器を回っていた頃は毎日使っていました。腹部手術の術前(術後)投与にも頻用されているかと思います。


また、SBT/ABPC登場前は誤嚥性肺炎に対してもよく使われていました。ただ、グラム陽性球菌やインフルエンザ菌にはCTMよりちと劣るようですので、厳密に言えば想定原因菌によって使い分けるのが理想でしょう。まあ、肺炎にCMZしか使わない施設でも、ちゃんと治っていましたが…。



さて、何よりも大きな第2世代のメリットと言えば…


緑膿菌に効かない


ということでしょう。いくら使っても、耐性を獲得させない。何度も繰り返しますが、緑膿菌に効く薬は、とことん出し惜しみしましょう。
(とはいえ、肺炎業界では第2世代の出番は少なし…。)


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posted by 長尾大志 at 18:35 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年09月28日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」18〜抗菌薬の種類と特徴6・セフェム系抗菌薬2・第1世代セフェム

第1世代のセフェム、特に注射薬は、ほぼセファゾリン(CEZ:セファメジン)と思っていただいていいでしょう。グラム陽性球菌と強毒性のグラム陰性桿菌がメインターゲット。


できた頃はペニシリンの過敏反応やペニシリナーゼによるペニシリン耐性が問題となっていたということでしょうか、過敏反応はペニシリンより少なく、構造上ペニシリナーゼに分解されない性質を持つ、という特徴があります。


そういうわけで、ペニシリナーゼを産生する菌に有効で、黄色ブドウ球菌(MSSA)、連鎖球菌(肺炎球菌を含む)、大腸菌、クレブシエラといったところを得意とします。


かつて、若い頃にとある病院で市中肺炎にCEZを頻用されていたのを覚えていますが…。今だったらどうでしょう。肺炎球菌、クレブシエラに効くので、ある程度は使えるか…いやいや、大事なインフルエンザ菌、モラクセラと嫌気性菌がごっそり抜けていますね。


となると、気軽に肺炎に対して使えるって感じではなさそうですし、他の感染症に対しても、これでOK、とはなかなかいかないようです。



現在よく使われる場面は、黄色ブドウ球菌(MSSA)と素直な大腸菌対策。というかこれだけ、みたいな感じになってきていますね。


具体的には、

  • 皮膚・軟部組織感染症(MSSAに対して)

  • 市中/急性/単純性尿路感染症(大腸菌に対して)

  • 術前予防投与(下部消化管、骨盤内、口腔咽頭部は嫌気性菌の関与が考えられるので難あり)



かつては術後に「感染予防」の名目でダラダラ使われていましたが、エビデンスがないことで今では術前にごく短期間使用されるようになっています。



使える場面が少ないというのはしかし、逆に考えるとメリットもあるわけです。


狭域抗菌薬のメリット、つまり余計な菌を殺さない、影響を与えないというのは、特にCEZの場合、腸内細菌(嫌気性菌)に有効ではない・影響を与えない=下痢しない、というメリットにもつながります。もちろん、余計なスペクトラムがないので耐性菌を作りにくい、というのも大いなるメリットですね。

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posted by 長尾大志 at 17:29 | Comment(2) | 肺炎ガイドライン解説

2012年09月27日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」17〜抗菌薬の種類と特徴5・セフェム系抗菌薬1・世代をたどって考える

むしろペニシリンより広く使われている感のあるセフェムですが、こちらも歴史を紐解くことで、より理解が深まることと思います。


基本的には、

グラム陽性球菌→グラム陰性桿菌に広げる→緑膿菌にまで行く→グラム陽性球菌がおろそかになり、MRSA蔓延→グラム陰性桿菌への効果はそのままに、陽性球菌にも効くようにする、という流れです。


この流れが、およそ第1世代→第2世代→第3世代→第4世代、という感じです。


草加市立病院 健康管理課 医長の大澤先生によるスライドには、ウルトラマンや怪獣たちがたくさん出てきて、(私たちの世代にとっては)非常にたとえがわかりやすいのですが、そのスライドをそのまま見ていただくわけには参りません。


でもあまりにもたとえがいいので、その考え方をしっかりお伝えしたいと思います。


第1世代は強毒菌が相手。
強敵の怪獣相手のウルトラマンをイメージしましょう。


弱毒菌にスペクトラムを広げてきたのが第2世代。
力押しの怪獣に加え、頭脳派宇宙人を相手にしていたウルトラセブンのイメージです。


次の第3世代では、さらに強敵に対抗すべく、2種類のアプローチがとられます。
1つは弱毒菌である緑膿菌への効果。
もう1つは肺炎球菌やインフルエンザ菌の耐性菌へ。

武器を手にしたウルトラマンジャックは、どのような敵にも立ち向かい、登場当初万能にも思われたのですが、しかしながらしばしば返り討ち(耐性)に遭い、兄弟の助けを得ることになります。


そしていよいよ第4世代。
当初から怪獣相手では万能に立ち向かっていたものの、すべての敵に単独で立ち向かう訳ではなく、しばしば父や兄の助けを求めていたウルトラマンエースとイメージが重なります。


第4世代が登場した頃には使う側(私たち)も単剤での使用は必ずしも好ましくはない、場面に応じて併用薬を使う、という具合に使い方が洗練されてきたわけですね。


ということで、ウルトラマンシリーズをご存じない方にとってはナンノコッチャ?な記事となりました。わかる方にはものすごくわかっていただけるのではないかと。大澤先生、どうもありがとうございました!


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posted by 長尾大志 at 16:10 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年09月26日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」16〜抗菌薬の種類と特徴4・ペニシリン系抗菌薬3・広域ペニシリン+βラクタマーゼ阻害薬

広域ペニシリンの弱点であった「βラクタマーゼに分解される」性質を補うべく、βラクタマーゼ阻害薬を配合して生み出されたペニシリン系抗菌薬は、現在肺炎治療においてかなり広く使われていると思います。それにはきちんと理由があるので、是非きちんと理解して使って頂きたいところです。



■緑膿菌に効かない広域ペニシリン+βラクタマーゼ阻害薬

  • スルバクタム+アンピシリン(SBT/ABPC:ユナシン・ユナシンS・スルバシリン)

  • クラブラン酸+アモキシシリン(CVA/AMPC:オーグメンチン・クラバモックス)



成人の肺炎に使われるのは、主に前者です。アンピシリンにβラクタマーゼ阻害薬であるスルバクタムを配合することによって、βラクタマーゼを産生するブドウ球菌や多くのグラム陰性桿菌、はたまた嫌気性菌にまで、一気にスペクトラムが拡大したのです。


こうなると、市中肺炎の原因菌(肺炎球菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌(MSSA)、モラクセラ、クレブシエラ、ミレリ・グループ、嫌気性菌)のほとんどにはOK、となりますよねー。万能万能。SBT/ABPCだけ覚えときゃいいじゃん…。



本当ですか???



こいつはどうですか?

Beta-Lactamase Negative Ampicillin Resistant。


βラクタマーゼに頼らず、アンピシリン耐性を獲得してしまったこやつ(インフルエンザ菌)には、効かないんじゃ…。


ハイ、その通り。


そういうわけで、耐性パターンとしてBLNARの多い地域で、インフルエンザを思わせる市中肺炎には、SBT/ABPCでの治療は失敗の可能性があるのです。


慢性呼吸器疾患があり、線毛機能が低下しているとインフルエンザ菌が定着しやすい素地になり、肺炎の原因となる可能性が高まる、その場合はSBT/ABPCが効かない可能性がある、ということです。



■緑膿菌に効く広域ペニシリン+βラクタマーゼ阻害薬

タゾバクタム+ピペラシリン(TAZ/PIPC:ゾシン)


こちらは、広域ペニシリンでも果たせなかった、緑膿菌に対するスペクトラムを獲得した、超広域のペニシリンにさらにβラクタマーゼ阻害薬を加えた、最強のペニシリンであります。当然、BLNARだって問題なし。


でもねー。緑膿菌に効く、ということは、これまでにさんざん書いてきたとおり、緑膿菌以外の感染症には使わない方がいい、ということであります。一般的な細菌に対してほぼ万能、カルバペネム的なスペクトラムを持っているため、「何だかよくわからない」「頭を使わず治療する」ときに使われがち。


心あるドクター諸兄におかれましては、努々そのようなことの無いよう、頭を使って感染症治療を行われるようにお願いしたいと思います。


だからゾシンについては、あまり詳しくは書きません…?


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posted by 長尾大志 at 16:22 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年09月25日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」15〜抗菌薬の種類と特徴3・ペニシリン系抗菌薬2・広域ペニシリン

PCGの構造を変更して、グラム陰性桿菌にも効くようにした、いわゆる広域ペニシリンという範疇に入るペニシリンには、緑膿菌に効くやつと効かないやつ、大きく分けて2種類あります。


現実的に日本で呼吸器領域の診療に使われるのは、ここのところですから、この2系統を覚えておきましょう。


■緑膿菌に効かない広域ペニシリン

  • アンピシリン(ABPC:ビクシリン)

  • アモキシシリン(AMPC:サワシリン)



グラム陽性球菌群(連鎖球菌、肺炎球菌)のPCGに加えて、グラム陰性桿菌のインフルエンザ菌に対するスペクトルを獲得しました。


てことは、多くの市中肺炎にはこれでOKか?スペクトラム的にはそうですね。
問題は耐性菌です。


肺炎球菌の耐性菌であるPRSPやPISPに対しては、肺炎の場合、よほどのこと(MIC≧4とか)でなければ、ペニシリンの増量で対応できるのでした。


ですので、市中肺炎の軽症例では、「ペニシリン経口、大量投与」が推奨されています。


インフルエンザ菌の耐性株はどうか。BLNAR(β-lactamase negative ampicillin resistant)は名前の中に「アンピシリン耐性」って入っているぐらいですから、効くわけがなさそうです。BLNAS(β-lactamase negative ampicillin sensitive)だったら問題なし。


また、βラクタマーゼを産生する菌には無効です。黄色ブドウ球菌、大腸菌やクレブシエラは産生するのでダメ。インフルエンザ菌だとBLPAR(β-lactamase positive ampicillin resistant)はアキマセン、ということです。これらに対しては、βラクタマーゼ阻害薬の助けが必要になります。



■緑膿菌に効く広域ペニシリン

ピペラシリン(PIPC:ペントシリン)


こちらは、広域ペニシリンでも果たせなかった、緑膿菌に対するスペクトラムを獲得した、超広域のペニシリンであります。当然、陰性桿菌であるインフルエンザ菌にも強い強い。


緑膿菌に効く、ということは、緑膿菌以外の感染症には使わない方がいい、ということであります。また、βラクタマーゼで分解されるので、βラクタマーゼを産生する菌にはやはり効き目がありません。ということで、βラクタマーゼ産生菌が増えている昨今では使いにくくなっています。


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2012年09月24日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」14〜抗菌薬の種類と特徴2・ペニシリン系抗菌薬1

「上級医はペニシリンなんて使ったこともない」「院内にほとんど無い」というアナタ!こそ、ペニシリンについて学ぶべきでしょう。かくいう私も、研修医の頃はほとんどペニシリンについて教えて頂いた記憶がない。そういう施設、今でも少なくないんじゃないかと思います。

そんな若い先生方に、ペニシリンについてよーく知っておいてほしいものですから、ペニシリンの歴史を少し紐解いてみたいと思います。


今回も、正確を期すために草加市立病院 健康管理課 医長の大澤先生によるスライドを大いに参考にさせて頂いて、お話を進めていきますが、ペニシリン、いや、抗菌薬を考える上では、歴史について知っておくととっても理解しやすいんですね。でも、いきなりあれもこれも…と歴史を羅列されるとしんどい。


ですので、端折るところは端折り、なるべく大事なところをピックアップしてお伝えしていこうかと思います。



ペニシリンはご存じの通り、最初に発見された、最も歴史の古い抗菌薬です。


まあ最初のそれがペニシリンG(PCG)。
これができた頃は、第二次世界大戦があり、多くの戦傷者を救ったと言われています。


細かいことはさておき、PCGはグラム陽性球菌、中でも連鎖球菌などによく効きますが、呼吸器領域で使う機会は少ないと思いますので、歴史的位置づけを確認するにとどめましょう。


で、当初ペニシリンはガンガン使われたわけですが、そのうちに問題が出てきます。まあ、要するに効かないケースが出てきたのです。


元々グラム陰性桿菌には効きませんし、ペニシリンを分解する酵素、ペニシリナーゼを産生する菌にもペニシリンはあまり効きません。加えて、黄色ブドウ球菌もペニシリナーゼを産生する性質をもつようになり、耐性化してきたのです。


抗菌薬は、普及しだしてからわずか数年以内に、「たくさん使って耐性獲得される」という事態を招いていたわけです。嗚呼、歴史は繰り返される。



そこで人類は、ペニシリンの「改良」に着手します。


■1つは、構造を変更してペニシリナーゼに分解されにくくする。

これの代表がメチシリン。何でか知らないけど、聞いたことがある、っていう人は多いのではないでしょうか。


それもそのはず、メチシリンは、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の名前の由来になったものです。メチシリンがダメなら全部ダメ、ということは、そんなにすげー薬なのか。


いやー実はそうでもないんです。まあそもそも、黄色ブドウ球菌用として作られたメチシリンですが、メチシリンを使い出して(例によって)ほどなく、メチシリンに耐性を持つように菌の標的部位構造が変化した、これがMRSAなんですが、たまたま、その構造変化によって、ほとんどの抗菌薬が効かなくなってしまったのです。たまたまとはいえ、メチシリンは「MRSAを生み出した」汚名を着せられ、退場となってしまいます。


副作用の問題もあり、この系統のペニシリンは、我が国では表舞台から姿を消しています。



■もう1つは構造を変更して、グラム陰性桿菌にも効くようにする。

いわゆる広域ペニシリンという範疇に入るペニシリンです。この中にも、緑膿菌に効くやつと効かないやつ、大きく分けて2種類あります。


ペニシリナーゼ(βラクタマーゼ)で分解されるので、ペニシリナーゼを産生する菌にはやはり効き目がありません。



■また1つは、ペニシリナーゼ(βラクタマーゼ)阻害剤を混ぜる。

上記の広域ペニシリンにペニシリナーゼ(βラクタマーゼ)阻害薬を混ぜたものです。そのためにペニシリナーゼ産生菌に対するスペクトラムが広がりました。元の広域ペニシリンに、上記のごとく緑膿菌に効くやつと効かないやつがあるため、こちらも同様、緑膿菌に効くやつと効かないやつがあります。

βラクタマーゼ阻害薬が入っても、緑膿菌に効かないやつは効かない、ということです。



明日から各論です。


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2012年09月21日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」13〜抗菌薬の種類と特徴1・菌の分類

いつまでごちゃごちゃやってんねん、はよ抗菌薬の話せーや、という声もなく?、粛々と抗菌薬の話に入りましょう。


ここから先は、肺炎の原因菌として大事な菌を分類し、それらに対してどうか、という観点で見ていきます。


市中肺炎のガイドラインに載っている、原因微生物で非定型病原体(βラクタム系が効かない奴ら)以外のものを上から順に挙げてみましょう。


肺炎球菌
インフルエンザ菌

黄色ブドウ球菌(MSSA、MRSA)
モラクセラ
クレブシエラ

ミレリ・グループ
嫌気性菌

緑膿菌


間が開いているのは、頻度に開きがある、そのニュアンスをお伝えしたかったから


あと、院内肺炎や医療・介護関連肺炎においては、大腸菌をはじめとする腸内細菌系の頻度が高くなってきます。



このうち、肺炎球菌とミレリ・グループ、黄色ブドウ球菌、口腔内の嫌気性菌はグラム陽性球菌。
モラクセラはグラム陰性球菌。
インフルエンザ菌、クレブシエラ、主な腸内細菌、緑膿菌はグラム陰性桿菌ですね。


で、分類としては、まず大きくグラム陽性球菌群、グラム陰性菌群に分けます。


それから、βラクタム系の天敵、βラクタマーゼ産生菌(グラム陽性球菌でも陰性桿菌でもあります)はちょっと特別扱い。

また、市中肺炎の原因菌として割合が多いのと、少しやっかいなBLNARが増えている、ということでインフルエンザ菌も少し別扱いとなります。


緑膿菌はもちろん特別扱い。MRSAも然りですね。

ということで、来週に続きます。


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2012年09月20日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」12〜重症度分類・治療にどうかかわってくるのか。

発症の場、菌をどこでもらったかによって、肺炎の原因として想定すべき菌が異なる、そのために、発症の場別にガイドラインが決まっていることはご理解頂けましたか?


各々のガイドラインで次に行うべきこととしては、患者さんがどのくらい深刻な状況であるかを評価する、重症度の評価を行います。


評価した重症度の意味合いですが、市中肺炎の場合は、まず入院適応があるかどうかを判断するという、(特に専門外の医師が)現実問題として直面する問題の解決になる、大変有用な判定基準になっています。ですからこれは救急室で肺炎患者さんを診る可能性のあるすべての初期研修医が習熟してほしいところです。


もちろん重症度は予後予測因子でもあります。というよりむしろ、本来はこの重症度によって、予後を予測し治療に反映させる、という重要な役割を担っているのです。その一環として入院適応の判断も決められるわけです。


より重症と考えられる症例では、治療も待ったなし。従って、初期のエンピリック治療においては広域抗菌薬を使用せざるを得ない。使用すべき、ではないですよ。念のため(広域から入っても、培養結果などからde-escalationを考慮すべき、であることは言うまでもありません)。


また、医療・介護関連肺炎のガイドラインにおいては、重症度分類に加えて耐性菌のリスク因子を考慮に入れた「治療区分」という概念が使われていますが、これもやはり抗菌薬を選択するための分類になっています。


このように、重症度分類は、いずれのガイドラインにおいても、予後を予測し治療を決定する重要な指標となっているのです。



各々のガイドラインによって重症度を決める項目が微妙に異なるところが憎い、といいますか面倒なところですね。まあこれは、予後予測因子が市中肺炎か、院内肺炎かで異なるために仕方のないところではありますが…。


市中肺炎の重症度判定に使われるA-DROPシステムは、


A:Age(年齢)
D:Dehydration(脱水)
R:Respiration(呼吸)SpO2≦90%
O:Orientation(意識障害)
P:Pressure(血圧)


という項目を使用しています。これは、英国胸部学会が推奨するCURB-65とほぼ同じものなのですが、あらゆる実地臨床医を対象とし非専門医に広く使われることを基本理念とする我が国のガイドラインにおいて、CURB-65の「呼吸数」という項目は(非専門医にやって頂くには)無理があるため、むしろ最近はどこのクリニックにも置いてありそうなSpO2モニターによる計測値を項目に入れた、という経緯があるのでした。


しかしまあ、日本の臨床医は呼吸数を見ない、とガイドラインに明記されるって、かなり恥ずかしいことじゃないですかね。逆に、ガイドラインで「呼吸数を見よ!」って強調して、啓蒙しようという考えはなかったんでしょうか…


対して、院内肺炎ガイドラインはI-ROAD。


I:immunodeficiency(悪性腫瘍、または免疫不全状態)
R:Respiration(呼吸)SpO2>90%を維持するためにFiO2>35%を要する。
O:Orientation(意識障害)
A:Age(年齢)
D:Dehydration(脱水または乏尿)


順番とちょっとニュアンスが変わっただけで、ほとんど一緒やんけ、と思ったものです。
それなら語呂合わせも一緒にするのが、センスある語呂合わせってもんですが…。


まあ、ともかく、これの3項目以上に該当すれば重症群。


これに該当しない群は軽症、または中等症です。肺炎の重症度規定因子としてCRP≧20mg/dlと、胸部X線写真で陰影の広がりが一側肺の2/3以上、という、予後に影響を与えると調査で判明した2項目を満たすと中等症、満たさない場合を軽症としました。



市中肺炎と院内肺炎で共通するところを見てみると、年齢、脱水(某尿、血圧低下)、意識障害、呼吸状態(酸素化)が、肺炎の予後を決める、というところは間違いがなさそうです。少なくとも、救急室ではこれらの項目をササッと評価できるようになっておきたいですね。


医療・介護関連肺炎においては独特のシステムはなく、A-DROPやI-ROADを参考にして、重症度というか「治療区分」を主治医が決める、みたいなことになっています。


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posted by 長尾大志 at 17:39 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年09月19日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」11〜菌をもらった場所別の原因菌・市中でも院内でもない場所…

肺炎の分類としては、元々菌をもらった場所によって入ってくる菌が違う、そういう考え方から市中肺炎(家やその辺でもらう)と院内肺炎(病院に入院していてもらう)という2つのくくりがまず考えられました。


しかし、その定義でいうと入院はしていないので院内肺炎ではないんだけれども、市中肺炎といえるまで元気でもない、そういう人たちが見えてきたのです。



入院はしていない。そこまで重症の基礎疾患は持っていない。

  • でも、抗菌薬を繰り返し使用するような病歴があって、耐性菌が常在しているリスクがある。

  • あるいは、ステロイド、免疫抑制薬、抗癌剤などの治療によって免疫力が低下している。

  • もしくは、介護を受けていて、介護者の手指を介して耐性菌を受け取ってしまう。

  • はたまた、カテーテルを出し入れする必要があり、その取り扱いの過程で医療関係者の手指に触れる。

  • そんな感じで口腔内(や皮膚、腸管内)の常在菌が耐性菌に入れ替わり、それを誤嚥してしまいがちである。



このような方々は耐性菌リスク、誤嚥のリスクが多く、治療や予後を考える上で、独立したグループとして考えて対応する必要がでてきました。


日本においても2011年、色々な議論の末に、市中、院内に次ぐ第3の概念、慢性期病棟入院を含む医療・介護関連肺炎(NHCAP:nursing and healthcare-associated pneumonia)という概念ができたのです。


その定義は、

  • 長期療養病床または介護施設に入所

  • 90日以内に病院を退院した

  • 介護*を必要とする高齢者、身体障害者

  • 通院にて継続的に血管内治療*を受けている


  *介護…身の回りのことしかできず日中の50%以上をベッドで過ごす
  *血管内治療…透析・抗菌薬・化学療法・免疫抑制薬など

です。おおよそ上に書いたようなことが網羅されているかと思います。


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posted by 長尾大志 at 16:59 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年09月18日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」10〜院内肺炎の原因となる主な耐性菌・MRSA

皆さんよくご存じの通り、MRSAは多剤耐性菌であり、そんじょそこらの抗菌薬では全く歯がたちません。


ですので、抗菌薬治療の末に、菌交代が起こって、その結果MRSAが生み出される…みたいな理屈があります。


しかも、元々は表皮に住んでいる菌ですから、一度生み出されればヒトの表皮に常在して、(医療従事者の手指から手指へと伝わっていき、)音もなく過ごしているわけです。そして、宿主の免疫力が低下、あるいは周囲の競合する菌が絶滅したときに蔓延ってくる。


そういうわけで、院内で感染する菌として、重要な意味を持つわけです。
また、使う抗菌薬もある意味、特別な薬(しかも高い!)ですから、MRSAが感染の原因菌であるかどうかの見極めは、大変重要であると言えます。



ということで、肺炎のガイドラインにおけるMRSAの取り扱いを見てみましょう。


市中肺炎のガイドラインでは、市中肺炎における頻度が少ないこともあり、あまり大々的に取り上げられていませんが、院内肺炎と医療・介護関連肺炎のガイドラインでは大きく取り上げられています。これらのガイドラインでは、どういうときに疑うべきか、という指標が挙げられていて、参考になります。



院内肺炎ガイドラインにおいて、MRSAの保菌リスクが疑われるケースとして挙げられているのは、

  • 長期(2週間程度)の抗菌薬投与。

  • 長期入院の既往。

  • これまでに鼻腔や痰などからMRSAが検出された。


という項目ですが、これはあくまで「保菌リスク」であることに注意してください。


どういうことか。
これを満たせば、「MRSA肺炎として治療せよ」ということではなく、「MRSAを保菌している可能性があると考えよ」ということ。


たとえば、院内肺炎を発症した患者さん。喀痰グラム染色でブドウ球菌の貪食像があったと。で、2週間抗菌薬を投与されていたならば、これはMRSAが原因に関与している可能性が高く、治療当初から抗MRSA薬を併用していくことで、予後の改善につながるものと想定されているのです。


一方、院内肺炎患者さんで仮に上記の条件を満たしても、喀痰グラム染色で何も出ていない。しかも軽症、となりますと、初期治療でMRSAを叩きにいく根拠に乏しい、ということになります。

治療の具体的な考え方は後に詳しく述べますが、こんな感じに理詰めで決めていきます。



医療・介護関連肺炎のガイドラインでは、「耐性菌リスク」として、

  • 過去90日以内に広域抗菌薬を2日以上投与された。

  • 経管栄養を施行された。


という項目がありますが、これらは緑膿菌はじめ、他の耐性菌も含めたリスク因子です。MRSAのリスクは「MRSAが過去に分離された」ことでの判断となります。




このようにガイドラインではMRSAを取り上げていますが、(以前にも紹介しましたが)大阪大学感染制御部の朝野先生は、「普通の肺炎の表現型(浸潤影を生ぜしめる肺炎)でMRSAが原因菌であることは、感染症の専門家としては考えられない」とおっしゃいます。


MRSAは、耐性菌でもありますが、その前にブドウ球菌であります。ブドウ球菌による感染症は、組織障害性が特徴です。肺であれば、普通の肺炎ではなく、肺膿瘍や膿胸といった「肺が破壊される病態」を呈することが多いわけです。


ですから、朝野先生は、「痰からMRSAが出ている普通の肺炎」は、保菌しているだけなのではないか、検出されたMRSAが原因菌として明らかな意味があるのは、空洞や壊死を伴う膿瘍様病変からMSSAやMRSAが分離されたときである、とおっしゃっています。


この考え方に沿うと、「MRSA肺炎」は随分少なくなるだろう、とのことですが、なかなか臨床のセッティングで、重症患者さんのMRSA感染症を「否定」するのも勇気が必要。


ただ少なくとも「痰からMRSA」だけで抗MRSA薬、ではなく、少なくとも貪食像があるかどうかは確認し、そして臨床像はいかがなものかに思いを巡らせたいところです。


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posted by 長尾大志 at 19:52 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年09月14日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」9〜院内肺炎の原因となる主な耐性菌・(多剤耐性)緑膿菌

さて有名な緑膿菌ですが、特に病院内で感染・発症する機会が多いようです。その理由としては、

  • 他に有力な菌が蔓延っている間は増殖しない。

  • 強力な抗菌薬を使用されて他の菌が死滅すると勢力を伸ばす。

  • 院内において水回りの衛生管理・消毒が不完全になりがち。そういう環境を好む。



こういうところから、抗菌薬を使われがちな院内肺炎における重要な原因菌として取り扱われています。最近では多剤耐性緑膿菌が問題となっていることから、いかに「適切に」緑膿菌に対する治療を行うか、ということが抗菌薬治療のカギといっても過言ではない状況です。


「適切な」抗緑膿菌治療、基本的な戦略としては、

  • 緑膿菌が原因菌であることを確実に診断する。

  • 強力な抗菌薬を適切に使用し、確実に治癒を目指す。

  • 中途半端な治療、不適切な治療で耐性がつくことを防ぐ。

  • 緑膿菌が原因でない感染症に対しては、抗緑膿菌抗菌薬を使わない



特に昨今では、最後の項目がかなり大事なのです。

なぜか。


もうそれは、人類に残された「最終兵器」だから。

抗緑膿菌作用のある抗菌薬といえば、カルバペネム系、アミノグリコシド系、ニューキノロン系が中心ですが、この辺よりも新しい系統の抗菌薬は、開発すらなかなかされにくい現状があるのです。


このあたりも製薬会社の方針、昨今の世知辛い情勢など、いいたいことはありますが、それはまたの機会に。


多少大げさな言い方をお許し頂くならば、これらの薬剤が無効になれば、人類滅亡の危機につながる、そういう危機感を持って、私たちは抗菌薬を使っていきたいもの。


抗菌薬を使うと、大なり小なり、必ずその環境にいる菌が影響を受けます。具体的には、使った抗菌薬に感受性のある菌が死に絶え、耐性のある菌が生き残る。かろうじて生き残った菌が、その生き残りのワザを他の菌に伝え、その抗菌薬がだんだん効かなくなってくる…。


こうして、多くの抗菌薬がその翼をもがれ、地に落ちていったのであります。
代表が肺炎球菌に対するニューマクロライド。


私が医師になった当時はまだまだ効果があったはずなのですが…。小児の感染症に、比較的安全に使える、ということ、また、何となく(ここがポイント)線毛機能を改善させそうな気がする、ということなどから、中耳炎や副鼻腔炎、扁桃炎その他小児科領域で濫用されました。


それにより、今となってはスペクトラムから外れようか、というほど効かなくなってしまったのは有名な話です。


同じ轍をカルバペネムやキノロンに踏ませてはならない。アミノグリコシドはそれほど濫用されていないようですが、ペネムとキノロンは「何にでも効く」「便利な」薬です。




便利さを覚えると、人間、退化します。ずぼらになるのです。頭を使わなくなります。これは歴史が証明しています。


ウチにも多くの家電製品があります。電子レンジ、炊飯器、冷蔵庫、アイロン…このあたりは、さすがに無い時代には戻れないでしょう…食器洗い機、スチーマー、フードプロセッサー、フィッシュロースター…ここまでくると、「便利」ではあるけれども、いかにも家事能力が退化しそうではありませんか?いや、断じて嫁批判ではありませんが…(苦笑)。


原因菌をそう突き詰めて考えなくても、「とりあえずキノロン」でハズレ無し。耐性について評価しなくても「とりあえずペネム」で間違いない。


目の前にいる患者さんの治療としては、ハズレがなければいいのでしょう。しかし、人類の将来を考えたときに、果たしてそれでいいのか。抗菌薬を使うすべての医師が意識して頂きたい、こう思っているのです。




そのためには、使おうとしている抗菌薬が「緑膿菌に効くものかどうか」これぐらいは知っておきたいものです。少なくとも、緑膿菌感染の可能性が低い、そのような患者さんに「緑膿菌に効いてしまう」抗菌薬を投与しない、このような見識を求めたいと思います。


じゃあ、緑膿菌感染の可能性はどうやって判断するか。これは日米さまざまなガイドラインによって若干違いはありますが、日本の院内肺炎ガイドラインによりますと、以下のような項目がリスク因子として挙げられています。


  • 15日以上入院している。

  • 第3世代セフェム系抗菌薬を使用したことがある。

  • COPDなどの慢性気道疾患がある。



こういう人だったらすべてペネムOKか、まだです。詳しくは治療のところでお話しますが、重症度によっても「こうだったら広域」という基準があるのです。あくまで、「可能性を考慮」という段階なんですね。


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2012年09月13日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」8〜菌をもらった場所別の原因菌・入院している患者さん=院内肺炎

病院に入院している患者さんの状況を想像してみましょう。

そもそも入院しているということは、何か入院せざるを得ない理由があるはずです。手術をする(した)とか、副作用の大きな(免疫力を低下させるような)薬剤を使うとか、中等症以上の感染症とか、摂食困難とか、挿管チューブやカテーテルが挿入されているとか…。


ということは、患者さんはそれぞれ、ある種の菌が定着、あるいは侵入しやすい状況を持っておられる、ということになります。


そして、周りに浮かんでいる、あるいはそこらに定着している菌も、元気で家にいるときとは異なります。


病院の中には、元気でスタスタ歩き回って、肺炎球菌やマイコプラズマをまき散らす人は少ない(そういう人は入院しない)。


入院している患者さんから出てくるのは、1つは(割と広域なスペクトラムの)抗菌薬を使用されたことによって出てきて、そのあたりに定着した耐性菌、そしてもう1つはなんやかんやの分泌物やら排泄物やらの中に入って出てくる腸内細菌。両方の要素を持つものとして、有名な緑膿菌とMRSAがあります。


いずれにしても、出てきた菌が直接、または間接的に(一旦どこかに定着して)、別の患者さんに入り、肺炎を引き起こしたもの。これが院内肺炎です。


どこに定着するか。MRSAや腸球菌では医療者の手指が有名ですし、緑膿菌やセラチアなどでは水道の流しやネブライザー、加湿器、ボトルやチューブなど、水で濡れているところは怪しいようです。その他、リネンや患者さん自身、ご家族の手指や皮膚も。


そういうところから患者さんの鼻腔、口腔に定着し、いつの間にやら嚥下(誤嚥)され…いうルートが想定されているわけです。


ちなみに鼻腔、口腔には元気で家におられた頃からの肺炎球菌やインフルエンザ菌もいたりしますので、入院して間もない患者さんや、軽症の患者さんではそれらの菌も想定されます。


というわけで、院内肺炎、特に病院に長居されている、あるいはリスクの大きな(免疫低下のある)患者さんの肺炎、原因菌は腸内細菌のグラム陰性桿菌が主体。


問題は、緑膿菌、あるいはMRSAがいるかいないか、ということでしょう。


たとえば3世代セフェムを使うと菌交代で緑膿菌が残ります。広域抗生剤の長期投与はMRSAのリスクになりますし、そもそも抗菌薬を使うと、大なり小なり耐性がついてくるものなのです。


院内肺炎の原因菌はこのようにグラム陰性桿菌、さらには緑膿菌・MRSAをはじめとする耐性菌であることが多いため、エンピリック(経験的)治療はこれらがターゲットとなってきます。


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2012年09月12日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」7〜市中肺炎の原因となる主な耐性菌・マイコプラズマ

マイコプラズマという病原体は、細胞壁を持ちませんので、細胞壁の合成阻害薬であるβラクタム系抗菌薬(ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系)は全く効果がありません。


そうはいっても、ちょっとぐらいは…イヤイヤ、全く効きません。原理的に効くわけがないのです。それは皆さんもよくご存じでしょう。



従って、特にマイコプラズマに対しては、マクロライド系、あるいは、キノロン系抗菌薬を使う、ということにガイドラインではなっています。


ところがマクロライド系の(恐ろしいほどの)頻用により、マクロライド耐性のマイコプラズマがどんどん出現してきている、ということが話題になっています。



日本での報告では、14員環、15員環マクロライドに高度耐性を示していて、リンコマイシンにも耐性はあるもののテトラサイクリン系やキノロン系薬はまだ有効なようです。


成人でのマクロライド耐性マイコプラズマの報告は増えてきているということですが、幸いなことに、私たちの周囲で実際マイコプラズマと診断されて、マクロライドが効かない、というケースはまだそれほど多くないように思います。


一方で、小児科領域では難渋するケースが多くなっている、ということも言われています。それだけ小児にマクロライドが濫用されたことの証ですね。


キノロンのメーカーさんの研究会なんかに行くと、「マクロライド耐性マイコプラズマの報告はこんなに増えて…」みたいな話を聞かされて、なんだかついついキノロンを使いたくなる今日このごろです。ここはキノロン温存のためにも、マクロライドに「最後のご奉公」、もう一がんばりしてほしい、とも思う気持ちがあるのですが…。


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2012年09月11日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」6〜市中肺炎の原因となる主な耐性菌・インフルエンザ菌・BLNAR

COPD患者さんでおなじみ、H.influenzae(インフルエンザ桿菌)。こちらも着々と耐性化が進んできています。


インフルエンザ菌は耐性化のパターンによって、以下のような名前がついています。

  • β-lactamase negative ampicillin sensitive:BLNAS

  • β-lactamase negative ampicillin resistant:BLNAR

  • β-lactamase positive ampicillin resistant:BLPAR

  • β-lactamase positive amoxicillin/clavulanate resistant:BLPACR


要はβラクタマーゼを産生するかどうか、ということ、それからペニシリンに耐性があるかどうか、ということで分類しています。βラクタマーゼを産生せず、ペニシリン(アンピシリン)に感受性がある、素直な菌がBLNAS。


ペニシリンGを改良したアンピシリン(ABPC)が、グラム陰性桿菌であるインフルエンザ菌(や大腸菌)にも有効となったわけですが、インフルエンザ菌はβラクタマーゼを産生する形質を獲得する(=BLPAR/BLPACR)ことでABPCの魔の手から逃れようとしました。


それらの菌に対して人類は、βラクタマーゼ阻害薬+ペニシリンの合剤、あるいは第2世代のセフェム系薬で対応していました。


ところが次に、インフルエンザ菌はβラクタマーゼ阻害薬に頼らずにABPCに耐性を持つメカニズムを開発しました。細胞壁合成酵素そのものが変化することで耐性を獲得したのです。それがBLNARであります。


ちなみにこのBLNARの出現は、経口セフェムという、スペクトラムが広くて一見便利ではあるけれども、実際血中濃度、局所濃度が上がらない抗菌薬が頻用されたことによって加速した、といわれています。


抗菌薬に充分量(MIC以上)接触すると菌は死滅していきますが、不充分な量であれば耐性を獲得させる手助けをすることになるのです…。


BLNARの出現により、第2世代のセフェムが(すべてのインフルエンザ菌に対してではないのですが)使い物にならなくなり、特に肺炎業界の抗菌薬シェアがぐぐっ、と変わるという結果になったのです。


私が研修医になった頃は、肺炎といえば古マリン、いやフルマリン(第2世代)花盛りで、シオノギのMRさんがずいぶん上級医と仲良くしておられたのを思い出します。あとパンスポリンも、最近滅多にお目にかからなくなってしまいました。


ガイドライン作成当時はβラクタマーゼ産生菌(BLPAR、BLPACR)の頻度が10%、BLNARの頻度が20〜30%程度にまで増加しました。



そのため、これらに有効な第3世代セフェム系薬が肺炎ガイドラインで取り上げられ、頻用されることになるのです。


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posted by 長尾大志 at 19:11 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年09月10日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」5〜市中肺炎の原因となる主な耐性菌・肺炎球菌

市中肺炎の原因となる菌は肺炎球菌やH.influenzae(インフルエンザ菌)、マイコプラズマやクラミドフィラ。そのうち、肺炎球菌、H.influenzae(インフルエンザ菌)、マイコプラズマ(まあ、ほとんどですが)においては、耐性の問題も無視できない割合で見受けられます。


肺炎球菌の耐性としては、ペニシリン感受性肺炎球菌(PSSP:penicillin sensitive Streptococcus pneumoniae)に対するペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP:penicillin resistant Streptococcus pneumoniae)というものがあります。さらに、その間のペニシリン低感受性(中等度耐性)肺炎球菌(PISP:penicillin intermediately resistant Streptococcus pneumoniae)というものも定義されています。


歴史的?経緯を書きますと、元々は、すべての感染症に対してPCGのMICによって下記のように耐性が定義されていたのですが、

  • PSSP:MIC≦0.063

  • PISP:0.125〜1

  • PRSP:MIC≧2


2008年に、非経口ペニシリンを使用するにあたって、髄膜炎(PCGの移行が悪い)と肺炎その他の感染症は分けて、感受性の定義が変更されました。


髄膜炎の場合、

  • PSSP:MIC≦0.06

  • PRSP:MIC≧0.12



肺炎その他の感染症においては、

  • PSSP:MIC≦2.0

  • PISP:4.0

  • PRSP:MIC≧8.0



となっています。


実のところ、世の中にいる肺炎球菌の多くはMIC=2の株なのですが、これが古い基準だとすべてPRSPに分類されてしまっていたのですね。そのため、「ペニシリン耐性肺炎球菌=ペニシリンが使えない」という都市伝説?が蔓延っていたのです。


しかし、この新しい定義によりますと、MIC=2の株はPSSPとなります。ギリギリ当落線上、ではありますが、ペニシリン系は投与量を増やせば感受性の低下に対応できる、ということで、肺炎球菌による肺炎治療の原則は、ペニシリン系抗菌薬の高用量投与が第一選択、と(ガイドラインでは)なっています。


基本的なガイドラインの考え方は、@患者さんを間違いなく治療する、A現在人類が手にしている抗菌薬という武器を、できる限り大切に使用し、次代まで使える状態で引き渡す、ということに尽きるかと思います。


そのためには比較的狭域で、古い(=安い)薬を、いかにうまく(使うべき場面で)使うか、ということですから、特にペニシリンをきちんと使う、ということが強調されているのです。


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posted by 長尾大志 at 18:47 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年09月07日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」4〜耐性菌について・MIC (Minimum inhibitory concentration最小発育阻止濃度)とは

現在の感染症を考える上で、耐性の問題を避けて通るわけには参りません。抗菌薬を使うと、一定の割合で、それに対する耐性菌が生き残ってくる以上、現在使われている抗菌薬には、何らかの形で耐性菌が存在する、と考えておく必要があります。


1耐性菌機序図.JPG


上の図は結核菌の耐性獲得図ですが、一般細菌でも理屈は同じ。ある抗菌薬を使い続けると、感受性のある菌はバタバタ死んでいくものの耐性を獲得した菌は生き残り、やがて耐性菌ばかりになる、ということです。


その耐性の問題を考える上で、知っておくべき用語として「MIC」があります。


MICはMinimum inhibitory concentration(最小発育阻止濃度)、つまり、細菌の発育を阻止できる最小の濃度です。どういうことか。


培地に菌を植えると、生えてきますね。


2培地に菌.JPG


しかし、その培地に、その菌に対して有効な抗菌薬を充分量染みこませておくと…


3培地に菌と抗菌薬.JPG


菌は生えません。


ですから、ある菌に対して、色々な濃度の抗菌薬を染みこませた培地を作り、どの段階の濃度から菌が生えるか、これを見ることで、菌の発育を阻止する最小の濃度(=MIC)を知るわけです。


4MICの測定.JPG


たとえば、下の図のようであれば、1μg/mlで生え、2μg/mlでは生えない、ということですから、菌の発育を阻止する最小の濃度は2μg/mlである、すなわち、MICは2μg/ml、ということになります。


5MICの測定.JPG


MICについては色々な事柄があり、実は大変ややこしい世界なのですが、まず取っつきとしては、MICが小さければ、その抗菌薬はその菌によく効き、MICが大きいと効きにくくなる、と考えましょう。


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posted by 長尾大志 at 19:05 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年09月06日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」3〜菌をもらった場所別の原因菌・若い元気な人=市中肺炎

病原性を持つ菌で、肺の環境を好み、かつ、エアロゾル・微少な飛沫として空中に浮かぶことができる(つまり肺に入る経路を持つ)菌、それが肺炎の原因菌になりうるわけです。


元気な人、若い人が、保育園、幼稚園、学校、会社、人混みなどで吸い込むような菌は、やはりそういう場に出入りできるくらいの状態の「病気の人」、あるいは「健康だけれども保菌している人」が喀出した「咳」「痰」「しぶき」に含まれている菌ということになります。


すなわち、軽い上気道炎、咽頭炎、副鼻腔炎、気管支炎、慢性気道感染の原因となる菌や鼻咽頭に常在しそうな、次のような菌(微生物)が挙げられます。


  • 肺炎球菌

  • H.influenzae(インフルエンザ菌)

  • マイコプラズマ・クラミドフィラ

  • ウイルス(インフルエンザ、水痘他)



他に、クラミドフィラ・シッタシ(オウム病の原因)は鳥、レジオネラは水環境(24時間風呂、温泉etc…)を経て感染する。これらも、いわゆる「市中での生活」をしていないと感染機会はなさそうですね。


市中肺炎の原因菌はこれらであることが多いため、エンピリック(経験的)治療はこれらの菌をターゲットとして行われます。


スペクトラム的には、肺炎球菌やH.influenzae(インフルエンザ菌)には通常ペニシリンなどのβラクタムが有効ですが、マイコプラズマやクラミドフィラにはβラクタムが効かない。ということで、これらの鑑別が必要になるわけです。


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posted by 長尾大志 at 17:22 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年09月05日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」2〜菌をもらった場所

肺には、常在菌というべきものはほとんどおらず、通常は無菌状態です。肺炎となるためには、菌がどこかからやってこなくてはなりません。


通常菌が入ってくる経路は鼻や口から気管〜気管支を通じて、となるわけですが、そもそも鼻や口に入ってくるためには、@菌が飛沫(しぶき)のようになって、鼻や口の近くを浮遊しているか、A元々鼻腔や口腔内に(常在菌として)住んでいるか、どちらかの状態である必要があるでしょう。


いわゆる伝染、伝搬、ということを考えますと、@他人が喀出した「咳」「痰」「しぶき」を(エアロゾル、飛沫のまま)吸い込む、という経路が順当です。


しかし、ADLの低下した患者さんや脳血管障害などのある患者さんのように、嚥下障害がありますと、A医療関係者、介護者、患者さん自身、家族などの手指についた菌が患者さんの口腔内に定着し、それを誤嚥する、という経路もあり得るわけです。この場合は接触による伝搬、ということになります。



健康な人が普通に生活をしていて肺炎になる、というケースでは、@のパターンがほとんどです。すなわち、元気な人、若い人は、保育園、幼稚園、学校、会社、人混みなどで、他人が喀出した「咳」「痰」「しぶき」を吸い込むことで感染が成立する。


一方で、入院中の方、介護を受けているような方ではAのパターンが増えてくる。@のパターンであっても、周囲にいる「他人」も、やはり入院や介護を受けているわけで、他人が喀出した「咳」「痰」「しぶき」の中にいる菌は、元気な人とは違ってきます。


このように、おのおのの「場」にいる菌、そして患者さん(宿主)の状況が異なるために、肺炎の(想定される)原因菌、さらには使用すべき抗菌薬が異なってくるわけです。


そんなわけで、健康な人が普通に暮らす市中で発症した肺炎=市中肺炎、病気で入院中に発症した肺炎=院内肺炎、入院までは行かないけれど、病院によく顔を出す、あるいは介護を受けている人向けの医療・介護関連肺炎と、3つもガイドラインができてしまったのでした。


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posted by 長尾大志 at 19:39 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年09月04日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」1〜肺炎の定義、再び

肺炎とは何か。市中肺炎ガイドラインによるところの定義では、

「肺炎とは肺実質の 急性の、感染性の、炎症である。」とされています。


多くの場合、原因となる微生物が鼻や口から気道を通って肺に進入し、線毛やマクロファージによるお掃除機構をかいくぐって増殖、それに対して防衛軍である好中球、リンパ球、マクロファージなどが局所に遊走してきまして、戦いが始まる。その戦いの場を「炎症」と呼びます。


戦いの場では白血球たちがどんどん参加できるよう、血管が拡張して局所の血流が増え、サイトカインなどにより血管透過性が亢進して、局所に浮腫が生じます。炎症のために局所が発赤・発熱・腫脹・疼痛などを呈するのはこのためです。


肺においては、この典型的な炎症像とは少し様相が異なります。なんてったって、肺は空気だらけの、スカスカの臓器。


1肺の模式図.JPG


血管透過性が亢進したら、肺胞腔内に「浸出液」があふれ出ます。そして戦いが進むにつれ、浸出液内に山ほど微生物、防衛軍の屍骸が累積する。これが「膿」です。膿の見た目が白く濁っていたことから、「白血球」の名がついたことはご存じでしょう。


病変は肺胞から肺胞へ、気道、Kohn孔を通して波及し、連続する病変が生じます。肺胞1個1個を拡大して見てみると…


2Kohn孔.JPG


こうやって連続性に肺胞が水浸しになることで、浸潤影が生じます。そうすると、換気が減少し、血流は保たれる、換気血流不均等が生じ、A-aDO2の開大、低酸素血症→呼吸困難、頻呼吸が生じます。


3浸潤影の模式図.JPG


そのたまった膿があふれ出してきたのが膿性痰、痰が気道にたまるとラ音が聴取される。そういうわけで、肺炎では、


  • 咳、痰、発熱、呼吸困難→低酸素血症、頻呼吸

  • 聴診上ラ音

  • 胸部レントゲンで陰影(特に浸潤影)

  • 炎症所見(白血球、CRPなど)高値



などの症状、所見が見られるわけです。


肺炎の治療としては細菌が原因であれば、抗菌薬を使いましょう、ということになります。
ある抗菌薬がどの菌に効くかを表したものがスペクトルで、これはどこにでも載っているものですが、それとは別に「耐性」の問題があります。


いくつかの菌においては、スペクトルではカバーされていても、耐性のためにその抗菌薬の効果に疑問がある、という事態があり得るのです。


そういうことも含めて、できる限り日本での肺炎診療、つまり抗菌薬使用を標準化しましょう、というところでガイドラインができたのです。


ガイドラインには、市中肺炎、院内肺炎、医療・介護関連肺炎の3つがあります。これは、発症した場によって、肺炎の原因となる微生物が異なる、ということと、その場にいる患者さんの状態が異なる、ということで、分けて考えるのが合理的であるからそうなったわけですが、根底に流れる考え方は皆同じです。


つまり、患者さんのいた場、患者さんの状態から、原因微生物を推定し、適切な抗菌薬を使用する、この流れは共通なのです。3つのガイドラインを読むのは大変だ…ということでなかなか読めない(私も含めて)皆さんと、ガイドラインの根底にある考え方を紐解いていきましょう。


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posted by 長尾大志 at 19:00 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年03月10日

肺炎のイロハ・基礎疾患のある患者に発症した、急性経過の病態6・治療薬の選択

高齢で喫煙歴(+COPD)、比較的緩徐な発症から、ひょっとするとH.influenzae、あたりをイメージされるでしょうか。

検査所見、胸部レントゲン、尿中肺炎球菌抗原陰性もあいますね。喀痰からHaemophilus属を検出した、となりますと…。


大阪大学の朝野先生によると、検出された菌が原因菌として明らかな意味があるのは…

  • 市中肺炎で、喀痰などから肺炎球菌が有意菌数分離されたとき

  • H.influenzae(元々肺には居ない)が有意菌数分離されたとき

  • レジオネラやマイコプラズマが分離されたとき

  • 空洞や壊死を伴う膿瘍様病変からMSSAやMRSAが分離されたとき



ぐらい、とのことですから、Haemophilus属がでた、というのはこれまでの所見を裏付けることになりそうです。


と、いうことで、Y先生が選択された抗菌薬…。


市中肺炎ガイドラインを参照されて、「BLNARのことを考えて、TAZ/PIPCを選択しました。」とのことでした。まあ、確かに書いてあります。

結果的には、最終培養でHaemophilus influenzae(BLNAR)3+、BLNARはABPC/SBT耐性であり、Y先生の懸念通り。市中肺炎だ、と思って何も考えずABPC/SBTを選択していたら、治療失敗の恐れはありました。


呼吸音は、○月24日(3病日)より改善傾向となり、○月27日(6病日)にはラ音は聴取しなくなりました。他の所見も順調に改善していたため、○月27日退院されました。

胸部レントゲンも、順調に改善。


120301CR.jpg


Y先生になるべくご自分で決定していただくために、あえて口を出しませんでしたが…。
TAZ/PIPCの選択は、目の前の患者さんの治療、という意味では正義ですが、環境に与える影響、という意味では、必ずしも正義とはいえない。やはり抗緑膿菌作用のある抗菌薬は、緑膿菌を強く疑うときに使いたいものです、そんなお話をしました。


しかしY先生にとっては、ご自分で方針を立てて、しっかり経過を追えたのでよかったと思います。一つ一つの意思決定に根拠があり、正しい論理展開の枠組みができているように見受けました。次は、肺炎でうまく治療が進まないケースを経験されると、また臨床力に深みが出ますね!

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posted by 長尾大志 at 22:42 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年03月09日

肺炎のイロハ・基礎疾患のある患者に発症した、急性経過の病態5・原因菌の推定

原因菌の推定です。


まずは病歴と身体所見から。

比較的急性発症ですが、突然の悪寒戦慄や、急な高熱などはありません。

基礎疾患としては、糖尿病と喫煙歴です。重症ではないにしてもCOPDもあるかもしれません。意識を失うほどの深酒はなさそう。


身体所見では、それほどの高熱でなく、全肺野で吸気時coarse crackles(+)が聴取されます。



市中肺炎でよくあるのは、肺炎球菌、マイコプラズマ、クラミドフィラ、H.influenzae、などなど、となります。


ガイドラインでまずは細菌と、主にマイコプラズマを鑑別する項目として、以下の6項目がありますが…


細菌ぽい項目 非細菌ぽい項目

高齢者           若年者(<60歳)
基礎疾患あり        基礎疾患なし
痰が多い          痰が少ない
ラ音が聴かれる       ラ音が聴かれない
空咳が少ない        空咳が多い
白血球が増える(≧1万)  白血球が増えない


高齢で基礎疾患があり、ラ音が聞かれて空咳が著明でない、とすると、これは細菌ぽい、ということになるでしょう。


また、喫煙歴(+COPD)と、比較的緩徐な発症から、細菌がいるとすると、ひょっとするとH.influenzae、あたりをイメージされるでしょうか。



次に検査所見を見てみますと、WBC 17,400>1万です。上記の病歴・所見と合わせると、マイコプラズマはあまり考える必要がなさそうです。


そして、胸部レントゲン。


120221CR1.jpg


大葉性肺炎というよりは、多発する班状影で、いかにも肺炎球菌、という感じではなさそう。

肺炎球菌尿中抗原も陰性です(だからといって、すぐに否定はできかねますが)。



そして、喀痰からHaemophilus属を検出した、となりますと…。
いよいよ、抗菌薬の選択です。


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posted by 長尾大志 at 10:14 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年03月08日

肺炎のイロハ・基礎疾患のある患者に発症した、急性経過の病態4

まあ、タイトルに「肺炎のイロハ」って書いちゃってますから、診断に悩むことはないと思うのですが。


基礎に糖尿病(経口血糖降下薬使用)、胃潰瘍のある喫煙者に生じた比較的急性の病態です。

糖尿病ですから、コントロールの具合にもよりますが若干の免疫低下はありそうです。喫煙者でもあり、感染リスクはある。重症COPDを思わせる、胸鎖乳突筋の発達や吸気時鎖骨上窩の陥凹はありませんが、線毛機能低下ぐらいはありそうですね。


急性に発症した、咳、発熱、低酸素血症。身体所見では呼吸数の増加と吸気時coarse crackles(+)、呼気終末時wheeze(+)。胸部レントゲンで浸潤影、炎症所見(白血球、CRPなど)高値、ということですから、「肺炎」という診断は間違いないでしょう。


急性発症で、急性肺炎、自宅での発症なので、市中肺炎、これもよろしいかと思います。


症状はマスクされているかもしれませんが、悪寒戦慄はなく、呼吸数からも重症感はなさそうです。自覚的に少し改善、というところも良いNewsですね。


それでは、市中肺炎ガイドラインの復習、というか、以前時間や大人の都合で書けなかったことを盛り込みつつ、実際の診断、治療過程を見て参りましょう。



市中肺炎と診断した、まず、どうしますか。



そう、重症度の判定をします。


A-DROPという語呂合わせ?で、重症度を評価します。これらの5項目は、いずれも市中肺炎の予後予測因子。各項目、当てはまると1点入ります。

A:Age(年齢) 男性≧70歳、女性≧75歳
D:Dehydration(脱水) BUN≧21または脱水
R:Respiration(呼吸)SpO2≦90%
O:Orientation(意識障害)
P:Pressure(血圧) 収縮期≦90mmHg

合計得点が何点かで、入院適応が決まります。

0点:軽症→外来治療可
1-2点:中等症→外来、または入院治療
3点以上:重症→入院治療
4点以上→ICU

ちなみに米国感染症学会(IDSA)のガイドラインはスコア計算が複雑で、非専門医にはハードルが高い、ということで日本呼吸器学会のガイドラインでは導入が見送られ、より簡素なCURB-65に準拠して設定されたものです。

CURB-65で使われている呼吸数≧30をSpO2 に置き換えています。まあ日本ではこれまで、呼吸数は軽視されてたんですねー。


この症例においては、A-DROPはDのみ当てはまり1点であったものの、食事・水分摂取が不良であったため、入院加療とされました。


さて、それではいよいよ、原因菌の推定です。


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posted by 長尾大志 at 12:44 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年03月07日

肺炎のイロハ・基礎疾患のある患者に発症した、急性経過の病態3

さて、お待ちかね(待ってる人も少ないでしょうが)、検査所見を見てみましょう。単位は省略させていただきます。
L:異常低値 H:異常高値

HT 34.3 L
HB 12.1 L
RBC 3.73 L
WBC 17.4 H
PLTS 28.6
SEG/NEUT 78.2 H
EOSIN 0.2
BASO 0.2
LYMPH 11.5 L
MONO 9.9
MCV 92
MCH 32.4
MCHC 35.3
TP 6.2 L
ALB 2.9 L
AST 24
ALT 20
LDH 198
ALP 259
G-GTP 51 H
CHE 181 L
LAP 106
T-BIL 0.50
D-BIL 0.14
A/G 0.88 L
NA 130 L
CL 96 L
K 4.1
UN 28.0 H
CRE 1.06
eGFR 54.0
CPK 477 H
CRP 28.72 HH
GLU 200 H

尿中肺炎球菌抗原 陰性
尿中レジオネラ抗原 陰性
インフルエンザA型、B型 いずれも陰性

喀痰培養検査
Streptococcus species (α) 3+
Haemophilus species 3+
Stomatococcus species 3+


目立つのは炎症所見の高値。血糖コントロールは入院時の随時で、HbA1cは6.6前後で推移していたようです。また、某科受診時に痰がとれていたため、培養の速報が出ていました。これが後になって、役に立ちましたね。


胸部レントゲン写真です。


120221CR1.jpg

120221CR2.jpg


右優位ですが、両側に斑状に分布する浸潤影。


さて、これまでの病歴、所見、検査結果から、診断をつけ、治療方針を定めなくてはなりません。Y先生はどうされたでしょうか。
そう難しくはないと思いますが、「しっかり根拠を示して診断、治療方針を定める」ことを意識しましょう。

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posted by 長尾大志 at 16:17 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年03月06日

肺炎のイロハ・基礎疾患のある患者に発症した、急性経過の病態2

あと、入院時にほしい情報としては、血糖コントロールの状況と内服している薬あたりでしょうか。

【入院時内服薬】
メデット(250) 2T分2 <ビグアナイド>
グルコバイOD(100) 3T分3 <α-GI>
アクトス(15) 1T分1 <インスリン抵抗改善薬>
フルイトラン(2) 0.5T分1 <サイアザイド>
オルメテック(10) 1T分1 <ARB>
グリメピリド(1) 2T分1 <SU薬>
ニフェジピンCR(10) 2T分2 <Ca blocker>


ここまでをまとめましょう。


基礎に糖尿病(経口血糖降下薬使用)、胃潰瘍のある喫煙者に生じた病態です。

糖尿病ですから、コントロールの具合にもよりますが若干の免疫低下はありそうです。胃潰瘍でpHを高くする薬を内服中。
喫煙者でもあり、感染リスクはある。COPDがあれば、呼吸器症状が出やすいということも想定しておきましょう。


発症は比較的急性で、安静で少し改善しています。糖尿病や年齢を考慮すると、若干症状が非典型的であるかもしれない、と思っておきましょうか…。


…さて、それでは、身体所見を見てみましょう。


Hugh-Johns U度
身長 159.5cm、体重 71.7kg、BMI 28 この8ヶ月で10kgの体重増加あり
入院時BT 36.8℃(外来受診時は37.6℃)、BP 124/72mmHg、HR 80、RR 28、SpO2 90-93% (room air)
咽頭発赤(−)結膜:貧血黄染なし 表在リンパ節蝕知せず
胸鎖乳突筋の発達や吸気時鎖骨上窩の陥凹はない。
呼吸音:右>左の全肺野で吸気時coarse crackles(+)、呼気終末時wheeze(+)
心音:心拍整 T(→)U(→)V(−)W(−) no murmur
腹部:やや膨満、軟 波動なし 腸音正常
下肢浮腫なし、両側足背動脈触知良好


だいたいこんなところです。
糖尿病のコントロールがよろしくないのか、体重増加があったようですが、あとは呼吸器系の所見が目立ちますね。


心拍数は体温相応なのに対し、呼吸数が上昇しています。SpO2の低下も見られます。そして吸気時全体に聞かれる断続性のラ音ですね。これは気道内の痰が震える音を反映しているといわれますから、痰が出てくるような疾患と思われます。


急性に発症した、呼吸器症状を呈する疾患。さらに、肺に断続性ラ音とwheezeも聴取される。鑑別は、まあ、だいたいお察しの通りだと思います。それでは、どのような検査結果が期待?されますか?

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posted by 長尾大志 at 18:13 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年03月05日

肺炎のイロハ・基礎疾患のある患者に発症した、急性経過の病態

2年目も終盤、入局を決められ、どんどん研修を進めているY先生にぴったりの症例が。肺炎の基礎をおさらいしましょう。


60歳代 男性

主訴:咳、食欲低下

現病歴:○月14日の晩に寒気を感じたが、体温は36℃台だった。同時に咳嗽が出現し、食事・水分摂取不良となった。家人も同時期に体調悪かったが、○月16,17日に家で安静を保った結果、体調は戻ったとのことで特に医療機関受診はしていなかった。
○月21日に某科外来を受診したところ、体温37.6℃、血液検査でWBC17400、CRP28.7であルと判明、また胸部レントゲンで両側肺に浸潤影を認めたため、当科へ紹介受診された。

既往歴:
肺炎;60歳代
糖尿病;30歳代後半より(経口血糖降下薬内服中)
胃潰瘍;20歳代(3,4回の入院歴あり)
十二指腸潰瘍;30歳頃(入院歴あり)
脂肪肝;30歳代より
脊髄腫瘍;40歳代に手術歴あり

家族歴:
父;喘息、糖尿病、高血圧
姉;癌(詳細不明)

生活歴:
喫煙;40〜60本/日 20歳〜60歳 60歳以降は8本/日、現在も喫煙中
飲酒;焼酎1.5合/日
ペット;10年以上前に犬2匹を約12年間
家屋;築30年以上の木造。風通しは良い。
加湿器;最近は使用していない。

職業歴:建設業(25〜40歳の間は現場監督→アスベストや粉塵暴露あり)

アレルギー:子供の頃から冬期に咳が多かったのみで、食物・薬剤アレルギーなし


これが、その先生のとられた病歴です。なかなかすてきだと思いますが。
もっとほしい情報はあるでしょうか。

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posted by 長尾大志 at 13:31 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年01月20日

ジスロマック(アジスロマイシン)注射用の使い方

最近発売になった、ジスロマック(アジスロマイシン:AZM)注射用について、うちでも先日説明会がありましたが、メーカーさんのプレゼンでは今ひとつ、ターゲットが明らかではありません(うちだけかもしれませんが…)。

実際どのように使ったらよいかを考えてみます。


ジスロマック注射用は最近発売されたため、以前に発表されている市中肺炎、院内肺炎のガイドラインには掲載されていません。


医療・介護関連肺炎(NHCAP)ガイドラインでは、ICU管理を要するような重症群でようやく出てきます。


…まあ、そういうことです。


エビデンスとしてあるのも、重症肺炎の治療時に併用薬として用いるマクロライドとして、(非定型病原体をターゲットとして)というデータばかりです。


決して、「ちょっと食欲が落ちている、そこらの肺炎に、気軽に使える注射薬」ではありません!


マクロライド系の薬は肺炎球菌はじめ、多くの肺炎原因菌に耐性がついてしまっています。ただ、AZMは組織移行にすぐれ、細胞内にも分布し高い局所濃度を示すことから、ある程度細菌にも抗菌力があるようです。

数年前から使われているSR製剤では、一回投与で治療完了、という簡便さもあり、軽症市中肺炎で重宝されたこともありました。


今回のプロモーションというか、言われようを見ていると、食べられない患者さんには注射薬が…とか、注射→経口のスイッチ療法が…とか、(DPBに対する少量長期療法で言われている)抗炎症効果が…とか、何となく、「気軽に使ってね」的なニュアンスを感じましたが…。


もちろん、メーカーとしてはたくさん使った方がいいのはわかりますが、若干の疑問と違和感があり、MRさんに質問してみました。
すると…「いやいや、そんなことはありません。重症肺炎の併用療法に限って、使っていただきたい」とのことでした。


それを聞いて少しホッとしましたが…専門医のいない病院などで、気軽に使われやしないかと少し戦々兢々です。

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posted by 長尾大志 at 12:17 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年01月19日

医療・介護関連肺炎(NHCAP)ガイドライン12・予防について

肺炎予防としては、先に挙げた誤嚥対策以外に、ワクチンが挙げられます。


成人の肺炎対策に使えるワクチンは、


・肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)
・インフルエンザワクチン


の2つです。


インフルエンザワクチンの効果についてはもはや申し上げるまでもないでしょう。


肺炎球菌ワクチンについては、最近はマスコミでも取り上げられることが多く、一般にもかなり浸透してきているようで、喜ばしい限りです。


先日も書きましたが、5年前は、患者さんに説明してご理解いただくのも一苦労だったのに、最近マスコミで大きく取り上げられるようになると、逆に患者さんから「肺炎球菌ワクチンのことを聞きたいんですけど…」「やってください」と依頼されるようになりました。全国的に品薄になるほどの人気のようですね。


もちろん個人レベルでも肺炎球菌感染による肺炎のリスクを低減させるわけですが、ガイドラインで言われているのは、特にナーシングホームなどの施設における肺炎球菌感染症の集団発生を抑制する効果で、こういう施設での接種が勧められています。


インフルエンザワクチンと併用でさらなる効果の上乗せが確認されており、そういう施設での併用が勧められています。


1回接種すると5年間有効?というか、効果があります。これまでは1回こっきりの接種しか認められていませんでしたが、今では2回、3回と接種可能ですから、遠慮無く!?お使い頂けます。


当然のことですが、いわゆる耐性菌にも効果がありますし、保菌者を減らす効果も認められています。高齢者を診ておられる施設では必須といえるでしょう。




しかしながら、ワクチンには限界もあります。すべての肺炎発症を抑制するわけではありません(まあ、ワクチンですから…)し、市中〜医療・介護関連肺炎の50〜70%を占めるとも言われるの、肺炎球菌以外の菌にはまったく無効であります。


医師の皆さんにとっては、このあたりのことは常識と言ってもいいでしょうが、患者さんにとっては違います。

「ワクチンをうったのに、肺炎になった…」
「ワクチンをうったのに、風邪を引いた…」
「ワクチンをうったのに、なんかしんどい…」

みたいなプチクレーム?を言われることが結構あるのです。


発症「率」を下げる、といっても、かかってしまったら100%になるわけですから、なかなか説明が難しいですね。

それでも、TVなんかでみの○んたさんあたりが、懇切丁寧に説明していただくことで、以前より誤解は随分減りました。


中には、何度も説明してたことを、さもはじめていいことを聞いた、といわんばかりに、「この前テレビで見たんですけど…」とおっしゃることも。



ありがたい反面、患者さんって、目の前の主治医より、みのさんを信頼するんだなー、と、無力感を覚えることも…。


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posted by 長尾大志 at 11:14 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年01月18日

医療・介護関連肺炎(NHCAP)ガイドライン11・群別の治療法について・D群の治療

D群:入院治療、その中でも集中治療を要するグループです。

具体的なターゲットは肺炎球菌・インフルエンザ菌・MSSA・クレブシエラ・クラミドフィラ・ウイルスに加え、耐性菌として緑膿菌・アシネトバクター・ESBL(基質特異性拡張型βラクタマーゼ)産生腸内細菌・MRSA・ステノトロフォモナスなどが想定されています。


抗生剤の選択では、C群のペニシリン、セフェム、またはペネムのいずれかに加えて、非定型病原体も確実にカバーするためにキノロン、マクロライドを併用する、という使い方になります。


  • ペニシリン系:TAZ/PIPC注射薬

  • セフェム系:CFPM・CPR注射薬+CLDMまたはMTZ注射薬

  • ペネム系:IPM/CS・MEPM・DRPM注射薬



のいずれかに、


  • CPFX・PZFX注射薬

  • AZM注射薬



を加える、とされています。AZM注射薬(ジスロマック注射用)は最近発売されたもので、どう使ったらいいの?という声もありますので、近いうちに取り上げたいと思います。


なお、院内肺炎ガイドラインなどでも取り上げられている、緑膿菌ターゲットの併用療法(特にアミノグリコシドを併用する)は、データから見て高齢者においてメリットよりも、むしろ腎障害などのリスクが大きいとされ、勧められていません。


もちろん、MRSAのリスクがある場合には、バンコマイシン、タゴシッド、ザイボックス、ハベカシンも併用することとなっています。




こう見ていくと、考え方は結構単純化されていると思いませんか?思っていただきたい。ガイドラインは、初心者、専門外の方々のためのものでもあるのですから。



抗菌薬選択のまとめ

  • 非定型をカバーするものは、マクロライドとキノロン。
    キノロンは、細菌も広くカバーするため、ある程度は単剤で使える。

  • 嫌気性菌をカバーするものは、ペニシリン、ペネム、メトロニダゾール、ダラシン。誤嚥がありそうなら、使用または併用。

  • A群、B群では緑膿菌を考慮しない、というか、むしろ緑膿菌に対して効果のないものを選択するべき。

  • C群、D群では抗緑膿菌作用を重視するが、副作用の少ないものが望ましい。
    MRSAは出たことがあれば、カバーする。



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posted by 長尾大志 at 10:12 | Comment(2) | 肺炎ガイドライン解説

2012年01月17日

医療・介護関連肺炎(NHCAP)ガイドライン10・群別の治療法について・C群の治療

C群:入院治療を要するグループです。その中でも耐性菌のリスクがあると考えられるケースをC群としています。


具体的なターゲットは肺炎球菌・インフルエンザ菌・MSSA・クレブシエラ・クラミドフィラ・ウイルスに加え、耐性菌として緑膿菌・アシネトバクター・ESBL(基質特異性拡張型βラクタマーゼ)産生腸内細菌・MRSA・ステノトロフォモナスなどが想定されています。


抗菌薬の選択では、副作用が少なく広域スペクトラム、というか、抗緑膿菌活性がしっかりあるものが推奨されます。当然、ここは注射薬をチョイスします。


  • ペニシリン系:TAZ/PIPC注射薬

  • セフェム系:CFPM・CPR注射薬+CLDMまたはMTZ注射薬

  • ペネム系:IPM/CS・MEPM・DRPM注射薬

  • キノロン系:CPFX・PZFX注射薬+SBT/ABPC注射薬



ただし、セフェムとキノロンは、嫌気性菌に弱いため、それをカバーするためCLDM、SBT/ABPC注射薬、メトロニダゾール(MTZ)を併用するということになっています。

主に、βラクタム系を他の系統の薬と組み合わせるため、上のような組み合わせになっているのです。


また、MRSAのリスクがある、つまり、過去にMRSAが分離されている場合には、バンコマイシン、タゴシッド、ザイボックス、ハベカシンのうちいずれか1種類を併用すること、となっています。


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posted by 長尾大志 at 18:14 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2012年01月16日

医療・介護関連肺炎(NHCAP)ガイドライン9・群別の治療法について・B群の治療

B群:入院治療を要するグループです。その中でも耐性菌のリスクが少なく、市中肺炎とほぼ同じ原因菌と考えて良いケースをB群としています。


具体的なターゲットはA群同様、肺炎球菌・インフルエンザ菌・MSSA・クレブシエラ・クラミドフィラ・ウイルスを想定します。


入院の場合は患者さんの状態の変化をすぐに察知することができるため、治療開始時から非定型菌をカバーするということはせず、A群よりむしろ細菌にターゲットを絞った選択になっています。また、当然、注射薬が主体です。選択薬は…


  • SBT/ABPC注射薬

  • CTRX注射薬

  • PAPM/BP注射薬

  • LVFX注射薬



となっています。選択されているのはペニシリン・3世代セフェム・カルベニン・クラビットの注射薬です。


ここで早速ペネムが登場しました。しかも、カルベニンと銘柄まで指定されています。そのこころは…。

やはり嫌気性菌対策なのです。このガイドラインの特徴というかなんというか、誤嚥がありそうな場合、嫌気性菌の関与が考えられる場合の抗菌薬選択を広くとっています。


以前書いたように、嫌気性菌に対して、クラビット(LVFX)は不適であり、ロセフィン(CTRX)も弱いときたもんです。

そこで出てくるのが、嫌気性菌に強いユナシンS(SBT/ABPC)かカルベニン(PAPM/BP)となるのです。


じゃあなぜ、ペネムの中でもカルベニンなのか。グラム陽性球菌、嫌気性菌に強いということもあるのですが、他のペネムと比較すると緑膿菌に対する効果が弱いため、ここで使うということになっています。

他のペネムは、緑膿菌の存在が予想されるC群、D群で使われます。
なんか、カルベニン救済的なニュアンスを感じなくもないですねー。


弱いとはいえ抗緑膿菌活性もあり、カルベニンとイミペネムの交差耐性も知られていることから、緑膿菌のいるところで使うと、「効かない上に耐性がつく」と、大変具合が悪いので、個人的にはほとんど使いません(言っちゃった…)。


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posted by 長尾大志 at 12:58 | Comment(2) | 肺炎ガイドライン解説

2012年01月13日

医療・介護関連肺炎(NHCAP)ガイドライン8・群別の治療法について・A群の治療

それでは、治療区分別に、抗菌薬選択の実際を見て参りましょう。


A群:外来治療で良い、比較的軽症と考えられるグループです。


A群では肺炎の原因菌が市中肺炎に近いと考え、耐性菌のリスクも少ないであろうとして取り扱います。


具体的なターゲットは肺炎球菌・インフルエンザ菌・MSSA・クレブシエラ・クラミドフィラ・ウイルスが想定されています。市中肺炎で有名なマイコプラズマはガイドラインでは含まれていません。


マイコプラズマは基本、若くて元気な方々に感染することが多く、各種データでも介護施設での分離菌としてはさほど多くないのですが、最近施設での集団感染が時々話題になっており、高齢者に感染しないというわけでもありません。

特に、お孫さんと同居されているようなケースでは、そちらから感染、ということもあります。



さて、抗菌薬の選択ですが、まあ市中肺炎の時と同じです。比較的狭域スペクトラムで、耐性菌リスクの少ないものを選びます。

ポイントとしては、高齢者を外来治療するので、経口薬中心であえて非定型菌、嫌気性菌を含めたスペクトラムにしてあるということです。


というのは、次回外来受診までに選択ミスがあった場合、命取りになることもあり得るためです。ですから「狭域」といいつつ結構カバーしている。


この場合の「狭域」とは、何を指すのでしょうか。

カンのいい方ならお気づきでしょう。緑膿菌以外、ということですね。まあキノロンは効かなくもないのですが…。

ということで、後発品花盛りの昨今ですので、一般名の略号を使って書きますと、


  • AMPC/CVAまたはSBTPC経口薬+マクロライド経口薬(CAMまたはAZM)

  • CTRX注射薬+マクロライド経口薬(CAMまたはAZM)

  • レスピラトリーキノロン経口薬(GRNX、MFLX、LVFX)



が推奨されています。


補足しますと、ペニシリンにマクロライドを加えるのは主にクラミドフィラ(+マイコプラズマ)対策ですが、CTRXにマクロライドを加えるのは、嫌気性菌対策も兼ねているのです。

肺炎治療薬として頻用されているCTRX(ロセフィン他)ですが、単独では誤嚥性肺炎に向かない、と覚えておきましょう。


同様に、これまたうんざりするほど頻用されているLVFX(クラビット)もまた、嫌気性菌には効果が弱く、避けた方がよい、と明言されています。


一部の地域で(全国的に?)肺炎といえば盲目的にクラビット、みたいな現場を見かけますが、ほんの少しでいいので、頭を使って頂きたいと思います。


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posted by 長尾大志 at 11:19 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説